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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055070
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20240411BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/56 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161674
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】仲野 逸人
【テーマコード(参考)】
5F061
【Fターム(参考)】
5F061AA01
5F061BA04
5F061CA21
(57)【要約】
【課題】本発明は、封止樹脂に発生したクラックによるワイヤ配線の破断を防止できる半導体モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】半導体モジュール1は、半導体チップ14a~14dと、半導体チップ14a~14dを封止する封止樹脂18と、注型領域117u、第一部分111,112及び第二部分113,114を有するケース11と、第一部分111に片寄った状態で封止樹脂18に封止されて半導体チップ14a~14dと接続されたワイヤ配線101a~101j,102a~102iと、仮想平面VSuと第一部分112との間で第二部分113,114に形成された凹部131a,131b,132a,132bとを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップを封止する封止樹脂と、
前記封止樹脂が注型される空間、前記空間を挟んで対向して配置され直線状を有する一対の第一部分、及び前記空間を挟んで対向し前記一対の第一部分の間に配置され直線状を有する一対の第二部分を有するケースと、
前記一対の第一部分の一方に片寄った状態で前記封止樹脂に封止されて前記半導体チップと接続された、前記半導体チップに入力又は前記半導体チップから出力される信号が伝送されるワイヤ配線と、
前記ワイヤ配線が配置された前記空間の領域及び前記ワイヤ配線が配置されていない前記空間の領域の境界であって前記一対の第一部分に平行な仮想平面と、前記一対の第一部分の他方との間で前記一対の第二部分の少なくとも一方に形成された少なくとも1つの凹部と
を備える半導体モジュール。
【請求項2】
前記仮想平面は、前記封止樹脂の厚さ方向に見て、前記一対の第一部分の前記他方に対して最も離れた前記凹部から該凹部が形成されていない前記第二部分まで前記空間を横切る平面である
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記封止樹脂の厚さ方向に見て、前記一対の第一部分の前記他方と前記仮想平面との間には、前記ワイヤ配線が配置されていない
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記封止樹脂の厚さ方向に見て、前記一対の第一部分の前記一方と前記仮想平面との間には、前記凹部が設けられていない
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記空間に一部が配置された状態で前記第一部分のいずれか一方に設けられ前記半導体チップに供給される電力が入力される電力入力端子と、
前記空間に一部が配置された状態で前記第一部分のいずれか他方に設けられ前記半導体チップからの電力が出力される電力出力端子と
をさらに備える
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記一対の第二部分は、前記封止樹脂の表面側よりも前記半導体チップが配置されている側の方が互いの距離が長くなる段差部を有し、
前記電力入力端子及び前記電力出力端子のうちの前記ワイヤ配線が配置されていない領域に前記一部が配置された一方の端子は、該一部に角部を有している
請求項5に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記電力入力端子が有する正極側端子に接続される正極側配線パターンと、複数の前記半導体チップのうちの一部及び前記電力出力端子が接続される中間配線パターンと、残余の前記半導体チップ及び前記電力入力端子が有する負極側端子が接続される負極側配線パターンとを有する積層基板をさらに備え、
前記段差部及び前記角部は、前記一部の前記半導体チップと前記中間配線パターンとを接続する正極側リードフレーム、前記残余の前記半導体チップと前記中間配線パターンとを接続する負極側リードフレーム及び複数の前記半導体チップよりも前記積層基板から離れた位置に配置されている
請求項6に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記凹部は、曲面状の壁面を有する
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記ケースは、複数の前記空間を有し、
前記一対の第一部分は、前記複数の前記空間のそれぞれを画定する構成要素の一部として共有され、
前記一対の第二部分のうちの少なくとも1つは、隣り合う前記空間のそれぞれを画定する構成要素の一部として共有されている
請求項1から8までのいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップを封止する封止樹脂を備える半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
6in1構造を有する車載用パワーモジュールなどの半導体モジュールが知られている。このような半導体モジュールは、ケースとパワーセルとがワイヤ配線で接続され、外部に設けられたモータなどの負荷に供給する電力を生成する電気回路を有している。パワーセルは封止樹脂によって封止されている。
【0003】
半導体モジュールの動作寿命を推定するために、パワーサイクル試験(断続通電試験)が行われる。パワーサイクル試験には、パワーセルに設けられた半導体チップに熱ストレスを発生させるΔTjパワーサイクル試験と、ケース温度を変化させるΔTcパワーサイクル試験(熱疲労寿命試験)とがある。ΔTjパワーサイクル試験及びΔTcパワーサイクル試験の実施により、封止樹脂には繰り返し応力が発生するため、封止樹脂にクラックが発生する。
【0004】
特許文献1には、封止材に発生するクラックや剥離を自己修復可能な半導体装置が開示されている。特許文献2には、電極層にクラックが入りにくい技術が開示されている。特許文献3には、応力を緩和して絶縁基板の割れを抑制するとともに絶縁基板が割れても絶縁基板の破片が飛び散ることを防止することができる半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-41496号公報
【特許文献2】特開2015-122349号公報
【特許文献3】特開2014-93365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
封止樹脂にクラックが発生しただけでは半導体モジュールにとって致命的な欠陥にはならない。しかしながら、当該クラックがワイヤ配線に到達することによってワイヤ配線が破断されると、半導体モジュールとって致命的な欠陥となり、不良モジュールとなる。
【0007】
本発明の目的は、封止樹脂に発生したクラックによるワイヤ配線の破断を防止できる半導体モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様による半導体モジュールは、半導体チップと、前記半導体チップを封止する封止樹脂と、前記封止樹脂が注型される空間と、前記空間を挟んで対向して配置され直線状を有する一対の第一部分と、前記空間を挟んで対向し前記一対の第一部分の間に配置され直線状を有する一対の第二部分とを有するケースと、前記一対の第一部分の一方に片寄った状態で前記封止樹脂に封止されて前記半導体チップと接続された、前記半導体チップに入力又は前記半導体チップから出力される信号が伝送されるワイヤ配線と、前記ワイヤ配線が配置された前記空間の領域及び前記ワイヤ配線が配置されていない前記空間の領域の境界であって前記一対の第一部分に平行な仮想平面と、前記一対の第一部分の他方との間で前記一対の第二部分の少なくとも一方に形成された少なくとも1つの凹部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、封止樹脂に発生したクラックによるワイヤ配線の破断を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態による半導体モジュールの平面の一例を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態による半導体モジュールの概略構成の一例を示す図であって図1中に示すA-A線で切断した断面を模式的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態による半導体モジュールに備えられた封止樹脂に発生するクラックを説明するための図であって、当該半導体モジュールの平面の一部を模式的に示す図である。
図4】本発明の一実施形態による半導体モジュールに備えられた封止樹脂に発生するクラックを説明するための図であって、図3中に示すB-B線で切断した当該半導体モジュールの断面を模式的に示す図である。
図5】比較例による半導体モジュールに備えられた封止樹脂に発生するクラックを説明するための図であって、当該半導体モジュールの平面の一部を模式的に示す図である。
図6】比較例による半導体モジュールに備えられた封止樹脂に発生するクラックを説明するための図であって、図5中に示すC-C線で切断した当該半導体モジュールの断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の各実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
本発明の一実施形態による半導体モジュールについて図1から図6を用いて説明する。まず、本実施形態による半導体モジュール1の概略構成について図1及び図2を用いて説明する。本実施形態による半導体モジュール1として、例えば直流交流変換が可能な3相の電力変換モジュールを例にとって説明する。図1は、半導体モジュール1の平面の一例を模式的に示す図である。ここで、半導体モジュール1の平面図は、半導体モジュール1に備えられた封止樹脂18(図2参照)の厚さ方向に見た図である。図1では、理解を容易にするため、封止樹脂18の図示が省略されている。図2は、図1中に示すA-A線で切断した半導体モジュール1の断面を模式的に示す図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態による半導体モジュール1は、封止樹脂18(詳細は後述)が注型される注型領域(空間の一例)117uと、注型領域117uを挟んで対向して配置され直線状を有する一対の第一部分111,112と、注型領域117uを挟んで対向し第一部分111,112の間に配置され直線状を有する一対の第二部分113,114とを有するケース11を備えている。ケース11は、第一部分111,112及び第二部分113,114によって注型領域117uを画定している。
【0014】
ケース11は、注型領域117vを挟んで第二部分114に対向し第一部分111,112の間に配置され直線状を有する第二部分115を有している。ケース11は、第一部分111,112及び第二部分114,115によって注型領域117vを画定している。注型領域117vに着目した場合、第二部分114,115によって一対の第二部分が構成される。
【0015】
ケース11は、注型領域117wを挟んで第二部分115に対向し第一部分111,112の間に配置され直線状を有する第二部分116を有している。ケース11は、第一部分111,112及び第二部分115,116によって注型領域117wを画定している。注型領域117wに着目した場合、第二部分115,116によって一対の第二部分が構成される。
【0016】
ケース11は、複数の注型領域117u,117v,117wを有している。第一部分111,112は、複数の注型領域117u,117v,117wのそれぞれを画定する構成要素の一部として共有されている。第二部分113,114,115,116のうちの少なくとも1つは、隣り合う注型領域117u,117v,117wのそれぞれを画定する構成要素の一部として共有されている。
【0017】
具体的には、注型領域117uは、第一部分111の一部、第二部分114、第一部分112の一部及び第二部分113によって画定されている。注型領域117vは、第一部分111の他の一部、第二部分115、第一部分112の他の一部及び第二部分114によって画定されている。注型領域117wは、第一部分111の残余の部分、第二部分116、第一部分112の残余の部分及び第二部分115によって画定されている。したがって、第二部分114は、隣り合う注型領域117u及び注型領域117vのそれぞれを画定する構成要素の一部として共有されている。第二部分115は、隣り合う注型領域117v及び注型領域117wのそれぞれを画定する構成要素の一部として共有されている。
【0018】
ケース11は、封止樹脂18の厚さ方向に見て(すなわち平面視で)、第一部分111、第二部分116、第一部分112及び第二部分113によって構成される矩形環状の形状を有している。第二部分114は、第二部分113の隣に配置され、第二部分115は、第二部分113,116の間に配置されている。第二部分113,114,115,116は、例えば等間隔に配置されている。これにより、注型領域117u,117v,117wは、互いにほぼ同じ大きさを有している。第一部分111,112及び第二部分113,114,115,116は、例えば絶縁性の熱可塑性樹脂を用いて一体に形成されている。
【0019】
図1に示すように、半導体モジュール1は、注型領域117uに配置された半導体チップ14a,14b,14c,14dを備えている。以下、半導体チップ14a,14b,14c,14dを「半導体チップ14a~14d」と略記する場合がある。半導体モジュール1は、一対の第一部分111,112の一方(本実施形態では第一部分111)に片寄った状態で封止樹脂18に封止されて半導体チップ14a~14dと接続された、半導体チップ14a~14dに入力又は半導体チップ14a~14dから出力される信号が伝送されるワイヤ配線101a,101b,101c,101d,101e,101f,101h,101i,101j,102a,102b,102c,102d,102e,102f,102h,102iを備えている。以下、ワイヤ配線101a,101b,101c,101d,101e,101f,101h,101i,101jを「ワイヤ配線101a~101j」と略記し、ワイヤ配線102a,102b,102c,102d,102e,102f,102h,102iを「ワイヤ配線102a~102i」と略記する場合がある。
【0020】
半導体モジュール1は、注型領域117uに注型されて半導体チップ14a~14dを封止する封止樹脂18(図1では不図示、図2参照)を備えている。上述のとおり、封止樹脂18は、及びワイヤ配線101a~101j,102a~102iも封止している。
【0021】
半導体モジュール1は、注型領域117vに配置された半導体チップ14a~14dを備えている。半導体モジュール1は、注型領域117vに注型されて半導体チップ14a~14d封止樹脂(不図示)を備えている。半導体モジュール1は、一対の第一部分111,112の一方(本実施形態では第一部分111)に片寄った状態で注型領域117vに注型された封止樹脂に封止されて半導体チップ14a~14dと接続された、半導体チップ14a~14dに入力又は半導体チップ14a~14dから出力される信号が伝送されるワイヤ配線101a~101i,102a~102iを備えている。
【0022】
半導体モジュール1は、注型領域117wに配置された半導体チップ14a~14dを備えている。半導体モジュール1は、注型領域117wに注型されて半導体チップ14a~14dを封止する封止樹脂(不図示)を備えている。半導体モジュール1は、一対の第一部分111,112の一方(本実施形態では第一部分111)に片寄った状態で注型領域117wに注型された封止樹脂に封止されて半導体チップ14a~14dと接続された、半導体チップ14a~14dに入力又は半導体チップ14a~14dから出力される信号が伝送されるワイヤ配線101a~101i,102a~102iを備えている。
【0023】
図1に示すように、半導体モジュール1は、注型領域117uに一部が配置された状態で第一部分111,112の一方(本実施形態では第一部分112)に設けられ半導体チップ14a~14dに供給される電力が入力される電力入力端子21uを備えている。電力入力端子21uは、例えば正極側の直流電力が供給される正極側端子211uと、例えば負極側の直流電力が供給される負極側端子212uとを有している。半導体モジュール1は、注型領域117uに一部が配置された状態で第一部分111,112の他方(本実施形態では第一部分111)に設けられ半導体チップ14a~14dからの電力が出力される電力出力端子22uを備えている。電力入力端子21u(より具体的には正極側端子211u及び負極側端子212u)及び電力出力端子22uは、導電性材料(例えば銅)で形成されている。
【0024】
正極側端子211uは、第一部分112に配置されて直流電力を生成する直流電源(不図示)の正極側に接続されるケーブル(不図示)が締結される締結部211uaを有している。締結部211uaは、第一部分112において露出されている。正極側端子211uは、注型領域117uに突出して配置される突出部211ubを有している。したがって、正極側端子211uは、注型領域117uに突出部211ub(一部の一例)が配置された状態で第一部分112に設けられている。
【0025】
負極側端子212uは、第一部分112に配置されて直流電力を生成する直流電源(不図示)の負極側に接続されるケーブル(不図示)が締結される締結部212uaを有している。締結部212uaは、第一部分112において露出されている。負極側端子212uは、注型領域117uに突出して配置される突出部212ubを有している。したがって、負極側端子212uは、注型領域117uに突出部212ub(一部の一例)が配置された状態で第一部分112に設けられている。
【0026】
電力出力端子22uは、第一部分111に配置されて駆動対象である負荷(不図示)に接続されるケーブル(不図示)が締結される締結部221uを有している。締結部221uは、第一部分111において露出されている。電力出力端子22uは、注型領域117uに突出して配置される突出部222uを有している。したがって、電力出力端子22uは、注型領域117uに突出部222u(一部の一例)が配置された状態で第一部分111に設けられている。
【0027】
図1に示すように、半導体モジュール1は、注型領域117vに一部が配置された状態で第一部分111,112の一方(本実施形態では第一部分112)に設けられ半導体チップ14a~14dに供給される電力が入力される電力入力端子21vを備えている。電力入力端子21vは、例えば正極側の直流電力が供給される正極側端子211vと、例えば負極側の直流電力が供給される負極側端子212vとを有している。半導体モジュール1は、注型領域117vに一部が配置された状態で第一部分111,112の他方(本実施形態では第一部分111)に設けられ半導体チップ14a~14dからの電力が出力される電力出力端子22vを備えている。電力入力端子21v(より具体的には正極側端子211v及び負極側端子212v)及び電力出力端子22vは、導電性材料(例えば銅)で形成されている。
【0028】
正極側端子211vは、第一部分112に配置されて直流電力を生成する直流電源(不図示)の正極側に接続されるケーブル(不図示)が締結される締結部211vaを有している。締結部211vaは、第一部分112において露出されている。正極側端子211vは、注型領域117vに突出して配置される突出部211vbを有している。したがって、正極側端子211vは、注型領域117vに突出部211vb(一部の一例)が配置された状態で第一部分112に設けられている。
【0029】
負極側端子212vは、第一部分112に配置されて直流電力を生成する直流電源(不図示)の負極側に接続されるケーブル(不図示)が締結される締結部212vaを有している。締結部212vaは、第一部分112において露出されている。負極側端子212vは、注型領域117vに突出して配置される突出部212vbを有している。したがって、負極側端子212vは、注型領域117vに突出部212vb(一部の一例)が配置された状態で第一部分112に設けられている。
【0030】
電力出力端子22vは、第一部分111に配置されて駆動対象である負荷(不図示)に接続されるケーブル(不図示)が締結される締結部221vを有している。締結部221vは、第一部分111において露出されている。電力出力端子22vは、注型領域117vに突出して配置される突出部222vを有している。したがって、電力出力端子22vは、注型領域117vに突出部222v(一部の一例)が配置された状態で第一部分111に設けられている。
【0031】
図1に示すように、半導体モジュール1は、注型領域117wに一部が配置された状態で第一部分111,112の一方(本実施形態では第一部分112)に設けられ半導体チップ14a~14dに供給される電力が入力される電力入力端子21wを備えている。電力入力端子21wは、例えば正極側の直流電力が供給される正極側端子211wと、例えば負極側の直流電力が供給される負極側端子212wとを有している。半導体モジュール1は、注型領域117wに一部が配置された状態で第一部分111,112の他方(本実施形態では第一部分111)に設けられ半導体チップ14a~14dからの電力が出力される電力出力端子22wを備えている。電力入力端子21w(より具体的には正極側端子211w及び負極側端子212w)及び電力出力端子22wは、導電性材料(例えば銅)で形成されている。
【0032】
正極側端子211wは、第一部分112に配置されて直流電力を生成する直流電源(不図示)の正極側に接続されるケーブル(不図示)が締結される締結部211waを有している。締結部211waは、第一部分112において露出されている。正極側端子211wは、注型領域117wに突出して配置される突出部211wbを有している。したがって、正極側端子211wは、注型領域117wに突出部211wb(一部の一例)が配置された状態で第一部分112に設けられている。
【0033】
負極側端子212wは、第一部分112に配置されて直流電力を生成する直流電源(不図示)の負極側に接続されるケーブル(不図示)が締結される締結部212waを有している。締結部212waは、第一部分112において露出されている。負極側端子212wは、注型領域117wに突出して配置される突出部212wbを有している。したがって、負極側端子212wは、注型領域117wに突出部212wb(一部の一例)が配置された状態で第一部分112に設けられている。
【0034】
電力出力端子22wは、第一部分111に配置されて駆動対象である負荷(不図示)に接続されるケーブル(不図示)が締結される締結部221wを有している。締結部221wは、第一部分111において露出されている。電力出力端子22wは、注型領域117wに突出して配置される突出部222wを有している。したがって、電力出力端子22wは、注型領域117wに突出部222w(一部の一例)が配置された状態で第一部分111に設けられている。
【0035】
図2に示すように、半導体モジュール1は、ケース11が固定される冷却器31を備えている。冷却器31は、熱伝導性の高い材料(例えばアルミニウム)で形成されている。ケース11は、締結部211ua,212ua,221uが露出する側とは反対側の端部が例えば接着剤32によって冷却器31に接着されて固定される。これにより、ケース11の第一部分111、第二部分114、第一部分112及び第二部分113並びに冷却器31によって5つの方向が囲まれ、かつ締結部211ua,212ua,221uが露出する側が開放された注型領域117uが形成される。また、ケース11の第一部分111、第二部分115、第一部分112及び第二部分114並びに冷却器31によって5つの方向が囲まれ、かつ締結部211va,212va,221vが露出する側が開放された注型領域117vが形成される。さらに、ケース11の第一部分111、第二部分116、第一部分112及び第二部分115並びに冷却器31によって5つの方向が囲まれ、かつ締結部211wa,212wa,221wが露出する側が開放された注型領域117wが形成される。
【0036】
ここで、注型領域117u,117v,117wのそれぞれに配置され、電力入力端子21u,21v,21wから入力される直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力を電力出力端子22u,22v,22wから出力するインバータ部の構成について説明する。注型領域117uに配置されたU相用のインバータ部と、注型領域117vに配置されたV相用のインバータ部と、注型領域117wに配置されたW相用のインバータ部とは、互いに同じ構成を有している。このため、U相用のインバータ部、V相用のインバータ部及びW相用のインバータ部について、U相用のインバータ部を例にとって説明する。
【0037】
図1及び図2に示すように、U相用のインバータ部は、半導体チップ14a~14dが配置される積層基板16を有している。積層基板16は、例えばDCB(Direct Copper Bonding)基板又はAMB(Active Matal Brazing)基板で構成されている。積層基板16は、締結部211ua,212ua,221uが露出する側の注型領域117uの開口よりも大きい面積を有し矩形平板状に形成された絶縁基板161を有している。絶縁基板161は、例えばアルミナ(Al)や窒化アルミニウム(AlN)などのセラミックスで形成されている。
【0038】
積層基板16は、封止樹脂18(図2参照)で封止される側に絶縁基板161上に形成された正極側配線パターン162a、中間配線パターン162b、負極側配線パターン162c及び中継配線パターン162d,162e,162f,162gを有している。正極側配線パターン162a、中間配線パターン162b、負極側配線パターン162c及び中継配線パターン162d,162e,162f,162gは、導電材料(例えば銅)で形成されている。積層基板16は、封止樹脂18によって封止される側の裏面側における絶縁基板161上に形成された矩形平板状の伝熱パターン163(図2参照)を有している。伝熱パターン163は、熱伝導性の高い材料(例えば銅)で形成されている。
【0039】
積層基板16は、例えばはんだ33を用いて冷却器31にはんだ付けされている。積層基板16は、伝熱パターン163をはんだ33に接触させた状態で冷却器31に固定されている。これにより、半導体モジュール1は、積層基板16に設けられた半導体チップ14a~14dから生じる熱を、冷却器31を介して外部に放出できる。
【0040】
図1に示すように、正極側配線パターン162aは例えば、電力出力端子22uの突出部222uと第二部分114との間で第二部分114に沿って延在して配置されている。正極側配線パターン162aは、中央部に第二部分114から注型領域117uの中央部に向かって凹んだ凹み部を有している。中継配線パターン162d,162eは、当該凹み部に並んで配置されている。中継配線パターン162d,162eは、それぞれ例えば長方形状を有し、互いに同一の形状を有している。中継配線パターン162dは電力入力端子21u側に配置され、中継配線パターン162eは電力出力端子22u側に配置されている。
【0041】
負極側配線パターン162cは例えば、第一部分112及び第二部分113が交わるケース11の角部近傍から第一部分112に沿って負極側端子212uの突出部212ubの下方まで延在し、かつ絶縁基板161の中央部を通って電力出力端子22uの突出部222uの近傍まで延在して配置されている。負極側配線パターン162cは、例えば左右反対向きのL字形状を有している。
【0042】
中間配線パターン162bは例えば、負極側配線パターン162cが絶縁基板161の中央部を通って電力出力端子22uの突出部222uの近傍まで延在している部分を囲むように配置されている。中間配線パターン162bは、例えば凹形状を有している。絶縁基板161の中央部に延在する中間配線パターン162bの一部の領域は、正極側配線パターン162aと負極側配線パターン162cとの間に配置されている。
【0043】
中間配線パターン162bは、第二部分113に沿って延在する部分の中央部に第二部分113から注型領域117uの中央部に向かって凹んだ凹み部を有している。中継配線パターン162f,162gは、当該凹み部に並んで配置されている。中継配線パターン162f,162gは、それぞれ例えば長方形状を有し、互いに同一の形状を有している。中継配線パターン162fは電力入力端子21u側に配置され、中継配線パターン162gは電力出力端子22u側に配置されている。
【0044】
正極側端子211uの突出部211ubは、正極側配線パターン162aの上方まで延在して配置されている。正極側端子211uは、突出部211ub及び正極側配線パターン162aが重なる領域の一部に配置された接続部材34a(図2参照)によって正極側配線パターン162aと接続されている。接続部材34aは、例えば直方体形状を有し、導電性材料(例えば銅)で形成されている。接続部材34aは、正極側配線パターン162aに例えばはんだ付けされている。突出部211ubは、接続部材34aに例えばレーザ溶接によって接合されている。これにより、正極側端子211u及び正極側配線パターン162aは、接続部材34aを介して機械的かつ電気的に接続される。
【0045】
負極側端子212uの突出部212ubは、負極側配線パターン162cの上方まで延在して配置されている。負極側端子212uは、突出部212ub及び負極側配線パターン162cが重なる領域の一部に配置された接続部材34c(図2参照)によって負極側配線パターン162cと接続されている。接続部材34cは、例えば直方体形状を有し、導電性材料(例えば銅)で形成されている。接続部材34cは、負極側配線パターン162cに例えばはんだ付けされている。突出部212ubは、接続部材34cに例えばレーザ溶接によって接合されている。これにより、負極側端子212u及び負極側配線パターン162cは、接続部材34cを介して機械的かつ電気的に接続される。
【0046】
電力出力端子22uの突出部222uは、中間配線パターン162bの上方まで延在して配置されている。電力出力端子22uは、突出部222u及び中間配線パターン162bが重なる領域の一部に配置された接続部材34b(図2参照)によって中間配線パターン162bと接続されている。接続部材34bは、例えば直方体形状を有し、導電性材料(例えば銅)で形成されている。接続部材34bは、中間配線パターン162bに例えばはんだ付けされている。突出部222uは、接続部材34bに例えばレーザ溶接によって接合されている。これにより、電力出力端子22u及び中間配線パターン162bは、接続部材34bを介して機械的かつ電気的に接続される。
【0047】
図1に示すように、半導体チップ14a及び半導体チップ14bは、中継配線パターン162d、162eを挟んで中間配線パターン162b上に配置されている。半導体チップ14a,14bは例えば、中間配線パターン162b上に形成された焼結体によって中間配線パターン162bに接合されている。これにより、半導体チップ14a,14bは、中間配線パターン162bに機械的及び電気的に接続される。
【0048】
半導体チップ14c及び半導体チップ14dは、中継配線パターン162f、162gを挟んで負極側配線パターン162c上に配置されている。半導体チップ14c,14dは例えば、負極側配線パターン162c上に形成された焼結体によって負極側配線パターン162cに接合されている。これにより、半導体チップ14c,14dは、負極側配線パターン162cに機械的及び電気的に接続される。
【0049】
図1に示すように、半導体モジュール1は例えば、半導体チップ14aと正極側配線パターン162aとを機械的かつ電気的に接続するリードフレーム15aと、半導体チップ14bと正極側配線パターン162aとを機械的かつ電気的に接続するリードフレーム15bとを有している。半導体モジュール1は例えば、半導体チップ14cと中間配線パターン162bとを機械的かつ電気的に接続するリードフレーム15cと、半導体チップ14dと中間配線パターン162bとを機械的かつ電気的に接続するリードフレーム15dとを有している。
【0050】
半導体チップ14a,14b,14c,14dには例えば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)やパワー金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:MOSFET)などのパワー半導体素子(不図示)が形成されている。本実施形態では、半導体チップ14a,14b,14c,14dには、例えばIGBT(不図示)が形成されている。また、半導体チップ14a,14b,14c,14dには、IGBTに逆並列に接続された還流ダイオード(不図示)が形成されている。
【0051】
半導体チップ14aに形成されたIGBTのコレクタ端子(不図示)及び還流ダイオードのカソード端子(不図示)は、正極側配線パターン162aに対向する表面に露出しており、焼結体を介して正極側配線パターン162aと機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ14aに形成されたIGBTのエミッタ端子E及び還流ダイオードのアノード端子(不図示)は、リードフレーム15aが配置されている側の表面の一部に露出しており、リードフレーム15aの端部と機械的かつ電気的に接続されている。
【0052】
半導体チップ14bに形成されたIGBTのコレクタ端子(不図示)及び還流ダイオードのカソード端子(不図示)は、正極側配線パターン162aに対向する表面に露出しており、焼結体と機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ14bに形成されたIGBTのエミッタ端子E及び還流ダイオードのアノード端子(不図示)は、リードフレーム15bが配置されている側の表面の一部に露出しており、リードフレーム15bの端部と機械的かつ電気的に接続されている。
【0053】
したがって、半導体チップ14aに設けられたIGBT及び還流ダイオードと、半導体チップ14bに設けられたIGBT及び還流ダイオードとは、接続部材34a、正極側配線パターン162a、リードフレーム15a,15b、中間配線パターン162b及び接続部材34bによって、正極側端子211u及び電力出力端子22uの間で並列に接続される。
【0054】
半導体チップ14cに形成されたIGBTのコレクタ端子(不図示)及び還流ダイオードのカソード端子(不図示)は、負極側配線パターン162cに対向する表面に露出しており、焼結体と機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ14cに形成されたIGBTのエミッタ端子E及び還流ダイオードのアノード端子(不図示)は、リードフレーム15cが配置されている側の表面の一部に露出しており、リードフレーム15cの端部と機械的かつ電気的に接続されている。
【0055】
半導体チップ14dに形成されたIGBTのコレクタ端子(不図示)及び還流ダイオードのカソード端子(不図示)は、負極側配線パターン162cに対向する表面に露出しており、焼結体と機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ14dに形成されたIGBTのエミッタ端子E及び還流ダイオードのアノード端子(不図示)は、リードフレーム15dが配置されている側の表面の一部に露出しており、リードフレーム15dの端部と機械的かつ電気的に接続されている。
【0056】
したがって、半導体チップ14cに設けられたIGBT及び還流ダイオードと、半導体チップ14dに設けられたIGBT及び還流ダイオードとは、接続部材34b、中間配線パターン162b、リードフレーム15c,15d、負極側配線パターン162c及び接続部材34cによって、電力出力端子22u及び負極側端子212uの間で並列に接続される。さらに、半導体チップ14a,14bのそれぞれに設けられて並列接続されたIGBT及び還流ダイオードと、半導体チップ14c,14dのそれぞれに設けられて並列接続されたIGBT及び還流ダイオードとは、接続部材34a、正極側配線パターン162a、リードフレーム15a,15b、中間配線パターン162b、リードフレーム15c,15d、負極側配線パターン162c及び接続部材34cによって、正極側端子211u及び負極側端子212uの間に直列に接続される。
【0057】
図1に示すように、半導体モジュール1は、ケース11の第一部分111及び注型領域117uに亘って配置されたゲート信号入力端子171a,172a、電圧検出端子171b,172b,171f、電流検出端子171c,172c及び温度検出端子171d,171e,172d,172eを有している。以下、ゲート信号入力端子171a,172a、電圧検出端子171b,172b,171f、電流検出端子171c,172c及び温度検出端子171d,171e,172d,172eの全て又は一部を総称して「各種端子17」と称する場合がある。
【0058】
各種端子17の一部は、第一部分111において屹立した状態で外部に露出し(図2参照)、各種端子17の他の一部は、注型領域117uに露出している(図1参照)。各種端子17の当該一部は、U相用のインバータ部、V相用のインバータ部及びW相用のインバータ部を制御する制御装置(不図示)が設けられた回路基板(不図示)に接続される。詳細は後述するが、各種端子17の当該他の一部は、半導体チップ14a~14dと接続されるためのワイヤ配線101a~101j,102a~102iが接続される。これにより、半導体モジュール1は、各種端子17を介して当該制御装置と半導体チップ14a~14dとの間で所定の信号を送受信することができる。
【0059】
ゲート信号入力端子171aには、ワイヤ配線101aの一端が接続されている。ワイヤ配線101aの他端は、中継配線パターン162eに接続されている。中継配線パターン162eには、ワイヤ配線101f,101gのそれぞれの一端が接続されている。ワイヤ配線101fの他端は、半導体チップ14aのエミッタ端子Eが露出する表面と同じ表面に露出するゲート端子Gに接続されている。当該ゲート端子Gは、半導体チップ14aに設けられたIGBTのゲートに接続された端子である。ワイヤ配線101gの他端は、半導体チップ14bのエミッタ端子Eが露出する表面と同じ表面に露出するゲート端子Gに接続されている。当該ゲート端子Gは、半導体チップ14bに設けられたIGBTのゲートに接続された端子である。このように、ゲート信号入力端子171aと半導体チップ14a,14bとは、ワイヤボンディングによって機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ14a,14bのそれぞれに設けられたIGBTは、ゲート信号入力端子171a、ワイヤ配線101a,中継配線パターン162d及びワイヤ配線101f,101gを介して制御装置(不図示)から入力されるゲート信号に基づいてオン/オフ動作が制御される。
【0060】
電圧検出端子171bには、ワイヤ配線101bの一端が接続されている。ワイヤ配線101bの他端は、中継配線パターン162dに接続されている。中継配線パターン162dには、ワイヤ配線101h,101iのそれぞれの一端が接続されている。ワイヤ配線101hの他端は、半導体チップ14aのエミッタ端子Eに接続されている。ワイヤ配線101iの他端は、半導体チップ14bのエミッタ端子Eに接続されている。このように、電圧検出端子171bと半導体チップ14a,14bとは、ワイヤボンディングによって機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ14a,14bのそれぞれに設けられたIGBTのエミッタ電圧は、ワイヤ配線101h,101i、中継配線パターン162d、ワイヤ配線101b及び電圧検出端子171bを介して制御装置(不図示)に出力される。制御装置に入力されるエミッタ電圧は、IGBTに流れる電流を検出するために用いられる。
【0061】
電流検出端子171cには、ワイヤ配線101cの一端が接続されている。ワイヤ配線101cの他端は、半導体チップ14bのエミッタ端子Eが露出する表面と同じ表面に露出する電流検出パッドP1に接続されている。電流検出パッドP1は、半導体チップ14bに設けられてIGBTに流れる電流を検出するための電流検知端子(不図示)に接続されている。このように、電流検出端子171cと半導体チップ14bとは、ワイヤボンディングによって機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ14bに設けられた電流検知端子から出力される検知電流は、ワイヤ配線101c及び電流検出端子171cを介して制御装置(不図示)に出力される。当該制御装置は、電流検出端子171cから入力される検知電流に基づいて、半導体チップ14a,14bに過電流などの異常電流が流れているか否かを判定する。
【0062】
温度検出端子171dには、ワイヤ配線101dの一端が接続されている。ワイヤ配線101dの他端は、半導体チップ14bのエミッタ端子Eが露出する表面と同じ表面に露出するアノードパッドP2に接続されている。アノードパッドP2は、半導体チップ14bに設けられた温度検出素子としてのダイオード(不図示)のアノードに接続されている。当該ダイオードは、半導体チップ14bの温度を検出するために設けられている。
【0063】
温度検出端子171eには、ワイヤ配線101eの一端が接続されている。ワイヤ配線101eの他端は、半導体チップ14bのエミッタ端子Eが露出する表面と同じ表面に露出するカソードパッドP3に接続されている。カソードパッドP3は、半導体チップ14bに設けられた温度検出素子としてのダイオードのカソードに接続されている。
【0064】
このように、温度検出端子171d,171eと半導体チップ14bとは、ワイヤボンディングによって機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ14bに設けられた温度検出素子としてのダイオードのアノードの電圧は、ワイヤ配線101dを介して制御装置(不図示)に出力される。当該ダイオードのカソードの電圧は、ワイヤ配線101eを介して当該制御装置に出力される。当該制御装置は、当該ダイオードのアノード及びカソードの間の電圧に基づいて、半導体チップ14a,14bの温度が異常値であるか否かを判定する。
【0065】
電圧検出端子171fには、ワイヤ配線101jの一端が接続されている。ワイヤ配線101jの他端は、正極側配線パターン162aに接続されている。このように、電圧検出端子171fと正極側配線パターン162aとは、ワイヤボンディングによって機械的かつ電気的に接続されている。正極側端子211uに入力される正極側の直流電圧は、正極側配線パターン162a、ワイヤ配線101j及び電圧検出端子171fを介して制御装置(不図示)に出力される。当該制御装置は、電圧検出端子171fから入力される電圧に基づいて、正極側端子211uから出力されて半導体チップ14a,14bに供給される正極側の直流電圧を検出する。
【0066】
図1に示すように、ゲート信号入力端子172aには、ワイヤ配線102aの一端が接続されている。ワイヤ配線102aの他端は、中継配線パターン162gに接続されている。中継配線パターン162gには、ワイヤ配線102f,102gのそれぞれの一端が接続されている。ワイヤ配線101fの他端は、半導体チップ14cのエミッタ端子Eが露出する表面と同じ表面に露出するゲート端子Gに接続されている。当該ゲート端子Gは、半導体チップ14cに設けられたIGBTのゲートに接続された端子である。ワイヤ配線101gの他端は、半導体チップ14dのエミッタ端子Eが露出する表面と同じ表面に露出するゲート端子Gに接続されている。当該ゲート端子Gは、半導体チップ14dに設けられたIGBTのゲートに接続された端子である。このように、ゲート信号入力端子172aと半導体チップ14c,14dとは、ワイヤボンディングによって機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ14c,14dのそれぞれに設けられたIGBTは、ゲート信号入力端子172a、ワイヤ配線102a,中継配線パターン162g及びワイヤ配線102f,102gを介して制御装置(不図示)から入力されるゲート信号に基づいてオン/オフ動作が制御される。
【0067】
電圧検出端子172bには、ワイヤ配線102bの一端が接続されている。ワイヤ配線102bの他端は、中継配線パターン162fに接続されている。中継配線パターン162fには、ワイヤ配線102h,102iのそれぞれの一端が接続されている。ワイヤ配線102hの他端は、半導体チップ14cのエミッタ端子Eに接続されている。ワイヤ配線102iの他端は、半導体チップ14dのエミッタ端子Eに接続されている。このように、電圧検出端子172bと半導体チップ14c,14dとは、ワイヤボンディングによって機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ14c,14dのそれぞれに設けられたIGBTのエミッタ電圧は、ワイヤ配線102h,102i、中継配線パターン162f、ワイヤ配線102b及び電圧検出端子172bを介して制御装置(不図示)に出力される。制御装置に入力されるエミッタ電圧は、IGBTに流れる電流を検出するために用いられる。
【0068】
電流検出端子172cには、ワイヤ配線102cの一端が接続されている。ワイヤ配線102cの他端は、半導体チップ14dのエミッタ端子Eが露出する表面と同じ表面に露出する電流検出パッドP1に接続されている。電流検出パッドP1は、半導体チップ14dに設けられてIGBTに流れる電流を検出するための電流検知端子(不図示)に接続されている。このように、電流検出端子172cと半導体チップ14dとは、ワイヤボンディングによって機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ14dに設けられた電流検知端子から出力される検知電流は、ワイヤ配線102c及び電流検出端子172cを介して制御装置(不図示)に出力される。当該制御装置は、電流検出端子172cから入力される検知電流に基づいて、半導体チップ14c,14dに過電流などの異常電流が流れているか否かを判定する。
【0069】
温度検出端子172dには、ワイヤ配線102dの一端が接続されている。ワイヤ配線102dの他端は、半導体チップ14dのエミッタ端子Eが露出する表面と同じ表面に露出するアノードパッドP2に接続されている。アノードパッドP2は、半導体チップ14dに設けられた温度検出素子としてのダイオード(不図示)のアノードに接続されている。当該ダイオードは、半導体チップ14dの温度を検出するために設けられている。
【0070】
温度検出端子172eには、ワイヤ配線102eの一端が接続されている。ワイヤ配線102eの他端は、半導体チップ14dのエミッタ端子Eが露出する表面と同じ表面に露出するカソードパッドP3に接続されている。カソードパッドP3は、半導体チップ14dに設けられた温度検出素子としてのダイオードのカソードに接続されている。
【0071】
このように、温度検出端子172d,172eと半導体チップ14dとは、ワイヤボンディングによって機械的かつ電気的に接続されている。半導体チップ14dに設けられた温度検出素子としてのダイオードのアノードの電圧は、ワイヤ配線102dを介して制御装置(不図示)に出力される。当該ダイオードのカソードの電圧は、ワイヤ配線102eを介して当該制御装置に出力される。当該制御装置は、当該ダイオードのアノード及びカソードの間の電圧に基づいて、半導体チップ14c,14dの温度が異常値であるか否かを判定する。
【0072】
図2に示すように、封止樹脂18は、積層基板16の上方と、当該上方からケース11と絶縁基板161との間を通って、ケース11、積層基板16及び冷却器31によって囲まれる領域とに形成される。注型領域117uに注型された封止樹脂18は、例えばエポキシ樹脂などのケース11とは異なる材料で形成されている。封止樹脂18は、注型領域117uに設けられた半導体チップ14a,14b,14c,14dや積層基板16などの構成要素を封止する封止部材である。封止樹脂18は、積層基板16を封止することによって、絶縁基板161に形成された正極側配線パターン162a、中間配線パターン162b及び負極側配線パターン162cの間の絶縁性の向上を図ることができる。これにより、封止樹脂18は、半導体モジュール1の信頼性の向上を図ることができる。
【0073】
図1に戻って、V相用のインバータ部は、U相用のインバータ部と同様の構成を有しており、正極側端子211vの突出部211vbは、注型領域117vに設けられた正極側配線パターン162aの上方まで延在して配置されている。正極側端子211vは、突出部211vb及び正極側配線パターン162aが重なる領域の一部に配置された接続部材(不図示)によって正極側配線パターン162aと接続されている。当該接続部材は、接続部材34a(図2参照)と同様の構成を有している。当該接続部材は、正極側配線パターン162aに例えばはんだ付けされ、突出部211vbに例えばレーザ溶接によって接合されている。
【0074】
負極側端子212vの突出部212vbは、注型領域117vに設けられた負極側配線パターン162cの上方まで延在して配置されている。負極側端子212vは、突出部212vb及び負極側配線パターン162cが重なる領域の一部に配置された接続部材(不図示)によって負極側配線パターン162cと接続されている。当該接続部材は、接続部材34c(図2参照)と同様の構成を有している。当該接続部材は、負極側配線パターン162cに例えばはんだ付けされ、突出部212vbに例えばレーザ溶接によって接合されている。
【0075】
電力出力端子22vの突出部222vは、注型領域117vに設けられた中間配線パターン162bの上方まで延在して配置されている。電力出力端子22vは、突出部222v及び中間配線パターン162bが重なる領域の一部に配置された接続部材(不図示)によって中間配線パターン162bと接続されている。当該接続部材は、接続部材34b(図2参照)と同様の構成を有している。当該接続部材は、中間配線パターン162bに例えばはんだ付けされ、突出部222vに例えばレーザ溶接によって接合されている。
【0076】
図1に示すように、W相用のインバータ部は、W相用のインバータ部と同様の構成を有しており、正極側端子211wの突出部211wbは、注型領域117wに設けられた正極側配線パターン162aの上方まで延在して配置されている。正極側端子211wは、突出部211wb及び正極側配線パターン162aが重なる領域の一部に配置された接続部材(不図示)によって正極側配線パターン162aと接続されている。当該接続部材は、接続部材34a(図2参照)と同様の構成を有している。当該接続部材は、正極側配線パターン162aに例えばはんだ付けされ、突出部211wbに例えばレーザ溶接によって接合されている。
【0077】
負極側端子212wの突出部212wbは、注型領域117wに設けられた負極側配線パターン162cの上方まで延在して配置されている。負極側端子212wは、突出部212wb及び負極側配線パターン162cが重なる領域の一部に配置された接続部材(不図示)によって負極側配線パターン162cと接続されている。当該接続部材は、接続部材34c(図2参照)と同様の構成を有している。当該接続部材は、負極側配線パターン162cに例えばはんだ付けされ、突出部212wbに例えばレーザ溶接によって接合されている。
【0078】
電力出力端子22wの突出部222wは、注型領域117wに設けられた中間配線パターン162bの上方まで延在して配置されている。電力出力端子22wは、突出部222w及び中間配線パターン162bが重なる領域の一部に配置された接続部材(不図示)によって中間配線パターン162bと接続されている。当該接続部材は、接続部材34b(図2参照)と同様の構成を有している。当該接続部材は、中間配線パターン162bに例えばはんだ付けされ、突出部222wに例えばレーザ溶接によって接合されている。
【0079】
次に、注型領域117uに注型された封止樹脂及び注型領域117v,117wのそれぞれに注型された封止樹脂(不図示)に生じるクラックの発生要因の1つとなる凹部131a,131b,132a,132b,134a,134b,135a,135b,136a,136bについて説明する。
【0080】
図1に示すように、半導体モジュール1は、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置された注型領域117uの領域及びワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない注型領域117uの領域の境界であって一対の第一部分111,112に平行な仮想平面VSuと、一対の第一部分111,112の他方(本実施形態では第一部分112)との間で一対の第二部分113,114の少なくとも一方に形成された少なくとも1つの凹部((本実施形態では、2つの凹部131a,131b及び2つの凹部132a,132b)を備えている。本実施形態では、半導体モジュール1は、第二部分113に凹部131a,131bを備え、第二部分114に凹部132a,132bを備えているが、第二部分113及び第二部分114のいずれか一方のみに少なくとも1つの凹部を備えていてもよい。また、半導体モジュール1は、第二部分113,114のそれぞれに1つの凹部又は3つ以上の凹部を備えていてもよいし、第二部分113,114の一方のみに1つの凹部又は3つ以上の凹部を備えていてもよい。また、半導体モジュール1は、第二部分113,114のそれぞれに異なる個数の凹部を備えていてもよい。
【0081】
仮想平面Vsuは、封止樹脂18の厚さ方向に見て、第一部分112(一対の第一部分の他方の一例)に対して最も離れた凹部131a,132aから凹部131a,132aが形成されていない第二部分114,113まで注型領域117uを横切る平面である。封止樹脂18の厚さ方向は、注型領域117uに配置された絶縁基板161のパターン形成面(正極側配線パターン162aなどが形成された面)に直交する方向である。具体的には、本実施形態では、凹部131a及び凹部132aは、第一部分112に対して同じ距離となる位置に形成されている。このため、凹部131aから凹部131aが形成されていない第二部分114まで延在する最短の仮想平面と、凹部132aから凹部132aが形成されていない第二部分113まで延在する最短の仮想平面とは、同一の平面となり、本実施形態では仮想平面VSuとなる。仮想平面VSuは、注型領域117uに封止樹脂18が注型されている場合には、封止樹脂18を横切る平面でもある。なお、仮想平面VSuは、理解を容易にするために図1に図示されているが、実際の半導体モジュール1には存在しない。
【0082】
封止樹脂18の厚さ方向に見て、第一部分112(一対の第一部分の他方の一例)と仮想平面VSuとの間には、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない。また、封止樹脂18の厚さ方向に見て、第一部分111(一対の第一部分の一方の一例)と仮想平面VSuとの間には、凹部131a,131b,132a,132bが設けられていない。詳細は後述するが、半導体モジュール1では、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない領域に対応させて凹部131a,131b,132a,132bが配置されている。このため、半導体モジュール1は、封止樹脂18の全領域のうちのワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない領域にクラックを発生させることができる。これにより、半導体モジュール1は、封止樹脂18に発生したクラックによってワイヤ配線101a~101j,102a~102iが破断することを防止できる。
【0083】
凹部131a,131b,132a,132bは、第二部分113,114の型割れライン113L,114L(図2参照、詳細は後述)よりも上側の領域に形成されている。凹部131a,131b,132a,132bは、曲面状の壁面を有している。凹部131a,131b,132a,132bは、例えば円柱の側面の一部に倣う曲面状の表面を有している。凹部131a,131bは例えば、絶縁基板161にほぼ直交する方向に延在している。凹部131a及び凹部131bは、例えば同一の形状を有している。凹部132a,132bは例えば、円柱の側面の一部に倣う曲面状の表面を有している。凹部132a,132bは例えば、絶縁基板161にほぼ直交する方向に延在している。凹部131a及び凹部132aは、対向して配置され、凹部131b及び凹部132bは、対向して配置されている。凹部132a及び凹部132bは、例えば同一の形状を有している。凹部131a及び凹部132aは、仮想平面VSuの中心を通り仮想平面VSuに直交する仮想直線(不図示)を対称軸として線対称の形状を有し、凹部131b及び凹部132bは、当該不図示の仮想直線を対称軸として線対称の形状を有している。
【0084】
凹部131a,131b,132a,132bは、封止樹脂18とケース11との密着度を向上させるために設けられている。凹部131a,131b,132a,132bは、封止樹脂18に向けられた第二部分113,114の表面を凹ませた形状を有している。このため、凹部131a,131b,132a,132bは、凹部131a,131b,132a,132bが形成されていない場合よりもケース11と封止樹脂18との接触面積を増加させることができる。これにより、封止樹脂18とケース11との密着度が向上する。
【0085】
図2に示すように、第二部分113,114は、封止樹脂18の表面181側よりも半導体チップ14a~14dが配置されている側の方が互いの距離が長くなる段差部113S,114Sを有している。段差部113S,114Sのそれぞれの両端部のうちの封止樹脂18の表面181側の端部は、型割れライン113L,114Lとなる。型割れライン113L,114Lは、ケース11を成形するための金型の形状に依存して形成される。本実施形態におけるケース11は、上側部分11a及び下側部分11bが異なる金型を用いて成形される。型割れライン113L,114Lは、上側部分11aを形成するための金型と、下側部分11bを形成するための金型との境界部に相当する。
【0086】
詳細は後述するが、型割れライン113L,114Lは、封止樹脂18に生じるクラックの発生起点となる。封止樹脂18に生じるクラックは、第二部分113,114に形成された凹部に起因して発生し易くなる。半導体モジュール1は、型割れライン113Lを端部に有する凹部131a,131b及び型割れライン114Lを端部に有する凹部132a,132bを、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない仮想平面VSuと第一部分112との間に備えている。これにより、半導体モジュール1は、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない領域の封止樹脂18に意図的にクラックを生じさせるようになっている。その結果、半導体モジュール1は、封止樹脂18に発生したクラックによるワイヤ配線101a~101j,102a~102iの破断を防止できる。
【0087】
図1に戻って、半導体モジュール1は、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置された注型領域117vの領域及びワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない注型領域117vの領域の境界であって一対の第一部分111,112に平行な仮想平面VSvと、第一部分112(一対の第一部分111の他方の一例)との間で一対の第二部分113,114の少なくとも一方に形成された少なくとも1つの凹部(本実施形態では、2つの凹部133a,133b及び2つの凹部134a,134b)を備えている。本実施形態では、半導体モジュール1は、第二部分114に凹部133a,133bを備え、第二部分115に凹部134a,134bを備えているが、第二部分114及び第二部分115のいずれか一方のみに少なくとも1つの凹部を備えていてもよい。また、半導体モジュール1は、第二部分114,115のそれぞれに1つの凹部又は3つ以上の凹部を備えていてもよいし、第二部分114,115の一方のみに1つの凹部又は3つ以上の凹部を備えていてもよい。また、半導体モジュール1は、第二部分114,115のそれぞれに異なる個数の凹部を備えていてもよい。
【0088】
仮想平面VSvは、封止樹脂(不図示)の厚さ方向に見て、第一部分112(一対の第一部分の他方の一例)に対して最も離れた凹部133a,134aから凹部133a,134aが形成されていない第二部分115,114まで注型領域117vを横切る平面である。当該封止樹脂の厚さ方向は、注型領域117vに配置された絶縁基板161のパターン形成面(正極側配線パターン162aなどが形成された面)に直交する方向である。具体的には、本実施形態では、凹部133a及び凹部134aは、第一部分112に対して同じ距離となる位置に形成されている。このため、凹部133aから凹部133aが形成されていない第二部分115まで延在する最短の仮想平面と、凹部134aから凹部134aが形成されていない第二部分114まで延在する最短の仮想平面とは、同一の平面となり、本実施形態では仮想平面VSvとなる。仮想平面VSvは、注型領域117vに封止樹脂が注型されている場合には、当該封止樹脂を横切る平面でもある。なお、仮想平面VSvは、理解を容易にするために図1に図示されているが、実際の半導体モジュール1には存在しない。
【0089】
注型領域117vに注型された封止樹脂の厚さ方向に見て、第一部分112(一対の第一部分の他方の一例)と仮想平面VSvとの間には、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない。また、当該封止樹脂の厚さ方向に見て、第一部分111(一対の第一部分の一方の一例)と仮想平面VSvとの間には、凹部133a,133b,134a,134bが設けられていない。半導体モジュール1では、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない領域に対応させて凹部133a,133b,134a,134bが配置されている。このため、半導体モジュール1は、注型領域117vに注型された封止樹脂の全領域のうちのワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない領域にクラックを発生させることができる。これにより、半導体モジュール1は、当該封止樹脂に発生したクラックによってワイヤ配線101a~101j,102a~102iが破断することを防止できる。
【0090】
注型領域117vにおいて第二部分114には、第二部分113の型割れライン113L(図2参照)と同様の構成を有する型割れライン(不図示)が形成されている。同様に、注型領域117vにおいて第二部分115には、第二部分114の型割れライン114L(図2参照)と同様の構成を有する型割れライン(不図示)が形成されている。凹部133a,133bは、注型領域117vにおいて第二部分114に形成された型割れラインよりも上側の領域に形成されている。凹部134a,134bは、注型領域117vにおいて第二部分115に形成された型割れラインよりも上側の領域に形成されている。
【0091】
凹部133a,133b,134a,134bは、曲面状の壁面を有している。凹部133a,133b,134a,134bは、例えば円柱の側面の一部に倣う曲面状の表面を有している。凹部133a,133bは例えば、絶縁基板161にほぼ直交する方向に延在している。凹部133a及び凹部133bは、例えば同一の形状を有している。凹部134a,134bは例えば、円柱の側面の一部に倣う曲面状の表面を有している。凹部134a,134bは例えば、絶縁基板161にほぼ直交する方向に延在している。凹部133a及び凹部134aは、対向して配置され、凹部133b及び凹部134bは、対向して配置されている。凹部134a及び凹部134bは、例えば同一の形状を有している。凹部133a及び凹部134aは、仮想平面VSvの中心を通り仮想平面VSvに直交する仮想直線(不図示)を対称軸として線対称の形状を有し、凹部133b及び凹部134bは、当該不図示の仮想直線を対称軸として線対称の形状を有している。
【0092】
凹部132a及び凹部133aは、第二部分114の幅方向の中心を通り第二部分114の延在方向と平行な仮想直線(不図示)を対称軸として線対称の形状を有している。凹部132b及び凹部133bは、第二部分114の幅方向の中心を通り第二部分114の延在方向と平行な仮想直線(不図示)を対称軸として線対称の形状を有している。
【0093】
凹部133a,133b,134a,134bは、注型領域117vに注型された封止樹脂とケース11との密着度を向上させるために設けられている。凹部133a,133b,134a,134bは、注型領域117vに注型された封止樹脂に向けられた第二部分114,115の表面を凹ませた形状を有している。このため、凹部133a,133b,134a,134bは、凹部133a,133b,134a,134bが形成されていない場合よりもケース11と注型領域117vに注型された封止樹脂との接触面積を増加させることができる。これにより、注型領域117vに注型された封止樹脂とケース11との密着度が向上する。
【0094】
図示は省略するが、第二部分114,115は、注型領域117vに注型された封止樹脂の表面側よりも半導体チップ14a~14dが配置されている側の方が互いの距離が長くなる段差部(不図示)を有している。当該段差部は、段差部113S,114Sと同様の構成を有している。半導体モジュール1は、型割れライン113Lと同じ構成の型割れラインを端部に有する凹部133a,133b及び型割れライン114Lと同じ構成の型割れラインを端部に有する凹部134a,134bを、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない仮想平面VSvと第一部分112との間に備えている。これにより、半導体モジュール1は、注型領域117vにおいて、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない領域の封止樹脂に意図的にクラックを生じさせるようになっている。その結果、半導体モジュール1は、注型領域117vにおいて、封止樹脂に発生したクラックによるワイヤ配線101a~101j,102a~102iの破断を防止できる。
【0095】
図1に示すように、半導体モジュール1は、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置された注型領域117wの領域及びワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない注型領域117wの領域の境界であって一対の第一部分111,112に平行な仮想平面VSwと、第一部分112(一対の第一部分111の他方の一例)との間で一対の第二部分113,114の少なくとも一方に形成された少なくとも1つの凹部(本実施形態では、2つの凹部135a,135b及び2つの凹部136a,136b)を備えている。本実施形態では、半導体モジュール1は、第二部分115に凹部135a,135bを備え、第二部分116に凹部136a,136bを備えているが、第二部分115及び第二部分116のいずれか一方のみに少なくとも1つの凹部を備えていてもよい。また、半導体モジュール1は、第二部分115,116のそれぞれに1つの凹部又は3つ以上の凹部を備えていてもよいし、第二部分115,116の一方のみに1つの凹部又は3つ以上の凹部を備えていてもよい。また、半導体モジュール1は、第二部分115,116のそれぞれに異なる個数の凹部を備えていてもよい。
【0096】
仮想平面VSwは、封止樹脂(不図示)の厚さ方向に見て、第一部分112(一対の第一部分の他方の一例)に対して最も離れた凹部135a,136aから凹部135a,136aが形成されていない第二部分116,115まで注型領域117wを横切る平面である。当該封止樹脂の厚さ方向は、注型領域117wに配置された絶縁基板161のパターン形成面(正極側配線パターン162aなどが形成された面)に直交する方向である。具体的には、本実施形態では、凹部135a及び凹部136aは、第一部分112に対して同じ距離となる位置に形成されている。このため、凹部135aから凹部135aが形成されていない第二部分116まで延在する最短の仮想平面と、凹部136aから凹部136aが形成されていない第二部分115まで延在する最短の仮想平面とは、同一の平面となり、本実施形態では仮想平面VSwとなる。仮想平面VSwは、注型領域117wに封止樹脂が注型されている場合には、当該封止樹脂を横切る平面でもある。なお、仮想平面VSwは、理解を容易にするために図1に図示されているが、実際の半導体モジュール1には存在しない。
【0097】
注型領域117wに注型された封止樹脂の厚さ方向に見て、第一部分112(一対の第一部分の他方の一例)と仮想平面VSwとの間には、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない。また、当該封止樹脂の厚さ方向に見て、第一部分111(一対の第一部分の一方の一例)と仮想平面VSwとの間には、凹部135a,135b,136a,136bが設けられていない。半導体モジュール1では、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない領域に対応させて凹部135a,135b,136a,136bが配置されている。このため、半導体モジュール1は、注型領域117wに注型された封止樹脂の全領域のうちのワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない領域にクラックを発生させることができる。これにより、半導体モジュール1は、当該封止樹脂に発生したクラックによってワイヤ配線101a~101j,102a~102iが破断することを防止できる。
【0098】
注型領域117wにおいて第二部分115には、第二部分113の型割れライン113L(図2参照)と同様の構成を有する型割れライン(不図示)が形成されている。同様に、注型領域117wにおいて第二部分116には、第二部分114の型割れライン114L(図2参照)と同様の構成を有する型割れライン(不図示)が形成されている。凹部135a,135bは、注型領域117wにおいて第二部分115に形成された型割れラインよりも上側の領域に形成されている。凹部136a,136bは、注型領域117wにおいて第二部分116に形成された型割れラインよりも上側の領域に形成されている。
【0099】
凹部135a,135b,136a,136bは、曲面状の壁面を有している。凹部135a,135b,136a,136bは、例えば円柱の側面の一部に倣う曲面状の表面を有している。凹部135a,135bは例えば、絶縁基板161にほぼ直交する方向に延在している。凹部135a及び凹部135bは、例えば同一の形状を有している。凹部136a,136bは例えば、円柱の側面の一部に倣う曲面状の表面を有している。凹部136a,136bは例えば、絶縁基板161にほぼ直交する方向に延在している。凹部135a及び凹部136aは、対向して配置され、凹部135b及び凹部136bは、対向して配置されている。凹部136a及び凹部136bは、例えば同一の形状を有している。凹部135a及び凹部136aは、仮想平面VSwの中心を通り仮想平面VSwに直交する仮想直線(不図示)を対称軸として線対称の形状を有し、凹部135b及び凹部136bは、当該不図示の仮想直線を対称軸として線対称の形状を有している。
【0100】
凹部134a及び凹部135aは、第二部分115の幅方向の中心を通り第二部分115の延在方向と平行な仮想平面(不図示)を対称軸として線対称の形状を有している。凹部134b及び凹部135bは、第二部分115の幅方向の中心を通り第二部分115の延在方向と平行な仮想直線(不図示)を対称軸として線対称の形状を有している。
【0101】
凹部135a,135b,136a,136bは、注型領域117wに注型された封止樹脂とケース11との密着度を向上させるために設けられている。凹部135a,135b,136a,136bは、注型領域117wに注型された封止樹脂に向けられた第二部分115,116の表面を凹ませた形状を有している。このため、凹部135a,135b,136a,136bは、凹部135a,135b,136a,136bが形成されていない場合よりもケース11と封止樹脂との接触面積を増加させることができる。これにより、注型領域117wに注型された封止樹脂とケース11との密着度が向上する。
【0102】
図示は省略するが、第二部分115,116は、注型領域117wに注型された封止樹脂の表面側よりも半導体チップ14a~14dが配置されている側の方が互いの距離が長くなる段差部(不図示)を有している。当該段差部は、段差部113S,114Sと同様の構成を有している。半導体モジュール1は、型割れライン113Lと同じ構成の型割れラインを端部に有する凹部135a,135b及び型割れライン114Lと同じ構成の型割れラインを端部に有する凹部136a,136bを、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない仮想平面VSwと第一部分112との間に備えている。これにより、半導体モジュール1は、注型領域117wにおいて、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない領域の封止樹脂に意図的にクラックを生じさせるようになっている。その結果、半導体モジュール1は、注型領域117wにおいて、封止樹脂に発生したクラックによるワイヤ配線101a~101j,102a~102iの破断を防止できる。
【0103】
(半導体モジュールの作用・効果)
本実施形態による半導体モジュール1の作用・効果について、図1及び図2を参照しつつ図3から図6を用いて説明する。図3は、半導体モジュール1に設けられたU相用のインバータ部の近傍を模式的に示す図である。図3では、理解を容易にするため、封止樹脂18によって封止されて視認することができないU相用のインバータ部を構成する半導体チップ14a~14dなどが破線で図示されている。図4は、図3中に示すB-B線で切断した半導体モジュール1の断面を模式的に示す図である。図5は、比較例としての半導体モジュール1Xに設けられたU相用のインバータ部の近傍を模式的に示す図である。図5では、理解を容易にするため、封止樹脂18によって封止されて視認することができないU相用のインバータ部を構成する半導体チップ14a~14dなどが破線で図示されている。図6は、図5中に示すC-C線で切断した半導体モジュール1Xの断面を模式的に示す図である。なお、半導体モジュール1の構成要素と同様の作用・機能を奏する半導体モジュール1Xの構成要素には、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0104】
パワーサイクル試験において半導体モジュール1の温度を変化させると、ケース11及び封止樹脂18が変形する。また、半導体モジュール1が実働している場合、半導体チップ14a~14dから発生する熱などによって半導体モジュール1が過熱するため、ケース11及び封止樹脂18が変形する。ケース11を形成するための樹脂及び封止樹脂18を形成するための樹脂は異なるため、ケース11及び封止樹脂18のそれぞれの変形量が異なる。これにより、封止樹脂18には、ケース11及び封止樹脂18の変形量に応じた応力が生じる。
【0105】
ケース11において、凹部131a,131b,132a,132bは、他の部分よりも封止樹脂18との密着度が高い。このため、凹部131a,131b,132a,132bから封止樹脂18に加えられる応力と、第二部分113,114の凹部131a,131b,132a,132b以外の部分から封止樹脂18に加えられる応力とは異なる。さらに、凹部131a,131b,132a,132bの両端部のうちの積層基板16側の端部は、型割れライン113L,114L上に配置されている。型割れライン113L,114Lは、第二部分113,114の内側表面(すなわち注型領域117uに向けられた面)において、注型領域117uに対して凸となる部分である。このため、封止樹脂18には、型割れライン113L,114Lのいずれかを起点をするクラックが発生する。
【0106】
型割れライン113L,114Lには、封止樹脂18に発生するクラックの起点となる複数の場所が存在する。1つ目の場所は、凹部131a,131b,132a,132bである。2つ目の場所は、複数の凹部のうちの隣り合う凹部の間(本実施形態では、凹部131aと凹部131bとの間及び凹部132aと凹部132bとの間)の領域である。3つ目の場所は、第一部分111,112のうちの凹部に相対的に近い方の第一部分と当該凹部との間(本実施形態では、凹部131b,132bと第一部分112との間)の領域である。したがって、型割れライン113L,114Lのうちの仮想平面VSuと第一部分112との間がクラックの起点となる領域となる。
【0107】
封止樹脂18の厚さ方向に見て、第一部分112と仮想平面VSuとの間には、凹部131a,131b,132a,132bが設けられている(図2参照)。しかしながら、当該方向に見て、第一部分112と仮想平面VSuとの間には、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない。すなわち、クラックの起点となる可能性のある場所には、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない。
【0108】
一方、封止樹脂18の厚さ方向に見て、第一部分111と、仮想平面VSuとの間の第二部分113,114には、凹部が設けられていない。しかしながら、当該方向に見て、第一部分111と仮想平面VSuとの間には、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されている。したがって、クラックの起点となる可能性のない場所には、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されている。
【0109】
これにより、図3及び図4に示すように、半導体モジュール1は、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない領域の封止樹脂18に意図的にクラックCKを生じさせるとともに、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されている領域の封止樹脂18にはクラックを発生させないようになっている。その結果、半導体モジュール1は、封止樹脂18に発生したクラックCKによるワイヤ配線101a~101j,102a~102iの破断を防止できる。
【0110】
図3に示すように、電力入力端子21uは、注型領域117uに配置された一部に角部を有している。電力入力端子21uは、電力入力端子21u及び電力出力端子22uのうちのワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない領域に突出部211ub,212ub(一部の一例)が配置された一方の端子に相当する。より具体的には、正極側端子211u及び負極側端子212uは、注型領域117uに配置された突出部211ub及び突出部212ubに角部Crを有している。突出部211ub,212ubの角部Crは、第二部分113,114に向けられて配置されている。すなわち、突出部211ub,212ubの角部Crは、型割れライン113L,114Lに向けられて配置されている。このため、半導体モジュール1は、電力入力端子21uが設けられている第一部分112及び仮想平面VSuの間の段差部113S,114Sの領域113Lp,114Lpと、角部Crとの間にクラックを発生させる。つまり、図4に示すように、半導体モジュール1は、型割れライン113Lを起点として発生したクラック線CKLを突出部212ubの角部Crに終端させることができる。また、半導体モジュール1は、型割れライン114Lを起点として発生したクラック線(不図示)を突出部211ubの角部Crに終端させることができる。
【0111】
上述のとおり、半導体モジュール1は、電力入力端子21uが有する正極側端子211uに接続される正極側配線パターン162aと、半導体チップ14a,14b(複数の半導体チップのうちの一部の一例)及び電力出力端子22uが接続される中間配線パターン162bと、半導体チップ14c,14d(残余の半導体チップの一例)及び電力入力端子21uが有する負極側端子212uが接続される負極側配線パターン162cとを有する積層基板16を備えている。
【0112】
段差部L113,L114及び角部Crは、半導体チップ14a,14bと中間配線パターン162bとを接続するリードフレーム15a,15b(正極側リードフレームの一例)、半導体チップ14c,14dと中間配線パターン162bとを接続するリードフレーム15c,15d(負極側リードフレームの一例)及び複数の半導体チップ14a~14dよりも積層基板16から離れた位置に配置されている。すなわち、段差部L113,L114及び角部Crは、積層基板16を基準として、半導体チップ14a,14bと中間配線パターン162bとを接続するリードフレーム15a,15b、半導体チップ14c,14dと中間配線パターン162bとを接続するリードフレーム15c,15d及び複数の半導体チップ14a~14dよりも高い位置に配置されている。このため、段差部L113,L114及び角部Crの間には、角部を有する構造物が存在しない。これにより、半導体モジュール1は、型割れライン113Lを起点として発生したクラック線CKLを突出部212ubの角部Crに終端させることができ、型割れライン114Lを起点として発生したクラック線を突出部211ubの角部Crに終端させることができる。
【0113】
クラック線CKLを起点として封止樹脂18の表面181側にクラックが広がったとしても、クラック線CKLから封止樹脂18の表面181の間にはワイヤ配線101a~101j,102a~102iは存在しない。また、クラック線CKLを起点として積層基板16側にクラックが広がったとしても、クラック線CKLから積層基板16の間にはワイヤ配線101a~101j,102a~102iは存在しない。このため、半導体モジュール1は、封止樹脂18にクラックCKが発生しても、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iの破断を防止できる。
【0114】
これに対し、図5に示すように、比較例による半導体モジュール1Xは、第二部分113の全体に亘って凹部113a,113b,113c,113d,113eを有し、第二部分114の全体に亘って凹部114a,114b,114c,114d,114eを有している。また、図6に示すように、半導体モジュール1Xは、段差部113S,114S及び型割れライン113L,114Lを有している。このため、半導体モジュール1Xでは、型割れライン113L,114Lの全体がクラックの起点になり得る。
【0115】
その結果、図6に示すように、半導体モジュール1Xでは、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが存在する領域に設けられた例えば凹部114d及び凹部114eの間における型割れライン113Lを起点とし、電力出力端子22uの突出部222uの角部Crを終端とするクラック線CKLxが発生する場合がある。図5及び図6に示すように、クラック線CKLxを起点として封止樹脂18の表面181側にクラックが広がるとともに、クラック線CKLを起点として積層基板16側にクラックが広がって発生するクラックCKxは、ワイヤ配線102a,102bを横切る。これにより、ワイヤ配線102a,102bは、クラックCKxによって破断される。ワイヤ配線102a,102bは、半導体チップ14c,14dに入力されるゲート信号が伝送される配線である。このため、ワイヤ配線102a,102bが破断することにより、半導体チップ14c,14dにゲート信号が入力されなくなる。その結果、制御装置の制御に基づいて半導体チップ14c,14dが動作しなくなるので、半導体モジュール1Xは、所望の動作を実行することができなくなる。
【0116】
封止樹脂18に1つのクラックが発生すると、封止樹脂18に生じていた応力が開放される。このため、封止樹脂18に複数のクラックが発生することはない。これにより、半導体モジュール1は、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない領域に意図的にクラックを発生させることができるので、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iの破断を防止できる。
【0117】
詳細な説明は省略するが、半導体モジュール1は、注型領域117vにおいて凹部133a,133b,134a,134b及び突出部211vb,212vbを備えている。また、半導体モジュール1は、注型領域117wにおいて凹部135a,135b,136a,136b及び突出部211wb,212wbを備えている。このため、半導体モジュール1は、注型領域117v,117wにおいても注型領域117uと同様の作用・効果が得られるので、注型領域117v,117wのそれぞれに配置されたワイヤ配線101a~101j,102a~102iの破断を防止できる。したがって、半導体モジュール1は、長寿命化も図ることができる。
【0118】
以上説明したように、本実施形態による半導体モジュール1は、半導体チップ14a~14dと、半導体チップ14a~14dを封止する封止樹脂18と、封止樹脂18が注型される注型領域117u,117v,117w、注型領域117u,117v,117wを挟んで対向して配置され直線状を有する一対の第一部分111,112、及び注型領域117u,117v,117wを挟んで対向し一対の第一部分111,112の間に配置され直線状を有する一対の第二部分113,114、一対の第二部分114,115及び一対の第二部分115,116を有するケース11と、第一部分111に片寄った状態で封止樹脂18に封止されて半導体チップ14a~14dと接続された、半導体チップ14a~14dに入力又は半導体チップ14a~14dから出力される信号が伝送されるワイヤ配線101a~101j,102a~102iと、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置された注型領域117uの領域及びワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない注型領域117uの領域の境界であって一対の第一部分111,112に平行な仮想平面VSuと一対の第一部分112との間で一対の第二部分113,114に形成された凹部131a,131b,132a,132bと、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置された注型領域117vの領域及びワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない注型領域117vの領域の境界であって一対の第一部分111,112に平行な仮想平面VSvと一対の第一部分112との間で一対の第二部分113,114に形成された凹部133a,133b,134a,134bと、ワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置された注型領域117wの領域及びワイヤ配線101a~101j,102a~102iが配置されていない注型領域117wの領域の境界であって一対の第一部分111,112に平行な仮想平面VSwと一対の第一部分112との間で一対の第二部分113,114に形成された凹部135a,135b,136a,136bとを備えている。
【0119】
これにより、半導体モジュール1は、封止樹脂18に発生したクラックCKによるワイヤ配線101a~101j,102a~102iの破断を防止できる。
【0120】
本発明は、上記実施形態によらず種々の変形が可能である。
上記実施形態では、半導体モジュールが備える凹部は、円筒状の壁面を有しているが、封止樹脂との接触面積を増加させることができれば、円錐、直方体形状又は角錐形状などの他の形状を有していてもよい。
【0121】
また、半導体モジュールが備える凹部は、積層基板に設けられた絶縁基板にほぼ直交する方向に延在しているが、絶縁基板に直交する方向に対して傾斜していてもよい。
【0122】
上記実施形態では、半導体モジュールは、クラック線を電力入力端子に終結させるようになっているが、本発明はこれに限られない。半導体モジュールは、各種端子が電力入力端子側に配置されている場合には、クラック線を電力出力端子に終結させてもよい。各種端子が電力入力端子側に配置される場合には、ワイヤ配線は、電力入力端子側に片寄って配置される。このため、この場合も、半導体モジュールは、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0123】
上記実施形態では、半導体モジュールは、電力入力端子にクラック線を終結させるようになっているが、本発明はこれに限られない。例えば、電力入力端子や電力出力端子といった構造物の他に、半導体モジュールは、注型領域のワイヤ線が配置されていない領域(上記実施形態における仮想平面VSu、VSv、VSwと第一部分112との間の領域に相当)で型割れラインとほぼ同じ又は型割れラインよりも高い位置に配置された構造物(例えばリードフレームや半導体チップなど)の角部にクラック線を終結させるようになっていてもよい。この場合も、半導体モジュールは、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0124】
本発明の技術的範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の技術的範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【符号の説明】
【0125】
1,1X 半導体モジュール
11 ケース
11a 上側部分
11b 下側部分
14a,14b,14c,14d 半導体チップ
15a,15b,15c,15d リードフレーム
16 積層基板
17 各種端子
18 封止樹脂
21u,21v,21w 電力入力端子
22u,22v,22w 電力出力端子
31 冷却器
32 接着剤
34a,34b,34c 接続部材
101a,101b,101c,101d,101e,101f,101g,101h,101i,101j,102a,102b,102c,102d,102e,102f,102g,102h,102i ワイヤ配線
111,112 第一部分
113,114,115,116 第二部分
113a,113b,113c,113d,113e,114a,114b,114c,114d,114e,131a,131b,132a,132b,133a,133b,134a,134b,135a,135b,136a,136b 凹部
113L,114L 型割れライン
113Lp,114Lp 領域
113S,114S 段差部
117u,117v,117w 注型領域
161 絶縁基板
162a 正極側配線パターン
162b 中間配線パターン
162c 負極側配線パターン
162d,162e,162f,162g 中継配線パターン
163 伝熱パターン
171a,172a ゲート信号入力端子
171b,172b 電圧検出端子
171c,172c 電流検出端子
171d,172d 温度検出端子
171e,172e 温度検出端子
171f 電圧検出端子
181 表面
211u,211v,211w 正極側端子
211ua,211va,211wa,212ua,212va,212wa,221u,221v,221w 締結部
211ub,211vb,211wb,212ub,212vb,212wb,222u,222v,222w 突出部
212u,212v,212w 負極側端子
CK,CKx クラック
CKL,CKLx クラック線
Cr 角部
E エミッタ端子
G ゲート端子
L113,L114 段差部
P1 電流検出パッド
P2 アノードパッド
P3 カソードパッド
VSu,VSv,VSw 仮想平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6