(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055105
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】製品設計支援システム、製品設計支援方法及び製品設計支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06N 20/00 20190101AFI20240411BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
G06N20/00 130
B60C19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161741
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 直也
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131LA34
(57)【要約】 (修正有)
【課題】学習による分類モデルを用いて最適な仕様を容易に絞り込む製品設計支援システム、製品設計支援方法及び製品設計支援プログラムを提供する。
【解決手段】製品設計支援システム1において、処理装置が記憶装置に格納されているプログラムを実行することで実現される、データ記憶部20及び最適仕様探索部30は、複数の仕様項目と複数のクラスの何れかとが対応づけられた教師データを利用した学習により生成された分類モデル22を用い、仕様項目が夫々が仕様データを含み、固定項目の値が複数の仕様データ間で共通で、変動項目の値が仕様データ毎に異なる仕様データセットを取得し、複数の仕様データの夫々が有する仕様項目を分類モデルに入力し、複数の仕様データの夫々が複数のクラスの何れに属するか分類し、分類した結果に基づいて、仕様データセットについて、クラスに属する仕様データが多いほど高い値を示すロバスト評価値を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の仕様を示す複数の第1の仕様項目と、前記製品の第1の性能を示す性能評価値が上限値以上である第1のクラス及び前記性能評価値が前記上限値未満である第2のクラスを含む複数のクラスのいずれかと、が対応づけられた教師データを利用した学習により生成された分類モデルを用いた製品設計支援システムであって、
前記複数の第1の仕様項目をそれぞれが有する複数の仕様データを含むとともに、前記複数の第1の仕様項目の一部である固定項目の値は前記複数の仕様データ間で共通する一方で、前記複数の第1の仕様項目の前記一部以外の項目である変動項目の値は前記仕様データ毎に異なる仕様データセットを取得する仕様データセット取得手段と、
前記複数の仕様データのそれぞれが有する前記複数の第1の仕様項目を前記分類モデルに入力し、前記複数の仕様データのそれぞれが前記複数のクラスのいずれに属するか分類する分類手段と、
前記分類手段が分類した結果に基づいて、前記仕様データセットについて、前記第1のクラスに属する前記仕様データが多いほど高い値を示すロバスト評価値を算出するロバスト評価値算出手段と、
を有する製品設計支援システム。
【請求項2】
前記仕様データセット取得手段は、複数の前記仕様データセットを取得し、
前記ロバスト評価値算出手段は、前記複数の仕様データセットのそれぞれについて前記ロバスト評価値を算出し、
前記ロバスト評価値に基づいて、前記複数の仕様データセットから一以上の仕様データセットを選択する選択手段を更に有する、
請求項1に記載の製品設計支援システム。
【請求項3】
前記製品の仕様を示す第2の仕様項目と、前記製品の第2の性能を示す性能評価情報と、が対応づけられた教師データを利用した学習により生成された推定モデルを更に用い、
前記複数の仕様データのいずれかに対応する仕様を示す前記第2の仕様項目を前記推定モデルに入力し、前記複数の仕様データセットのそれぞれについて前記性能評価情報を推定する推定手段を更に有する、
請求項2に記載の製品設計支援システム。
【請求項4】
前記選択手段は、前記性能評価情報に更に基づいて、前記複数の仕様データセットから前記一以上の仕様データセットを選択する、
請求項3に記載の製品設計支援システム。
【請求項5】
前記複数の仕様データのそれぞれが有する前記変動項目の値の範囲は、前記変動項目として割り当てられたパラメータの値の実測データのばらつきに基づいて設定される、
請求項1に記載の製品設計支援システム。
【請求項6】
前記複数の第1の仕様項目及び前記第2の仕様項目は、タイヤの仕様を示すものであり、
前記性能評価値は、前記タイヤの耐久性を示し、
前記変動項目として割り当てられたパラメータは、前記耐久性に影響のあるゴム物性である、
請求項1に記載の製品設計支援システム。
【請求項7】
前記ゴム物性は、ゴム強度である、
請求項6に記載の製品設計支援システム。
【請求項8】
前記第2のクラスは、前記性能評価値が前記上限値未満であるとともに第1の値以上であり、
前記複数のクラスは、前記性能評価値が前記第1の値未満であるとともに第2の値以上である第3のクラスを更に含み、
前記ロバスト評価値は、前記第1のクラスに属する前記仕様データが多いほど高い値を示すとともに、前記第2のクラスに属する前記仕様データが多いほど高い値を示す、
請求項1に記載の製品設計支援システム。
【請求項9】
製品の仕様を示す複数の第1の仕様項目と、前記製品の第1の性能を示す性能評価値が上限値以上である第1のクラス及び前記性能評価値が前記上限値未満である第2のクラスを含む複数のクラスのいずれかと、が対応づけられた教師データを利用した学習により生成された分類モデルを用いた製品設計支援方法であって、
前記複数の第1の仕様項目をそれぞれが有する複数の仕様データを含むとともに、前記複数の第1の仕様項目の一部である固定項目の値は前記複数の仕様データ間で共通する一方で、前記複数の第1の仕様項目の前記一部以外の項目である変動項目の値は前記仕様データ毎に異なる仕様データセットを取得する仕様データセット取得ステップと、
前記複数の仕様データのそれぞれが有する前記複数の第1の仕様項目を前記分類モデルに入力し、前記複数の仕様データのそれぞれが前記複数のクラスのいずれに属するか分類する分類ステップと、
前記分類ステップにて分類した結果に基づいて、前記仕様データセットについて、前記第1のクラスに属する前記仕様データが多いほど高い値を示すロバスト評価値を算出するロバスト評価値算出ステップと、
を有する製品設計支援方法。
【請求項10】
製品の仕様を示す複数の第1の仕様項目と、前記製品の第1の性能を示す性能評価値が上限値以上である第1のクラス及び前記性能評価値が前記上限値未満である第2のクラスを含む複数のクラスのいずれかと、が対応づけられた教師データを利用した学習により生成された分類モデルを用いた製品設計支援プログラムであって、
前記複数の第1の仕様項目をそれぞれが有する複数の仕様データを含むとともに、前記複数の第1の仕様項目の一部である固定項目の値は前記複数の仕様データ間で共通する一方で、前記複数の第1の仕様項目の前記一部以外の項目である変動項目の値は前記仕様データ毎に異なる仕様データセットを取得する仕様データセット取得手段、
前記複数の仕様データのそれぞれが有する前記複数の第1の仕様項目を前記分類モデルに入力し、前記複数の仕様データのそれぞれが前記複数のクラスのいずれに属するか分類する分類手段、
前記分類手段が分類した結果に基づいて、前記仕様データセットについて、前記第1のクラスに属する前記仕様データが多いほど高い値を示すロバスト評価値を算出するロバスト評価値算出手段、
としてコンピュータを機能させる製品設計支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品設計支援システム、製品設計支援方法及び製品設計支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製品の仕様を示す複数の仕様項目に基づいて、その製品の性能を予測する機械学習モデルが知られている。例えば、タイヤの設計開発では、寸法、部材の種類、及び材料等のタイヤの仕様を設計し、その設計した仕様から得られるであろうタイヤの性能(例えば、耐久性や強度等)を予測することが求められる。特許文献1には、複数のゴム材料、及び充填材等から、タイヤの物性値を予測する機械学習モデルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような機械学習モデルには、上記複数の仕様項目を含む仕様データについて、製品の性能評価値に応じた複数のクラスのいずれに属するか分類する分類モデルが含まれる。そのような分類モデルの例としては、製品の性能評価値が合格基準値に達しているか否かを判定するようなものが挙げられる(2値分類)。すなわち、先のタイヤの例で説明すれば、タイヤの仕様を示す複数の仕様項目を入力として、耐久性や強度等のタイヤ性能を示す性能評価値が合格基準値に達しているか否かを判断するようなものである。
【0005】
本発明の発明者らは、最も優れた製品性能を与える最適な仕様を、上記分類モデルの入出力に基づいて探索する最適化手法を検討している。具体的には、複数の仕様データのそれぞれに含まれる複数の仕様項目を分類モデルに入力し、その複数の仕様データのそれぞれについて、いずれのクラスに属するか分類した結果を出力として取得する。そして、最も高い性能評価値に対応するクラスに分類された仕様データに対応する仕様を、最適な仕様として選択するという手法である。
【0006】
ここで、製品の性能試験のなかには、製品の性能を示す性能評価値が上限値に達した時点で、性能評価値の測定を終えるものがある。このような試験の例として、タイヤの耐久性試験をあげることができる。耐久性試験の一例では、タイヤに負荷がかけられ、クラックやセパレーションなどの損傷がタイヤに発生するまでの時間が、耐久性を表す性能評価値として測定される。測定時間が合格基準値(例えば、3000分)に達する前に(例えば、2500分の時点で)タイヤに損傷が認められた場合、2500分がこのタイヤの性能評価値として記録される。一方、合格基準である3000分まで損傷が発生しなかった場合、3000分が経過した時点で測定が終わり、3000分がこのタイヤの性能評価値として記録される。このように測定された性能評価値は、タイヤの複数の仕様項目と対応づけて記録される。
【0007】
このような性能試験により得られたデータから生成した分類モデルを前述の最適化手法に用いると、同じクラスを与える仕様が複数存在する場合には、最適な仕様を絞り込むことが困難となる。上記の2値分類の場合で言えば、合格クラスを与える仕様が複数存在するときには、いずれの仕様が最適であるか絞り込むことは難しい。
図10を用いて具体的に説明すると、「タイヤ1」及び「タイヤ4」は、異なる仕様のタイヤを示すものであるが、いずれも合格クラスに分類されている。すなわち、「タイヤ1」及び「タイヤ4」は、いずれの性能評価値も合格基準値であると判断されている。この場合、「タイヤ1」及び「タイヤ4」のうち、いずれの仕様が最適であるか絞り込むことは困難である。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、製品の仕様を示す複数の第1の仕様項目と、前記製品の第1の性能を示す性能評価値が上限値以上である第1のクラス及び前記性能評価値が前記上限値未満である第2のクラスを含む複数のクラスのいずれかと、が対応づけられた教師データを利用した学習により生成された分類モデルを用いても、最適な仕様を容易に絞り込むことができる製品設計支援システム、製品設計支援方法及び製品設計支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本開示で提案する製品設計支援システムは、製品の仕様を示す複数の第1の仕様項目と、前記製品の第1の性能を示す性能評価値が上限値以上である第1のクラス及び前記性能評価値が前記上限値未満である第2のクラスを含む複数のクラスのいずれかと、が対応づけられた教師データを利用した学習により生成された分類モデルを用いた製品設計支援システムであって、前記複数の第1の仕様項目をそれぞれが有する複数の仕様データを含むとともに、前記複数の第1の仕様項目の一部である固定項目の値は前記複数の仕様データ間で共通する一方で、前記複数の第1の仕様項目の前記一部以外の項目である変動項目の値は前記仕様データ毎に異なる仕様データセットを取得する仕様データセット取得手段と、前記複数の仕様データのそれぞれが有する前記複数の第1の仕様項目を前記分類モデルに入力し、前記複数の仕様データのそれぞれが前記複数のクラスのいずれに属するか分類する分類手段と、前記分類手段が分類した結果に基づいて、前記仕様データセットについて、前記第1のクラスに属する前記仕様データが多いほど高い値を示すロバスト評価値を算出するロバスト評価値算出手段と、を有する。
【0010】
(2)(1)の製品設計支援システムにおいて、前記仕様データセット取得手段は、複数の前記仕様データセットを取得し、前記ロバスト評価値算出手段は、前記複数の仕様データセットのそれぞれについて前記ロバスト評価値を算出してもよい。(1)の製品設計支援システムは、前記ロバスト評価値に基づいて、前記複数の仕様データセットから一以上の仕様データセットを選択する選択手段を更に有してもよい。
【0011】
(3)(2)の製品設計支援システムにおいて、前記製品の仕様を示す第2の仕様項目と、前記製品の第2の性能を示す性能評価情報と、が対応づけられた教師データを利用した学習により生成された推定モデルを更に用いてもよい。(2)の製品設計支援システムは、前記複数の仕様データのいずれかに対応する仕様を示す前記第2の仕様項目を前記推定モデルに入力し、前記複数の仕様データセットのそれぞれについて前記性能評価情報を推定する推定手段を更に有してもよい。
【0012】
(4)(3)の製品設計支援システムにおいて、前記選択手段は、前記性能評価情報に更に基づいて、前記複数の仕様データセットから前記一以上の仕様データセットを選択してもよい。
【0013】
(5)(1)から(4)のいずれかの製品設計支援システムにおいて、前記複数の仕様データのそれぞれが有する前記変動項目の値の範囲は、前記変動項目として割り当てられたパラメータの値の実測データのばらつきに基づいて設定されてもよい。
【0014】
(6)(1)から(5)のいずれかの製品設計支援システムにおいて、前記複数の第1の仕様項目及び前記第2の仕様項目は、タイヤの仕様を示すものであり、前記性能評価値は、前記タイヤの耐久性を示し、前記変動項目として割り当てられたパラメータは、前記耐久性に影響のあるゴム物性であってもよい。
【0015】
(7)(6)の製品設計支援システムにおいて、前記ゴム物性は、ゴム強度であってもよい。
【0016】
(8)(1)から(7)のいずれかの製品設計支援システムにおいて、前記第2のクラスは、前記性能評価値が前記上限値未満であるとともに第1の値以上であり、前記複数のクラスは、前記性能評価値が前記第1の値未満であるとともに第2の値以上である第3のクラスを更に含み、前記ロバスト評価値は、前記第1のクラスに属する前記仕様データが多いほど高い値を示すとともに、前記第2のクラスに属する前記仕様データが多いほど高い値を示してもよい。
【0017】
(9)本開示で提案する製品設計支援方法は、製品の仕様を示す複数の第1の仕様項目と、前記製品の第1の性能を示す性能評価値が上限値以上である第1のクラス及び前記性能評価値が前記上限値未満である第2のクラスを含む複数のクラスのいずれかと、が対応づけられた教師データを利用した学習により生成された分類モデルを用いた製品設計支援方法であって、前記複数の第1の仕様項目をそれぞれが有する複数の仕様データを含むとともに、前記複数の第1の仕様項目の一部である固定項目の値は前記複数の仕様データ間で共通する一方で、前記複数の第1の仕様項目の前記一部以外の項目である変動項目 の値は前記仕様データ毎に異なる仕様データセットを取得する仕様データセット取得ステップと、前記複数の仕様データのそれぞれが有する前記複数の第1の仕様項目を前記分類モデルに入力し、前記複数の仕様データのそれぞれが前記複数のクラスのいずれに属するか分類する分類ステップと、前記分類ステップにて分類した結果に基づいて、前記仕様データセットについて、前記第1のクラスに属する前記仕様データが多いほど高い値を示すロバスト評価値を算出するロバスト評価値算出ステップと、を有する。
【0018】
(10)本開示で提案する製品設計支援プログラムは、製品の仕様を示す複数の第1の仕様項目と、前記製品の第1の性能を示す性能評価値が上限値以上である第1のクラス及び前記性能評価値が前記上限値未満である第2のクラスを含む複数のクラスのいずれかと、が対応づけられた教師データを利用した学習により生成された分類モデルを用いた製品設計支援プログラムであって、前記複数の第1の仕様項目をそれぞれが有する複数の仕様データを含むとともに、前記複数の第1の仕様項目の一部である固定項目の値は前記複数の仕様データ間で共通する一方で、前記複数の第1の仕様項目の前記一部以外の項目である変動項目の値は前記仕様データ毎に異なる仕様データセットを取得する仕様データセット取得手段、前記複数の仕様データのそれぞれが有する前記複数の第1の仕様項目を前記分類モデルに入力し、前記複数の仕様データのそれぞれが前記複数のクラスのいずれに属するか分類する分類手段、前記分類手段が分類した結果に基づいて、前記仕様データセットについて、前記第1のクラスに属する前記仕様データが多いほど高い値を示すロバスト評価値を算出するロバスト評価値算出手段、としてコンピュータを機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る製品設計支援システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る製品設計支援システムで実現される機能の一例を示す機能ブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る製品設計支援システムの入出力に係るデータの一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る製品設計支援システムの入出力に係るデータの他の一例を示す図である。
【
図5】変動項目として割り当てられたパラメータの実測データの一例を示す図である。
【
図6】製品設計支援システムに用いられる分類モデルを学習するための教師データの基となるデータを示す図である。
【
図7】最適仕様探索部が実行する処理の一例を示すフロー図である。
【
図8】変動項目の値の範囲設定に係る処理の一例を示すフロー図である。
【
図9】変形例に係る製品設計支援システムの入力データ及び出力データの例を示す図である。
【
図10】本発明の発明者らが提案する最適化手法に係る問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る製品設計支援システム、製品設計支援方法及び製品設計支援プログラムについて説明する。以下では、製品の一例として、主にタイヤを用いて説明する。すなわち、タイヤ設計支援システム、タイヤ設計支援方法及びタイヤ設計支援プログラムを中心にして説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る製品設計支援システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図1に示すように、製品設計支援システム1は、処理装置11、記憶装置12、表示装置13、及び入力装置14を有する。
【0022】
処理装置11は、例えばCentral Processing Unit(CPU)や、Graphics Processing Unit(GPU)などを含み、記憶装置12に格納されているプログラムに従って動作する。処理装置11としては、Field Programmable Gate Array(FPGA)が利用されてもよい。記憶装置12は、例えばRead Only Memory(ROM)や、Random Access Memory(RAM)、Hard Disk Drive(HDD)、Solid State Drive(SSD)などを含み、処理装置11で実行されるプログラムや、推定モデルを生成するためのタイヤデータなどが格納されている。処理装置11及び記憶装置12としては、1又は複数のパーソナルコンピュータやサーバーコンピュータなどを利用できる。
【0023】
記憶装置12は、主記憶装置及び補助記憶装置を含む。例えば、主記憶装置はRAMなどの揮発性メモリであり、補助記憶装置は、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、又はハードディスクなどの不揮発性メモリである。
【0024】
表示装置13は、例えば液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイなどであり、記憶装置12に格納されているデータや、出力結果などを表示する。
【0025】
入力装置14は、例えばキーボードやマウスなどといったユーザインタフェースであって、作業者の操作入力を受け付けて、その内容を示す信号を処理装置11に入力する。
【0026】
図2は、本発明に係る製品設計支援システムで実現される機能の一例を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、製品設計支援システム1は、データ記憶部20と、最適仕様探索部30と、を有する。データ記憶部20及び最適仕様探索部30は、処理装置11が記憶装置12に格納されているプログラムを実行することによって実現される。
【0027】
以下では、
図3及び
図4を適宜参照しながら、最初にデータ記憶部20を説明し、その後に最適仕様探索部30を説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る製品設計支援システムの入出力に係るデータの一例を示す図である。
図4は、本発明の実施形態に係る製品設計支援システムの入出力に係るデータの他の一例を示す図である。
図3及び
図4の複数の列のうち、「仕様項目A」から「仕様項目X」までが最適仕様探索部30の入力であり、「合否」から「RRC」までが最適仕様探索部30の出力である。
【0028】
[データ記憶部]
データ記憶部20は、最適仕様探索部30での処理に必要なデータを記憶する。具体的には、データ記憶部20は、仕様データベース21と、分類モデル22と、推定モデル23と、を記憶する。
【0029】
仕様データベース21は、複数の仕様データセット(「仕様データセット1」、「仕様データセット2」等)を格納する。この複数の仕様データセットのそれぞれは、複数の仕様データ(仕様データ1-1」、「仕様データ1-100」等)を含む。本実施形態では、複数の仕様データセットのそれぞれは、100の仕様データを含むものとする。複数の仕様データのそれぞれは、タイヤの仕様を示す複数の仕様項目(「仕様項目A」、「仕様項目B」、「仕様項目X」等)を有する。タイヤの仕様は、タイヤの寸法や、部材の種類、材料、それらの性質(例えば硬さ)、製法などを含む。
【0030】
後に詳述するが、分類モデル22には複数の仕様項目の全部が入力され、推定モデル23にも複数の仕様項目の全部が入力される。以下、分類モデル22に入力される仕様項目を分類用仕様項目(第1の仕様項目)、推定モデル23に入力される仕様項目を推定用仕様項目(第2の仕様項目)という。なお、本実施形態では、分類用仕様項目と推定用仕様項目とは完全に一致するが、推定用仕様項目は分類用仕様項目に含まれるものであってもよい。また、分類用仕様項目と推定用仕様項目とは、一部の項目において重複するものであってもよく、或いは互いに独立した項目であってもよい。
【0031】
複数の仕様項目は、固定項目(「仕様項目A」、「仕様項目B」等)と変動項目(「仕様項目X」)とを含む。固定項目及び変動項目はいずれも分類用仕様項目に含まれる。一方で、推定用仕様項目は少なくとも変動項目を含む。本実施形態では、固定項目にはタイヤの構造に関するパラメータが割り当てられる。具体的には、固定項目には、タイヤ幅やトレッド幅、タイヤ外径、タイヤ断面高さ(セクションハイト)等の各種パラメータが割り当てられる。一方で、後に詳述するが、変動項目にはタイヤのゴム物性に関するパラメータ、具体的にはゴム強度が割り当てられる。勿論、固定項目及び変動項目のそれぞれに割り当てられるパラメータは、タイヤ仕様に関わる種々のパラメータの中からユーザにより適宜選択されてもよい。また、本実施形態では、固定項目は複数の項目であり、変動項目は一の項目である。勿論、固定項目の数及び変動項目の数はいずれも、ユーザにより任意に設定されてよい。
【0032】
複数の仕様データセットのそれぞれにおいて、固定項目の値は、複数の仕様データ間で共通する。すなわち、複数の仕様データセットのそれぞれに含まれる複数の仕様データ間では、固定項目の値は共通している。
図3を用いて説明すると、例えば、「仕様データセット1」に含まれる複数の仕様データのいずれにおいても、「仕様項目A」の値は1、「仕様項目B」の値は30である。
【0033】
また、複数の仕様データセットのそれぞれにおいて、変動項目の値は、仕様データ毎に異なる。具体的には、複数の仕様データセットのそれぞれにおいて、変動項目の値は、複数の仕様データ間で間隔をおいて設定されている。換言すれば、複数の仕様データセットのそれぞれにおいて、複数の値が間隔をおいて設定されている。この間隔は一定でもよいし、一定でなくてもよい。本実施形態では、複数の仕様データセットのそれぞれにおいて、変動項目の値は、複数の仕様データ間で所定量ずつ異なっているものとする。具体的には、複数の仕様データセットのそれぞれにおいて、変動項目の値は、上限値と下限値との間で0.54%ずつ異なっているものとする。
【0034】
ここで、
図5を更に参照しながら、本発明の実施形態における変動項目の値の範囲の設定方法について説明する。
図5は、変動項目として割り当てられたパラメータの実測データの一例を示す図である。
図5に示すように、通常、あるゴムについてゴム強度を複数回測定した場合、得られるゴム強度の値は測定ごとに異なる。すなわち、あるゴムについてのゴム強度の値の実測データは一定のばらつきを有する。
【0035】
本実施形態では、複数の仕様データのそれぞれが有する変動項目の値の範囲は、ゴム強度の値の実測データのばらつきに基づいて算出される。具体的には、複数の仕様データのそれぞれが有する変動項目の値の範囲は、ゴム強度の値の実測データの変動係数に基づいて算出される。例えば、
図5に示すゴム強度の値の実測データでは、平均値は0.56、標準偏差は0.15であるため、変動係数は27%と算出される。よって、変動項目の値の範囲は、上記実測データの平均値0.56の前後27%、すなわち0.41から0.72となる。なお、本実施形態では、ばらつきの指標として変動係数を用いるが、標準偏差等、他のばらつきの指標を用いてもよい。
【0036】
ここで、本発明の発明者らによる検討によれば、変動項目として割り当てられたパラメータは、タイヤの耐久性に影響のあるゴム物性であることが好ましい。具体的には、変動項目として割り当てられたパラメータは、上記のように、ゴム強度がより好ましい。その他、引張強度(TB)や引張深度(EB)、モジュラス(M)等のタイヤの耐久性に影響のあるゴム物性を変動項目に割り当ててよい。
【0037】
本実施形態では、変動項目の値の範囲は、複数の仕様データセット間で共通である。例えば、
図3に示すように、「仕様データセット1」から「仕様データセット4」のいずれにおいても、変動項目の値の範囲は0.41から0.72で共通である。この変動項目の値の範囲は、前述したように、
図5に示すゴム強度の値の実測データの変動係数に基づいて算出されたものである。ここで、本実施形態では変動項目はゴム強度であるから、変動項目の値の範囲が複数の仕様データセット間で共通するということは、「仕様データセット1」から「仕様データセット4」のいずれに対応するタイヤ仕様においても、用いられるゴムの仕様が同じであることを意味する。
【0038】
一方、
図4に示すように、複数の仕様データセット間で変動項目の値の範囲は異なっていてもよい。
図4を参照すると、例えば、「仕様データセット1」では変動項目の値の範囲は0.41から0.72である一方、「仕様データセット2」では変動項目の値の範囲は0.35から0.61である。これは、「仕様データセット1」に対応するタイヤ仕様から「仕様データセット4」に対応するタイヤ仕様の間で、用いられるゴムの仕様が互いに異なることを意味する。このように複数の仕様データセット間で変動項目の値の範囲を異ならせることにより、タイヤ仕様のうち、変動項目として割り当てられたパラメータ(本実施形態ではゴム強度)についても最適化を行うことができる。
【0039】
ところで、複数の仕様データセットのそれぞれは、その仕様データセットに含まれる複数の仕様データのいずれかに対応する仕様を示すものである。具体的には、複数の仕様データセットのそれぞれは、代表仕様データRD(その仕様データセットを代表する一の仕様データ)に対応する仕様を示す。
図3に示すように、代表仕様データRDとは、その変動項目の値が、ゴム強度の値の実測データの平均値である仕様データを指す。つまり、一の仕様データセットは一の仕様と対応している。後に詳述するが、最適仕様探索部30は、複数の仕様データセットの中から、最適仕様に対応する仕様データセットを探索する。なお、代表仕様データRDの変動項目の値は、ゴム強度の値の実測データの中央値等、平均値以外の代表値であってもよい。
【0040】
ここからは、
図2に戻り、データ記憶部20に記憶される分類モデル22及び推定モデル23について説明する。データ記憶部20は、最適仕様探索部30において用いられる分類モデル22のプログラム(パラメータ)等を記憶する。
【0041】
以下では、
図6を更に参照しながら、分類モデル22の詳細について説明する。
図6は、本発明の実施形態に係る製品設計支援システムに用いられる分類モデルを学習するための教師データの基となるデータを示す図である。
図6に示すデータは、タイヤの第1の性能を示すとともに上限値を有する性能評価値がその上限値(合格基準値)に達した時点で測定を終えるような性能試験により得られたデータである。性能評価値は、タイヤ性能を示す値であり、例えば、タイヤの耐久性を示す数値(例えば、走行可能距離や耐久時間)や、タイヤの強度を示す値である。本実施形態では、性能評価値はタイヤの耐久性を示す値である。つまり、本実施形態では、第1の性能とはタイヤの耐久性である。性能評価値として耐久時間を例に、上記性能試験について具体的に説明する。すなわち、耐久時間は、例えば、タイヤに負荷をかけている状態で、タイヤにクラックやセパレーションなどの損傷が発生するまでの時間である。上記性能試験は、このような損傷が発生するまでの時間を測定するものであり、合格基準値である合格基準時間に達した時点で終了される。
【0042】
ここで、分類モデル22は、複数の分類用仕様項目と、性能評価値が上限値以上である第1のクラス及び性能評価値が上限値未満である第2のクラスを含む複数のクラスのいずれかと、が対応づけられた教師データを利用した学習により生成されたものである。分類モデル22は、入力された複数の分類用仕様項目に基づいて、その複数の分類用仕様項目のそれぞれに対応する仕様が(すなわち、その複数の分類用仕様項目のそれぞれに対応する仕様データが)複数のクラスのいずれに属するかについての分類結果を出力する機械学習モデルである。本実施形態では、複数のクラスは、性能評価値が合格基準値以上である合格クラスと、性能評価値が合格基準値未満である不合格クラスと、からなる。すなわち、本実施形態では、分類モデル22は、複数の分類用仕様項目と、合格クラス又は不合格クラスのいずれかと、が対応づけられた教師データを利用した学習により生成されたものである。分類モデル22としては、サポートベクターマシンや決定木、ニューラルネットワーク等、種々の汎用モデルが利用可能である。なお、クラスの表現は、
図3に示したような「OK・NG」、あるいは「○・×」等のような言語的・記号的表現に限られず、「1・0」等の数値的表現であってもよい。
【0043】
また、データ記憶部20は、最適仕様探索部30において用いられる推定モデル23のプログラム(パラメータ)等を記憶する。
【0044】
推定モデル23は、推定用仕様項目と、タイヤの第2の性能を示す性能評価情報と、が対応づけられた教師データを利用した学習により生成されたものである。推定モデル23は、入力された推定用仕様項目に基づいて、その推定用仕様項目について(つまり、その推定用仕様項目に対応する仕様データについて)性能評価情報を出力する機械学習モデルである。本実施形態では、性能評価情報はタイヤの第2の性能を示す性能評価値である。より具体的には、性能評価情報は、タイヤの転がり抵抗係数(RRC)である。性能評価情報は、RRCのほか、縦(横)バネ、コーナリングパワー等であってもよい。また、本実施形態では、推定モデル23が出力する性能評価情報は一つであるが、推定モデル23は複数の性能評価情報を出力してもよい。さらに、本実施形態では、推定モデル23は回帰モデルであり、ニューラルネットワークやランダムフォレスト等の種々の汎用モデルが利用可能である。なお、推定モデル23は分類モデルであってもよい。その場合、性能評価情報は、前述の分類モデル23が出力する情報と同様のものであってよい。例えば、性能評価情報は、RRCが合格基準値以上であるか否かの判断に関するものであってよい。
【0045】
[最適仕様探索部]
最適仕様探索部30は、複数の仕様データセットのそれぞれに対応する仕様の中から最適なものを探索するものである。
【0046】
以下に説明する本実施形態に係る最適仕様探索部30によれば、複数の分類用仕様項目と、性能評価値が上限値以上である第1のクラス及び性能評価値が上限値未満である第2のクラスを含む複数のクラスのいずれかと、が対応づけられた教師データを利用した学習により生成された分類モデル22を用いても、複数の仕様データセット間でロバスト評価値を比べることにより、最適な仕様を容易に絞り込むことができる。
【0047】
また、本実施形態に係る最適仕様探索部30によれば、上記ロバスト評価値の比較のみでは最適な仕様を一意に絞り込むことが難しい場合であっても、推定部34にて推定した性能評価情報も考慮するので、最適な仕様を容易に絞り込むことができる。
【0048】
最適仕様探索部30は、仕様データセット取得部31と、分類部32と、ロバスト評価値算出部33と、推定部34と、選択部35と、を有する。以下、これらのそれぞれについて詳細に説明する。
【0049】
[仕様データセット取得部]
仕様データセット取得部31は、仕様データベース21から仕様データセットを取得する。詳細には、仕様データセット取得部31は、仕様データベース21から複数の仕様データセットを取得する。
【0050】
[分類部]
分類部32は、複数の仕様データのそれぞれが有する複数の分類用仕様項目を分類モデル22に入力し、複数の仕様データのそれぞれが複数のクラスのいずれに属するか分類する。詳細には、分類部32は、複数の仕様データセットのそれぞれに含まれる複数の仕様データのそれぞれが有する複数の分類用仕様項目を分類モデル22に入力し、複数の仕様データのそれぞれが複数のクラスのいずれに属するか分類する。本実施形態では、分類部32は、複数の仕様データのそれぞれが有する複数の分類用仕様項目を分類モデル22に入力し、複数の仕様データのそれぞれが合格クラス又は不合格クラスのいずれに属するか分類する。
【0051】
[ロバスト評価値算出部]
ロバスト評価値算出部33は、分類部32が分類した結果に基づいて、仕様データセットについてロバスト評価値を算出する。詳細には、ロバスト評価値算出部33は、分類部32が分類した結果に基づいて、複数の仕様データセットのそれぞれについてロバスト評価値を算出する。具体的には、ロバスト評価値算出部33は、合格クラスに属する仕様データの数に基づいて、仕様データセットについてロバスト評価値を算出する。より具体的には、合格クラスに属する仕様データの数を総合した値がロバスト評価値となる。本実施形態では、ロバスト評価値算出部33は、合格クラスに属する仕様データの数を合計した値をロバスト評価値として算出する。その仕様データセットに含まれる複数の仕様データ全体に対する、合格クラスに属する仕様データの割合であってもよい。要は、ロバスト評価値算出部33は、複数の仕様データセットのそれぞれについて、合格クラスに属する仕様データが多いほど高い値を示す値をロバスト評価値として算出するものであればよい。
【0052】
ロバスト評価値は、複数の仕様データ間における変動項目の値の違いに対する、複数の仕様データのそれぞれについての分類結果のロバスト性を示すものであると言える。すなわち、複数の仕様データセットのそれぞれについてロバスト評価値が高いほど、複数の仕様データ間における変動項目の値の違いによらず、その仕様データセットに係る複数の仕様データのそれぞれについて合格クラスであると分類されやすいことを意味する。
【0053】
[推定部]
推定部34は、複数の仕様データのいずれかに対応する仕様を示す推定用仕様項目を推定モデル23に入力し、仕様データセットについてRRC(性能評価情報)を推定する。詳細には、推定部34は、複数の仕様データのいずれかに対応する仕様を示す推定用仕様項目を推定モデル23に入力し、複数の仕様データセットのそれぞれについてRRCを推定する。本実施形態では、複数の仕様データのいずれかに対応する仕様は、代表仕様データRDである。すなわち、推定部34は、より具体的には、複数の仕様データセットのそれぞれに含まれる代表仕様データRDが有する推定用仕様項目を推定モデル23に入力し、その仕様データセットについてRRCを推定する。
【0054】
[選択部]
選択部35は、ロバスト評価値算出手段33が算出したロバスト評価値に基づいて、複数の仕様データセットから一以上の仕様データセットを選択する。具体的には、選択部35は、複数の仕様データセットの中から、ロバスト評価値が最も高い仕様データセットを選択する。本実施形態では、選択部35は、ロバスト評価値に加えて、推定部34が推定したRRCに基づいて、複数の仕様データセットから一以上の仕様データセットを選択する。具体的には、選択部35は、複数の仕様データセットの中から、ロバスト評価値及びRRCが最も高い仕様データセットを選択する。
【0055】
[最適仕様探索部が実行する処理の一例]
ここからは、
図7を用いて、最適仕様探索部30が実行する処理の一例について説明する。
図7は、最適仕様探索部が実行する処理の一例を示すフロー図である。
【0056】
まず、仕様データセット取得部31は、仕様データセットを取得する(S10)。
【0057】
分類部32は、取得された仕様データセットに含まれる複数の仕様データのそれぞれが有する複数の分類用仕様項目を分類モデル22に入力し、前記複数の仕様データのそれぞれが複数のクラスのいずれに属するか分類する(S11)。
【0058】
ロバスト評価値算出手段33は、分類部32が分類した結果に基づいて、取得された仕様データセットについてロバスト評価値を算出する(S12)。
【0059】
続いて、推定部34は、複数の仕様データのいずれかに対応する仕様を示す推定用仕様項目を推定モデル23に入力し、取得された仕様データセットについて性能評価情報を推定する(S13)。
【0060】
最適仕様探索部30は、S10からS13までの処理を、全ての仕様データセットについて実行する(S14;No)。
【0061】
最適仕様探索部30が、S10からS13までの処理を、全ての仕様データセットについて実行し終えると(S14;Yes)、選択部35は、ロバスト評価値及び性能評価情報に基づいて、複数の仕様データセットから一以上の仕様データセットを選択する(S15)。
【0062】
最適仕様探索部30は、選択した仕様データセットを最適解として出力し、処理を終了する(S16)。なお、選択部35が選択した仕様データセットのロバスト評価値及び性能評価情報が所定の閾値未満である場合、S10からS15の処理を再度繰り返してもよい。また、選択部35が複数の仕様データセットから2以上の仕様データセットを選択した場合、選択される仕様データセットの数が一つになるまで、S10からS15の処理を繰り返してもよい。
【0063】
[変動項目の値の範囲設定に係る処理の一例]
図8を用いて、変動項目の値の範囲設定に係る処理の一例について説明する。
図8は、変動項目の値の範囲設定に係る処理の一例を示すフロー図である。
【0064】
最適仕様探索部30は、変動項目として割り当てられたパラメータの実測データを取得する(S20)。最適仕様探索部30は、上記実測データのばらつきを算出する(S21)。最適仕様探索部30は、算出したばらつきに基づいて、変動項目の値の範囲を算出する(S22)。
【0065】
[変形例]
先に説明した実施形態では、分類モデル22は2値分類、すなわち合否判定を行うものであったが、
図9に示すように、分類モデル22は3値以上の多値分類を行うものであってもよい。
【0066】
このように分類モデル22が多値分類を行うものであれば、2値分類の場合に比べ、詳細にロバスト評価値を算出することができるため、最適仕様をより少数に絞ることができる。
【0067】
図9に示すように、本変形例では、複数のクラスは、性能評価値が上限値以上である第1のクラスと、性能評価値が上限値未満であるとともに第1の値以上である第2のクラスと、性能評価値が第1の値未満であるとともに第2の値以上である第3のクラスと、からなる。すなわち、分類モデル22は、複数の分類用仕様項目と、第1のクラス、第2のクラス又は第3のクラスのいずれかと、が対応づけられた教師データを利用した学習により生成されたものである。したがって、本変形例では、分類部32は、複数の仕様データのそれぞれが有する複数の分類用仕様項目を分類モデル22に入力し、複数の仕様データのそれぞれが第1のクラス、第2のクラス又は第3のクラスのいずれに属するか分類する。
【0068】
本変形例では、ロバスト評価値算出部33が算出するロバスト評価値は、第1のクラスに属する仕様データが多いほど高い値を示すとともに、第2のクラスに属する仕様データが多いほど高い値を示す。具体的には、複数の仕様データセットのそれぞれについて、第1のクラスに属する仕様データの数に第1のクラスに対応する値(「2」)で重み付けした値と、第2のクラスに属する仕様データの数に第2のクラスに対応する値(「1」)で重み付けした値と、第3のクラスに属する仕様データの数に第3のクラスに対応する値(「0」)で重み付けした値と、を合計した値がロバスト評価値となる。より具体的には、複数の仕様データセットのそれぞれについて、第1のクラスに属する仕様データの数に第1のクラスに対応する値(「2」)を乗じて得られる値と、第2のクラスに属する仕様データの数に第2のクラスに対応する値(「1」)を乗じて得られる値と、第3のクラスに属する仕様データの数に第3のクラスに対応する値(「0」)を乗じて得られる値と、を合計した値がロバスト評価値となる。なお、クラスの表現は、
図9に示したような数値的表現(「2・1・0」等)に限られず、言語的・記号的表現(「A・B・C」、「○・△・×」等)であってもよい。
【0069】
以上に説明した本発明の実施形態に係る製品設計支援システム、製品設計支援方法及び製品設計支援プログラムによれば、複数の第1の仕様項目と、製品の第1の性能を示す性能評価値が上限値以上である第1のクラス及び性能評価値が上限値未満である第2のクラスを含む複数のクラスのいずれかと、が対応づけられた教師データを利用した学習により生成された分類モデルを用いても、最適な仕様を容易に絞り込むことができる。
【符号の説明】
【0070】
1 製品設計支援システム、 11 処理装置、12 記憶装置、13 表示装置、14 入力装置、20 データ記憶部、21 仕様データベース、22 分類モデル、23 推定モデル、30 最適仕様探索部、31 仕様データセット取得部、32 分類部、33 ロバスト評価値算出部、34 推定部、35 選択部、RD 代表仕様データ。