(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055098
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】PET装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
G01T1/161 A
G01T1/161 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161728
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】森安 健太
【テーマコード(参考)】
4C188
【Fターム(参考)】
4C188EE02
4C188FF07
4C188GG19
4C188JJ02
4C188KK09
4C188KK15
4C188KK24
4C188KK35
4C188LL27
(57)【要約】
【課題】TOF較正を簡便に行うことを可能にすること。
【解決手段】実施形態のPET装置は、取得部と、再構成部と、特定部と、推定部とを備える。取得部は、リストモードデータを取得する。再構成部は、リストモードデータに基づいてPET画像を再構成する。特定部は、リストモードデータに含まれる複数のコインシデンスデータの内、第1の検出器と第1の検出器とは異なる第2の検出器とで同時計数される第1のコインシデンスデータを特定する。推定部は、第1のコインシデンスデータに含まれるTOF情報と再構成画像とに基づいて、第1の検出器と第2の検出器との時間ずれ量を推定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リストモードデータを取得する取得部と、
前記リストモードデータに基づいてPET画像を再構成する再構成部と、
前記リストモードデータに含まれる複数のコインシデンスデータの内、第1の検出器と前記第1の検出器とは異なる第2の検出器とで同時計数される第1のコインシデンスデータを特定する特定部と、
前記第1のコインシデンスデータに含まれるTOF情報と前記PET画像とに基づいて、前記第1の検出器と前記第2の検出器との時間ずれ量を推定する推定部と、
を備える、PET装置。
【請求項2】
前記時間ずれ量に基づいて、前記第1の検出器又は前記第2の検出器の時間情報を較正する較正部を更に備える、請求項1に記載のPET装置。
【請求項3】
前記TOF情報に基づいて対消滅点位置を推定したTOF描写画像を生成する生成部を更に備え、
前記推定部は、前記TOF描写画像と前記PET画像とに基づいて、前記時間ずれ量を推定する、請求項1に記載のPET装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記TOF描写画像全体における画像情報の重心を示す第1の重心位置と、前記PET画像全体における画像情報の重心の位置を示す第2の重心位置とを算出し、前記第1の重心位置と前記第2の重心位置とに基づいて、前記時間ずれ量を推定する、請求項3に記載のPET装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記TOF描写画像において相対的に高いカウントを示す第1の領域と、前記PET画像において相対的に高いカウントを示す第2の領域とを抽出し、前記第1の領域と前記第2の領域とに基づいて、前記時間ずれ量を推定する、請求項3に記載のPET装置。
【請求項6】
前記再構成部は、前記リストモードデータに含まれる複数のコインシデンスデータそれぞれのTOF情報を用いずに前記PET画像を再構成する、請求項1に記載のPET装置。
【請求項7】
前記特定部は、前記第1の検出器及び前記第2の検出器のうち少なくとも一方を所定の検出器に限定し、前記第1の検出器と前記第2の検出器とで同時計数される第1のコインシデンスデータを特定する、請求項1に記載のPET装置。
【請求項8】
前記較正部は、前記時間ずれ量が閾値以内であることを条件に、前記第1の検出器又は前記第2の検出器の時間情報を較正する、請求項2に記載のPET装置。
【請求項9】
前記推定部は、TOF情報及び再構成画像の入力に応じて時間ずれ量を出力するように学習された学習済みモデルを用いて、前記時間ずれ量を推定する、請求項1~8のいずれか1つに記載のPET装置。
【請求項10】
リストモードデータを取得し、
前記リストモードデータに基づいてPET画像を再構成し、
前記リストモードデータに含まれる複数のコインシデンスデータの内、第1の検出器と前記第1の検出器とは異なる第2の検出器とで同時計数される第1のコインシデンスデータを特定し、
前記第1のコインシデンスデータに含まれるTOF情報と前記PET画像とに基づいて、前記第1の検出器と前記第2の検出器との時間ずれ量を推定する、
ことを含む、方法。
【請求項11】
リストモードデータを取得し、
前記リストモードデータに基づいてPET画像を再構成し、
前記リストモードデータに含まれる複数のコインシデンスデータの内、第1の検出器と前記第1の検出器とは異なる第2の検出器とで同時計数される第1のコインシデンスデータを特定し、
前記第1のコインシデンスデータに含まれるTOF情報と前記PET画像とに基づいて、前記第1の検出器と前記第2の検出器との時間ずれ量を推定する、
各処理をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、PET装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TOF(Time-of-Flight)-PET(Positron Emission computed Tomography)装置におけるTOF時間分解能が向上しており、TOF情報を用いた再構成をより精度よく行うことが可能となってきている。
【0003】
ここで、TOF情報を用いた再構成を正確に行うためには、検出器の時間の較正(以下、TOF較正)が必須であり、例えば、TOF較正の手法として、外部線源を用いた手法が一般的に行われている。一例を挙げると、サービスマンが、外部線源を用いて検出器における検出時間のずれを特定し、特定したずれに基づいて該当する検出器の時間情報を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、TOF較正を簡便に行うことを可能にすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のPET装置は、取得部と、再構成部と、特定部と、推定部とを備える。取得部は、リストモードデータを取得する。再構成部は、前記リストモードデータに基づいてPET画像を再構成する。特定部は、前記リストモードデータに含まれる複数のコインシデンスデータの内、第1の検出器と前記第1の検出器とは異なる第2の検出器とで同時計数される第1のコインシデンスデータを特定する。推定部は、前記第1のコインシデンスデータに含まれるTOF情報と前記再構成画像とに基づいて、前記第1の検出器と前記第2の検出器との時間ずれ量を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るPET装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、第1の実施形態に係る計数情報の一例を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、第1の実施形態に係る同時計数情報の時系列リストの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るTOF描写画像を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る時間ずれ量の推定処理を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係るPET装置による処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、変形例1に係る検出器モジュールのペアの例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、変形例1に係る検出器モジュールのペアの例を説明するための図である。
【
図8A】
図8Aは、変形例2に係る学習済みモデルの構築例を説明するための図である。
【
図8B】
図8Bは、変形例2に係る学習済みモデルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、PET装置、方法及びプログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、本願に係るPET装置、方法及びプログラムは、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るPET装置100の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係るPET装置100は、架台装置10と、コンソール装置20とを備える。
【0010】
架台装置10は、PET検出器101と、計数情報生成回路102と、天板103と、寝台104と、寝台駆動部105とを備え、被検体Pに投与された陽電子放出核種を取り込んだ生体組織から放出されたガンマ線を検出することで、PET画像を再構成するための計数情報を生成する。
【0011】
PET検出器101は、複数の検出器モジュールを備える。複数の検出器モジュールは、被検体P内の陽電子から放出された対消滅ガンマ線が発光体(シンチレータ)と相互作用することにより励起状態となった物質が再び基底状態に遷移する際に再放出されるシンチレーション光(蛍光)を検出することにより、ガンマ線を検出する。複数の検出器モジュールは、被検体P内の陽電子から放出された対消滅ガンマ線の放射線のエネルギー情報を検出する。複数の検出器モジュールは、被検体Pの周囲をリング状に取り囲むように配置される。
【0012】
検出器モジュールは、例えば、シンチレータアレイと、光検出器アレイと、ライトガイドとを有する。
【0013】
シンチレータアレイは、2次元状に配置された複数のシンチレータを含む。シンチレータは、被検体P内の陽電子から放出されて入射された対消滅ガンマ線をシンチレーション光(scintillation photons、optical photons)に変換し、シンチレーション光を出力する。シンチレータは、例えば、LaBr3(Lanthanum Bromide)、LYSO(Lutetium Yttrium Oxyorthosilicate)、LSO(Lutetium Oxyorthosilicate)、LGSO(Lutetium Gadolinium Oxyorthosilicate)等の、TOF計測およびエネルギー計測に適するシンチレータ結晶によって形成されている。
【0014】
なお、シンチレータの例としては、上述の例に限られない。例えば、シンチレータとして、GBO(Bismuth Germanium Oxide)や、鉛ガラス(SiO2+PbO)、フッ化鉛(PbF2)、PWO(PbWO4)等の鉛化合物を用いることができる。
【0015】
ライトガイドは、光透過性に優れたプラスチック素材等によって形成され、シンチレータから出力されたシンチレーション光を光検出器に伝達する。具体的には、ライトガイドは、シンチレーション光を後述するSiPM(Silicon Photomultiplier)に伝達する。
【0016】
光検出器アレイは、2次元状に配置された複数の光検出器(光検出素子)を含む。光検出器としては、例えば、SiPM等が用いられる。
【0017】
PET検出器101は、検出器モジュール毎に計数情報生成回路102を備える。
【0018】
計数情報生成回路102は、PET検出器101からの出力信号をデジタルデータに変換した計数情報(リストモードデータ)を生成する。この計数情報には、対消滅ガンマ線の検出位置、エネルギー値、及び検出時間が含まれる。例えば、計数情報生成回路102は、対消滅ガンマ線が入射したシンチレータの位置を示すシンチレータ番号(P)を特定する。
【0019】
なお、計数情報生成回路102は、対消滅ガンマ線が入射したシンチレータ位置を特定する方法として、様々な方法を用いることができる。例えば、計数情報生成回路102は、1つのシンチレータ及び1つのSiPMが対応している場合、出力が得られたSiPMに対応するシンチレータの位置を対消滅ガンマ線が入射したシンチレータ位置として特定してもよい。また、例えば、計数情報生成回路102は、各光検出器の位置及び出力された信号の強度に基づいて重心演算を行うことで、対消滅ガンマ線が入射したシンチレータ位置を特定してもよい。
【0020】
また、計数情報生成回路102は、各光検出器から出力された電気信号の強度を積分計算することで、PET検出器101に入射した対消滅ガンマ線のエネルギー値(E)を特定する。また、計数情報生成回路102は、PET検出器101によって対消滅ガンマ線によるシンチレーション光が検出された検出時間(T)を特定する。なお、検出時間(T)は、絶対時刻であってもよいし、撮像開始時点からの経過時間であってもよい。
【0021】
上述したように、各検出器モジュールに対応する計数情報生成回路102は、シンチレータ番号(P)、エネルギー値(E)、及び検出時間(T)を含む計数情報を生成する。そして、各計数情報生成回路102は、生成した計数情報を、コンソール装置20のメモリ130に格納する。
図2Aは、第1の実施形態に係る計数情報の一例を示す図である。例えば、メモリ130は、
図2Aに示すように、検出器モジュールを識別するモジュールIDに対応付けて、シンチレータ番号(P)、エネルギー値(E)、及び検出時間(T)を記憶する。
【0022】
計数情報生成回路102は、例えば、プロセッサにより実現される。また、計数情報生成回路102は、取得部の一例である。
【0023】
図1に戻って、天板103は、被検体Pが載置されるベッドであり、寝台104の上に配置される。寝台駆動部105は、処理回路106のシステム制御機能106cによる制御の下、天板103を移動させる。例えば、寝台駆動部105は、天板103を移動させることで、被検体Pを架台装置10の撮像口内に移動させる。
【0024】
コンソール装置20は、ユーザによるPET装置100の操作を受け付け、PET画像の撮像を制御するとともに、架台装置10によって収集された計数情報を用いてPET画像を再構成(生成)する。
図1に示すように、コンソール装置20は、処理回路106と、入力インタフェース110と、ディスプレイ120と、メモリ130とを備える。なお、処理回路106、入力インタフェース110、ディスプレイ120及びメモリ130は、バスを介して接続されている。
【0025】
処理回路106は、同時計数情報生成機能106a、再構成機能106b、システム制御機能106c、特定機能106d、生成機能106e、推定機能106f及び較正機能106gを実行する。同時計数情報生成機能106a、再構成機能106b、システム制御機能106c、特定機能106d、生成機能106e、推定機能106f及び較正機能106gの各機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ130に記憶されている。処理回路106は、各プログラムをメモリ130から読み出し、読み出された各プログラムを実行することで各プログラムに対応する各機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路106は、
図1の処理回路106内に示された各機能を有することになる。
【0026】
なお、
図1においては単一の処理回路106にて、同時計数情報生成機能106a、再構成機能106b、システム制御機能106c、特定機能106d、生成機能106e、推定機能106f及び較正機能106gが実現されるものとして説明した。しかしながら、処理回路106が複数の独立したプロセッサにより構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0027】
なお、再構成機能106bは、再構成部の一例である。特定機能106dは、特定部の一例である。生成機能106eは、生成部の一例である。推定機能106fは、推定部の一例である。較正機能106gは、較正部の一例である。
【0028】
同時計数情報生成機能106aは、メモリ130に記憶された計数情報を取得し、取得した計数情報に基づいて、同時計数情報(コインシデンスデータ)を生成する。そして、同時計数情報生成機能106aは、生成した同時計数情報を検出時間(T)に基づき概ね時系列順に並べてメモリ130に格納する。
【0029】
図2Bは、第1の実施形態に係る同時計数情報の時系列リストの一例を示す図である。
図2Bに示すように、メモリ130は、同時計数情報の通し番号である「コインシデンスNo.」に対応付けて、計数情報の組を記憶する。なお、第1の実施形態において、同時計数情報の時系列リストは、計数情報の検出時間(T)に基づき概ね時系列順に並んでいる。また、以下では、計数情報の組において、検出時間(T)の時間差をTOF情報と記す。
【0030】
再構成機能106bは、PET画像(再構成画像)を再構成する。具体的には、再構成機能106bは、リストモードデータに基づいてPET画像を再構成する。例えば、再構成機能106bは、メモリ130に記憶された同時計数情報の時系列リストを取得し、取得した同時計数情報の時系列リストを用いてPET画像を再構成する。そして、再構成機能106bは、再構成されたPET画像をメモリ130に格納する。
【0031】
システム制御機能106cは、架台装置10及びコンソール装置20を制御することによって、PET装置100全体の制御を行う。例えば、システム制御機能106cは、PET装置100における撮像を制御する。また、システム制御機能106cは、寝台駆動部105を制御することにより、天板103の移動を制御する。
【0032】
また、システム制御機能106cは、各種の画像及び各種の情報をディスプレイ120に表示させる。例えば、システム制御機能106cは、PET画像をディスプレイ120に表示させる。また、システム制御機能106cは、PET装置100のユーザ(操作者)から各種指示や各種設定を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)をディスプレイ120に表示させる。
【0033】
特定機能106dは、メモリ130によって記憶された同時計数情報から所定の同時計数情報を特定する。なお、特定機能106dによる処理については、後に詳述する。
【0034】
生成機能106eは、特定機能106dによって特定された所定の同時計数情報に含まれるTOF情報に基づいて、TOF描写画像を生成する。なお、生成機能106eによる処理については、後に詳述する。
【0035】
推定機能106fは、TOF情報と再構成画像とに基づいて、検出器モジュール間の時間ずれ量を推定する。なお、推定機能106fによる処理については、後に詳述する。
【0036】
較正機能106gは、推定機能106fによって推定された時間ずれ量に基づいて、検出器モジュールにおける時間情報を較正する。なお、較正機能106gによる処理については、後に詳述する。
【0037】
入力インタフェース110は、ユーザからの各種指示や各種設定の入力を受け付けて、受け付けられた各種指示や各種設定を処理回路106に出力する。例えば、入力インタフェース110は、ユーザから受け付けた入力操作を電気信号へ変換し、この電気信号を処理回路106に送信する。例えば、入力インタフェース110は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び、音声入力回路等によって実現される。なお、本明細書において、入力インタフェース110は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、PET装置100とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路106へ送信する電気信号の処理回路も入力インタフェース110の例に含まれる。
【0038】
ディスプレイ120は、処理回路106に接続されており、各種の情報及び各種の画像を表示する。例えば、ディスプレイ120は、処理回路106から送信される情報及びデータを表示用の電気信号に変換して出力する。具体例を挙げて説明すると、ディスプレイ120は、システム制御機能106cによる制御の下、PET画像を表示したり、ユーザから各種指示や各種設定を受け付けるためのGUIを表示したりする。例えば、ディスプレイ120は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0039】
メモリ130は、PET装置100において用いられる各種データを記憶する。メモリ130は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。メモリ130は、計数情報、同時計数情報の時系列リスト、再構成されたPET画像等を記憶する。
【0040】
以上、本実施形態に係るPET装置100の構成の一例について説明した。例えば、PET装置100は、病院や医院等の医療機関に設置され、医療機関に入院又は通院する患者等を被検体Pとして、PET装置100によって生成されるPET画像を用いた各種の画像診断に利用される。ここで、本実施形態に係るPET装置100は、TOF較正を簡便に行うことを可能にする。
【0041】
上述したように、TOF-PET装置では、TOF情報を用いた再構成を正確に行うために、定期的に検出器の時間の較正(TOF較正)を行うことが求められる。しかしながら、一般的なTOF較正では、サービスマンが外部線源を用いて検出器における検出時間のずれを特定し、特定したずれに基づいて該当する検出器の時間情報を調整するという手間がかかる。そこで、本実施形態に係るPET装置100は、TOF情報と再構成画像とを用いて検出器の時間ずれ量を推定することで、TOF較正に係る手間を低減し、TOF較正を簡便に行うことを可能にする。さらに、本実施形態に係るPET装置100は、外部線源を対象として収集したリストモードデータを用いずに、被検体Pから収集したリストモードデータを用いることで、サービスマンの被ばくの低減も行うことができる。以下、PET装置100の処理の詳細について説明する。
【0042】
特定機能106dは、リストモードデータに含まれる複数のコインシデンスデータの内、第1の検出器と第1の検出器とは異なる第2の検出器とで同時計数される第1のコインシデンスデータを特定する。具体的には、特定機能106dは、時間ずれ量の推定に用いるTOF情報を特定する。すなわち、特定機能106dは、TOF較正の対象となる検出器モジュールを特定する。
【0043】
例えば、特定機能106dは、
図2Bに示すコインシデンスデータから時間ずれ量の推定に用いるTOF情報を特定する。一例を挙げると、特定機能106dは、時間ずれ量の推定に用いるTOF情報として、「コインシデンスNo.1」のTOF情報を特定する。これにより、「シンチレータ番号(P):P11」に対応する検出器モジュールD1と、「シンチレータ番号(P):P22」に対応する検出器モジュールD2とがTOF較正の対象となる。
【0044】
なお、特定機能106dは、すべてのコインシデンスデータのTOF情報を特定する場合でもよく、或いは、所定のコインシデンスデータ(すなわち、所定の検出器モジュールに対応するコインシデンスデータ)のTOF情報を特定する場合でもよい。
【0045】
生成機能106eは、TOF情報に基づいて対消滅点位置を推定したTOF描写画像を生成する。具体的には、生成機能106eは、特定機能106dによって特定されたコインシデンスデータのTOF情報を用いて、対消滅点の位置が描写されたTOF描写画像を生成する。
【0046】
図3は、第1の実施形態に係るTOF描写画像を説明するための図である。ここで、
図3では、「コインシデンスNo.1」のTOF情報のTOF描写画像を生成する場合を例に示しているが、実際には、生成機能106eは、特定機能106dによって特定された全てのコインシデンスデータのTOF情報に基づいてTOF描写画像を生成する。また、
図3は、説明の便宜上、2次元で示しているが、実際には、生成機能106eは、3次元のTOF描写画像を生成する。
【0047】
TOF-PET装置では、
図3の左側の生データ領域の図に示すように、検出器モジュール間の検出時間(T)の差から対消滅点の座標点を推定し、LOR(Line-of-Response)に沿ってTOFの時間分解能に応じた距離の半値幅を有する分布を対消滅点の位置情報としている。生成機能106eは、
図3の右側の画像データ領域の図に示すように、上記した対消滅点の位置情報に対応する点を、3次元座標上に示したTOF描写画像を生成する。
【0048】
ここで、生成機能106eによって生成されるTOF描写画像は、再構成せずに、コインシデンスイベントを点として描写したものであることから、点の位置が検出器モジュールにおける時間情報に対して敏感に対応する。すなわち、TOF描写画像における点の位置は、各検出器モジュールにおける検出時間(T)をより厳密に反映させた情報となる。なお、TOF描写画像における点は、TOFの時間分解能が高くなるほど、より正確な位置となる。
【0049】
推定機能106fは、第1のコインシデンスデータに含まれるTOF情報と再構成画像とに基づいて、第1の検出器と第2の検出器との時間ずれ量を推定する。具体的には、推定機能106fは、TOF描写画像と再構成画像とに基づいて、時間ずれ量を推定する。より具体的には、推定機能106fは、TOF描写画像と再構成画像とを重ね合わせて比較した結果に基づいて、時間ずれ量を推定する。
【0050】
図4は、第1の実施形態に係る時間ずれ量の推定処理を説明するための図である。ここで、
図4では、
図3で示したTOF描写画像とPET画像(図中の通常画像)とを重ね合わせた際の対応する対消滅点の位置関係を示す。例えば、推定機能106fは、
図4に示す通常画像における対消滅点と、TOF描写画像における対消滅点との位置のずれから検出器モジュールD1と検出器モジュールD2との時間ずれ量を推定する。
【0051】
上述したように、TOF描写画像は、再構成せずにコインシデンスイベントを点として描写したものであることから、各検出器モジュールにおける検出時間(T)が位置に反映される。一方、PET画像は、様々な角度で収集されたコインシデンスデータをもとに再構成されているため、対消滅点の位置がより真値に近いものとなる。したがって、TOF描写画像をPET画像と比較してずれを検出することで、各検出器モジュールにおける検出時間(T)にどのようなずれが生じているかを検出することができる。
【0052】
ここで、TOF描写画像と比較されるPET画像は、TOF情報を用いた再構成により生成される場合でもよいが、TOF情報を利用しないNon-TOF再構成によって生成される場合でもよい。すなわち、再構成機能106bが、リストモードデータに含まれる複数のコインシデンスデータそれぞれのTOF情報を用いずにPET画像を再構成し、推定機能106fは、当該PET画像を用いて時間ずれ量を推定する。
【0053】
Non-TOF再構成によって生成されたPET画像は、TOF情報を用いずに再構成を行うことから、TOF情報に含まれる時間のずれの影響を受けず、TOF情報を用いた再構成により生成されたPET画像より真値に近いものとなる。すなわち、Non-TOF再構成によって生成されたPET画像を用いることで、より正確な時間ずれ量を推定することがきる。
【0054】
例えば、
図4に示す例では、通常画像に対してTOF描写画像の点が検出器モジュール側にずれていることから、推定機能106fは、検出器モジュールD1と検出器モジュールD2との間で時間にずれがあると判定する。そして、推定機能106fは、点のずれ量から時間ずれ量を推定する。
【0055】
ここで、検出器モジュール間には優先度が設定されており、どちらの検出器モジュールを基準とするかが決まっている。例えば、
図4に示す状態において、検出器モジュールD2よりも検出器モジュールD1の方が、優先度が高いと設定されている場合、推定機能106fは、検出器モジュールD2の時間が早い方にずれていると判定する。すなわち、推定機能106fは、検出器モジュールD2の時間が検出器モジュールD1に対して画像のずれに対応する時間分早まっていると推定する。
【0056】
上述したように、推定機能106fは、TOF描写画像とPET画像とを比較することで、検出器モジュールの時間ずれ量を推定する。ここで、推定機能106fは、画像の比較において、比較する領域を任意に設定することができる。
【0057】
例えば、推定機能106fは、TOF描写画像全体における画像情報の重心を示す第1の重心位置と、再構成画像(PET画像)全体における画像情報の重心の位置を示す第2の重心位置とを算出し、第1の重心位置と第2の重心位置とに基づいて、時間ずれ量を推定する。すなわち、推定機能106fは、単純に画像全体の重心のずれ量から時間ずれ量を推定する。ここで、推定機能106fは、重心がずれている方向に基づいて時間情報がずれた検出器モジュールを特定する。
【0058】
このように、画像全体の重心を用いて時間ずれ量を推定することで、すべての検出器モジュールの中から時間情報がずれた検出器モジュールを特定して、特定した検出器モジュールの時間ずれ量を推定することができ、PET検出器101全体のTOF較正を行うことができる。
【0059】
また、例えば、推定機能106fは、TOF描写画像において相対的に高いカウントを示す第1の領域と、再構成画像(PET画像)において相対的に高いカウントを示す第2の領域とを抽出し、第1の領域と第2の領域とに基づいて、時間ずれ量を推定する。すなわち、推定機能106fは、対消滅点が集約した領域(HOT部)を比較して、当該HOT部のずれ量から時間ずれ量を推定する。ここで、推定機能106fは、HOT部がずれている方向に基づいて時間情報がずれた検出器モジュールを特定する。
【0060】
このように、画像内のHOT部を用いて時間ずれ量を推定することで、較正の対象となる検出器モジュールを限定して、限定した検出器モジュールに対して精度の高いTOF較正を行うことができる。
【0061】
較正機能106gは、時間ずれ量に基づいて、第1の検出器又は第2の検出器の時間情報を較正する。具体的には、較正機能106gは、推定機能106fによって推定された時間ずれ量に基づいて、対象となる検出器モジュールの時間情報を較正する。例えば、
図4で示す状態の場合、較正機能106gは、「検出器モジュールD2の時間が検出器モジュールD1に対して画像のずれに対応する時間分早まっている」とする推定機能106fの推定結果に基づいて、検出器モジュールD2に対応する計数情報生成回路102に対して時間情報の調整を行う。
【0062】
このように、較正機能106gは、推定機能106fによって時間情報がずれたと特定された検出器モジュールに対応する計数情報生成回路102に対して、推定機能106fによって推定された時間ずれ量分の時間調整を行う。ここで、較正機能106gによって較正される時間ずれ量に上限が設けられる場合でもよい。すなわち、較正機能106gは、時間ずれ量が閾値以内であることを条件に、第1の検出器又は第2の検出器の時間情報を較正する。
【0063】
例えば、PET検出器101におけるTOFの時間分解能の1%を上限として設定し、これを超えた場合には、較正機能106gによるTOF較正を行わないようにしてもよい。かかる場合には、システム制御機能106cは、時間ずれ量が上限を超えた旨の情報をディスプレイ120に表示させることで、PET装置100によるTOF較正が行われていないことをユーザに通知する。この表示を確認したユーザは、例えば、サービスマンにTOF較正を依頼する。
【0064】
上述したように、PET装置100は、リストモードデータを用いてTOF較正を実行する。ここで、PET装置100によるTOF較正は、任意のタイミングで実施される。例えば、PET装置100は、リストモードデータが収集されるごとにTOF較正を行う場合でもよく、或いは、設定された時間(例えば、夜間)にそれまでに収集されたリストモードデータを用いてTOF較正を行う場合でもよい。
【0065】
次に、
図5を用いて、PET装置100による処理の一例を説明する。
図5は、第1の実施形態に係るPET装置100による処理手順を示すフローチャートである。
【0066】
例えば、
図5に示すように、本実施形態では、システム制御機能106c及び同時計数情報生成機能106aが、データ収集を開始して(ステップS101)、データ収集を終了する(ステップS102)。この処理は、例えば、処理回路106が、システム制御機能106c及び同時計数情報生成機能106aに対応するプログラムをメモリ130から読み出して実行することにより実現される。
【0067】
続いて、再構成機能106bが、収集されたコインシデンスデータを用いて通常画像を生成する(ステップS103)。この処理は、例えば、処理回路106が、再構成機能106bに対応するプログラムをメモリ130から読み出して実行することにより実現される。
【0068】
また、特定機能106dがコインシデンスデータを特定し、生成機能106eが、特定されたコインシデンスデータにおけるTOF情報に基づいてTOF描写画像を生成する(ステップS104)。この処理は、例えば、処理回路106が、特定機能106d及び生成機能106eに対応するプログラムをメモリ130から読み出して実行することにより実現される。
【0069】
続いて、推定機能106fが、通常画像とTOF描写画像とを重ね合わせ、時間ずれ量を算出する(ステップS105)。この処理は、例えば、処理回路106が、推定機能106fに対応するプログラムをメモリ130から読み出して実行することにより実現される。
【0070】
続いて、較正機能106gが、時間ずれ量に基づいて、対応する検出器モジュールの時間情報を較正する(ステップS106)。この処理は、例えば、処理回路106が、較正機能106gに対応するプログラムをメモリ130から読み出して実行することにより実現される。
【0071】
なお、
図5に示すフローチャートでは、データ収集終了後にTOF描写画像を生成する例を示しているが、データ収集中にTOF描写画像が生成される場合でもよい。
【0072】
上述したように、第1の実施形態によれば、計数情報生成回路102が、リストモードデータを取得する。再構成機能106bがリストモードデータに基づいてPET画像を再構成する。特定機能106dが、リストモードデータに含まれる複数のコインシデンスデータの内、第1の検出器と第1の検出器とは異なる第2の検出器とで同時計数される第1のコインシデンスデータを特定する。推定機能106fが、第1のコインシデンスデータに含まれるTOF情報と再構成画像とに基づいて、第1の検出器と第2の検出器との時間ずれ量を推定する。したがって、第1の実施形態に係るPET装置100は、収集したデータでTOF較正を行うことができ、TOF較正を簡便に行うことを可能にする。また、第1の実施形態によれば、外部線源を用いずにTOF構成を行うことができ、サービスマンの被ばくを低減することを可能にする。
【0073】
また、第1の実施形態によれば、較正機能106gが、時間ずれ量に基づいて、第1の検出器又は第2の検出器の時間情報を較正する。したがって、第1の実施形態に係るPET装置100は、自動でTOF較正を行うことができ、TOF較正を簡便に行うことを可能にする。
【0074】
また、第1の実施形態によれば、生成機能106eが、TOF情報に基づいて対消滅点位置を推定したTOF描写画像を生成する。推定機能106fが、TOF描写画像と再構成画像とに基づいて、時間ずれ量を推定する。したがって、第1の実施形態に係るPET装置100は、画像の比較で検出器モジュールの時間ずれ量を推定することができ、TOF較正を簡便に行うことを可能にする。
【0075】
また、第1の実施形態によれば、推定機能106fが、TOF描写画像全体における画像情報の重心を示す第1の重心位置と、再構成画像全体における画像情報の重心の位置を示す第2の重心位置とを算出し、第1の重心位置と第2の重心位置とに基づいて、時間ずれ量を推定する。したがって、第1の実施形態に係るPET装置100は、PET検出器101全体のTOF較正を行うことを可能にする。
【0076】
また、第1の実施形態によれば、推定機能106fが、TOF描写画像において相対的に高いカウントを示す第1の領域と、再構成画像において相対的に高いカウントを示す第2の領域とを抽出し、第1の領域と第2の領域とに基づいて、時間ずれ量を推定する。したがって、第1の実施形態に係るPET装置100は、限定した検出器モジュールに対して精度の高いTOF較正を行うことを可能にする。
【0077】
また、第1の実施形態によれば、再構成機能106bは、リストモードデータに含まれる複数のコインシデンスデータそれぞれのTOF情報を用いずにPET画像を再構成する。したがって、第1の実施形態に係るPET装置100は、より正確な時間ずれ量を推定することを可能にする。
【0078】
また、第1の実施形態によれば、較正機能106gが、時間ずれ量が閾値以内であることを条件に、第1の検出器又は第2の検出器の時間情報を較正する。したがって、第1の実施形態に係るPET装置100は、所望の範囲でのTOF較正を行うことを可能にする。
【0079】
(変形例1)
上述した実施形態では、すべての検出器モジュールのペアを対象とする場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、検出器モジュールのペアを限定する場合でもよい。
【0080】
具体的には、変形例1に係る特定機能106dは、第1の検出器及び第2の検出器のうち少なくとも一方を所定の検出器に限定し、第1の検出器と第2の検出器とで同時計数される第1のコインシデンスデータを特定する。
【0081】
図6及び
図7は、変形例1に係る検出器モジュールのペアの例を説明するための図である。例えば、特定機能106dは、
図6に示すように、FOVにおいて較正する角度を60°方向に限定し、限定した方向でペアになる検出器モジュールによって検出されたコインシデンスデータを、TOF較正に用いるコインシデンスデータとして特定する。
【0082】
また、例えば、特定機能106dは、
図7に示すように、検出器モジュールD3を限定し、限定した検出器モジュールD3とペアになる検出器モジュールによって検出されたコインシデンスデータを、TOF較正に用いるコインシデンスデータとして特定する。
【0083】
第1の実施形態にて説明したように、すべての検出器モジュールのペアを対象とした場合、計算が複雑になり、収束しない可能性がある。そこで、上述したように検出器モジュールのペアを限定することで、TOF較正に係る計算を簡素化して、TOF較正に係る計算を確実に収束させることを可能にする。
【0084】
(変形例2)
上述した実施形態では、PET画像とTOF描写画像とを重ね合わせ、位置のずれから時間ずれ量を推定する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、学習済みモデルを用いて時間ずれ量を推定する場合でもよい。具体的には、変形例2に係る推定機能106fは、TOF情報及び再構成画像の入力に応じて時間ずれ量を出力するように学習された学習済みモデルを用いて、時間ずれ量を推定する。
【0085】
図8Aは、変形例2に係る学習済みモデルの構築例を説明するための図である。ここで、
図8Aに示す学習済みモデルの構築は、PET装置によって収集されたデータを用いて、ワークステーション等の情報処理装置によって実行される。そして、構築された学習済みモデルは、PET装置100のメモリ130に格納される。
【0086】
例えば、変形例2に係る学習済みモデルは、
図8Aに示すように、TOF描写画像と、通常画像(PET画像)と、ずれ量とのセットのデータ(学習データ)を複数セット用いて機械学習させることで構築される。ここで、学習済みモデルの構築に用いられる上記学習データは、
図8Aに示すように、理想的な生データに基づいて生成される。
【0087】
理想的な生データは、TOF情報にずれがない(検出器モジュールの時間情報にずれがない)リストモードデータであり、例えば、精度よくTOF較正されたPET装置によって収集される。ここで、精度よくTOF較正されたPET装置とは、例えば、サービスマンによってTOF較正が実施された直後のPET装置である。
【0088】
そして、上記理想的な生データの検出器の時間情報にずれ量Aを加えることで、検出器の時間情報に既知の時間ずれ量を与える。これにより、時間情報がAだけずれた生データが取得される。そして、取得された生データを用いてTOF描写画像と通常画像とが生成され、時間ずれ量Aとともに学習データとなる。変形例2に係る学習済みモデルの構築では、上記したずれ量Aを種々変化させて、複数の学習データが生成される。
【0089】
そして、時間情報がAだけずれた生データを用いて生成されたTOF描写画像及び通常画像と、既知の時間ずれ量Aとを含む学習データを複数用いて機械学習が実行されることで、学習済みモデルが構築される。
【0090】
例えば、推定機能106fは、
図8Bに示すように、メモリ130に保存された上記学習済みモデルを読み出し、読み出した学習済みモデルに対して新たに収集されたリストモードデータに基づくTOF描写画像と通常画像とを入力することで、時間ずれ量を取得する。なお、
図8Bは、変形例2に係る学習済みモデルの一例を示す図である。
【0091】
上述したように、推定機能106fは、学習済みモデルを用いて時間ずれ量を推定する。したがって、変形例2に係るPET装置100は、時間ずれ量を容易に推定することを可能にする。
【0092】
(変形例3)
上述した実施形態では、TOF情報からTOF描写画像を生成し、生成したTOF描写画像を用いて時間ずれ量を推定する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、TOF描写画像を生成せずにTOF情報を用いて時間ずれ量を推定する場合でもよい。
【0093】
かかる場合には、変形例3に係る推定機能106fは、TOF情報から位置情報を特定し、特定した位置情報とPET画像とを比較することで、時間ずれ量を推定する。すなわち、推定機能106fは、TOF情報に基づく位置情報(TOF情報に対応する対消滅点の位置)のPET画像上の位置を特定し、特定した位置とPET画像における対消滅点の位置とから、時間ずれ量を推定する。
【0094】
これにより、変形例3に係るPET装置100は、TOF描写画像の生成に係る処理を省略することができ、TOF較正に係る処理付加を低減させることを可能にする。なお、TOF情報を用いて時間ずれ量を推定する学習済みモデルを構築する場合、
図8Aに示す学習済みモデルを構築において、TOF描写画像の代わりにTOF情報が用いられる。
【0095】
(変形例4)
上述した実施形態では、被検体Pを対象として収集したリストモードデータを用いてTOF較正を行う場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、外部線源を対象として収集したリストモードデータを用いて、本願に係るTOF較正を行う場合でもよい。
【0096】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ130に保存されたプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することで機能を実現する。
【0097】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることによって提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各処理機能を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0098】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、TOF較正を簡便に行うことを可能にすることができる。
【0099】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0100】
100 PET装置
102 計数情報生成回路
106b 再構成機能
106d 特定機能
106e 生成機能
106f 推定機能
106g 較正機能