(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055121
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】車両用フードステー支持構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/12 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
B62D25/12 C
B62D25/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161776
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植木 敏行
【テーマコード(参考)】
3D004
【Fターム(参考)】
3D004AA06
3D004BA02
3D004CA15
3D004CA33
(57)【要約】
【課題】フードステーの振動に起因する異音や脱落等の発生を抑止しフードの開状態を確実に保持しより広い揺動範囲の自由度を確保し部品点数を抑えて簡単な構成とした車両用フードステー支持構造を提供する。
【解決手段】車両1のエンジンルーム3の開口部を覆うフード4を開状態で保持するためのフードステー5を支持する車両用フードステー支持構造であって、フードステーの基端部が一体にかつ固定的に連結されステー連結部位の中心軸に一致する第1の軸Zに直交する第2の軸Y周りに揺動するステー連結部材11と、ステー連結部材が第2の軸周りに揺動自在に内挿され第1の軸に直交しかつ第2の軸に直交する第3の軸X周りに揺動する円環状部材12と、円環状部材が第3の軸周りに揺動自在に内挿され第1の軸周りの回動を許容しつつ車体構成部材に固定される保持部材13とを具備する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンルームの開口部を覆うフードを開状態で保持するためのフードステーを支持する車両用フードステー支持構造であって、
前記フードステーの基端部が一体にかつ固定的に連結され、前記フードステーの基端部との連結部位の中心軸に一致する第1の軸に直交する第2の軸周りに前記フードステーと共に所定の範囲内で揺動するステー連結部材と、
前記ステー連結部材が前記第2の軸周りに揺動自在に内挿されており、前記第1の軸に直交しかつ前記第2の軸に直交する第3の軸周りに所定の範囲内で揺動する円環状部材と、
前記円環状部材が前記第3の軸周りに揺動自在に内挿されており、前記第1の軸周りの回動を許容しながら車体構成部材に固定される保持部材と、
を具備することを特徴とする車両用フードステー支持構造。
【請求項2】
前記ステー連結部材の前記第2の軸周りの揺動中心点と、前記円環状部材の前記第3の軸周りの揺動中心点と、前記保持部材の前記第1の軸周りの回動中心点とは同一点であることを特徴とする請求項1に記載の車両用フードステー支持構造。
【請求項3】
前記第1の軸と前記第2の軸と前記第3の軸とは、同一の交点で互いに直交することを特徴とする請求項1に記載の車両用フードステー支持構造。
【請求項4】
前記ステー連結部材は、前記前記フードステーの基端部に形成される雄ねじに螺合する雌ねじを有し、
前記ステー連結部材の前記雌ねじに前記フードステーの基端部の前記雄ねじが螺合することによって、前記ステー連結部材と前記フードステーとは一体にかつ固定的に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用フードステー支持構造。
【請求項5】
前記保持部材は、前記車体構成部材に対してスナップフィットにより固定されることを特徴とする請求項1に記載の車両用フードステー支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両のフードを開状態で保持するためのフードステーを支持する車両用フードステー支持構造に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両においては、例えばエンジンルームの開口を覆うフードの開状態を保持するために丸棒状に形成した鋼材等からなるフードステーが備えられている。このフードステーは、その基端がエンジンルーム内において、例えば車体を構成する車体構成部材の前方寄りの内壁面の所定の部位に設けられる保持部材(グロメット等と称される部材)によって揺動自在に支持される支持構造を有するものが一般に実用化されている。
【0003】
この種の従来の車両用フードステー支持構造におけるフードステーは、フードを閉状態にしたときには、先端側の一部がエンジンルーム内の所定の部位に設けられたブラケットに対し固定されている。
【0004】
一方、このフードステーを用いてフードの開状態を保持する状態とする時には、まず、フードを開状態とした後、フードステーの基端を所定の範囲で揺動させて、フードステーの先端側をブラケットから取り外す。次いで、当該フードステーの先端を、開状態にあるフードの内面側の所定の部位に設けられている嵌合孔に嵌合させる。これによって、フードステーは、フードを開状態で支持し、当該フードの開状態を保持することができる構成とされている。
【0005】
このような構成からなる従来の車両用フードステー支持構造では、フードステーの基端は保持部材(グロメット)に設けられている支持孔に挿通されている。この場合において、フードステーの基端には屈曲部が形成されており、フードステーの支持孔からの抜け止め構造が形成されている。
【0006】
この構成の場合、保持部材の支持孔は、フードステーの直径よりも若干大きめの寸法に設定されている。このように、保持部材の支持孔と、この支持孔に挿通されるフードステーの基端との間に若干の隙間を持たせることによって、フードステーの基端の揺動範囲の自由度が確保されている。
【0007】
このような形態の車両用フードステー支持構造については、例えば特開2006-160009号公報,特開2000-313357号公報等によって、種々の提案がなされておいる。
【0008】
しかしながら、このような構成の従来の車両用フードステー支持構造では、保持部材の支持孔とフードステーとの間に存在する隙間に起因して、種々の問題点が生じ得る。例えば、フードステーは、使用者(ユーザー)によって揺動操作されるが、このとき、本来の可動範囲を超えてフードステーが操作されてしまう可能性がある。この場合、過大な力量がフードステーから保持部材に加わると、保持部材が破損してしまう可能性がある。
【0009】
また、フードステーの可動範囲は、保持部材の支持孔とフードステーとの隙間によって規定される。そのため、充分な可動範囲を確保することができないという問題もある。さらに、フードステーの揺動軸は、隙間に依存していることから不安定である。そのため、良好な操作性を確保することができないという問題点もある。
【0010】
また、エンジンからの振動等がフードステーに伝播して、当該フードステーが保持部材の支持孔との隙間で振動し、異音等を発生させる場合がある。さらに、フードステーが振動することによって、当該フードステーが保持部材の支持孔から脱落してしまう可能性もある。このことは、使用者(ユーザー)による操作使用時のほか、製造時に車両が製造ライン上にあるときにおいても、ラインから発生する振動に起因して、同様の問題が発生する可能性がある。なお、振動等に起因する異音等は、上述のようなフードステーの使用時のほか、非使用時(収納時)においても発生する可能性がある。
【0011】
さらにまた、保持部材の支持孔に挿通されたフードステーが規定の位置からズレてしまう場合がある。例えば、フードステーが支持孔に対し本来の規定位置よりも潜り込んでしまうと、当該フードステーの基端における隙間が狭まり、フードステーの自由度が規制されてしまうことになる。このように、フードステーの揺動の自由度が阻害されてしまうと、操作性に支障が生じる可能性がある。
【0012】
また、フードステーの基端を揺動させる可動範囲が狭いと、フードステーの基端及び先端の配置の自由度が制約されてしまうという問題点もある。
【0013】
これらの問題点を解決するために、従来においては、例えば特開2013-223957号公報等によって種々の提案がなされている。
【0014】
上記特開2013-223957号公報等によって開示されている車両用フードステー支持構造は、保持部材の一部に突起部を設け、フードを開状態としてフードステーを起立させたときに、当該フードステーの基端側の一部が保持部材の突起部に対して所定の押圧力で常に当接する構成としている。この構成により、フードステーを起立させて、当該フードステーがフードを開状態で保持している状態とした時には、保持部材の突起部とフードステーとの当接状態が常に維持されるので、フードステーに振動が伝播しても異音の発生を防ぐことができると同時に、保持部材の支持孔からのフードステーの脱落を抑制することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006-160009号公報
【特許文献2】特開2000-313357号公報
【特許文献3】特開2013-223957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところが、上記特開2013-223957号公報等によって開示されている従来技術では、複雑な形状の保持部材を設ける必要があるという問題点がある。また、場合によっては、別途部品を追加する必要が生じる場合もあることから、製造コストが嵩んでしまうという問題点が生じ得る。
【0017】
本発明の目的とするところは、フードステーに伝播する振動に起因して異音や脱落等が発生することを抑止することができると共にフードの開状態を確実に保持することができ、フードステーのより広い揺動範囲の自由度を確保しながら、部品点数を抑えた簡単な構成の車両用フードステー支持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の一態様の車両用フードステー支持構造は、車両のエンジンルームの開口部を覆うフードを開状態で保持するためのフードステーを支持する車両用フードステー支持構造であって、前記フードステーの基端部が一体にかつ固定的に連結され、前記フードステーの基端部との連結部位の中心軸に一致する第1の軸に直交する第2の軸周りに前記フードステーと共に所定の範囲内で揺動するステー連結部材と、前記ステー連結部材が前記第2の軸周りに揺動自在に内挿されており、前記第1の軸に直交しかつ前記第2の軸に直交する第3の軸周りに所定の範囲内で揺動する円環状部材と、前記円環状部材が前記第3の軸周りに揺動自在に内挿されており、前記第1の軸周りの回動を許容しながら車体構成部材に固定される保持部材と、を具備する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フードステーに伝播する振動に起因して異音や脱落等が発生することを抑止することができると共にフードの開状態を確実に保持することができ、フードステーのより広い揺動範囲の自由度を確保しながら、部品点数を抑えた簡単な構成の車両用フードステー支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態の車両用フードステー支持構造が採用された車両におけるフードステーの使用状態を示す概念図、
【
図4】本発明の一実施形態の車両用フードステー支持構造を備えた車両用フードステー支持ユニットを取り出して示す外観斜視図、
【
図5】
図4の車両用フードステー支持ユニットを分解して示す分解斜視図、
【
図6】
図4の車両用フードステー支持ユニットの正面図、
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。以下の説明に用いる各図面は模式的に示すものであり、各構成要素を図面上で認識できる程度の大きさで示すために、各部材の寸法関係や縮尺等を構成要素毎に異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、各図面に記載された各構成要素の数量や各構成要素の形状や各構成要素の大きさの比率や各構成要素の相対的な位置関係等に関して、図示の形態のみに限定されるものではない。
【0022】
まず、本発明の一実施形態の車両用フードステー支持構造についての詳細を説明する前に、本実施形態の車両用フードステー支持構造が採用される車両において、フードステーの配置及びその使用状態について、
図1,
図2を用いて以下に簡単に説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態の車両用フードステー支持構造が採用された車両におけるフードステーの使用状態を示す概念図である。なお
図1において、符号[A]で示す図は、符号[1]で示す領域を拡大して示す図である。また、
図2は、
図1の符号[2]で示す領域を拡大して示す図である。
【0024】
本実施形態の車両用フードステー支持構造が採用される車両1においては、例えば車体2の前部寄り部分にエンジンルーム3が設けられている。このエンジンルーム3の上面側の開口部にはフード4が開閉自在に設けられている。
【0025】
フード4は、車体2に対して不図示のヒンジ部材等を用いた周知の構成により、エンジンルーム3の上面側の開口部を開閉自在に配設されている。即ち、フード4は、一縁部が車体2の所定の一部に対して、例えばヒンジ部材等を用いて所定の範囲内で揺動自在に設けられている。そして、フード4は、エンジンルーム3の上面側の開口部を開放して開状態とする開位置と、エンジンルーム3の上面側の開口部を覆って閉状態とする閉位置との間の所定の範囲内を揺動する。ここで、フード4が所定の閉位置に配置されたときには、フード4は車体2の所定の部位に対して周知の構成の所定のロック機構(不図示)により、その閉位置が固定される。これにより、フード4の開位置への揺動がロックされる。
【0026】
一方、ロック状態が解除されてフード4が所定の開位置に配置されたときには、フード4はフードステー5を用いて所定の開状態が保持される。ここで、フードステー5は、フード4の開状態を保持するための構成部材である。フードステー5は、例えば丸棒状に形成した鋼材等を、適宜所定の形態に屈曲させて形成されている。
【0027】
図1は、フードステー5によって車両1のフード4が開状態で保持されている状態を示している。なお、
図2は、フードステー5が所定の収納位置に配置されている状態を示している。この
図2に示すフードステー5の収納状態は、
図1においては、二点鎖線で示している。
【0028】
フードステー5は、フード4が閉位置にあるときには、
図2(又は
図1の二点鎖線)に示すように、エンジンルーム3の内部において所定の収納位置に配置されている。
【0029】
フードステー5は、例えば基端側はエンジンルーム3の内部の所定の部位に設けられるブラケット3aに装着される車両用フードステー支持ユニット10(
図2等参照)に連結されている。
【0030】
この車両用フードステー支持ユニット10は、連結されたフードステー5を所定の可動範囲内にて揺動自在に支持するための支持機構である。
図1に示す例では、車両用フードステー支持ユニット10は、エンジンルーム3の内部において車体2の前方寄り側面の内壁面に設けられるブラケット3aに装着されている構成を例示している。この車両用フードステー支持ユニット10の詳細構成は後述する。
【0031】
ここで、フードステー5が収納位置にあるとき(
図2参照)には、フードステー5はエンジンルーム3の内部において倒置された状態とされている。そして、フードステー5の先端側の一部は、エンジンルーム3の内部の所定の部位に設けられたブラケット3bによって着脱自在に保持されている。
【0032】
一方、フードステー5を用いてフード4の開状態を保持する状態とする時には、
図1に示すように、フード4を開状態とし、フードステー5を起立状態とする。ここで、フードステー5を起立状態とするには、まず、フードステー5をブラケット3bから取り外して、フードステー5を矢印R1方向に揺動させる。これにより、フードステー5は起立状態となる。そして、フードステー5の先端を、フード4の内面側の所定の部位に設けられている嵌合孔4aに嵌合させる。こうして、フードステー5は、フード4を開状態で支持し、当該フード4の開状態を保持することができる。この場合において、フードステー5の起立状態を嵌合孔4aによって支持しているときの支持位置を第1の支持位置というものとする。
【0033】
フードステー5が起立している第1の支持位置から、倒置している収納位置へ戻すときには、フードステー5の先端と嵌合孔4aとの嵌合を解除した後、フードステー5を矢印R2方向に揺動させればよい。そして、フードステー5の先端部近傍の所定の位置をブラケット3bに固定する。その後、フード4を閉状態でロックする。
【0034】
ところで、フード4の内面側に設けられる嵌合孔を複数設けることよって、フード4の開状態を複数段階で選択的に設定することができる。
図1に示す例では、嵌合孔4aのほかに、第2の嵌合孔4bを設けた構成例を示している。
【0035】
この場合には、起立させて第1の支持位置にあるフードステー5の先端を、嵌合孔4aから外し、矢印R3方向に揺動させて、同フードステー5の先端を第2の嵌合孔4bに嵌合させる(
図1の点線で示す状態)。このときのフードステー5の位置を第2の支持位置というものとする。
【0036】
このように、フードステー5を第2の支持位置においてフード4を支持することで、フードステー5が第1の支持位置にある状態に比べて、フード4はより大きな開状態を保持することができるようになる。
【0037】
次に、本実施形態の車両用フードステー支持構造を備えた車両用フードステー支持ユニットの詳細構成を、
図3~
図9を用いて以下に説明する。
図3は、本実施形態の車両用フードステー支持構造を備えた車両用フードステー支持ユニットが車体に装着されている状態を示す図である。この
図3は、
図2の[3]-[3]線に沿う断面を示している。
図4は、本実施形態の車両用フードステー支持構造を備えた車両用フードステー支持ユニットのみを取り出して示す外観斜視図である。
図5は、
図4の車両用フードステー支持ユニットを分解して示す分解斜視図である。なお、
図5では、フードステーの一部(基端部)も合わせて図示している。
図6は、
図4の車両用フードステー支持ユニットの正面図である。
図7は、
図6の[7]-[7]線に沿う断面図である。
図8は、
図6の[8]-[8]線に沿う断面図である。
図9は、
図6の[9]-[9]線に沿う断面図である。
【0038】
本実施形態の車両用フードステー支持構造を備えた車両用フードステー支持ユニット10は、
図3,
図4,
図5等に示すように、ステー連結部材11と、円環状部材12と、保持部材であるグロメット13と、複数の支軸ピン14,15(
図3,
図4では不図示)等によって主に構成されている。
【0039】
ステー連結部材11は、フードステー5の基端が連結される連結部材である。また、ステー連結部材11は、連結されたフードステー5を所定の方向において所定の範囲内で揺動自在に保持する保持部材でもある。このステー連結部材11は、例えば樹脂材料又は金属材料などを用いて硬質に形成されている。
【0040】
ステー連結部材11は、連結筒部11aと、フランジ部11bとを有して形成されている。連結筒部11aは、中空の筒形状に形成される構成部である。この連結筒部11aは、長軸方向に貫通する中空領域を有する。この中空領域の内面側には、少なくとも長軸方向において一端から中程の領域にかけて雌ねじ11cが形成されている。この雌ねじ11cは、フードステー5の基端に形成されている雄ねじ5a(
図5参照)に対応して形成され、当該雄ねじ5aに螺合するねじ部である。
【0041】
したがって、ステー連結部材11の雌ねじ11cに対し、フードステー5の雄ねじ5aが螺合することによって、両者(11,5)は一体にかつ固定的(リジット)に連結される構成となっている。
【0042】
ここで、
図3~
図9において、ステー連結部材11の連結筒部11aの長軸方向の中心軸を符号Zで示している。以下の説明においては、この中心軸Zを第1の軸であるZ軸と呼称する。なお、このZ軸は、当該連結筒部11aにねじ結合されるフードステー5の基端部分の中心軸と一致する。
【0043】
ステー連結部材11のフランジ部11bは、連結筒部11aの長軸方向における他端に形成された外向きフランジである。フランジ部11bの外周面には、外方に向けて開口する2つのピン嵌合孔11d(
図5参照)が形成されている。これら2つのピン嵌合孔11dは、Z軸に略直交する方向に所定の深さを有する有底孔として形成されている。そして、当該2つのピン嵌合孔11dは、Z軸を挟んで対向する各位置にそれぞれ1つずつ形成されている。
【0044】
ここで、2つのピン嵌合孔11dを結ぶ線を、例えば
図5において符号Yで示している。以下の説明においては、この2つのピン嵌合孔11dを結ぶ線Yを第2の軸であるY軸と呼称する。なお、このY軸は、Z軸に略直交する直線である。
【0045】
円環状部材12は、ステー連結部材11を所定の方向において所定の範囲内で揺動自在に保持する保持部材である。円環状部材12は、円環状に形成されている。そして、円環状部材12は、例えば樹脂材料又は金属材料などを用いて硬質に形成されている。円環状部材12は、内周側にステー連結部材11のフランジ部11bが配設される。そのために、円環状部材12の内径は、ステー連結部材11のフランジ部11bの最大外径よりも大となるように形成されている。
【0046】
ここで、円環状部材12の内周側にステー連結部材11のフランジ部11bを配設したとき、円環状部材12の中心軸を通る線は、ステー連結部材11の連結筒部11aの中心軸(Z軸)と一致する。したがって、円環状部材12の中心軸を通る線も同様にZ軸と呼称する。
【0047】
また、円環状部材12は、
図5に示すように、外周面と内周面との間を貫通する2つピン貫通孔12aを有する。このピン貫通孔12aは、Z軸を挟んで対向する各位置にそれぞれ1つずつ形成されている。
【0048】
ここで、2つのピン貫通孔12aを結ぶ線を、例えば
図5において、上述の2つのピン嵌合孔11dを結ぶ線と同様に符号Yで示している。このことは次のような理由による。即ち、円環状部材12の内周側にステー連結部材11のフランジ部11bを配設するとき、円環状部材12の2つのピン貫通孔12aを結ぶ線Yと、フランジ部11bの2つのピン嵌合孔11dを結ぶ線Yとを一致させる。
【0049】
換言すると、円環状部材12の内周側にステー連結部材11のフランジ部11bを配設するとき、2つのピン貫通孔12aは、ステー連結部材11のフランジ部11bの2つのピン嵌合孔11dにそれぞれ対向する位置に配置される。
【0050】
このことから、フランジ部11bの2つのピン嵌合孔11dを結ぶ線Yと、2つのピン貫通孔12aを結ぶ線Yとは一致した直線軸となる。したがって、以下の説明においては、2つのピン貫通孔12aを結ぶ線YもY軸と呼称する。
【0051】
このように、円環状部材12の2つのピン貫通孔12aを結ぶ線Yと、フランジ部11bの2つのピン嵌合孔11dを結ぶ線Yとを一致させて、円環状部材12の内周側にステー連結部材11のフランジ部11bを配設した状態としたとき、2つのピン貫通孔12aのそれぞれには支軸ピン14が挿通される。この2本の支軸ピン14は、それぞれが円環状部材12の外周側から内周側に向けて貫通した後、各支軸ピン14の先端の一部が円環状部材12の内側に突設する。そして、各支軸ピン14の各先端は、フランジ部11bの2つのピン嵌合孔11dにそれぞれ嵌合する。
【0052】
こうして、円環状部材12の内周側にステー連結部材11のフランジ部11bを配設したとき、ステー連結部材11は、円環状部材12に対して2本の支軸ピン14により、Y軸周りに揺動自在に軸支される。この場合において、Y軸はステー連結部材11の揺動軸となる。
【0053】
さらに、円環状部材12の外周面には、外方に向けて開口する2つのピン嵌合孔12bが形成されている。これら2つのピン嵌合孔12bは、Z軸に略直交する方向に所定の深さを有する有底孔として形成されている。そして、当該2つのピン嵌合孔12bは、Z軸を挟んで対向する各位置にそれぞれ1つずつ形成されている。なお、この場合において、2つのピン嵌合孔12bは、2つのピン貫通孔12aに対してZ軸周りに略90度回転した位置に配設されている。
【0054】
ここで、2つのピン嵌合孔12bを結ぶ線を、例えば
図5において符号Xで示している。以下の説明においては、このピン嵌合孔12bを結ぶ線Xを第3の軸であるX軸と呼称する。このX軸は、Y軸及びZ軸のそれぞれに対してそれぞれ略直交する直線となっている。
【0055】
グロメット13は、円環状部材12を所定の方向において所定の範囲内で揺動自在に保持する保持部材である。また、グロメット13は、フードステー5,ステー連結部材11,円環状部材12を所定の状態に組み立てた構成ユニットを、車体2の所定の部位に取り付けるための保持部材でもある。このグロメット13は、例えば樹脂材料又は金属材料などを用いて硬質に形成されている。
【0056】
グロメット13は、嵌合筒部13aと、フランジ部13bと、係止爪部13cとを有して形成されている。嵌合筒部13aは、中空の筒形状に形成される構成部である。この嵌合筒部13aは、長軸方向に貫通する中空領域を有する。詳細は後述するが、この嵌合筒部13aは、車体2のブラケット3aに設けられる保持孔3aa(
図3参照)に嵌合して配置される部位である。
【0057】
嵌合筒部13aは、外周面と内周面との間を貫通する2つのピン貫通孔13dを有する。この2つのピン貫通孔13dは、Z軸を挟んで対向する各位置にそれぞれ1つずつ形成されている。ここで、2つのピン貫通孔13dを結ぶ線を、
図5において、上述の2つのピン嵌合孔12bを結ぶ線と同様に符号Xで示している(詳細後述)。
【0058】
グロメット13のフランジ部13bは、嵌合筒部13aの長軸方向において一端に形成された外向きフランジである。フランジ部13bには、嵌合筒部13aの中空領域に連通する開口13eが形成されている。この開口13eから嵌合筒部13aの中空領域にかけての内部領域に円環状部材12が配設される。
【0059】
この場合において、嵌合筒部13aの中空領域に円環状部材12を配設するとき、嵌合筒部13aの2つのピン貫通孔13dを結ぶ線Xと、円環状部材12の2つのピン嵌合孔12bを結ぶ線Xとを一致させる。
【0060】
換言すると、嵌合筒部13aの中空領域に円環状部材12を配設するとき、嵌合筒部13aの2つのピン貫通孔13dは、円環状部材12の2つのピン嵌合孔12bにそれぞれ対向する位置に配置される。
【0061】
このことから、2つのピン貫通孔13dを結ぶ線Xと、2つのピン嵌合孔12bを結ぶ線Xとは一致した直線軸となる。したがって、以下の説明においては、2つのピン貫通孔13dを結ぶ線XもX軸と呼称する。
【0062】
また、グロメット13の嵌合筒部13aの中空領域に円環状部材12を配設したとき、グロメット13の中心軸を通る線は、円環状部材12の中心軸(Z軸)と一致する。したがって、グロメット13の嵌合筒部13aの中心軸を通る線も同様にZ軸と呼称する。
【0063】
このように、嵌合筒部13aの2つのピン貫通孔13dを結ぶ線(X軸)と、円環状部材12の2つのピン嵌合孔12bを結ぶ線(X軸)とを一致させて、フランジ部13bの開口13eから嵌合筒部13aの中空領域にかけての内部領域に円環状部材12を配設した状態としたとき、2つのピン貫通孔13dのそれぞれには支軸ピン15が挿通される。これら2本の支軸ピン15は、それぞれが嵌合筒部13aの外周側から内周側に向けて貫通した後、各支軸ピン15の先端の一部が嵌合筒部13aの内側に突設する。そして、各支軸ピン15の各先端は、円環状部材12のピン嵌合孔12bにそれぞれ嵌合する。
【0064】
こうして、フランジ部13bの開口13eから嵌合筒部13aの中空領域にかけての内部領域に円環状部材12を配設したとき、円環状部材12は、グロメット13に対して2本の支軸ピン15により、X軸周りに揺動自在に軸支される。この場合において、X軸は円環状部材12の揺動軸となる。
【0065】
また、グロメット13のフランジ部13bには、嵌合筒部13aの長軸方向(Z軸に平行な方向)に延出する複数の係止爪部13cが形成されている。この係止爪部13cは、当該車両用フードステー支持ユニット10が車体2のブラケット3aに装着されるとき、当該ブラケット3aに形成されている保持孔3aa(
図3参照)に嵌合する。
【0066】
このとき、グロメット13は、複数の係止爪部13cの作用により、車体2のブラケット3aの保持孔3aaに対してスナップフィットにより装着される。
【0067】
そのために、複数の係止爪部13cは、フランジ部13bから延出する板ばね梁部13caと、この板ばね梁部13caの先端にフック状に形成された爪部13cbとを有してそれぞれが形成されている。
【0068】
複数の係止爪部13cは、嵌合筒部13aから径方向外周側に所定の距離だけ離れた位置において、周方向に沿って所定の間隔を置いて複数並べて配設されている。本実施形態においては、
図6に示すように、4つの係止爪部13cを設けた構成を例示している。
【0069】
この構成により、グロメット13は、ブラケット3aの保持孔3aaに対してZ軸に沿う方向において抜去方向の移動が規制されつつ、Z軸周りの回動が許容されている。
【0070】
なお、車両用フードステー支持ユニット10が組み立てられた状態において、X軸,Y軸,Z軸は、
図5に示す座標軸のように、同一の交点で互いに直交している。つまり、第1の軸(Z軸)と第2の軸(Y軸)と第3の軸(X軸)とは、同一の交点で互いに直交している。換言すると、ステー連結部材11の第2の軸(Y軸)周りの揺動中心点と、円環状部材12の第3の軸(X軸)周りの揺動中心点と、保持部材(グロメット13)の第1の軸(Z軸)周りの回動中心点とは同一点である。
【0071】
このように構成される本実施形態の車両用フードステー支持ユニット10の作用を、以下に簡単に説明する。
【0072】
フードステー5を用いてフード4の開状態を保持する状態とするには、使用者(ユーザー)は、まず、所定の手順(不図示)に従ってフード4を開状態とする。
【0073】
その後、使用者(ユーザー)は、フード4を手等で支える等によって、当該フード4の開状態を維持する。
【0074】
次いで、フード4の開状態を維持したまま、フードステー5の先端側を車体2のブラケット3bから取り外す。そして、フードステー5の基端を所定の範囲で揺動させて、当該フードステー5の先端を、開状態としたフード4の内面側の嵌合孔4a,4bの一方に嵌合させる。これによって、フードステー5は、フード4を開状態で支持し、同状態が保持される。
【0075】
この場合において、フードステー5とステー連結部材11とは、フードステー5の基端部分の中心軸とステー連結部材11の長軸方向の中心軸とがZ軸において一致した状態で、ねじ結合により一体にかつ固定的に連結されている。
【0076】
フードステー5が連結されたステー連結部材11は、円環状部材12に対しZ軸に直交するY軸周りに所定の範囲内で揺動自在に支持されている。ここで、ステー連結部材11は、ステー連結部材11の長軸方向の中心軸と円環状部材12の中心軸とがZ軸において一致した状態で、円環状部材12の内周側に配設されている。したがって、この構成により、フードステー5の中心軸(Z軸)はY軸周りに揺動する。
【0077】
また、円環状部材12は、グロメット13に対しZ軸に直交しかつY軸に直交するX軸周りに所定の範囲内で揺動自在に支持されている。ここで、円環状部材12は、内周側にフードステー5を連結したステー連結部材11が、揺動自在に配設されている。したがって、この構成により、フードステー5の中心軸(Z軸)はX軸周りに揺動する。
【0078】
そして、グロメット13は、ブラケット3aに対してZ軸に沿う方向の抜去方向への移動が規制されつつ、Z軸周りの回動が許容されている。したがって、この構成により、フードステー5の中心軸(Z軸)はZ軸周りに回動自在である。
【0079】
以上説明したように上記一実施形態によれば、フードステー5は、車両用フードステー支持ユニット10に対し一体にかつ固定的にねじ結合されると共に、車両用フードステー支持ユニット10の支持構造によって、X軸及びY軸周りに揺動自在にかつZ軸周りに回動自在に支持される。
【0080】
したがって、この構成により、フードステー5は、保持部材(グロメット13)に対しガタや隙間なく一体にかつ固定的に支持されるので、フードステー5から保持部材(グロメット13)への過大な力量が加わるようなことはない。よって、保持部材(グロメット13)の破損を抑止することができる。また、フードステー5と保持部材(グロメット13)との間の隙間やガタ等を排除できるので、振動による異音の発生を抑止できると共に、フードステー5の脱落又は潜り込み等の発生も抑止できる。
【0081】
また、車両用フードステー支持ユニット10の支持構造により、フードステー5の可動範囲を拡大することができる。よって、利便性の向上に寄与することができる。そして、車両用フードステー支持ユニット10の構成を簡素化することができるので、部品点数の低減化及び生産性の向上に寄与し、製造コストの低減化に寄与することができる。
【0082】
さらに、フードステー5はX軸及びY軸周りに揺動自在とし、かつZ軸周りの回動を許容する構成としているので、フードステー5の充分な可動自由度を確保することができる。そしてまた、当該車両用フードステー支持ユニット10の取り付け位置の自由度を確保することができる。したがって、例えば、車両用フードステー支持ユニット10を取り付けるためのブラケット部品等の削減にも寄与することができる。
【0083】
また、フードステー5の非使用時においても、フードステー5を所定の位置に確実に収納することができるので、振動等に起因する異音等の発生を抑止することができる。
【0084】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施することができることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。この発明は、添付のクレームによって限定される以外にはそれの特定の実施態様によって制約されない。
【符号の説明】
【0085】
1…車両
2…車体
3…エンジンルーム
3a,3b…ブラケット
3aa…保持孔
4…フード
4a…嵌合孔
4b…第2の嵌合孔
5…フードステー
10…車両用フードステー支持ユニット
11…ステー連結部材
11a…連結筒部
11b…フランジ部
11c…雌ねじ
11d…ピン嵌合孔
12…円環状部材
12a…ピン貫通孔
12b…ピン嵌合孔
13…グロメット(保持部材)
13a…嵌合筒部
13b…フランジ部
13c…係止爪部
13ca…板ばね梁部
13cb…爪部
13d…ピン貫通孔
13e…開口
14,15…支軸ピン
Z…第1の軸(Z軸)
Y…第2の軸(Y軸)
X…第3の軸(X軸)