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特開2024-55124設計支援システム、設計支援方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055124
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】設計支援システム、設計支援方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20240411BHJP
   G06F 30/12 20200101ALI20240411BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20240411BHJP
【FI】
G06F30/10
G06F30/12
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161784
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹井 義博
(72)【発明者】
【氏名】松岡 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】市川 博則
(72)【発明者】
【氏名】松下 博史
(72)【発明者】
【氏名】西田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】井上 佑貴
【テーマコード(参考)】
5B146
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5B146AA21
5B146DC03
5B146DC05
5B146DL01
5B146DL08
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】容易に設計仕様を特定することができる設計支援システム、設計支援方法および設計支援方法を提供することである。
【解決手段】実施形態の設計支援システムは、製品の設計を支援する。設計支援システムは、入力部と特定部とを持つ。入力部は、製品に係る要求仕様の複数の項目の仕様値の入力を受け付ける。特定部は、要求仕様の一部の項目について仕様値の入力がなされた場合に、入力済みの項目の入力値と、未入力の項目の推定値とに基づいて、製品を構成するモジュールを特定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の設計を支援する設計支援システムであって、
前記製品に係る要求仕様の複数の項目の仕様値の入力を受け付ける入力部と、
前記要求仕様の一部の項目について仕様値の入力がなされた場合に、入力済みの項目の入力値と、未入力の項目の推定値とに基づいて、前記製品を構成するモジュールを特定する特定部と
を備える設計支援システム。
【請求項2】
前記要求仕様の入力済みの項目の仕様値に基づいて前記未入力の項目の推定値を特定する推定部
を備える請求項1に記載の設計支援システム。
【請求項3】
前記入力部は前記製品の用途の入力を受け付け、
前記推定部は、前記用途に基づいて前記要求仕様の未入力の項目の推定値を特定する
請求項2に記載の設計支援システム。
【請求項4】
前記入力部は前記製品の用途の入力を受け付け、
前記特定部は、前記要求仕様の複数の項目の仕様値と前記用途とに基づいて前記モジュールを特定する
請求項2に記載の設計支援システム。
【請求項5】
前記推定部は、前記要求仕様の少なくとも1つの項目に新たな入力値が入力されたときに、前記未入力の項目の推定値を更新する
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の設計支援システム。
【請求項6】
前記推定部は、過去に設計された製品の要求仕様の複数の項目の仕様値に基づいて、前記未入力の項目の推定値を生成する
請求項2から請求項4の何れか1項に記載の設計支援システム。
【請求項7】
前記要求仕様の複数の項目は、基本項目と詳細項目とを含み、
前記推定部は、前記基本項目の入力値に基づいて前記詳細項目の推定値を特定し、
前記特定部は、前記基本項目の入力値が入力されたときに、前記基本項目の入力値と、前記詳細項目の推定値とに基づいて、前記モジュールを特定する
請求項2から請求項4の何れか1項に記載の設計支援システム。
【請求項8】
前記要求仕様の少なくとも1つの項目の仕様値が選択肢から選択され、
前記入力部は、入力済みの項目の入力値に応じて、未入力の項目に係る選択肢を変化させる
請求項1または請求項2に記載の設計支援システム。
【請求項9】
前記要求仕様の少なくとも1つの項目の仕様値は、計算式によって求めることができ、
前記入力部は、前記少なくとも1つの項目について、前記計算式の説明変数の仕様値の入力を受け付けた場合に、前記計算式に基づいて前記入力値を求める
請求項1または請求項2に記載の設計支援システム。
【請求項10】
前記要求仕様の入力済みの項目の入力値と未入力の項目の推定値とに基づいて前記製品の性能の異なる複数の構成を特定し、前記複数の構成を選択可能に提示する提示部を備える
請求項1または請求項2に記載の設計支援システム。
【請求項11】
前記製品は、電源設備である
請求項1または請求項2に記載の設計支援システム。
【請求項12】
製品の設計を支援する設計支援方法であって、
1以上のコンピュータが、
前記製品に係る要求仕様の複数の項目の仕様値の入力を受け付けるステップと、
前記要求仕様の複数の項目のうち、一部の項目について仕様値の入力がなされた場合に、入力済みの項目の入力値と、未入力の項目の推定値とに基づいて、前記製品を構成するモジュールを特定するステップと
を実行する設計支援方法。
【請求項13】
コンピュータに、
製品に係る要求仕様の複数の項目の仕様値の入力を受け付けるステップと、
前記要求仕様の複数の項目のうち、一部の項目について仕様値の入力がなされた場合に、入力済みの項目の入力値と、未入力の項目の推定値とに基づいて特定された前記製品のモジュールに係る書類を出力するステップと
を備えるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は設計支援システム、設計支援方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気設備などの大規模なシステムを設計する場合、システムの設計者は顧客の要求仕様に基づいて製品の設計仕様を策定する。設計においては、設計仕様から、当該設計仕様を満たすモジュールを特定するコンフィグレータを用いる開発が進められている。コンフィグレータは、特定したモジュールに基づいて書類(見積書、モジュール表など)を生成する。設計者は、顧客との打ち合わせによって要求仕様をヒアリングして設計仕様を策定し、設計仕様をコンフィグレータに入力することで、設計に係る書類を作成する。
【0003】
設計仕様の策定は、システムの導入対象の設計段階など、システムの要求仕様が確定していない段階から行われる。そのため、状況の変化に応じて要求仕様が頻繁に変化することが少なくない。一方で、要求仕様が確定していない段階においても見積書などを生成する必要があるため、コンフィグレータの操作が必要となる。しかしながら、コンフィグレータに入力すべき設計仕様の項目数は膨大であり、要求仕様が未確定の段階ですべての設計仕様を設定することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-207791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、要求仕様を満たすモジュールを容易に特定することができる設計支援システム、設計支援方法および設計支援方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の設計支援システムは、製品の設計を支援する。設計支援システムは、入力部と特定部とを持つ。入力部は、製品に係る要求仕様の複数の項目の仕様値の入力を受け付ける。特定部は、要求仕様の一部の項目について仕様値の入力がなされた場合に、入力済みの項目の入力値と、未入力の項目の推定値とに基づいて、製品を構成するモジュールを特定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る設計支援システムの構成を示す概略図。
図2】第1の実施形態に係る画面例を示す第1の図。
図3】第1の実施形態に係る画面例を示す第2の図。
図4】第1の実施形態に係る画面例を示す第3の図。
図5】第1の実施形態に係る画面例を示す第4の図。
図6】第1の実施形態に係る画面例を示す第5の図。
図7】第1の実施形態に係る画面例を示す第6の図。
図8】第1の実施形態に係る画面例を示す第7の図。
図9】第1の実施形態に係る画面例を示す第8の図。
図10】第1の実施形態に係る画面例を示す第9の図。
図11】第1の実施形態に係る設計支援システムの概略ソフトウェア構成図。
図12】第1の実施形態に係る初期値テーブルの例を示す図。
図13】第1の実施形態に係る禁則ルールテーブルの例を示す図。
図14】第1の実施形態に係る設計支援システムにおける新規案件の作成処理を示すフローチャート。
図15】第1の実施形態に係る設計支援システムにおける詳細項目の編集処理を示すフローチャート。
図16】第1の実施形態に係る画面例を示す第10の図。
図17】他の実施形態に係る設計支援システムの概略ソフトウェア構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の設計支援システムを、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る設計支援システム1の構成を示す概略図である。
設計支援システム1は、製品である電源設備の設計を支援する。電源設備は、特別高圧スイッチギア、特別高圧変圧器、高圧スイッチギア、高圧変圧器、非常用発電機、無停電電源装置などの複数の装置の組み合わせによって構成される。電源設備は、前述した装置を含めた複数のモジュールから構成され、様々な特性を有する。モジュールは、装置自体や、その装置を構成する複数の部品の組み合わせであり、電源設備の構成単位である。電源設備の具体的な仕様は、相互に関連している。仕様は、電源設備が備える機能、性能、形状、部品構成、規格などである。一例として、あるモジュールを電源設備に使用すれば、そのモジュールのサイズ、出力、又は機能によって生じる制約により、別のモジュールを使用できなくなる。別の一例として、あるモジュールを電源設備に使用すれば、そのモジュールとの組み合わせによって悪影響が生じる別のモジュールの使用が制限される。電源設備を設計する際には、このような仕様の相関関係を考慮する必要があり、各モジュールは、電源設備に要求される仕様を満たすように選択され特定される。
設計支援システム1は、詳細設計装置10と、設計支援装置30とを備える。詳細設計装置10は、電源設備の設計仕様の仕様値の入力を受け付け、入力された仕様値を満たすように、電源設備を構成するモジュールを特定する。なお、詳細設計装置10が要求する設計仕様の項目数は膨大である(例えば1000項目を超える)ため、設計に不慣れな顧客が設計仕様を策定することは困難である。また詳細設計装置10は、特定したモジュールに基づいて設計に係る書類を生成する。詳細設計装置10が生成する書類の例としては、使用モジュール表、仕様明細書、単線接続図、配置単結図、外形図、側面図、NET見積書などが挙げられる。
【0009】
設計支援装置30は、顧客による設計仕様の仕様値の決定を支援し、決定された設計仕様の仕様値を詳細設計装置10に入力する。なお、設計支援装置30に入力すべき要求仕様の項目数は詳細設計装置10と比較して少ない(例えば、100項目以下)ため、設計に不慣れな顧客であっても電源設備の概略設計が可能となる。詳細設計装置10および設計支援装置30はインターネットなどの通信網Nに接続され、それぞれ通信網Nを介して端末Tからのアクセスを受け付ける。
【0010】
電源設備の設計を行う設計者は、端末Tを介して詳細設計装置10にアクセスする。以下、設計者が操作する端末Tを設計者端末T1とよぶ。電源設備の設計を依頼する顧客は、端末Tを介して設計支援装置30にアクセスする。以下、顧客が操作する端末を顧客端末T2とよぶ。
【0011】
ここで、設計支援装置30が提供するサービスについて説明する。図2図11は、設計支援装置30の画面例である。
顧客は、顧客端末T2を用いて設計支援装置30にアクセスする。設計支援装置30は、顧客端末T2に、図2に示すような新規プランの作成画面を表示させる。新規プランの作成画面では、案件の管理番号、名称、用途、設置地域の入力が求められる。顧客は管理番号、名称、用途および設置地域を入力し、作成開始ボタンを押下する。
【0012】
以下、設計支援装置30は、顧客から電源設備の要求仕様に係る複数の項目のうち、10-14項目程度の基本項目の仕様値の入力を受け付ける。基本項目は、電気設備の概略設計において必須となる要求仕様の項目である。基本項目の入力画面には、図3から図5に示すように、基本項目の入力フォームV1、ヒントV2、プログレスバーV3、次へボタンV4が表示される。基本項目の仕様値には、初期値が設定される。ヒントV2には、基本項目の仕様値の決定において考慮すべき情報、一部の選択肢が選択不可であることの根拠などが表示される。プログレスバーV3は、基本項目の仕様値の入力の進捗状況を示す。次へボタンV4は、押下されることで、選択されている基本項目の仕様値を確定し、次の入力すべき基本項目の画面に移動する。
【0013】
まず、設計支援装置30は、顧客端末T2に、図3に示すような電力会社の選択画面を表示させる。電力会社は、要求仕様の基本項目の1つである。電力会社は複数存在するが、図3に示す例では、電力会社として1社のみが選択可能となっている。これは、図2の新規プランの作成画面で入力された設置地域によって、使用可能な電力会社が絞り込まれたためである。顧客は電力会社を選択し、次へボタンV4を押下する。
【0014】
次に、設計支援装置30は、顧客端末T2に、図4に示すような受電電圧の選択画面を表示させる。受電電圧は、要求仕様の基本項目の1つである。受電電圧としては、77kV、66kV、33kV、22kVの4つが選択肢として設定されている。図4に示す例では、77kVおよび33kVが選択できないようになっている。これは、図3の電力会社の選択画面で選択した電力会社で使用可能な受電電圧が絞り込まれたためである。また、設計支援装置30は、予め推奨される選択肢である66kVを初期値として設定している。顧客が設計に不慣れでありどの受電電圧を選択するべきか判断できない場合や、設計の初期段階で受電電圧を定められない場合などにも、容易に適切な選択肢を選択することができる。顧客は受電電力を選択し、次へボタンV4を押下する。
【0015】
次に、設計支援装置30は、顧客端末T2に、図5に示すような主変圧器容量の選択画面を表示させる。主変圧器容量は、要求仕様の基本項目の1つである。図5に示すように、主変圧器容量の設定は、スライドバーの操作によってなされてもよいし、直接数値を入力することでなされてもよい。なお、図5の例では、設計支援装置30は、予め推奨される選択肢としてレベル6を初期値として設定している。また主変圧器容量の選択画面には、主変圧器容量を延床面積から計算する機能が設けられている。顧客が「延床面積から計算」ボタンを押下すると、設計支援装置30は、顧客端末T2に、図6に示すような延床面積の入力画面を表示させる。延床面積の入力画面では、用途ごとに延床面積の入力が可能となっている。また、用途ごとに、単位面積当たりの使用量等の初期値が入力されている。これにより、顧客は、用途ごとに延床面積を入力することで、主変圧器容量を計算することができる。この計算結果は、図5に示す主変圧器容量の選択画面に表示される。そのため、顧客は、主変圧器容量の計算結果を参考にしながら、主変圧器容量の仕様値を入力することができる。顧客は主変圧器容量の仕様値を入力すると、次へボタンV4を押下する。
【0016】
いくつかの基本項目の仕様値が入力された後、設計支援装置30は、顧客端末T2に、図7に示すような高圧部の構成の選択画面を表示させる。高圧部の構成は、要求仕様の基本項目の1つである。図7に示すように、高圧部の構成の選択画面では、図示された複数の構成のタイプが選択肢として設定されている。設計支援装置30は、それまでに入力された要求仕様の仕様値に基づいて、高圧部の構成の初期値を設定している。顧客は高圧部の構成を選択し、次へボタンV4を押下する。
【0017】
要求仕様のすべての基本項目について仕様値が入力されると、設計支援装置30は、顧客端末T2に、図8に示すような基本項目の仕様値の確認画面を表示させる。顧客は、それまでに設定した基本項目の仕様値を確認し、次の画面へ遷移させるボタンを押下する。設計支援装置30は、顧客に入力された基本項目の仕様値に基づいて、電源設備の設計仕様を生成し、詳細設計装置10に電源設備を構成するモジュールの組み合わせを特定させる。
【0018】
次に、設計支援装置30は、図9に示すように、顧客端末T2に、入力された要求仕様を満たす電源設備のプランの選択画面を表示させる。プランの選択画面に表示される電源設備の構成図は、設計支援装置30から入力された設計仕様に基づいて詳細設計装置10によって生成されたものである。図9に示す例では、初期値として1つのプラン(信頼性重視型)が選択されている。これは、図2の新規プランの作成画面で入力された用途によって特定されたものである。顧客は、提示されたプランの1つを選択し、次へボタンV4を押下する。
【0019】
次に、設計支援装置30は、図10に示すように、顧客端末T2に、電源設備の提示画面が表示される。電源設備の提示画面には、入力された要求仕様を満たす電源設備の構成および当該電源設備の見積額などが表示される。また、電源設備の提示画面には、要求仕様の詳細項目の入力フォームV1が含まれる。詳細項目は、電気設備の設計においてより詳細な設定を行うための要求仕様の項目である。顧客は、入力フォームV1の詳細項目の仕様値を書き換えて更新ボタンV5を押下することで、詳細項目に係る仕様を満たすように電源設備の構成を再度特定させることができる。なお、設計支援装置30は、顧客に入力された基本項目および詳細項目の仕様値に基づいて電源設備の設計仕様を再度特定し、詳細設計装置10に電源設備を構成するモジュールの組み合わせを特定させる。
また、顧客は、電源設備の提示画面の保存ボタンV6を押下することで、設計された電源設備の情報を記録する。このとき、顧客は、保存ボタンV6を押下したときの構成についての当該電源設備のモジュールに係る各種書類(仕様明細書、単線接続図など)をダウンロードすることができる。
【0020】
以下、上述した機能を提供する設計支援システムの構成について説明する。
図11は、第1の実施形態に係る設計支援システムの概略ソフトウェア構成図である。
詳細設計装置10は、設計向けUI11、アプリケーションインタフェース部12、演算部13、データベース14を備える。
【0021】
設計向けUI11は、設計者が詳細設計装置10を操作するためのユーザインタフェースを提供する。すなわち、設計向けUI11は、詳細設計装置10にアクセスした設計者端末T1に設計仕様の仕様値の入力画面を出力する。当該入力画面においては、入力された設計仕様の仕様値に応じて、入力すべき項目と入力不要な項目とを切り替える。例えば、設計向けUI11は、入力不要な項目を表示しないようにしてもよいし、入力不要な項目を無効化してもよい。これにより、設計者は入力すべき項目を容易に認識することができる。
アプリケーションインタフェース部12は、設計支援装置30から設計仕様の仕様値の入力を受け付ける。
【0022】
演算部13は、入力された設計仕様の仕様値と予め定められた禁則ルールとに基づいて、設計仕様の他の項目の入力の要否を判定する。演算部13によって判定された入力の要否に係る情報は、設計向けUI11によって出力される。なお、禁則ルールに基づく入力要否の判定は、非同期通信によって演算部13において行われてもよいが、表示データに組み込まれたスクリプトによって設計者端末T1において禁則ルールに基づく入力要否の判定が行われてもよい。禁則ルールの設定方法については、後述する。禁則ルールは、データベース14に記憶されていてもよいし、プログラムにおいて規定されたものであってもよい。
演算部13は、入力された設計仕様の仕様値に基づいて、設計仕様を満たしながら電源設備を構成可能なモジュールの組み合わせを特定し、当該モジュールの組み合わせに基づいて見積書やモジュール表などの各種書類を生成する。つまり演算部13は、設計仕様の仕様値に基づいて電源設備を構成するモジュールを特定する特定部の一例である。例えば、データベース14には、モジュールごとに、型番と種類(スイッチギア、変圧器などの装置、および装置を構成する部品など))と各種仕様項目(電圧、周波数、母線電圧、耐電圧など)の仕様値とが関連付けて記録されており、演算部13は、データベース14に記録された複数のモジュールの中から、設計仕様の仕様値を満たすものを抽出することで、電源設備を構成するモジュールを特定する。
【0023】
データベース14は、案件ごとに、当該案件を識別する案件IDと、入力された設計仕様の仕様値と、演算部13によって特定されたモジュールの組み合わせで構成される電源設備とを関連付けて記憶する。
【0024】
詳細設計装置10に要求される設計仕様の項目数は膨大であり、一定の知識や経験を要するため、設計に不慣れな顧客が顧客端末T2により詳細設計装置10に直接アクセスして電源設備の設計を行うことは困難である。他方、設計者は、設計者端末T1を用いて詳細設計装置10に直接アクセスすることで、電源設備の設計について細かな調整を行うことができる。
【0025】
設計支援装置30は、顧客向けUI31、演算部32、アプリケーションインタフェース部33、データベース34を備える。
【0026】
顧客向けUI31は、顧客が設計支援装置30を操作するためのユーザインタフェースを提供する。すなわち、顧客向けUI31は、設計支援装置30にアクセスした顧客端末T2に要求仕様の仕様値の入力画面を出力する。要求仕様は、設計仕様と比較して項目数が少ない。例えば、要求仕様の項目数は100未満であってよい。また、要求仕様の項目には、基本項目と詳細項目とが含まれる。基本項目は、電気設備の概略設計において必須となる要求仕様の項目である。詳細項目は、電気設備の設計においてより詳細な設定を行うための要求仕様の項目である。基本項目の数は、詳細項目の数より少ない。基本項目の数は、例えば10-14項目程度、詳細項目の数は、例えば40-60項目程度であってよい。
顧客向けUI31は、顧客に基本項目の入力画面を提示し、顧客から基本項目の仕様値の入力を受け付ける。基本項目の入力画面は、図2から図9に示すように、1ページあたり1項目の仕様値の入力を受け付け、入力を受け付けると次の項目に係るページに遷移する。顧客向けUI31は、基本項目の入力が終わった後に、図10に示すように、入力された基本項目の仕様値に基づいて算出された電気設備の概略構成を提示する。電気設備の概略構成は、基本項目の仕様値から推定される設計仕様に基づいて詳細設計装置10によって特定される。その後、顧客向けUI31は、顧客から必要に応じて詳細項目の仕様値の入力を受け付ける。
【0027】
演算部32は、顧客から要求仕様のうち少なくとも基本項目の仕様値が入力された場合に、当該基本項目の仕様値から詳細項目の仕様値を推定することで、すべての項目の仕様値を設定することができる。
演算部32は、入力された要求仕様の仕様値に基づいて、要求仕様のうち未入力の項目(他の項目)の仕様値を推定する。例えば、演算部32は、基本項目の仕様値に基づいて詳細項目の仕様値を推定する。演算部32は、入力済みの要求仕様の仕様値に基づいて未入力の要求仕様の推定値を特定する推定部の一例である。
演算部32は、顧客によって入力された情報に基づいて顧客のログイン処理を行う。
【0028】
アプリケーションインタフェース部33は、顧客向けUI31を介して入力された要求仕様の仕様値および演算部32によって推定された要求仕様の仕様値に基づいて、詳細設計装置10に入力すべき設計仕様の仕様値を決定する。上述した通り、詳細設計装置10は、1000項目を超える設計仕様の仕様値から、設計支援を満たすモジュールの組み合わせを決定する装置である。アプリケーションインタフェース部33は、決定した設計仕様の仕様値を詳細設計装置10に送信する。アプリケーションインタフェース部33は、詳細設計装置10から設計仕様の仕様値に基づいて生成された成果物(設計仕様を満たすモジュールの組み合わせ、および当該モジュールの組み合わせに基づいて生成される書類など)を受信する。
【0029】
データベース34は、案件を格納する案件テーブルと、顧客の情報を格納する顧客テーブルとを記憶する。案件テーブルは、案件ごとに、当該案件を識別する案件IDと、顧客を識別する顧客IDと、案件の顧客管理番号と、案件の名称、作成日、最終更新日、電源設備の用途、および顧客向けUI31を介して入力された要求仕様の仕様値を関連付けて格納する。案件テーブルには、推定された未入力の項目に係る要求仕様の仕様値、設計仕様の仕様値、詳細設計装置10によって算出された設計仕様の仕様値が格納されてもよい。他方、これらの仕様値は、入力された要求仕様の仕様値から再度算出することができるため、案件テーブルに格納されなくてもよい。顧客テーブルには、顧客毎に、顧客IDと、顧客の名称や住所などの顧客の情報と、パスワードなどのログインに用いる情報とが格納される。
【0030】
ここで、要求仕様の仕様値の特定について説明する。詳細設計装置10および設計支援装置30は、要求仕様の各項目の初期値テーブル(図12)と禁則ルールテーブル(図13)とに基づいて、当該要求仕様の仕様値を特定する。初期値テーブルは、要求仕様の初期値を格納したテーブルである。初期値は、他の要求仕様の仕様値によらずに決定される。禁則ルールテーブルは、目的変数である要求仕様の仕様値と、説明変数である他の要求仕様の仕様値との関係を格納したテーブルである。禁則ルールに係る要求仕様の仕様値は、他の要求仕様の仕様値によって決定される。
【0031】
図12は、第1の実施形態に係る初期値テーブルの例を示す図である。図12に示すように、初期値テーブルは、項目名と、当該項目の初期値とを関連付けたものである。図12に示す初期値テーブルの例は、一の項目の選択肢それぞれについて、初期値に1を、初期値でないものに0を関連付けたものである。詳細設計装置10または設計支援装置30は、入力されていない項目の仕様値を、初期値テーブルに基づいて推定する。図12に示す例は、仕様項目が選択肢で提示されるが、数値や文字列の入力を受け付けるものであってもよい。この場合、単に項目名に初期値としての数値や文字列が関連付けられたものであってよい。
【0032】
図13は、第1の実施形態に係る禁則ルールテーブルの例を示す図である。図13に示すように、禁則ルールテーブルは、説明変数に係る1以上の項目名およびその仕様値の条件、ならびに目的変数に係る項目名およびその仕様値の推定値とを関連付けたものである。例えば、図4に示す受電電圧の選択を図13に示す禁則ルールで説明すると、説明変数は電力会社で目的変数は受電電圧となる。禁則ルールテーブルでは、電力会社の選択肢ごとに、受電電圧の各選択肢が選択可能か否か、また初期値として設定されるか否かが定められる。
説明変数の仕様値の条件は、選択(図13では“●”で示される)および非選択(図13では空白で示される)の何れかの値をとる。目的変数の仕様値の推定値は、選択肢に含まれないことを示す値(図13では“×”で示される)、選択肢に含まれるが初期値に選択されないことを示す値(図13では“○”で示される)、および選択肢に含まれかつ初期値として選択されることを示す値(図13では“◎”で示される)、の何れかの値をとる。つまり、禁則ルールテーブルは、説明変数に係る項目の仕様値(説明変数が2項目以上である場合には、仕様値の組み合わせ)である条件と、その条件を満たすときに目的変数に係る項目が選択肢に含まれるか否か、およびその項目の初期値を示す推定値とを関連付けたものである。
【0033】
例えば、図13に示す例1では、説明変数である項目Aの選択肢A1および項目Bの選択肢B1の組み合わせについて、目的変数である項目Cの選択肢C1に“◎”が、他の選択肢C2-C4に“○”が関連付けられている。これは、項目Aの選択肢A1および項目Bの選択肢B1が選択されたときに、項目Cの選択肢C1-C4が選択可能とされ、かつ項目Cの仕様値がC1と推定されることを示す。例えば、項目Aが受電電圧、項目Bが主変圧器容量、項目Cが高圧部の構成である場合、図7に示す高圧部の構成の選択画面において、受電電圧の仕様値がA1、主変電器容量の仕様値がB1であった場合に、高圧部の構成として、選択肢C1-C4が選択可能に表示され、選択肢C1が初期値として設定される。
【0034】
また例えば、図13に示す例2では、説明変数である項目Aの選択肢A2および項目Bの選択肢B1の組み合わせについて、目的変数である項目Cの選択肢C1に“×”が、選択肢C2、C3に“○”が、選択肢C4に“◎”が関連付けられている。これは、項目Aの選択肢A2および項目Bの選択肢B1が選択されたときに、項目Cの選択肢C2-C4が選択可能とされ、かつ項目Cの仕様値がC4と推定されることを示す。このとき、選択肢C1は選択肢として表示されなくてよい。例えば、項目Aが受電電圧、項目Bが主変圧器容量、項目Cが高圧部の構成である場合、図7に示す高圧部の構成の選択画面において、受電電圧の仕様値がA2、主変電器容量の仕様値がB1であった場合に、高圧部の構成として、選択肢C2-C4が選択可能に表示され、選択肢C4が初期値として設定される。選択肢C1は、選択画面に表示されなくてもよいし、グレーアウトして表示されてもよい。
【0035】
また例えば、図13に示す例3では、説明変数である項目Aの選択肢A2および項目Bの選択肢B3の組み合わせについて、目的変数である項目Cの選択肢C1-C3に“×”が、選択肢C4に“◎”が関連付けられている。これは、項目Aの選択肢A2および項目Bの選択肢B3が選択されたときに、項目Cの仕様値がC4に確定されることを示す。このとき、項目Cは入力不可とされてよい。例えば、項目Aが受電電圧、項目Bが主変圧器容量、項目Cが高圧部の構成である場合、図7に示す高圧部の構成の選択画面において、受電電圧の仕様値がA2、主変電器容量の仕様値がB3であった場合に、高圧部の構成が選択肢C4に確定される。この場合、図7に示す高圧部の構成の選択画面自体がスキップされてもよいし、選択肢C4のみが選択可能な画面が表示されてもよい。
【0036】
また例えば、図13に示す例4では、説明変数である項目Aの選択肢A3および項目Bの選択肢B1の組み合わせについて、目的変数である項目Cの選択肢C1-C4のすべてに“×”が関連付けられている。これは、項目Aの選択肢A3および項目Bの選択肢B1が選択されたときに、項目Cについていずれの値も選択されないことを示す。このとき、項目Cは表示されなくてよい。
【0037】
禁則ルールテーブルには、少なくとも要求仕様の基本項目を説明変数とし、詳細項目を目的変数とするルール、要求仕様を説明変数とし、設計仕様を目的変数とするルールが格納される。基本項目を説明変数とし詳細項目を目的変数とするルールは、図3から図7で設定された基本項目の仕様値から、図10に示すような詳細項目を推定するために用いられる。要求仕様を説明変数とし設計仕様を目的変数とするルールは、設計支援装置30が詳細設計装置10にモジュールの組み合わせを特定させるために、要求仕様の仕様値から設計仕様を特定するために用いられる。
禁則ルールテーブルには、さらに、要求仕様の基本項目を説明変数とし、他の基本項目を目的変数とするルール、要求仕様の詳細項目を説明変数とし、他の詳細項目を目的変数とするルール、要求仕様の基本項目と詳細項目の組み合わせを説明変数とし、他の詳細項目を目的変数とするルール、設計仕様を説明変数とし、設計仕様の他の項目を目的変数とするルール、要求仕様と設計仕様の組み合わせを説明変数とし、設計仕様の他の項目を目的変数とするルールなどが格納されていてもよい。これらのルールは、顧客による要求仕様の詳細項目の仕様値の入力や、設計者による設計仕様の仕様値の編集などの際に用いられる。
【0038】
なお、初期値テーブルおよび禁則ルールテーブルにおいて設定される初期値は、過去に設計された電気設備の要求仕様の仕様値に基づいて統計的に求められたものであってよい。この場合に、初期値テーブルおよび禁則ルールテーブルは、顧客ごとに設定されるものであってよい。つまり、初期値テーブルおよび禁則ルールテーブルは、当該顧客のために過去に設計された電気設備の仕様値に基づいて求められたものであってよい。
【0039】
次に、第1の実施形態に係る設計支援システム1の動作について説明する。
顧客は、顧客端末T2を用いて設計支援装置30にアクセスする。設計支援装置30の顧客向けUI31は、ログイン画面を表示する。顧客は、顧客端末T2を介して顧客IDおよびパスワードを入力する。演算部32は、入力された顧客IDおよびパスワードをデータベース34の顧客テーブルに記録された情報とを照合し、ログイン処理を行う。なお、顧客IDがない場合、演算部32は、顧客からの入力に基づいてデータベース34の顧客テーブルに当該顧客の情報を記録する。顧客IDおよびパスワードは、顧客によって入力されてもよいし、自動生成されてもよい。
【0040】
顧客がログインすると、顧客向けUI31は、メニュー画面を生成し、顧客に提示する。メニュー画面には、新規案件の作成、案件一覧の表示などのメニューが含まれる。新規案件の作成が選択されると、設計支援装置30は、新規の案件の情報の入力を受け付ける。他方、案件一覧の表示が選択されると、設計支援装置30は、過去に当該顧客が作成した案件の一覧を表示する。案件の一覧には、案件ごとの名称、作成日、最終更新日、電気設備の概略構成図、標準価格、設置面積などが表示される。また、一覧からひとつの案件が選択されると、当該案件の詳細な情報と、編集ボタンとが表示される。編集ボタンを押下することで、当該案件の情報を更新することができる。
【0041】
図14は、第1の実施形態に係る設計支援システム1における新規案件の作成処理を示すフローチャートである。図15は、第1の実施形態に係る設計支援システム1における詳細項目の編集処理を示すフローチャートである。
【0042】
メニュー画面から新規案件の作成が選択されると、顧客向けUI31は、図2に示すように顧客から案件の管理番号、名称および用途の入力画面を表示し、入力を受け付ける(ステップS0)。用途の例としては、オフィスビル、商業ビルなどが挙げられる。このとき、入力画面には、基本項目の入力フォームが含まれていてもよい。例えば図2に示す入力画面には、基本項目の一つである設置地域の入力フォームが含まれている。
【0043】
次に、設計支援装置30は、要求仕様の基本項目の入力を受け付ける。例えば、図3から図7に示すような基本項目の入力画面は項目ごとに用意され、設計支援装置30は、複数の入力画面を表示順に従って表示させる。例えば、設計支援装置30は、基本項目Aの入力画面(例えば、図3に示す電力会社の選択画面)において基本項目Aの仕様値が入力された後に、基本項目Bの入力画面(例えば、図4に示す受電電圧の選択画面)を出力する。なお、2つの基本項目の関係を規定する禁則ルールが設定されている場合、目的変数に係る項目の入力画面の表示順は、説明変数に係る項目の入力画面より後に設定される。例えば、禁則ルールテーブルにおいて電力会社を説明変数とし、受電電圧を目的変数とする禁則ルールが設定されているため、受電電圧の選択画面は電力会社の選択画面より後に表示される。
【0044】
演算部32は、予め定められた表示順に従って入力画面を表示すべき基本項目を特定する(ステップS1)。つまり、演算部32は、表示順が最も早く、かつ未設定の基本項目を、入力画面を表示すべき基本項目として特定する。演算部32は、特定された基本項目を目的変数とする禁則ルールが存在するか否かを判定する(ステップS2)。特定された基本項目を目的変数とする禁則ルールが存在しない場合(ステップS2:NO)、演算部32は、初期値テーブルに従って当該基本項目の初期値を決定する(ステップS3)。つまり、ステップS1で特定された基本項目を、入力済みの他の基本項目の仕様値から求めることができない場合に、演算部32は、ステップS1で特定された基本項目の初期値を初期値テーブルの値に決定する。例えば、基本項目の1つである受電方式を1回線受電とするか2回線受電とするかが電力会社などの入力済みの他の基本項目によって限定されない場合、演算部32は、初期値テーブルに規定された受電方式(例えば2回線受電)を初期値に設定する。
【0045】
他方、特定された基本項目を目的変数とする禁則ルールが存在する場合(ステップS2:YES)、演算部32は、当該禁則ルールに基づいて、説明変数の値から当該基本項目の選択可能な選択肢および初期値(推定値)を決定する(ステップS4)。例えば、基本項目の1つである受電電圧は電力会社によって選択可能なものが限定されるため、演算部32は、禁則ルールテーブルに規定された禁則ルールに従って、選択可能な選択肢および初期値を設定する。演算部32は、選択可能な選択肢が存在するか否かを判定する(ステップS5)。
【0046】
禁則ルールがない場合(ステップS2:NO)、または禁則ルールの適用後に選択可能な選択肢が存在する場合(ステップS5:YES)。顧客向けUI31は、ステップS1で特定した基本項目の入力画面(例えば図3から図7)を顧客端末T2に送信する(ステップS6)。
【0047】
顧客向けUI31が、顧客端末T2から基本項目の仕様値の入力を受け付けた場合(ステップS7)、またはステップS5で選択可能な選択肢が存在しないために基本項目の入力画面をスキップした場合(ステップS5:NO)、演算部32は、次に入力画面を表示すべき基本項目が存在するか否かを判定する(ステップS8)。次に入力画面を表示すべき基本項目が存在する場合(ステップS8:YES)、ステップS1に処理を戻し、次の基本項目についての処理を行う。
【0048】
他方、次に表示すべき基本項目がない場合(ステップS8:NO)、つまりすべての基本項目への入力を終えた場合、演算部32は、当該案件の案件IDを生成し、顧客IDおよび基本項目の入力値を関連付けてデータベース34に記録する(ステップS9)。
次に、演算部32は、禁則ルールに基づいて、入力された基本項目の仕様値から詳細項目の推定値を算出する(ステップS10)。このとき、演算部32は、詳細項目の推定値の組み合わせを3組生成する。具体的には、演算部32は、信頼性とコストのバランスをとった組み合わせ(バランス型)、信頼性を重視した組み合わせ(信頼性重視型)、およびコストを重視した組み合わせ(コスト重視型)をそれぞれ生成する。さらに演算部32は、禁則ルールに基づいて、基本項目の入力値および詳細項目の推定値から設計仕様の推定値を算出する(ステップS11)。すなわち、演算部32は、詳細項目の推定値の組み合わせ3組それぞれについて、設計仕様の推定値を算出する。つまり、演算部32は、入力済みの要求仕様の入力値と未入力の要求仕様の推定値とに基づいて電気設備の性能の異なる複数の構成を特定する。
アプリケーションインタフェース部33は、電源設備の用途および算出された3組の設計仕様の推定値を含む設計指示を詳細設計装置10に送信する(ステップS12)。
【0049】
詳細設計装置10のアプリケーションインタフェース部12が設計支援装置30から設計指示を受信すると(ステップS13)、演算部13は、受信した設計指示に含まれる設計仕様に基づいて設計仕様を満たすモジュールの組み合わせを特定する(ステップS14)。これは、演算部13は、一部の要求仕様について仕様値の入力がなされた場合に、入力済みの要求仕様の入力値と、未入力の要求仕様の推定値とに基づいて、モジュールを特定することと同義である。このとき、演算部13は、特定したモジュールの組み合わせに基づく電源設備の構成図を生成し、標準価格および設置面積を算出する。つまり、演算部13は、3組の設計仕様それぞれについて、モジュールの組み合わせを特定し、当該組み合わせによる構成図、標準価格および設置面積を算出する。また、演算部13は、禁則ルールに基づいて、設計仕様の仕様値に不整合がないかを判定する。
また、演算部13は、設計仕様を満たし得るモジュールの組み合わせの選択肢が存在する項目がある場合、設計指示に含まれる用途に基づいて選択肢を決定する。例えば、演算部13は、設計仕様を満たすモジュールの組み合わせが複数存在する場合に、用途が病院などである場合には、信頼性が高いモジュールの組み合わせを選択し、用途が商業施設などである場合には、コストが低いモジュールの組み合わせを選択する。つまり、演算部13は、要求仕様の仕様値と用途とに基づいてモジュールを決定する。
アプリケーションインタフェース部12は、演算結果を設計支援装置30に送信する(ステップS15)。
【0050】
設計支援装置30のアプリケーションインタフェース部33が詳細設計装置10から3組の演算結果を受信すると(ステップS16)、顧客向けUI31は、受信した演算結果を提示しながら、バランス型、信頼性重視型およびコスト重視型の3組のプランの何れかの選択可能に提示する入力画面(図9)を生成し、顧客端末T2に出力する。このとき、各プランに関連付けて、演算結果に含まれる構成図、標準価格および設置面積が表示される。演算部32は、プランの初期値を、ステップS0で入力された用途に基づいて決定する。つまり、演算部32は、用途に基づいて要求仕様の未入力の項目の推定値を特定する。
【0051】
顧客向けUI31は、顧客端末T2からプランの選択を受け付けると(ステップS17)、選択されたプランに係る要求仕様の詳細項目の入力画面(図10)を顧客端末T2に送信する(ステップS18)。詳細項目の入力画面には、ステップS10で特定された設計仕様の推測値が初期値として設定されている。また、全ての選択肢が選択不可である項目については、無効化して(例えばグレーアウトして)表示されてもよい。なお、全ての選択肢が選択不可である項目は、表示されなくてもよい。顧客向けUI31は、詳細項目の仕様値の変更またはプランの保存の何れかの入力を受け付ける(ステップS19)。
【0052】
詳細項目の仕様値が変更された場合(ステップ19:変更)、つまり図10に示す詳細項目の入力フォームV1の仕様値が変更され、更新ボタンV5が押下された場合、演算部32は、禁則ルールに基づいて、入力された詳細項目の仕様値から他の詳細項目の選択肢の選択可否および推定値を算出する(ステップS20)。次に、演算部32は、詳細項目の仕様値の変更によって、入力値が後発的に選択不可になった他の詳細項目の有無を判定する(ステップS21)。
【0053】
詳細項目の仕様値の変更によって、入力値が後発的に選択不可になった他の詳細項目がある場合(ステップS21:YES)、設計支援装置30は処理をステップS18に戻し、入力画面の表示を続ける。このとき、顧客向けUI31は、後発的に選択不可となった項目があることを示す警告を入力画面に表示してよい。
【0054】
他方、入力値が後発的に選択不可になった他の詳細項目がない場合(ステップS21:NO)、演算部32は、禁則ルールに基づいて、基本項目、詳細項目の入力値、ならびに他の詳細項目の推定値から、設計仕様の推定値を算出する(ステップS22)。そして、アプリケーションインタフェース部33は、設計仕様の推定値を含む設計指示を詳細設計装置10に送信する(ステップS23)。
【0055】
詳細設計装置10のアプリケーションインタフェース部12が設計支援装置30から設計仕様を含む設計指示を受信すると(ステップS24)、演算部13は、受信した設計仕様に基づいて設計仕様を満たすモジュールの組み合わせを特定する(ステップS25)。アプリケーションインタフェース部12は、演算結果を設計支援装置30に送信する(ステップS26)。
【0056】
設計支援装置30のアプリケーションインタフェース部33が詳細設計装置10から演算結果を受信すると(ステップS27)、設計支援装置30は、処理をステップS18に戻し、要求仕様の詳細項目の入力画面を更新する。つまり、演算部32は、複数の要求仕様の少なくとも1つに新たな入力値が入力されたときに、未入力の要求仕様の推定値を更新する。なお、ステップS20-S27による画面の更新は、表示データに組み込まれたスクリプトの実行による非同期通信によって行われてよい。
【0057】
ステップS19でプランの保存が選択された場合(ステップ19:保存)、つまり図10において保存ボタンV6が押下された場合、演算部32は、当該案件に係る案件IDに関連付けられた基本項目、詳細項目の入力値を、データベース34に上書きする(ステップS29)。また、演算部32は、禁則ルールに基づいて、基本項目、詳細項目の入力値、および他の詳細項目の推定値から設計仕様を満たすモジュールの組み合わせを算出する(ステップS30)。そして、アプリケーションインタフェース部33は、案件IDと設計仕様の推定値とを含む保存指示を詳細設計装置10に送信する(ステップS31)。
【0058】
詳細設計装置10のアプリケーションインタフェース部12が保存指示を受信すると(ステップS31)、演算部13は、受信した保存指示に含まれる設計仕様に基づいてモジュールの組み合わせを特定する(ステップS32)。そして、演算部13は、受信した保存指示に含まれる案件IDと、設計仕様の推定値と、特定されたモジュールの組み合わせとを関連付けてデータベース14に記録する(ステップS33)。
【0059】
これにより、顧客は、少なくとも要求仕様の基本項目を入力することで、設計支援装置30が詳細項目の仕様値およびこれに基づく設計仕様を満たすモジュールの組み合わせを推定するため、容易に電源設備の構成図、標準価格、および設置面積の概算を得ることができる。さらに、顧客は、要求仕様の詳細項目まで入力することで、より詳細に構成図、標準価格、および設置面積を検討することができる。この場合も、設計支援装置30は詳細項目の一部の仕様値の入力により、他の項目の仕様値を推定するため、詳細項目のすべてを入力することなく、設計仕様の仕様値を更新することができる。
【0060】
なお、メニュー画面から案件一覧の表示が選択された場合、顧客向けUI31は、データベース34から、ログインされた顧客IDに関連付けられた案件を読み出し、案件の一覧を表示する一覧画面を顧客端末T2に送信する。図16は、第1の実施形態に係る一覧画面の例を示す図である。案件の一覧からは、選択された案件の要求仕様の編集を行うことができる。要求仕様の編集を開始すると、設計支援装置30は、図15に示すステップS18以降の処理を実行する。
【0061】
このように顧客が設計した案件について、設計者は設計者端末T1を用いて設計支援装置30にアクセスすることで、設計仕様を直接編集することができる。
このように、第1の実施形態に係る設計支援システム1を用いることで、顧客によって概略の設計を行い、顧客の意図を組んで設計者が設計を行うことができる。また、設計者が操作する詳細設計装置10と顧客が操作する設計支援装置30とを切り分けつつ、設計仕様からモジュールの組み合わせを決定するロジックを詳細設計装置10に集約することで、顧客が設計支援装置30を用いて設計した電源設備の設計仕様について、設計者が詳細設計装置10を用いて調整することができる。
顧客が設計支援装置30を用いて入力した電源設備の要求仕様およびこれから特定された設計仕様の値はデータベース14に記録される。設計者は、データベース14に記録された設計仕様を直接編集してもよいし、当該設計仕様を複製してデータベース14に新規に記録し、オリジナルの設計仕様を変更せずに、複製された設計仕様を編集してもよい。詳細設計装置10は、オリジナルの設計仕様が直接編集されないようにロックする機能を有していてもよい。
【0062】
なお、他の実施形態に係る設計支援システム1は、図17に示すように詳細設計装置10および設計支援装置30の機能が1つの装置で実現されてもよい。図17は、他の実施形態に係る設計支援システムの概略ソフトウェア構成図である。設計支援システム1は、設計向けUI11、顧客向けUI31、演算部23およびデータベース24を備える。演算部23は、第1の実施形態に係る演算部13の機能と演算部32の機能を有する。データベース24は、第1の実施形態に係るデータベース14が記憶するデータおよびデータベース34が記憶するデータを記憶する。図17に示す構成によれば、設計支援システム1は、アプリケーションインタフェース部を介した通信を行うことなく顧客による要求仕様の入力および設計者の詳細設計の入力を受け付けることができる。
また他の実施形態に係る設計支援システム1は、詳細設計装置10と設計支援装置30とが互いに連携せず、それぞれ独自に設計仕様の仕様値からモジュールの組み合わせを求めるロジックを有していてもよい。
【0063】
また、第1の実施形態に係る設計支援システム1は、禁則ルールを用いて要求仕様の推定値を算出する。これにより、互いに関連性のある要求仕様の一方を変更したときに、他方の要求仕様の仕様値に矛盾が生じることを防ぐことができる。
【0064】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、設計支援システム1は以下の特徴を持つ。設計支援システムは、入力部(顧客向けUI31)と特定部(演算部13)とを持つ。入力部は製品(電源設備)に係る複数の要求仕様の仕様値の入力を受け付ける。特定部は、複数の要求仕様のうち、一部の要求仕様について仕様値の入力がなされた場合に、入力済みの要求仕様の入力値と、未入力の要求仕様の推定値とに基づいて、要求仕様を満たすモジュールを特定する。これにより、顧客は容易に設計仕様を特定することができる。
【0065】
〈コンピュータ構成〉
詳細設計装置10は、それぞれバスで接続されたプロセッサ、メモリ、補助記憶装置などを備え、プログラムを実行することによって設計向けUI11、アプリケーションインタフェース部12および演算部13を備える装置として機能する。また、設計支援装置30は、それぞれバスで接続されたプロセッサ、メモリ、補助記憶装置などを備え、プログラムを実行することによって顧客向けUI31、アプリケーションインタフェース部33および演算部32を備える装置として機能する。プロセッサの例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えば磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
なお、詳細設計装置10または設計支援装置30の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)等のカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を用いて実現されてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0067】
1…設計支援システム 10…詳細設計装置 11…ユーザインタフェース部 12…アプリケーションインタフェース部 13…演算部 14…データベース 30…設計支援装置 31…ユーザインタフェース部 32…演算部 33…アプリケーションインタフェース部 34…データベース N…通信網 T…端末 T1…設計者端末 T2…顧客端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17