(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055087
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】区画構造及び区画構造の補修方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20240411BHJP
E04B 5/43 20060101ALI20240411BHJP
E04B 2/74 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
E04B1/94 M
E04B5/43 C
E04B2/74 551Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161710
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】島本 倫男
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001EA05
2E001FA07
2E001FA11
2E001GA10
2E001GA12
2E001GA29
2E001GA82
2E001HA32
2E001HA33
2E001HD01
2E001HD02
2E001HD03
2E001HD08
2E001HD09
2E001HD11
2E001JA01
2E001JA02
2E001JA22
(57)【要約】
【課題】リブの内部に充填された充填物が露出することなく、耐火性に優れる区画構造及び区画構造の補修方法を提供する。
【解決手段】本発明の区画構造10は、一方の面11D側にリブ12が設けられたフラットデッキ11と、フラットデッキ11の一方の面11D側に対向するように配置された区画材20とを備える区画構造であって、リブ12の内部には、有機系材料30が充填され、リブ12の少なくとも一部に開口部12C,12D(箇所R
1)を有し、開口部12C,12D(箇所R
1)に配置された有機系材料30を被覆する無機系材料40をさらに備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面側にリブが設けられたフラットデッキと、
前記フラットデッキの前記一方の面側に対向するように配置された区画材とを備える区画構造であって、
前記リブの内部には、有機系材料が充填され、
前記リブの少なくとも一部に開口部を有し、
前記開口部に配置された前記有機系材料を被覆する無機系材料をさらに備える、区画構造。
【請求項2】
前記有機系材料は、有機発泡体である、請求項1に記載の区画構造。
【請求項3】
前記有機発泡体の密度が100kg/m3以下である、請求項2に記載の区画構造。
【請求項4】
前記有機発泡体は、ウレタンフォームである、請求項2に記載の区画構造。
【請求項5】
前記リブは、前記有機系材料を注入するための注入口を底面部分に有する、請求項1に記載の区画構造。
【請求項6】
前記区画材は、石膏ボード、押出成形セメント板、軽量気泡コンクリート、プレキャストコンクリート板及びガラス繊維強化コンクリート板の群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の区画構造。
【請求項7】
前記無機系材料は、ISO5660-1に準拠し、コーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、放射熱強度50kW/m2にて加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下である、請求項1に記載の区画構造。
【請求項8】
一方の面側にリブが設けられたフラットデッキと、前記フラットデッキの前記一方の面側に対向するように配置された区画材とを備える区画構造の補修方法であって、
内部に有機系材料が充填された前記リブの少なくとも一部を切断し、前記リブの少なくとも一部に開口部を形成する工程と、
前記開口部に配置された前記有機系材料を被覆する無機系材料を設ける工程とを含む、区画構造の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物などにおける区画構造及び区画構造の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリートなどにおいて、上面にコンクリートを打設することが可能なフラットデッキが用いられることがある(例えば、特許文献1参照)。フラットデッキは梁間に渡して配置することにより、上面にコンクリート打設が可能になるため、工期短縮など非常に有用な建材である。フラットデッキの構造としては、コンクリート打設に耐える耐荷重性を付与するため、金属板を折り曲げてリブと呼ばれる中空部を有している。
リブの内部が中空であると、火災が発生した場合には、延焼の原因となることがあり、耐火性の問題があった。そこで、リブの内部に充填物を充填したフラットデッキが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
リブはフラットデッキ下面に設けられているため、フラットデッキ下面に防火区画用の区画材を配置する際には、リブが区画材を配置することを阻害することがあり、直接区画材を設置することができないことがある。そこで建設現場では、区画材を設置する前に、区画材とリブが干渉する部分については、リブを切断して除去することで上記問題を解決している。
また、ダクト及びケーブル等の挿通体を通す場合等ではフラットデッキを含めて天井自体を除去することもあるため、その際にも同様にフラットデッキのリブは切断されることがある。
【0004】
上記のようにリブを切断した場合においては、切断後のリブの切断面からは充填物がそのまま露出させてしまう。リブの内部に充填された充填物が露出していることで、耐火性の低下が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-150130号公報
【特許文献2】特開2020-139321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑み、リブの内部に充填された充填物が露出することなく、耐火性に優れる区画構造及び区画構造の補修方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]一方の面側にリブが設けられたフラットデッキと、前記フラットデッキの前記一方の面側に対向するように配置された区画材とを備える区画構造であって、前記リブの内部には、有機系材料が充填され、前記リブの少なくとも一部に開口部を有し、前記開口部に配置された前記有機系材料を被覆する無機系材料をさらに備える、区画構造。
[2]前記有機系材料は、有機発泡体である、[1]に記載の区画構造。
[3]前記有機発泡体の密度が100kg/m3以下である、[2]に記載の区画構造。
[4]前記有機発泡体は、ウレタンフォームである、[2]又は[3]に記載の区画構造。
[5]前記リブは、前記有機系材料を注入するための注入口を底面部分に有する、[1]~[4]のいずれかに記載の区画構造。
[6]前記区画材は、石膏ボード、押出成形セメント板、軽量気泡コンクリート、プレキャストコンクリート板及びガラス繊維強化コンクリート板の群から選ばれる少なくとも1種である、[1]~[5]のいずれかに記載の区画構造。
[7]前記無機系材料は、ISO5660-1に準拠し、コーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、放射熱強度50kW/m2にて加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の区画構造。
[8]一方の面側にリブが設けられたフラットデッキと、前記フラットデッキの前記一方の面側に対向するように配置された区画材とを備える区画構造の補修方法であって、内部に有機系材料が充填された前記リブの少なくとも一部を切断し、前記リブの少なくとも一部に開口部を形成する工程と、前記開口部に配置された前記有機系材料を被覆する無機系材料を設ける工程とを含む、区画構造の補修方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リブの内部に充填された充填物が露出することなく、耐火性に優れる区画構造及び区画構造の補修方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る区画構造の一例を示す斜視図であり、
図1(b)は、本発明の実施形態に係る区画構造の一例を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る区画構造の一例を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る区画構造におけるリブに設けられた注入口を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る区画構造におけるリブの内部に充填される有機系材料を示す斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の実施形態に係る区画構造におけるフラットデッキ及びリブの切断除去に起因する補修の一例を示す断面図であり、
図5(b)は、有機系材料を被覆する無機系材料を示す斜視図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の実施形態に係る区画構造の一例を示す斜視図であり、
図6(b)は、本発明の実施形態に係る区画構造の一例を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る区画構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態を用いてより詳細に説明する。
【0011】
[区画構造]
図1(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る区画構造10を示す。以下、図面を参照しつつ、区画構造10について詳細に説明する。本実施形態に係る区画構造10は、一方の面(下面)11D側にリブ12が設けられたフラットデッキ11と、フラットデッキ11の一方の面11D側に対向するように配置された区画材20とを備える。
【0012】
区画材20は、区画を形成するための部材であり、本実施形態では、中空壁を構成する壁材21よりなる壁25である。
区画材20は、
図1及び
図2に示すように、フラットデッキ11のリブ12が設けられた一方の面11D側に配置される。具体的には、壁材21は、その上端面21Uがフラットデッキ11のリブ12の底面部分13と対向するように配置される。壁材21は、その状態で、建築構造物の内部に据え付けられた支持枠体(図示せず)にビスなどの固定部材により取り付けられるとよい。なお、壁材21の上端面21Uは、通常、フラットデッキ11のリブ12の底面部分13に突き合わせられるが、上端面21Uと底面部分13の間には隙間があってもよい。隙間がある場合には、その隙間部分にも後述する耐火材60が充填されるとよい。
【0013】
区画材20としては、区画を仕切ることが可能であり、耐火性を有するものであれば特に限定はなく、例えば、石膏ボード、押出成形セメント板、軽量気泡コンクリート、プレキャストコンクリート板及びガラス繊維強化コンクリート板からなる群から選ばれる1種であることが好ましい。
【0014】
フラットデッキ11の一方の面11D、及び、リブ12の外面と壁材21(区画材20)との隙間は、
図2に示すように、耐火材60で充填するとよい。フラットデッキ11と区画材20との隙間を耐火材60で充填することで、区画構造10の耐火性を向上させることができる。
耐火材60としては、例えば、ロックウール及びグラスウール等の耐火性繊維材料などが使用されてもよいし、耐火パテなどでもよい。耐火材60としては、好ましくは不燃材料相当のものが使用される。なお、不燃材料相当の詳細については、後述する無機系材料で述べるとおりである。
【0015】
フラットデッキ11は、上面11Uが平坦面、又は平坦面に微小な凹凸が形成されたフラット部を有し、フラット部の下面11Dに、複数のリブ12が突設されている。リブ12は、内部に空洞がある突条であり、長手方向に沿って延在して配置され、長手方向における両端部12A,12Bは圧潰などされて閉塞されている。なお、フラットデッキ11は、例えば、鋼板などの金属板やその他の材料をロール成形やプレス成形などすることで得ることができる。フラットデッキ11のリブ12の断面形状は、
図2及び
図3で示すように、三角形とすることができるが特に限定されず、四角形、円形及び楕円形等の種々の形状とすることができる。
【0016】
フラットデッキ11は、建築構造物などに敷設され、床又は屋根構造などを形成するために使用される。フラットデッキ11は、例えば、長手方向における両端部それぞれが梁などの支持材14に載せられて、支持材14間に架設されることで、建築構造物における区画構造を構成する。フラットデッキ11は、例えば、型枠材として使用され、上面11U上にコンクリートを打設することができる。
【0017】
フラットデッキ11のリブ12の内部には、
図4に示すように、有機系材料30が充填されている。有機系材料30としては、有機発泡体が好ましい。有機発泡体としては、例えば、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、スチレンフォーム、PVCフォーム及びポリエチレンフォームなどのポリオレフィンフォームからなる群から選ばれる1種であることが好ましく、中でもウレタンフォーム及びフェノールフォームのいずれかであることがより好ましく、ウレタンフォームがさらに好ましい。
【0018】
<ウレタンフォーム>
有機系材料30としてのウレタンフォームについてより詳細に説明する。本実施形態で使用するウレタンフォームは、ウレタン樹脂組成物を硬化させ、発泡させることで形成されるものである。ウレタンフォームに含まれるウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを混合させ反応させることで得られる反応生成物である。ウレタン樹脂組成物は、リブ12の内部に容易に注入でき、かつリブ12の空洞部12aにおいて隙間なく充填できるように、各種成分を混合して作製した直後においては液状である。
リブ12の空洞部12aを充填して閉塞させるウレタンフォームの施工方法としては、液状のウレタン樹脂組成物を吐出する吐出装置を用いた吐出充填が好適である。なお、吐出装置としては、例えばウレタン樹脂組成物が2液硬化型である場合には、1液と2液とを混合する混合部と、混合されて得られたウレタン樹脂組成物を吐出する吐出口とを備えるものを使用する。このような吐出装置としては、高圧式発泡機、低圧式発泡機、その他混合・吐出システム、スプレーガン及びコーキングガンなどと呼ばれるものを使用すればよい。
【0019】
ウレタンフォームを形成するウレタン樹脂組成物は、一般的にポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物とを含有するものである。
また、ウレタン樹脂組成物は、さらに、樹脂化触媒、三量化触媒などの触媒、及び発泡剤を含有することが好ましく、これら以外にも整泡剤、難燃剤、無機充填材、酸化防止剤、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、染料、顔料、粘着付与樹脂等の添加剤などを含有してもよい。
ウレタン樹脂組成物は、難燃剤を含有させたり、触媒の量を調整したり、イソシアネートインデックスを高めたりすることで、後述するとおり、不燃性や準不燃性を付与したりすることもできる。
ウレタン樹脂組成物は、2液硬化型の場合には、ポリオール化合物を含むポリオール液剤(1液)と、ポリイソシアネート化合物を含むイソシアネート液剤(2液)に分割しておくとよい。この際、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物以外の成分は、適宜、ポリオール液剤又はイソシアネート液剤に配合しておくとよいが、好ましくはポリオール液剤に配合する。
【0020】
有機系材料30は、有機物質のみからなるものでもよいが、有機物質に加えて、無機物質を含有してもよい。有機系材料30は、例えば有機物質を主成分として含有するものであり、有機系材料30としては、全成分量のうち、例えば50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上が有機物質であるものが挙げられる。
【0021】
ウレタン樹脂のイソシアネートインデックスは、例えば120~1,000の範囲であればよい。
なお、イソシアネートインデックスは、以下の方法により計算することができる。
イソシアネートインデックス
=ポリイソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
ここで、各当量数は以下のとおり計算することができる。
・ポリイソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用量(g)×NCO含有量(質量%)/NCOの分子量(モル)×100
・ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用量(g)÷KOHの分子量(ミリモル)
OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)である。
・水の当量数=水の使用量(g)/水の分子量(モル)×水のOH基の数
上記各式において、NCOの分子量は42(モル)、KOHの分子量は56100(ミリモル)、水の分子量は18(モル)、水のOH基の数は2とする。
【0022】
有機発泡体の密度は、100kg/m3以下であることが好ましく、90kg/m3以下であることがより好ましく、80kg/m3以下であることがさらに好ましい。有機発泡体の密度を上記上限値以下とすることで、フラットデッキ11が軽量となり、建築構造物に対する負荷を軽減することができる。また、有機発泡体の密度は、特に限定されないが、20kg/m3以上であることが好ましい。有機発泡体の密度を上記下限値以上とすることで、有機発泡体の難燃性、不燃性を発現しやすくなる。
なお、有機発泡体の密度は、JIS K7222:2005に準拠して測定することができる。
【0023】
有機系材料30は、建築基準法及び建築基準法施行令において定められる準不燃材料相当の性能を示す材料(以下、「準不燃材料」という。)、及び、不燃材料相当の性能を示す材料(以下、「不燃材料」という。)を採用することができるが、典型的には、準不燃材料、不燃材料ではない燃焼性を有する材料(可燃性材料ともいう)を採用することができる。本明細書における可能性材料とは、準不燃材料相当の性能を満たさない材料をいう。また、有機系材料30は、不燃材料相当の性能を満たせずに、準不燃材料相当の性能を満たしてもよい。
【0024】
なお、準不燃材料相当の性能とは、ISO5660-1に準拠し、コーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下となるものをいう。また、不燃材料相当の性能とは、ISO5660-1に準拠し、コーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下となるものをいう。
したがって、有機系材料30としては、典型的には、ISO5660-1に準拠し、コーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m2より高くなるものを使用すればよい。
また、有機系材料30としては、ISO5660-1に準拠し、コーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が8MJ/m2より高くなるものを使用してもよい。
本発明では、有機系材料30として、可燃性材料を使用しても、有機系材料30が後述する無機系材料により被覆されるので、区画構造は優れた耐火性能を有する。
【0025】
リブ12は、有機系材料30を充填するための注入口16(
図3参照)を例えば底面部分13に有する。リブ12は、底面部分13に注入口16を有することで、有機系材料30を底面部分13から注入させて、リブ12の内部の空洞全体に行き渡らせることができる(
図4参照)。なお、底面部分13とは、リブ12の断面形状が三角形や、四角形では、リブの底面を構成する面であるとよいが、円形などの三角形、四角形以外の構造では、底面側から見て視認できる部分を底面部分とする。
注入口16は、各リブにおいて1つ設けられてもよいし、2つ以上設けられてもよい。
注入口16が切断除去されずに残存する場合は、注入口16から有機系材料が露出するのを防止するために、注入口16に配置された有機系材料30を被覆する無機系材料40をさらに備える構成としてもよい。
【0026】
本発明の実施形態に係る区画構造10は、ダクト及びケーブル等の挿通体50を設置する前に、挿通体50と干渉する、リブ12を含むフラットデッキ11の一部が切断されて除去される。リブ12が切断されて除去された後には、リブ12は、少なくとも一部に開口部を有することになる。
具体的には、
図1、
図5(a)に示すように、挿通体50を設置する箇所R
1においては、貫通孔が形成されるので、該当箇所に存在するフラットデッキ11及びリブ12が切断されて除去される。貫通孔を形成したことで、リブ12は、長手方向を横断するように切断されて、開口部12C,12Dが形成される。なお、リブ12は、横方向に並ぶ複数のリブ12のうち、1つのみが切除されてもよいし、2つ以上が切除されてもよい。リブ12が長手方向を横断するように切断されることで、内部に充填された有機系材料30は、後述する無機系材料40が無ければ開口部12C,12Dから横断面が露出されることになる。
【0027】
開口部12C,12Dに配置された有機系材料30は、
図5(a)及び(b)に示すように、無機系材料40によって被覆される。有機系材料30は、無機系材料40によって被覆されることで、開口部12C,12Dにおいて露出されたままにされることが防止される。したがって、本発明では、露出した有機系材料30によって、区画構造10の耐火性が低下することを防止できる。
【0028】
無機系材料40は、開口部12C,12D(後述する
図7では、開口部12E,12Fに配置された有機系材料30を被覆するものであれば特に限定はない。無機系材料40としては、耐火性を有する耐火材料であればよく、例えば無機物質により不燃材料相当の性能を付与できるもの挙げられる。無機系材料40は、無機物質のみならなるものでもよいが、耐火性が阻害されない限り、有機物質を含んでいてもよい。
例えば、無機系材料40は、無機物質を主成分として含有するものであれば、バインダー成分などとして有機物質を含有してもよい。具体的には、無機系材料40としては、全成分量のうち、例えば50質量%超、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上が無機物質であるものが挙げられる。
【0029】
無機系材料40としては、耐火パテ、セメント及び金属等が挙げられる。
耐火パテとしては、公知の熱膨張性又は非熱膨張性の粘土状の耐火材を用いることができる。また、耐火パテとしては、バインダー成分に充填剤などを含有させたものであってもよい。
バインダー成分としては、無機物質を使用してもよいが、エラストマーや樹脂成分などの有機物質を使用することもできる。
また、充填剤としては、無機充填剤を使用することができる。無機充填剤としては、中でも、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、タルク及びカオリナイト、水酸化マンガン、水酸化鉄、水酸化亜鉛等の金属水酸化物、リン酸塩、ポリリン酸塩、高分子無機ポリリン酸塩、リン酸塩鉱物等のリン化合物、並びに、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム及び炭酸バリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸鉄、炭酸銀等の炭酸塩化合物などが好ましい。これら無機充填剤を使用することで、パテ材に耐火性を付与しやすくなる。
耐火パテは、必要に応じて、可塑剤、粘着付与樹脂、その他の成分を配合することができる。耐火パテは、硬化性を有するものであってもよい。耐火パテは、硬化性を有すると、有機系材料30を被覆した後に硬化させることで有機系材料30の表面に高い接着力で固定させやすくなる。
【0030】
セメントとしては、一般的なセメントを用いることができ、例えば、ポルトランドセメント、高炉水砕スラグセメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント等、通常、コンクリートやモルタルに用いられる水硬性セメントが挙げられる。これらのうち、汎用性の高さの点から、ポルトランドセメントが好ましい。
【0031】
金属としては、取り扱い性の観点から、金属箔が挙げられる。金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。
【0032】
無機系材料40としての耐火材料は、建築基準法及び建築基準法施行令において定められる不燃材料相当の性能を示す材料(不燃材料)が使用できる。不燃材料相当の性能とは、上記の通り、ISO5660-1に準拠し、コーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下となるものをいう。
【0033】
無機系材料40の有機系材料30上の厚みは、1mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、10mm以上であることがさらに好ましい。無機系材料40の厚みが上記下限値以上であることで、耐火性を向上させることができる。また、無機系材料40の有機系材料30上の厚みは、特に限定されないが、100mm以下であることが好ましい。無機系材料40の厚みが上記上限値以上であることで、無機系材料40が必要以上にスペースを占有することを防止できる。
【0034】
[区画構造の補修方法]
本発明の実施形態に係る区画構造の補修方法は、以下の工程A、工程Bを含む。
工程A:内部に有機系材料が充填されたリブの少なくとも一部を切断し、リブの少なくとも一部に開口部を形成する工程
工程B:開口部に配置された有機系材料を被覆する無機系材料を設ける工程
【0035】
本補修方法は、ダクト及びケーブル等の挿通体を設置する前に、挿通体と干渉する、リブ12を含むフラットデッキ11の一部が切断されて除去されたことにより形成された開口部の耐火性を補修する。
本補修方法は、工程Bにおいて、工程Aで形成された開口部において露出された有機系材料を被覆する無機系材料を設ける。無機系材料を設ける手段としては、特に限定はないが、例えば耐火パテやセメントである場合には、開口部に露出される有機系材料上に無機系材料を塗布して、その後、必要に応じて、耐火パテやセメントを固めるとよい。また、金属箔などである場合には、開口部に露出される有機系材料に公知の接着剤を使用して固定させてもよいし、ネジ、ビスなどの固定手段などにより有機系材料30の表面に固定させてもよい。開口部に配置された有機系材料に無機系材料を設けることで、リブに設けられた開口部の耐火性が補修される。
【0036】
なお、以上の説明では、リブの開口部は、ダクト及びケーブル等の挿通体50に干渉する、フラットデッキ11の一部を切除して設けられる態様を説明したが、リブの開口部は、挿通体50に干渉する部分以外を切除して形成されてもよく、例えば、壁21などの区画材20と干渉する部分を切除して形成されたものでもよい。
具体的には、
図6(a)及び(b)に示すように、壁21などの区画材20を設置する箇所にリブ12が存在する場合は、区画材20がリブ12と干渉してしまうため、
図7に示すように、該当箇所R
2のリブ12が切断されて除去されることがある。箇所R
2のリブ12が切断されて除去された後には、開口部12E,12Fが形成される。このように、リブ12が長手方向を横断するように切断されることで、内部に充填された有機系材料30も、開口部12C,12Dから露出されることになる。このような場合でも、開口部12E,12Fに配置された有機系材料30は、
図6に示すように、無機系材料40により被覆されることで、露出した状態のままとなることが防止できる。
なお、リブ12は、区画材20と干渉する箇所を除去するため、長手方向に対して垂直に切断される態様に限定されず、長手方向に対して斜め方向に切断されることもある。この場合、区画材20もリブ12の長手方向に対して斜め方向に沿って配置されるとよい。
【符号の説明】
【0037】
10 区画構造
11 フラットデッキ
12 リブ
12A,12B 端部
12C,12D,12E,12F 開口部
13 底面部分
14 支持材
16 注入口
20 区画材
21 壁材
25 壁
30 有機系材料
40 無機系材料
50 挿通体
60 耐火材