IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジャパンディスプレイの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055074
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】表示装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/22 20060101AFI20240411BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240411BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240411BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20240411BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20240411BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20240411BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20240411BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20240411BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240411BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H05B33/22 Z
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/12 B
H05B33/02
H05B33/26 Z
H05B33/04
H05B33/10
G09F9/30 365
G09F9/30 338
G09F9/30 348A
G09F9/00 338
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161682
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 加一
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC04
3K107CC23
3K107DD21
3K107DD26
3K107DD44X
3K107DD44Y
3K107DD89
3K107DD90
3K107EE21
3K107EE46
3K107FF06
3K107FF15
3K107GG04
3K107GG11
3K107GG28
3K107GG37
5C094AA07
5C094BA27
5C094DA13
5C094DA15
5C094DB01
5C094EA04
5C094FA02
5G435AA03
5G435BB05
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】発光効率を向上させることが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る表示装置は、無機絶縁材料で形成された絶縁層と、前記絶縁層の上に配置された下電極と、前記絶縁層の上に配置され、前記下電極を囲うリブと、前記リブの上に配置された導電性の下部および前記下部の側面から突出する上部を含み、前記下電極を囲う隔壁と、前記下電極を覆い、電圧の印加に応じて発光する有機層と、前記有機層を覆い、前記下部に接触する上電極と、を備えている。前記リブは、無機絶縁材料で形成され、前記絶縁層の上に配置された第1リブ層と、無機絶縁材料で形成され、前記第1リブ層の上に配置された第2リブ層と、を備えている。前記第2リブ層は、前記第1リブ層の側面および前記下部の側面から突出している。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機絶縁材料で形成された絶縁層と、
前記絶縁層の上に配置された下電極と、
前記絶縁層の上に配置され、前記下電極を囲うリブと、
前記リブの上に配置された導電性の下部および前記下部の側面から突出する上部を含み、前記下電極を囲う隔壁と、
前記下電極を覆い、電圧の印加に応じて発光する有機層と、
前記有機層を覆い、前記下部に接触する上電極と、
を備え、
前記リブは、
無機絶縁材料で形成され、前記絶縁層の上に配置された第1リブ層と、
無機絶縁材料で形成され、前記第1リブ層の上に配置された第2リブ層と、
を備え、
前記第2リブ層は、前記第1リブ層の側面および前記下部の側面から突出している、
表示装置。
【請求項2】
前記第1リブ層の厚さは、前記下電極の厚さよりも大きい、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1リブ層の厚さは、前記下電極と前記有機層の合計厚さよりも小さい、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第2リブ層の幅は、前記上部の幅よりも大きい、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2リブ層の幅は、前記上部の幅よりも小さい、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記下電極は、前記第1リブ層に近づくに連れて厚さが減少する端部を有し、
前記第2リブ層のうち前記第1リブ層の前記側面から突出した部分と前記絶縁層との間に形成される隙間に前記端部の一部が位置している、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記隙間を前記有機層が塞いでいる、
請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記下電極は、銀で形成され、
前記有機層は、前記下電極の上面と接触している、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記下電極の一部が前記上部の上に位置している、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
前記下電極の一部が前記第2リブ層の上に位置している、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項11】
前記下電極、前記有機層および前記上電極を含む表示素子と、前記隔壁とを連続的に覆う封止層をさらに備えている、
請求項1乃至10のうちいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項12】
前記上電極と前記封止層の間に位置し、前記上電極および前記封止層と異なる屈折率を有する光学調整層をさらに備えている、
請求項11に記載の表示装置。
【請求項13】
無機絶縁材料によって絶縁層を形成し、
前記絶縁層の上に無機絶縁材料によって第1薄膜を形成し、
前記第1薄膜の上に無機絶縁材料によって第2薄膜を形成し、
前記第2薄膜の上に配置された導電性の下部および前記下部の側面から突出する上部を含む隔壁を形成し、
前記第2薄膜をパターニングすることにより、前記下部の前記側面から突出した第2リブ層を形成し、
前記第1薄膜のうち前記第2リブ層から露出した部分を除去するとともに、前記第1薄膜の幅を低減することにより、前記第2リブ層よりも幅が小さい第1リブ層を形成し、
前記絶縁層および前記隔壁の上に下電極を蒸着によって形成し、
前記下電極の上に、電圧の印加に応じて発光する有機層を蒸着によって形成し、
前記有機層の上に、前記下部に接触する上電極を蒸着によって形成する、
ことを含む表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記下電極および前記有機層の形成は、真空環境下で連続して実施される、
請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記下電極、前記有機層および前記上電極を含む表示素子と、前記隔壁とを連続的に覆う封止層を形成する、
ことをさらに含む請求項13に記載の製造方法。
【請求項16】
前記下電極、前記有機層、前記上電極および前記封止層の形成は、真空環境下で連続して実施される、
請求項15に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。この表示素子は、下電極と、下電極を覆う有機層と、有機層を覆う上電極とを備えている。
【0003】
上記のような表示装置において、表示素子の発光効率を向上させる技術が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-195677号公報
【特許文献2】特開2004-207217号公報
【特許文献3】特開2008-135325号公報
【特許文献4】特開2009-32673号公報
【特許文献5】特開2010-118191号公報
【特許文献6】国際公開第2018/179308号
【特許文献7】米国特許出願公開第2022/0077251号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、発光効率を向上させることが可能な表示装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る表示装置は、無機絶縁材料で形成された絶縁層と、前記絶縁層の上に配置された下電極と、前記絶縁層の上に配置され、前記下電極を囲うリブと、前記リブの上に配置された導電性の下部および前記下部の側面から突出する上部を含み、前記下電極を囲う隔壁と、前記下電極を覆い、電圧の印加に応じて発光する有機層と、前記有機層を覆い、前記下部に接触する上電極と、を備えている。前記リブは、無機絶縁材料で形成され、前記絶縁層の上に配置された第1リブ層と、無機絶縁材料で形成され、前記第1リブ層の上に配置された第2リブ層と、を備えている。前記第2リブ層は、前記第1リブ層の側面および前記下部の側面から突出している。
【0007】
一実施形態に係る表示装置の製造方法は、無機絶縁材料によって絶縁層を形成し、前記絶縁層の上に無機絶縁材料によって第1薄膜を形成し、前記第1薄膜の上に無機絶縁材料によって第2薄膜を形成し、前記第2薄膜の上に配置された導電性の下部および前記下部の側面から突出する上部を含む隔壁を形成し、前記第2薄膜をパターニングすることにより、前記下部の前記側面から突出した第2リブ層を形成し、前記第1薄膜のうち前記第2リブ層から露出した部分を除去するとともに、前記第1薄膜の幅を低減することにより、前記第2リブ層よりも幅が小さい第1リブ層を形成し、前記絶縁層および前記隔壁の上に下電極を蒸着によって形成し、前記下電極の上に、電圧の印加に応じて発光する有機層を蒸着によって形成し、前記有機層の上に、前記下部に接触する上電極を蒸着によって形成する、ことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る表示装置の構成例を示す図である。
図2図2は、副画素のレイアウトの一例を示す図である。
図3図3は、図2中のIII-III線に沿う表示装置の概略的な断面図である。
図4図4は、有機層に適用し得る層構造の一例を示す図である。
図5図5は、隔壁とその近傍を拡大した概略的な断面図である。
図6図6は、隔壁とその近傍に適用し得る他の構造を示す概略的な断面図である。
図7図7は、表示装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、表示装置の製造工程を示す概略的な断面図である。
図9図9は、図8に続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図10図10は、図9に続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図11図11は、図10に続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図12図12は、図11に続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図13図13は、図12に続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図14図14は、図13に続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図15図15は、図14に続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図16図16は、図15に続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図17図17は、図16に続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図18図18は、図17に続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図19図19は、図18に続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図20図20は、図19に続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図21図21は、図20に続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図22図22は、図21に続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図23図23は、図22に続く製造工程を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向Xと称し、Y軸に沿った方向を第2方向Yと称し、Z軸に沿った方向を第3方向Zと称する。第3方向Zと平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0011】
本実施形態に係る表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末等に搭載され得る。
【0012】
図1は、本実施形態に係る表示装置DSPの構成例を示す図である。表示装置DSPは、絶縁性の基板10の上に、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAの周辺の周辺領域SAとを有している。基板10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0013】
本実施形態においては、平面視における基板10の形状が長方形である。ただし、基板10の平面視における形状は長方形に限らず、正方形、円形あるいは楕円形などの他の形状であってもよい。
【0014】
表示領域DAは、第1方向Xおよび第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SPを含む。一例では、画素PXは、青色の副画素SP1、緑色の副画素SP2および赤色の副画素SP3を含む。なお、画素PXは、副画素SP1,SP2,SP3とともに、あるいは副画素SP1,SP2,SP3のいずれかに代えて、白色などの他の色の副画素SPを含んでもよい。
【0015】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子DEとを備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4とを備えている。画素スイッチ2および駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0016】
画素スイッチ2のゲート電極は、走査線GLに接続されている。画素スイッチ2のソース電極およびドレイン電極の一方は信号線SLに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極およびキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極およびドレイン電極の一方は電源線PLおよびキャパシタ4に接続され、他方は表示素子DEに接続されている。表示素子DEは、発光素子としての有機発光ダイオード(OLED)である。
【0017】
なお、画素回路1の構成は図示した例に限らない。例えば、画素回路1は、より多くの薄膜トランジスタおよびキャパシタを備えてもよい。
【0018】
図2は、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトの一例を示す図である。図2の例においては、副画素SP1,SP2が第1方向Xに並んでいる。副画素SP1,SP3も第1方向Xに並んでいる。さらに、副画素SP2,SP3が第2方向Yに並んでいる。
【0019】
副画素SP1,SP2,SP3がこのようなレイアウトである場合、表示領域DAには、副画素SP2,SP3が第2方向Yに交互に配置された列と、複数の副画素SP1が第2方向Yに繰り返し配置された列とが形成される。これらの列は、第1方向Xに交互に並ぶ。
【0020】
なお、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトは図2の例に限られない。他の一例として、各画素PXにおける副画素SP1,SP2,SP3が第1方向Xに順に並んでいてもよい。
【0021】
副画素SP1は表示素子DE1を有し、副画素SP2は表示素子DE2を有し、副画素SP3は表示素子DE3を有している。表示素子DE1は、下電極LE1、有機層OR1および上電極UE1を含む。表示素子DE2は、下電極LE2、有機層OR2および上電極UE2を含む。表示素子DE3は、下電極LE3、有機層OR3および上電極UE3を含む。有機層OR1,OR2,OR3は、それぞれ下電極LE1,LE2,LE3と上電極UE1,UE2,UE3の間に印加される電圧に応じて発光する。表示素子DE1,DE2,DE3は、後述するキャップ層を含んでもよい。
【0022】
図2の例においては、表示素子DE1の面積が表示素子DE2の面積よりも大きい。表示素子DE1の面積は、表示素子DE3の面積よりも大きい。さらに、表示素子DE3の面積は、表示素子DE2の面積よりも小さい。
【0023】
副画素SP1,SP2,SP3の境界には、リブ5および隔壁6が配置されている。リブ5は、隔壁6の下方に位置している。リブ5および隔壁6は、表示素子DE1,DE2,DE3を囲う格子状である。すなわち、リブ5および隔壁6は、表示素子DE1,DE2,DE3とそれぞれ重なる複数の開口を有している。
【0024】
図3は、図2中のIII-III線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。上述の基板10の上に回路層11が配置されている。回路層11は、図1に示した画素回路1、走査線GL、信号線SLおよび電源線PLなどの各種回路や配線を含む。
【0025】
回路層11は、有機絶縁層12により覆われている。有機絶縁層12は、無機絶縁層13により覆われている。有機絶縁層12は、回路層11により生じる凹凸を平坦化する平坦化膜として機能する。無機絶縁層13は、有機絶縁層12やその下の回路層11への水分の浸入を抑制する。
【0026】
リブ5は、無機絶縁層13の上に配置されている。本実施形態において、リブ5は、無機絶縁層13の上に配置された第1リブ層51と、第1リブ層51の上に配置された第2リブ層52とを含む。
【0027】
隔壁6は、リブ5の上に配置されている。具体的には、隔壁6は、第2リブ層52の上に配置された導電性を有する下部61と、下部61の上に配置された上部62とを含む。上部62は、下部61よりも大きい幅を有している。これにより、図3においては上部62の両端部が下部61の側面よりも突出している。このような隔壁6の形状は、オーバーハング状と呼ばれる。
【0028】
下電極LE1,LE2,LE3は、リブ5と同じく無機絶縁層13の上に配置されている。下電極LE1,LE2,LE3は、下部61と離間している。図3の断面には表れていないが、下電極LE1,LE2,LE3は、有機絶縁層12および無機絶縁層13に設けられたコンタクトホールを通じて副画素SP1,SP2,SP3のそれぞれの画素回路1に接続されている。
【0029】
有機層OR1は下電極LE1を覆い、上電極UE1は有機層OR1を覆っている。有機層OR2は下電極LE2を覆い、上電極UE2は有機層OR2を覆っている。有機層OR3は下電極LE3を覆い、上電極UE3は有機層OR3を覆っている。上電極UE1,UE2,UE3は、下部61の側面に接触している。
【0030】
図3の例においては、上電極UE1の上にキャップ層CP1が配置され、上電極UE2の上にキャップ層CP2が配置され、上電極UE3の上にキャップ層CP3が配置されている。キャップ層CP1,CP2,CP3は、それぞれ有機層OR1,OR2,OR3が発する光の取り出し効率を向上させる光学調整層としての役割を有している。
【0031】
副画素SP1には封止層SE1が配置され、副画素SP2には封止層SE2が配置され、副画素SP3には封止層SE3が配置されている。封止層SE1は、下電極LE1、有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1を含む表示素子DE1やその周囲の隔壁6を連続的に覆っている。封止層SE2は、下電極LE2、有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2を含む表示素子DE2やその周囲の隔壁6を連続的に覆っている。封止層SE3は、下電極LE3、有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3を含む表示素子DE3やその周囲の隔壁6を連続的に覆っている。
【0032】
図3の例においては、下電極LE1、有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1の一部が副画素SP1を囲う隔壁6の上部62の上に位置している。これらの部分は、下電極LE1、有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1のうち無機絶縁層13の上に位置する部分(表示素子DE1を構成する部分)と離間している。同様に、下電極LE2、有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2の一部が副画素SP2を囲う隔壁6の上部62の上に位置し、これらの部分は下電極LE2、有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2のうち無機絶縁層13の上に位置する部分(表示素子DE2を構成する部分)と離間している。また、下電極LE3、有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3の一部が副画素SP3を囲う隔壁6の上部62の上に位置し、これらの部分は下電極LE3、有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3のうち無機絶縁層13の上に位置する部分(表示素子DE3を構成する部分)と離間している。
【0033】
封止層SE1,SE2,SE3の端部は、隔壁6の上に位置している。図3の例においては、副画素SP1,SP2間の隔壁6の上に位置する封止層SE1,SE2の端部同士が離間し、副画素SP1,SP3間の隔壁6の上に位置する封止層SE1,SE3の端部同士が離間している。
【0034】
封止層SE1,SE2,SE3は、樹脂層14によって覆われている。樹脂層14は、封止層15によって覆われている。封止層15の上にさらに樹脂層が配置されてもよい。 無機絶縁層13、第1リブ層51、第2リブ層52、封止層SE1,SE2,SE3および封止層15は、例えばシリコン窒化物(SiNx)、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン酸窒化物(SiON)または酸化アルミニウム(Al)のような無機絶縁材料で形成されている。好ましくは、第1リブ層51の材料は、無機絶縁層13および第2リブ層52のいずれの材料とも異なる。一例では、第1リブ層51がシリコン窒化物で形成され、無機絶縁層13および第2リブ層52がシリコン酸化物またはシリコン酸窒化物で形成されている。
【0035】
下電極LE1,LE2,LE3は、例えば、銀(Ag)などの光反射性に優れた金属材料の単層構造を有している。これら下電極LE1,LE2,LE3の上面は、それぞれ有機層OR1,OR2,OR3と接触している。他の例として、下電極LE1,LE2,LE3は、銀などの金属材料で形成された反射層と、この反射層と無機絶縁層13の間に配置された導電性酸化物層とを含んでもよい。この場合には、反射層と無機絶縁層13が接触する場合に比べ、下電極LE1,LE2,LE3と無機絶縁層13の密着性が向上する。このような導電性酸化物層は、例えばITO(IndiumTin Oxide)、IZO(IndiumZinc Oxide)またはIGZO(IndiumGallium Zinc Oxide)などの透明な導電性酸化物で形成することができる。
【0036】
上電極UE1,UE2,UE3は、例えばマグネシウムと銀の合金(MgAg)などの金属材料で形成されている。例えば、下電極LE1,LE2,LE3はアノードに相当し、上電極UE1,UE2,UE3はカソードに相当する。
【0037】
キャップ層CP1,CP2,CP3は、上電極UE1,UE2,UE3および封止層SE1,SE2,SE3と異なる屈折率を有している。このようなキャップ層CP1,CP2,CP3は、例えば透明な複数の薄膜の多層体によって構成することができる。多層体は、複数の薄膜として、無機材料によって形成された薄膜および有機材料によって形成された薄膜を含んでもよい。また、これらの複数の薄膜は、互いに異なる屈折率を有している。多層体を構成する薄膜の材料は、上電極UE1,UE2,UE3の材料とは異なり、また、封止層SE1,SE2,SE3の材料とも異なる。なお、キャップ層CP1,CP2,CP3は省略されてもよい。
【0038】
隔壁6の下部61は、例えばアルミニウム(Al)によって形成されている。下部61は、アルミニウム-ネオジム(AlNd)などのアルミニウム合金によって形成されてもよいし、アルミニウム層とアルミニウム合金層の積層構造を有してもよい。さらに、下部61は、アルミニウム層またはアルミニウム合金層の下に、アルミニウムやアルミニウム合金とは異なる金属材料で形成された薄膜を有してもよい。このような薄膜は、例えばモリブデン(Mo)によって形成することができる。
【0039】
隔壁6の上部62は、例えばチタン(Ti)などの金属材料で形成された薄膜と、ITOなどの導電性酸化物で形成された薄膜との積層構造を有している。上部62は、チタンなどの金属材料の単層構造を有してもよい。
【0040】
隔壁6には、共通電圧が供給されている。この共通電圧は、下部61の側面に接触した上電極UE1,UE2,UE3にそれぞれ供給される。下電極LE1,LE2,LE3には、副画素SP1,SP2,SP3がそれぞれ有する画素回路1を通じて画素電圧が供給される。
【0041】
図4は、有機層OR1,OR2,OR3に適用し得る層構造の一例を示す図である。有機層OR1,OR2,OR3は、例えば、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、電子ブロッキング層EBL、発光層EML、正孔ブロッキング層HBL、電子輸送層ETLおよび電子注入層EILを第3方向Zに順に積層した構造を有している。有機層OR1,OR2,OR3は、複数の発光層EMLを含んだいわゆるタンデム構造を有してもよい。
【0042】
下電極LE1と上電極UE1の間に電位差が形成されると、有機層OR1の発光層EMLが青色の波長域の光を放つ。下電極LE2と上電極UE2の間に電位差が形成されると、有機層OR2の発光層EMLが緑色の波長域の光を放つ。下電極LE3と上電極UE3の間に電位差が形成されると、有機層OR3の発光層EMLが赤色の波長域の光を放つ。
【0043】
表示素子DE1,DE2,DE3の光取り出し効率を高める観点からは、有機層OR1,OR2,OR3の厚さを発光層EMLが放つ光の波長に応じて調整することが好ましい。図3の例においては、有機層OR1の厚さT1、有機層OR2の厚さT2および有機層OR3の厚さT3が互いに異なる。具体的には、厚さT2は厚さT1よりも大きく、厚さT3は厚さT2よりも大きい(T1<T2<T3)。このような厚さT1,T2,T3の相違は、例えば有機層OR1,OR2,OR3のそれぞれにおける正孔輸送層HTLの厚さが異なることで生じるが、この例に限られない。
【0044】
図5は、副画素SP1,SP3の間の隔壁6とその近傍を拡大した概略的な断面図である。第1リブ層51は、一対の側面SF1を有している。第1リブ層51の幅は、第2リブ層52の幅より小さい。これにより、第2リブ層52は、リブ5および隔壁6の幅方向(第1方向Xまたは第2方向Y)において、各側面SF1から突出している。第2リブ層52のうち側面SF1から突出した部分と無機絶縁層13との間には、隙間Gが形成されている。
【0045】
下部61は、一対の側面SF2を有している。上部62の幅は、下部61の幅より大きい。また、第2リブ層52の幅も下部61の幅より大きい。これにより、上部62および第2リブ層52は、幅方向において各側面SF2から突出している。
【0046】
下電極LE1は、第1リブ層51に近づくに連れて厚さが減少する端部EPを有している。図5の例においては、端部EPの一部が隙間Gに位置している。端部EPは、第1リブ層51の側面SF1に接触してもよいし、離間してもよい。また、端部EPは、全体的に隙間Gの外に位置してもよい。
【0047】
有機層OR1は、下電極LE1を覆う第1層L1と、第1層L1を覆う第2層L2とを有している。図4に示した各層のうち、少なくとも正孔注入層HILが第1層L1に含まれ、第1層L1に含まれないものが第2層L2に含まれる。一例では、第1層L1は正孔注入層HILによって構成され、第2層L2は正孔輸送層HTL、電子ブロッキング層EBL、発光層EML、正孔ブロッキング層HBL、電子輸送層ETLおよび電子注入層EILによって構成される。
【0048】
例えば、有機層OR1は、隙間Gを塞いでいる。図5の例においては、第1層L1および第2層L2の一部が隙間Gを満たしている。他の例として、下電極LE1、第1層L1および第2層L2のいずれでも満たされていない空隙が隙間Gの内部に形成されてもよい。
【0049】
図5の例においては、下電極LE1および第1層L1の一部が第2リブ層52の上に位置している。これらの部分は、下電極LE1および第1層L1のうち無機絶縁層13の上に位置する部分(表示素子DE1を構成する部分)と離間している。
【0050】
例えば、第2層L2は、隙間Gによって途切れることなく、第2リブ層52の上に位置する下電極LE1および第1層L1を覆っている。第2層L2は、図5に示すように側面SF2に接触してもよいし、離間してもよい。
【0051】
上電極UE1は、隙間Gの近傍で途切れることなく、有機層OR1の第2層L2を全体的に覆っている。さらに、上電極UE1は、側面SF2に接触している。
【0052】
キャップ層CP1は、上電極UE1を覆う高屈折率層HRと、高屈折率層HRを覆う低屈折率層LRとを含む。低屈折率層LRは、高屈折率層HRよりも小さい屈折率を有している。これら高屈折率層HRおよび低屈折率層LRは、上述した多層体を構成する透明な複数の薄膜の一例である。キャップ層CP1は、より多くの薄膜を含んでもよい。
【0053】
下電極LE1の端部EPと同じく、有機層OR1の厚さが側面SF1,SF2に近づくに連れて減少し、上電極UE1およびキャップ層CP1の厚さが側面SF2に近づくに連れて減少してもよい。
【0054】
副画素SP1に面する側面SF2のうち、上電極UE1で覆われていない領域は、封止層SE1によって覆われている。封止層SE1は、上部62の下面や、上部62の上に配置された下電極LE1、有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1の積層体も連続的に覆っている。
【0055】
下電極LE1と下部61が接触すると、下電極LE1と上電極UE1が電気的に導通してしまい、有機層OR1の発光層EMLが発光しなくなる。したがって、下電極LE1は、下部61と離間している必要がある。そこで、第1リブ層51の厚さTa(隙間Gの高さ)は、下電極LE1の厚さTbよりも大きいことが好ましい(Ta>Tb)。これにより、下電極LE1が隙間Gを乗り越えにくくなり、下電極LE1と下部61の短絡を抑制することができる。一例では、厚さTaが150nmであり、厚さTbが100nmである。隙間Gの奥行、すなわち側面SF1からの第2リブ層52の突出長さは、例えば厚さTaと同等である。
【0056】
有機層OR1の正孔注入層HILと下部61が接触すると、不所望な電流リークパスが生じ得る。したがって、有機層OR1の正孔注入層HILも下部61と離間している必要がある。そこで、厚さTaは、下電極LE1と正孔注入層HILの合計厚さTcよりも大きいことが好ましい(Ta>Tc)。これにより、正孔注入層HILと下部61の短絡も好適に抑制することができる。
【0057】
一方で、上電極UE1は、下部61に接触している必要がある。そこで、厚さTaは、下電極LE1と有機層OR1の合計厚さTdよりも小さいことが好ましい(Ta<Td)。これにより、隙間Gが有機層OR1で塞がれやすくなる。隙間Gが有機層OR1で塞がれていれば、その上の上電極UE1が隙間Gによって途切れることなく側面SF2に接触する。
【0058】
なお、厚さTb,Tc,Tdは、例えば下電極LE1および有機層OR1のうち厚さが減少する端部近傍を除いた部分に基づいて測定される平均的な厚さである。
【0059】
図5に示す下電極LE3、有機層OR3、上電極UE3、キャップ層CP3および封止層SE3の構成は、下電極LE1、有機層OR1、上電極UE1、キャップ層CP1および封止層SE1の構成と同様である。また、下電極LE2、有機層OR2、上電極UE2、キャップ層CP2および封止層SE2の構成も、下電極LE1、有機層OR1、上電極UE1、キャップ層CP1および封止層SE1の構成と同様である。例えば、下電極LE2,LE3の厚さは、下電極LE1の厚さTbと同等である。
【0060】
図6は、隔壁6とその近傍に適用し得る他の構造を示す概略的な断面図である。上述の図5の例においては、第2リブ層52の幅が上部62の幅よりも大きい。これに対し、図6の例においては、第2リブ層52の幅が上部62の幅よりも小さい。
【0061】
後述するように、下電極LE1は蒸着によって形成される。この蒸着の工程において、蒸着源から放たれて下部61の根本付近に向かう蒸着材料の一部が上部62によって遮られ、第1リブ層51に近づくに連れて厚さが減少する端部EPが形成される。図6の例のように上部62の幅を大きくするほど、隙間Gの近傍の端部EPの厚さが減少する。これにより、下電極LE1と下部61の短絡をより確実に抑制することが可能となる。下電極LE2,LE3についても同様である。
【0062】
なお、図6の例において、厚さTaは、厚さTbまたは厚さTc以下であってもよい。具体例を挙げると、厚さTbが100nmである場合に、厚さTaを75nm程度に設定し得る。このような場合でも、上部62の下方で下電極LE1,LE2,LE3の厚さが十分に低減されていれば、隙間Gによって下電極LE1,LE2,LE3が分断される。したがって、下電極LE1,LE2,LE3と下部61の短絡を防ぐことができる。
【0063】
続いて、表示装置DSPの製造方法について説明する。
図7は、表示装置DSPの製造方法の一例を示すフローチャートである。図8乃至図23は、それぞれ表示装置DSPの製造工程の一部を示す概略的な断面図である。図8乃至図23においては、基板10および回路層11を省略している。
【0064】
表示装置DSPを製造するにあたっては、先ず基板10の上に回路層11および有機絶縁層12が形成される(工程P1)。さらに、図8に示すように、有機絶縁層12の上に無機絶縁層13が形成される(工程P2)。
【0065】
工程P2の後、無機絶縁層13の上にリブ5および隔壁6が形成される(工程P3)。具体的には、先ず図9に示すように、無機絶縁層13の上に第1リブ層51の基となる無機絶縁材料の第1薄膜51aがCVD(ChemicalVapor Deposition)によって形成される。さらに、図10に示すように、第1薄膜51aの上に第2リブ層52の基となる無機絶縁材料の第2薄膜52aがCVDによって形成される。
【0066】
次に、図11に示すように、第2薄膜52aの上に下部61の基となる金属層61aが形成され、金属層61aの上に上部62の基となる薄膜62aが形成される。さらに、隔壁6の形状に応じたレジストR1が薄膜62aの上に形成される。
【0067】
レジストR1の形成後、図12に示すように、薄膜62aのうちレジストR1から露出した部分が例えばウェットエッチングにより除去される。これにより、上部62が形成される。
【0068】
続いて異方性のドライエッチングが行われ、図13に示すように、金属層61aのうちレジストR1から露出した部分が除去される。なお、このドライエッチングにおいて、金属層61aのうちレジストR1から露出した部分が薄く残されてもよい。
【0069】
続いて等方性のウェットエッチングが行われ、図14に示すように金属層61aの幅が上部62の幅よりも低減される。これにより、上部62よりも幅が小さい下部61が形成され、隔壁6が完成する。
【0070】
その後、第1薄膜51aおよび第2薄膜52aがパターニングされる。具体的には、異方性のドライエッチングが行われ、図15に示すように第2薄膜52aのうち下部61から露出した部分が除去される。このドライエッチングにおいては、上部62がマスクとして作用するため、第2薄膜52aのうち上部62の下方に位置する部分が残る。これにより、下部61よりも幅が大きい第2リブ層52が形成される。
【0071】
さらに、等方性のドライエッチングが行われ、図16に示すように第1薄膜51aのうち第2リブ層52から露出した部分が除去される。このドライエッチングにおいては、第1薄膜51aの幅が第2リブ層52の幅よりも低減される。これにより、第2リブ層52よりも幅が小さい第1リブ層51が形成され、リブ5が完成する。その後、図17に示すようにレジストR1が除去される。
【0072】
例えば、図15の異方性のドライエッチングと図16の等方性のドライエッチングは、同じチャンバ内で実施することができる。この場合には、先ず高バイアスパワーにて異方性のドライエッチングを行い、その後に低バイアスパワーに切り替えて等方性のドライエッチングを行えばよい。
【0073】
図16の等方性のドライエッチングにおける無機絶縁層13および第2リブ層52の侵食を抑制するために、無機絶縁層13および第2リブ層52は、当該ドライエッチングにおけるエッチングレートが第1リブ層51(第1薄膜51a)よりも遅い材料で形成されることが好ましい。例えば、上述のように無機絶縁層13および第2リブ層52がシリコン酸化物またはシリコン酸窒化物で形成され、第1リブ層51がシリコン窒化物で形成されている場合には、このようなエッチングレートの関係が実現される。
【0074】
リブ5および隔壁6を形成する方法は、図8乃至図17に示したものに限られない。例えば、図15および図16のドライエッチングを実施する前にレジストR1が除去され、第2リブ層52に対応する平面形状の新たなレジストが配置されてもよい。このレジストをマスクとして図15および図16のドライエッチングを行えば、第2リブ層52とその下の第1リブ層51を精度良く形成することができる。
【0075】
工程P3の後、表示素子DE1が形成される(工程P4)。具体的には、図18に示すように、無機絶縁層13および隔壁6の上に下電極LE1が蒸着によって形成され(工程P11)、下電極LE1の上に有機層OR1が蒸着によって形成され(工程P12)、有機層OR1の上に上電極UE1が蒸着によって形成され(工程P13)、上電極UE1の上にキャップ層CP1が蒸着によって形成される(工程P14)。さらに、封止層SE1がCVDによって形成される(工程P15)。
【0076】
なお、工程P12は、図4に示した正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、電子ブロッキング層EBL、発光層EML、正孔ブロッキング層HBL、電子輸送層ETLおよび電子注入層EILなど、有機層OR1を構成する薄膜を順次形成する工程を含む。また、工程P14は、図5に示した高屈折率層HRおよび低屈折率層LRなど、キャップ層CP1を構成する薄膜を順次形成する工程を含む。
【0077】
下電極LE1、有機層OR1、上電極UE1、キャップ層CP1および封止層SE1は、少なくとも表示領域DAの全体に対して形成され、副画素SP1だけでなく副画素SP2,SP3にも配置されている。下電極LE1、有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1は、オーバーハング状の隔壁6によって分断される。下電極LE1は下部61と離間し、上電極UE1は下部61の側面に接触している。封止層SE1は、下電極LE1、有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1を含む表示素子DE1や隔壁6を連続的に覆っている。
【0078】
下電極LE1を蒸着する際に、蒸着源から放たれて下部61の根本付近に向かう蒸着材料が上部62によって遮られる。そのため、下電極LE1の端部EPの厚さは、図5にも示したように下部61に近づくに連れて減少する。有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1の端部についても同様である。
【0079】
少なくとも工程P11,P12、好ましくは工程P11乃至P15は、真空環境下で連続して実施される。すなわち、少なくとも工程P11の開始から工程P12の完了までの間、これら工程の処理対象の基板の周囲が継続して真空に維持されている。したがって、工程P11にて形成された下電極LE1は、大気に触れることなく工程P12にて有機層OR1の最下層(例えば正孔注入層HIL)によって覆われる。
【0080】
工程P15の後、図19に示すように、封止層SE1の上にレジストR2が配置される(工程P16)。レジストR2は、副画素SP1とその周囲の隔壁6の一部を覆っている。
【0081】
その後、図20に示すように、レジストR2をマスクとして下電極LE1、有機層OR1、上電極UE1、キャップ層CP1および封止層SE1がパターニングされる(工程P17)。この工程には、下電極LE1、有機層OR1、上電極UE1、キャップ層CP1および封止層SE1のうち、レジストR2から露出した部分を順次除去するドライエッチングやウェットエッチングが含まれる。
【0082】
工程P17の後、レジストR2が剥離液によって除去されるとともに、アッシングによってレジストR2などの残渣が除去される(工程P18)。これにより、図21に示すように、副画素SP1に表示素子DE1および封止層SE1が形成され、副画素SP2,SP3に表示素子や封止層が形成されていない基板を得ることができる。
【0083】
表示素子DE1の形成後、表示素子DE2が形成される(工程P5)。表示素子DE2を形成する手順は工程P11乃至P18と同様である。すなわち、工程P11乃至P15と同様に、下電極LE2、有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2が蒸着によって順に形成され、封止層SE2がCVDによって形成される。少なくとも下電極LE2と有機層OR2は真空環境下で連続して形成されるため、下電極LE2は大気に触れることなく有機層OR2によって覆われる。
【0084】
その後、工程P16と同様に封止層SE2の上にレジストが配置され、工程P17と同様に下電極LE2、有機層OR2、上電極UE2、キャップ層CP2および封止層SE2がパターニングされる。このパターニングの後、工程P18と同様にレジストが除去される。
【0085】
以上の工程を経ると、図22に示すように、副画素SP1に表示素子DE1および封止層SE1が形成され、副画素SP2に表示素子DE2および封止層SE2が形成され、副画素SP3に表示素子や封止層が形成されていない基板を得ることができる。
【0086】
表示素子DE2の形成後、表示素子DE3が形成される(工程P6)。表示素子DE3を形成する手順は工程P11乃至P18と同様である。すなわち、工程P11乃至P15と同様に、下電極LE3、有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3が蒸着によって順に形成され、封止層SE3がCVDによって形成される。少なくとも下電極LE3と有機層OR3は真空環境下で連続して形成されるため、下電極LE3は大気に触れることなく有機層OR3によって覆われる。
【0087】
その後、工程P16と同様に封止層SE3の上にレジストが配置され、工程P17と同様に下電極LE3、有機層OR3、上電極UE3、キャップ層CP3および封止層SE3がパターニングされる。このパターニングの後、工程P18と同様にレジストが除去される。
【0088】
以上の工程を経ると、図23に示すように、副画素SP1に表示素子DE1および封止層SE1が形成され、副画素SP2に表示素子DE2および封止層SE2が形成され、副画素SP3に表示素子DE3および封止層SE3が形成された基板を得ることができる。
【0089】
工程P6の後、図3に示した樹脂層14および封止層15が順に形成される(工程P7)。これにより、表示装置DSPが完成する。なお、以上の製造工程においては最初に表示素子DE1が形成され、次に表示素子DE2が形成され、最後に表示素子DE3が形成される場合を想定したが、表示素子DE1,DE2,DE3の形成順はこの例に限られない。
【0090】
従来の有機エレクトロルミネッセンス表示装置においては、下電極が有機層や上電極を形成する前のフォトリソグラフィ工程にてパターニングされている。例えば下電極が銀の単層構造を有する場合、下電極をパターニングする工程やその後に実施される各種の工程において、銀の表面が酸性またはアルカリ性の薬液や大気に晒される。これにより、当該表面が硫化や酸化によって変質し、反射率が低下し得る。また、下電極を銀の単層構造とすると、その下地となる絶縁層との間で十分な密着性を確保できず、下電極の剥離が生じる可能性がある。そこで、一般的には、銀で形成された反射層の下面と上面をITOで覆った構造が下電極に用いられている。この構造においては、反射層の上面の変質が上側のITO層で抑制され、反射層と下地との密着性が下側のITO層により向上する。上側のITO層は、例えば5~10nm程度の厚さを有している。
【0091】
有機層が発する光は、反射層やその上方に配置された各層の界面での反射を繰り返し、表示素子から出射する。反射層の上面がITO層で覆われていると、この多重反射の過程で、当該ITO層によって光の一部が吸収される。特に、青色の波長域の光はITO層による吸収率が高いため損失が大きい。下電極の形成後にドライエッチングや酸性の薬液を用いたウェットエッチングが行われる場合には、上側のITO層を例えば20~30nm程度に厚くする必要があり、光吸収による損失がさらに大きくなってしまう。
【0092】
これに対し、本実施形態に係る表示装置DSPの製造方法においては、下電極LE1と有機層OR1が真空環境下で連続して蒸着される。下電極LE2と有機層OR2、および、下電極LE3と有機層OR3についても同様である。この場合には、下電極LE1,LE2,LE3の表面が大気や薬液に晒されない。そのため、銀などの金属材料で形成される下電極LE1,LE2,LE3の上面をITO層で覆う必要がない。このITO層を省略することで、有機層OR1,OR2,OR3が放つ光の吸収が抑制される。さらに、下電極LE1,LE2,LE3の上面の変質が抑制されるため、良好な正孔注入特性を確保することができる。これらにより、表示素子DE1,DE2,DE3の発光効率が向上する。
【0093】
また、下電極LE1,LE2,LE3が形成された後、直ちにその上に有機層OR1,OR2,OR3などが形成されるため、下側のITO層を設けなくても下電極LE1,LE2,LE3の剥離が抑制される。
【0094】
本実施形態においては、副画素SP1,SP2,SP3の境界にオーバーハング状の隔壁6が設けられている。この場合には、蒸着によって形成される下電極LE1,LE2,LE3、有機層OR1,OR2,OR3および上電極UE1,UE2,UE3などが隔壁6によって分断される。このように分断された各層を封止層SE1,SE2,SE3で覆うことにより、個別に封止された表示素子DE1,DE2,DE3を得ることができる。表示素子DE1,DE2,DE3が個別に封止されていれば、いずれかの表示素子に水分浸入などの不具合が生じた場合であっても、その影響の他の表示素子への波及が抑制される。
【0095】
隔壁6は、上電極UE1,UE2,UE3に給電する配線としての役割を担う。そのため、下電極LE1,LE2,LE3は、隔壁6と離間している必要がある。この点に関し、本実施形態においては、隔壁6の上部62が下部61の側面よりも突出している。この場合、蒸着によって形成される下電極LE1,LE2,LE3の端部EPは、上述の通り下部61に近づくに連れて厚さが減少する形状となる。これにより、下電極LE1,LE2,LE3と下部61の接触を良好に抑制することができる。
【0096】
さらに、本実施形態においては、下部61と無機絶縁層13の間に配置されたリブ5が第1リブ層51とその上の第2リブ層52を含み、第2リブ層52が第1リブ層51の側面SF1および下部61の側面SF2から突出している。このような構成においては、仮に下電極LE1,LE2,LE3の蒸着時にこれらの材料が下部61の側面SF2に付着したとしても、その付着した部分は、それぞれ下電極LE1,LE2,LE3の他の部分と隙間Gによって分断される。したがって、下電極LE1,LE2,LE3と下部61の短絡をより確実に抑制することができる。また、このような短絡を抑制しつつも、下電極LE1,LE2,LE3を下部61に近づけることができるので、表示素子DE1,DE2,DE3の面積(発光領域の面積)を広く確保することができる。
【0097】
以上、本発明の実施形態として説明した表示装置およびその製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての表示装置およびその製造方法も、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に属する。
【0098】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0099】
また、上述の各実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0100】
DSP…表示装置、DA…表示領域、PX…画素、SP1,SP2,SP3…副画素、LE1,LE2,LE3…下電極、OR1,OR2,OR3…有機層、UE1,UE2,UE3…上電極、SE1,SE2,SE3…封止層、DE1,DE2,DE3…表示素子、5…リブ、51…第1リブ層、52…第2リブ層、6…隔壁、61…隔壁の下部、62…隔壁の上部、13…無機絶縁層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23