(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055052
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】比較回路、アナログデジタル変換回路、及び半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
H03M 1/46 20060101AFI20240411BHJP
H03M 1/12 20060101ALI20240411BHJP
H03M 1/38 20060101ALN20240411BHJP
【FI】
H03M1/46
H03M1/12 C
H03M1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161652
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】514315159
【氏名又は名称】株式会社ソシオネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】羽根田 秀貴
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AA02
5J022AB01
5J022BA05
5J022CE01
5J022CE08
5J022CF01
5J022CG01
(57)【要約】
【課題】非同期型の比較回路を用いたAD変換回路において、比較判定動作にてメタステーブル状態が発生した場合であっても、AD変換動作を完了できるようにする。
【解決手段】AD変換回路において、比較回路は、内部クロック信号に基づいて差動入力信号の比較判定を行い、比較判定の結果を示す第1差動出力信号を生成する差動比較回路と、第1差動出力信号を受けて第2差動出力信号を生成する判定アシスト回路と、第2差動出力信号を保持し、第3差動出力信号を生成するラッチ回路と、第3差動出力信号に基づいて内部クロック信号を生成するクロック生成回路とを有し、判定アシスト回路は、第1差動出力信号の値がリセット値から変更されずに差動比較回路における比較判定の動作開始から所定の時間が経過した場合、第1差動出力信号の少なくとも一方の値をリセット値から変更し、第2差動出力信号を生成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部クロック信号に基づいて差動入力信号の比較判定を行い、前記比較判定の結果を示す第1差動出力信号を生成する差動比較回路と、
前記第1差動出力信号を受けて第2差動出力信号を生成する回路であって、前記第1差動出力信号の値がリセット値から変更されずに前記差動比較回路における前記比較判定の動作開始から所定の時間が経過した場合、前記第1差動出力信号の少なくとも一方の値を前記リセット値から変更し、前記第2差動出力信号を生成する判定アシスト回路と、
前記第2差動出力信号を保持し、第3差動出力信号を生成するラッチ回路と、
前記第3差動出力信号に基づいて前記内部クロック信号を生成するクロック生成回路とを有することを特徴とする比較回路。
【請求項2】
前記所定の時間は、前記差動比較回路で前記比較判定の動作を完了させるのに十分な時間として定められた時間であることを特徴とする請求項1に記載の比較回路。
【請求項3】
前記判定アシスト回路は、前記差動比較回路と前記ラッチ回路との間に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の比較回路。
【請求項4】
前記判定アシスト回路は、前記第1差動出力信号と前記内部クロック信号とに基づいて、前記第2差動出力信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の比較回路。
【請求項5】
前記判定アシスト回路は、前記第1差動出力信号と、前記内部クロック信号を前記所定の時間遅延させた遅延内部クロック信号とに基づいて、前記第2差動出力信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の比較回路。
【請求項6】
前記判定アシスト回路は、
前記内部クロック信号を遅延させることにより、遅延内部クロック信号を生成する遅延回路と、
前記遅延内部クロック信号と前記第1差動出力信号の一方の信号とが入力され、演算結果を前記第2差動出力信号の一方の信号として出力する第1論理回路と、
前記遅延内部クロック信号と前記第1差動出力信号の他方の信号とが入力され、演算結果を前記第2差動出力信号の他方の信号として出力する第2論理回路とを有することを特徴とする請求項1に記載の比較回路。
【請求項7】
前記判定アシスト回路は、
前記内部クロック信号を遅延させることにより、遅延内部クロック信号を生成する遅延回路と、
前記遅延内部クロック信号と前記第1差動出力信号の一方の信号とが入力され、演算結果を前記第2差動出力信号の一方の信号として出力する第1論理回路とを有することを特徴とする請求項1に記載の比較回路。
【請求項8】
前記遅延回路は、前記内部クロック信号を前記所定の時間遅延させることを特徴とする請求項6又は7に記載の比較回路。
【請求項9】
前記差動比較回路は、前記内部クロック信号がハイレベル又はローレベルの一方の論理レベルのときにリセットされ、他方の論理レベルのときに前記差動入力信号の比較判定を行うよう動作し、
前記遅延回路は、前記内部クロック信号が前記一方の論理レベルから前記他方の論理レベルに変化する場合には前記内部クロック信号を前記所定の時間遅延させて出力し、前記内部クロック信号が前記他方の論理レベルから前記一方の論理レベルに変化する場合には前記内部クロック信号を前記所定の時間よりも短い時間遅延させて出力することを特徴とする請求項6又は7に記載の比較回路。
【請求項10】
デジタルコードに基づいてアナログ電圧を生成するデジタルアナログ変換回路と、
入力されたアナログ入力電圧と前記デジタルアナログ変換回路により生成されたアナログ電圧とに基づくアナログ電圧が差動入力信号として入力され、前記差動入力信号の比較動作を行う比較回路と、
前記比較回路の出力信号に基づいて前記デジタルコードを逐次変化させ、前記アナログ入力電圧を変換したデジタル値の各ビットの値を順次決定する制御回路とを有し、
前記比較回路は、
内部クロック信号に基づいて前記差動入力信号の比較判定を行い、前記比較判定の結果を示す第1差動出力信号を生成する差動比較回路と、
前記第1差動出力信号を受けて第2差動出力信号を生成する回路であって、前記第1差動出力信号の値がリセット値から変更されずに前記差動比較回路における前記比較判定の動作開始から所定の時間が経過した場合、前記第1差動出力信号の少なくとも一方の値を前記リセット値から変更し、前記第2差動出力信号を生成する判定アシスト回路と、
前記第2差動出力信号を保持し、第3差動出力信号を生成するラッチ回路と、
前記第3差動出力信号に基づいて前記内部クロック信号を生成するクロック生成回路とを有し、
前記ラッチ回路により生成された前記第3差動出力信号を前記比較回路の出力信号として出力することを特徴とするアナログデジタル変換回路。
【請求項11】
前記所定の時間は、前記差動比較回路で前記比較判定の動作を完了させるのに十分な時間として定められた時間であることを特徴とする請求項10に記載のアナログデジタル変換回路。
【請求項12】
前記判定アシスト回路は、前記差動比較回路と前記ラッチ回路との間に接続されていることを特徴とする請求項10に記載のアナログデジタル変換回路。
【請求項13】
前記判定アシスト回路は、前記第1差動出力信号と前記内部クロック信号とに基づいて、前記第2差動出力信号を生成することを特徴とする請求項10に記載のアナログデジタル変換回路。
【請求項14】
前記判定アシスト回路は、前記第1差動出力信号と、前記内部クロック信号を前記所定の時間遅延させた遅延内部クロック信号とに基づいて、前記第2差動出力信号を生成することを特徴とする請求項10に記載のアナログデジタル変換回路。
【請求項15】
デジタルコードに基づいてアナログ電圧を生成する第1デジタルアナログ変換回路及び第2デジタルアナログ変換回路と、
入力されたアナログ入力電圧と前記第1デジタルアナログ変換回路及び前記第2デジタルアナログ変換回路により生成されたアナログ電圧とに基づくアナログ電圧と、参照電圧との比較動作を行う比較回路と、
前記比較回路の出力信号に基づいて、前記アナログ入力電圧を変換したデジタル値の複数のビットのうち、現在どのビットを比較しているかを示す比較対象ビット制御信号を生成する制御回路とを有し、
前記第1デジタルアナログ変換回路は、前記比較回路の出力信号のうちの一方の信号が変化することに応じて、前記比較対象ビット制御信号に基づいて、前記第1デジタルアナログ変換回路及び前記第2デジタルアナログ変換回路により生成されるアナログ電圧を減算するように制御され、
前記第2デジタルアナログ変換回路は、前記比較回路の出力信号のうちの他方の信号が変化することに応じて、前記比較対象ビット制御信号に基づいて、前記第1デジタルアナログ変換回路及び前記第2デジタルアナログ変換回路により生成されるアナログ電圧を加算するように制御され、
前記比較回路は、
クロック信号に基づいてアナログ電圧と参照電圧との比較判定を行い、前記比較判定の結果を示す第1差動出力信号を生成する差動比較回路と、
前記第1差動出力信号を受けて第2差動出力信号を生成する回路であって、前記第1差動出力信号の値がリセット値から変更されずに前記差動比較回路における前記比較判定の動作開始から所定の時間が経過した場合、前記第1差動出力信号の少なくとも一方の値を前記リセット値から変更し、前記第2差動出力信号を生成する判定アシスト回路と、
前記第2差動出力信号を保持し、第3差動出力信号を生成するラッチ回路とを有し、
前記ラッチ回路により生成された前記第3差動出力信号を前記比較回路の出力信号として出力することを特徴とするアナログデジタル変換回路。
【請求項16】
請求項10又は15に記載のアナログデジタル変換回路と、
前記アナログデジタル変換回路から出力されるデジタル信号を受けて処理動作を行うデジタル処理回路とを有することを特徴とする半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較回路、アナログデジタル変換回路、及び半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
入力されたアナログ電圧をデジタル値に変換する逐次比較(SAR:successive approximation register)型アナログデジタル(AD)変換回路において、ダイナミック型コンパレータを用いた比較回路が使用される。ダイナミック型コンパレータは、クロック信号に同期して動作するコンパレータであり、クロック信号がローレベル又はハイレベルの一方のときにリセット状態となり、他方のときにアナログ電圧の比較判定を行う。
【0003】
図10(A)は、ダイナミック型コンパレータを用いた比較回路の構成例を示す図である。
図10(A)に示す比較回路は、内部で生成したクロック信号に同期して比較判定を行う非同期型の比較回路である。ダイナミック型コンパレータ(以下、単に「コンパレータ」とも称す)1010は、クロック信号CLKに同期して動作する。
図10(A)に示す例では、コンパレータ1010は、クロック信号CLKがローレベルのときに出力信号OPA、ONAがともに“0”(ローレベル)にリセットされ、クロック信号CLKがハイレベルになると、アナログ電圧VINP、VINNの比較判定の結果に応じて出力信号OPA、ONAの一方が“1”(ハイレベル)になるものとする。
【0004】
ラッチ回路1020は、2つの否定論理積演算回路(NAND回路)1021、1022で構成され、コンパレータ1010の出力信号OPA、ONAをラッチする。ラッチ回路1020の出力信号OUTP、OUTNが、比較回路の出力信号として出力される。論理積演算回路(AND回路)1030は、ラッチ回路1020の出力信号OUTP、OUTN及び制御信号STARTが入力され、信号OUTP、OUTN、STARTの演算結果をクロック信号CLKとして出力する。制御信号STARTは、AD変換動作におけるサンプリング期間にローレベルとされ、AD変換動作における比較期間にハイレベルとされる。
【0005】
図10(B)は、逐次比較型AD変換回路に適用した場合の
図10(A)に示した比較回路の動作の一例を示す図である。時刻T41にて、制御信号STARTがハイレベルとなりAD変換動作における比較期間が開始されるが、比較期間の開始前は、制御信号STARTがローレベルであり、AND回路1030から出力されるクロック信号CLKもローレベルに維持される。したがって、AD変換動作における比較期間の開始前においては、アナログ電圧VINP、VINNにかかわらず、コンパレータ1010の出力信号OPA、ONAはともに“0”(ローレベル)にリセットされており、比較回路の出力信号であるラッチ回路1020の出力信号OUTP、OUTNはともに“1”(ハイレベル)である。
【0006】
時刻T41にて制御信号STARTがハイレベルになると、時刻T42にてAND回路1030から出力されるクロック信号CLKがハイレベルとなる。時刻T42にてクロック信号CLKがハイレベルとなると、デジタル値の最上位ビット(MSB:most significant bit)の値を決定するためのアナログ電圧VINP、VINNの比較判定動作が開始される。ここで
図10(B)に示した例のように、アナログ電圧VINPがアナログ電圧VINNよりも高く、比較判定の結果に応じてコンパレータ1010の出力信号OPAが“1”(ハイレベル)になると、ラッチ回路1020によりラッチされて、ラッチ回路1020の出力信号OUTPが“0”(ローレベル)になる。
【0007】
ラッチ回路1020の出力信号OUTPが“0”(ローレベル)になることで、比較判定が完了した(比較判定の結果が得られた)として、時刻T43にてクロック信号CLKがローレベルになる。これにより、コンパレータ1010の出力信号OPA、ONAがともに“0”(ローレベル)にリセットされ、ラッチ回路1020の出力信号OUTP、OUTNがともに“1”(ハイレベル)になる。ラッチ回路1020の出力信号OUTP、OUTNがともに“1”(ハイレベル)になることで、時刻T44にてクロック信号CLKがハイレベルになり、デジタル値の上位側から2ビット目の値を決定するためのアナログ電圧VINP、VINNの比較判定動作が開始される。このように、内部で生成したクロック信号CLKに基づいて比較判定を行い、対象ビットについての比較判定が完了し結果が得られた(ビットの値が確定した)ことによって次のビットについて動作を開始することを繰り返して、デジタル値の上位側から順に値を決定していく。そして、比較期間として規定した時間が経過した時刻T45にて制御信号STARTがローレベルとなりAD変換動作が終了される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-46758号公報
【特許文献2】米国特許第9621179号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した比較回路を用いた逐次比較型AD変換回路では、比較回路においてダイナミック型コンパレータのメタステーブル状態が発生すると、対象ビットについての比較判定が完了し結果が得られるまでの時間が長くかかる。それにより、デジタル値の全ビットの値を決定する前に比較期間として規定した時間が経過してAD変換動作を完了することができず、正しいAD変換結果を得ることができないという問題があった。
【0010】
例えば、
図10(C)に示すように、時刻T51にて制御信号STARTがハイレベルになると、時刻T52にてクロック信号CLKがハイレベルとなり、デジタル値の最上位ビット(MSB)の値を決定するためのアナログ電圧VINP、VINNの比較判定動作が開始される。時刻T53にてクロック信号CLKが再びハイレベルとなると、デジタル値の上位側から2ビット目の値を決定するためのアナログ電圧VINP、VINNの比較判定動作が開始される。このとき、アナログ電圧VINPとアナログ電圧VINNとの差が小さく、コンパレータ1010のメタステーブル状態が発生すると、比較判定動作を開始してから長い時間DLMが経過した後に、比較判定の結果に応じてコンパレータ1010の出力信号OPA、ONAが変化する。その後、時刻T55にてクロック信号CLKがハイレベルとなり、デジタル値の上位側から3ビット目の値を決定するためのアナログ電圧VINP、VINNの比較判定動作が開始される。このように、コンパレータ1010のメタステーブル状態が発生し、対象ビットについての比較判定が完了し結果が得られるまでに長い時間を要してしまうと、比較期間として規定した時間が経過した時刻T56までに、AD変換動作が完了しないことがある。
【0011】
本発明は、動作のためのクロック信号を内部で生成する非同期型の比較回路を用いたAD変換回路において、比較判定動作にてメタステーブル状態が発生した場合であっても、AD変換動作を完了できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
比較回路の一態様は、内部クロック信号に基づいて差動入力信号の比較判定を行い、比較判定の結果を示す第1差動出力信号を生成する差動比較回路と、第1差動出力信号を受けて第2差動出力信号を生成する判定アシスト回路と、第2差動出力信号を保持し、第3差動出力信号を生成するラッチ回路と、第3差動出力信号に基づいて内部クロック信号を生成するクロック生成回路とを有する。判定アシスト回路は、第1差動出力信号の値がリセット値から変更されずに差動比較回路における比較判定の動作開始から所定の時間が経過した場合、第1差動出力信号の少なくとも一方の値をリセット値から変更し、第2差動出力信号を生成する。
【発明の効果】
【0013】
開示の比較回路は、比較判定の結果を示す第1差動出力信号の値をリセット値から変更してメタステーブル状態を解消することで、該比較回路を用いたAD変換回路において、比較判定動作にてメタステーブル状態が発生した場合であっても、AD変換動作を完了することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態におけるアナログデジタル変換回路の構成例を示す図である。
【
図2】第1の実施形態における比較回路の構成例を示す図である。
【
図3】ダイナミック型コンパレータの構成例を示す図である。
【
図4】判定アシスト回路の他の構成例を説明する図である。
【
図5】第1の実施形態における比較回路の動作を説明する図である。
【
図6】第1の実施形態における比較回路の他の構成例を示す図である。
【
図7】第2の実施形態における比較回路の構成例を示す図である。
【
図8】第3の実施形態におけるアナログデジタル変換回路の構成例を示す図である。
【
図9】本実施形態における半導体集積回路の構成例を示す図である。
【
図10】アナログデジタル変換回路が有する比較回路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態におけるアナログデジタル(AD)変換回路の構成例を示す図である。本実施形態におけるAD変換回路は、例えば逐次比較(SAR:successive approximation register)型のAD変換回路であり、
図1には、入力されたアナログ電圧をnビット(nは自然数)のデジタル値に変換するnビットの逐次比較型AD変換回路を一例として示している。
図1に示す逐次比較型AD変換回路は、内部で生成したクロック信号に同期して比較動作を行う非同期型のAD変換回路である。
【0017】
第1の実施形態における逐次比較型AD変換回路100は、アナログ電圧入力ノードINP、INNに入力されるアナログ電圧をnビットのデジタル値に変換して出力ノードDT[0]~DT[n-1]より出力する。本実施形態では、アナログ電圧の入力は差動入力形式となっており、アナログ電圧入力ノードINP、INNは相補の入力ノードである。出力ノードDT[i]はデジタル値のiビット目の値が出力されるノードである。なお、iは添え字であり、i=0~(n-1)の整数である(以下においても同様)。
【0018】
逐次比較型AD変換回路100は、スイッチSWP、SWN、比較回路(COMP)101、制御回路(SAR_logic)102、及びデジタルアナログ(DA)変換回路(DAC)103P、103Nを有する。
【0019】
スイッチSWPは、一端がアナログ電圧入力ノードINPに接続され、他端がノードVINPに接続される。また、スイッチSWNは、一端がアナログ電圧入力ノードINNに接続され、他端がノードVINNに接続される。スイッチSWP、SWNは、制御回路102からの制御信号に基づいて、オン(閉状態、導通状態)/オフ(開状態、非導通状態)制御される。
【0020】
比較回路101は、ノードVINPの電圧とノードVINNの電圧とを比較判定し、比較判定の結果を示す信号OUTP、OUTNを出力する。本実施形態において、比較回路101は、クロック信号に同期して動作するダイナミック型コンパレータを用いた比較回路であり、比較回路101の内部で動作用のクロック信号を生成する(自励する)非同期型の比較回路である。
【0021】
制御回路102は、逐次比較型AD変換回路100におけるAD変換動作を制御する。制御回路102は、生成する制御信号に応じて、AD変換動作におけるサンプリング期間では入力されるアナログ電圧のサンプリングを行い、AD変換動作における比較期間ではアナログ電圧に係る比較動作を行うように、逐次比較型AD変換回路100を制御する。例えば、制御回路102は、サンプリング期間ではオン(閉状態、導通状態)となり、比較期間ではオフ(開状態、非導通状態)となるよう、スイッチSWP、SWNを制御する。また、制御回路102は、比較回路101より出力された信号OUTP、OUTNに基づいて、アナログ電圧の変換結果であるデジタル値の各ビットの値を順次決定する。また、制御回路102は、順次決定するデジタル値の各ビットの値に基づいて、DA変換回路103P、103Nにそれぞれ出力するデジタルコードを生成して、DA変換回路103P、103Nに出力する。
【0022】
DA変換回路103P、103Nは、制御回路102から出力されたそれぞれのデジタルコードに応じたアナログ電圧を生成する。DA変換回路103P、103Nは、例えば、容量型DA変換回路を用いて構成するようにしてもよいし、容量型DA変換回路と抵抗型DA変換回路とを併用して構成するようにしてもよい。
【0023】
また、DA変換回路103PはノードVINPに接続されており、DA変換回路103NはノードVINNに接続されている。これにより、ノードVINPの電圧は、DA変換回路103Pにより生成されるアナログ電圧と、アナログ電圧入力ノードINPに入力されサンプリングされるアナログ電圧と、に応じた電圧となる。また、ノードVINNの電圧は、DA変換回路103Nにより生成されるアナログ電圧と、アナログ電圧入力ノードINNに入力されサンプリングされるアナログ電圧と、に応じた電圧となる。
【0024】
図1に示した逐次比較型AD変換回路100の動作について説明する。逐次比較型AD変換回路100は、AD変換動作におけるサンプリング期間ではアナログ電圧のサンプリング動作を行い、AD変換動作における比較期間ではアナログ電圧に係る比較動作を行いデジタル値の各ビットの値を順次決定していく。
【0025】
AD変換動作におけるサンプリング期間において、制御回路102は、スイッチSWP、SWNを制御してオン(閉状態、導通状態)にする。これにより、アナログ電圧入力ノードINP、INNに入力されたアナログ電圧のサンプリングが行われる。アナログ電圧のサンプリングを行った後、制御回路102は、スイッチSWP、SWNを制御してオフ(開状態、非導通状態)にする。
【0026】
AD変換動作におけるサンプリング期間後の比較期間において、まず、デジタル値の最上位ビット(MSB:most significant bit)である第(n-1)ビットの値を決定するための比較動作が行われる。このとき、制御回路102は、DA変換回路103Pに対して、最上位ビットである第(n-1)ビットの値が“1”で、残りのビット(第(n-2)ビット~第0ビット)の値が“0”であるnビットのデジタルコードを出力する。また、制御回路102は、DA変換回路103Nに対して、DA変換回路103Pに対して出力するデジタルコードの値をビット毎に反転させたnビットのデジタルコードを出力する。この状態で比較回路101がノードVINPの電圧とノードVINNの電圧とを比較判定し、比較回路101での比較判定の結果に基づいて、制御回路102はデジタル値の第(n-1)ビットの値を決定する。
【0027】
デジタル値の第(n-1)ビットの値を決定すると、次に、デジタル値の上位側から2ビット目である第(n-2)ビットの値を決定するための比較動作が行われる。このとき、制御回路102は、DA変換回路103Pに対して、第(n-1)ビットの値が決定したデジタル値の値で、第(n-2)ビットの値が“1”で、残りのビット(第(n-3)ビット~第0ビット)の値が“0”であるnビットのデジタルコードを出力する。また、制御回路102は、DA変換回路103Nに対して、DA変換回路103Pに対して出力するデジタルコードの値をビット毎に反転させたnビットのデジタルコードを出力する。この状態で比較回路101がノードVINPの電圧とノードVINNの電圧とを比較判定し、比較回路101での比較判定の結果に基づいて、制御回路102はデジタル値の第(n-2)ビットの値を決定する。
【0028】
以降、同様にして、第(n-3)ビット、第(n-4)ビット、・・・、第1ビット、第0ビットと値を順次決定していくことで、逐次比較型AD変換回路100は、アナログ電圧入力ノードINP、INNに入力されたアナログ電圧をnビットのデジタル値に変換する。
【0029】
図2は、比較回路101の構成例を示す図である。比較回路101は、ダイナミック型コンパレータ(以下、単に「コンパレータ」とも称す。)210、判定アシスト回路220、ラッチ回路230、及びクロック生成回路240を有する。なお、以下では、アナログ電圧VINPはノードVINPの電圧を示し、アナログ電圧VINNはノードVINNの電圧を示すものとする。
【0030】
コンパレータ210は、アナログ電圧VINP、VINNが入力される。コンパレータ210は、入力されるクロック信号CLKに同期してアナログ電圧VINP、VINNの比較判定を行い、比較判定の結果に応じた出力信号OPA、ONAを出力する。
図2に示したコンパレータ210は、クロック信号CLKがハイレベルのときにアナログ電圧VINP、VINNの比較判定を行い、クロック信号CLKがローレベルのときにリセット状態となる。
図2に示した例では、リセット状態では、コンパレータ210の出力信号OPA、ONAは、ともに“0”(ローレベル)にリセットされるものとする。
【0031】
コンパレータ210に入力されるアナログ電圧VINP、VINNは差動入力信号の一例であり、コンパレータ210の出力信号OPA、ONAは第1差動出力信号の一例である。コンパレータ210は、内部クロック信号に基づいて差動入力信号の比較判定を行い、比較判定の結果を示す第1差動出力信号を生成する差動比較回路の一例である。
【0032】
判定アシスト回路220は、コンパレータ210の出力信号OPA、ONAが入力され、それらに対応する出力信号OPB、ONBを出力する。判定アシスト回路220の出力信号OPB、ONBは第2差動出力信号の一例であり、判定アシスト回路220は第1差動出力信号を受けて第2差動出力信号を生成する判定アシスト回路の一例である。
【0033】
判定アシスト回路220は、通常、入力されるコンパレータ210の出力信号OPA、ONAと同じ論理レベルの出力信号OPB、ONBを出力する。ただし、判定アシスト回路220は、コンパレータ210のメタステーブル状態が発生し、比較判定の動作を開始してから所定の時間が経過してもコンパレータ210の出力信号OPA、ONAがともにリセット状態(リセット値)を維持して変化しない場合に、出力信号OPB、ONBをリセット値から変更させる。すなわち、判定アシスト回路220は、コンパレータ210の出力信号OPA、ONAがともにリセット値から変更されずに、コンパレータ210における比較判定の動作開始から所定の時間が経過した場合、出力信号OPB、ONBのうちの少なくとも一方をリセット値とは異なる値に変化させる。ここで、「所定の時間」は、コンパレータ210においてアナログ電圧VINP、VINNの比較判定動作を完了させる(確定した比較判定の結果を得る)のに十分な時間である。判定アシスト回路220は、例えば、論理和演算回路(OR回路)221、222及びバッファ223、224を用いて構成される。
【0034】
OR回路221は、コンパレータ210の出力信号OPAとアシスト信号DCLKとが入力され、信号OPA、DCLKの演算結果を出力信号OPBとして出力する。また、OR回路222は、コンパレータ210の出力信号ONAとアシスト信号DCLKとが入力され、信号ONA、DCLKの演算結果を出力信号ONBとして出力する。
【0035】
バッファ223、224は直列に接続され、クロック信号CLKを所定の時間遅延させることでアシスト信号DCLKを生成する。クロック信号CLKを遅延させる「所定の時間」は、コンパレータ210においてアナログ電圧VINP、VINNの比較判定動作を完了させるのに十分な時間として定められた時間である。クロック信号CLKは、内部クロック信号の一例であり、アシスト信号DCLKは、遅延内部クロック信号の一例である。なお、説明の便宜上、
図2においては2つのバッファ223、224を示したが、所定の時間遅延させるようバッファの数は適宜調整すればよい。
【0036】
このように構成することで、判定アシスト回路220は、クロック信号CLKがローレベルからハイレベルに変化して所定の時間が経過してから、クロック信号CLKがハイレベルからローレベルに変化して所定の時間が経過するまでの期間は、コンパレータ210の出力信号OPA、ONAにかかわらず、“1”(ハイレベル)の出力信号OPB、ONBを出力する。それ以外の期間は、コンパレータ210の出力信号OPA、ONAと同じ論理レベルの出力信号OPB、ONBを出力する。
【0037】
ラッチ回路230は、判定アシスト回路220の出力信号OPB、ONBをラッチする。ラッチ回路230の出力信号OUTP、OUTNが、比較回路101の出力信号として出力される。ラッチ回路230の出力信号OUTP、OUTNは第3差動出力信号の一例であり、ラッチ回路230は第2差動出力信号を保持し第3差動出力信号を生成するラッチ回路の一例である。ラッチ回路230は、例えば、否定論理積演算回路(NAND回路)231、232を用いて構成される。
【0038】
NAND回路231は、判定アシスト回路220の出力信号OPB及びNAND回路232の出力が入力される。また、NAND回路232は、判定アシスト回路220の出力信号OPB及びNAND回路231の出力が入力される。このようにして2つのNAND回路231、232でラッチ回路を構成し、NAND回路231の出力が出力信号OUTPとして出力され、NAND回路232の出力が出力信号OUTPとして出力される。
【0039】
クロック生成回路240は、出力信号OUTP、OUTNに基づいてクロック信号CLKを生成し出力する。クロック生成回路240は第3差動出力信号に基づいて内部クロック信号を生成するクロック生成回路の一例である。クロック生成回路240は、例えば、論理積演算回路(AND回路)241を用いて構成される。AND回路241は、出力信号OUTP、OUTN及び制御信号STARTが入力され、信号OUTP、OUTN、STARTの演算結果をクロック信号CLKとして出力する。制御信号STARTは、AD変換動作におけるサンプリング期間にローレベルとされ、AD変換動作における比較期間にハイレベルとされる。
【0040】
図3は、ダイナミック型コンパレータ210の構成例を示す図である。ダイナミック型コンパレータ210は、Nチャネル型トランジスタ301、302、303、305、307、309、311、及びPチャネル型トランジスタ304、306、308、310、312、313、314、315を有する。
【0041】
Nチャネル型トランジスタ301、302は、ダイナミック型コンパレータ210における、差動入力信号が入力される一対の入力トランジスタである。Nチャネル型トランジスタ301は、ソースがNチャネル型トランジスタ303のドレインに接続され、ゲートがアナログ電圧を供給するノードVINNに接続され、ドレインがNチャネル型トランジスタ305のソースに接続される。また、Nチャネル型トランジスタ302は、ソースがNチャネル型トランジスタ303のドレインに接続され、ゲートがアナログ電圧を供給するノードVINPに接続され、ドレインがNチャネル型トランジスタ307のソースに接続される。
【0042】
Nチャネル型トランジスタ303は、ソースが基準電位(グラウンドレベル、接地電位)VSSが供給される電源線に接続され、ゲートにクロック信号CLKが入力される。Nチャネル型トランジスタ303は、ゲートに入力されるクロック信号CLKに応じてオン/オフ制御され、リセット期間(クロック信号CLKがローレベルの期間)にはオフし、比較判定を行う期間(クロック信号CLKがハイレベルの期間)にはオンして電流源として動作する。
【0043】
Pチャネル型トランジスタ304は、ソースが電源電圧VDDが供給される電源線に接続され、ドレインがNチャネル型トランジスタ305のドレインに接続される。Pチャネル型トランジスタ306は、ソースが電源電圧VDDが供給される電源線に接続され、ドレインがNチャネル型トランジスタ307のドレインに接続される。また、Pチャネル型トランジスタ304のゲート及びNチャネル型トランジスタ305のゲートが、Pチャネル型トランジスタ306のドレインとNチャネル型トランジスタ307のドレインとの接続点に接続される。Pチャネル型トランジスタ306のゲート及びNチャネル型トランジスタ307のゲートが、Pチャネル型トランジスタ304のドレインとNチャネル型トランジスタ305のドレインとの接続点に接続される。
【0044】
すなわち、Pチャネル型トランジスタ304及びNチャネル型トランジスタ305で構成される第1のインバータと、Pチャネル型トランジスタ306及びNチャネル型トランジスタ307で構成される第2のインバータとが、一方の入力端と他方の出力端とが接続されるよう交差接続され、ラッチが構成される。
【0045】
Pチャネル型トランジスタ308は、ソースが電源電圧VDDが供給される電源線に接続され、ドレインがNチャネル型トランジスタ309のドレインに接続される。Nチャネル型トランジスタ309は、ソースが基準電位(グラウンドレベル、接地電位)VSSが供給される電源線に接続される。また、Pチャネル型トランジスタ308のゲート及びNチャネル型トランジスタ309のゲートが、Pチャネル型トランジスタ306のドレインとNチャネル型トランジスタ307のドレインとの接続点に接続される。Pチャネル型トランジスタ308のドレインとNチャネル型トランジスタ309のドレインとの接続点の電位が出力信号OPAとして出力される。すなわち、Pチャネル型トランジスタ308及びNチャネル型トランジスタ309は、Pチャネル型トランジスタ306のドレインとNチャネル型トランジスタ307のドレインとの接続点に入力端が接続された(第2のインバータの出力を入力とする)第3のインバータを構成し、この第3のインバータの出力が出力信号OPAとして出力される。
【0046】
Pチャネル型トランジスタ310は、ソースが電源電圧VDDが供給される電源線に接続され、ドレインがNチャネル型トランジスタ311のドレインに接続される。Nチャネル型トランジスタ311は、ソースが基準電位(グラウンドレベル、接地電位)VSSが供給される電源線に接続される。また、Pチャネル型トランジスタ310のゲート及びNチャネル型トランジスタ311のゲートが、Pチャネル型トランジスタ304のドレインとNチャネル型トランジスタ305のドレインとの接続点に接続される。Pチャネル型トランジスタ310のドレインとNチャネル型トランジスタ311のドレインとの接続点の電位が出力信号ONAとして出力される。すなわち、Pチャネル型トランジスタ310及びNチャネル型トランジスタ311は、Pチャネル型トランジスタ304のドレインとNチャネル型トランジスタ305のドレインとの接続点に入力端が接続された(第1のインバータの出力を入力とする)第4のインバータを構成し、この第4のインバータの出力が出力信号ONAとして出力される。
【0047】
Pチャネル型トランジスタ312、313、314、315は、ソースが電源電圧VDDが供給される電源線に接続され、ゲートにクロック信号CLKが入力される。Pチャネル型トランジスタ312のドレインが、Pチャネル型トランジスタ304のドレインとNチャネル型トランジスタ305のドレインとの接続点に接続され、Pチャネル型トランジスタ313のドレインが、Nチャネル型トランジスタ301のドレインとNチャネル型トランジスタ305のソースとの接続点に接続される。また、Pチャネル型トランジスタ314のドレインが、Pチャネル型トランジスタ306のドレインとNチャネル型トランジスタ307のドレインとの接続点に接続され、Pチャネル型トランジスタ315のドレインが、Nチャネル型トランジスタ302のドレインとNチャネル型トランジスタ307のソースとの接続点に接続される。
【0048】
Pチャネル型トランジスタ312、313、314、315は、ゲートに入力されるクロック信号CLKに応じてオン/オフ制御される。Pチャネル型トランジスタ312、313、314、315は、比較判定を行う期間(クロック信号CLKがハイレベルの期間)にはオフし、リセット期間(クロック信号CLKがローレベルの期間)にはオンしてドレインが接続されているノードを“1”(ハイレベル)にするよう動作する。
【0049】
図3に示したダイナミック型コンパレータ210は、クロック信号CLKがローレベルのときには、Nチャネル型トランジスタ303がオフし、Pチャネル型トランジスタ312、313、314、315がオンする。これにより、Pチャネル型トランジスタ306のドレインとNチャネル型トランジスタ307のドレインとの接続点が“1”(ハイレベル)となることで、Pチャネル型トランジスタ308のドレインとNチャネル型トランジスタ309のドレインとの接続点が“0”(ローレベル)となり、“0”(ローレベル)の出力信号OPAが出力される。同様に、Pチャネル型トランジスタ304のドレインとNチャネル型トランジスタ305のドレインとの接続点が“1”(ハイレベル)となることで、Pチャネル型トランジスタ310のドレインとNチャネル型トランジスタ311のドレインとの接続点が“0”(ローレベル)となり、“0”(ローレベル)の出力信号ONAが出力される。このようにクロック信号CLKがローレベルのときには、リセット状態となり、出力信号OPA、ONAがともに“0”(ローレベル)にリセットされる。
【0050】
また、ダイナミック型コンパレータ210は、クロック信号CLKがハイレベルのときには、Pチャネル型トランジスタ312、313、314、315がオフし、Nチャネル型トランジスタ303がオンして電流源として動作する。そして、クロック信号CLKがローレベルからハイレベルになるときのノードVINP、VINNの電圧差によって、Nチャネル型トランジスタ302のドレインが接続されたノードとNチャネル型トランジスタ301のドレインが接続されたノードとの間に電位差が生じる。この電位差がPチャネル型トランジスタ304、306及びNチャネル型トランジスタ305、307で構成されるラッチで増幅され、Pチャネル型トランジスタ304のドレインとNチャネル型トランジスタ305のドレインとの接続点及びPチャネル型トランジスタ306のドレインとNチャネル型トランジスタ307のドレインとの接続点のうちの一方が“1”(ハイレベル)から“0”(ローレベル)に変化する。これに伴い、Pチャネル型トランジスタ308のドレインとNチャネル型トランジスタ309のドレインとの接続点及びPチャネル型トランジスタ310のドレインとNチャネル型トランジスタ311のドレインとの接続点のうちの一方が“0”(ローレベル)から“1”(ハイレベル)に変化する。このようにしてクロック信号CLKがハイレベルのときには、アナログ電圧の比較判定を行い、比較判定の結果に応じて、出力信号OPA、ONAの一方が“1”(ハイレベル)となる。
【0051】
ここで、
図2に示した比較回路101において、判定アシスト回路220は、入力されるクロック信号CLKを所定の時間遅延させてアシスト信号DCLKを生成する。すなわち、
図2に示した比較回路101では、アシスト信号DCLKは、ローレベルからハイレベルに変化する立ち上がり時、及びハイレベルからローレベルに変化する立ち下がり時の両方ともクロック信号CLKに対して所定の時間遅延している。ここで、アシスト信号DCLKがハイレベルである期間は、判定アシスト回路220の出力信号OPB、ONBはともに“1”(ハイレベル)となる。この場合、後段のラッチ回路230は出力信号OUTP、OUTNを維持することになり、クロック生成回路240から出力されるクロック信号CLKもローレベルに維持される。つまり、アシスト信号DCLKがハイレベルである期間は、コンパレータ210がリセットされ出力信号OPA、ONAがともに“0”(ローレベル)になっても、次のビットの値を決定するためのアナログ電圧VINP、VINNの比較判定動作が開始されない。
【0052】
AD変換動作にかかる時間の観点からは、コンパレータ210がリセットされ出力信号OPA、ONAがともに“0”(ローレベル)になってから速やかに次のビットの値を決定するためのアナログ電圧VINP、VINNの比較判定動作が開始されることが好ましい。そこで、
図4(A)に示すような判定アシスト回路220を用いて、アシスト信号DCLKが、ローレベルからハイレベルに変化する立ち上がり時にはクロック信号CLKに対して所定の時間遅延し、ハイレベルからローレベルに変化する立ち下がり時にはクロック信号CLKに対して小さな遅延で変化させるようにしてもよい。
【0053】
図4(A)は、判定アシスト回路の他の構成例を示す図である。
図4(A)において、
図2に示した構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図4(A)に示す判定アシスト回路220は、OR回路221、222、AND回路401、及びバッファ402、403を用いて構成される。AND回路401は、クロック信号CLK、及び直列接続されたバッファ402、403により所定の時間遅延されたクロック信号CLKが入力される。
【0054】
図4(A)に示すように構成することで、
図4(B)に示すように、時刻T11にてクロック信号CLKが立ち上がってから、AND回路401及びバッファ402、403での遅延に対応する所定の時間DLA遅延した時刻T12にて立ち上がるアシスト信号DCLKを生成することができる。また、時刻T13にてクロック信号CLKが立ち下がってから、AND回路401での遅延に対応する、所定の時間DLAよりも小さな時間DLBの遅延で立ち下がるアシスト信号DCLKを生成することができる。これにより、クロック信号CLKがローレベルになって、コンパレータ210の出力信号OPA、ONAがともに“0”(ローレベル)にリセットされると、速やかに次のビットの値を決定するためのアナログ電圧VINP、VINNの比較判定動作を開始することが可能となる。
【0055】
次に、本実施形態における逐次比較型AD変換回路100での比較回路101の動作について説明する。
図5(A)は、比較回路101の動作の一例を説明する図である。時刻T21にて、入力される制御信号STARTがハイレベルとなりAD変換動作における比較期間が開始されるが、比較期間の開始前(AD変換動作におけるサンプリング期間)は、入力される制御信号STARTがローレベルであり、クロック生成回路240から出力されるクロック信号CLKもローレベルに維持される。したがって、AD変換動作における比較期間の開始前においては、アナログ電圧VINP、VINNにかかわらず、コンパレータ210の出力信号OPA、ONAはともに“0”(ローレベル)にリセットされており、判定アシスト回路220の出力信号OPB、ONBもともに“0”(ローレベル)である。これにより、比較回路の出力信号であるラッチ回路230の出力信号OUTP、OUTNはともに“1”(ハイレベル)である。
【0056】
時刻T21にて制御信号STARTがハイレベルになると、時刻T22にてクロック生成回路240から出力されるクロック信号CLKがハイレベルとなる。時刻T22にてクロック信号CLKがハイレベルとなると、デジタル値の最上位ビット(MSB)の値を決定するためのアナログ電圧VINP、VINNの比較判定動作が開始される。ここで
図5(A)に示した例のように、アナログ電圧VINPがアナログ電圧VINNよりも高いと、比較判定の結果に応じてコンパレータ210の出力信号OPAが“1”(ハイレベル)になる。ここでは、クロック信号CLKがハイレベルに変化したのに伴ってアシスト信号DCLKがハイレベルに変化する前に、すなわち比較判定動作を完了させるのに十分な所定の時間内に、コンパレータ210の出力信号OPAが“1”(ハイレベル)になるとする。この場合、判定アシスト回路220の出力信号OPB、ONBは、出力信号OPBが“1”(ハイレベル)になり、出力信号ONBが“0”(ローレベル)のままである。判定アシスト回路220の出力信号OPBが“1”(ハイレベル)になると、ラッチ回路230によりラッチされて、ラッチ回路230の出力信号OUTPが“0”(ローレベル)になる。
【0057】
ラッチ回路230の出力信号OUTPが“0”(ローレベル)になることで、比較判定の結果が得られた(比較判定が完了した)として、時刻T23にてクロック信号CLKがローレベルになる。クロック信号CLKがローレベルになることで、コンパレータ210の出力信号OPA、ONAがともに“0”(ローレベル)にリセットされる。また、クロック信号CLKがローレベルに変化したのに伴ってアシスト信号DCLKがローレベルに変化する。これにより、判定アシスト回路220の出力信号OPB、ONBがともに“0”(ローレベル)になり、比較回路の出力信号であるラッチ回路230の出力信号OUTP、OUTNがともに“1”(ハイレベル)になる。そして、ラッチ回路230の出力信号OUTP、OUTNがともに“1”(ハイレベル)になることで、時刻T24にてクロック信号CLKがハイレベルになり、デジタル値の上位側から2ビット目の値を決定するための入力アナログ電圧VINP、VINNの比較判定動作が開始される。
【0058】
また、
図5(A)に示した例での時刻T25~T27のように、アナログ電圧VINPがアナログ電圧VINNよりも低く、比較判定の結果に応じてコンパレータ210の出力信号ONAが“1”(ハイレベル)になる場合の動作は、以下のとおりである。時刻T25にてクロック信号CLKがハイレベルとなると、デジタル値を決定するためのアナログ電圧VINP、VINNの比較判定動作が開始される。アナログ電圧VINPがアナログ電圧VINNよりも低いと、比較判定の結果に応じてコンパレータ210の出力信号ONAが“1”(ハイレベル)になる。ここでも、クロック信号CLKがハイレベルに変化したのに伴ってアシスト信号DCLKがハイレベルに変化する前に、すなわち比較判定動作を完了させるのに十分な所定の時間内に、コンパレータ210の出力信号ONAが“1”(ハイレベル)になるとする。この場合、判定アシスト回路220の出力信号OPB、ONBは、出力信号ONBが“1”(ハイレベル)になり、出力信号OPBが“0”(ローレベル)のままである。判定アシスト回路220の出力信号ONBが“1”(ハイレベル)になると、ラッチ回路230によりラッチされて、ラッチ回路230の出力信号OUTNが“0”(ローレベル)になる。
【0059】
ラッチ回路230の出力信号OUTNが“0”(ローレベル)になることで、比較判定の結果が得られた(比較判定が完了した)として、時刻T26にてクロック信号CLKがローレベルになる。クロック信号CLKがローレベルになることで、コンパレータ210の出力信号OPA、ONAがともに“0”(ローレベル)にリセットされる。また、クロック信号CLKがローレベルに変化したのに伴ってアシスト信号DCLKがローレベルに変化する。これにより、判定アシスト回路220の出力信号OPB、ONBがともに“0”(ローレベル)になり、比較回路の出力信号であるラッチ回路230の出力信号OUTP、OUTNがともに“1”(ハイレベル)になる。そして、ラッチ回路230の出力信号OUTP、OUTNがともに“1”(ハイレベル)になることで、時刻T27にてクロック信号CLKがハイレベルになり、デジタル値の次のビットの値を決定するためのアナログ電圧VINP、VINNの比較判定動作が開始される。
【0060】
このようにして、デジタル値の上位側から順に値を決定していき、比較期間として規定した時間が経過した時刻T28にて、入力される制御信号STARTがローレベルとなりAD変換動作が終了される。
【0061】
次に、
図5(B)を参照して、比較回路101においてコンパレータ210のメタステーブル状態が発生した場合の動作について説明する。
図5(B)には、デジタル値の上位側から2ビット目の値を決定するための比較判定動作において、コンパレータ210のメタステーブル状態が発生した例を示している。
【0062】
時刻T31にて、入力される制御信号STARTがハイレベルとなりAD変換動作における比較期間が開始される。なお、比較期間の開始前(AD変換動作におけるサンプリング期間)においては、
図5(A)に示した例と同様に、コンパレータ210の出力信号OPA、ONA及び判定アシスト回路220の出力信号OPB、ONBはともに“0”(ローレベル)であり、比較回路の出力信号であるラッチ回路230の出力信号OUTP、OUTNはともに“1”(ハイレベル)である。
【0063】
時刻T31にて制御信号STARTがハイレベルになると、時刻T32にてクロック生成回路240から出力されるクロック信号CLKがハイレベルとなる。これにより、デジタル値の最上位ビット(MSB)の値を決定するためのアナログ電圧VINP、VINNの比較判定動作が開始される。
【0064】
デジタル値の最上位ビット(MSB)の値が決定された後の時刻T33にてクロック信号CLKがハイレベルとなると、デジタル値の上位側から2ビット目の値を決定するためのアナログ電圧VINP、VINNの比較判定動作が開始される。
図5(B)に示した例のように、アナログ電圧VINPとアナログ電圧VINNとの差が小さく、コンパレータ210のメタステーブル状態が発生した場合、比較判定動作を開始してから長い時間にわたってコンパレータ210の出力信号OPA、ONAはリセット値である“0”(ローレベル)から変化しない。そして、比較判定の結果に応じてコンパレータ210の出力信号OPA、ONAが変化することなく、クロック信号CLKがハイレベルに変化した時刻T33から比較判定動作を完了させるのに十分な所定の時間が経過した後の時刻T34にてアシスト信号DCLKがハイレベルに変化する。これにより、判定アシスト回路220の出力信号OPB、ONBが“1”(ハイレベル)になり、“1”(ハイレベル)になった出力信号OPB、ONBがラッチ回路230に到達する時間の先後に応じて、ラッチ回路230の出力信号OUTP、OUTNの一方が“0”(ローレベル)になる。なお、この後、仮に比較判定が完了してコンパレータ210の出力信号OPA、ONAが変化しても、ラッチ回路230の出力信号OUTP、OUTNは変化しない。
【0065】
ラッチ回路230の出力信号OUTP、OUTNの一方が“0”(ローレベル)になることで、比較判定が完了したとして、時刻T35にてクロック信号CLKがローレベルになる。クロック信号CLKがローレベルになることで、コンパレータ210の出力信号OPA、ONAがともに“0”(ローレベル)にリセットされる。また、クロック信号CLKがローレベルに変化したのに伴ってアシスト信号DCLKがローレベルに変化する。これにより、判定アシスト回路220の出力信号OPB、ONBがともに“0”(ローレベル)になり、比較回路の出力信号であるラッチ回路230の出力信号OUTP、OUTNがともに“1”(ハイレベル)になる。そして、ラッチ回路230の出力信号OUTP、OUTNがともに“1”(ハイレベル)になることで、時刻T36にてクロック信号CLKがハイレベルになり、デジタル値の次のビットである上位側から3ビット目の値を決定するためのアナログ電圧VINP、VINNの比較判定動作が開始される。
【0066】
このように本実施形態における比較回路101では、コンパレータ210のメタステーブル状態が発生し、比較判定の動作開始から所定の時間が経過してもコンパレータ210の出力信号OPA、ONAがリセット値である場合、判定アシスト回路220にてアシスト信号DCLKにより出力信号OPB、ONBの値を変更することで、ラッチ回路230の出力信号OUTP、OUTNを変化させる。これにより、逐次比較型AD変換回路100において、比較回路101での比較判定動作中にコンパレータ210のメタステーブル状態が発生した場合であっても、短い時間で次のビットの値を決定するための動作に移行することができ、比較期間として規定された時間内でデジタル値の全ビットの値を決定しAD変換動作を完了することが可能となる。
【0067】
ここで、比較回路101での比較判定動作中にコンパレータ210のメタステーブル状態が発生した場合、比較回路101の出力信号としてのラッチ回路230の出力信号OUTP、OUTNのどちらが“0”(ローレベル)となるかで、デジタル値における対象ビットの値は異なる値となる。しかし、メタステーブル状態が発生する状態であるので、出力信号OUTP、OUTNのどちらが“0”(ローレベル)となっても、その後の下位側ビットでの比較判定を考慮すれば、AD変換して得られたデジタル値の誤差は小さく、例えば比較判定の動作開始からアシスト信号DCLKにより出力信号OPB、ONBの値を変更するまでの時間等から誤差を見積もることが可能である。
【0068】
図6は、第1の実施形態における比較回路101の他の構成例を示す図である。
図2に示した比較回路101は、出力信号OPA、ONAのリセット値が“0”(ローレベル)であるダイナミック型コンパレータ210を用いているが、
図6に示す比較回路101は、出力信号OPA、ONAのリセット値が“1”(ハイレベル)であるダイナミック型コンパレータ610を用いた例である。
【0069】
図6に示す比較回路101は、ダイナミック型コンパレータ610、判定アシスト回路620、ラッチ回路630、及びクロック生成回路640を有する。コンパレータ610、判定アシスト回路620、ラッチ回路630、及びクロック生成回路640は、それぞれ
図2に示したコンパレータ210、判定アシスト回路220、ラッチ回路230、及びクロック生成回路240に対応しており、それらと同様の動作を実現する。
【0070】
ただし、
図6に示した例では、コンパレータ610は、リセット状態において出力信号OPA、ONAがともに“1”(ハイレベル)にリセットされる。また、判定アシスト回路620は、例えば、AND回路621、622、インバータ623、及びバッファ624を用いて構成される。また、ラッチ回路630は、例えば、否定論理和演算回路(NOR回路)631、632を用いて構成され、クロック生成回路640は、例えば、NOR回路641を用いて構成される。
【0071】
判定アシスト回路620において、AND回路621は、コンパレータ610の出力信号OPAとアシスト信号DCLKとが入力され、信号OPA、DCLKの演算結果を出力信号OPBとして出力する。また、AND回路622は、コンパレータ610の出力信号ONAとアシスト信号DCLKとが入力され、信号ONA、DCLKの演算結果を出力信号ONBとして出力する。インバータ623及びバッファ624は直列に接続され、クロック信号CLKを所定の時間遅延し、かつ反転させることでアシスト信号DCLKを生成する。クロック信号CLKを遅延させる「所定の時間」は、
図2に示した比較回路と同様である。なお、
図6においては1つのインバータ623と1つのバッファ624を用いた例を示したが、クロック信号CLKを所定の時間遅延し、かつ反転させることが実現できれば、インバータ及びバッファの数はこれに限定されない。
【0072】
ラッチ回路630において、NOR回路631は、判定アシスト回路620の出力信号OPB及びNOR回路632の出力が入力される。また、NOR回路632は、判定アシスト回路620の出力信号OPB及びNOR回路631の出力が入力される。このようにして2つのNOR回路631、632でラッチ回路を構成し、NOR回路631の出力が出力信号OUTPとして出力され、NOR回路632の出力が出力信号OUTPとして出力される。
【0073】
クロック生成回路640において、NOR回路641は、出力信号OUTP、OUTN及び制御信号XSTARTが入力され、信号OUTP、OUTN、XSTARTの演算結果をクロック信号CLKとして出力する。制御信号XSTARTは、制御信号STARTの反転信号であり、AD変換動作におけるサンプリング期間にハイレベルとされ、AD変換動作における比較期間にローレベルとされる。
【0074】
なお、
図6に示した比較回路101においても、AD変換動作にかかる時間の観点からは、コンパレータ610がリセットされ出力信号OPA、ONAがともに“1”(ハイレベル)になってから速やかに次のビットの値を決定するためのアナログ電圧VINP、VINNの比較判定動作が開始されることが好ましい。そこで、判定アシスト回路620においても、
図4(A)に示した例と同様に論理回路等を用いて、アシスト信号DCLKが、ハイレベルからローレベルに変化する立ち下がり時にはクロック信号CLKの立ち上がりに対して所定の時間遅延し、ローレベルからハイレベルに変化する立ち上がり時にはクロック信号CLKの立ち下がりに対して小さな遅延で変化させるようにしてもよい。
【0075】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態における逐次比較型AD変換回路の構成は、
図1に示した第1の実施形態における逐次比較型AD変換回路100と同様であるので、説明は省略する。
【0076】
図7は、第2の実施形態における比較回路101の構成例を示す図である。
図7において、
図2に示した構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。第2の実施形態における比較回路101においては、判定アシスト回路710が
図2に示した第1の実施形態における比較回路101と異なり、他は
図2に示した第1の実施形態における比較回路101と同様である。
【0077】
第1の実施形態では、判定アシスト回路220は、出力信号OPB、ONBの両方をアシスト信号DCLKにより制御可能となっている。第2の実施形態では、判定アシスト回路710は、出力信号OPB、ONBの一方をアシスト信号DCLKにより制御可能とする。
図7には、判定アシスト回路710が、出力信号OPBをアシスト信号DCLKにより制御可能な例を示している。
【0078】
図7に示す比較回路101において、判定アシスト回路710は、コンパレータ210の出力信号OPA、ONAが入力され、それらに対応する出力信号OPB、ONBを出力する。判定アシスト回路710は、通常、入力されるコンパレータ210の出力信号OPAと同じ論理レベルの出力信号OPBを出力する。ただし、判定アシスト回路710は、コンパレータ210のメタステーブル状態が発生し、比較判定の動作を開始してから所定の時間が経過してもコンパレータ210の出力信号OPA、ONAがともにリセット状態(リセット値)を維持して変化しない場合に、出力信号OPBをリセット値から変更させる。また、判定アシスト回路710は、入力されるコンパレータ210の出力信号ONAをそのまま出力信号ONBとして出力する。判定アシスト回路710は、例えば、OR回路221及びバッファ223、224を用いて構成される。
【0079】
OR回路221は、コンパレータ210の出力信号OPAとアシスト信号DCLKとが入力され、信号OPA、DCLKの演算結果を出力信号OPBとして出力する。バッファ223、224は直列に接続され、クロック信号CLKを所定の時間遅延させることでアシスト信号DCLKを生成する。クロック信号CLKを遅延させる「所定の時間」は、第1の実施形態における比較回路101と同様である。なお、説明の便宜上、
図7においては2つのバッファ223、224を示したが、所定の時間遅延させるようバッファの数は適宜調整すればよい。
【0080】
このように構成することで、判定アシスト回路710は、出力信号OPBとして、クロック信号CLKがローレベルからハイレベルに変化して所定の時間が経過してから、クロック信号CLKがハイレベルからローレベルに変化して所定の時間が経過するまでの期間は、コンパレータ210の出力信号OPAにかかわらず“1”(ハイレベル)を出力し、それ以外の期間は、コンパレータ210の出力信号OPAと同じ論理レベルを出力する。
【0081】
第2の実施形態における比較回路101では、コンパレータ210のメタステーブル状態が発生し、比較判定の動作開始から所定の時間が経過してもコンパレータ210の出力信号OPA、ONAがリセット値である場合、判定アシスト回路710にてアシスト信号DCLKにより出力信号OPBの値を変更することで、ラッチ回路230の出力信号OUTPを変化させる。これにより、逐次比較型AD変換回路において、比較回路101での比較判定動作中にコンパレータ210のメタステーブル状態が発生した場合であっても、短い時間で次のビットの値を決定するための動作に移行することができ、比較期間として規定された時間内でAD変換動作を完了することが可能となる。
【0082】
なお、判定アシスト回路710が、出力信号OPBをアシスト信号DCLKにより制御可能な例を示したが、出力信号ONBをアシスト信号DCLKにより制御可能な構成としてもよい。また、前述した実施形態と同様に、アシスト信号DCLKを、クロック信号CLKの立ち上がりに対しては所定の時間遅延して変化させ、クロック信号CLKの立ち下がりに対しては小さな遅延で変化させるようにしてもよい。また、前述した実施形態と同様に、出力信号OPA、ONAのリセット値が“1”(ハイレベル)であるダイナミック型コンパレータを用いた場合も同様に適用可能である。
【0083】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図8は、第3の実施形態におけるAD変換回路の構成例を示す図である。本実施形態におけるAD変換回路は、例えば逐次比較型のAD変換回路であり、
図8には、アナログ電圧入力ノードVINに入力されるアナログ電圧をnビット(nは自然数)のデジタル値に変換して出力ノードDT[0]~DT[n-1]より出力するnビットの逐次比較型AD変換回路800を一例として示している。なお、
図8に示す逐次比較型AD変換回路800は、外部から供給されるクロック信号CLKに同期して比較動作を行う同期型のAD変換回路である。
【0084】
逐次比較型AD変換回路800は、スイッチSWA、比較回路(COMP)801、制御回路(SAR_logic)802、減算用DA変換回路803、及び加算用DA変換回路804を有する。
【0085】
比較回路801は、第1の入力端が、一端がアナログ電圧入力ノードVINに接続されたスイッチSWAの他端と接続されるとともに、一端が減算用DA変換回路803及び加算用DA変換回路804の出力端に接続されたそれぞれの容量の他端と接続される。また、比較回路801は、第2の入力端に参照電圧Vrefが供給される。比較回路801は、第1の入力端の電圧と第2の入力端の電圧(参照電圧Vref)とを比較判定し、比較判定の結果を示す信号OUTP、OUTNを出力する。本実施形態における比較回路801は、クロック信号に同期して動作するダイナミック型コンパレータを用いた比較回路であり、前述した実施形態と同様に構成される。ただし、比較回路801は、前述した実施形態における比較回路101とは異なり、外部から供給されるクロック信号CLKに同期して動作する同期型の比較回路であり、クロック信号を内部で生成する必要がないため、クロック生成回路240、640を有していない。
【0086】
制御回路802は、逐次比較型AD変換回路800におけるAD変換動作を制御する。制御回路802は、生成する制御信号に応じて、AD変換動作におけるサンプリング期間ではアナログ電圧のサンプリングを行い、AD変換動作における比較期間ではアナログ電圧に係る比較動作を行うように、逐次比較型AD変換回路800を制御する。例えば、制御回路802は、サンプリング期間ではオン(閉状態、導通状態)となり、比較期間ではオフ(開状態、非導通状態)となるよう、スイッチSWAを制御する。また、制御回路802は、比較回路801より出力された信号OUTPに基づいて、アナログ電圧の変換結果であるデジタル値の各ビットの値を順次決定する。また、制御回路802は、順次決定されるデジタル値に基づいて、デジタル値の複数のビットのうち、現在どのビットを比較しているかを示す比較対象ビット制御信号を生成しDA変換回路803、804に出力する。
【0087】
減算用DA変換回路803は、制御回路802から出力された比較対象ビット制御信号及び比較回路801の出力信号OUTPに基づいてアナログ電圧を生成し出力する。加算用DA変換回路804は、制御回路802から出力された比較対象ビット制御信号及び比較回路801の出力信号OUTNに基づいてアナログ電圧を生成し出力する。DA変換回路803、804は、例えば、容量型DA変換回路を用いて構成するようにしてもよいし、容量型DA変換回路と抵抗型DA変換回路とを併用して構成するようにしてもよい。
【0088】
逐次比較型AD変換回路800は、AD変換動作におけるサンプリング期間では、制御回路802がスイッチSWAを制御してオン(閉状態、導通状態)にし、アナログ電圧入力ノードVINに入力されたアナログ電圧のサンプリングを行う。アナログ電圧のサンプリングを行った後、制御回路802がスイッチSWAを制御してオフ(開状態、非導通状態)にする。
【0089】
逐次比較型AD変換回路800は、AD変換動作におけるサンプリング期間後の比較期間では、比較回路801が第1の入力端の電圧と第2の入力端の電圧(参照電圧Vref)との比較動作を行いデジタル値の各ビットの値を順次決定していく。このとき、逐次比較型AD変換回路800は、比較回路801の出力信号OUTPの変化に応じて、比較対象ビット制御信号に基づいて、減算用DA変換回路803を制御して、減算用DA変換回路803と加算用DA変換回路804とによって生成されるアナログ電圧が減算されるように制御する。また、逐次比較型AD変換回路800は、比較回路801の出力信号OUTNの変化に応じて、比較対象ビット制御信号に基づいて、加算用DA変換回路804を制御して、減算用DA変換回路803と加算用DA変換回路804とによって生成されるアナログ電圧が加算されるように制御する。
【0090】
ここで、逐次比較型AD変換回路800において、比較回路801での比較判定動作中にコンパレータのメタステーブル状態が発生することによって、比較回路801の出力信号OUTP、OUTNがともに変化しないとすると、減算用DA変換回路803と加算用DA変換回路804とによって生成されるアナログ電圧は減算も加算もされないことになる。減算用DA変換回路803と加算用DA変換回路804とによって生成されるアナログ電圧の減算も加算もされずに、外部から供給されるクロック信号CLKに従って次のビットの比較に移行してしまうと、正しいAD変換結果を得ることができない。
【0091】
そこで、前述した実施形態と同様に、比較回路801での比較判定動作中にコンパレータのメタステーブル状態が発生し、比較判定の動作開始から所定の時間が経過しても比較回路801の出力信号OUTP、OUTNが変化しない場合、判定アシスト回路により信号の値を変更することで、ラッチ回路の出力信号OUTP、OUTNを変化させる。これにより、逐次比較型AD変換回路800において、比較回路801での比較判定動作中にメタステーブル状態が発生した場合であっても、正しいAD変換結果を得ることが可能となる。
【0092】
(その他の実施形態)
図9は、本実施形態における半導体集積回路の構成例を示す図である。本実施形態における半導体集積回路は、アナログ電圧入力ノードINP、INNに入力されるアナログ電圧をnビットのデジタル値に変換して出力ノードDT[0]~DT[n-1]よりデジタル信号として出力する逐次比較型AD変換回路100、及び逐次比較型AD変換回路100から出力されたデジタル信号を受けてデジタル信号処理を行うロジック回路等のデジタル処理回路901を有する。
【0093】
逐次比較型AD変換回路100は、スイッチSWP、SWN、比較回路(COMP)101、制御回路(SAR_logic)102、及びDA変換回路(DAC)103P、103Nを有する。逐次比較型AD変換回路100における内部の回路構成や動作は、
図1に示した逐次比較型AD変換回路100と同様である。
【0094】
デジタル処理回路901は、逐次比較型AD変換回路100から出力ノードDT[0]~DT[n-1]を介して出力されるデジタル信号を受け、デジタル信号に係る処理動作等を行う。
【0095】
なお、
図9には、
図1に示した逐次比較型AD変換回路100を含む半導体集積回路を一例として示したが、本実施形態における半導体集積回路はこれに限定されるものではない。例えば、
図1に示した逐次比較型AD変換回路100に代えて、
図8に示した逐次比較型AD変換回路800を含むようにしてもよい。
【0096】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0097】
100 逐次比較型AD変換回路
101 比較回路
102 制御回路
103P、103N DA変換回路
210、610 比較回路
220、620、710 判定アシスト回路
230、630 ラッチ回路
240、640 クロック生成回路