(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055039
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】気体制御装置およびロータを用いた二流体混合防止方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/06 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
B01D53/06 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161625
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河岡 将行
【テーマコード(参考)】
4D012
【Fターム(参考)】
4D012CA01
4D012CA10
4D012CA11
4D012CC03
4D012CC05
4D012CD01
4D012CD03
4D012CD05
4D012CD07
4D012CE01
4D012CE02
4D012CE03
4D012CF02
4D012CF03
4D012CG01
4D012CK08
(57)【要約】
【課題】気体が流通するロータ式の気体制御装置での、再生系統への気体の流入防止と、再生系統を機能させる気体の系外への流出抑止とを両立する。
【解決手段】気体制御装置は、第1気体が流れる第1通気路と、第1気体とは異なる第2気体が流れる第2通気路と、第1通気路から分岐した分岐路と、第1通気路、第2通気路、および分岐路に跨って配置された回転自在なロータと、を備え、ロータは、機能の異なる少なくとも3つの通気ゾーンに分割され、第1気体が通過する第1通気ゾーンと、第2気体が通過する第2通気ゾーンと、第1通気ゾーンと第2通気ゾーンとの間に設けられ、分岐路を流れる気体が通過するとともに、ロータの圧力を制御する圧力制御ゾーンを有し、圧力制御ゾーンの、ロータの回転方向に隣接する第2通気ゾーンの圧力より、圧力制御ゾーンの圧力が低くなるように制御される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1気体が流れる第1通気路と、
前記第1気体とは異なる第2気体が流れる第2通気路と、
前記第1通気路から分岐した分岐路と、
前記第1通気路、前記第2通気路、および前記分岐路に跨って配置された回転自在なロータと、を備え、
前記ロータは、機能の異なる少なくとも3つの通気ゾーンに分割され、前記第1気体が通過する第1通気ゾーンと、前記第2気体が通過する第2通気ゾーンと、前記第1通気ゾーンと前記第2通気ゾーンとの間に設けられ、前記分岐路を流れる気体が通過するとともに、前記ロータの圧力を制御する圧力制御ゾーンを有し、
前記圧力制御ゾーンの、前記ロータの回転方向に隣接する前記第2通気ゾーンの圧力より、該圧力制御ゾーンの圧力が低くなるように制御される、
気体制御装置。
【請求項2】
前記圧力制御ゾーンの、前記ロータの回転方向に隣接する前記第2通気ゾーンの出口の圧力と、該圧力制御ゾーンの出口の圧力との圧力差が100Paを目標値として制御される、請求項1に記載の気体制御装置。
【請求項3】
前記第2通気ゾーンの、前記ロータの回転方向に隣接する前記圧力制御ゾーンの入口の圧力と、該第2通気ゾーンの入口の圧力とが等しくなるように制御される、請求項1または2に記載の気体制御装置。
【請求項4】
前記第2通気ゾーンの、前記ロータの回転方向に隣接する前記圧力制御ゾーンの入口の圧力が、該第2通気ゾーンの入口の圧力以下となるように制御される、請求項1または2に記載の気体制御装置。
【請求項5】
前記第1通気ゾーンは、前記第1通気路を流れる気体に対して所定の処理を行う処理ゾーンであり、前記第2通気ゾーンは、前記処理ゾーンとしての第1通気ゾーンの機能を再生させる再生ゾーンである、請求項1に記載の気体制御装置。
【請求項6】
第1気体が流れる第1通気路と、前記第1気体とは異なる第2気体が流れる第2通気路と、前記第1通気路から分岐した分岐路と、前記第1通気路、前記第2通気路、および前記分岐路に跨って配置された回転自在なロータとを備える気体制御装置のロータを用いた二流体混合防止方法であって、
前記ロータは、機能の異なる少なくとも3つの通気ゾーンに分割され、前記第1気体が通過する第1通気ゾーンと、前記第2気体が通過する第2通気ゾーンと、前記第1通気ゾーンと前記第2通気ゾーンとの間に設けられ、前記分岐路を流れる気体が通過するとともに、前記ロータの圧力を制御する圧力制御ゾーンを有し、
前記圧力制御ゾーンの、前記ロータの回転方向に隣接する前記第2通気ゾーンの圧力より、該圧力制御ゾーンの圧力が低くなるように制御される、
ロータを用いた二流体混合防止方法。
【請求項7】
前記圧力制御ゾーンの、前記ロータの回転方向に隣接する前記第2通気ゾーンの出口の圧力と、該圧力制御ゾーンの出口の圧力との圧力差が100Paを目標値として制御される、請求項6に記載のロータを用いた二流体混合防止方法。
【請求項8】
前記第2通気ゾーンの、前記ロータの回転方向に隣接する前記圧力制御ゾーンの入口の圧力と、該第2通気ゾーンの入口の圧力とが等しくなるように制御される、請求項6または7に記載のロータを用いた二流体混合防止方法。
【請求項9】
前記第2通気ゾーンの、前記ロータの回転方向に隣接する前記圧力制御ゾーンの入口の圧力が、該第2通気ゾーンの入口の圧力以下となるように制御される、請求項6または7に記載のロータを用いた二流体混合防止方法。
【請求項10】
前記第1通気ゾーンは、前記第1通気路を流れる気体に対して所定の処理を行う処理ゾーンであり、前記第2通気ゾーンは、前記処理ゾーンとしての第1通気ゾーンの機能を再生させる再生ゾーンである、請求項6に記載のロータを用いた二流体混合防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気体制御装置およびロータを用いた二流体混合防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハニカム型のVOC(揮発性有機化合物:volatile organic compounds)濃縮ロータや除湿ロータを用いた気体制御装置が知られている。このような気体制御装置では、例えば、特許文献1に示されるように、ロータをVOCの吸着、除湿、空気浄化等の所定の処理を行う処理ゾーン、処理ゾーンの機能を再生させる再生ゾーンといったように機能の異なるゾーンが複数に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、気体制御装置において、VOCを含む空気が濃縮されるような運用では、安全面から窒素等の不活性ガスを用いて、酸素濃度が十分に低い状態(例えば、約10パーセント以下)でロータの機能を再生する場合がある。このような場合では、ロータ内には空気が流通されるゾーンと、窒素等の不活性ガスが通気するゾーンとが共存することになる。
【0005】
不活性ガスによる再生系統に空気系統の気体(例えば、酸素等)が流入すると、不活性ガス系統内の酸素濃度が上昇する。この上昇した酸素濃度を下げるためには流入した酸素量の数倍の不活性ガスを新たに導入して希釈しなければならない。不活性ガスは相対的に高価なため、気体制御装置の運用におけるランニングコスト削減の観点から当該不活性ガスの導入量は最小限であることが望ましい。このため、気体制御装置においては、不活性ガスによる再生系統内への気体(酸素)流入を防止し、当該不活性ガスの系外への流出を抑止することが求められる。本開示は、気体が流通するロータ式の気体制御装置の、再生系統への気体の流入防止と、再生系統を機能させる気体の系外への流出抑止とを両立可能な技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、以下の構成を採用する。
すなわち、本開示の一側面における気体制御装置は、第1気体が流れる第1通気路と、第1気体とは異なる第2気体が流れる第2通気路と、第1通気路から分岐した分岐路と、第1通気路、第2通気路、および分岐路に跨って配置された回転自在なロータと、を備え、ロータは、機能の異なる少なくとも3つの通気ゾーンに分割され、第1気体が通過する第1通気ゾーンと、第2気体が通過する第2通気ゾーンと、第1通気ゾーンと第2通気ゾーンとの間に設けられ、分岐路を流れる気体が通過するとともに、ロータの圧力を制御する圧力制御ゾーンを有し、圧力制御ゾーンの、ロータの回転方向に隣接する第2通気ゾーンの圧力より、圧力制御ゾーンの圧力が低くなるように制御される。
【0007】
これにより、本開示の気体制御装置は、ロータの回転方向に、圧力制御ゾーン→第2通気ゾーンと位置する側の圧力制御ゾーンにおいては、第2通気ゾーンよりも圧力制御ゾーンの圧力を低くするように制御できる。圧力制御ゾーン内は第2気体に関してガスリッチな状態にできるため、ロータ回転に伴う第2通気ゾーンへの気体の流入が防止できる。
【0008】
ここで、第2気体は、第1気体とは性状の異なる気体とすることができる。例えば、第1気体と、第2気体は、気体処理器としてのロータの入口または出口において、温度、湿度、圧力、流速、含有する物質の成分/濃度、清浄度の少なくとも何れかが互いに異なる。
【0009】
また、本開示の気体制御装置は、圧力制御ゾーンの、ロータの回転方向に隣接する第2通気ゾーンの出口の圧力と、該圧力制御ゾーンの出口の圧力との圧力差が100Paを目標値として制御されるようにしてもよい。第1気体であるVOCを含む空気が濃縮される運用では、第2気体をN2等の不活性ガスとして、ロータの回転方向に隣接する第2通気ゾーンの出口の圧力と、該圧力制御ゾーンの出口の圧力との圧力差が最適値となるように制御できる。この最適値により、第2通気ゾーンへの第1気体であるVOCを含む空気の流入を抑制し、運用に伴う第2気体である不活性ガス量が低減できる。
【0010】
また、本開示の気体制御装置は、第2通気ゾーンの、ロータの回転方向に隣接する圧力制御ゾーンの入口の圧力と、該第2通気ゾーンの入口の圧力とが等しくなるように制御されるようにしてもよい。圧力制御ゾーンの入口側の圧力と第2通気ゾーンの入口側の圧力差が極めて小さくなり、圧力制御ゾーンから第2通気ゾーンへの気体の漏れが抑制でき、第1通気ゾーンと第2通気ゾーンとの間での気体の混合が防止できる。また、本開示の気体制御装置は、第2通気ゾーンの、ロータの回転方向に隣接する圧力制御ゾーンの入口の圧力が、該第2通気ゾーンの入口の圧力以下となるように制御されるようにしてもよい。このような制御であっても、圧力制御ゾーンから第2通気ゾーンへの気体の漏れを抑制する効果が期待できる。
【0011】
さらに、本開示の気体制御装置は、第1通気ゾーンは、第1通気路を流れる気体に対して所定の処理を行う処理ゾーンであり、第2通気ゾーンは、処理ゾーンとしての第1通気ゾーンの機能を再生させる再生ゾーンとしてもよい。所定の処理には、VOCの吸着や除湿が例示される。したがって、本開示の気体制御装置は、VOC処理システムや除湿システムの一部として用いることもできる。
【0012】
本開示の他の側面においては、気体制御装置のロータを用いた二流体混合防止方法として特定することもできる。すなわち、第1気体が流れる第1通気路と、第1気体とは異なる第2気体が流れる第2通気路と、第1通気路から分岐した分岐路と、第1通気路、第2通気路、および分岐路に跨って配置された回転自在なロータとを備える気体制御装置のロータを用いた二流体混合防止方法であって、ロータは、機能の異なる少なくとも3つの通気ゾーンに分割され、第1気体が通過する第1通気ゾーンと、第2気体が通過する第2通気ゾーンと、第1通気ゾーンと第2通気ゾーンとの間に設けられ、分岐路を流れる気体が通過するとともに、ロータの圧力を制御する圧力制御ゾーンを有し、圧力制御ゾーンの、ロータの回転方向に隣接する第2通気ゾーンの圧力より、該圧力制御ゾーンの圧力が低くなるように制御される。
【0013】
このような形態であっても、ロータの回転方向に、圧力制御ゾーン→第2通気ゾーンと位置する側の圧力制御ゾーンにおいては、第2通気ゾーンよりも圧力制御ゾーンの圧力を低くするように制御できる。圧力制御ゾーン内は第2気体に関してガスリッチな状態にできるため、ロータ回転に伴う第2通気ゾーンへ気体の流入が防止できる。
【0014】
また、圧力制御ゾーンの、ロータの回転方向に隣接する第2通気ゾーンの出口の圧力と、該圧力制御ゾーンの出口の圧力との圧力差が100Paを目標値として制御されるようにしてもよい。また、第2通気ゾーンの、ロータの回転方向に隣接する圧力制御ゾーンの入口の圧力と、該第2通気ゾーンの入口の圧力とが等しくなるように制御されるようにし
てもよい。また、第2通気ゾーンの、ロータの回転方向に隣接する圧力制御ゾーンの入口の圧力が、該第2通気ゾーンの入口の圧力以下となるように制御されるようにしてもよい。また、第1通気ゾーンは、第1通気路を流れる気体に対して所定の処理を行う処理ゾーンであり、第2通気ゾーンは、処理ゾーンとしての第1通気ゾーンの機能を再生させる再生ゾーンとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示により、気体が流通するロータ式の気体制御装置での、再生系統への気体の流入防止と、再生系統を機能させる気体の系外への流出抑止とが両立可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態に係る気体制御装置のシステム構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る気体制御装置のロータを正面視した正面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る圧力制御ゾーンと再生ゾーンとの間の圧力差を変化させた場合における処理気体の流入量の推移を表すグラフである。
【
図4】
図4は、実施形態に係る気体制御装置の制御形態を説明する図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る気体制御装置の制御形態を説明する他の図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る気体制御装置の制御形態における各コントローラ設定値と、各ファンおよび各ダンパの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。また、以下の実施形態は可能な限り適宜に組み合わせることができる。
【0018】
<気体制御装置の構成>
図1から
図2は、本実施形態に係る気体制御装置1の構成を説明する図である。
図1は、本実施形態に係る気体制御装置1のシステム構成の一例を示す図であり、
図2は、気体制御装置1のロータ2を正面視した正面図である。本実施形態に係る気体制御装置1は、ハニカム型のロータ2を備える気体制御装置であり、当該ロータは、例えば、VOC(揮発性有機化合物:volatile organic compounds)濃縮ロータや除湿ロータとして機能する。なお、
図1および
図2において、実線矢印Z1は、ロータ2の回転方向を表す。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態に係る気体制御装置1は、ロータ2以外の他の構成として、再生通気路51、処理通気路52、圧力制御用通気路53、入口側ファン61、入口側ダンパ71、入口側差圧計81、入口側コントローラ91を備える。また、本実施形態に係る気体制御装置1は、出口側ファン62、出口側ダンパ72、出口側差圧計82、出口側コントローラ92を備える。そして、本実施形態において、ロータ2は、VOCの吸着、除湿、空気浄化等の所定の処理を行う処理ゾーン22、処理ゾーン22の機能を再生させる再生ゾーン21、再生ゾーン21と処理ゾーン22との間の圧力を制御する圧力制御ゾーン23に区画されている。なお、圧力制御ゾーン23は、PCZ(Pressure Control Zone)23ともいう。
【0020】
再生通気路51は、ロータ2、特にその吸着材の吸着性能を再生するための気体が流れる通気路である。再生通気路51を流れる気体には、空気、不活性気体(N2)、高温で送られる気体、負圧にして吸引される気体が例示される。本実施形態において、再生通気路51は「第2通気路」、再生通気路51を流れる気体は「第2気体」の一例である。再生通気路51には、例えば、再生通気路用ファン、再生ヒータ等を設けることができる。
【0021】
処理通気路52は、ロータ2で処理される気体が流れる通気路である。ロータ2で処理される気体が流れる方向は、ロータ2を再生するための気体が流れる方向と逆向きになるように設計されている。処理通気路52を流れる気体には、VOCを含む空気、調湿対象となる空気、半導体などの先端製造プロセスで製造の阻害要因となる空気中の水分や分子状汚染物質から製品を守るといった、浄化に供される空気が例示される。処理通気路52には、例えば、処理通気路用ファン等を設けることができる。本実施形態において、処理通気路52は「第1通気路」、処理通気路52を流れる気体は「第1気体」の一例である。但し、「第2通気路」が処理通気路52であり、この処理通気路52を流れる気体が「第2気体」であってもよく、「第1通気路」が再生通気路51であり、この再生通気路51を流れる気体が「第1気体」であってもよい。
【0022】
ロータ2は、処理通気路52を流れる気体に含まれるVOCを吸着する機能や、湿分を吸着し、処理通気路52を流れる気体を調湿する機能、気体などの気体中からアンモニア等の化学物質やオゾン等の有害物質除去する機能のうち少なくとも何れか一つを有する。ロータ2は、駆動源によって回転自在であり、ロータの両端面側に、チャンバ10,11を備える。チャンバ10,11は、再生通気路51、処理通気路52、圧力制御用通気路53のそれぞれに対応した室を有し、各室は仕切り板で仕切られている。再生通気路51、処理通気路52においては、入口側、出口側のそれぞれがダクト等で構成される。チャンバ10,11の外壁の端部、換言するとロータ2の外周には、ロータ2内からの気体の漏れを抑制する外周シール材3が設けられている。また、ロータ2の表面に近接するチャンバ10,11の仕切り板の端部には、各ゾーン間の気体の混合を抑制するゾーン間シール部材4が設けられている。ロータ2は、例えばシリカゲルを添着したロータ、ゼオライトを添着したロータ、高分子収着剤を添着したロータ、塩化リチウム等の吸湿剤等を含浸させたロータによって構成することができる。
【0023】
また、ロータ2は、再生ゾーン21、処理ゾーン22、圧力制御ゾーン23(PCZ)に区画されて分割されている。再生ゾーン21は、ロータ2の吸着材を再生し、又は吸着された湿気等の物質を脱着・脱離するための気体が通過することで再生される。処理ゾーン22は、処理通気路52を流れる気体に含まれるVOCの吸着や、処理通気路52を流れる気体を調湿する。本実施形態において、再生ゾーン21は「第2通気ゾーン」、処理ゾーン22は「第1通気ゾーン」の一例である。
図2等に示されるように、再生ゾーン21と処理ゾーン22には圧力制御ゾーン23(PCZ)が設けられる。なお、再生ゾーン21、処理ゾーン22、圧力制御ゾーン23のそれぞれは「通気ゾーン」ともいえる。
【0024】
圧力制御ゾーン23には、処理通気路52から分岐した圧力制御用通気路53を流れる気体が通過する。圧力制御ゾーン23は、処理ゾーン22と同じく、処理通気路52を流れる気体に含まれるVOCの吸着や、処理通気路52を流れる気体を調湿する機能の他、ロータ2の圧力を制御する機能を有する。本実施形態では、再生ゾーン21と処理ゾーン22は、中心角がほぼ同じである扇形によって形成され、圧力制御ゾーン23は、ロータ2の回転軸を基準として、対向する2つの扇形の圧力制御ゾーンによって構成されている。圧力制御ゾーン23を形成する扇形の中心角は、再生ゾーン21や処理ゾーン22を形成する扇形の中心角よりも小さい。各ゾーンの角度は被処理気体の使用条件等により異なるが、圧力制御ゾーン23の角度は小さい方が運転費の面では好適である。本実施形態では、処理ゾーン22と再生ゾーン21は、それぞれ170度の開度、2つの圧力制御ゾーン23はそれぞれ10度の開度を有し、2つの圧力制御ゾーン23の位置が対称関係に配置されている。
【0025】
圧力制御用通気路53は、処理通気路52から分岐し、圧力制御用通気路53の途中にロータ2が設置され、処理通気路52に合流しており、ロータ2で処理される気体が流れ
る。圧力制御用通気路53の一端は、処理通気路52の、ロータ2よりも下流側に接続され、圧力制御用通気路53の他端は、処理通気路52の、ロータ2よりも上流側に接続されている。圧力制御用通気路53には、気体の流れにおいて、上流側から順に、入口側ダンパ71、入口側ファン61、ロータ2、出口側ファン62、出口側ダンパ72が設けられている。本実施形態において、圧力制御用通気路53は「分岐路」の一例である。
【0026】
入口側ファン61は、圧力制御用通気路53の入口側に設けられ、圧力制御用通気路53を流れる気体をロータ2に送る。入口側ファン61は、入口側コントローラ91と電気的に接続され、入口側コントローラ91によってON、OFFの制御が可能であり、また、出力状態がインバータ制御される。
【0027】
入口側ダンパ71は、圧力制御用通気路53の入口側(入口側ファン61よりも下流側)に設けられ、圧力制御用通気路53を流れる気体の流量を調整する。入口側ダンパ71は、入口側コントローラ91と電気的に接続され、入口側コントローラ91によって開度が制御される。入口側ダンパ71には、モータを駆動させることで開度を変更できるモータダンパを用いることができる。
【0028】
入口側差圧計81は、チャンバ10内における、再生ゾーン21の入口側、圧力制御ゾーン23の入口側の圧力を計測する。計測された圧力は、入口側コントローラ91に入力される。入口側差圧計81は、例えば差圧測定チューブの先端をゾーン間シール部材4の近傍に挿入するとよい。これにより、より精度よく制御を行うことができる。入口側差圧計81には、一般的なデジタル微差圧計を用いることができる。
【0029】
入口側コントローラ91は、入口側差圧計81で計測された差圧と設定値とに基づいて、入口側ファン61および入口側ダンパ71を制御する。入口側コントローラ91は、CPU(中央処理演算装置)、メモリ、操作部、表示部等を備えるCPUユニットに装備させることができる。CPUがメモリに格納された制御プログラムを実行することで、入口側ファン61および入口側ダンパ71等が制御される。入口側コントローラ91には、PID制御コントローラ(Proportional-Integral-Derivative Controller)を用いることができる。
【0030】
出口側ダンパ72は、圧力制御用通気路53の出口側に設けられ、圧力制御用通気路53を流れる気体の流量を調整する。出口側ダンパ72は、出口側コントローラ92と電気的に接続され、出口側コントローラ92によって開度が制御される。出口側ダンパ72には、入口側ダンパ71と同じく、モータダンパを用いることができる。
【0031】
出口側ファン62は、圧力制御用通気路53の出口側(出口側ファン62よりも下流側)に設けられ、圧力制御用通気路53を流れ、ロータ2を通過した気体を処理通気路52に送る。出口側ファン62は、出口側コントローラ92と電気的に接続され、出口側コントローラ92によってON、OFFの制御が可能であり、また、出力状態がインバータ制御される。
【0032】
出口側差圧計82は、チャンバ11内における、再生ゾーン21の出口側、圧力制御ゾーン23の出口側の圧力を計測する。計測された圧力は、出口側コントローラ92に入力される。出口側差圧計82は、例えば差圧測定チューブの先端をゾーン間シール部材4の近傍に挿入するとよい。これにより、より精度よく制御を行うことができる。出口側差圧計82には、入口側差圧計81と同じく、一般的なデジタル微差圧計を用いることができる。
【0033】
出口側コントローラ92は、出口側差圧計82で計測された差圧と設定値とに基づいて
、出口側ファン62および出口側ダンパ72を制御する。出口側コントローラ92は、CPU(中央処理演算装置)、メモリ、操作部、表示部等を備えるCPUユニットに装備させることができる。CPUがメモリに格納された制御プログラムを実行することで、出口側ファン62および出口側ダンパ72等が制御される。出口側コントローラ92には、入口側コントローラ91と同じく、PID制御コントローラを用いることができる。
【0034】
なお、必ずしも圧力制御ゾーン23の入口側と出口側の双方にファンおよびダンパを設けなくともよい。例えば、圧力制御ゾーン23の入口側に入口側ダンパ71のみを設け、圧力制御ゾーン23の出口側に出口側ファン62のみを設けるようにしてもよい。これにより、気体制御装置1をより簡略化することができる。
【0035】
このように、本実施形態に係る気体制御装置1では、ロータ2の処理ゾーン22により、処理通気路52を流れる気体に含まれるVOCの吸着や、処理通気路52を流れる気体の調湿が可能となる。また、ロータ2の再生ゾーン21により、ロータ2の再生が可能となる。また、ロータ2で処理される気体が流れる方向は、ロータ2を再生するための気体が流れる方向と逆向きであり、本実施形態に係る気体制御装置1は、所謂対向流方式である。所謂対向流方式を採用した本実施形態では、所謂平行流方式で懸念される、吸着性能の低下や再生のための加熱量の増大の可能性が低く、より効果的にロータ2を再生することができる。また、所謂対向流方式を採用した本実施形態では、所謂平行流方式で懸念される、ロータ2における処理空気下流側の面(再生空気上流側の面)で再生・脱着の低下を防止できる。
【0036】
<ロータの回転に伴う気体間の混合について>
本実施形態に係る気体制御装置1では、入口側差圧計81で計測された差圧(PV)と設定値(SV)に基づいて入口側コントローラ91はPID制御を行い、入口側ファン61および入口側ダンパ71が制御される。同様にして、出口側差圧計82で計測された差圧(PV)と設定値(SV)に基づいて出口側コントローラ92はPID制御を行い、出口側ファン62および出口側ダンパ72が制御される。
【0037】
比較例として、入口側コントローラ91および出口側コントローラ92のそれぞれの設定値がSV=±0Paである制御形態を想定する。比較例の制御形態では、入口側差圧計81で計測された差圧(PV)、すなわち、チャンバ10内における、再生ゾーン21の入口側と圧力制御ゾーン23の入口側の圧力差が設定値(SV=±0Pa)に近づくように入口側ダンパ71の開度が調整される。そして、入口側ファン61では同様にして、再生ゾーン21の入口側と圧力制御ゾーン23の入口側の圧力差が設定値(SV=±0Pa)に近づくように、インバータ出力周波数が増加減される。
【0038】
また、出口側差圧計82で計測された差圧(PV)、すなわちチャンバ11内における、再生ゾーン21の出口側、圧力制御ゾーン23の出口側の圧力差が設定値(SV=±0Pa)に近づくように出口側ダンパ72の開度が調整される。出口側ファン62では同様にして、再生ゾーン21の出口側と圧力制御ゾーン23の出口側の圧力差が設定値(SV=±0Pa)に近づくように、インバータ出力周波数が増加減される。
【0039】
このように比較例の制御形態では、圧力制御ゾーン23の入口側の圧力と再生ゾーン21の入口側の圧力が同じになるように制御され、圧力制御ゾーン23の出口側の圧力と再生ゾーン21の出口側の圧力が同じになるように制御される。このため、ロータ2においては、圧力制御ゾーン23と再生ゾーン21の圧力差が極めて小さくなる。例えば、処理ゾーン22から圧力制御ゾーン23へ気体の漏れが生じても圧力制御ゾーン23から再生ゾーン21への気体の漏れは抑制されるため、処理ゾーン22と再生ゾーン21との間での気体の混合が抑制できる。
【0040】
しかしながら、
図1から
図2に実線矢印Z1で示されるように、ロータ2は回転している。このため、比較例の制御形態では、ロータ2の回転に伴って回転方向に位置するゾーン間の気体の流入は抑制されない。例えば、
図1における処理ゾーン22から圧力制御ゾーン23への、ロータ2の回転に伴う処理通気路52を流れる気体の流入、圧力制御ゾーン23に流入された混合気体のロータ2の回転に伴う再生ゾーン21へ流入が生ずることになる。
【0041】
例えば、再生通気路51を流れる気体がN2等の不活性ガスであり、処理通気路52を流れる気体がVOCを含む空気である場合では、再生系統に流入されたVOCを含む空気等により、酸素濃度が上昇することになる。この上昇した酸素濃度を下げるためには流入した酸素量の数倍の不活性ガスを新たに導入して希釈する必要がある。不活性ガスは相対的に高価なため、気体制御装置1の運用におけるランニングコスト削減の観点からは、再生系統内へのVOCを含む空気等の流入を抑制することが望ましい。再生通気路51を流れる気体が空気、高温で送られる気体、負圧にして吸引される気体であり、処理通気路52を流れる気体が調湿対象となる空気、半導体などの先端製造プロセスで製造の阻害要因となる空気中の水分、分子状汚染物質を含む浄化に供される空気であっても同様である。
【0042】
<圧力差による評価試験>
ロータ2の回転に伴って再生ゾーン21側への処理通気路52を流れる気体の流入を評価するため、圧力制御ゾーン23と再生ゾーン21との間の圧力差を変化させた場合の、再生ゾーン21への気体(処理通気路52側の気体)の流入量の変化を測定した。なお、以下では、再生通気路51を流れる気体を再生気体、処理通気路52を流れる気体を処理気体ともいう。ロータ2の回転方向に、再生ゾーン21→圧力制御ゾーン23との間の圧力差を入口側差圧計81、ロータ2の回転方向に、圧力制御ゾーン23→再生ゾーン21との間の圧力差を出口側差圧計82で計測し、再生ゾーン21への処理気体の流入量の変化を測定した。測定の結果は
図3に示される。
【0043】
図3は、圧力制御ゾーン23と再生ゾーン21との間の圧力差を変化させた場合における処理気体の流入量の推移を表すグラフである。
図3において、縦軸は再生ゾーン21に流入する処理気体の総体的な流入量を表し、横軸は再生ゾーン21との圧力差(Pa)を表す。また、黒点で示されるグラフG1は、ロータ2の回転方向に、圧力制御ゾーン23→再生ゾーン21との間の圧力差の推移を表し、白点で示されるグラフG2は、ロータ2の回転方向に、再生ゾーン21→圧力制御ゾーン23との間の圧力差の推移を表す。
【0044】
図3のグラフG1に示されるように、ロータ2の回転方向に、圧力制御ゾーン23→再生ゾーン21と位置する側の圧力制御ゾーン23の相対的な圧力を再生ゾーン21より低くすると、再生ゾーン21への処理気体の流入量が減少することが判った。圧力制御ゾーン23の圧力が再生ゾーン21より約150Pa程度低い場合に、再生ゾーン21への処理気体の流入量が最小量に抑制された状態になる。つまり、ロータ2の回転方向に、圧力制御ゾーン23→再生ゾーン21と位置する側では、相対的に再生ゾーン21側に流れる再生気体の圧力を高めることで再生ゾーン21への処理気体の流入量が抑制可能になる。
【0045】
一方、グラフG2に示されるように、ロータ2の回転方向に、再生ゾーン21→圧力制御ゾーン23と位置する側の圧力制御ゾーン23では、相対的な圧力を再生ゾーン21より低くすると、再生ゾーン21への処理気体の流入量が増加する傾向にある。しかしながら、処理気体の流入量が相対的に高い約100Pa時における流入量であっても、一定の抑制効果を有していることが判る。例えば、グラフG2において、相対的な圧力差が100Pa近傍の処理気体の流入量は、グラフG1における相対的な圧力差が約100Pa近傍の流入量と略同等の抑制効果を有していることが判る。なお、圧力制御ゾーン23の圧
力が再生ゾーン21と等しくなる場合、すなわち、圧力差(ΔPa)がゼロになる場合に、再生ゾーン21への処理気体の流入量が最小量に抑制された状態になる。
【0046】
本実施形態に係る気体制御装置1においては、ロータ2の回転方向に、圧力制御ゾーン23→再生ゾーン21と位置する側の圧力制御ゾーン23においては、再生ゾーン21よりも圧力制御ゾーン23の圧力を低くするよう制御する。また、気体制御装置1は、ロータ2の回転方向に、再生ゾーン21→圧力制御ゾーン23と位置する側の圧力制御ゾーン23においては、再生ゾーン21と圧力制御ゾーン23との間の圧力差がゼロになるように制御する。但し、気体制御装置1は、ロータ2の回転方向に、再生ゾーン21→圧力制御ゾーン23と位置する側の圧力制御ゾーン23においては、圧力制御ゾーン23の圧力が再生ゾーン21の圧力以下になるように制御されてもよい。これにより、処理ゾーン22と再生ゾーン21との間での気体の混合を抑制しつつ、ロータ2の回転に伴う再生系統への処理通気路52を流れる気体の流入を防止可能にする。本実施形態においては、気体が流通するロータ式の気体制御装置の、再生系統への処理気体の流入防止と、再生系統を機能させる再生気体の系外への流出抑止とが両立可能になる。
【0047】
<気体制御装置の制御>
図4から
図5は、本実施形態に係る気体制御装置1の制御形態を説明する図である。
図4から5に示されるように、本実施形態においては、入口側コントローラ91は、入口側差圧計81で計測された差圧(PV)と設定値(SV=±0Pa)に基づいてPID制御を行い、入口側ファン61および入口側ダンパ71を制御する。同様にして、出口側コントローラ92は、出口側差圧計82で計測された差圧(PV)と設定値(SV=100pa)に基づいてPID制御を行い、出口側ファン62および出口側ダンパ72を制御する。入口側コントローラ91における設定値(SV=±0Pa)、および、出口側コントローラ92における設定値(SV=100pa)は予め各コントローラに記憶されている。
【0048】
これにより気体制御装置1は、出口側コントローラ92による出口側ファン62および出口側ダンパ72の制御により、出口側差圧計82で計測された差圧(PV)が設定値(SV=100Pa)となるように制御できる。つまり、ロータ2の回転方向に、圧力制御ゾーン23→再生ゾーン21と位置する側の圧力制御ゾーン23においては、再生ゾーン21よりも圧力制御ゾーン23の圧力を低くすることができる。
【0049】
本実施形態においては、
図4および
図5においてZ2で示されるように、再生ゾーン21側から圧力制御ゾーン23側へ再生気体が意図的にリークできる。圧力制御ゾーン23内にリークされた再生気体は、ロータ内部に流入された処理気体をパージ(置換)するため、圧力制御ゾーン23内は再生気体に関してガスリッチな状態になる。つまり、ロータ内部に流入された処理気体の流入量は相対的に減少する。したがって、ロータ2は、このガスリッチ状態を維持しながら再生ゾーン21に入ることで、処理気体を希釈するための再生気体量を削減可能になる。
【0050】
図6は、本実施形態に係る気体制御装置1の制御形態における各コントローラ設定値と、各ファンおよび各ダンパの動作を説明する図である。
図6(a)には、圧力制御ゾーン23の入口側におけるINV出力/MD開度と差圧の関係が例示され、
図6(b)には圧力制御ゾーン23の出口側におけるINV出力/MD開度と差圧の関係が例示されている。INV出力は、各コントローラの指示を受けて各ファンに出力されるインバータ周波数であり、MD開度は各ダンパにおける相対的な開度の大きさである。
図6(a)、(b)において、縦軸は相対的なINV出力およびMD開度の大きさを表し、横軸は制御に係る差圧を表す。
【0051】
先ず、入口側コントローラ91における制御を説明する。入口側コントローラ91は、
入口側差圧計81で計測された差圧(PV)が設定値(SV=±0Pa)よりも小さい場合(すなわち、圧力制御ゾーン23の入口側の圧力<再生ゾーン21の入口側の圧力)、入口側ダンパ71の開度が大きくなるように制御する。これにより、入口側の差圧(PV)が入口側の設定値(SV=±0Pa)に近づいてゆく。また、入口側ダンパ71の開度が最大であり、なお入口側の差圧(PV)が入口側の設定値(SV=±0Pa)を下回っている場合には、入口側ファン61のインバータ出力周波数が上がるように制御される。この結果、入口側の差圧(PV)が入口側の制御目標値である設定値(SV=±0Pa)にさらに近づいてゆく。
【0052】
一方、入口側差圧計81で計測された差圧(PV)が設定値(SV=±0Pa)よりも大きい場合(すなわち、圧力制御ゾーン23の入口側の圧力>再生ゾーン21の入口側の圧力)、入口側ファン61のインバータ出力周波数が下がるように制御される。これにより、入口側の差圧(PV)が入口側の設定値(SV=±0Pa)に近づいてゆく。また、入口側ファン61のインバータ出力周波数が下限値(例えば、20Hz)であり、なお入口側の差圧(PV)が入口側の設定値(SV=±0Pa)を上回っている場合には、入口側ダンパ71の開度が閉じるように制御される。この結果、入口側の差圧(PV)が入口側の設定値(SV=±0Pa)にさらに近づいてゆく。
【0053】
図6(a)に示されるように、入口側の差圧(PV)が入口側の設定値(SV=±0Pa)よりも小さい場合(すなわち、圧力制御ゾーン23の入口側の圧力<再生ゾーン21の入口側の圧力)、入口側ダンパ71の開度が大きくなるように制御される。また、入口側の差圧(PV)が入口側の設定値(SV=±0Pa)よりも大きい場合(すなわち、圧力制御ゾーン23の入口側の圧力>再生ゾーン21の入口側の圧力)、入口側ファン61のインバータ出力周波数が下がるように制御される。このように本実施形態では、入口側コントローラ91による入口側ファン61および入口側ダンパ71の制御により、入口側差圧計81で計測された差圧(PV)が設定値(SV=±0Pa)となるように制御される。
【0054】
次に、出口側コントローラ92における制御を説明する。出口側コントローラ92は、出口側差圧計82で計測された差圧(PV)が設定値(SV=100Pa)よりも小さい場合(圧力制御ゾーン23の出口側の圧力<再生ゾーン21の出口側の圧力)、出口側ファン62のインバータ出力周波数が下がるように制御する。これにより、出口側の差圧(PV)が出口側の設定値(SV=100Pa)に近づいてゆく。また、出口側ファン62のインバータ出力周波数が下限値(例えば、20Hz)であり、なお出口側の差圧(PV)が出口側の設定値(SV=100Pa)を下回っている場合、出口側ダンパ72の開度が閉じるように制御される。その結果、出口側の差圧(PV)が出口側の設定値(SV=100Pa)にさらに近づいてゆく。
【0055】
一方、出口側の差圧(PV)が出口側の設定値(SV=100Pa)よりも大きい場合(すなわち、圧力制御ゾーン23の出口側の圧力>再生ゾーン21の出口側の圧力)、出口側ダンパ72の開度が大きくなるように制御される。これにより、出口側の差圧(PV)が出口側の設定値(SV=100Pa)に近づいてゆく。また、出口側ダンパ72の開度が最大であり、なお出口側の差圧(PV)が出口側の設定値(SV=100Pa)を上回っている場合、出口側ファン62のインバータ出力周波数が上がるように制御される。その結果、出口側の差圧(PV)が出口側の設定値(SV=100Pa)にさらに近づいてゆく。
【0056】
図6(b)に示されるように、出口側の差圧(PV)が出口側の設定値(SV=±0)よりも小さい場合(すなわち、圧力制御ゾーン23の出口側の圧力<再生ゾーン21の出口側の圧力)、出口側ファン62のインバータ出力周波数が下がるように制御される。ま
た、出口側の差圧(PV)が出口側の設定値(SV=±0)よりも大きい場合(すなわち、圧力制御ゾーン23の出口側の圧力>再生ゾーン21の出口側の圧力)、出口側ダンパ72の開度が大きくなるように制御される。このように、本実施形態では、出口側コントローラ92による出口側ファン62および出口側ダンパ72の制御により、出口側差圧計82で計測された差圧(PV)が設定値(SV=100Pa)となるように制御される。
【0057】
以上説明したように、本実施形態においては、ロータ2の回転方向に、圧力制御ゾーン23→再生ゾーン21と位置する側の圧力制御ゾーン23においては、再生ゾーン21よりも圧力制御ゾーン23の圧力を低くするように制御する構成を採用した。また、ロータ2の回転方向に、再生ゾーン21→圧力制御ゾーン23と位置する側の圧力制御ゾーン23においては、再生ゾーン21と圧力制御ゾーン23との間の圧力差がゼロになるように制御する構成を採用した。なお、本実施形態に係る気体制御装置1で実行される制御方法は、ロータを用いた二流体混合防止方法ということもできる。
【0058】
これにより、本実施形態に係る気体制御装置1は、ロータ2の回転方向に、圧力制御ゾーン23→再生ゾーン21と位置する側の圧力制御ゾーン23においては、再生ゾーン21側から圧力制御ゾーン23側へ意図的に再生気体をリークできる。リークされた再生気体は、ロータ内部に流入された処理気体をパージ(置換)するため、圧力制御ゾーン23内は再生気体に関してガスリッチな状態にすることができる。ロータ内では、処理気体の流入量は相対的に減少することになり、ロータ2はガスリッチ状態を維持しながら再生ゾーン21に入るため、処理気体を希釈するための再生気体量が削減可能になる。
【0059】
また、本実施形態に係る気体制御装置1は、ロータ2の回転方向に、再生ゾーン21→圧力制御ゾーン23と位置する側の圧力制御ゾーン23においては、圧力制御ゾーン23と再生ゾーン21との圧力を等しくできる。このため、仮に処理ゾーン22から圧力制御ゾーン23に処理気体が漏れても、当該圧力制御ゾーンから再生ゾーン21への処理気体の漏れは抑制できる。したがって、処理ゾーン22と再生ゾーン21との間での気体の混合が抑制される。
【0060】
本実施形態に係る気体制御装置1においては、気体が流通するロータ式の気体制御装置の、再生系統への処理気体の流入防止と、再生系統を機能させる再生気体の系外への流出抑止とが両立可能になる。
【符号の説明】
【0061】
1・・気体制御装置
2・・ロータ
10、11・・チャンバ
21・・再生ゾーン
22・・処理ゾーン
23・・圧力制御ゾーン
51・・再生通気路
52・・処理通気路
53・・圧力制御用通気路
61・・入口側ファン
62・・出口側ファン
71・・入口側ダンパ
72・・出口側ダンパ
81・・入口側差圧計
82・・出口側差圧計
91・・入口側コントローラ
92・・出口側コントローラ