IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本車輌製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-鉄道車両 図1
  • 特開-鉄道車両 図2
  • 特開-鉄道車両 図3
  • 特開-鉄道車両 図4
  • 特開-鉄道車両 図5
  • 特開-鉄道車両 図6
  • 特開-鉄道車両 図7
  • 特開-鉄道車両 図8
  • 特開-鉄道車両 図9
  • 特開-鉄道車両 図10
  • 特開-鉄道車両 図11
  • 特開-鉄道車両 図12
  • 特開-鉄道車両 図13
  • 特開-鉄道車両 図14
  • 特開-鉄道車両 図15
  • 特開-鉄道車両 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055058
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/08 20060101AFI20240411BHJP
   B61D 17/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B61D17/08
B61D17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161659
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】北山 茂
(72)【発明者】
【氏名】小畑 亮二
(72)【発明者】
【氏名】平野 博嗣
(72)【発明者】
【氏名】白井 篤史
(72)【発明者】
【氏名】大橋 健悟
(72)【発明者】
【氏名】大塚 大輔
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 賢太
(57)【要約】
【課題】部品点数の増加や溶接工数の増加を回避しつつ、外板の吹寄せ部における強度を簡単に向上できる鉄道車両を提供する。
【解決手段】外板2に窓開口部11が形成され、外板の車内面側に骨部材3が縦横に接合された側構体GKを有する鉄道車両10である。外板の車内面側には、吹寄せ部2Fにシアプレート4が接合され、シアプレートは、窓開口部における窓隅部MSから車体上下方向で離間した位置に形成されている。吹寄せ部の上方に位置して延設された窓上横骨部材31と、吹寄せ部の下方に位置して延設された窓下横骨部材32とが、外板の車内面に接合する2つのフランジ部を有する断面ハット型形状であり、窓上横骨部材及び窓下横骨部材の窓開口部側のフランジ部312、321が、シアプレートの上端部41及び下端部42までそれぞれ延設され、シアプレートの上端部及び下端部に沿って外板の車内面に接合されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外板に窓開口部が形成され、前記外板の車内面側に骨部材が車体上下方向と車体前後方向の縦横に接合された側構体を有する鉄道車両であって、
前記外板の車内面側には、前記窓開口部横の吹寄せ部にシアプレートが接合され、当該シアプレートは、前記窓開口部における上下の窓隅部から車体上下方向で前記窓開口部の中心寄りに離間した位置に当該シアプレートの上端部及び下端部が配置されるように形成されていること、
前記吹寄せ部の上方に位置して車体前後方向に沿って延設された窓上横骨部材と、前記吹寄せ部の下方に位置して車体前後方向に沿って延設された窓下横骨部材とが、前記外板の車内面に接合する2つのフランジ部を有する断面ハット型形状であり、
前記窓上横骨部材及び前記窓下横骨部材の窓開口部側のフランジ部が、前記シアプレートの上端部及び下端部までそれぞれ延設され、前記シアプレートの上端部及び下端部に沿って前記外板の車内面に接合されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記外板は、車体上下方向で分割され、それぞれ同一の板厚で形成されていること、
分割された前記外板の継ぎ目は、前記窓下横骨部材の反窓開口部側のフランジ部の位置に形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記外板は、車体上下方向で分割され、それぞれ同一の板厚で形成され、
分割された前記外板の継ぎ目は、前記シアプレートの位置に形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項3に記載された鉄道車両において、
前記シアプレートの上端部と下端部の車内面側には、車体前後方向に沿って延設された上横骨部材と下横骨部材とが接合され、
前記外板の継ぎ目は、前記上横骨部材と前記下横骨部材との中間部に配置されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記外板は、車体上下方向で分割され、それぞれ同一の板厚で形成されていること、
分割された前記外板の継ぎ目は、前記窓下横骨部材の窓開口部側のフランジ部の位置に形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された鉄道車両において、
前記窓上横骨部材及び前記窓下横骨部材の窓開口部側のフランジ部には、前記窓開口部に装着される窓枠用の受け部が前記窓開口部の上端縁及び下端縁の直線領域に形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項7】
請求項6に記載された鉄道車両において、
前記受け部が形成された箇所の前記フランジ部の車体上下方向の長さは、前記窓上横骨部材及び前記窓下横骨部材のハット型凸部の車体上下方向の長さより短く形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関し、詳しくは、窓開口部を有する側構体の外板において、吹寄せ部の車内面に接合したシアプレートと横骨部材の窓開口部側フランジ部とを介して吹寄せ部の剛性を高めた鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、通勤用の鉄道車両は、レール上を走行する前後の台車に支持され乗客を収容する車体を備えている。また、車体を構成する側構体の外板には、乗客が乗り降りする出入口開口部が車両前後方向で複数形成され、出入口開口部同士の間には、吹寄せ部を隔てて窓開口部が形成されている。そのため、車体の自重や乗客の荷重等が、前後の台車間に存在する外板の吹寄せ部に対して車体上下方向のせん断応力又は曲げ応力として作用し易く、外板の吹寄せ部に対する補強構造が種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、図14に示すように、窓開口部101が形成され、外板102の車内面側に骨部材103が車体上下方向と車体長手方向の縦横に接合された側構体110を有する鉄道車両100であって、外板102の車内面側には、窓開口部101横の吹寄せ部102F全体にシアプレート105が接合され、当該シアプレート105は、窓開口部101の上下にまで突き出た突起部105Tを備え、窓隅部R1を含む窓開口部101の枠形状に沿ってヘリ曲部105aが形成されたものである鉄道車両100が開示されている。
【0004】
また、上記鉄道車両100には、窓開口部101の上下で外板102に接合された横骨部材103aを備え、その横骨部材103aには、窓開口部101の枠形状に沿ってヘリ曲部1031aが形成され、当該ヘリ曲部1031aが、窓隅部R1に対応して形成されたシアプレート105のヘリ曲部105aと連続するように形成されている。また、横骨部材103aは、シアプレート105の突起部105Tとガゼット106によって連結され、当該ガゼット106にも横骨部材103aと突起部105Tの両ヘリ曲部1031a、105aに重なるヘリ曲部106aが形成されている。
【0005】
また、特許文献2には、図15図16に示すように、外板201が、幕板パネル201a、吹寄せパネル201b、及び腰板パネル201cを有し、窓開口部202が形成され、外板201の車内面に車体上下方向に沿って接合された縦骨部材203と、外板201の車内面に車体前後方向に沿って接合された横骨部材204とを備える側構体210を有する鉄道車両200において、吹寄せパネル201bの板厚が、幕板パネル201a及び腰板パネル201cの板厚より厚く形成され、窓開口部202横の吹寄せ部201Fの上方に位置する窓上横骨部材204aと、吹寄せ部201Fの下方に位置する窓下横骨部材204bが、断面ハット型形状であり、外板201の車内面に接する2つのフランジ部のうち、窓開口部202側のフランジ部2041a、2041bの長さが、他方のフランジ部2042a、2042bの長さと比べて延長されている鉄道車両200が開示されている。
【0006】
また、窓上横骨部材204aの窓開口部202側のフランジ部2041aは、幕板パネル201aと吹寄せパネル201bとの接続部206まで延長され、窓下横骨部材204bの窓開口部202側のフランジ部2041bは、吹寄せパネル201bと腰板パネル201cとの接続部207まで延長されている。また、吹寄せ部201Fに配置される縦骨部材203のフランジ部203aが、延長されたフランジ部2041a、2041bを挟んで外板201の板内面に接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-12861号公報
【特許文献2】特開2018-62316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載された鉄道車両100、200では、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1の鉄道車両100では、窓開口部101の上下で外板102に接合された横骨部材103aの窓開口部101側のフランジ部1031は、シアプレート105の突起部105Tと干渉しないように切り欠かれている。そのため、車体の自重や乗客の荷重等による応力が集中しやすい窓開口部101の窓隅部R1の近傍において、横骨部材103aの窓開口部101側のフランジ部1031とシアプレート105の突起部105Tとの間で、継ぎ目(微小な隙間)107が形成されることになる。したがって、その継ぎ目107の位置において、車体の自重や乗客の荷重等による応力が外板102に集中し、外板102に歪が生じやすいという問題があった。
【0009】
また、横骨部材103aの窓開口部101側のフランジ部1031とシアプレート105の突起部105Tとをガゼット106によって連結することにより、外板102に対する応力の集中を緩和させることは可能であるが、新たにガゼット106を製作し、横骨部材103aの窓開口部101側のフランジ部1031とシアプレート105の突起部105Tとに対して、ガゼット106をセットして溶接する必要がある。そのため、部品点数の増加や溶接工数の増加が避けられず、コストアップの要因となるという問題があった。
【0010】
また、上記特許文献2に記載された鉄道車両200では、窓上横骨部材204aの窓開口部202側のフランジ部2041aの端部は、幕板パネル201aと吹寄せパネル201bとの接続部206と略同一位置に形成されることになる。また、窓下横骨部材204bの窓開口部202側のフランジ部2041bの端部は、腰板パネル201cと吹寄せパネル201bとの接続部207と略同一位置に形成されることになる。そのため、幕板パネル201aと吹寄せパネル201bとの接続部206、及び腰板パネル201cと吹寄せパネル201bとの接続部207において、車体の自重や乗客の荷重等による応力が集中化され、強度低下を招きやすいという問題があった。さらに、幕板パネル201aと吹寄せパネル201bとの接続部206、及び腰板パネル201cと吹寄せパネル201bとの接続部207は、板厚の異なるパネル同士を突き合せ溶接する必要があり、溶接作業が難しいという問題があった。
【0011】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、部品点数の増加や溶接工数の増加を回避しつつ、外板の吹寄せ部における強度を簡単に向上できる鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両は、以下の構成を備えている。
(1)外板に窓開口部が形成され、前記外板の車内面側に骨部材が車体上下方向と車体前後方向の縦横に接合された側構体を有する鉄道車両であって、
前記外板の車内面側には、前記窓開口部横の吹寄せ部にシアプレートが接合され、当該シアプレートは、前記窓開口部における上下の窓隅部から車体上下方向で前記窓開口部の中心寄りに離間した位置に当該シアプレートの上端部及び下端部が配置されるように形成されていること、
前記吹寄せ部の上方に位置して車体前後方向に沿って延設された窓上横骨部材と、前記吹寄せ部の下方に位置して車体前後方向に沿って延設された窓下横骨部材とが、前記外板の車内面に接合する2つのフランジ部を有する断面ハット型形状であり、
前記窓上横骨部材及び前記窓下横骨部材の窓開口部側のフランジ部が、前記シアプレートの上端部及び下端部までそれぞれ延設され、前記シアプレートの上端部及び下端部に沿って前記外板の車内面に接合されていることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、外板の車内面側には、窓開口部横の吹寄せ部にシアプレートが接合され、当該シアプレートは、窓開口部における上下の窓隅部から車体上下方向で窓開口部の中心寄りに離間した位置に当該シアプレートの上端部及び下端部が配置されるように形成され、吹寄せ部の上方に位置して車体前後方向に沿って延設された窓上横骨部材と、吹寄せ部の下方に位置して車体前後方向に沿って延設された窓下横骨部材とが、外板の車内面に接合する2つのフランジ部を有する断面ハット型形状であり、窓上横骨部材及び窓下横骨部材の窓開口部側のフランジ部が、シアプレートの上端部及び下端部までそれぞれ延設され、シアプレートの上端部及び下端部に沿って外板の車内面に接合されているので、車体の自重や乗客の荷重等による応力が集中しやすい窓開口部の窓隅部から離間した位置に、シアプレートと窓上横骨部材及び窓下横骨部材の窓開口部側のフランジ部との継ぎ目を配置することができる。そのため、上記継ぎ目の位置において、外板に対する応力の集中を回避して、外板に発生する歪を低減できる。
【0014】
また、車体の自重や乗客の荷重等による応力が集中しやすい窓開口部の窓隅部から離間した位置に、シアプレートと窓上横骨部材及び窓下横骨部材との継ぎ目を配置することができるので、当該継ぎ目の位置にて、窓上横骨部材及び窓下横骨部材の窓開口部側のフランジ部とシアプレートの上端部及び下端部とを、ガゼット等によって連結する必要がなく、部品点数の増加や溶接工数の増加を回避できる。
【0015】
また、外板の車内面側には、窓開口部横の吹寄せ部にシアプレートが接合されているので、外板の吹寄せ部とシアプレートとを2枚重ねた状態で車内側からレーザ溶接等によって接合でき、外板同士を突合せ溶接する必要がない。また、窓上横骨部材及び窓下横骨部材の窓開口部側のフランジ部は、シアプレートの上端部及び下端部に沿って外板の車内面に接合されているので、外板の吹寄せ部とフランジ部とを2枚重ねた状態で車内側からレーザ溶接等によって接合できる。そのため、各溶接等の接合作業を簡単に行うことができる。また、外板の吹寄せ部において、各溶接等の接合部がそれぞれ異なる位置に形成できるので、外板の吹寄せ部における接合部での応力の変化を緩和でき、外板の吹寄せ部における強度を向上できる。
【0016】
よって、本発明によれば、部品点数の増加や溶接工数の増加を回避しつつ、外板の吹寄せ部における強度を簡単に向上できる鉄道車両を提供することができる。
【0017】
(2)(1)に記載された鉄道車両において、
前記外板は、車体上下方向で分割され、それぞれ同一の板厚で形成されていること、
分割された前記外板の継ぎ目は、前記窓下横骨部材の反窓開口部側のフランジ部の位置に形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、外板は、車体上下方向で分割され、それぞれ同一の板厚で形成され、分割された外板の継ぎ目は、窓下横骨部材の反窓開口部側のフランジ部の位置に形成されているので、上下に分割された外板は、継ぎ目の近傍で、窓下横骨部材の反窓開口部側のフランジ部に対して、それぞれレーザ溶接等によって車内側から車体前後方向に沿って簡単に接合させることができる。そのため、外板の継ぎ目近傍の接合部に対する、車体の自重や乗客の荷重等による応力が集中しやすい窓開口部の窓隅部側からの応力を、窓下横骨部材の窓開口部側のフランジ部とハット型凸部とによって遮断又は低減させることができる。そのため、外板の吹寄せ部における強度をより一層簡単かつ効果的に向上させることができる。
【0019】
(3)(1)に記載された鉄道車両において、
前記外板は、車体上下方向で分割され、それぞれ同一の板厚で形成され、
分割された前記外板の継ぎ目は、前記シアプレートの位置に形成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、外板は、車体上下方向で分割され、それぞれ同一の板厚で形成され、分割された外板の継ぎ目は、シアプレートの位置に形成されているので、上下に分割された外板は、継ぎ目の近傍で、シアプレートに対して、それぞれレーザ溶接等によって簡単に接合させることができる。そのため、外板の継ぎ目近傍の接合部に対する、車体の自重や乗客の荷重等による応力が集中しやすい窓開口部の窓隅部側からの応力を、窓上横骨部材及び窓下横骨部材の窓開口部側のフランジ部とシアプレートとによって遮断又は低減させることができる。その結果、外板の吹寄せ部における強度をより一層簡単かつ効果的に向上させることができる。
【0021】
(4)(3)に記載された鉄道車両において、
前記シアプレートの上端部と下端部には、車体前後方向に沿って延設された上横骨部材と下横骨部材とが接合され、
前記外板の継ぎ目は、前記上横骨部材と前記下横骨部材との中間部に配置されていることを特徴とする。
【0022】
本発明においては、シアプレートの上端部と下端部には、車体前後方向に沿って延設された上横骨部材と下横骨部材とが接合され、外板の継ぎ目は、上横骨部材と下横骨部材との中間部に配置されているので、シアプレートに対して車体前後方向に沿って接合させた外板の継ぎ目近傍の接合部に対する、車体の自重や乗客の荷重等による応力が集中しやすい窓開口部の窓隅部側からの応力を、上横骨部材及び下横骨部材によってより一層効果的に遮断又は低減させることができる。そのため、外板の吹寄せ部における強度を更に向上させることができる。
【0023】
(5)(1)に記載された鉄道車両において、
前記外板は、車体上下方向で分割され、それぞれ同一の板厚で形成されていること、
分割された前記外板の継ぎ目は、前記窓下横骨部材の窓開口部側のフランジ部の位置に形成されていることを特徴とする。
【0024】
本発明においては、外板は、車体上下方向で分割され、それぞれ同一の板厚で形成され、分割された外板の継ぎ目は、窓下横骨部材の窓開口部側のフランジ部の位置に形成されているので、上下に分割された外板は、継ぎ目の近傍で、窓下横骨部材の窓開口部側のフランジ部に対して、それぞれレーザ溶接等によって簡単に接合させることができる。そのため、外板の継ぎ目近傍の接合部に対する、車体の自重や乗客の荷重等による応力が集中しやすい窓開口部の窓隅部側からの応力を、窓下横骨部材の窓開口部側のフランジ部によって遮断又は低減させることができる。そのため、外板の吹寄せ部における強度をより一層簡単かつ効果的に向上させることができる。
【0025】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記窓上横骨部材及び前記窓下横骨部材の窓開口部側のフランジ部には、前記窓開口部に装着される窓枠用の受け部が前記窓開口部の上端縁及び下端縁の直線領域に形成されていることを特徴とする。
【0026】
本発明においては、窓上横骨部材及び窓下横骨部材の窓開口部側のフランジ部には、窓開口部に装着される窓枠用の受け部が窓開口部の上端縁及び下端縁の直線領域に形成されているので、窓上横骨部材及び窓下横骨部材のハット型凸部を折り曲げるベンダー装置で、窓枠用の受け部を簡単に曲げ加工できる。すなわち、窓上横骨部材及び窓下横骨部材のハット型凸部は、鋼板を直線状に折り曲げるベンダー装置によって曲げ加工できるが、窓枠用の受け部は、窓開口部の上端縁及び下端縁の直線領域に形成されているので、同じベンダー装置によって簡単に曲げ加工できる。そのため、専用の曲げ金型を製作する手間と費用が省ける。
【0027】
(7)(6)に記載された鉄道車両において、
前記受け部が形成された箇所の前記フランジ部の車体上下方向の長さは、前記窓上横骨部材及び前記窓下横骨部材のハット型凸部の車体上下方向の長さより短く形成されていることを特徴とする。
【0028】
本発明においては、受け部が形成された箇所のフランジ部の車体上下方向の長さは、窓上横骨部材及び窓下横骨部材のハット型凸部の車体上下方向の長さより短く形成されているので、窓枠に対する受け部の剛性を、距離的に近いハット型凸部の剛性によって補完させることができる。したがって、窓枠用の受け部を簡単に形成できると共に、より効果的に剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、部品点数の増加や溶接工数の増加を回避しつつ、外板の吹寄せ部における強度を簡単に向上できる鉄道車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両の概略側面図である。
図2図1に示す鉄道車両の側構体を車内側から見た側面図である。
図3図2に示すA‐A断面図である。
図4図3に示す外板に対する窓下横骨部材及びシアプレートの接合部を表す概略断面図である。
図5図3に示す外板に対する窓上横骨部材及びシアプレートの接合部を現わす概略断面図である。
図6図2に示す側構体の断面図であって、(A)は図2に示すB-B断面図を示し、(B)は図2に示すC-C断面図を示す。
図7図6に示すD部詳細断面図である。
図8図7に示す窓下横骨部材の車内側から見た側面図である。
図9図8に示すE-E断面図である。
図10】第1変形例に係る鉄道車両における図2に示すA‐A断面図である。
図11図10に示す外板に対する窓下横骨部材及びシアプレートの接合部を現わす概略断面図である。
図12】第2変形例に係る鉄道車両における図2に示すA‐A断面図である。
図13図12に示す外板に対する窓下横骨部材及びシアプレートの接合部を現わす概略断面図である。
図14】特許文献1に記載された鉄道車両の窓開口部における部分詳細図であって、(a)は窓隅部周辺の側面図を示し、(b)はその断面図を示す。
図15】特許文献2に記載された鉄道車両の窓開口部における部分詳細図である。
図16図15に示すX‐X断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両について、図面を参照しながら詳細に説明する。具体的には、本実施形態の一態様に係る鉄道車両の構成及び作用効果を詳細に説明した上で、本鉄道車両の変形例について説明する。
【0032】
<本鉄道車両の構成及び作用効果>
本鉄道車両の構成及び作用効果について、図1図9を用いて説明する。図1に、本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両の概略側面図を示す。図2に、図1に示す鉄道車両の側構体を車内側から見た側面図を示す。図3に、図2に示すA‐A断面図を示す。図4に、図3に示す外板に対する窓下横骨部材及びシアプレートの接合部を表す概略断面図を示す。図5に、図3に示す外板に対する窓上横骨部材及びシアプレートの接合部を現わす概略断面図を示す。図6に、図2に示す側構体の断面図であって、(A)は図2に示すB-B断面図を示し、(B)は図2に示すC-C断面図を示す。図7に、図6に示すD部詳細断面図を示す。図8に、図7に示す窓下横骨部材の車内側から見た側面図を示す。図9に、図8に示すE-E断面図を示す。
【0033】
図1図9に示すように、本鉄道車両10は、外板2に窓開口部11が形成され、外板2の車内面側に骨部材3が車体上下方向と車体前後方向の縦横に接合された側構体GKを有する鉄道車両10である。側構体GKの外板2は、例えば、ステンレス鋼板で形成されている。
【0034】
なお、図1に示すように、本鉄道車両10は、レールRL上を走行する前後の台車DSに支持され乗客を収容する車体1を備えている。車体1は、台車DSに支持される台枠DWと、台枠DWの前端部及び後端部に起立する妻構体TKと、台枠DWの両側端部に起立する側構体GKと、妻構体TK及び側構体GKの上端部に連結される屋根構体YKとを備えている。
【0035】
また、側構体GKの外板2には、乗客が乗り降りする出入口開口部12が車両前後方向に沿って略等間隔に複数形成されている。出入口開口部12は、側扉GTによって開閉される。出入口開口部12同士の間には、吹寄せ部2Fを隔てて窓開口部11が形成されている。ここでは、側構体GKは、外板2に窓開口部11を有し出入口開口部12と隣接する位置まで矩形状に延設された矩形状ブロックGK1と、出入口開口部12の周縁を枠状に囲む枠状ブロックGK2とが、車体前後方向に連結して形成されているが、必ずしも、矩形状ブロックGK1と枠状ブロックGK2とが連結されたものに限る必要はなく、各種形態に形成しても良い。なお、妻構体TKと隣接する位置には、乗員用の側扉GTaが開閉可能に形成された枠状ブロックGK2aと、より小さい窓開口部11aが形成された矩形状ブロックGK1aとが連結された側構体GKを備えている。
【0036】
また、図1図5に示すように、側構体GKの外板2の車内面側には、窓開口部11横の吹寄せ部2Fにシアプレート4が接合されている。シアプレート4は、窓開口部11における上下の窓隅部MSから車体上下方向で窓開口部11の中心寄りに離間した位置に当該シアプレート4の上端部41及び下端部42が配置されるように形成されている。ここでは、側構体GKの外板2は、窓開口部11の下端縁112より下方で上下に2分割され、その継ぎ目6より上方の外板21(2)が幕板と吹寄せ部を構成し、その継ぎ目6より下方の外板22(2)が腰板を構成している。外板2の車内面に対する、シアプレート4の接合部Y5、Y6、Y7、Y8は、シアプレート4の上端部41と下端部42と中間部43との各箇所で形成され、特にシアプレート4の上端部41と下端部42の車内面側に接合する上横骨部材33、下横骨部材34の各フランジ部331、332、341、342と干渉しない位置に形成されている。
【0037】
なお、窓開口部11は、上端縁111及び下端縁112が車体前後方向へ直線状に延設され、前端縁113及び後端縁114が車体上下方向へ直線状に延設された略長方形状に形成されている。窓開口部11の上下端縁111、112及び前後端縁113、114の交差部は、円弧状に形成された窓隅部MS(MS1、MS2、MS3、MS4)を構成する。シアプレート4は、窓隅部MS(MS1、MS2、MS3、MS4)から車体上下方向で離間した位置で四角形状に形成されている。シアプレート4の車体上下方向の長さは、窓開口部11の直線状に形成された前後端縁113、114の車体上下方向の長さより短く形成されている。ここでは、シアプレート4の板厚は、外板2(21、22)の板厚と同一の板厚に形成されているが、外板2(21、22)の板厚と異なる板厚に形成されていても良い。シアプレート4は、外板2と同様にステンレス鋼板で形成されている。
【0038】
また、吹寄せ部2Fの上方に位置して車体前後方向に沿って延設された窓上横骨部材31と、吹寄せ部2Fの下方に位置して車体前後方向に沿って延設された窓下横骨部材32とは、外板2の車内面に接合する2つのフランジ部311、312、321、322を有する断面ハット型形状である。また、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32の窓開口部11側のフランジ部312、321が、シアプレート4の上端部41及び下端部42までそれぞれ延設され、シアプレート4の上端部41及び下端部42に沿って外板2の車内面に接合されている。なお、外板2の車内面に対する、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32の窓開口部11側のフランジ部312、321の接合部Y9、Y10、Y4、Y3は、フランジ先端寄りとハット型凸部313、323寄りの2箇所に形成され、車体前後方向へ連続状に形成されている。外板2の車内面に対する、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32の反窓開口部側のフランジ部311、322の接合部Y11、Y1、Y2は、車体前後方向へ連続状に形成されている。
【0039】
本鉄道車両10は、上記構成を備えているので、車体1の自重や乗客の荷重等による応力が集中しやすい窓開口部11の窓隅部MSから離間した位置に、シアプレート4と窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32の窓開口部11側のフランジ部312、321との継ぎ目5(51、52)を配置することができる。そのため、上記継ぎ目5(51、52)の位置において、外板2に対する応力の集中を回避して、外板2に発生する歪を低減できる。
【0040】
また、車体1の自重や乗客の荷重等による応力が集中しやすい窓開口部11の窓隅部MSから離間した位置に、シアプレート4と窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32のとの継ぎ目5(51、52)を配置することができるので、当該継ぎ目5(51、52)の位置にて、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32の窓開口部11側のフランジ部312、321とシアプレート4の上端部41及び下端部42とを、ガゼット等によって連結する必要がなく、部品点数の増加や溶接工数の増加を回避できる。
【0041】
また、外板2の車内面側には、窓開口部11横の吹寄せ部2Fにシアプレート4が接合されているので、外板2の吹寄せ部2Fとシアプレート4とを2枚重ねた状態で車内側からレーザ溶接等によって接合でき、外板2同士を突合せ溶接する必要がない。また、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32の窓開口部11側のフランジ部312、321は、シアプレート4の上端部41及び下端部42に沿って外板2の車内面に接合されているので、外板2の吹寄せ部2Fとフランジ部312、321とを2枚重ねた状態で車内側からレーザ溶接等によって接合できる。そのため、各溶接等の接合作業を車内側から簡単に行うことができる。また、外板2の吹寄せ部2Fにおいて、各溶接等の接合部Y1~Y11がそれぞれ異なる位置に形成できるので、外板2の吹寄せ部2Fにおける接合部Y1~Y11での応力の変化を緩和でき、外板2の吹寄せ部2Fにおける強度を向上できる。
【0042】
よって、本鉄道車両10によれば、部品点数の増加や溶接工数の増加を回避しつつ、外板2の吹寄せ部2Fにおける強度を簡単に向上できる鉄道車両10を提供することができる。
【0043】
また、図1図4に示すように、本鉄道車両10において、外板2(21、22)は、車体上下方向で分割され、それぞれ同一の板厚で形成され、分割された外板2(21、22)の継ぎ目6は、窓下横骨部材32の反窓開口部側のフランジ部322の位置に形成されていることが好ましい。
【0044】
この場合、上下に分割された外板2(21、22)は、継ぎ目6の近傍で、窓下横骨部材32の反窓開口部側のフランジ部322に対して、それぞれレーザ溶接等によって簡単に接合させることができる。そのため、外板2(21、22)の継ぎ目6近傍の接合部Y1、Y2に対する、車体1の自重や乗客の荷重等による応力が集中しやすい窓開口部11の窓隅部MS側からの応力を、窓下横骨部材32の窓開口部11側のフランジ部321とハット型凸部323とによって遮断又は低減させることができる。そのため、外板2(21、22)の吹寄せ部2Fにおける強度をより一層簡単かつ効果的に向上させることができる。なお、上下に分割された外板2(21、22)は、継ぎ目6の近傍で、窓下横骨部材32の反窓開口部側のフランジ部322に対して、それぞれレーザ溶接によって車体前後方向へ連続状に接合させることができる。
【0045】
また、図2図6図9に示すように、本鉄道車両10において、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32の窓開口部11側のフランジ部312、321には、窓開口部11に装着される窓枠7用の受け部312Z、321Zが窓開口部11の上端縁111及び下端縁112の直線領域TRに形成されていることが好ましい。更に、受け部312Z、321Zが形成された箇所のフランジ部312、321の車体上下方向の長さQ1は、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32のハット型凸部313、323の車体上下方向の長さQ2より短く形成されていることが好ましい。
【0046】
なお、窓枠7用の受け部312Z、321Zは、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32の窓開口部11側のフランジ部312、321を車内側へ直角状に折り曲げて形成する。フランジ部312、321には、窓枠7用の受け部312Z、321Zの直線領域TRにおける前端部及び後端部に切欠き部KYが形成されている。窓枠7用の受け部312Z、321Zには、窓枠7のシール部71が当接されている。
【0047】
この場合、窓枠7用の受け部312Z、321Zが窓開口部11の上端縁111及び下端縁112の直線領域TRに形成されているので、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32のハット型凸部313、323を折り曲げるベンダー装置で、窓枠7用の受け部312Z、321Zを簡単に曲げ加工できる。すなわち、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32のハット型凸部313、323は、鋼板を直線状に折り曲げるベンダー装置によって曲げ加工できるが、窓枠7用の受け部312Z、321Zは、窓開口部11の上端縁111及び下端縁112の直線領域TRに形成されているので、同じベンダー装置によって窓枠7用の受け部312Z、321Zを簡単に曲げ加工できる。そのため、専用の曲げ金型を製作する手間と費用が省ける。
【0048】
また、受け部312Z、321Zが形成された箇所のフランジ部312、321の車体上下方向の長さQ1が、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32のハット型凸部313、323の車体上下方向の長さQ2より短く形成されている場合には、窓枠7に対する受け部312Z、321Zの剛性を、距離的に近いハット型凸部313、323の剛性によって補完させることができる。したがって、窓枠7用の受け部312Z、321Zを簡単に形成できると共に、より効果的に剛性を高めることができる。
【0049】
また、図2図6に示すように、窓下横骨部材32の下方及び窓上横骨部材31の上方には、外板2(21、22)の車内面側に接合された横骨部材3(35、35B、36、36B)が車体前後方向へ延設されている。また、窓上横骨部材31、窓下横骨部材32、上横骨部材33、下横骨部材34、及び横骨部材3(35、35B、36、36B)は、窓開口部11の前後端縁113、114の近傍で車体上下方向に延設された縦骨部材3(37、38)によって連結されている。上記縦骨部材3(37、38)は、断面ハット型形状であり、そのフランジ部371、381が、窓開口部11の前後端縁113、114及び窓隅部MSの近傍で、シアプレート4の車内面側と窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32の窓開口部11側のフランジ部312、321の車内面側とに接合されている。これによって、外板2の吹寄せ部2Fの剛性を更に向上させることができる。
【0050】
<変形例>
以上、本実施形態に係る鉄道車両10を詳細に説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本実施形態によれば、外板2(21、22)は、車体上下方向で分割され、それぞれ同一の板厚で形成され、分割された外板2(21、22)の継ぎ目6は、窓下横骨部材32の反窓開口部側のフランジ部322の位置に形成されているが、必ずしもこれに限る必要はなく、以下に述べる第1、2変形例でも良い。
【0051】
(第1変形例)
例えば、第1変形例の鉄道車両10Bでは、図10図11に示すように、外板2Bは、車体上下方向で分割され、それぞれ同一の板厚で形成され、分割された外板2B(21B、22B)の継ぎ目6Bは、シアプレート4の位置に形成されている。
【0052】
この場合、上下に分割された外板2B(21B、22B)は、継ぎ目6Bの近傍で、シアプレート4に対して、それぞれレーザ溶接等によって簡単に接合させることができる。そのため、外板2B(21B、22B)の継ぎ目6B近傍の接合部Y6、Y7に対する、車体1の自重や乗客の荷重等による応力が集中しやすい窓開口部11の窓隅部MS側からの応力を、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32の窓開口部11側のフランジ部312、321とシアプレート4とによって遮断又は低減させることができる。その結果、外板2B(21B、22B)の吹寄せ部2Fにおける強度をより一層簡単かつ効果的に向上させることができる。なお、上下に分割された外板2B(21B、22B)は、継ぎ目6Bの近傍で、シアプレート4に対して、それぞれレーザ溶接によって車体前後方向へ連続状に接合させることができる。
【0053】
また、第1変形例の鉄道車両10Bにおいて、シアプレート4の上端部41と下端部42には、車体前後方向に沿って延設された上横骨部材33と下横骨部材34とが接合され、外板2B(21B、22B)の継ぎ目6Bは、上横骨部材33と下横骨部材34との中間部43に配置されていることが好ましい。
【0054】
この場合、シアプレート4に対して車体前後方向に沿って接合させた外板2B(21B、22B)の継ぎ目6B近傍の接合部Y6、Y7に対する、車体1の自重や乗客の荷重等による応力が集中しやすい窓開口部11の窓隅部MS側からの応力を、上横骨部材33及び下横骨部材34によってより一層効果的に遮断又は低減させることができる。そのため、外板2B(21B、22B)の吹寄せ部2Fにおける強度を更に向上させることができる。
【0055】
(第2変形例)
例えば、第2変形例の鉄道車両10Cでは、図12図13に示すように、外板2Cは、車体上下方向で分割され、それぞれ同一の板厚で形成され、分割された外板2C(21C、22C)の継ぎ目6Cは、窓下横骨部材32の窓開口部側のフランジ部321の位置に形成されている。
【0056】
この場合、上下に分割された外板2C(21C、22C)は、継ぎ目6Cの近傍で、窓下横骨部材32の窓開口部側のフランジ部321に対して、それぞれレーザ溶接等によって簡単に接合させることができる。そのため、外板2C(21C、22C)の継ぎ目6C近傍の接合部Y3、Y4に対する、車体1の自重や乗客の荷重等による応力が集中しやすい窓開口部11の窓隅部MS側からの応力を、窓下横骨部材32の窓開口部側のフランジ部321によって遮断又は低減させることができる。そのため、外板2C(21C、22C)の吹寄せ部2Fにおける強度をより一層簡単かつ効果的に向上させることができる。なお、上下に分割された外板2C(21C、22C)は、継ぎ目6Cの近傍で、窓下横骨部材32の窓開口部側のフランジ部321に対して、それぞれレーザ溶接によって車体前後方向へ連続状に接合させることができる。
【0057】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両10、10B、10Cによれば、外板2、2B、2Cの車内面側には、窓開口部11横の吹寄せ部2Fにシアプレート4が接合され、当該シアプレート4は、窓開口部11における上下の窓隅部MSから車体上下方向で窓開口部11の中心寄りに離間した位置に当該シアプレート4の上端部41及び下端部42が配置されるように形成され、吹寄せ部2Fの上方に位置して車体前後方向に沿って延設された窓上横骨部材31と、吹寄せ部2Fの下方に位置して車体前後方向に沿って延設された窓下横骨部材32とが、外板2の車内面に接合する2つのフランジ部311、312、321、322を有する断面ハット型形状であり、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32の窓開口部11側のフランジ部312、321が、シアプレート4の上端部41及び下端部42までそれぞれ延設され、シアプレート4の上端部41及び下端部42に沿って外板2の車内面に接合されているので、車体1の自重や乗客の荷重等による応力が集中しやすい窓開口部11の窓隅部MSから離間した位置に、シアプレート4と窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32の窓開口部11側のフランジ部312、321との継ぎ目5(51、52)を配置することができる。そのため、上記継ぎ目5(51、52)の位置において、外板2、2B、2Cに対する応力の集中を回避して、外板2、2B、2Cに発生する歪を低減できる。
【0058】
また、車体1の自重や乗客の荷重等による応力が集中しやすい窓開口部11の窓隅部MSから離間した位置に、シアプレート4と窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32のとの継ぎ目5(51、52)を配置することができるので、当該継ぎ目5(51、52)の位置にて、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32の窓開口部11側のフランジ部312、321とシアプレート4の上端部41及び下端部42とを、ガゼット等によって連結する必要がなく、部品点数の増加や溶接工数の増加を回避できる。
【0059】
また、外板2、2B、2Cの車内面側には、窓開口部11横の吹寄せ部2Fにシアプレート4が接合されているので、外板2、2B、2Cの吹寄せ部2Fとシアプレート4とを2枚重ねた状態で車内側からレーザ溶接等によって接合でき、外板2同士を突合せ溶接する必要がない。また、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32の窓開口部11側のフランジ部312、321は、シアプレート4の上端部41及び下端部42に沿って外板2、2B、2Cの車内面に接合されているので、外板2の吹寄せ部2Fとフランジ部312、321とを2枚重ねた状態で車内側からレーザ溶接等によって車体前後方向に沿って連続状に接合できる。そのため、各溶接等の接合作業を簡単に行うことができる。また、外板2の吹寄せ部2Fにおいて、各溶接等の接合部Y1~Y11がそれぞれ異なる位置に形成できるので、外板2の吹寄せ部2Fにおける接合部Y1~Y11での応力の変化を緩和でき、外板2の吹寄せ部2Fにおける強度を向上できる。
【0060】
よって、本実施形態によれば、部品点数の増加や溶接工数の増加を回避しつつ、外板2、2B、2Cの吹寄せ部2Fにおける強度を簡単に向上できる鉄道車両10、10B、10Cを提供することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、外板2は、車体上下方向で分割され、それぞれ同一の板厚で形成され、分割された外板2(21、22)の継ぎ目6は、窓下横骨部材32の反窓開口部側のフランジ部322の位置に形成されているので、上下に分割された外板2(21、22)は、継ぎ目6の近傍で、窓下横骨部材32の反窓開口部側のフランジ部322に対して、それぞれレーザ溶接等によって簡単に接合させることができる。そのため、外板2(21、22)の継ぎ目6近傍の接合部Y1、Y2に対する、車体1の自重や乗客の荷重等による応力が集中しやすい窓開口部11の窓隅部MS側からの応力を、窓下横骨部材32の窓開口部11側のフランジ部321とハット型凸部323とによって遮断又は低減させることができる。そのため、外板2(21、22)の吹寄せ部2Fにおける強度をより一層簡単かつ効果的に向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、外板2Bは、車体上下方向で分割され、それぞれ同一の板厚で形成され、分割された外板2B(21B、22B)の継ぎ目6Bは、シアプレート4の位置に形成されているので、上下に分割された外板2B(21B、22B)は、継ぎ目6Bの近傍で、シアプレート4に対して、それぞれレーザ溶接等によって簡単に接合させることができる。そのため、外板2B(21B、22B)の継ぎ目6B近傍の接合部Y6、Y7に対する、車体1の自重や乗客の荷重等による応力が集中しやすい窓開口部11の窓隅部MS側からの応力を、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32の窓開口部11側のフランジ部312、321とシアプレート4とによって遮断又は低減させることができる。そのため、外板2B(21B、22B)の吹寄せ部2Fにおける強度をより一層簡単かつ効果的に向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、シアプレート4の上端部41と下端部42の車内面側には、車体前後方向に沿って延設された上横骨部材33と下横骨部材34とが接合され、外板2B(21B、22B)の継ぎ目6Bは、上横骨部材33と下横骨部材34との中間部43に配置されているので、シアプレート4に対して車体前後方向に沿って接合させた外板2B(21B、22B)の継ぎ目6B近傍の接合部Y6、Y7に対する、車体1の自重や乗客の荷重等による応力が集中しやすい窓開口部11の窓隅部MS側からの応力を、上横骨部材33及び下横骨部材34によってより一層効果的に遮断又は低減させることができる。そのため、外板2B(21B、22B)の吹寄せ部2Fにおける強度を更に向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、外板2Cは、車体上下方向で分割され、それぞれ同一の板厚で形成され、分割された外板2C(21C、22C)の継ぎ目6Cは、窓下横骨部材32の窓開口部側のフランジ部321の位置に形成されているので、上下に分割された外板2C(21C、22C)は、継ぎ目6Cの近傍で、窓下横骨部材32の窓開口部側のフランジ部321に対して、それぞれレーザ溶接等によって簡単に接合させることができる。そのため、外板2C(21C、22C)の継ぎ目6C近傍の接合部Y3、Y4に対する、車体1の自重や乗客の荷重等による応力が集中しやすい窓開口部11の窓隅部MS側からの応力を、窓下横骨部材32の窓開口部側のフランジ部321によって遮断又は低減させることができる。そのため、外板2C(21C、22C)の吹寄せ部2Fにおける強度をより一層簡単かつ効果的に向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32の窓開口部11側のフランジ部312、321には、窓開口部11に装着される窓枠7用の受け部312Z、321Zが窓開口部11の上端縁111及び下端縁112の直線領域TRに形成されているので、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32のハット型凸部313、323を折り曲げるベンダー装置で、窓枠7用の受け部312Z、321Zを簡単に曲げ加工できる。すなわち、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32のハット型凸部313、323は、鋼板を直線状に折り曲げるベンダー装置によって曲げ加工できるが、窓枠7用の受け部312Z、321Zは、窓開口部11の上端縁111及び下端縁112の直線領域TRに形成されているので、同じベンダー装置によって簡単に曲げ加工できる。そのため、専用の曲げ金型を製作する手間と費用が省ける。
【0066】
また、本実施形態によれば、受け部312Z、321Zが形成された箇所のフランジ部312、321の車体上下方向の長さQ1は、窓上横骨部材31及び窓下横骨部材32のハット型凸部313、323の車体上下方向の長さQ2より短く形成されているので、窓枠7に対する受け部312Z、321Zの剛性を、距離的に近いハット型凸部313、323の剛性によって補完させることができる。したがって、窓枠7用の受け部312Z、321Zを簡単に形成できると共に、より効果的に剛性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、窓開口部を有する側構体の外板において、吹寄せ部の車内面に接合したシアプレートと横骨部材の窓開口部側フランジ部とを介して吹寄せ部の剛性を高めた鉄道車両として利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1 車体
2、2B、2C 外板
2F 吹寄せ部
3 骨部材、横骨部材、縦骨部材
4 シアプレート
5、51、52 継ぎ目
6、6B、6C 継ぎ目
10、10B、10C 鉄道車両
11 窓開口部
12 出入口開口部
21、21B、21C 外板
22、22B、22C 外板
31 窓上横骨部材
32 窓下横骨部材
33 上横骨部材
34 下横骨部材
41 上端部
42 下端部
43 中間部
111 上端縁
112 下端縁
311、312、321、322 フランジ部
312Z、321Z 受け部
313、323 ハット型凸部
GK 側構体
MS、MS1、MS2、MS3、MS4 窓隅部
TR 直線領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16