(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055042
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20240411BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20240411BHJP
H01L 23/40 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H01L23/12 Z
H01L23/02 B
H01L23/40 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161628
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 順弘
(72)【発明者】
【氏名】椀澤 光伸
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BB18
5F136EA23
(57)【要約】
【課題】半導体装置の性能を向上させる。
【解決手段】一実施の形態に係る半導体装置PKG1は、コア絶縁層を有する配線基板SUB1と、配線基板SUB1の上面2tに搭載された半導体チップCHP1と、配線基板SUB1の下面に形成された複数の半田ボールと、接着層BND1を介して半導体チップCHP1の裏面3bに固定された部分LIDp1、および部分LIDp1の周囲に位置し、且つ、接着層BND2を介して配線基板SUB1に固定された部分LIDp2を有する放熱板LIDと、を含でいる。複数の半田ボールのうちの一部は、部分LIDp2および接着層BND2と重畳する位置に配置されている。接着層BND2の厚さT2は、接着層BND1の厚さT1の2倍よりも大きい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、前記上面とは反対側の下面、および前記上面と前記下面との間に位置するコア絶縁層を有する配線基板と、
第1面、前記第1面上に形成された複数の突起電極、および前記第1面とは反対側の第2面を有し、前記第1面が前記配線基板の前記上面と対向するように、前記複数の突起電極を介して前記配線基板上に搭載された半導体チップと、
前記配線基板の前記下面に形成された複数の半田ボールと、
第1接着層を介して前記半導体チップの前記第2面に固定された第1部分、および前記第1部分の周囲に位置し、且つ、第2接着層を介して前記配線基板に固定された第2部分を有する放熱板と、
を含み、
透過平面視において、前記複数の半田ボールのうちの一部は、前記放熱板の前記第2部分および前記第2接着層と重畳する位置に配置されており、
前記第1接着層および前記第2接着層のそれぞれは、互いに同じ種類のフィラを含み、
前記第1接着層のうちの前記放熱板との接触面から、前記第1接着層のうちの前記半導体チップの前記第2面との接触面までの最短距離を第1厚さとし、
前記第2接着層のうちの前記放熱板の前記第2部分との接触面から、前記第2接着層のうちの前記配線基板の前記上面との接触面までの最短距離を第2厚さとすると、
前記第2接着層の前記第2厚さは、前記第1厚さの2倍より大きい、半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2接着層の前記第2厚さは、前記放熱板の前記第1部分から前記配線基板の前記上面までの最短距離以下である、半導体装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記放熱板は、
前記第1接着層を介して前記半導体チップの前記第2面と対向する第1下面と、
前記第2接着層を介して前記配線基板の前記上面と対向する第2下面と、
を有し、
前記第2下面から前記配線基板までの最短距離は、前記第1下面から前記配線基板の前記上面までの最短距離よりも短い、半導体装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記第2接着層の前記第2厚さは、前記第1厚さの5倍以下である、半導体装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記第1接着層および前記第2接着層のそれぞれは、アルミナフィラを含んでいる、半導体装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記第1接着層および前記第2接着層のそれぞれの貯蔵弾性率は、0より大きく、かつ、200MPa(メガパスカル)以下である、半導体装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記放熱板は、前記第1部分の厚さと前記第2部分の厚さとが同じであり、
前記放熱板の前記第1部分の厚さは、前記配線基板の前記コア絶縁層の厚さよりも厚く、かつ、前記半導体チップの厚さよりも厚い、半導体装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記配線基板は、平面視において四角形を成し、前記配線基板の四辺のそれぞれの長さは20mm以上である、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板上にフリップチップ実装方式で半導体チップが搭載された半導体装置において、配線基板上に半導体チップを覆う放熱板(リッド)が接着固定された半導体装置がある(例えば、特許文献1(特開2020-4821号公報)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体チップを覆うように放熱板を設ける場合、半導体チップと放熱板とは放熱経路として機能する接着層(チップ接着層)を介して接着される。また、配線基板上に放熱板を固定するため、放熱板の周縁部(フランジ部)は配線基板上に接着層(フランジ接着層)を介して接着固定される。配線基板のチップ搭載面の反対側には外部端子としての複数の半田ボールが配列される。本願発明者の検討によれば、半導体装置の使用時の温度サイクル負荷に起因して、複数の半田ボールの一部に応力が集中し、半田ボールに破断(クラック)が発生する場合があることが判った。半田ボールの破断は、複数の半田ボールのうち、透過平面視においてフランジ接着層と重畳する位置に配置される半田ボールに発生し易いことが判った。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態に係る半導体装置は、コア絶縁層を有する配線基板と、上記配線基板の上面に搭載された半導体チップと、上記配線基板の下面に形成された複数の半田ボールと、第1接着層を介して半導体チップの裏面に固定された第1部分、および上記第1部分の周囲に位置し、且つ、第2接着層を介して配線基板に固定された第2部分を有する放熱板と、を含んでいる。上記複数の半田ボールのうちの一部は、上記第2部分および上記第2接着層と重畳する位置に配置されている。上記第2接着層の第2厚さは、上記第1接着層の第1厚さの2倍よりも大きい。
【発明の効果】
【0007】
上記一実施の形態によれば、半導体装置の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図1に示す放熱板を取り除いた状態で配線基板上の半導体装置の内部構造を示す平面図である。
【
図5】
図4に示す放熱板に接着された接着層の周辺を拡大して示す拡大断面図である。
【
図6】放熱板のフランジ部を接着固定する接着層の厚さと、製品寿命との相関関係を示す説明図である。
【
図7】
図1の放熱板に対する変形例である放熱板を備えた半導体装置を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本願における記載形式・基本的用語・用法の説明)
本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクション等に分けて記載するが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、記載の前後を問わず、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しの説明を省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0010】
同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を含むものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe(シリコン・ゲルマニウム)合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。また、金めっき、Cu層、ニッケル・めっき等といっても、そうでない旨、特に明示した場合を除き、純粋なものだけでなく、それぞれ金、Cu、ニッケル等を主要な成分とする部材を含むものとする。
【0011】
さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0012】
また、実施の形態の各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0013】
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するため、あるいは領域の境界を明示するために、ハッチングやドットパターンを付すことがある。
【0014】
また、以下の説明において、グランドプレーン、あるいは電源プレーンという用語を用いる場合がある。グランドプレーンおよび電源プレーンは、所謂配線パターンとは形状が異なる大面積の導体パターンである。大面積の導体パターンのうち、基準電位が供給されるものをグランドプレーンと呼び、電源電位が供給されるものを電源プレーンと呼ぶ。
【0015】
<半導体装置>
図1は、一実施の形態である半導体装置の上面図である。
図2は、
図1に示す半導体装置の下面図である。また、
図3は、
図1に示す放熱板を取り除いた状態で配線基板上の半導体装置の内部構造を示す平面図である。また、
図4は、
図1のA-A線に沿った断面図である。
図1では、放熱板LIDに覆われた半導体チップCHP1の輪郭を点線で示している。
図2は、平面図であるが、半田ボールSBのレイアウトと、
図1に示す放熱板LIDの部分LIDp2との位置関係を明示するため、部分LIDp2および接着層BND2とそれぞれ重畳する領域にハッチングを付して示している。
【0016】
本実施の形態の半導体装置PKG1は、配線基板SUB1と、配線基板SUB1に搭載された半導体チップCHP1(
図3参照)と、を有する。また、半導体装置PKG1は、半導体チップCHP1上に配置された接着層BND1と、半導体チップCHP1の全体、接着層BND1の全体、および配線基板SUB1の一部分を覆う放熱板LIDと、を有する。
【0017】
近年、半導体装置の高機能化に伴って、動作中の主な熱源となる半導体チップからの放熱対策が重要である。本実施の形態の半導体装置PKG1の場合も、半導体チップCHP1の動作を安定させる観点から、半導体チップCHP1の温度が過度に上昇しないことが好ましい。このため、半導体チップCHP1で発生する熱を効率的に外部に放出することが好ましい。半導体装置PKG1の場合、接着層BND1を介して半導体チップCHP1と放熱板LIDとが熱的に接続されているので、半導体チップCHP1で発生する熱の放出特性を向上させることができる。放熱板LIDは、例えば、配線基板SUB1よりも熱伝導率が高い金属板であって、半導体チップCHP1で発生した熱を外部に排出する機能を備えている。
【0018】
図4に示すように、放熱板LIDは、配線基板SUB1上に接着層BND2を介して接着固定されている。放熱板LIDは、接着層(チップ接着層)BND1を介して半導体チップCHP1の裏面3bに固定された部分(中央部)LIDp1と、部分LIDp1の周囲に位置し、且つ、接着層(フランジ接着層)BND2を介して配線基板SUB1に固定された部分(周辺部、フランジ部)LIDp2と、を有する。なお、以下の説明において、部分LIDp1は、放熱板LIDのうち、半導体チップCHP1と重畳する部分として定義される。
図4に示す例の場合、部分LIDp2は、放熱板LIDのうち、部分LIDp1と比較してダウンセットされた部分(言い換えれば、配線基板SUB1の上面2tを基準面として、部分LIDp1よりも低い位置に配置され、かつ、部分LIDp1と平行な平面方向に延びている部分)として定義される。放熱板LIDは、上面LIDtおよび上面LIDtの反対側の下面LIDbを有している。部分LIDp2における下面LIDbは、接着層BND2に接着された被接着面に相当する。
図4に示す例では、部分LIDp2の下面LIDbの全体が接着層BND2と重畳している。ただし、部分LIDp2の下面LIDbの一部が接着層BND2と重畳していない場合がある。この場合、重畳しない部分も、上記した部分LIDp2に含まれる。
【0019】
なお、
図4に対する変形例として、放熱板LIDがダウンセットされていない場合がある。この場合、部分LIDp2は、放熱板LIDのうち、接着層BND2と重畳する部分として定義される。
【0020】
また、
図4に対する他の変形例として、放熱板LIDの周縁のフランジ部が、部分LIDp1よりも高い位置にアップセットされている場合がある。この場合、部分LIDp2は、放熱板LIDのうち、部分LIDp1と比較してアップセットされた部分(言い換えれば、配線基板SUB1の上面2tを基準面として、部分LIDp1よりも高い位置に配置され、かつ、部分LIDp1と平行な平面方向に延びている部分)として定義される。
【0021】
本実施の形態の場合、配線基板SUB1の上面2tを基準面とすると、放熱板LIDの部分LIDp1の高さと、部分LIDp2の高さとは互いに異なる。
図4の例では、部分LIDp2は部分LIDp1よりも配線基板SUB1の上面2tに近い高さに配置されている。言い換えれば、放熱板LIDの部分LIDp2は、部分LIDp1に対してオフセット(
図4の例ではダウンセット)されている。このため、本実施の形態の場合、放熱板LIDは、部分LIDp1と部分LIDp2との間に配置され、かつ、曲げ加工が施された部分(部、曲げ加工部、傾斜部)LIDp3を備えている。また、本実施の形態の場合、放熱板LIDは、部分LIDp1と部分LIDp3との間に配置された部分LIDp4を備えている。
図4に示すように、部分LIDp4は、半導体チップCHP1と重畳せず、かつ、配線基板SUB1の上面2tを基準面として部分LIDp1と同じ高さで部分LIDp1と部分LIDp3とを接続するように延びている。
【0022】
配線基板SUB1は、半導体チップCHP1が搭載された上面(面、主面、チップ搭載面)2t、上面2tとは反対側の下面(面、主面、実装面)2bを有する。また、配線基板SUB1の上面2tおよび下面2bのそれぞれは、外縁に複数の辺2s(
図1~
図3参照)を有する。本実施の形態の場合、配線基板SUB1の上面2t(
図1参照)および下面2b(
図2参照)はそれぞれ四角形である。上面2tは、半導体チップCHP1の表面3tと対向するチップ搭載面である。本実施の形態の場合、配線基板SUB1の四辺のそれぞれの長さは20mm以上である。以下で詳述する複数の半田ボールSBの一部に破断が生じる課題は、比較的大型の半導体装置において顕在化し易い。以下で説明する半導体装置PKG1の構造は、配線基板SUB1の四辺のそれぞれの長さが20mm未満である半導体装置に適用することもできる。ただし、複数の半田ボールSBの一部に破断が生じる課題が生じやすいという課題が発生し易いという点において、四辺のそれぞれの長さは20mm以上である半導体装置PKG1に適用して特に有効である。
【0023】
配線基板SUB1は、チップ搭載面である上面2t側の端子(パッド2PD)と実装面である下面2b側の端子(ランド2LD)とを電気的に接続する複数の配線層(
図4に示す例では4層)WL1、WL2、WL3、およびWL4を有する。各配線層は、上面2tと下面2bとの間にある。各配線層は、電気信号や電力を供給する経路である配線などの導体パターンを有する。また各配線層の間には、絶縁層2eが配置されている。各配線層の間に配置される複数の絶縁層2eは、上面2tと下面2bとの間に配置されたコア絶縁層(絶縁層、コア材、コア絶縁層)2CRを含む。コア絶縁層2CRは、配線基板SUB1の剛性を確保するためのコア部材であって、例えば、ガラス繊維に樹脂を含浸させたプリプレグからなる。
【0024】
各配線層は、絶縁層2eを貫通する層間導電路であるビア配線2v、あるいはスルーホール配線2THWを介して互いに、かつ、電気的に接続されている。なお、本実施の形態では、配線基板SUB1の一例として4層の配線層を備える配線基板を例示しているが、配線基板SUB1が備える配線層の数は4層には限定されない。例えば3層以下、あるいは5層以上の配線層を備える配線基板を変形例として用いることができる。
【0025】
また、複数の配線層のうち、最も上面2t側に配置された配線層WL1は、有機絶縁膜SR1に覆われる。有機絶縁膜SR1には、開口部が設けられ、配線層WL1に設けられた複数のパッド2PDは、開口部において、有機絶縁膜SR1から露出している。また、複数の配線層のうち、配線基板SUB1の下面2b側に最も近い位置に配置された配線層WL4には、複数のランド2LDが設けられる、配線層WL4は、有機絶縁膜SR2に覆われる。有機絶縁膜SR1および有機絶縁膜SR2のそれぞれは、ソルダレジスト膜である。配線層WL1に設けられる複数のパッド2PDと、配線層WL4に設けられる複数のランド2LDのそれぞれは、配線基板SUB1が備える各配線層に形成された導体パターン(配線2dや大面積の導体パターン2CP)、ビア配線2v、およびスルーホール配線2THWを介して電気的に接続されている。
【0026】
配線2d、パッド2PD、ビア配線2v、ビアランド(図示は省略)、スルーホールランド(図示は省略)、スルーホール配線2THW、ランド2LD、および導体パターン2CPのそれぞれは、例えば銅または銅を主成分とする金属材料から成る。
【0027】
また、配線基板SUB1は、例えば、コア絶縁層(絶縁層、コア材、コア絶縁層)2CRの上面2Ctおよび下面2Cbに、それぞれ複数の配線層をビルドアップ工法により積層することで、形成されている。また、コア絶縁層2CRの上面2Ct側にある配線層WL2と下面2Cb側にある配線層WL3とは、上面2Ctと下面2Cbのうちの一方から他方までを貫通するように設けられた複数の貫通孔(スルーホール)に埋め込まれた、複数のスルーホール配線2THWを介して電気的に接続されている。
【0028】
また、
図4に示す例では、複数のランド2LDのそれぞれには、半田ボール(半田材、外部端子、電極、外部電極)SBが接続されている。半田ボールSBは、半導体装置PKG1を図示しないマザーボードに実装する際に、マザーボード側の複数の端子(図示は省略)と複数のランド2LDを電気的に接続する、導電性部材である。半田ボールSBは、例えば、鉛(Pb)入りのSn-Pb半田材、あるいは、Pbを実質的に含まない、所謂、鉛フリー半田からなる半田材である。鉛フリー半田の例としては、例えば錫(Sn)のみ、錫-ビスマス(Sn-Bi)、または錫-銅-銀(Sn-Cu-Ag)、錫-銅(Sn-Cu)などが挙げられる。ここで、鉛フリー半田とは、鉛(Pb)の含有量が0.1wt%以下のものを意味し、この含有量は、RoHS(Restriction of Hazardous Substances)指令の基準として定められている。
【0029】
また、
図2に示すように複数の半田ボールSBは、行列状(アレイ状、マトリクス状)に配置されている。また、
図2では図示を省略するが、複数の半田ボールSBが接合された複数のランド2LD(
図4参照)も行列状(マトリクス状)に配置されている。このように、配線基板SUB1の実装面側に、複数の外部端子(半田ボールSB、ランド2LD)を行列状に配置する半導体装置を、エリアアレイ型の半導体装置と呼ぶ。エリアアレイ型の半導体装置は、配線基板SUB1の実装面(下面2b)側を、外部端子の配置スペースとして有効活用することができるので、外部端子数が増大しても半導体装置の実装面積の増大を抑制することが出来る点で好ましい。つまり、高機能化、高集積化に伴って、外部端子数が増大する半導体装置を省スペースで実装することができる。
【0030】
また、半導体装置PKG1は、配線基板SUB1上に搭載された半導体チップCHP1を備えている。
図4に示すように、半導体チップCHP1のそれぞれは、複数の突起電極3BPが配列された表面(主面、上面)3t、表面3tとは反対側の裏面(主面、下面)3bを備える。また半導体チップCHP1の表面3tおよび裏面3bのそれぞれは、外縁部に複数の辺3sを備える。半導体チップCHP1は、
図3に示すように平面視において配線基板SUB1よりも平面積が小さい四角形の外形形状を成す。
図3に示す例では、半導体チップCHP1が配線基板SUB1の上面2tの中央部に搭載され、かつ、半導体チップCHP1の4個の辺3sのそれぞれが、配線基板SUB1の4個の辺2sのそれぞれに沿って延びている。
【0031】
また、半導体チップCHP1の表面3t側には、複数の電極(パッド、電極パッド、ボンディングパッド)3PDが形成されている。
図4に示す例では、半導体チップCHP1は、表面3tが配線基板SUB1の上面2tと対向した状態で、配線基板SUB1上に搭載されている。このような搭載方式は、フェイスダウン実装方式、あるいはフリップチップ接続方式と呼ばれる。
【0032】
図示は省略するが、半導体チップCHP1の主面(詳しくは、半導体チップCHP1の基材である半導体基板の素子形成面に設けられた半導体素子形成領域)には、複数の半導体素子(回路素子)が形成されている。複数の電極3PDは、半導体チップCHP1の内部(詳しくは、表面3tと図示しない半導体素子形成領域の間)に配置された配線層に形成された配線(図示は省略)を介して、この複数の半導体素子と、それぞれ電気的に接続されている。
【0033】
半導体チップCHP1(詳しくは、半導体チップCHP1の基材)は、例えばシリコン(Si)から成る。また、表面3tには、半導体チップCHP1の基材および配線を覆う絶縁膜(図示しないパッシベーション膜)が形成されており、複数の電極3PDのそれぞれの一部は、このパッシベーション膜に形成された開口部において、パッシベーション膜から露出している。また、複数の電極3PDは、それぞれ金属からなり、本実施の形態では、例えばアルミニウム(Al)からなる。
【0034】
また、
図4に示すように、複数の電極3PDにはそれぞれ突起電極3BPが接続され、半導体チップCHP1の複数の電極3PDと、配線基板SUB1の複数のパッド2PDとは、複数の突起電極3BPを介して、それぞれ電気的に接続されている。突起電極(バンプ電極)3BPは、半導体チップCHP1の表面3t上に突出するように形成された金属部材(導電性部材)である。突起電極3BPは、本実施の形態では、電極3PD上に、例えば銅から成る柱状電極(所謂カッパーピラー電極)が形成され、柱状電極の先端に半田材が積層された構造を備える。柱状電極の先端に積層された半田材としては、上記した半田ボールSBと同様に、鉛入りの半田材や鉛フリー半田を用いることができる。
【0035】
半導体チップCHP1を配線基板SUB1に搭載する際には、複数のパッド2PDに半田との接合性が良好な接合材(例えば下地金属膜や半田ペースト)を予め形成しておく。柱状電極の先端の半田材とパッド2PD上の接合材とを接触させた状態で加熱処理(リフロー処理)を施すことで、半田が一体化して、突起電極3BPが形成されている。また、本実施の形態に対する変形例としては、ニッケル(Ni)からなる柱状電極、あるいは電極3PD上に下地金属膜を介してマイクロ半田ボールが形成された、所謂半田バンプを突起電極3BPとして用いてもよい。
【0036】
また、
図4に示すように半導体チップCHP1と配線基板SUB1の間には、アンダフィル樹脂(絶縁性樹脂)UFが配置されている。アンダフィル樹脂UFは、半導体チップCHP1の表面3tと配線基板SUB1の上面2tの間の空間を塞ぐように配置されている。複数の突起電極3BPのそれぞれはアンダフィル樹脂UFにより封止されている。また、アンダフィル樹脂UFは、絶縁性(非導電性)の材料(例えば樹脂材料)から成り、半導体チップCHP1と配線基板SUB1の電気的接続部分(複数の突起電極3BPの接合部)を封止するように配置されている。このように、複数の突起電極3BPと複数のパッド2PDとの接合部をアンダフィル樹脂UFで覆うことで、半導体チップCHP1と配線基板SUB1の電気的接続部分に生じる応力を緩和させることができる。また、半導体チップCHP1の複数の電極3PDと複数の突起電極3BPとの接合部に生じる応力についても緩和させることができる。さらには、半導体チップCHP1の半導体素子(回路素子)が形成された主面を保護することもできる。
【0037】
また、上記したように半導体チップCHP1の裏面3bには、放熱板(リッド、ヒートスプレッダ、放熱部材)LIDが接着層BND1を介して接着固定されている。放熱板LIDは、接着層BND1を介して半導体チップCHP1と熱的に接続されている。接着層
BND1は、半導体チップCHP1および放熱板LIDのそれぞれと接触している。
【0038】
<半田ボールの破断について>
上記したように、エリアアレイ型の半導体装置は、配線基板SUB1の実装面(下面2b)側に多数の半田ボールSBを配列することにより、多数の外部端子を備えた半導体装置の実装スペースを小さくできる。このため、
図2に示すように、配線基板SUB1の下面2bの広範囲にわたって多数の半田ボールSBが配列されている。詳しくは、透過平面視において(
図2は半導体装置PKG1を下面2b側から視た透過平面図である)、複数の半田ボールSBのうちの一部は、部分LIDp2および接着層BND2(
図4参照)とそれぞれ重畳する位置に配置されている。
【0039】
図1に示すように放熱板LIDの部分LIDp2は、配線基板SUB1の周辺領域に配置されている。
図2に示す配線基板SUB1の下面2bにおいて、周辺領域には、多くの半田ボールSBを配置することができる。このため、この周辺領域に多数の半田ボールSBを配置することで外部端子数を多くすることができる。また、周辺領域に配置された半田ボールを含む伝送経路は、図示しない実装基板(マザーボード)において、最上層または第2層目の配線層に配置された配線に容易に接続させることができる。このため、高周波信号等、伝送経路の特性インピーダンスを設計値にそろえる必要がある電気信号の信号伝送経路を構成する半田ボールSBは、配線基板SUB1の周辺領域に配置されることが多い。
【0040】
本願発明者の検討によれば、放熱板LIDが配線基板SUB1および半導体チップCHP1のそれぞれに接着固定されたエリアアレイ型の半導体装置において、部分LIDp2および接着層BND2とそれぞれ重畳する位置に配置された半田ボールSBの一部において、半導体装置の使用時の温度サイクル負荷に起因して、破断が発生する場合があることが判った。半田ボールに破断が生じた場合、電気的な接続信頼性の低下の原因になる。逆に言えば、破断が発生するまでに印加される温度サイクル負荷の回数(言い換えればサイクル数)を多くすることにより、半導体装置の製品寿命を長くすることができる。
【0041】
部分LIDp2および接着層BND2とそれぞれ重畳する領域に配置された半田ボールSBに破断が生じるという課題は、放熱板LIDと配線基板SUB1との線膨張係数の差が大きいことが原因の一つと考えられる。線膨張係数の差が大きい二つの部材を接着固定した場合、温度サイクル負荷が印加されると、温度サイクル負荷に起因して大きな応力が発生する。したがって、放熱板LIDと配線基板SUB1との線膨張係数の差を小さくすることができれば、これに比例して応力を小さくすることができるので、製品寿命を延ばすことができる。ただし、放熱板LIDの放熱部材としての機能を発揮させるためには、放熱板LIDの材料選択は、放熱特性を優先して実施される必要がある。一方、配線基板SUB1の材料や構造を限定すれば、配線レイアウト等の設計の自由度が低下する原因になる。
【0042】
そこで、本願発明者は、放熱板LIDと配線基板SUB1とを接着する接着層BND2に着目し、温度サイクル負荷により発生した応力を、この接着層BND2により緩和させる方法について検討を行った。ただし、半導体装置PKG1の製造工程を考慮すると、
図4に示す放熱板LIDの部分LIDp1およびLIDp2は、同じタイミングで半導体チップCHP1または配線基板SUB1に接着される必要がある。また、接着層BND1と接着層BND2とにそれぞれ異なる接着材料を用いた場合、放熱板LIDを接着させる工程の作業が煩雑になる。このため、接着層BND1と接着層BND2とは、同じ材料から成る。
【0043】
例えば、
図5に示すように、接着層BND1は、接着機能を備えた樹脂R1中に含まれる複数のフィラF1を含んでいる。
図5は、
図4に示す放熱板に接着された接着層の周辺を拡大して示す拡大断面図である。フィラF1は、例えば金属酸化物であるアルミナフィラを含んでいる。アルミナフィラは、接着層BND1に含まれる樹脂と比較して熱伝導率が高い絶縁粒子である。接着層BND1にアルミナフィラを含む複数のフィラF1を含有させることで、接着層BND1の放熱特性を向上させることができる。複数のフィラF1は、全てがアルミナフィラである場合もあるが、アルミナフィラとは異なる粒子を含んでいる場合もある。接着層BND2には、接着層BND1のような放熱性は要求されないが、本実施の形態の場合、接着層BND1と接着層BND2とは、互いに同じ材料から成るので、接着層BND1および接着層BND2には、それぞれ同じ種類のフィラF1が含まれている。
【0044】
このように、接着層BND1と接着層BND2とを同じ材料により構成する場合、接着層BND1の放熱機能を損なわない範囲で接着層BND1および接着層BND2の材料を選択する必要がある。したがって、接着層BND1および接着層BND2の材料として、極端に柔らかい材料を適用して応力緩和機能を向上させることは難しい。言い換えれば、接着層の物性を制御することのみにより半田ボールSBの損傷を防止することは難しい。
【0045】
本願発明者が検討を行った結果、接着層BND2の厚さを厚くすることにより、接着層BND2の応力緩和機能を向上させられることが判った。接着層BND1は、放熱板LIDとの接触面B1t、および半導体チップCHP1の裏面3bとの接触面B1bの一方から他方までの最短距離である厚さT1を有している。接着層BND2は、放熱板LIDの部分LIDp2との接触面B2t、および配線基板SUB1の上面2tとの接触面B2bの一方から他方までの最短距離である厚さT2を有している。厚さT2は、厚さT1の2倍より大きい。
【0046】
接着層BND1を介した放熱経路における放熱効率は、接着層BND1の厚さT1に反比例する。このため、厚さT1は、薄い方が好ましく、例えば50μmである。一方、接着層BND2の厚さT2を厚くすることにより、上記した温度サイクル負荷に起因して生じる応力を接着層BND2により緩和させることができる。厚さT2は少なくとも厚T1の2倍(例えば100μm)よりも大きいことが好ましく、3倍(例えば150μm)以上が特に好ましい。この場合、接着層BND1の放熱特性を優先して接着層BND1および接着層BND2の材料を選択したとしても、製品寿命を延ばすことができる。
【0047】
図5に示す例の寸法例は、例えば以下の通りである。厚さT1は、上記の通り例えば50μmである。表面3tおよび裏面3bの一方から他方までの距離として定義される半導体チップCHP1の厚さTCH1は、例えば400μmである。また、半導体チップCHP1の表面3tと配線基板SUB1の上面2tとの最短距離として定義されるギャップG1は、例えば75μmである。放熱板LIDの厚さTL1は、例えば500μmである。本実施の形態の場合、部分LIDp1の厚さTL1と部分LIDp2の厚さTL1とは同じである。
【0048】
また、本実施の形態の場合、放熱板LIDは、部分LIDp1と部分LIDp2との間に、曲げ加工が施された曲げ加工部としての部分LIDp3を有している。
図4および
図5に示す放熱板LIDの構造は以下のように表現することもできる。放熱板LIDの下面LIDbは、部分LIDp1の下面LIDb1と、部分LIDp2の下面LIDb2とを有している。下面LIDb1は、接着層BND1を介して半導体チップCHP1と対向し、下面LIDb2は、接着層BND2を介して配線基板SUB1の上面2tと対向している。部分LIDp2の下面LIDb2から配線基板SUB1の上面2tまでの最短距離は、部分LIDp1の下面LIDb1から配線基板SUB1の上面2tまでの最短距離よりも短い。
【0049】
曲げ加工の程度、言い換えれば、部分LIDp1の下面LIDb1と部分LIDp2の下面LIDb2との高低差G2は、例えば350μm程度である。この場合、接触面B2tおよび接触面B2bの一方から他方までの最短距離として定義される接着層BND2の厚さT2は、175μmである。なお、配線基板SUB1には、製造工程時の熱影響(例えば、半導体チップCHP1を配線基板SUB1上に搭載する際のリフロー工程等)により上面2tの中央領域が半導体チップCHP1方向に凸な形状を成す「反り変形」が生じる場合がある。この反り変形を考慮すると、接触面B2tおよび接触面B2bの一方から他方までの距離は一定にならず、周縁部に近づく程大きくなる場合がある。この場合、部分LIDp2および接着層BND2とそれぞれ重畳する領域における接触面B2tおよび接触面B2bの一方から他方までの距離の平均値は、200μm程度である。
【0050】
<接着層の厚さと製品寿命との関係の評価>
次に、接着層BND2の厚さT2を厚くすることによる製品寿命の延長効果に関し、本願発明者が検討した結果について説明する。
図6は、放熱板のフランジ部を接着固定する接着層の厚さと、製品寿命との相関関係を示す説明図である。
図6において、横軸は、
図5に示す厚さT2の値である。縦軸は製品寿命の指標として、
図4に示す部分LIDp2および接着層BND2とそれぞれ重畳する位置に配置された半田ボールSBに破断が発見されるまでの温度サイクル負荷の回数である。また、
図6には、接着層BND2(
図5参照)の接着材料として、2種類の材料を用いた評価結果を示している。
【0051】
実線で示す試験区は、
図5に示す接着層BND1の材料として用いた場合に放熱特性の要求仕様を満たす接着材料を用いて試験した結果を示している。点線で示す試験区は、実線で示す試験区の接着材料と比較して0℃の貯蔵弾性率が相対的に低い接着材料を用いて試験した結果を示している。なお、点線で示す試験区に用いた接着材料の場合、
図5に示す接着層BND1の接着材料として用いた場合(厚さT1は50μm)、放熱性能が目標値に達しないため接着層BND1と接着層BND2とは別の材料にする必要があるが、実線で示す試験区の試験結果の目安として記載している。例えば、本願発明者が後述する測定方法により実際に計測した値では、実線の試験区に用いた接着材料の0℃での貯蔵弾性率は132MPa(メガパスカル)、点線線の試験区に用いた接着材料の0℃での貯蔵弾性率は11.1MPa(メガパスカル)であった。
【0052】
図6に示す評価結果を計測する際に用いた半導体装置の仕様は以下の通りである。すなわち、
図5に示す厚さT1は50μm、厚さTCH1は400μm、ギャップG1は、75μm、そして、厚さTL1は、500μmである。また、厚さT2の値は、高低差G2の値を変化させることにより調整した。また、
図3に示す配線基板SUB1の4つの辺2sのそれぞれの長さは25mmである。半導体チップCHP1の表面3tの四辺のそれぞれの長さは、約10mmである。また、
図4に示す配線基板SUB1の厚さ(すなわち上面2tおよび下面2bの一方から他方までの距離)は、580μm程度である。
【0053】
図6に示すように、実線の試験区および点線の試験区のそれぞれにおいて、接着層BND2の厚さT2の値に比例して製品寿命を延長できることが判る。実線の試験区において、半田ボールSBの破断が発生するまでに印加した温度サイクル負荷の回数は、
図5に示す厚さT2の値が厚さT1の値の2倍(100μm)の時に2千サイクル程度、3倍(150μm)の時に3千サイクル程度であった。半田ボールSBの破断が発生するまでに印加した温度サイクル負荷の回数の目標値を2千サイクルとすると、厚さT2の値が厚さT1の値の2倍よりも大きければ、実験誤差によるマージンを考慮した場合でもこれを達成できる。
【0054】
なお、後述するように、
図4に示す半導体チップCHP1と重畳する領域に配置された半田ボールSBにも破断が発生する場合がある。ただし、配線基板SUB1の厚さを500μm~1mm程度とすることにより、半導体チップCHP1と重畳する領域に配置された半田ボールSBの破断が発生するまでに印加した温度サイクル負荷の回数は3千サイクルから4千サイクル程度にできることが、本願発明者の検討により判っている。したがって、接着層BND2と重畳する領域に配置されている半田ボールSBについても、破断が発生するまでに印加した温度サイクル負荷の回数が3千サイクル以上になっていることが好ましい。この観点からは、厚さT2の値が厚さT1の値の3倍以上であることが特に好ましい。
【0055】
また、厚さT2を250μmよりも大きくしたとしても温度サイクル負荷の回数が3千サイクルを下回ることはないと考えられる。したがって、部分LIDp2および接着層BND2とそれぞれ重畳する領域に配置されている半田ボールSBにおける製品寿命を延長させる観点からは、接着層BND2の厚さT2に上限値は特にない。例えば、図示は省略するが、本実施の形態に対する変形例として、
図4に示す曲げ加工が施された部分(部、曲げ加工部、傾斜部)LIDp3が設けられず、
図5に示す部分LIDp1の下面LIDb1と、部分LIDp2の下面LIDb2とが、配線基板SUB1の上面2tを基準面として同じ高さに位置している(言い換えれば、高低差G2がゼロである)場合もある。また例えば、本実施の形態に対する別の変形例として、
図5に示す部分LIDp2の下面LIDb2が、部分LIDp1の下面LIDb1に対して、配線基板SUB1の上面2tを基準面として高い位置に配置されている(言い換えれば、
図4に示す部分LIDp3がアップセットされている)場合もある。
【0056】
ただし、
図6に示す実線の試験区を視て判るように、厚さT2の値が150μmを超えた後は、厚さT2を厚くすることによる製品寿命の延長効果が徐々に小さくなる。また、
図4に示す放熱板LIDを配線基板SUB1の上面2t上に接着固定する際の作業の容易性を考慮すると、接着層BND2の厚さT2は、極端に厚くないことが好ましい。例えば、接着層BND2の厚さT2は、放熱板LIDの部分LIDp1から配線基板SUB1の上面2tまでの最短距離以下であることが好ましい。言い換えれば、接着層BND2の厚さT2は、配線基板SUB1の上面2tと半導体チップCHP1とのギャップG1、半導体チップCHP1の厚さTCH1、および接着層BND1の厚さT1の合計値以下であることが好ましい。
【0057】
また、本実施の形態のように、部分LIDp2の下面LIDb2から配線基板SUB1の上面2tまでの最短距離は、部分LIDp1の下面LIDb1から配線基板SUB1の上面2tまでの最短距離よりも短いことが特に好ましい。
【0058】
さらに、
図6に示すように、接着層BND2の厚さT2が厚さT1の5倍(250μm)になると、温度サイクル負荷の回数が4千サイクル弱(3千8百サイクル~4千サイクル程度)になる。温度サイクル負荷の回数が、この程度まで多くなると、
図4に示す半導体チップCHP1と重畳する領域に配置された半田ボールSBに破断が発生する場合がある。半導体装置PKG1の製品寿命を延ばすためには、部分LIDp2および接着層BND2とそれぞれ重畳する領域に配置された半田ボールSB以外にも着目する必要がある。この観点からは、
図5に示す厚さT2の値は厚さT1の値の5倍(250μm)以下であることが好ましい。これにより、特に破断が発生し易い半田ボールの損傷を抑制しつつ、かつ、放熱板LIDを安定して配線基板SUB1上に接着固定させることができる。
【0059】
<接着材料の貯蔵弾性率と製品寿命との関係の評価>
次に、接着層BND2を構成する接着材料全体としての貯蔵弾性率と、製品寿命との関係について説明する。温度サイクル負荷が印加された時に
図4に示す部分LIDp2および接着層BND2とそれぞれ重畳する領域に配置された半田ボールSBに生じる応力を小さくするためには、接着層BND2により応力を緩和させることができることが好ましい。この応力緩和特性は、上記したように接着層BND2の厚さを大きくすることで向上させる事ができるが、接着層BND2を構成する接着材料についても柔らかい(弾性変形し易い)方が好ましい。本願発明者は、接着層BND2を構成する接着材料の柔らかさを評価する指標として、貯蔵弾性率を採用した。
【0060】
貯蔵弾性率とは、動的弾性率の一成分であって、物体に対する外力とひずみにより生じたエネルギーのうち、物体の内部に保存する成分である。動的弾性率のうち、物体の外部に拡散する成分は、損失弾性率である。今回は、温度サイクル負荷に対する接着層BND2の応力緩和特性を評価するため、引張モードにおける貯蔵弾性率を評価指標として用いた。
【0061】
まず、測定用の試験片として、試験対象の材料から成る短冊状の試験片を準備する。本願発明者が測定した試験片のサイズは、幅10mm、長さ60mm、厚さ500μmである。測定装置としては、動的粘弾性測定装置を用いた。測定では、試験片の長手方向の一方の端部を固定した状態で、他方の端部を把持したプローブが試験片の長手方向に振動する。今回の測定では振動の周波数は1Hzとした。また、測定時の環境温度を-65℃から300℃まで5℃毎にステップ昇温させて、各温度での測定を行い、0℃での貯蔵弾性率を評価指標とした。
【0062】
まず、
図6において実線で示した試験区の接着材料の場合、0℃における貯蔵弾性率は、132MPa(メガパスカル)であった。一方、
図6において、点線で示した試験区の接着材料の場合、0℃における貯蔵弾性率は、11.1MPaであった。また、
図6では図示を省略したが、
図6に示す試験区で用いた接着材料よりも硬い接着材料についても貯蔵弾性率を測定した。本願発明者の検討によれば、0℃における貯蔵弾性率が200MPa以下であれば、
図6に実線で示した試験区と同等の結果が得られることが判った。
【0063】
なお、
図6に示した試験区の他、0℃における貯蔵弾性率が極端に高い材料として、3.89GPa(ギガパスカル)の材料を用いて製品寿命の評価を行った。この結果、厚さT2を厚くすることにより製品寿命を延長できることは確認できたが、半田ボールSBの破断が発生するまでに印加した温度サイクル負荷の回数は、
図6に実線で示す試験区に対して70%程度(実測値では69.4%)であった。したがって、
図5に示す接着層BND2を構成する接着材料の0℃における貯蔵弾性率は200MPa以下であることが好ましい。
【0064】
また、
図6において点線で示す試験区に用いた接着材料の場合、
図5に示す接着層BND1の材料として用いた時の放熱特性が不足していた。ただし、応力緩和特性の観点からは、0℃における貯蔵弾性率は、11.1MPaである方が好ましい。したがって、放熱特性の観点からの要求仕様を満たせる材料であれば、0℃における貯蔵弾性率に特に下限値はなく、0Pa(パスカル)よりも大きければ足りる。
【0065】
<半導体チップと重畳する領域に配置された半田ボールの破断について>
次に、
図4に示す複数の半田ボールSBのうち、半導体チップCHP1と重畳する領域に配置された半田ボールSBの破断について説明する。上記の通り、本願発明者は、放熱板LIDを配線基板SUB1に接着固定する接着層BND2と重畳する領域に配置された半田ボールSBに生じる破断に着目し、この発生を抑制する方法について検討した。ただし、上記した部分LIDp2および接着層BND2とそれぞれ重畳する領域以外に配置された半田ボールSBに破断が発生した場合でも、半導体装置PKG1の信頼性低下の原因となる。特に、半導体チップCHP1の線膨張係数と配線基板SUB1の線膨張係数との差が大きい場合、半導体チップCHP1と重畳する領域に配置された半田ボールSBに破断が生じやすい。
【0066】
本願発明者の検討結果によれば、
図4に示す配線基板SUB1のコア絶縁層2CRの厚さおよび半導体チップCHP1の厚さを薄くすることにより、半導体チップCHP1と重畳する領域に配置された半田ボールSBの破断を抑制できることが判った。詳しくは、
図5に示す半導体チップCHP1の厚さTCH1および
図4に示すコア絶縁層2CRの厚さ(上面2Ctおよび下面2Cb)よりも
図5に示す放熱板LIDの部分LIDp1の厚さTL1が厚くなっていることが好ましいことが判った。例えば、
図4に示す例では、コア絶縁層2CRの厚さは、410μmである。したがって、
図5に示す放熱板LIDの部分LIDp1の厚さTL1(例えば500μm)は、半導体チップCHP1の厚さTCH1(例えば400μm)および
図4に示すコア絶縁層2CRの厚さよりも厚い。なお、半導体チップCHP1と重畳する領域に配置された半田ボールSBの破断を抑制する観点からは、コア絶縁層2CRの厚さは、半導体チップCHP1の厚さTCH1よりも厚い方が特に好ましい。
【0067】
上記条件を満たしていれば、半導体チップCHP1と重畳する領域に配置された半田ボールSB(
図4参照)に破断が生じる前に部分LIDp2および接着層BND2とそれぞれ重畳する領域に配置された半田ボールSBが破断する傾向がある。また、半導体チップCHP1と重畳する領域に配置された半田ボールSBに関しては、上記の対策により、破断発生までの温度サイクル負荷の回数を増加させることができる。したがって、本実施の形態によれば、半導体装置全体としての製品寿命を延ばすことができる。
【0068】
<放熱板形状の変形例>
次に、
図1に示す放熱板LIDの形状の変形例について説明する。
図7は、
図1の放熱板に対する変形例である放熱板を備えた半導体装置を示す上面図である。
図8は、
図7に示す半導体装置の下面図である。なお、
図7に示すB-B線に沿った断面図は、
図4と同様なので、図示を省略し、必要に応じて
図4を用いて説明する。
【0069】
図7および
図8に示す半導体装置PKG2が有する放熱板LID2は、平面視において四角形を成す配線基板SUB1の4つの角部周辺に部分LIDp2が形成されていない点で
図1に示す放熱板LIDと相違する。詳しくは、放熱板LID2の場合、半導体チップCHP1と重畳する部分LIDp1と、部分LIDp1の周囲に配置され、かつ、接着層BND2(
図4参照)を介して配線基板SUB1の上面2tに接着固定された4つの部分LIDp2と、を有している。
【0070】
4つの部分LIDp2のそれぞれは、平面視において四角形を成す部分LIDp1の各辺に沿って配置されて、互いに離間している。また、
図7に示す例では、放熱板LID2は、部分LIDp1と部分LIDp2との間に配置され、かつ、曲げ加工が施された部分(部、曲げ加工部、傾斜部)LIDp3を備えている。また、放熱板LID2は、部分LIDp1と部分LIDp3との間に配置された部分LIDp4を備えている。
図4に示すように、部分LIDp4は、半導体チップCHP1と重畳せず、かつ、配線基板SUB1の上面2tを基準面として部分LIDp1と同じ高さで部分LIDp1と部分LIDp3とを接続するように延びている。
【0071】
上記したように、放熱板LID2の場合、配線基板SUB1の4つの角部周辺に部分LIDp2が形成されていない。このことは以下のように表現することができる。すなわち、放熱板LID2が備える4つの部分LIDp2のそれぞれは、X方向およびX方向に直交するY方向のうち、いずれか一つの方向に延びている。4つの部分LIDp2のそれぞれの延在方向の延長線上には、他の部分LIDp2が配置されていない。
【0072】
図示は省略するが、部分LIDp2の外縁の平面形状を四角形とした場合、上記した半田ボールSB(
図4参照)の破断は、四角形の角部の近くで発生し易い。四角形の角部には応力が集中し易いからである。本変形例の場合、
図8に示すように、配線基板SUB1の4つの角部周辺に配置された半田ボールSBは、接着層BND2と重畳していない。したがって、特に破断が発生し易い半田ボールSBに応力が集中することを回避できるので、破断が発生するまでの温度サイクル負荷の回数を増加させることができる。すなわち、製品寿命を延長させることができる。
【0073】
<半田ボール配列の変形例>
次に、
図2に示す半田ボールSBの配列の変形例について説明する。
図9は、
図2に対する変形例を示す下面図である。
図2では、複数の半田ボールSBのレイアウトの一例を示したが、半田ボールSBのレイアウトは、
図2に示す態様の他、種々の変形例がある。例えば
図9に示す半導体装置PKG3の場合、半田ボールSBが行列上に等間隔で配列された、所謂フルグリッドのレイアウトになっている。
図1~
図8を用いて説明した技術は、
図9に示すようなフルグリッドアレイの半導体装置PKG3に適用しても有効である。
【0074】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0075】
2b 下面(面、主面、実装面)
2Cb 下面
2CP 導体パターン(導体プレーン)
2CR コア絶縁層(コア材、絶縁層)
2Ct 上面
2d 配線
2e 絶縁層
2LD ランド
2PD パッド
2s,3s 辺
2t 上面(面、主面、チップ搭載面)
2THW スルーホール配線
2v ビア配線
3b 裏面(主面、下面)
3BP 突起電極(バンプ電極)
3PD 電極(パッド、電極パッド、ボンディングパッド)
3t 表面(主面、上面)
B1b,B1t,B2b,B2t 接触面
BND1,BND2 接着層
CHP1 半導体チップ(半導体部品、電子部品)
F1 フィラ
G1 ギャップ
G2 高低差
LID 放熱板(リッド、ヒートスプレッダ、放熱部材)
LIDt 上面
LIDb、LIDb1,LIDb2 下面
LIDp1,LIDp2,LIDp3,LIDp4 部分
PKG1,PKG2,PKG3 半導体装置
R1 樹脂
SB 半田ボール(半田材、外部端子、電極、外部電極)
SR1,SR2 有機絶縁膜
SUB1 配線基板
T1,T2,TCH1,TL1 厚さ
UF アンダフィル樹脂(絶縁性樹脂)
WL1,WL2,WL3,WL4 配線層