(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055059
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61D 17/08 20060101AFI20240411BHJP
B61D 17/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B61D17/08
B61D17/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161660
(22)【出願日】2022-10-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 猛哲
(72)【発明者】
【氏名】大橋 健悟
(57)【要約】
【課題】車両側面からの衝突荷重に対する強度を確保し易く、精度良く簡単に製作できる裾絞り構造を有する鉄道車両を提供する。
【解決手段】側外板2における腰板22の車両下部222を、腰板の板厚の50~200倍の曲率半径Rで曲げ形成された湾曲部223を介して車両内方へ傾斜させた鉄道車両10である。腰板の車両上部の下端部221aにはハット断面の第1の横骨部材3aの車外側フランジ部31aが接合され、腰板の車両下部の上端部222bには、ハット断面の第2の横骨部材3bの車外側フランジ部31bが接合され、ハット断面の側柱部材の車外側フランジ部41は、第1、2の横骨部材の車内側天頂部32a、32bに接合され、側柱部材は、第1、2の横骨部材の間で、湾曲部に沿って曲げ形成され、かつ曲げ形成領域4Mの範囲で車内側天頂部42Mと側壁部43Mとがコの字断面を形成するように切り欠き形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側構体の側外板と、前記側外板の車内側に車外側フランジ部が接合されレール方向に延設されたハット断面の横骨部材と、前記横骨部材の車内側天頂部に車外側フランジ部が接合され車両上下方向に延設されたハット断面の側柱部材とを備え、前記側外板における腰板の車両下部を、前記腰板の車両上部に対して前記腰板の板厚の50~200倍の曲率半径で曲げ形成された湾曲部を介して車両内方へ傾斜させた裾絞り構造を有する鉄道車両であって、
前記腰板における前記車両上部の下端部には、第1の前記横骨部材の車外側フランジ部が接合され、前記腰板における前記車両下部の上端部には、第2の前記横骨部材の車外側フランジ部が接合されていること、
前記側柱部材の車外側フランジ部は、前記第1の横骨部材の車内側天頂部と前記第2の横骨部材の車内側天頂部とに接合されていること、
前記側柱部材は、前記第1の横骨部材と前記第2の横骨部材との間で、前記湾曲部に沿って曲げ形成され、かつ曲げ形成領域の範囲で車内側天頂部と側壁部とがコの字断面を形成するように切り欠き形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記側柱部材の切り欠き形成された前記側壁部のフランジ幅は、前記曲げ形成領域の全範囲で一定の大きさに形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記側柱部材の切り欠き形成された前記側壁部の車両上下方向の長さは、前記湾曲部の車両上下方向の長さより大きく形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記側柱部材は、前記曲げ形成領域の範囲で、前記車内側天頂部が前記湾曲部の曲率半径以上の曲率半径で曲げ形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された鉄道車両において、
前記側柱部材の切り欠き形成された側壁部には、少なくとも一方の側壁部の切り欠き形状を塞ぐ塞ぎ板を備え、
前記塞ぎ板は、先端部が前記側柱部材の車外側フランジ部より車外側へ突出して形成され、基端部が前記側壁部に対して前記切り欠き形状に沿って連続状に接合されていることを特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関し、より詳しくは、側構体の側外板における腰板の車両下部を車両上部に対して湾曲部を介して車両内方へ傾斜させた裾絞り構造を有する鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両の側構体には、側外板と、側外板の車内側に車外側フランジ部が接合されレール方向に延設されたハット断面の横骨部材と、横骨部材の車内側天頂部に車外側フランジ部が接合され車両上下方向に延設されたハット断面の側柱部材とを、主に備えている。また、側外板は、車両上方に配置される幕板と、車両下方に配置される腰板と、必要に応じて幕板及び腰板の車内側に重ね合されるシアプレートとを、主に備えている。そして、例えば、通勤用の鉄道車両では、客室内の容積を出来る限り大きく確保する等の理由から、幕板と腰板の車両上部とを車両外方へ突出させると共に、腰板の車両下部を車両上部に対して湾曲部を介して車両内方へ傾斜させた裾絞り構造が、採用されている場合が多い。
【0003】
例えば、
図10に示すように、裾絞り構造SK1を有する従来の鉄道車両100では、腰板101の車両上部101aと車両内方へ傾斜する車両下部101bとが交差する湾曲部101cにおける曲率半径R1は、ハット断面の側柱部材103を湾曲部101cに沿って曲げ加工できるように、例えば、1500mm程度(腰板101の板厚の略750倍)の大きさに形成されていた。また、腰板101(側外板)と横骨部材102との接合、横骨部材102と側柱部材103との接合には、近年、レーザ溶接が用いられている。
【0004】
しかし、腰板101と横骨部材102との接合、横骨部材102と側柱部材103との接合をレーザ溶接によって接合する場合、その接合品質及び接合強度を確保するため、各接合部材同士の隙間を0.3mm以下にする必要があるが、曲率半径R1が上記1500mm程度で比較的大きく形成された腰板101の湾曲部101cに対する横骨部材102cの正確な位置合わせ及び拘束、及び当該横骨部材102cに対する側柱部材103の正確な位置合わせ及び拘束に、多くの手間が掛かるという問題があった。
【0005】
そのため、腰板101の内、平坦面に形成された車両上部101aと車両下部101bとに対して背の高い横骨部材102a、102bを接合し、湾曲部101cに対して背の低い横骨部材102cを接合すると共に、側柱部材103は、背の高い横骨部材102a、102bに対して接合し、背の低い横骨部材102cに対して隙間を設けて側柱部材103を接合しない構成が採用されていた。
【0006】
ところが、上記構成では、湾曲部101cに接合した背の低い横骨部材102cと側柱部材103とを接合しない構成であるため、車両側面からの衝突荷重に対する強度を現状より向上させることが困難であるという問題があった。また、湾曲部101cに対する背の低い横骨部材102cの正確な位置合わせ及び拘束に対する手間は、依然として多くかかり、作業工数が高止まりの状態であった。
【0007】
これに対して、例えば、特許文献1には、
図11に示すように、腰板201の湾曲部201cにおける曲率半径R2は、腰板201を曲げ加工できる100mm程度(腰板201の板厚の略50倍)の大きさに形成され、湾曲部201cの領域を狭くすると共に、ハット断面の横骨部材202(202a、202b、202c)を腰板201の平坦な車両上部201aと車両下部201bに接合し、また、横骨部材202(202a、202b、202c)に接合するハット断面の側柱部材(吹寄せ柱)203が腰板201の湾曲部201cの近傍で上下に分割されていて、分割された上下の側柱部材203a、203bの側壁部に対してコの字断面の繋ぎ金203cの側壁部をスポット溶接又は栓溶接によって接合した構成の裾絞り構造SK2を有する鉄道車両200が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載された鉄道車両200では、横骨部材202(202a、202b、202c)に接合するハット断面の側柱部材203が腰板201の湾曲部201cの近傍で上下に分割されていて、分割された上下の側柱部材203a、203bの側壁部に対してコの字断面の繋ぎ金203cの側壁部をスポット溶接又は栓溶接によって接合した構成であるため、鉄道車両200に対する車両側面からの衝突荷重に対して上記スポット溶接又は栓溶接の接合部が破断する可能性があり、所要の強度を確保することが難しいという問題があった。
【0010】
また、ハット断面の上下の側柱部材203a、203bとコの字断面の繋ぎ金203cとを製作(曲げ加工)する際、接合する箇所の、ハット断面の上下の側柱部材203a、203bの側壁部とコの字断面の繋ぎ金203cの側壁部とが、それぞれ異なる大きさの反りやスプリングバックを生じるため、側柱部材203を精度良く形成することが難しく、製作コストが多くかかるという問題があった。
【0011】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、車両側面からの衝突荷重に対する強度を確保し易く、精度良く簡単に製作できる裾絞り構造を有する鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両は、以下の構成を備えている。
(1)側構体の側外板と、前記側外板の車内側に車外側フランジ部が接合されレール方向に延設されたハット断面の横骨部材と、前記横骨部材の車内側天頂部に車外側フランジ部が接合され車両上下方向に延設されたハット断面の側柱部材とを備え、前記側外板における腰板の車両下部を、前記腰板の車両上部に対して前記腰板の板厚の50~200倍の曲率半径で曲げ形成された湾曲部を介して車両内方へ傾斜させた裾絞り構造を有する鉄道車両であって、
前記腰板における前記車両上部の下端部には、第1の前記横骨部材の車外側フランジ部が接合され、前記腰板における前記車両下部の上端部には、第2の前記横骨部材の車外側フランジ部が接合されていること、
前記側柱部材の車外側フランジ部は、前記第1の横骨部材の車内側天頂部と前記第2の横骨部材の車内側天頂部とに接合されていること、
前記側柱部材は、前記第1の横骨部材と前記第2の横骨部材との間で、前記湾曲部に沿って曲げ形成され、かつ曲げ形成領域の範囲で車内側天頂部と側壁部とがコの字断面を形成するように切り欠き形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、腰板における車両上部の下端部には、第1の横骨部材の車外側フランジ部が接合され、腰板における車両下部の上端部には、第2の横骨部材の車外側フランジ部が接合され、側柱部材の車外側フランジ部は、第1の横骨部材の車内側天頂部と第2の横骨部材の車内側天頂部とに接合され、側柱部材は、第1の横骨部材と第2の横骨部材との間で、湾曲部に沿って曲げ形成され、かつ曲げ形成領域の範囲で車内側天頂部と側壁部とがコの字断面を形成するように切り欠き形成されているので、車両側面からの衝突荷重に対する所要の強度を確保しつつ側柱部材を精度良く製作することができ、製作コストを低減できる。
【0014】
すなわち、腰板における車両上部の下端部には、第1の横骨部材の車外側フランジ部が接合され、腰板における車両下部の上端部には、第2の横骨部材の車外側フランジ部が接合されているので、第1の横骨部材の車外側フランジ部と第2の横骨部材の車外側フランジ部とを、腰板に対して湾曲していない平坦な面で接合できる。そのため、第1の横骨部材と第2の横骨部材とを、腰板に対して正確に位置合わせ及び拘束させることができ、例えば、レーザ溶接によって接合する場合でも、接合部における溶接品質及び溶接強度に対する所要の基準を担保させることができる。
【0015】
また、曲率半径が腰板の板厚の50~200倍で曲げ形成されることによって剛性を高めた湾曲部を、第1の横骨部材と第2の横骨部材とが、車両上下方向の互いに近接した位置で支持することができる。そのため、湾曲部が上記小さな曲率半径で湾曲することによって剛性を高めた腰板の強度を、互いに近接した位置に接合した複数の横骨部材によって、さらに向上させることができる。
【0016】
また、側柱部材の車外側フランジ部は、第1の横骨部材の車内側天頂部と第2の横骨部材の車内側天頂部とに接合され、側柱部材は、第1の横骨部材と第2の横骨部材との間で、湾曲部に沿って曲げ形成され、かつ曲げ形成領域の範囲で車内側天頂部と側壁部とがコの字断面を形成するように切り欠き形成されているので、側柱部材の切り欠き形成されていない車外側フランジ部は、直線状に形成され、第1の横骨部材の車内側天頂部と第2の横骨部材の車内側天頂部とに対して、それぞれ平坦な面で接合できる。そのため、側柱部材を、第1の横骨部材と第2の横骨部材とに対して正確に位置合わせ及び拘束させることができ、例えば、レーザ溶接によって接合する場合でも、接合部における溶接品質及び溶接強度に対する所要の基準を担保させることができる。
【0017】
また、側柱部材は、第1の横骨部材と第2の横骨部材との間で、湾曲部に沿って曲げ形成され、かつ曲げ形成領域の範囲で車内側天頂部と側壁部とがコの字断面を形成するように切り欠き形成されているので、側柱部材を、上下に分割することなく、曲率半径の小さい湾曲部に沿って簡単に曲げ加工することができる。そのため、横骨部材と接合する側柱部材を、精度良く低コストで製作することができる。
【0018】
また、側柱部材は、曲げ形成領域の範囲で車内側天頂部と側壁部とがコの字断面を形成するように切り欠き形成されている分、切り欠きのない場合に比較して強度は一定程度低下するが、腰板に対して、曲率半径が小さく剛性の高い湾曲部の近傍で上下一対の横骨部材を接合させ、その上下一対の横骨部材を側柱部材が車内側から支持することによって、車両側面からの衝突荷重に対する強度を、全体として高めることができる。
【0019】
よって、本発明によれば、車両側面からの衝突荷重に対する強度を確保し易く、精度良く簡単に製作できる裾絞り構造を有する鉄道車両を提供することができる。
【0020】
(2)(1)に記載された鉄道車両において、
前記側柱部材の切り欠き形成された前記側壁部のフランジ幅は、前記曲げ形成領域の全範囲で一定の大きさに形成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、側柱部材の切り欠き形成された側壁部のフランジ幅は、曲げ形成領域の全範囲で一定の大きさに形成されているので、側柱部材を湾曲部に沿って曲げ加工する際、切り欠き形成された側壁部のフランジ伸び率を、曲げ形成領域の範囲全体で均一化させることができる。そのため、側壁部の局部的な板厚減少を抑止でき、側柱部材の強度を安定的に確保することができる。その結果、車両側面からの衝突荷重に対する所要の強度を、より一層確保させることができる。
【0022】
(3)(1)又は(2)に記載された鉄道車両において、
前記側柱部材の切り欠き形成された前記側壁部の車両上下方向の長さは、前記湾曲部の車両上下方向の長さより大きく形成されていることを特徴とする。
【0023】
本発明においては、側柱部材の切り欠き形成された側壁部の車両上下方向の長さは、湾曲部の車両上下方向の長さより大きく形成されているので、側柱部材を湾曲部に沿って曲げ加工する際、曲げ形成領域の範囲が増大し、切り欠き形成された側壁部におけるフランジ伸び率を全体的に減少させることができる。そのため、曲げ形成領域における側壁部の板厚減少を低減でき、側柱部材の強度をより向上させることができる。その結果、車両側面からの衝突荷重に対する所要の強度を、より一層確保させることができる。
【0024】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記側柱部材は、前記曲げ形成領域の範囲で、前記車内側天頂部が前記湾曲部の曲率半径以上の曲率半径で曲げ形成されていることを特徴とする。
【0025】
本発明においては、側柱部材は、曲げ形成領域の範囲で、車内側天頂部が湾曲部の曲率半径以上の曲率半径で曲げ形成されているので、側柱部材を湾曲部に沿って曲げ加工する際、切り欠き形成された側壁部のフランジ伸び率を、全体として低減させることができ、側壁部の板厚減少をより一層低減させることができる。そのため、側柱部材の曲げ形成領域における強度をより一層高めることができる。その結果、車両側面からの衝突荷重に対する所要の強度を、より一層確保させることができる。
【0026】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記側柱部材の切り欠き形成された側壁部には、少なくとも一方の側壁部の切り欠き形状を塞ぐ塞ぎ板を備え、
前記塞ぎ板は、先端部が前記側柱部材の車外側フランジ部より車外側へ突出して形成され、基端部が前記側壁部に対して前記切り欠き形状に沿って連続状に接合されていることを特徴とする。
【0027】
本発明においては、側柱部材の切り欠き形成された側壁部には、少なくとも一方の側壁部の切り欠き形状を塞ぐ塞ぎ板を備え、塞ぎ板は、先端部が側柱部材の車外側フランジ部より車外側へ突出して形成され、基端部が側壁部に対して切り欠き形状に沿って連続状に接合されているので、側柱部材の曲げ形成領域における切り欠き形成による強度低下を、塞ぎ板を介して大幅に回復させることができる。
【0028】
また、塞ぎ板は、先端部が側柱部材の車外側フランジ部より車外側へ突出して形成されているので、切り欠き形成された側壁部を切り欠き以前の側壁部より強化させることができる。また、塞ぎ板は、基端部が側壁部に対して切り欠き形状に沿って連続状に接合されているので、スポット溶接や栓溶接のような点接合の場合に比べて、接合部の破断が生じにくく、側柱部材における強度を安定して確保できる。その結果、車両側面からの衝突荷重に対する所要の強度を、より一層確保させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、車両側面からの衝突荷重に対する強度を確保し易く、精度良く簡単に製作できる裾絞り構造を有する鉄道車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両の概略側面図である。
【
図2】
図1に示す鉄道車両の側構体を車内側から見た概略部分側面図である。
【
図5】
図4に示す横断面図であって、(A)はD‐D断面図を示し、(B)はE-E断面図を示す。
【
図8】
図7に示す横断面図であって、(A)はG‐G断面図を示し、(B)はH-H断面図を示す。
【
図9】
図6に示すF部の変形例の断面図であって、(A)はF部の拡大断面図を示し、(B)は(A)に示すJ-J断面図を示す。
【
図10】従来の裾絞り構造を有する鉄道車両の概略断面図である。
【
図11】特許文献1に記載された裾絞り構造を有する鉄道車両の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<本鉄道車両の構成>
次に、本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両について、図面を参照しながら詳細に説明する。具体的には、本鉄道車両の構成と作用効果について、
図1~
図9を用いて説明する。
図1に、本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両の概略側面図を示す。
図2に、
図1に示す鉄道車両の側構体を車内側から見た概略部分側面図を示す。
図3に、
図2に示すA‐A断面図を示す。
図4に、
図3に示すC部の拡大断面図を示す。
図5に、
図4に示す横断面図であって、(A)はD‐D断面図を示し、(B)はE-E断面図を示す。
図6に、
図2に示すB-B断面図を示す。
図7に、
図6に示すF部の拡大断面図を示す。
図8に、
図7に示す横断面図であって、(A)はG‐G断面図を示し、(B)はH-H断面図を示す。
図9に、
図6に示すF部の変形例の断面図であって、(A)はF部の拡大断面図を示し、(B)は(A)に示すJ-J断面図を示す。
【0032】
図1~
図8に示すように、本鉄道車両10は、側構体GKの側外板2と、側外板2の車内側に車外側フランジ部31、31a、31b、31Lが接合されレール方向に延設されたハット断面の横骨部材3、3a、3b、3Lと、横骨部材3、3a、3b、3Lの車内側天頂部32、32a、32bに車外側フランジ部41が接合され車両上下方向に延設されたハット断面の側柱部材4とを備え、側外板2における腰板22の車両下部222を、腰板22の車両上部221に対して腰板22の板厚t1の50~200倍の曲率半径Rで曲げ形成された湾曲部223を介して車両内方へ傾斜させた裾絞り構造SKを有する鉄道車両10である。
【0033】
なお、本鉄道車両10には、レールRL上を走行する前後一対の台車DSに支持された車体1を備え、当該車体1を構成する側構体GKの側外板2には、各種大きさの側窓11、11a、11bと出入口開口部12、12aとがレール方向で複数形成されている。側窓11のレール方向で隣接した位置には、側柱部材4が配置され、側柱部材4には窓受部材45が接合されている。また、幅の広い出入口開口部12には、乗客が乗り降りできるように、スライド開閉式の側扉GTが装着されている。幅の狭い出入口開口部12aには、乗務員が乗り降りできるように、ヒンジ開閉式の側扉GTaが装着されている。
【0034】
また、車体1は、台車DSに支持される台枠DWと、台枠DWの前端部及び後端部に起立する妻構体TKと、台枠DWの両側端部に起立する側構体GKと、妻構体TK及び側構体GKの上端部に連結される屋根構体YKとを備えている。また、
図1~
図3、
図6に示すように、側構体GKの側外板2は、車両上方に配置される幕板21と、車両下方に配置される腰板22と、幕板21及び腰板22の車内側に接合されるシアプレート23とを備え、幕板21及び腰板22は、例えば、板厚t1が2mm程度のステンレス鋼板で形成されている。
【0035】
また、
図3~
図8に示すように、本鉄道車両10では、腰板22における車両上部221の平坦部であって湾曲部223に隣接する下端部221aには、第1の横骨部材3aの車外側フランジ部31aが接合され、腰板22における車両下部222の平坦部であって湾曲部223に隣接する上端部222bには、第2の横骨部材3bの車外側フランジ部31bが接合されている。また、側柱部材4の車外側フランジ部41は、第1の横骨部材3aの車内側天頂部32aと第2の横骨部材3bの車内側天頂部32bとに接合されている。また、側柱部材4は、第1の横骨部材3aと第2の横骨部材3bとの間で、湾曲部223に沿って曲げ形成され、かつ曲げ形成領域4Mの範囲で車内側天頂部42Mと側壁部43Mとがコの字断面を形成するように車外側フランジ部41と側壁部43の車外側の一部を取り除いて切り欠き形成されている。したがって、車両側面からの衝突荷重に対する所要の強度を確保しやすく、また、側柱部材4を精度良く製作することができ、製作コストを低減できる。
【0036】
ここで、腰板22における車両下部222は、車両上部221に対して傾斜角θで車両内方へ傾斜し、車両上部221及び車両下部222は、それぞれ平坦面で形成されている。また、第2の横骨部材3bの車外側フランジ部31bは、第1の横骨部材3aの車外側フランジ部31aに対して傾斜角θで車両内方へ傾斜し、第1の横骨部材3aの車外側フランジ部31a及び第2の横骨部材3bの車外側フランジ部31bは、それぞれ平坦面で形成されている。したがって、腰板22における車両上部221の下端部221aと第1の横骨部材3aにおける車両下方の車外側フランジ部311aとが、互いに平坦面同士で平行に接合されている。また、腰板22における車両下部222の上端部222bと第2の横骨部材3bにおける車両上方の車外側フランジ部311bとが、互いに平坦面同士で平行に接合されている。
【0037】
すなわち、腰板22における車両上部221の下端部221a(その近傍を含む)には、第1の横骨部材3aの車外側フランジ部31aが接合され、腰板22における車両下部222の上端部222b(その近傍を含む)には、第2の横骨部材3bの車外側フランジ部31bが接合されているので、第1の横骨部材3aの車外側フランジ部31aと第2の横骨部材3bの車外側フランジ部31bとを、腰板22に対して湾曲していない又は殆ど湾曲していない平坦な面で平行に接合できる。そのため、第1の横骨部材3aと第2の横骨部材3bとを、腰板22に対して正確に位置合わせ及び拘束させることができる。その結果、接合部材同士の隙間を0.3mm以下とすることができ、例えば、レーザ溶接によって接合する場合でも、接合部における溶接品質及び溶接強度に対する所要の基準を担保させることができる。
【0038】
また、腰板22における車両上部221の下端部221aと車両下部222の上端部222bとを繋ぐ湾曲部223は、
図10に示す従来の裾絞り構造SK1の湾曲部101cの曲率半径R1(例えば、1500mm(腰板22の板厚t1の750倍))より小さい曲率半径R(腰板22の板厚t1の50~200倍)で形成されているので、従来の裾絞り構造SK1の湾曲部101cより剛性を高め、湾曲部223の車両上下方向の長さh3を小さく形成することができる。したがって、本鉄道車両10では、湾曲部223を、第1の横骨部材3aと第2の横骨部材3bとが、車両上下方向の長さh3が小さく、幅の狭い湾曲部223を車両上下方向から挟みつつ互いに近接した位置で、支持することができる。そのため、湾曲部223が上記小さな曲率半径Rで湾曲することによって剛性を高めた腰板22の強度を、互いに近接した位置で湾曲部223の近傍に接合した上下一対の横骨部材3(3a、3b)によって、さらに向上させることができる。
【0039】
また、側柱部材4の車外側フランジ部41は、第1の横骨部材3aの車内側天頂部32aと第2の横骨部材3bの車内側天頂部32bとに接合され、側柱部材4は、第1の横骨部材3aと第2の横骨部材3bとの間で、湾曲部223に沿って曲げ形成され、かつ曲げ形成領域4Mの範囲で車内側天頂部42Mと側壁部43Mとがコの字断面を形成するように切り欠き形成されている。なお、車内側天頂部42Mと側壁部43Mとがコの字断面を形成するように切り欠き形成される範囲は、側柱部材4の車外側フランジ部41が第1の横骨部材3aの車内側天頂部32aと第2の横骨部材3bの車内側天頂部32bとに接合され得る範囲であれば良く、必ずしも曲げ形成領域4Mの範囲と同一である必要はない。
【0040】
ここで、側柱部材4の切り欠き形成されていない領域は、車両上下方向で直線状に形成されている。そして、側柱部材4の曲げ形成領域4Mより車両下方の車外側フランジ部41bは、曲げ形成領域4Mより車両上方の車外側フランジ部41aに対して傾斜角θで車両内方へ傾斜し、車両上方の車外側フランジ部41a及び車両下方の車外側フランジ部41bは、それぞれ平坦面に形成されている。また、第2の横骨部材3bの車内側天頂部32bは、第1の横骨部材3aの車内側天頂部32aに対して傾斜角θで車両内方へ傾斜し、第1の横骨部材3aの車内側天頂部32a及び第2の横骨部材3bの車内側天頂部32bは、それぞれ平坦面で形成されている。したがって、側柱部材4の車外側フランジ部41は、第1の横骨部材3aの車内側天頂部32aと第2の横骨部材3bの車内側天頂部32bとに対して、それぞれ平坦な面で平行に接合できる。そのため、側柱部材4を、第1の横骨部材3aと第2の横骨部材3bとに対して正確に位置合わせ及び拘束させることができる。その結果、接合部材同士の隙間を0.3mm以下とすることができ、例えば、レーザ溶接によって接合する場合でも、接合部における溶接品質及び溶接強度に対する所要の基準を担保させることができる。
【0041】
また、側柱部材4は、第1の横骨部材3aと第2の横骨部材3bとの間で、湾曲部223に沿って曲げ形成され、かつ曲げ形成領域4Mの範囲で車内側天頂部42Mと側壁部43Mとがコの字断面を形成するように切り欠き形成されているので、側柱部材4を、上下に分割することなく、腰板22の板厚t1の50~200倍に形成された曲率半径Rの小さい湾曲部223に沿って簡単に曲げ加工することができる。そのため、横骨部材3(3a、3b)と接合する側柱部材4を、精度良く低コストで製作することができる。
【0042】
また、側柱部材4は、曲げ形成領域4Mの範囲で車内側天頂部42Mと側壁部43Mとがコの字断面を形成するように切り欠き形成されている分、切り欠きのない場合に比較して強度は一定程度低下するが、腰板22に対して、曲率半径Rが小さく剛性の高い湾曲部223の近傍で上下一対の横骨部材3(3a、3b)を接合させ、その上下一対の横骨部材3(3a、3b)を側柱部材4が車内側から支持することによって、車両側面からの衝突荷重に対する強度を、全体として高めることができる。
【0043】
よって、本鉄道車両10によれば、車両側面からの衝突荷重に対する強度を確保し易く、精度良く簡単に製作できる裾絞り構造SKを有する鉄道車両10を提供することができる。
【0044】
また、本鉄道車両10においては、
図4、
図5、
図7、
図8に示すように、側柱部材4の切り欠き形成された側壁部43Mのフランジ幅h1は、曲げ形成領域4Mの全範囲で一定の大きさに形成されていることが好ましい。ここで、側壁部43Mのフランジ幅h1は、側柱部材4の曲げ形成領域4Mにおける車内側天頂部42Mから側壁部43Mの先端部(切り欠き形状431M)までの長さを意味する。
【0045】
この場合、側柱部材4を湾曲部223に沿って曲げ加工する際、切り欠き形成された側壁部43Mのフランジ伸び率を、曲げ形成領域4Mの範囲全体で均一化させることができる。そのため、側壁部43Mの局部的な板厚減少を抑止でき、側柱部材4の強度を安定的に確保することができる。その結果、車両側面からの衝突荷重に対する所要の強度を、より一層確保させることができる。ここでは、側柱部材4の側壁部43、43Mは、車内側天頂部42、42Mの両端部から直角状に起立するように形成されているが、必ずしもこれに限らず、例えば、車内側天頂部42、42Mの両端部から鈍角状に起立するように形成されても良い。
【0046】
また、本鉄道車両10においては、
図4、
図7に示すように、側柱部材4の切り欠き形成された側壁部43Mの車両上下方向の長さh2は、湾曲部223の車両上下方向の長さh3より大きく形成されていることが好ましい。この場合、側柱部材4を湾曲部223に沿って曲げ加工する際、曲げ形成領域4Mの範囲が増大し、切り欠き形成された側壁部43Mにおけるフランジ伸び率を全体的に減少させることができる。そのため、曲げ形成領域4Mにおける側壁部43Mの板厚減少を低減でき、側柱部材4の強度をより向上させることができる。その結果、車両側面からの衝突荷重に対する所要の強度を、より一層確保させることができる。
【0047】
なお、側柱部材4の切り欠き形成された側壁部43Mの車両上下方向の長さh2は、第1の横骨部材3aの車内側天頂部32aの下端から第2の横骨部材3bの車内側天頂部32bの上端までの車両上下方向の長さh4より小さく形成されていることが好ましい。この場合、側柱部材4の車外側フランジ部41は、第1の横骨部材3aの車内側天頂部32aと第2の横骨部材3bの車内側天頂部32bとに対して、それぞれ平坦な面で確実に接合できる。そのため、上下一対の横骨部材3(3a、3b)を側柱部材4が車内側から確実に支持することによって、車両側面からの衝突荷重に対する強度を、より一層高めることができる。
【0048】
また、側柱部材4は、前述のように、湾曲部223に沿って曲げ形成されている。側柱部材4の曲げ中心を湾曲部223の曲げ中心と同一位置に設定した場合、曲げ形成領域4Mにおける側柱部材4の車内側天頂部42Mの曲率半径Sは、湾曲部223の曲率半径Rより小さくなる。しかし、その場合、側柱部材4は、切り欠き形成された側壁部43Mのフランジ伸び率が増大し、側壁部43Mの板厚が薄くなって、強度が低下しやすい。そこで、これを回避するため、本鉄道車両10においては、
図4、
図7に示すように、側柱部材4は、曲げ形成領域4Mの範囲で、車内側天頂部42Mが湾曲部223の曲率半径R以上の曲率半径Sで曲げ形成されていても良い。この場合、側柱部材4を湾曲部223に沿って曲げ加工する際、切り欠き形成された側壁部43Mのフランジ伸び率を、全体として低減させることができ、側壁部43Mの板厚減少をより一層低減させることができる。そのため、側柱部材4の曲げ形成領域4Mにおける強度をより一層高めることができる。その結果、車両側面からの衝突荷重に対する所要の強度を、より一層確保させることができる。
【0049】
なお、切り欠き形成された側壁部43Mのフランジ幅h1が、曲げ形成領域4Mの全範囲で一定である場合、側壁部43Mの先端部(切り欠き形状431M)は、車内側天頂部42Mの曲率半径Sより側壁部43Mのフランジ幅h1の長さだけ大きい曲率半径で形成でき、側壁部43Mの先端部(切り欠き形状431M)におけるフランジ伸び率をより一層低減させることができる。そのため、側壁部43Mの先端部(切り欠き形状431M)における板厚減少を、より一層低減させることができ、側柱部材4の曲げ形成領域4Mにおける強度をより一層高めることができる。
【0050】
また、本鉄道車両10においては、必要に応じて、
図6~
図8に示すように、側柱部材4の切り欠き形成された側壁部43Mには、少なくとも一方の側壁部43Maの切り欠き形状431Mを塞ぐ塞ぎ板44を備え、塞ぎ板44は、先端部441が側柱部材4の車外側フランジ部41より車外側へ突出して形成され、基端部442が側壁部43Mに対して切り欠き形状431Mに沿って連続状に接合されていることが好ましい。なお、基端部442の車内側端部と上端部及び下端部とが、側壁部43Mに対して切り欠き形状431Mに沿って連続状に接合されている。
【0051】
ここでは、
図7に示すように、側壁部43Mの切り欠き形状431Mは、車両上下方向に細長い略コの字形状に形成されている。また、塞ぎ板44は、切り欠き形状431Mより車両上下方向に長く形成された基端部442と、切り欠き形状431Mより車両上下方向に短く形成され湾曲部223の内周縁に沿って円弧状に形成された先端部441とを備え、全体としてT字形状に形成されている。なお、上記先端部441は、第1の横骨部材3aの車外側フランジ部311aと第2の横骨部材3bの車外側フランジ部311bとから離間している。そして、
図7、
図8(B)に示すように、塞ぎ板44の基端部442の外周縁は、一方の側壁部43Maの板外側の側面に対して溶接された隅肉溶接部SGによって接合されている。この隅肉溶接部SGは、コの字形状の切り欠き形状431Mの外周側で連続状に形成されている。そのため、隅肉溶接部SGは、切り欠き形状431Mのコの字状周長より長い溶接長で連続状に形成されている。したがって、側柱部材4の曲げ形成領域4Mにおける切り欠き形状431Mを、塞ぎ板44によって、より一層強固に補強させることができる。
【0052】
また、塞ぎ板44は、先端部441が側柱部材4の車外側フランジ部41より車外側へ突出して形成されているので、切り欠き形成された側壁部43Mを切り欠き以前の側壁部43より強化させることができる。また、塞ぎ板44は、基端部442が側壁部43M(43Ma)に対して切り欠き形状431Mに沿って連続状に接合されているので、スポット溶接や栓溶接のような点接合の場合に比べて、接合部の破断が生じにくく、側柱部材4における強度を安定して確保できる。その結果、車両側面からの衝突荷重に対する所要の強度を、より一層確保させることができる。
【0053】
(変形例)
なお、上記塞ぎ板44の変形例として、
図9に示すように、側柱部材4の切り欠き形成された側壁部43Mには、切り欠き形状431Mを塞ぐ逆向きのコの字断面の塞ぎ板44Bを接合しても良い。この塞ぎ板44Bは、曲げ形成領域4Mにおいて、側柱部材4の車内側天頂部42Mと側壁部43Mとが形成するコの字断面と逆向きのコの字断面に形成された先端部441Bが、側柱部材4の車外側フランジ部41より車外側へ突出して形成され、基端部442Bが両方の側壁部43Mに対して切り欠き形状431Mに沿って連続状に接合されている。この場合、側柱部材4は、曲げ形成領域4Mにおいて、車内側天頂部42Mと側壁部43Mと塞ぎ板44Bとによって矩形状のボックス断面を形成することができ、側柱部材4の曲げ形成領域4Mにおける切り欠き形状431Mを、塞ぎ板44Bによって、より一層強固に補強させることができる。
【0054】
ここでは、塞ぎ板44Bの基端部442Bの外周縁は、両方の側壁部43Mの板外側の側面に対して溶接された隅肉溶接部SGによって接合されている。この隅肉溶接部SGは、コの字形状の切り欠き形状431Mの外周側で連続状に形成されている。そのため、隅肉溶接部SGは、切り欠き形状431Mのコの字状周長より長い溶接長で連続状に形成されている。したがって、側柱部材4の曲げ形成領域4Mにおける切り欠き形状431Mを、塞ぎ板44Bによってより一層強固に補強させることができる。
【0055】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両10によれば、腰板22における車両上部221の下端部221aには、第1の横骨部材3aの車外側フランジ部31aが接合され、腰板22における車両下部222の上端部222bには、第2の横骨部材3bの車外側フランジ部31bが接合され、側柱部材4の車外側フランジ部41は、第1の横骨部材3aの車内側天頂部32aと第2の横骨部材3bの車内側天頂部32bとに接合され、側柱部材4は、第1の横骨部材3aと第2の横骨部材3bとの間で、湾曲部223に沿って曲げ形成され、かつ曲げ形成領域4Mの範囲で車内側天頂部42Mと側壁部43Mとがコの字断面を形成するように切り欠き形成されているので、車両側面からの衝突荷重に対する所要の強度を確保しやすく、また、側柱部材4を精度良く製作することができ、製作コストを低減できる。
【0056】
すなわち、腰板22における車両上部221の下端部221aには、第1の横骨部材3aの車外側フランジ部31aが接合され、腰板22における車両下部222の上端部222bには、第2の横骨部材3bの車外側フランジ部31bが接合されているので、第1の横骨部材3aの車外側フランジ部31aと第2の横骨部材3bの車外側フランジ部31bとを、腰板22に対して湾曲していない平坦な面で接合できる。そのため、第1の横骨部材3aと第2の横骨部材3bとを、腰板22に対して正確に位置合わせ及び拘束させることができ、例えば、厳格な精度管理が必要なレーザ溶接によって接合する場合でも、接合部における溶接品質及び溶接強度に対する所要の基準を担保させることができる。
【0057】
また、曲率半径Rが腰板22の板厚t1の50~200倍で曲げ形成されることによって剛性を高めた湾曲部223を、第1の横骨部材3aと第2の横骨部材3bとが、車両上下方向の互いに近接した位置で支持することができる。そのため、湾曲部223が上記小さな曲率半径Rで湾曲することによって剛性を高めた腰板22の強度を、互いに近接した位置に接合した複数の横骨部材3(3a、3b)によって、さらに向上させることができる。
【0058】
また、側柱部材4の車外側フランジ部41は、第1の横骨部材3aの車内側天頂部32aと第2の横骨部材3bの車内側天頂部32bとに接合され、側柱部材4は、第1の横骨部材3aと第2の横骨部材3bとの間で、湾曲部223に沿って曲げ形成され、かつ曲げ形成領域4Mの範囲で車内側天頂部42Mと側壁部43Mとがコの字断面を形成するように切り欠き形成されているので、側柱部材4の切り欠き形成されていない車外側フランジ部41は、直線状に形成され、第1の横骨部材3aの車内側天頂部32aと第2の横骨部材3bの車内側天頂部32bとに対して、それぞれ平坦な面で接合できる。そのため、側柱部材4を、第1の横骨部材3aと第2の横骨部材3bとに対して正確に位置合わせ及び拘束させることができ、例えば、厳格な精度管理が必要なレーザ溶接によって接合する場合でも、接合部における溶接品質及び溶接強度に対する所要の基準を担保させることができる。
【0059】
また、側柱部材4は、第1の横骨部材3aと第2の横骨部材3bとの間で、湾曲部223に沿って曲げ形成され、かつ曲げ形成領域4Mの範囲で車内側天頂部42Mと側壁部43Mとがコの字断面を形成するように切り欠き形成されているので、側柱部材4を、上下に分割することなく、曲率半径Rの小さい湾曲部223に沿って簡単に曲げ加工することができる。そのため、横骨部材3(3a、3b)と接合する側柱部材4を、精度良く低コストで製作することができる。
【0060】
また、側柱部材4は、曲げ形成領域4Mの範囲で車内側天頂部42Mと側壁部43Mとがコの字断面を形成するように切り欠き形成されている分、切り欠きのない場合に比較して強度は一定程度低下するが、腰板22に対して、曲率半径Rが小さく剛性の高い湾曲部223の近傍で上下一対の横骨部材3(3a、3b)を接合させ、その上下一対の横骨部材3(3a、3b)を側柱部材4が車内側から支持することによって、車両側面からの衝突荷重に対する強度を、全体として高めることができる。
【0061】
よって、本実施形態によれば、車両側面からの衝突荷重に対する強度を確保し易く、精度良く簡単に製作できる裾絞り構造SKを有する鉄道車両10を提供することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、側柱部材4の切り欠き形成された側壁部43Mのフランジ幅h1は、曲げ形成領域4Mの全範囲で一定の大きさに形成されているので、側柱部材4を湾曲部223に沿って曲げ加工する際、切り欠き形成された側壁部43Mのフランジ伸び率を、曲げ形成領域4Mの範囲全体で均一化させることができる。そのため、側壁部43Mの局部的な板厚減少を抑止でき、側柱部材4の強度を安定的に確保することができる。その結果、車両側面からの衝突荷重に対する所要の強度を、より一層確保させることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、側柱部材4の切り欠き形成された側壁部43Mの車両上下方向の長さh2は、湾曲部223の車両上下方向の長さh3より大きく形成されているので、側柱部材4を湾曲部223に沿って曲げ加工する際、曲げ形成領域4Mの範囲が増大し、切り欠き形成された側壁部43Mにおけるフランジ伸び率を全体的に減少させることができる。そのため、曲げ形成領域4Mにおける側壁部43Mの板厚減少を低減でき、側柱部材4の強度をより向上させることができる。その結果、車両側面からの衝突荷重に対する所要の強度を、より一層確保させることができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、側柱部材4は、曲げ形成領域4Mの範囲で、車内側天頂部42Mが湾曲部223の曲率半径R以上の曲率半径Sで曲げ形成されているので、側柱部材4を湾曲部223に沿って曲げ加工する際、切り欠き形成された側壁部43Mのフランジ伸び率を、全体として低減させることができ、側壁部43Mの板厚減少をより一層低減させることができる。そのため、側柱部材4の曲げ形成領域4Mにおける強度をより一層高めることができる。その結果、車両側面からの衝突荷重に対する所要の強度を、より一層確保させることができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、側柱部材4の切り欠き形成された側壁部43Mには、少なくとも一方の側壁部43Maの切り欠き形状431Mを塞ぐ塞ぎ板44、44Bを備え、塞ぎ板44、44Bは、先端部441、441Bが側柱部材4の車外側フランジ部41より車外側へ突出して形成され、基端部442、442Bが側壁部43Mに対して切り欠き形状431Mに沿って連続状に接合されているので、側柱部材4の曲げ形成領域4Mにおける切り欠き形成による強度低下を、塞ぎ板44、44Bを介して大幅に回復させることができる。
【0066】
また、塞ぎ板44、44Bは、先端部441、441Bが側柱部材4の車外側フランジ部41より車外側へ突出して形成されているので、切り欠き形成された側壁部43Mを切り欠き以前の側壁部43より強化させることができる。また、塞ぎ板44、44Bは、基端部442、442Bが側壁部43Mに対して切り欠き形状431Mに沿って連続状に接合されているので、スポット溶接や栓溶接のような点接合の場合に比べて、接合部の破断が生じにくく、側柱部材4における強度を安定して確保できる。その結果、車両側面からの衝突荷重に対する所要の強度を、より一層確保させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、側構体の側外板における腰板の車両下部を車両上部に対して湾曲部を介して車両内方へ傾斜させた裾絞り構造を有する鉄道車両として利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1 車体
2 側外板
3、3a、3b 横骨部材
4 側柱部材
4M 曲げ形成領域
10 鉄道車両
22 腰板
31、31a、31b 車外側フランジ部
32、32a、32b 車内側天頂部
41 車外側フランジ部
42、42M 車内側天頂部
43、43M、43Ma 側壁部
221 車両上部
221a 下端部
222 車両下部
222b 上端部
223 湾曲部
431M 切り欠き形状
GK 側構体
R、S 曲率半径
SK 裾絞り構造
h1 フランジ幅
h2、h3 長さ
t1 板厚