(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055116
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】加工条件設定装置および工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 15/00 20060101AFI20240411BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240411BHJP
B24B 47/26 20060101ALI20240411BHJP
B24B 49/03 20060101ALI20240411BHJP
G05B 19/4155 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B23Q15/00 301H
B23Q17/00 Z
B24B47/26
B24B49/03 Z
G05B19/4155 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161770
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】疋田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】磯村 和秀
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C269
【Fターム(参考)】
3C029EE00
3C034AA20
3C034DD20
3C269AB01
3C269AB07
3C269BB03
3C269EF66
3C269EF69
3C269MN44
(57)【要約】
【課題】工作物の加工点の剛性が不明な場合でも、工作物の加工条件を設定可能な加工条件設定装置および工作機械を提供する。
【解決手段】既存工作物の既存加工条件に関する情報を取得する既存加工条件取得部50と、前記既存工作物の情報を取得する既存工作物情報取得部51と、対象工作物Wの第一加工点P1における前記既存加工条件に関する情報と、前記第一加工点P1における前記既存加工精度または前記既存加工精度規格に関する情報と、前記対象工作物Wの形状と、に基づいて、第二加工点P2における第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を算出する第二加工点第一推定剛性値算出部52と、前記第二加工点第一推定剛性値R1(P2)に基づいて、前記対象工作物Wの前記第二加工点P2に対する加工条件である第二加工点加工条件を算出する第二加工点加工条件算出部53と、を備える、加工条件設定装置5。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既に加工された既存工作物を加工したときの既存加工条件に関する情報を取得する既存加工条件取得部と、
前記既存工作物の既存加工精度または前記既存工作物に要求される既存加工精度規格に関する情報を取得する既存工作物情報取得部と、
加工対象の対象工作物の複数の加工点のうちの第一加工点における前記既存加工条件に関する情報と、前記第一加工点における前記既存加工精度または前記既存加工精度規格に関する情報と、前記対象工作物の形状と、に基づいて、前記複数の加工点のうちの前記第一加工点とは異なる第二加工点において所定加工力と変形量との関係を表す第二加工点第一推定剛性値を算出する第二加工点第一推定剛性値算出部と、
前記第二加工点第一推定剛性値に基づいて、前記対象工作物の前記第二加工点に対する加工条件である第二加工点加工条件を算出する第二加工点加工条件算出部と、
を備える、加工条件設定装置。
【請求項2】
前記第二加工点第一推定剛性値は、前記第二加工点における取りうる推定剛性範囲のうち下限値であり、
さらに、前記第二加工点における前記既存加工条件に関する情報と、前記第二加工点における前記既存加工精度または前記既存加工精度規格に関する情報と、前記対象工作物の形状と、に基づいて、前記第二加工点における前記所定加工力と変形量との関係を表し取りうる推定剛性範囲のうち下限値である第二加工点第二推定剛性値を算出する第二加工点第二推定剛性値算出部、を備え、
前記第二加工点加工条件算出部は、
前記第二加工点第一推定剛性値が前記第二加工点第二推定剛性値より大きい場合に、前記第二加工点第一推定剛性値を用いて前記対象工作物の前記第二加工点に対する加工条件である第二加工点加工条件を算出し、
前記第二加工点第二推定剛性値が前記第二加工点第一推定剛性値より大きい場合に、前記第二加工点第二推定剛性値を用いて前記対象工作物の前記第二加工点に対する加工条件である第二加工点加工条件を算出する、請求項1に記載の加工条件設定装置。
【請求項3】
さらに、前記第一加工点における前記既存加工条件に関する情報と、前記第一加工点における前記既存加工精度または前記既存加工精度規格に関する情報と、前記対象工作物の形状と、に基づいて、前記第一加工点において前記所定加工力と変形量との関係を表す第一加工点推定剛性値を算出する第一加工点推定剛性値算出部、を備え、
前記第二加工点第一推定剛性値算出部は、前記第一加工点推定剛性値と前記対象工作物の形状とに基づいて、前記第二加工点第一推定剛性値を算出する、請求項2に記載の加工条件設定装置。
【請求項4】
さらに、記憶装置と、演算処理装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記対象工作物の加工条件に関する情報、前記対象工作物に要求される加工仕様に関する情報、および前記対象工作物の剛性値を含む対象工作物情報を格納可能に構成されており、
前記演算処理装置は、
前記対象工作物の加工条件に関する情報、前記対象工作物に要求される加工仕様に関する情報、および前記対象工作物の剛性値を含む対象工作物情報に基づいて前記対象工作物の対象加工条件を算出する対象加工条件算出部を備え、
前記記憶装置に前記対象工作物情報が格納されているときは、前記対象工作物情報を取得し、前記対象工作物情報に基づいて前記対象加工条件算出部に前記対象加工条件を算出させ、
前記記憶装置に前記対象工作物情報が格納されていないときは、
前記既存加工条件取得部に前記既存加工条件に関する情報を取得させ、
前記既存工作物情報取得部に前記既存加工精度または前記既存加工精度規格に関する情報を取得させ、
前記第二加工点第一推定剛性値算出部に前記第二加工点第一推定剛性値を算出させ、
前記第二加工点加工条件算出部に前記第二加工点加工条件を算出させる、
請求項1に記載の加工条件設定装置。
【請求項5】
前記第二加工点第一推定剛性値算出部は、前記既存加工精度規格の上限から下限の間に含まれる任意の値を採用して前記第二加工点第一推定剛性値を算出する、請求項1に記載の加工条件設定装置。
【請求項6】
さらに、第一知識モデル、および第二知識モデルを格納する知識モデル記憶装置を備え、
前記第一知識モデルは、前記複数の加工点のそれぞれにおいて、前記既存加工条件と、前記既存加工精度または前記既存加工精度規格に関する情報と、を入力因子とし、前記所定加工力と変形量との関係を表す第二加工点第一推定剛性値または第一加工点推定剛性値を出力因子とし、
前記第二知識モデルは、前記第二加工点第一推定剛性値を入力因子とし、前記第二加工点加工条件を出力因子とし、
前記第二加工点第二推定剛性値算出部および前記第一加工点推定剛性値算出部は、前記第一知識モデルを用い、
前記第二加工点加工条件算出部は、前記第二知識モデルを用いる、請求項3に記載の加工条件設定装置。
【請求項7】
さらに、
前記対象工作物の前記第二加工点第一推定剛性値と、前記第二加工点加工条件に基づいて加工された加工済み対象工作物の形状と、に基づいて、前記対象工作物を加工した加工装置の工作物支持剛性値を算出する工作物支持剛性値算出部と、
前記対象工作物と異なる新規対象工作物の形状および材質に関する新規対象工作物情報を取得する新規対象工作物情報取得部と、
前記工作物支持剛性値、および前記新規対象工作物情報に基づいて、前記新規対象工作物の加工点において所定加工力と変形量との関係を表す新規加工点推定剛性値を算出する新規加工点推定剛性値算出部と、
前記新規加工点推定剛性値に基づいて、前記新規対象工作物の加工条件である新規対象加工条件を算出する新規対象加工条件算出部と、
を備えた請求項1に記載の加工条件設定装置。
【請求項8】
前記新規加工点推定剛性値は、前記新規対象工作物における取りうる推定剛性範囲のうち下限値である、請求項7に記載の加工条件設定装置。
【請求項9】
さらに、第三知識モデル、および第四知識モデルを格納する知識モデル記憶装置を備え、
前記第三知識モデルは、前記工作物支持剛性値、および前記新規対象工作物情報を入力因子とし、前記新規加工点推定剛性値を出力因子とし、
前記第四知識モデルは、前記新規加工点推定剛性値を入力因子とし、前記新規対象加工条件を出力因子とし、
前記新規加工点推定剛性値算出部は、前記第三知識モデルを用い、
前記新規対象加工条件算出部は、前記第四知識モデルを用いる、請求項7に記載の加工条件設定装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の加工条件設定装置を備えた、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工条件設定装置および工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械を用いて工作物を加工する場合、工作物の加工点における剛性に基づいて加工条件を設定することにより、工作物の加工精度を向上させることができる。特許文献1(特開2013-71204号公報)には、工作物の研削部位の正確な撓みを研削中に測定し、測定された撓み量と研削抵抗とを用いて、研削点(加工点の一例)における正確な剛性を測定する方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
様々な加工仕様に基づいて工作物を加工する状況において、工作物の加工時に、加工点の剛性に関する正確な情報が常に入手できるとは限らない。また、工作物の形状や、加工条件によっては、加工点の剛性を正確に計測することができない場合もありうる。
【0005】
例えば、複雑な加工仕様や、新しい条件で工作物を加工する場合には、加工点の剛性に関する情報がまったく無い状態で工作物を加工しなければならないことがありうる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、工作物の加工点の剛性が不明な場合でも、工作物の加工条件を設定可能な加工条件設定装置および工作機械を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
既に加工された既存工作物を加工したときの既存加工条件に関する情報を取得する既存加工条件取得部と、
前記既存工作物の既存加工精度または前記既存工作物に要求される既存加工精度規格に関する情報を取得する既存工作物情報取得部と、
加工対象の対象工作物の複数の加工点のうちの第一加工点における前記既存加工条件に関する情報と、前記第一加工点における前記既存加工精度または前記既存加工精度規格に関する情報と、前記対象工作物の形状と、に基づいて、前記複数の加工点のうちの前記第一加工点とは異なる第二加工点において所定加工力と変形量との関係を表す第二加工点第一推定剛性値を算出する第二加工点第一推定剛性値算出部と、
前記第二加工点第一推定剛性値に基づいて、前記対象工作物の前記第二加工点に対する加工条件である第二加工点加工条件を算出する第二加工点加工条件算出部と、
を備える、加工条件設定装置にある。
【0008】
本発明の他の態様は、
上記の加工条件設定装置を備えた、工作機械にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、対象工作物の加工点の剛性値が不明な場合でも、加工対象の対象工作物の複数の加工点のうちの第一加工点における既存加工条件に関する情報と、第一加工点における前記既存加工精度または前記既存加工精度規格に関する情報と、対象工作物の形状と、に基づいて、第一加工点とは異なる第二加工点における第二加工点第一推定剛性値を算出することができる。この第二加工点第一推定剛性値に基づいて対象工作物の第二加工点に対する加工条件である第二加工点加工条件を算出することができる。
【0010】
本発明の他の態様によれば、工作機械において、対象工作物の加工点の剛性値が不明な場合でも、対象工作物の第二加工点に対する加工条件である第二加工点加工条件を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1の加工条件設定システムを示すブロック図。
【
図3】実施形態1の対象工作物が加工装置の支持された状態を示す一部拡大平面図。
【
図4】
図3において、対象工作物が変形した状態を示す一部拡大平面図。
【
図5】対象工作物の各円板部の剛性値の関係を示す図。
【
図6】実施形態1の加工条件設定の概要を説明する図であって、実施形態1の対象工作物の第一加工点および第二加工点における、真の剛性値および第二加工点第一推定剛性値を示すグラフ。
【
図7】実施形態1の加工条件設定装置を示すブロック図。
【
図8】実施形態1の加工条件設定装置の動作を示すフローチャート。
【
図9】実施形態2の加工条件設定の概要を説明する図であって、実施形態2の対象工作物の第一加工点および第二加工点における、真の剛性値、並びに、第一加工点推定剛性値および第二加工点第一推定剛性値を示すグラフ。
【
図10】実施形態2の加工条件設定装置を示すブロック図。
【
図11】実施形態2の加工条件設定装置の動作を示すフローチャート。
【
図12】実施形態3の加工条件設定の概要を説明する図であって、実施形態3の対象工作物の第一加工点および第二加工点において、真の剛性値と、第一加工点推定剛性値と、第二加工点第一推定剛性値と、第二加工点第二推定剛性値と、を示すグラフであって、第二加工点第一推定剛性値が第二加工点第二推定剛性値よりも大きい場合を示すグラフ。
【
図13】実施形態3の加工条件設定の概要を説明する図であって、実施形態3の対象工作物の第一加工点および第二加工点において、真の剛性値と、第一加工点推定剛性値と、第二加工点第一推定剛性値と、第二加工点第二推定剛性値と、を示すグラフであって、第二加工点第一推定剛性値が第二加工点第二推定剛性値よりも大きくない場合を示すグラフ。
【
図14】実施形態3の加工条件設定装置を示すブロック図。
【
図15】実施形態3の第二知識モデルを示すネットワーク図。
【
図16】実施形態3の加工条件設定装置の動作を示すメインルーチンを示すフローチャート。
【
図17】実施形態3の剛性値推定処理の動作を示すフローチャート。
【
図18】実施形態3の加工条件算出処理の動作を示すフローチャート。
【
図19】実施形態4の加工条件設定装置を示すブロック図。
【
図20】実施形態4の新規対象工作物が加工装置に支持されている状態を示す一部拡大平面図。
【
図21】実施形態4の新規対象加工条件算出処理の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
1-1.加工条件設定システム1の構成
実施形態1の加工条件設定システム1の構成について
図1を参照して説明する。加工条件設定システム1は、工作物を加工する機械加工分野に適用される。機械加工分野には、例えば、切削加工、研削加工、放電加工、プレス加工などが含まれる。本形態に係る加工条件設定システム1は、機械加工分野において、工作物の加工点の剛性が不明な場合に、工作物の加工条件を設定可能なシステムである。
【0013】
加工条件設定システム1は、
図1に示すように、入力装置2と、データベース3と、表示装置4と、加工条件設定装置5と、複数の加工装置6と、を備える。加工条件設定装置5は、複数の加工装置6とネットワークを構成する。つまり、複数の加工装置6と加工条件設定システム1とは、相互に通信可能に構成されている。加工装置6は、例えば、研削盤、旋盤、マシニングセンタ、フライス盤、歯車加工機、ボーリング加工機などである。本形態では研削盤を例にして説明する。
【0014】
1-2.加工装置6
本形態に係る加工装置6について、
図2を参照して説明する。本形態においては、加工装置6として研削盤を例に説明する。ただし、加工装置6は研削盤に限られず、旋盤、マシニングセンタ、フライス盤、歯車加工機、ボーリング加工機等、任意の加工機を適宜に選択できる。
【0015】
加工装置6は、中心線Cを中心にして、加工対象である対象工作物Wを回転させ、回転体である工具としての砥石車16を回転させ、かつ、砥石車16を対象工作物Wに対して対象工作物Wの軸線に交差する方向に相対的に接近させることにより、対象工作物Wの外周面または内周面を研削する。加工装置6は、テーブルトラバース型の研削盤、砥石台トラバース型の研削盤などを適用可能である。また、加工装置6は、円筒研削盤、カム研削盤等を適用可能である。
【0016】
本形態においては、対象工作物Wは、例えば、軸状に形成された部材とし、対象工作物Wの外周面が被加工部である場合を例にあげる。ただし、対象工作物Wの形状は、軸状に限られず、内周面を有する筒状など、任意の形状とすることができる。対象工作物Wが筒状である場合は対象工作物Wの内周面を被加工部とすることができる。
【0017】
加工装置6の構成について、
図2を参照して説明する。本形態においては、加工装置6は、砥石台トラバース型のカム研削盤を例にあげる。ただし、加工装置6は、テーブルトラバース型を適用することもできる。加工装置6は、主として、ベッド11、主軸台12、心押台13、トラバースベース14、砥石台15、砥石車16、定寸装置17、砥石車修正装置18及びクーラント装置19を備える。
【0018】
ベッド11は、設置面上に固定されている。主軸台12は、ベッド11の上面において、X軸方向の手前側(
図2の下側)且つZ軸方向の一端側(
図2の左側)に設けられている。主軸台12は、対象工作物Wを、中心線Cを中心としてZ軸回りに回転可能に支持する。対象工作物Wは、主軸台12に設けられたモータ12aの駆動により回転される。心押台13は、ベッド11の上面において、主軸台12に対してZ軸方向に対向する位置、すなわち、X軸方向の手前側(
図2の下側)且つZ軸方向の他端側(
図2の右側)に設けられている。つまり、主軸台12および心押台13が、対象工作物Wを回転可能に両端支持する。
【0019】
図2に示すように、トラバースベース14は、ベッド11の上面において、Z軸方向に移動可能に設けられている。トラバースベース14は、ベッド11に設けられたモータ14aの駆動により移動する。砥石台15は、トラバースベース14の上面において、X軸方向に移動可能に設けられている。砥石台15は、トラバースベース14に設けられたモータ15aの駆動により移動する。砥石車16は、砥石台15に回転可能に支持されている。砥石車16は、砥石台15に設けられたモータ16aの駆動により回転する。砥石車16は、複数の砥粒をボンド材により固定されて構成されている。
【0020】
定寸装置17は、対象工作物Wの寸法(径)を測定する。定寸装置17により、対象工作物Wにおける実切込み量を取得するための検出器20として機能する。
【0021】
砥石車修正装置18は、砥石車16の形状を修正する。砥石車修正装置18は、砥石車16のツルーイングを行う装置である。砥石車修正装置18は、ツルーイングに加えて、または、ツルーイングに代えて、砥石車16のドレッシングを行う装置としてもよい。さらに、砥石車修正装置18は、砥石車16の寸法(径)を測定する機能も有する。
【0022】
ここで、ツルーイングは、形直し作業であり、研削によって砥石車16が摩耗した場合に対象工作物Wの形状に合わせて砥石車16を成形する作業、片摩耗によって砥石車16の振れを取り除く作業等である。ドレッシングは、目直し(目立て)作業であり、砥粒の突き出し量を調整したり、砥粒の切れ刃を創成したりする作業である。ドレッシングは、目つぶれ、目詰まり、目こぼれ等を修正する作業であって、通常ツルーイング後に行われる。
【0023】
クーラント装置19は、クーラントノズルから砥石車16による対象工作物Wの研削点にクーラントを供給する。クーラント装置19は、回収したクーラントを、所定温度に冷却して、再度研削点に供給する。クーラント装置19は、クーラントの流量や供給タイミングの調整が可能となっている。なお、
図2において、符号19はクーラントノズルの位置を図示する。また、図示しないが、検出器20として、回収したクーラントの温度を取得する温度センサが備えられていてもよい。
【0024】
1-3.対象工作物W
対象工作物Wの例について
図3を参照して説明する。
図3に示すように、対象工作物Wは、Z軸方向に長軸な円柱状をなす軸部30と、軸部30に配置された複数(本形態では4つ)の円板部31~34と、を備える。複数の円板部31~34は、
図3において左側から順に、第一円板部31、第二円板部32、第三円板部33および第四円板部34とされる。第一~第四円板部31~34は同形同大である。第一~第四円板部31~34は、相互に同軸上に配置されており、軸部30と同軸上に配置されている。
【0025】
第一~第四円板部31~34のうち、砥石車16と接触して砥石車16によって研削される部分(外周面)が加工点となる。
図3においては、第二円板部32の外周面に砥石車16が接触している状態が記載されている。ただし、加工点の個数は限定されず、1つの対象工作物Wは2~3個、または5個以上の加工点を備えていてもよい。
【0026】
次に、対象工作物Wの第一~第四円板部31~34のうちの1つの外周面が砥石車16によって研削される場合について
図4を参照して説明する。
図4においては、第二円板部32が研削される場合を図示する。
図4において破線で示すように、対象工作物Wの第二円板部32は、砥石車16にX軸方向から所定加工力Fで押圧されることにより、X軸方向についてδxだけ撓み変形する。ただし、
図4においては、撓み変形量を強調して記載している。
【0027】
対象工作物Wは、対象工作物Wの軸方向において、主軸台12と心押台13とに挟持されている。これにより、対象工作物Wのうち、Z軸方向の両端部寄りに位置する第一円板部31および第四円板部34は撓み変形しにくく、Z軸方向の中央寄りの位置する第二円板部32および第三円板部33は撓み変形しやすい。換言すると、第一円板部31および第四円板部34の剛性値は、第二円板部32および第三円板部33の剛性値よりも大きい。剛性値は、対象の円板部を所定加工力Fで押圧した場合に、対象の円板部の変形量がδxである場合において、加工力Fを変形量δxで除した商をいう。つまり、剛性値が大きいほど変形量δxが小さくなり、剛性値が小さいほど変形量δxが大きくなる。
【0028】
第一~第四円板部31~34の剛性値について
図5を参照して説明する。第一~第四円板部31~34の剛性値は、対象工作物Wの材質および形状等の影響を受ける。また、第一~第四円板部31~34の剛性値は、対象工作物Wにおける支持位置の影響を受ける。
図5に示すように、第一円板部31および第四円板部34は、対象工作物Wの端部寄りに位置しており、対象工作物Wを支持する主軸台12および心押台13に近いため、相対的に剛性値が大きくなる。一方、第二円板部32および第三円板部33は、対象工作物Wの中央寄りに位置しており、主軸台12および心押台13から遠いため、第一円板部31および第四円板部34よりも剛性値が小さくなる。
【0029】
さらには、第一~第四円板部31~34の剛性値は、対象工作物Wを支持する構造(センタ、チャックなど)の影響を受ける。さらに、第一~第四円板部31~34の剛性値は、加工装置6の剛性の影響を受ける。加工装置6の剛性としては、主軸台12の剛性、心押台13の剛性、砥石車16の剛性、ベッド11の剛性などが例示される。また、対象工作物Wに対してレスト(図示せず)を接触させる場合には、レストの剛性の影響も受ける。
【0030】
1-4.加工条件設定の概要
本形態の加工条件設定の概要について、
図6を参照して説明する。
図6には、横軸に、第一加工点P1および第二加工点P2の、対象工作物WにおけるZ軸方向の位置を示し、縦軸に、第一加工点P1および第二加工点P2の剛性値を示す。
【0031】
本形態においては、第一~第四円板部31~34の中から選択された1つを、基準加工位置としての第一加工点P1し、第一~第四円板部31~34の残りの中から選択された1つを、加工条件算出対象としての第二加工点P2とする。第一加工点P1と第二加工点P2とは、異なる位置に設定されている。説明を容易にするために、以下においては、第一円板部31を第一加工点P1とし、第二円板部32を第二加工点P2とする場合を例にあげる。従って、第一加工点P1の剛性値が、第二加工点P2の剛性値よりも大きな値を示す。
【0032】
本形態においては、第二加工点P2の加工条件の設定は、以下のように行う。まず、第一加工点P1に関する情報I(P1)を用いて、第二加工点P2の推定剛性値R1(P2)(以下、「第二加工点第一推定剛性値」と称する)を算出する。第二加工点第一推定剛性値R1(P2)は、既存工作物における第一加工点P1における既存加工条件に関する情報と、第一加工点P1における既存加工精度または既存加工精度規格に関する情報と、対象工作物Wの形状と、に基づいて、算出される。
【0033】
続いて、算出された第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を用いて、第二加工点P2の加工条件を設定する。なお、本形態においては、第一加工点P1の推定剛性値を算出しない。
【0034】
既存工作物は、既に加工された工作物であって、対象工作物Wと同じ材質であり、且つ同じ形状である。対象工作物Wは、これから加工を行う対象の工作物であって、加工条件が決定されていない工作物である。
【0035】
1-5.加工条件設定装置5の構造
加工条件設定装置5について
図7を参照して説明する。
図7に示すように、加工条件設定装置5は、既存加工条件取得部50と、既存工作物情報取得部51と、第二加工点第一推定剛性値算出部52と、第二加工点加工条件算出部53と、を備える。
【0036】
既存加工条件取得部50は、データベース3から、既に加工された既存工作物を加工したときの既存加工条件に関する情報を取得する。既存加工条件取得部50は、既存工作物の第一加工点P1における既存加工条件に関する情報を取得すればよい。ただし、既存加工条件取得部50は、入力装置2から既存加工条件に関する情報を取得してもよい。既存加工条件としては特に限定されず、例えば、加工順序、送り速度、主軸回転速度、ツルーイング条件等が例示される。なお、既存工作物は、対象工作物Wと同じ材質であり、且つ同じ形状であるので、図示を省略する。
【0037】
既存工作物情報取得部51は、データベース3から、既存工作物の既存加工精度に関する情報または既存工作物に要求される既存加工精度規格に関する情報を取得する。既存工作物情報取得部51は、既存工作物の第一加工点P1における既存加工精度に関する情報または既存加工精度規格に関する情報を取得すればよい。ただし、既存工作物情報取得部51は、入力装置2から既存加工精度に関する情報または既存加工精度規格に関する情報を取得してもよい。既存加工精度としては特に限定されず、例えば、真円度、振れ、表面荒さ等が例示される。既存加工精度規格は、上記した既存加工精度について、上限および下限の数値範囲が設定されたものをいう。
【0038】
第二加工点第一推定剛性値算出部52は、入力装置2を介して、少なくとも対象工作物Wの形状を含む情報を取得する。入力装置2から入力される情報は特に限定されず、対象工作物Wの形状または材質、既存工作物の形状、材質または加工条件等、任意の情報が例示される。
【0039】
第二加工点第一推定剛性値算出部52は、既存加工条件取得部50から、既存加工条件に関する情報を取得する。また、第二加工点第一推定剛性値算出部52は、既存工作物情報取得部51から、既存加工精度に関する情報または既存加工精度規格に関する情報を取得する。
【0040】
第二加工点第一推定剛性値算出部52は、対象工作物Wの第一加工点P1における既存加工条件に関する情報と、第一加工点P1における既存加工精度または既存加工精度規格に関する情報と、対象工作物Wの形状と、に基づいて、第二加工点P2において所定加工力Fと変形量δxとの関係を表す第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を算出する。なお、第二加工点P2における剛性値とは、加工力Fを変形量δxで除した商をいう。
【0041】
第二加工点加工条件算出部53は、第二加工点第一推定剛性値算出部52から第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を取得し、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)に基づいて、対象工作物Wの第二加工点P2に対する加工条件である第二加工点加工条件を算出する。
【0042】
表示装置4は、第二加工点加工条件算出部53から第二加工点加工条件を取得し、第二加工点加工条件を表示する。
【0043】
1-6.加工条件設定装置5の動作
図8を参照して、加工条件設定装置5の動作について説明する。
図8に示すように、加工条件設定装置5が起動されると、既存加工条件取得部50が、既存工作物を加工したときの第一加工点P1の既存加工条件に関する情報を取得する(S1)。
【0044】
次に、既存工作物情報取得部51が、既存工作物の第一加工点P1についての既存加工精度に関する情報または既存工作物に要求される既存加工精度規格に関する情報を取得する(S2)。
【0045】
入力装置2に、対象工作物Wの形状等に関する情報が入力される。第二加工点第一推定剛性値算出部52が、入力装置2を介して、対象工作物Wの形状に関する情報を取得する(S3)。
【0046】
第二加工点第一推定剛性値算出部52が、既存加工条件取得部50から第一加工点P1の既存加工条件に関する情報を取得する。また、第二加工点第一推定剛性値算出部52が、既存工作物情報取得部51から、第一加工点P1についての既存加工精度に関する情報または既存加工精度規格に関する情報を取得する。第二加工点第一推定剛性値算出部52が、対象工作物Wの第一加工点P1における既存加工条件に関する情報と、第一加工点P1における既存加工精度または既存加工精度規格に関する情報と、対象工作物Wの形状と、に基づいて、第二加工点P2において所定加工力Fと変形量δxとの関係を表す第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を算出する(S4)。第二加工点第一推定剛性値算出部52は、既存加工精度規格を採用する場合には、既存加工精度規格の上限から下限の間に含まれる任意の値を採用して第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を算出する。なお、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)の算出に際して、第一加工点P1の推定剛性値は算出されていない。
【0047】
次に、第二加工点加工条件算出部53が、第二加工点第一推定剛性値算出部52から第二加工点第一推定剛性値を取得し、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)に基づいて、対象工作物Wの第二加工点P2に対する加工条件である第二加工点加工条件を算出する(S5)。
【0048】
次に、表示装置4が、第二加工点加工条件算出部53から第二加工点加工条件を取得し、第二加工点加工条件を表示する(S6)。以上により、加工条件設定装置5の動作が終了する。
【0049】
1-7.本形態の作用効果
図6において、黒い丸印は、対象工作物Wの、第一加工点P1および第二加工点P2における真の剛性値を表している。対象工作物Wの真の剛性値は存在しているのであるが、本形態においては、真の剛性値は作業者にとって不明である。
【0050】
上記したように、第一加工点P1である第一円板部31は、第二加工点P2である第二円板部32よりも、対象工作物Wの端部寄りに位置するため、第一加工点P1の剛性値は、第二加工点P2の剛性値よりも大きい。このため、第一加工点P1における真の剛性値と、第二加工点P2における真の剛性値との関係は、
図6において実線で示す関係を有する。
【0051】
対象工作物Wの加工条件を設定するとき、対象工作物Wの真の剛性値よりも大きな値を基礎として加工条件を設定すると、対象工作物Wの加工精度が低下する原因となる。このため、対象工作物Wの加工条件を設定するとき、対象工作物Wの真の剛性値よりも小さい値に基づいて加工条件を設定することが望ましい。
【0052】
本形態においては、対象工作物Wの加工条件を設定する基礎として、既に加工された既存工作物に関する情報を用いる。既存工作物は、所望の加工精度を得られているものとする。この場合、既存工作物は、既存工作物の真の剛性値よりも小さい値に基づいて加工条件が設定されていることが確実である。このため、既存工作物と形状および材質が同じである対象工作物Wの加工条件を設定するに際して、既存工作物に関する情報を用いることにより、対象工作物Wの真の剛性値よりも大きな値を採用することを、可及的に抑制することができる。これにより、対象工作物Wの加工精度を良好とすることができる。
【0053】
上記したように、第一加工点P1の真の剛性値は、第二加工点P2の真の剛性値よりも大きい。このため、推定剛性値についても同様に、
図6における破線で示すように、第一加工点P1の推定剛性値は第二加工点P2の推定剛性値よりも大きいと推定される。そこで、本形態においては、対象工作物Wのうち第一加工点P1における既存工作物に関する情報に基づいて、対象工作物Wのうち第二加工点P2における推定剛性値である第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を算出する構成になっている。これにより、第二加工点P2よりも推定剛性値が大きいと考えられる第一加工点P1における既存工作物に関する情報に基づくことにより、可及的に推定剛性値を大きく推定することができる。これにより、推定剛性値を過小評価することによる対象工作物Wの製造効率が低下することを抑制することができる。
【0054】
また、第一加工点P1よりも推定剛性値が小さいと考えられる第二加工点P2における第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を算出することにより、第二加工点P2における推定剛性範囲のうち可及的に小さい値を算出することが可能となっている。本形態においては、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)は、第二加工点P2における取りうる推定剛性範囲のうち下限値となっている。このような第二加工点第一推定剛性値R1(P2)に基づいて第二加工点加工条件を算出することにより、対象工作物Wまたは加工装置6が変形する等の不具合を抑制することと、対象工作物Wの製造効率を向上させることとを、両立させることができる。
【0055】
上記のように、本形態によれば、第二加工点P2の剛性値が不明であっても、第二加工点P2における第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を推定し、この第二加工点第一推定剛性値R1(P2)に基づいて第二加工点加工条件を算出することが可能となる。
【0056】
(実施形態2)
2-1.加工条件設定の概要
本形態の加工条件設定の概要について、
図9を参照して説明する。
図9には、横軸に、第一加工点P1および第二加工点P2の、対象工作物WにおけるZ軸方向の位置を示し、縦軸に、第一加工点P1および第二加工点P2の剛性値を示す。
【0057】
本形態においては、第一~第四円板部31~34の中から選択された1つを、基準加工位置としての第一加工点P1し、第一~第四円板部31~34の残りの中から選択された1つを、加工条件算出対象としての第二加工点P2とする。本形態においても、実施形態1と同様に、第一円板部31を第一加工点P1とし、第二円板部32を第二加工点P2とする場合を例にあげる。そして、第一加工点P1に関する情報を用いて、第二加工点P2に対する加工条件を算出する。
【0058】
本形態において、第二加工点P2の加工条件の設定は、以下のように行う。まず、第一加工点P1に関する情報I(P1)を用いて、第一加工点P1の推定剛性値R(P1)(以下、「第一加工点推定剛性値」と称する)を算出する。第一加工点推定剛性値R(P1)は、既存工作物における第一加工点P1における既存加工条件に関する情報と、第一加工点P1における既存加工精度または既存加工精度規格に関する情報と、対象工作物Wの形状と、に基づいて、を算出される。
【0059】
続いて、第一加工点推定剛性値R(P1)に基づいて、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を算出する。つまり、本形態は、第一加工点P1の推定剛性値R(P1)を算出する点において、実施形態1と異なる。続いて、算出された第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を用いて、第二加工点P2の加工条件を設定する。
【0060】
2-2.加工条件設定装置5aの構成
次に、
図10を参照して、本形態に係る加工条件設定装置5aについて説明する。本形態に係る加工条件設定装置5aは、実施形態1に係る加工条件設定装置5に加えて、第一加工点推定剛性値算出部60を備える。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0061】
図10に示すように、第一加工点推定剛性値算出部60は、入力装置2を介して、対象工作物Wの形状等に関する情報を取得する。
【0062】
第一加工点推定剛性値算出部60は、既存加工条件取得部50から、既存工作物の第一加工点P1における既存加工条件に関する情報を取得する。また、第一加工点推定剛性値算出部60は、既存工作物情報取得部51から、既存工作物の第一加工点P1における既存加工精度に関する情報または既存加工精度規格に関する情報を取得する。
【0063】
第一加工点推定剛性値算出部60は、第一加工点P1における既存加工条件に関する情報と、第一加工点P1における前記既存加工精度または前記既存加工精度規格に関する情報と、対象工作物Wの形状と、に基づいて、第一加工点P1において所定加工力Fと変形量δxとの関係を表す第一加工点推定剛性値R(P1)を算出する。なお、第一加工点P1における剛性値とは、加工力Fを変形量δxで除した商をいう。
【0064】
第二加工点第一推定剛性値算出部52は、第一加工点推定剛性値算出部60から、第一加工点推定剛性値R(P1)を取得する。第二加工点第一推定剛性値算出部52は、第一加工点推定剛性値R(P1)と、対象工作物Wの形状とに基づいて、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を算出する。
【0065】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0066】
2-3.加工条件設定装置5aの動作
図11を参照して、加工条件設定装置5aの動作について説明する。加工条件設定装置5aが起動されると、既存加工条件取得部50が、既存工作物を加工したときの既存加工条件に関する情報を取得する(S1)。
【0067】
次に、既存工作物情報取得部51は、既存工作物の既存加工精度に関する情報または既存工作物に要求される既存加工精度規格に関する情報を取得する(S2)。
【0068】
入力装置2に、対象工作物Wの形状に関する情報が入力される。第二加工点第一推定剛性値算出部52および第一加工点推定剛性値算出部60が、入力装置2を介して、対象工作物Wの形状に関する情報を取得する(S10)。
【0069】
第一加工点推定剛性値算出部60が、既存加工条件取得部50から第一加工点P1の既存加工条件に関する情報を取得する。また、第一加工点推定剛性値算出部60が、既存工作物情報取得部51から、第一加工点P1についての既存加工精度に関する情報または既存加工精度規格に関する情報を取得する。第一加工点推定剛性値算出部60が、対象工作物Wの第一加工点P1における既存加工条件に関する情報と、第一加工点P1における既存加工精度または既存加工精度規格に関する情報と、対象工作物Wの形状と、に基づいて、第一加工点P1において加工力Fと変形量δxとの関係を表す第一加工点推定剛性値R(P1)を算出する(S11)。第一加工点推定剛性値算出部60は、既存加工精度規格を採用する場合には、既存加工精度規格の上限から下限の間に含まれる任意の値を採用して第一加工点推定剛性値R(P1)を算出する。
【0070】
第二加工点第一推定剛性値算出部52は、第一加工点推定剛性値算出部60から、第一加工点推定剛性値R(P1)を取得する。第二加工点第一推定剛性値算出部52が、第一加工点推定剛性値R(P1)と、対象工作物Wの形状と、に基づいて、第二加工点P2において所定加工力Fと変形量δxとの関係を表す第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を算出する(S12)。
【0071】
次に、第二加工点加工条件算出部53が、第二加工点第一推定剛性値算出部52から第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を取得し、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)に基づいて、対象工作物Wの第二加工点P2に対する加工条件である第二加工点加工条件を算出する(S5)。
【0072】
次に、表示装置4が、第二加工点加工条件算出部53から第二加工点加工条件を取得し、第二加工点加工条件を表示する(S6)。以上により、加工条件設定装置5aの動作が終了する。
【0073】
2-4.本形態の作用効果
本形態においては、第一加工点推定剛性値算出部60は、第一加工点P1における既存加工条件に関する情報と、第一加工点P1における既存加工精度に関する情報または既存加工精度規格に関する情報と、対象工作物Wの形状と、に基づいて、第一加工点推定剛性値R(P1)を算出する。第一加工点推定剛性値R(P1)を、第一加工点P1に関する情報に基づいて算出しているので、第一加工点推定剛性値R(P1)の精度を向上させることができる。
【0074】
本形態においては、第二加工点第一推定剛性値算出部52は、第一加工点推定剛性値R(P1)と、対象工作物Wの形状と、に基づいて、対象工作物Wの第二加工点P2における第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を推定する。上記したように、第一加工点推定剛性値R(P1)の精度が向上しているので、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)の精度も向上させることができる。
【0075】
つまり、
図9に示すように、本形態においては、まず、第一加工点P1に関する情報に基づいて、第一加工点推定剛性値R(P1)を精度よく算出することができる。このように精度よく算出された第一加工点推定剛性値R(P1)に基づいて第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を算出することができるので、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)の精度も向上する。
【0076】
(実施形態3)
3-1.加工条件設定の概要
本形態の加工条件設定の概要について、
図12および
図13を参照して説明する。
図12および
図13には、横軸に、第一加工点P1および第二加工点P2の、対象工作物WにおけるZ軸方向の位置を示し、縦軸に、第一加工点P1および第二加工点P2の剛性値を示す。
【0077】
本形態においては、第一~第四円板部31~34の中から選択された1つを、基準加工位置としての第一加工点P1し、第一~第四円板部31~34の残りの中から選択された1つを、加工条件算出対象としての第二加工点P2とする。本形態においても、実施形態1と同様に、第一円板部31を第一加工点P1とし、第二円板部32を第二加工点P2とする場合を例にあげる。そして、第一加工点P1に関する情報を考慮して、第二加工点P2に対する加工条件を算出する。
【0078】
本形態において、第二加工点P2の加工条件の設定は、以下のように行う。まず、
図12および
図13に示すように、第一加工点P1に関する情報I(P1)を用いて、第一加工点推定剛性値R(P1)を算出する。続いて、第一加工点推定剛性値R(P1)に基づいて、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を算出する。
【0079】
並行して、
図12および
図13に示すように、第二加工点P2に関する情報I(P2)を用いて、第二加工点P2の第二推定剛性値R2(P2)(以下、「第二加工点第二推定剛性値」と称する)を算出する。第二加工点第二推定剛性値R2(P2)は、既存工作物における第二加工点P2における既存加工条件に関する情報と、第二加工点P2における既存加工精度または既存加工精度規格に関する情報と、対象工作物Wの形状と、に基づいて算出される。
【0080】
第二加工点第一推定剛性値R1(P2)と第二加工点第二推定剛性値R2(P2)とは、参照元情報が異なるため、通常、異なる値になる。そこで、第二加工点P2の加工条件の設定には、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)と、第二加工点第二推定剛性値R2(P2)とから、選択された一方を用いる。特に、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)と、第二加工点第二推定剛性値R2(P2)とにおいて、大きい方が選択される。
【0081】
そこで、
図12に示すように、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)が第二加工点第二推定剛性値R2(P2)より大きい場合には、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を用いて、第二加工点P2の加工条件を設定する。一方、
図13に示すように、第二加工点第二推定剛性値R2(P2)が第二加工点第一推定剛性値R1(P2)より大きい場合には、第二加工点第二推定剛性値R2(P2)を用いて、第二加工点P2の加工条件を設定する。
【0082】
3-2.加工条件設定装置5bの構成
次に、
図14を参照して、実施形態3に係る加工条件設定装置5bについて説明する。本形態に係る加工条件設定装置5bは、第二加工点第二推定剛性値算出部70と、記憶装置71と、演算処理装置72と、知識モデル記憶装置73と、を備える。上記以外の構成については、実施形態2と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0083】
第二加工点第二推定剛性値算出部70は、入力装置2を介して、対象工作物Wの形状等に関する情報を取得する。
【0084】
第二加工点第二推定剛性値算出部70は、既存加工条件取得部50から、既存加工条件に関する情報を取得する。また、第二加工点第二推定剛性値算出部70は、既存工作物情報取得部51から、既存加工精度に関する情報または既存加工精度規格に関する情報を取得する。
【0085】
第二加工点第二推定剛性値算出部70は、対象工作物Wの第二加工点P2における既存加工条件に関する情報と、第二加工点P2における既存加工精度または既存加工精度規格に関する情報と、対象工作物Wの形状と、に基づいて、第二加工点P2において所定加工力Fと変形量δxとの関係を表す第二加工点第二推定剛性値R2(P2)を算出する。なお、第二加工点P2における剛性値とは、加工力Fを変形量δxで除した商をいう。
【0086】
第二加工点加工条件算出部53は、第二加工点第一推定剛性値算出部52から第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を取得する。また、第二加工点加工条件算出部53は、第二加工点第二推定剛性値算出部70から第二加工点第二推定剛性値R2(P2)を取得する。本形態においては、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)は、第二加工点P2における推定剛性範囲のうち下限値であり、また、第二加工点第二推定剛性値R2(P2)は、第二加工点P2における推定剛性範囲のうち下限値である。
【0087】
第二加工点加工条件算出部53は、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)が第二加工点第二推定剛性値R2(P2)より大きい場合に、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を用いて対象工作物Wの第二加工点P2に対する加工条件である第二加工点加工条件を算出し、第二加工点第二推定剛性値R2(P2)が第二加工点第一推定剛性値R1(P2)より大きい場合に、第二加工点第二推定剛性値R2(P2)を用いて対象工作物Wの第二加工点P2に対する加工条件である第二加工点加工条件を算出する。
【0088】
記憶装置71は、対象工作物Wの加工条件に関する情報、対象工作物Wに要求される加工仕様に関する情報、および対象工作物Wの剛性値を含む対象工作物情報を格納可能に構成されている。記憶装置71は、公知のハードディスクドライブ装置等、任意の構成を採用することができる。
【0089】
演算処理装置72は、対象加工条件算出部74を備える。対象加工条件算出部74は、対象工作物Wの加工条件に関する情報、対象工作物Wに要求される加工仕様に関する情報、および対象工作物Wの剛性値を含む対象工作物情報に基づいて対象工作物Wの対象加工条件を算出する。
【0090】
演算処理装置72は、記憶装置71に対象工作物情報が格納されているとき、対象工作物情報を取得し、対象工作物情報に基づいて対象加工条件算出部74に対象加工条件を算出させる。
【0091】
演算処理装置72は、記憶装置71に対象工作物情報が格納されていないとき、既存加工条件取得部50に既存加工条件に関する情報を取得させ、既存工作物情報取得部51に既存加工精度または既存加工精度規格に関する情報を取得させ、第二加工点第一推定剛性値算出部52に第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を算出させ、第二加工点加工条件算出部53に第二加工点加工条件を算出させる。
【0092】
表示装置4は、第二加工点加工条件算出部53から第二加工点加工条件を取得したときは第二加工点加工条件を表示する。また、表示装置4は、対象加工条件算出部74から対象加工条件を取得したときは対象加工条件を表示する。
【0093】
知識モデル記憶装置73は、第一知識モデルM1および第二知識モデルM2を格納する。知識モデル記憶装置73は、公知のハードディスクドライブ装置等、任意の構成を採用することができる。
【0094】
第一知識モデルM1は、第一~第四円板部31~34のそれぞれにおいて、既存加工条件と、既存加工精度または既存加工精度規格に関する情報と、を入力因子とし、所定加工力と変形量との関係を表す第二加工点第一推定剛性値R1(P2)または第一加工点推定剛性値R(P1)を出力因子とする。
【0095】
第二知識モデルM2は、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を入力因子とし、第二加工点加工条件を出力因子する。
【0096】
第二加工点第二推定剛性値算出部70は、第一知識モデルM1を用いて、第二加工点第二推定剛性値R2(P2)を算出する。また、第一加工点推定剛性値算出部60は、第一知識モデルM1を用いて、第一加工点推定剛性値R(P1)を算出する。
【0097】
第二加工点加工条件算出部53は、第二知識モデルM2を用いて、第二加工点加工条件を算出する。
【0098】
3-3.第一知識モデルM1及び第二知識モデルM2の構成
次に、
図15を参照して、第一知識モデルM1および第二知識モデルM2について説明する。まず、第二知識モデルM2について説明する。第二知識モデルM2は、概念としては、ネットワーク形態で表現される。第二知識モデルM2をネットワーク形態で表現した知識ネットワーク
図Nの例について、
図15を参照して説明する。つまり、知識ネットワーク
図Nは、第二知識モデルM2をグラフィカルに表現したものである。本形態では、機械加工分野における第二知識モデルM2に関する知識ネットワーク
図Nを例に挙げる。
【0099】
図15に示すように、知識ネットワーク
図Nは、複数のノード図形21と、ノード図形21同士を繋ぐリンク図形22とを備える。本形態では、ノード図形21は、四角形で囲まれた文字で表されている。本形態では、リンク図形22は、直線にて表されている。ただし、リンク図形22は、因子同士の定義の方向性を表すために矢印線で記載されてもよい。ノード図形21は、第二知識モデルM2において、産業技術用語により定義される因子を表す。
【0100】
複数の因子は、技術的な包含関係(上下関係、主従関係とも称する)を有する場合と、技術的な異種依存関係を有する場合とが存在する。つまり、因子同士の関係性は、上記の2種類に分類される。
【0101】
例えば、機械諸元は、剛性、機械制度、追従性および動作速度を包含する関係となる。つまり、技術的な包含関係を有する因子として、機械諸元を上位概念因子とし、剛性、機械制度、追従性および動作速度を下位概念因子とする。ただし、機械諸元に上記以外の因子が含まれる構成としてもよい。
【0102】
技術的に異種依存関係を有する因子として、例えば、剛性とサイクルタイムがある。以下において、技術的な包含関係を有する2つの因子の関係性を、単に包含関係と称し、技術的な異種依存関係を有する2つの因子の関係性を、単に異種依存関係と称する。
【0103】
リンク図形22は、ノード図形21同士の関係性を表す。リンク図形22は、第二知識モデルM2において、因子同士の関係性を表す。
【0104】
一方、第一知識モデルM1は、
図15に示した入力因子と出力因子が反転されたものである。このため、第一知識モデルM1における因子同士の定義の方向性は、第二知識モデルM2とは逆方向として構成される。
【0105】
3-4.本形態に係る加工条件設定装置5bの動作
(1)メインルーチンの説明
次に、本形態に係る加工条件設定装置5bについて
図16を参照して説明する。
図16に示すように、加工条件設定装置5bが起動されると、演算処理装置72は、記憶装置71に対象工作物情報が格納されているか否かを判断する(S20)。記憶装置71に対象工作物情報が格納されているとき、演算処理装置72は、記憶装置71から対象工作物情報を取得する(S21)。
【0106】
次に、演算処理装置72は、対象工作物情報を対象加工条件算出部74に取得させる。対象加工条件算出部74は、対象工作物情報に基づいて対象加工条件を算出する(S22)。
【0107】
演算処理装置72は、算出された対象加工条件を表示装置4に表示させる。これにより表示装置4は、対象加工条件を表示する(S23)。以上により、加工条件設定装置5bの動作が終了する。
【0108】
一方、記憶装置71に対象工作物情報が格納されていないとき、剛性値推定処理が実行される(S24)。剛性値推定処理が実行されることにより、第二加工点P2における推定剛性値が算出される。
【0109】
算出された推定剛性値に基づいて、加工条件算出処理が実行される(S25)。加工条件算出処理が実行されることにより、第二加工点P2における加工条件である第二加工点加工条件が算出される。
【0110】
表示装置4は、算出された第二加工点加工条件を表示する(S23)。以上により、加工条件設定装置5bの動作が終了する。
【0111】
(2)剛性値推定処理の動作
次に、剛性値推定処理の動作について
図17を参照して説明する。剛性値推定処理が実行されると(S24)、演算処理装置72は、既存加工条件取得部50に、データベース3から既存加工条件に関する情報を取得させる。これにより、既存加工条件取得部50は、既存加工条件に関する情報を取得する(S1)。
【0112】
次に、演算処理装置72は、既存工作物情報取得部51に、データベース3から既存加工精度に関する情報または既存加工条件規格に関する情報を取得させる。これにより、既存工作物情報取得部51は、既存加工精度に関する情報または既存加工条件規格に関する情報を取得する(S2)。
【0113】
入力装置2に、対象工作物Wの形状に関する情報が入力される。これにより、第二加工点第一推定剛性値算出部52、第二加工点第二推定剛性値算出部70、および第一加工点推定剛性値算出部60は、入力装置2を介して、対象工作物Wの形状に関する情報を取得する(S10)。
【0114】
第二加工点第二推定剛性値算出部70および第一加工点推定剛性値算出部60は、知識モデル記憶装置73から、第一知識モデルM1を取得する(S30)。
【0115】
演算処理装置72は、第一加工点推定剛性値算出部60に、第一知識モデルM1を用いて、第一加工点推定剛性値R(P1)を算出させる(S31)。第一知識モデルM1は、既存加工条件と、既存加工精度に関する情報または既存加工精度規格に関する情報と、対象工作物Wの形状と、を入力因子と、第一加工点推定剛性値R(P1)を出力因子として構成されている。第一加工点推定剛性値算出部60は、第一知識モデルM1に、第一加工点P1における、既存加工条件と、既存加工精度に関する情報または既存加工精度規格に関する情報と、対象工作物Wの形状と、を入力因子として入力し、第一知識モデルM1から出力因子として出力された第一加工点推定剛性値R(P1)を取得する。
【0116】
演算処理装置72は、第二加工点第一推定剛性値算出部52に、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を算出させる(S32)。詳細には、第二加工点第一推定剛性値算出部52は、第一加工点推定剛性値算出部60から第一加工点推定剛性値R(P1)を取得する。また、第二加工点第一推定剛性値算出部52は、入力装置2を介して対象工作物Wの形状を取得する。第二加工点第一推定剛性値算出部52は、第一加工点推定剛性値R(P1)と、対象工作物Wの形状と、に基づいて、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を算出する。
【0117】
演算処理装置72は、第二加工点第二推定剛性値算出部70に、第一知識モデルM1を用いて、第二加工点第二推定剛性値R2(P2)を算出させる(S33)。第二加工点第二推定剛性値算出部70は、第一知識モデルM1に、第二加工点P2における、既存加工条件と、既存加工精度に関する情報または既存加工精度規格に関する情報と、対象工作物Wの形状と、を入力因子として入力し、第一知識モデルM1から出力因子として出力された第二加工点第二推定剛性値R2(P2)を取得する。これにより剛性値推定処理が終了する。
【0118】
(3)加工条件算出処理の動作
次に、
図12、
図13、
図18を参照して、加工条件算出処理の動作について説明する。加工条件算出処理(S25)が実行されると、演算処理装置72は、第二加工点加工条件算出部53に第二加工点加工条件を算出させる。以下に詳細を説明する。
【0119】
演算処理装置72は、第二加工点加工条件算出部53に、第二加工点第一推定剛性値算出部52が算出した第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を取得させ、第二加工点第二推定剛性値算出部70が算出した第二加工点第二推定剛性値R2(P2)を取得させる(S40)。
【0120】
演算処理装置72は、第二加工点加工条件算出部53に第二知識モデルM2を取得させる(S41)。
【0121】
第二加工点加工条件算出部53は、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)が、第二加工点第二推定剛性値R2(P2)より大きいか判断する(S42)。
【0122】
第二加工点加工条件算出部53は、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)が、第二加工点第二推定剛性値R2(P2)より大きいと判断したときは(S42:Y)、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を選択する(S43)。
【0123】
第二加工点加工条件算出部53は、第二知識モデルM2を用いて第二加工点加工条件を算出する(S44)。第二知識モデルM2は、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)または第二加工点第二推定剛性値R2(P2)を入力因子とし、第二加工点加工条件を出力因子とする。第二加工点加工条件算出部53は、第二知識モデルM2に、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を入力因子として入力し、第二加工点加工条件を出力因子として取得する。以上により加工条件算出処理が終了する。
【0124】
図12に、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)が、第二加工点第二推定剛性値R2(P2)よりも大きい場合における、各推定剛性値の関係を示す。第二加工点第一推定剛性値R1(P2)が、第二加工点第二推定剛性値R2(P2)より大きいときに、第二加工点P2において取りうる推定剛性値のうち下限値である第二加工点第一推定剛性値R1(P2)に基づいて第二加工点加工条件を算出することにより、対象工作物Wまたは加工装置6に不具合が生じることを抑制しつつ、可及的に大きな推定剛性値に基づいて対象工作物Wの加工条件を設定できる。これにより、対象工作物Wまたは加工装置6について安全性を加工しつつ、対象工作物Wの製造効率を向上させることができる。
【0125】
一方、 第二加工点加工条件算出部53は、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)が、第二加工点第二推定剛性値R2(P2)より大きくないと判断したときは(S42:N)、第二加工点第二推定剛性値R2(P2)を選択する(S45)。
【0126】
第二加工点加工条件算出部53は、第二知識モデルM2を用いて第二加工点加工条件を算出する(S44)。第二知識モデルM2は、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)または第二加工点第二推定剛性値R2(P2)を入力因子とし、第二加工点加工条件を出力因子とする。第二加工点加工条件算出部53は、第二知識モデルM2に、第二加工点第二推定剛性値R2(P2)を入力因子として入力し、第二加工点加工条件を出力因子として取得する。以上により加工条件算出処理が終了する。
【0127】
図13に、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)が、第二加工点第二推定剛性値R2(P2)よりも大きくない場合における、各推定剛性値の関係を示す。第二加工点第一推定剛性値R1(P2)が、第二加工点第二推定剛性値R2(P2)より大きくないときに、第二加工点P2において取りうる推定剛性値のうち下限値である第二加工点第二推定剛性値R2(P2)に基づいて第二加工点加工条件を算出することにより、対象工作物Wまたは加工装置6に不具合が生じることを抑制しつつ、可及的に大きな推定剛性値に基づいて対象工作物Wの加工条件を設定できる。これにより、対象工作物Wまたは加工装置6について安全性を加工しつつ、対象工作物Wの製造効率を向上させることができる。
【0128】
3-5.本形態の作用効果
第二加工点第一推定剛性値R1(P2)または第二加工点第二推定剛性値R2(P2)は、第二加工点P2において取りうる推定剛性範囲のうち下限値であるので、対象工作物Wの剛性値を過度に大きく見積もることが抑制される。これにより、第二加工点第一推定剛性値R1(P2)または第二加工点第二推定剛性値R2(P2)のいずれかを、第二加工点加工条件を算出する際に用いることにより、過度に大きな推定剛性値に基づく不適切な加工条件によって、対象工作物Wまたは加工装置6に不具合が発生することを抑制できる。
【0129】
また、本形態によれば、演算処理装置72は、記憶装置71に対象工作物情報が格納されているときには、対象工作物情報を用いて、対象加工条件算出部74に対象加工条件を算出させることができる。これにより、対象加工条件を効率よく算出できる。
【0130】
また、本形態によれば、第一知識モデルM1を用いて、第一加工点推定剛性値R(P1)および第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を算出することができるので、第一加工点推定剛性値R(P1)および第二加工点第一推定剛性値R1(P2)の推定精度を向上できる。また、本形態によれば、第二知識モデルM2を用いて、第二加工点加工条件を算出することができるので、第二加工点加工条件の推定精度を向上させることができる。
【0131】
(実施形態4)
4-1.加工条件設定装置5cの構成
次に、
図19~20を参照して実施形態4に係る加工条件設定装置5cについて説明する。実施形態4に係る加工条件設定装置5cは、実施形態3に係る加工条件設定装置5bに加えて、工作物支持剛性値算出部80と、新規対象工作物情報取得部81と、新規加工点推定剛性値算出部82と、新規対象加工条件算出部83と、を備える。また、実施形態4に係る知識モデル記憶装置73は、第一知識モデルM1および第二知識モデルM2に加えて、第三知識モデルM3と、第四知識モデルM4と、を格納している。上記以外の構成については、実施形態3と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0132】
記憶装置71には、対象工作物Wの第二加工点第一推定剛性値R1(P2)と、第二加工点加工条件に基づいて加工された加工済み対象工作物に関する情報と、が格納されている。加工済み対象工作物は、対象工作物Wと同一形状なので、図示省略する。工作物支持剛性値算出部80は、記憶装置71に格納された、第二加工点加工条件に基づいて加工された加工済み対象工作物の形状を取得する。工作物支持剛性値算出部80は、対象工作物Wの第二加工点第一推定剛性値R1(P2)と、第二加工点加工条件に基づいて加工された加工済み対象工作物の形状と、に基づいて、加工済み対象工作物を加工した加工装置6の工作物支持剛性値を算出する。
【0133】
新規対象工作物情報取得部81は、入力装置2を介して、加工済み対象工作物と異なる新規対象工作物Waの形状および材質に関する新規対象工作物情報を取得する。
図20に、新規対象工作物Waの一例を示す。新規対象工作物Waの形状は特に限定されない。本形態では、軸部130の直径が、対象工作物Wの軸部30に比べて小さい例を示す。
【0134】
新規加工点推定剛性値算出部82は、新規対象工作物情報取得部81から、新規対象工作物情報を取得する。また、新規加工点推定剛性値算出部82は、工作物支持剛性値算出部80から、工作物支持剛性値を取得する。新規加工点推定剛性値算出部82は、工作物支持剛性値および新規対象工作物情報に基づいて、新規対象工作物Waの加工点において所定加工力Fと変形量δxとの関係を表す新規加工点推定剛性値を算出する。新規加工点推定剛性値は、新規対象工作物Waにおける取りうる推定剛性範囲のうち下限値である。
【0135】
新規対象加工条件算出部83は、新規加工点推定剛性値算出部82から、新規加工点推定剛性値を取得する。新規対象加工条件算出部83は、新規加工点推定剛性値に基づいて、新規対象工作物Waの加工条件である新規対象加工条件を算出する。
【0136】
表示装置4は、新規対象加工条件算出部83から新規対象加工条件を取得し、表示する。
【0137】
第三知識モデルM3は、工作物支持剛性値および新規対象工作物情報を入力因子とし、新規加工点推定剛性値を出力因子とする。
【0138】
第四知識モデルM4は、新規加工点推定剛性値を入力因子とし、新規対象加工条件を出力因子とする。
【0139】
新規加工点推定剛性値算出部82は、第三知識モデルM3を用いて、新規加工点推定剛性値を算出する。
【0140】
新規対象加工条件算出部83は、第四知識モデルM4を用いて、新規対象加工条件を算出する。
【0141】
4-2.本形態の加工条件設定装置5cの動作
本形態の加工条件設定装置5cの動作について
図21を参照して説明する。本形態に係る加工条件設定装置5cは、新規対象加工条件算出処理S50を実行する。新規対象加工条件算出処理S50が実行されると、新規対象工作物情報取得部81は、入力装置2を介して、新規対象工作物Waの形状および材質に関する新規対象工作物情報を取得する(S51)。
【0142】
工作物支持剛性値算出部80は、記憶装置71から、対象工作物Wの第二加工点第一推定剛性値R1(P2)を取得し(S52)、第二加工点加工条件に基づいて加工された加工済み対象工作物の形状に関する情報を取得する(S53)。工作物支持剛性値算出部80は、対象工作物Wの第二加工点第一推定剛性値R1(P2)と、加工済み対象工作物の形状と、に基づいて、加工装置6の工作物支持剛性値を算出する(S54)。
【0143】
新規加工点推定剛性値算出部82は、新規対象工作物情報取得部81から、新規対象工作物情報を取得する。また、新規加工点推定剛性値算出部82は、工作物支持剛性値算出部80から、工作物支持剛性値を取得する。また、新規加工点推定剛性値算出部82は、知識モデル記憶装置73から第三知識モデルM3を取得する(S55)。
【0144】
新規加工点推定剛性値算出部82は、第三知識モデルM3に、工作物支持剛性値および新規対象工作物情報を入力因子として入力し、新規加工点推定剛性値を出力因子として取得することにより、新規加工点推定剛性値を算出する(S56)。
【0145】
新規対象加工条件算出部83は、新規加工点推定剛性値算出部82から、新規加工点推定剛性値を取得する。新規対象加工条件算出部83は、知識モデル記憶装置73から、第四知識モデルM4を取得する(S57)。新規対象加工条件算出部83は、第四知識モデルM4に新規加工点推定剛性値を入力因子として入力し、第四知識モデルM4から新規対象加工条件を出力因子として取得することにより、新規対象加工条件を算出する(S58)。以上により新規対象加工条件算出処理が終了する。
【0146】
4-3.本形態の作用効果
本形態によれば、対象工作物Wの加工点の剛性が不明な場合において、対象工作物Wと異なる新規対象工作物Waを加工する際に、新規対象工作物Waの加工条件である新規対象加工条件を算出することができる。
【0147】
本形態によれば、新規加工点推定剛性値を、新規対象工作物Waにおける取りうる推定剛性範囲のうち下限値とすることにより、新規対象工作物Waの加工点の剛性値を過度に大きく見積もることを抑制できる。これにより、新規対象工作物Waの加工効率を向上させることができる。
【0148】
本形態によれば、第三知識モデルM3、および第四知識モデルM4を用いて、新規対象加工条件を算出することができるので、新規対象加工条件の推定精度を向上できる。
【0149】
(実施形態5)
次に、
図22を参照して、実施形態5に係る工作機械7について説明する。本形態に係る工作機械7は、加工条件設定装置5と、加工装置6と、を備える。加工条件設定装置5と加工装置6とは接続されており、相互に情報を送信または受信することができる。上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0150】
本形態によれば、対象工作物Wの加工点の剛性が不明な場合でも、対象工作物Wの加工条件を設定可能な工作機械7を得ることができる。
【0151】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0152】
5,5a,5b,5c 加工条件設定装置、6 加工装置、7 工作機械、50 既存加工条件取得部、51 既存工作物情報取得部、52 第二加工点第一推定剛性値算出部、53 第二加工点加工条件算出部、60 第一加工点推定剛性値算出部、70 第二加工点第二推定剛性値算出部、71 記憶装置、72 演算処理装置、73 知識モデル記憶装置、74 対象加工条件算出部、80 工作物支持剛性値算出部、81 新規対象工作物情報取得部、82 新規加工点推定剛性値算出部、83 新規対象加工条件算出部、F 加工力、M1 第一知識モデル、M2 第二知識モデル、M3 第三知識モデル、M4 第四知識モデル、W 対象工作物、Wa 新規対象工作物、δx 変形量、P1 第一加工点、P2 第二加工点、R(P1) 第一加工点推定剛性値、R1(P2)第二加工点第一推定剛性値、R2(P2) 第二加工点第二推定剛性値