(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055129
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】筆記具用中綿
(51)【国際特許分類】
B43K 8/03 20060101AFI20240411BHJP
B43K 8/06 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B43K8/03 100
B43K8/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161797
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】神谷 俊史
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA04
2C350HA15
2C350KA01
2C350KC11
2C350NC03
2C350NC04
2C350NC19
2C350NC20
2C350NC30
(57)【要約】
【課題】 ペン先に対して確実にインクを供給でき、インク拡散性を高めることができる筆記具用中綿を提供する。
【解決手段】
細孔径が2種以上の分布を持ち、第一の細孔径は、30~200μmであり、第二の細孔径は、第一の細孔径の50~90%であることを特徴とする筆記具用中綿。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔径が2種以上の分布を持ち、第一の細孔径は、30~200μmであり、第二の細孔径は、第一の細孔径の50~90%であることを特徴とする筆記具用中綿。
【請求項2】
第二の細孔径部分は、中綿の径方向の中央に配置され、第二の細孔径部分の面積は、第一の細孔径部分の面積の5~50%であることを特徴とする請求項1記載の筆記具用中綿。
【請求項3】
第二の細孔径分布の気孔率は、第一の細孔径分布の部分の50~98%であることを特徴とする請求項1又は2記載の筆記具用中綿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペン先に対して確実にインクを供給でき、インク拡散性を高めることができる筆記具用中綿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ペン先に対し確実にインクを供給させる目的で、インク拡散性を高めた筆記具用中綿、それを用いた筆記具などが知られている。
例えば、繊維を有するコア構成要素と、繊維を有する周囲構成要素とを有するロッドを有するリザーバーであって、前記コア構成要素は第1の特性を有し、前記周囲構成要素は、前記第1の特性とは異なる第2の特性を有する、リザーバー、このリザーバーにおいて、前記第1の特性および前記第2の特性は、繊維嵩密度、繊維直径、繊維材料、繊維形態、繊維表面張力、毛細管力、流体吸収能力、色、およびこれらの組み合わせからなる群から独立して選択される、リザーバー、また、上記リザーバーにおいて、前記繊維嵩密度が約0.01g/cm3~約0.4g/cm3の範囲であること、前記繊維直径が、約0.5μm~約50μmの範囲であることなどの油性マーカー、ハイライトマーカーなどの筆記具に用いられる不均一繊維流体のリザーバー(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【0003】
このリザーバーは、所謂筆記具用中綿に相当するものであって、中綿の繊維嵩密度等を「粗密中綿」とすることで、中綿内に供給されたインクが拡散でき、軸筒の両端部にある両ペン先に確実にインクを供給して筆記できるようにしたものである。この粗密中綿は、中綿の径方向中心部に繊維が密状態の部分と、円周部に繊維が疎状態の部分を有していることを特徴としており、粗密中綿にインクを充填すると、密状態の部分が優先的にインクを吸い上げ、中綿両端面に速やかにインクが供給されることにより中綿のインク拡散性が高められているものである。
【0004】
更に、他の文献では、例えば、軸筒と、前記軸筒の内部に収容されるとともに長手方向に対し垂直な断面において軸心寄りに位置し気孔率が比較的低い密部及び前記密部の周囲に位置し気孔率が比較的高い疎部から成る中綿と、前記中綿に含浸されるとともに静的表面張力値が35mN/m以下である水性インクと、前記密部に接続し毛管力で前記水性インクを先端へ誘導する筆記先端と、を備えることを特徴とするマーキングペン(例えば、本出願人による特許文献2参照)が知られている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2は、従来にない筆記具用中綿、それを用いた筆記具であるが、上記特許文献1では未だペン先に対し効率良くインクを供給させることができない場合などがあり、また、上記特許文献1、2に対してはインク拡散性を更に高めることが求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2022-501226号公報(特許請求の範囲、FIG1等)
【特許文献2】特開2021- 66043号公報(特許請求の範囲、
図7等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題や現状などに鑑み、これを解消しようとするものであり、ペン先に対し更に効率良くインクを供給させることができ、インク拡散性を更に高めることができる筆記具用中綿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記従来の課題等を解決するために鋭意検討した結果、繊維束等から構成される中綿の細孔径が2種以上の分布を持ち、第一の細孔径と、第二の細孔径を、それぞれ特定の範囲とすることにより、上記目的の筆記具用中綿が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明の筆記具用中綿は、細孔径が2種以上の分布を持ち、第一の細孔径は、50~300μmであり、第二の細孔径は、第一の細孔径の50~90%であることを特徴とする。
第二の細孔径部分は、中綿の径方向の中央に配置され、第二の細孔径部分の面積は、第一の細孔径部分の面積の5~50%であることが好ましい。
第二の細孔径分布の気孔率は、第一の細孔径分布の部分の50~95%であることが好ましい。
第二の細孔径部分の繊維の直径は、第一の細孔径部分の繊維の直径の20~98%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ペン先に対し更に効率良くインクを供給させることができ、インク拡散性を更に高めることができる筆記具用中綿が提供される。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)は本発明の筆記具用中綿の一例を示す正面図、(b)は(a)の中綿を縦断面態様で示すものであり、細孔径分布が2種以上の分布を持つ状態の模式図である。
【
図2】本発明の筆記具用中綿を搭載した筆記具の一例を示す図面であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は正面視の縦断面図、(d)は(b)の縦断面図である。
【
図3】
図2の筆記具からキャップを取り外した状態を示す図面であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は(b)の縦断面図、(e)は(c)の縦断面図である。
【
図4】
図2の筆記具におけるペン先側を示す部分拡大図面であり、(a)は正面図、(b)はその縦断面図である。
【
図5】(a)は
図4の筆記具のペン先を前方側から見た斜視図、(b)はそのペン先を後方側から見た斜視図である。
【
図6】筆記具に用いるペン先の可視部を有する保持体の一例を示す各図面であり、(a)は前方側から見た斜視図、(b)は平面図、(c)は後方側から見た斜視図、(d)は左側面図、(e)は正面図、(f)は右側面図、(g)は前方側の上方から見た斜視図、(h)縦断面図、(i)は後方側の上方から見た斜視図、(j)は底面図である。
【
図7】
図6のペン先に取り付けられる筆記部の一例を示す各図面であり、(a)は平面図、(b)は斜視図、(c)は正面図、(d)は右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述する実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
なお、
図2以降の本発明の筆記具用中綿を搭載した筆記具等の各図において、筆記具A及びその構成部品についての「前方」とは、筆記具Aの先端の方向を示し、「後方」とはその反対側の方向を示し、「軸方向」とは、筆記具本体(軸筒)の前方から後方までを貫く軸の方向を示し、「横断方向」とは、軸方向に直交する方向を示すものとする。また、各図面間で共通して付されている符号は、特に各図面の説明において言及がなくとも、同じ構成又は部材を表している。
【0013】
(筆記具用中綿)
本発明の筆記具用中綿は、インク吸蔵体となるものであり、水性インク、油性インク、熱変色性インクなどの筆記具用インク組成物を含浸するものであり、本発明では、細孔径分布が2種以上の分布を持つ中綿から構成されている。
上記細孔径分布が2種以上の分布を持つ中綿を得るには、例えば、中綿に用いる繊維の繊維嵩密度、繊維直径、繊維材料、繊維形態、繊維表面張力、毛細管力が異なる(以下、「各物性が異なる」という)繊維を用いて、または、これらを2種以上好適に組み合わせることにより、目的の中綿を作製することができる。
用いることができる繊維としては、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせなどが挙げられる。
本発明の筆記具用中綿の製造方法等については更に後述する。
【0014】
この中綿が2種以上の細孔径分布の有無の検証は、水銀ポロシメーターによる細孔分布を測定することにより確認することができる。
細孔径分布のない通常の中綿は、細孔分布がほぼ1ピークであるのに対し、2種以上の細孔径分布を有する中綿は、2ピーク以上、すなわち、細孔分布が2ピーク以上あるとみなせる。この細孔分布が2ピークであるとは、中綿内の細孔で、細かい部分と粗い部分があるということである。あくまで細孔の状態の分布を表しているのであって、従来における中綿に、疎、密があるものとは異なるものである。従来の疎および密の状態とは、細孔と繊維との容積比(断面の面積比でも同じこと)の違いを表している。
一方、中綿とインクで発生する毛細管力とは、細孔の細かさ、粗さによって決まっている。インク拡散性を高めるためには、中綿内に毛細管力が低い部分と高い部分を設ける必要があり、それは(粗密ではなく、本質的には)細孔の粗さ、細かさによって得られる。
【0015】
水銀ポロシメーターによる測定で、中綿に細孔径分布の有無は、下記細孔分布のピーク数を算出することにより測定することができる。
細孔分布のピーク数は、水銀ポロシメーターでは、中綿内に水銀を押圧することで含浸させ、その圧力と含浸体積から、細孔の等価直径の分布を求める。得られた、細孔の等価直径とその頻度のグラフを、ピーク分離する。ピーク分離は一般的な方法であるが、本検討においては、「日本エネルギー学会」によるピーク分離を用いた。
上記解析により、中綿の細孔径分布をピーク分離する。分離したピーク位置は対数表示にしているので、元の値に戻す。この結果から、ピーク間の距離を求め、成分ピークの半値幅の半分を求め、その和を求める。ピーク幅の半分の和よりもピーク間距離が小さいので、2つのピークは分離して観測できない場合は、細孔分布がないものとなる。
これに対して、2種以上の細孔径分布を有する中綿も、上記と同様に細孔分布のピーク数を算出することにより、すなわち、ピーク分離の結果を用いて、成分ピーク間の距離と各線幅の関係から、中綿では2ピーク存在すること、すなわち、細孔径分布が2つ有することが確認することができる。
【0016】
図1(a)は、本発明の筆記具用中綿の一例を示す正面図、(b)は(a)の中綿を縦断面態様で示すものであり、細孔径分布が2種以上の分布を持つ状態の模式図である。
この筆記具用中綿1は、細孔径分布が2種以上の分布を持つ中綿であり、外周側に樹脂フィルムから構成される外皮2を有し、3が第一の細孔径部分であり、第一の細孔径部分3の外周側が第二の細孔径部分4である。
本発明において、2種以上の細孔径分布を有する筆記具用中綿は、細孔径分布の特性を、第一の細孔径は、30~200μmであり、第二の細孔径は、第一の細孔径の50~90%であることが必要である。
上記第一の細孔径の範囲(30~200μm)や、第二の細孔径の範囲(第一の細孔径の50~90%:15~180μm)を充足しない場合には、本発明の効果を奏することができないものとなる。
【0017】
本発明の筆記具用中綿は、上記細孔径分布の特性を有すると共に、本発明の効果を更に増強せしめるために、好ましくは、上記第二の細孔径部分は、中綿の径方向の中央に配置され、第二の細孔径部分の面積は、第一の細孔径部分の面積の5~50%であることが好ましい。この第一の細孔径部分の面積は、0.126~3.14cm2が好ましい。更に、第二の細孔径分布の気孔率は、第一の細孔径分布の部分の50~98%であることが好ましい。この第一の細孔径部分の気孔率は、60~95%が好ましい。
本実施形態では、2種以上の細孔径分布を有する筆記具用中綿における、第一の細孔径は83.37μm、第二の細孔径は68.39μmであり、第一の細孔径部分の面積は0.225cm2、第二の細孔径部分の面積は0.075cm2であり、第一の細孔径部分の気孔率は90%、第二の細孔径部分の気孔率は85%である。
また、本発明において、上記各細孔径部分の「気孔率」は、下記のようにして算出される。まず、光学顕微鏡にて、中綿断面を撮影し、単位面積〔1〕当たりの中綿の繊維の断面積の和〔2〕を求め、下記式から、気孔率が算出される。
(式):(〔1〕―〔2〕)/〔1〕×100
【0018】
上記細孔径分布が2種以上の分布を持つ上記細孔径分布の特性の中綿を得るには、例えば、上述の各繊維の繊維嵩密度、繊維直径、繊維材料、繊維形態、繊維表面張力、毛細管力が異なる繊維を用いて、または、これらを2種以上好適に組み合わせることにより得られる。
上記繊維は、1デニールから20デニールかつ繊維束の気孔率は、30~95%であることが好ましい。
具体的には、それぞれを収束後、第1の細孔径分布を持つ糸束の中央に、第2の差孔径分布を持つ糸束を挿入して、長さ80mm、内径6mmのポリプロピレン製円筒を軸筒に擬して、これに下記の各実施例及び各比較例の中綿を充填し、下記の実験に供した。糸束はポリエステル繊維を圧縮し束ね、所定の密部の割合となるように重量を量り取った。ポリプロピレン製円筒に充填するにより細孔径分布が2種以上の分布を持つ上記細孔径分布の特性の筆記具用中綿を得ることができる。
【0019】
このように構成される本発明の筆記具用中綿によれば、その作用効果などを後述するが、ペン先に対し更に効率良くインクを供給させることができ、インク拡散性を更に高めることができるものとなる。
【0020】
(本発明の筆記具用中綿を搭載したマーキングペンタイプの筆記具A:全体構成)
図2~
図7は、本発明の筆記具用中綿を搭載したマーキングペンタイプの筆記具Aと、その筆記具に用いる構成部品となる本発明の細孔径分布が2種以上の分布を持つ上記特性の本発明の筆記具用中綿1、並びに、ペン先20、筆記部25の一例などを説明する各図面である。
本形態の筆記具Aは、
図2(a)~(d)に示すように、筆記具本体(軸筒)10から供給されるインクを誘導し、かつ筆記方向を視認することができる可視部を有するペン先20を備えると共に、このペン先20の反対側にも棒状のポリアセタール製のペン先40を備えたツインタイプの筆記具となっている。また、筆記具本体10の両側には、着脱自在となるペン先20を保護するキャップ50と、ペン先40を保護するキャップ60とが取り付けられている。キャップ50には、クリップ部51、摩擦体53、通気孔54を有している。
【0021】
(筆記具本体10、後軸11)
本実施形態の筆記具本体10は、
図1~
図4に示すように、後軸11と先軸16とにより構成されている。後軸11は、筒状体から構成され、筆記具用インクを含浸したインク吸蔵体17を収容するものであり、図面上、右側となる一端側は細字タイプの棒状のペン先40を保持する保持具45を嵌合により固着するための嵌合部12を有する縮径状の保持部13となっており、この保持部13の大径の外周部13aにはキャップ60を着脱自在に取り付ける構成となっている。
また、後軸11の左側となる他端の開口部には、筆記方向を視認することができる可視部を有するペン先20を固着する先軸16が嵌合などにより固着される構成となっている。更に、後軸11の軸方向前方側の外周の上下面には、平面部14、14が形成されており、後述するように、この平面部14、14を指に把持した場合に、持ち替えることなく直ぐに筆記(マーキング)できる構成、すなわち、扁平形状のペン先20の向きを判りやすくするための把持用指示面となっている。
【0022】
(先軸16)
先軸16は、
図1~
図4に示すように、略円形状の筒状体から構成されており、少なくとも、中央部後部よりに鍔部16aと、該鍔部16aの後方側に嵌合段部を有する後部16bと、前方側に嵌合段部を有する前部16cと、該前部16cの先端側には傾斜状開口部16dと、該傾斜状開口部16d内には、インク誘導部26を吸蔵体となる中綿17の中央部へ確実に向けるための突起(図示せず)と、保持体30の後端部を当接するための環状当接部(図示せず)などを備えている。なお、図示符号16a1は、後軸11との位置合わせのために、鍔部16a後端面に僅かに後軸11の平面14に対応した傾斜面部である。
この先軸16と前記後軸11とにより構成される筆記具本体10は、それぞれ熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等で形成されるものであり、例えば、ポリプロピレン等からなる樹脂を使用して上記構成に成形され、筆記具本体(軸体)として機能する。筆記具本体10は不透明又は透明(及び半透明)に成形されるが、外観上や実用上の観点からいずれを採用しても良い。
【0023】
(筆記具用インク)
用いる筆記具用インクの組成は、特に限定されず、筆記具の用途等に応じて、水性インク、油性インク、熱変色性インクなどの好適な配合処方とすることができ、例えば、アンダーラインペン等ではインクに蛍光色素、例えば、ベーシックバイオレット11、ベーシックイエロー40、熱変色性マイクロカプセル顔料などを含有させることできる。
好ましくは、染料を含む樹脂微粒子顔料インク組成物が望ましい。
染料を含む樹脂微粒子顔料インクとしては、少なくとも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと、塩基性染料又は油溶性染料とで構成される着色樹脂微粒子であって、前記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量が着色樹脂微粒子を構成する全ポリマー成分に対して、30質量%以上であると共に、前記塩基性染料又は油溶性染料の含有量が全ポリマー成分に対して、15質量%以上である着色樹脂微粒子が水に分散された着色樹脂微粒子の分散液と、水溶性有機溶剤と、水とを含有するものが挙げられる。
また、これらのインク組成物は、インク配合成分種、各配合量を調整することなどにより、インク粘度(25℃:コンプレート型粘度計)1~5mPa・s、表面張力30~60mN/mを設定することができ、しかも、本発明の筆記具用中綿の特性と相俟ってマーキングペンタイプの筆記具ペン先20及びペン先40からのインク流出量を好ましい範囲、本実施形態では、5~20mg/mに設定することが簡単にできることとなる。
【0024】
また、熱変色性マイクロカプセル顔料含有インク組成物を用いた場合には、例えば、
図2(c)及び(d)に示すように、JIS S 6050-2002に規定する鉛筆描線の消し能力(消字率)が70%未満の、円柱状の熱可塑性エラストマーからなる摩擦体53をキャップ50の凹部52に固着することができる。この摩擦体53の擦過動作により摩擦熱を発生容易かつ低摩耗な摩擦体となることで、摩擦時に消しカスの発生を少なくすることで周囲への汚れを防ぐことができる。また、通気孔54は、摩擦体53の取り付け、取り外しを容易化するための通気孔である。
【0025】
(ペン先20)
ペン先20は、
図2~
図7に示すように、少なくとも、筆記部25と、筆記具本体10のインクを筆記部25へ誘導するインク誘導部26と、可視部を有する保持体30とを有し、筆記部25、インク誘導部26は、保持体30に接着、溶着、嵌合等により取り付けられるものである。
筆記部25は、直方体形状の台部の上方側が筆記しやすい傾きとなるように、傾斜状(ナイフカット状)となっている。この筆記部25の傾き等は、筆記等の使い勝手に合わせて適宜設定される。また、この筆記部25は、
図7(a)~(d)に示すように、描線幅が調整可能となるように描線幅が大きい目W1となる筆記部25aと、描線幅が小さめ目W2となる筆記部25bを有し、軸の傾斜により描線幅W1とW2の調整(選択)ができるものとなっている。本形態では、W1:W2が2以上:1の割合となっている。描線幅W1は2.0~5.0mm、描線幅W2は1.0~2.5mmとなっている。
【0026】
この筆記部25の材質等としては、例えば、気孔を有する多孔質で形成されたものが挙げられ、具体的には、スポンジ体、焼結体、繊維束体、発泡体、海綿体、フェルト体、ポーラス体などを挙げることができる。これらの多孔質体等を形成する材料としては、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などを用いることができる。本実施形態の筆記部25は、書き味を更に良好とするために、プラスチック粉末(例えば、PE)を焼結した焼結芯から構成されている。
【0027】
インク誘導部26は、薄板状で、後方側に傾斜部26aを有するものであり、その断面は可視部の面積を最大化(広く)する点から、矩形形状または楕円形状とすることが好ましい。本実施形態では、断面は矩形形状となっている。
このインク誘導部26は、筆記具本体10内に吸蔵されるインク吸蔵体17のインクを該インク誘導部26を介して筆記部25にインクを効率良く誘導(供給)するものであれば特に限定されず、例えば、不織布、織物あるいは編物などの布帛、繊維束芯、あるいは、通液性発泡体、焼結体などの通液性を有する素材から構成されるものが挙げられる。なお、筆記部25とインク誘導部26とは、一種類の素材から一体構成することもできるが、好ましくは、更に本発明の効果を発揮せしめる点、効率的なインクの供給、筆記部での書き味を更に良好等とする点から、別部材同士で連結や結合、または、後述するように保持体を介して連結や結合等して構成することが望ましい。
本実施形態において、「不織布」とは、一層以上の繊維の塊を編織しないで布状構造としたものをいう。繊維の素材としては、合成繊維、天然繊維、獣毛繊維、無機繊維等が用いられる。用いる合成繊維の材料としては、例えば、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせなどが挙げられる。
【0028】
布帛を構成する繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を吸着することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
また、布帛を構成する繊維は、一種類あるいは複数種類の樹脂成分から構成されてなるものでも構わず、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型などの複合繊維を使用することができる。
【0029】
布帛を構成する繊維の繊度は、特に限定するものではないが、前記繊度は0.1~500dtex(デシテックス)であるのが好ましく、2~5dtex(デシテックス)であるのがより好ましい。また、繊維長も特に限定するものではないが、短繊維や長繊維あるいは連続繊維を使用することができる。
布帛が織物や編物である場合、上述のようにして調製した繊維を、織るあるいは編むことで調製することができる。
【0030】
布帛が不織布である場合、不織布を製造可能な繊維ウェブの調製方法として、例えば、乾式法、湿式法などを用いることができる。そして、繊維ウェブを構成する繊維同士を絡合および/または一体化して不織布にする方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維同士をバインダで一体化する方法、あるいは、繊維ウェブが熱可塑性樹脂を含んでいる場合には、繊維ウェブを加熱処理することで前記熱可塑性樹脂を溶融して、繊維同士を一体化する方法を挙げることができる。なお、繊維ウェブを加熱処理する方法として、例えば、カレンダーロールにより加熱加圧する方法、熱風乾燥機により加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して熱可塑性樹脂繊維を溶融させる方法などを用いることができる。また、直接紡糸法を用いて紡糸された繊維を捕集することで、不織布を調製してもよい。
繊維束芯としては、上記繊維の素材(合成繊維、天然繊維、……、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせなど)からなる平行繊維束等を加工又はこれらの繊維束を樹脂加工したものが挙げられる。
通液性発泡体である場合、例えば、溶融状態の樹脂を型に流し込み成型、発泡処理するなど、公知の方法で調製することができる。また、焼結体では、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などのプラスチック粉末などを焼結したポーラス体(焼結芯)などから構成することができる。
【0031】
インク誘導部26の形状、厚さなどは、保持体30への取り付け態様、筆記部25の形状、可視部の可視部面積の最大化、インクを効率よく筆記部25へ流出(供給)せしめる点等から設定されるものであり、好ましくは、幅方向長さ、長手方向長さは薄板状のインク誘導部26を固着する後述する保持体30の取付面の略幅方向長さ、略長手方向の長さとなるものであり、インクを効率よく筆記部25へ流出せしめる好適な長さがそれぞれ設定される。また、薄板状のインク誘導部26の厚さ(可視部面の垂直方向から見ての幅)tは、
図4(b)に示すように、可視部の可視部面積を最大化する点などから、好ましくは、1.5mm未満、更に好ましくは、1.2mm以下、特に好ましくは0.8mm以下が望ましく、好適なインク量の供給、生産性などの点から、下限値は0.5mm以上が望ましい。
本実施形態では、インク誘導部26は、少ない断面積で効率的にインクを流動できる点などから、断面矩形形状のPET製からなる繊維束芯から構成されており、その長手方向長さは20mm、幅方向長さは2mm、厚さtは0.8mmとなっている。
このインク誘導部26の後端側26aは、インク吸蔵体17の先端側内部に挿入され、先端側26bは保持体30を介して筆記部25に当接されている。この構成により、インク吸蔵体17内のインクはインク誘導部26を介して毛管力により筆記部25へ好適な量が効率的に供給される構成となっている。
【0032】
(保持体30)
保持体30は、
図2~
図7に示すように、上記筆記部25,インク誘導部26を固定して、その後端側が筆記具本体10の先軸16の傾斜開口部16d内に固着されるものであり、膨出状の本体部31と、該本体部31の前方側に、筆記具本体10の端面と当接するフランジ部32と、筆記方向を視認することができる可視部33とを有すると共に、可視部33の先端側に筆記部25の先端側(端面)を保持する前方保持部34a、34bと、この各保持部の一方の端部に設けた筆記部25の端面を受け止める抜け止め部34c、34dとを有するものである。
また、上記本体部31の後方側の底面側に、上記本体部31に連設される後方保持部35とを備えたものである。これらの部材から構成される保持体30の長手方向の底面側全体には、可視部33の視認面積の最大化を図る点から、保持体30の底面に装着(配置)される構造、具体的には、保持体30の長手方向底面全体には、上記薄板状(断面矩形形状)のインク誘導部26を嵌入保持する凹状の保持溝36が形成されている。更に、本体部31の幅方向外周面には、凹状の嵌合部31aが形成されている。
【0033】
更に、筆記部25が固着される凹状の保持溝36と、インク誘導部26が固着される凹状の保持溝36との両側面には、筆記部25,インク誘導部26が接触する表面に軸線と垂直方向に所定間隔毎にリブ37、37…、38、38…を形成されており、これにより、成形加工により寸法バラツキ等を起こす筆記部25、インク誘導部26の脆い足部等を安定的に保持体30に組み付けることができるものとなる。本実施形態では、保持溝36の取付面36aの幅方向の長さは、インク誘導部26の先端側26bの幅方向の長さより若干短く設定されており、これによりインク誘導部26の先端側26bが保持溝36aに押し付けて嵌入保持せしめることにより固着力が増し、筆記部25との接続が確実に保持されている。
この保持体30の保持溝36の取付面36a、36bに薄板状のインク誘導部26が接着剤による接着、溶着等により固着され、筆記部25に固着されている。
この筆記具Aにおいて、上記筆記部25の保持体40への固着(装着)は、前方保持部44a,44b間に上記筆記部25を嵌入保持、更に、筆記部25の固着(抜け止め)を確実にするために、接着剤による接着、溶着などを更に用いても良いものである。
また、本体部31の長手方向外周面には、空気流通溝39、39が形成されており、筆記具内の空気圧等が膨張しても空気流通溝39、39により調整ができインクの漏れ等を解消できる構成となっている。
【0034】
前記インク誘導部26は、断面が矩形形状又は楕円形状、本実施形態では断面が矩形形状の繊維束芯から構成され、前記筆記部25は樹脂焼結体から構成されており、該筆記部25とインク誘導部26は前記保持体30の保持溝36、取付面36a、36bに固着されると共に、該インク誘導部26と筆記部25とが押し付けつけられて固定されているので、インク吸蔵体17からのインクをインク誘導部26を介して筆記部25へと良好に供給されるものとなっている。
【0035】
このように構成される保持体30全体は、硬質材料で構成されており、例えば、視認性を有する硬質材料、例えば、ガラス、ゴム弾性を有しない樹脂などから構成されるものである。視認可能となるゴム弾性を有しない樹脂としては、例えば、PP、PE、PET、PEN、ナイロン(6ナイロン、12ナイロン等の一般的なナイロン以外に非晶質ナイロン等を含む)、アクリル、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ABS等の可視光線透過率が50%以上の材料から成形により構成することにより、可視部33で筆記方向に書いてある文字を有効に視認できることとなる。なお、可視部33だけを視認性を有する材料で構成してもよい。なお、可視光線透過率は多光源分光測色計〔スガ試験機社製、(MSC-5N)〕にて反射率を測定することで求めることができる。
また、保持体30は、上記各材料の一種類、または、耐久性、視認性の更なる向上の点などから、2種類以上の材料を用いて構成してもよく、射出成形、ブロー成形などの各種成形法により成形することができる。
【0036】
本実施形態では、前記保持体30の可視部33は、
図4(b)に示すように、その幅方向の最小幅Sが3.7mm以上となっており、また、可視部33の長さYが7.4mm以上に設定されている。本実施形態では、保持体30の可視部33の前端側から後方側へ行くほどその幅Sが拡張する構成となっており、その最小幅Sは、保持体30の可視部33の前端側の幅方向の長さであり、その幅(ペン先と並行)が3.7mm以上となっている。なお、本実施形態では可視部33の幅方向の最大幅は4.5mmとなっている。
この最小幅Sを3.7mm以上とすることにより、書面に印字される10.5ポイント(五号活字)を可視部33でしっかり視認することができる構成となっている。通常、日本では一般的な公文書などでは五号活字を基準として使われることが多い。
また、可視部33の長さYは、上記最少幅Xの2倍の構成、すなわち、7.4mm以上となっている。例えば、筆記角度60°において、上から 見ても、上記3.7mm幅の文字が可視部33内に収まる構成となっている(3.7mm/cos60°=7.4mm)。
上記可視部33の最小幅Sを3.7mm以上、その長さYを7.4mm以上とするためには、上記ペン先20の各部品(筆記部25、インク誘導部26、保持体30)の構造、形状等を上述の如く構成(特定)し、好適に組み合わせることにより、設定することができるものとなる。
【0037】
更に、本実施形態では、筆記部25への必要十分のインク流量の誘導を確保する点、更なる視認できる可視部33の面積を広範とする点等から、インク誘導部26の幅(可視部33面の垂直方向から見ての長さ)tが1.5mm未満、更に好ましくは、1.2mm以下、特に好ましくは0.8mm以下となっている。
また、インク誘導部26は凹状の保持溝36、取付面36a、 36bに嵌入保持等されることにより固着され、しかもその側面は効率的な組立性、生産性などの点から、インク誘導部26全体を被覆する構造でなく、外気面に開放した形状であるので、そのインク誘導部26部分の幅tを含む全体の幅長さは必要最小限となっており可視部33の幅Xを最大限とする構成となっている。
【0038】
また、前記インク誘導部26を、
図3(b)に示すように、可視部33の片側に1本有すること、すなわち、インク誘導部26を筆記の際に手前側(インク誘導部26に対して、ペン先20が鈍角となる側)に配置することにより、自然な筆記角度をつけたときにも、インク誘導部26が進行方向の文字にかかわらず、可視部33の見通しがよいものとなる。インク誘導部26が筆記の際に手前側でなく、奥側(上側)に配置されるものであると、筆記(マーキング)の際に、進行方向の文字を横切り、一部を隠してしまう点で可視部33の作用機構等が異なるものである。
【0039】
次に、細字筆記するためのペン先50は、
図1(a)及び(b)に示すように、細字タイプの棒状のペン先であり、断面が円形形状となるものであり、ペン先40の後端部(インク吸蔵体側)がインク吸蔵体17内に挿入されており、毛管力によりインク吸蔵体17のインクがペン先40に供給されるものである。
このペン先50は、多孔質部材から構成されるものであり、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる並行繊維束、フェルト等の繊維束を加工又はこれらの繊維束を樹脂加工した繊維芯、または、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の熱可塑性樹脂などのプラスチック粉末などを焼結したポーラス体(焼結芯)などからなるものである。
好ましいペン先40としては、繊維束芯、繊維芯、焼結芯、フェルト芯、スポンジ芯、無機多孔体芯であり、特に好ましくは、変形成形性の点、生産性の点から、繊維芯が望ましい。また、用いるペン先50の気孔率、大きさ、硬度などは、インク種、筆記具の種類等により、変動するものであり、例えば、気孔率では30~60%とすることが好ましい。また、本発明において、筆記芯の「気孔率」は、下記のようにして算出される。まず、既知の質量及び見掛け体積を有する筆記芯を水中に浸し、十分に水を浸み込ませた後、水中から取り出した状態で質量を測定する。測定した質量から、筆記芯に浸み込ませた水の体積が導出される。この水の体積を筆記芯の気孔体積と同一として、下記式から、気孔率が算出される。
気孔率(単位:%)=(水の体積)/(ペン先50の見掛け体積)×100
【0040】
このように構成される筆記具Aでは、筆記具本体10内に筆記具用インクを吸蔵した本発明の筆記具用中綿、すなわち、細孔径が2種以上の分布を持ち、第一の細孔径は、30~200μmであり、第二の細孔径は、第一の細孔径の50~90%である特性の中綿1を挿入して保持せしめ、先端側は先軸16を介して上記構成のペン先20(筆記部25,インク誘導体26、保持体30)を順次嵌合等により固着せしめ、他端側はペン先40を固着せしめた保持具45を嵌合により固着せしめることにより、簡単にツインタイプの筆記具Aを作製することができ、本発明の筆記具用中綿1に吸蔵されたインクは毛管力によりペン先20では薄板状のインク誘導部26を介して筆記部25、並びに、ペン先40に効率的に供給することができ、インク拡散性を更に高めることができる筆記具用中綿、これを用いた筆記具が得られることとなる。
【0041】
この筆記具Aでは、ペン先40は従来の汎用のペン先と同様であるので、ペン先20の機能等を以下に説明する。
この筆記具Aのペン先20は、
図2~
図7などに示すように、筆記方向を視認することができる可視部(窓部)33を有するものであり、本発明の筆記具用中綿Z′のインクは中綿Z′の毛細力により筆記部25、ペン先40にそれぞれ到達し、筆記に供されるものとなる。筆記の際に、可視部(窓部)33で視認側を見れば、ひき始めの位置を合わせやすくなり、また、引き終わりの止めたい部分でピタッと止めることができ、引きすぎや、はみ出しを防ぐことができるものとなる。
【0042】
上記実施形態におけるペン先は、少なくとも、描線幅が2種に選択できる筆記部25と、可視部33を有する保持体30と、筆記具本体10のインクを筆記部へ誘導するインク誘導部26とを有するものであり、前記可視部33の最小幅(S)を3.7mm以上とし、可視部33の長さ(Y)を7.4mm以上とする構成(以下、この構成を「構成1」という)により、または、インク誘導部26を筆記時の手前側に備える構成、すなわち、保持体30に固着する際に、インク誘導部26を筆記の際に手前側(インク誘導部26に対して、ペン先20が鈍角となる側)に配置する構成(以下、この構成を「構成2」という)とすることにより、筆記方向を視認することができる可視部33の有効面積の最大化と見やすさ、並びに、筆記のしやすさを高度に両立できるものとなる。
【0043】
上記構成2では、自然な筆記角度をつけたときにも、インク誘導部26が進行方向の文字にかかわらず、可視部33の見通しが更によいものとなる。インク誘導部26が筆記の際に手前側でなく、奥側(上側)に配置されるもの、または、筆記部の両側からインク誘導部が2本配置されるコ字状又はU字状のものであると、筆記(マーキング)の際に、進行方向の文字を横切り、一部を隠してしまう点で可視部33の作用機構等が異なるものである。この形態においても、可視部33の有効面積を最大化と見やすさ、並びに、筆記のしやすさを高度に両立でき、その広くなった可視部33により、筆記方向が更にクリアとなり、筆記のしやすさが更に向上するものとなる。
【0044】
前記インク誘導部26の幅tを可視部33垂直面から見て、1.2mm以下とする構成(以下、この構成を「構成3」という)により、更に可視部の面積を最大化でき、本発明の効果を更に高度に両立できるものとなる。
また、前記インク誘導部26において、その断面を矩形形状又は楕円形状の繊維束芯から構成すると共に、前記筆記部25を樹脂製の焼結体から構成し、かつ、該インク誘導部26と筆記部25を前記保持体30に固着せしめると共に、該インク誘導部26と筆記部25の端部とが当接する構成(以下、この構成を「構成4」という)とすることにより、インク誘導部26は少ない断面積で効率的にインクを筆記部25へ流動(供給)でき、良好な書き味となって、本発明の効果を更に高度に両立できるものとなる。
更に、この筆記具Aは、細孔径が2種以上の分布を持ち、第一の細孔径は、50~300μmであり、第二の細孔径は、第一の細孔径の50~90%である本発明の筆記具用中綿Z′により、インク流出性が良好であるので、ペン先20(又はペン先40)の移動速度を速くして筆記しても、インクの供給は良好に追従し、筆跡のカスレ等を生じることがない筆記具が得られることとなる。
【0045】
本形態の筆記具用中綿、これを搭載した筆記具は、上記各形態などに限定されることなく、更に種々変更することができる。
例えば、上記形態の筆記具用中綿において、窓部を有さない繊維束芯を備えたり、油性のインクを搭載してもよいものである。
また、サインペンペン先でなく、ボールペンチップを備えてもよいものである。
【0046】
上記形態の筆記具では、上記構成1又は構成2で各筆記具を構成したが、構成1と2とを組み合わせた構成、並びに、構成1又は2の構成に、上記構成3及び/又は構成4とを組み合わせた構成で各筆記具を構成してもよいものである。
また、上記実施形態において、構成1の筆記具では、好ましい態様として、インク誘導部26を可視部33の片側に有する構成としたが、構成1の構成であって、更に、可視部33の上下面に2本有する構成(筆記部25の両側に、一体又は別部材となるインク誘導部26,26を2本有するコ字状又はU字状のものであっても、筆記(マーキング)の際に、進行方向の文字を横切りことがあるが、今までにない広範な可視部33の構成、すなわち、可視部33の最小幅(S)が3.7mm以上とし、その長さ(Y)が7.4mm以上とする構成)においても本発明の効果を発揮することができる。
また、保持体30と、筆記部25、インク誘導部26との固着方法は、保持体30への嵌合等による固着以外に、ホットメルト型接着剤による固着、溶剤浸透による固着、超音波溶着による固着、反応系接着剤による固着(湿気硬化、UV硬化、酸素硬化、2液硬化)、溶剤系接着剤による固着(可溶型合成樹脂、エマルション、ゴム)、テープ、両面テープによる固着により行うことができる。
筆記部25の気孔率については、以下の範囲とすることが好ましい。
気孔率は、30~80%とすることが好ましく、さらに好ましくは、40~70%とすることが好ましい。
【0047】
更に、本発明の筆記具用中綿を搭載した上記形態の筆記具Aでは、ツインタイプの筆記具を示したが、ペン先40を省略(軸体を有底筒状の軸体と)して、ペン先20を備えたシングルタイプの筆記具としてもよいものであり、また、ノック式によりペン先20が出没する筆記具であってもよいものである。
上記各実施形態の本発明の筆記具用中綿を搭載した筆記具Aでは、筆記具本体の軸体などの断面を円形軸に形成したが、三角形状、四角形以上の方形状などの異形形状、楕円形状にしてもよいものである。また、ペン先20全体を透明な部材で構成する場合を示したが、少なくとも可視部33が透明な部材で構成され、筆記具本体内の取り付けられる本体部31側を透明な部材以外の樹脂部材で二色成形品となったものを用いてペン先20を構成してもよいものである。
更に、上記各実施形態では、筆記具用のインク(水性インク、油性インク、熱変色性インク)で説明したが、液状化粧料、液状薬剤、塗布液、修正液などの液状体としてもよいものである。
【実施例0048】
次に、実施例及び比較例により、本発明を更に詳述するが、下記実施例等に限定されるものではない。
【0049】
〔実施例1~4及び比較例1~2の各筆記具用中綿の製造〕
実施例1では、下記表1に示す、共に東レ社製の繊維5d(デニール、以下同様)、6600本と、3d、4500本とを用いてそれぞれを収束後、第1の細孔径分布を持つ糸束の中央に、第2の差孔径分布を持つ糸束を挿入して、長さ80mm、内径6mmのポリプロピレン製円筒を軸筒に擬して、これに下記の各実施例及び各比較例の中綿を充填し、下記の実験に供した。糸束はポリエステル繊維を圧縮し束ね、所定の密部の割合となるように重量を量り取った。ポリプロピレン製の円筒に充填して、第1の気孔率、第二の気孔率、その気孔率比となる2種の細孔径分布を持つ中綿Aを製造した。
実施例2~4では、上記実施例1と同様にして、下記表1に示す、共に東レ社製の繊維の各デニール、各本数の繊維を変更して実施例1とは異なる、第1の気孔率、第二の気孔率、その気孔率比となる2種の細孔径分布を持つ中綿B~Dを製造した。
一方、比較例1、2では、それぞれ、下記表1に示す、東レ社製の繊維3デニール、各本数の繊維を用いて収束後、長さ80mm、内径6mmのポリプロピレン製円筒を軸筒に擬して、下記の実験に供した。糸束はポリエステル繊維を圧縮し束ね、所定の密部の割合となるように重量を量り取った。ポリプロピレン製の円筒に充填して、第1の気孔率となる1種の細孔径分布を持つ中綿E~Fを製造した。
【0050】
上記実施例1~4及び比較例1~2で得られた中綿A~Eについて、細孔径分布の有無を下記測定方法により、検証した。
〔測定方法:水銀ポロシメーターによる測定〕
上記実施例1~4で得られた中綿A~Dについて、下記水銀ポロシメーターによる測定方法で細孔径分布の有無を測定した。
水銀圧入法による細孔分布測定:
測定装置:マイクロメリティクス製 オートポアIV 9510型
測定範囲:φ500~5μm
水銀接触角:130°
水銀表面張力:485dynes/cm
【0051】
中綿A~D内の細孔を水銀ポロシメーターで測定し、その分布の違いを求めた。
通常の比較例1の中綿Eは、細孔分布がほぼ1ピークであるのに対し、実施例1の中綿Aは、2ピーク、すなわち、細孔分布が2ピークあるとみなせる。この細孔分布が2ピークであるとは、中綿A内の細孔で、細かい部分と粗い部分があるということである。あくまで細孔の状態の分布を表しているのであって、従来における中綿に、疎、密があるものとは異なる。従来の疎および密の状態とは、細孔と繊維との容積比(断面の面積比でも同じこと)の違いを表している。
一方、中綿とインクで発生する毛細管力とは、細孔の細かさ、粗さによって決まっている。インク拡散性を高めるためには、中綿内に毛細管力が低い部分と高い部分を設ける必要があり、それは(粗密ではなく、本質的には)細孔の粗さ、細かさによって得られる。
【0052】
水銀ポロシメーターによる測定で、中綿に細孔径分布の有無は、下記細孔分布のピーク数を算出することにより測定することができる。
細孔分布のピーク数は、水銀ポロシメーターでは、中綿内に水銀を押圧することで含浸させ、その圧力と含浸体積から、細孔の等価直径の分布を求める。得られた、細孔の等価直径とその頻度のグラフを、ピーク分離する。ピーク分離は一般的な方法であるが、本検討においては、「日本エネルギー学会」によるピーク分離を用いた。
【0053】
上記解析により、中綿AとEの細孔径分布をピーク分離すると、表2及び表3(グラフ)に示す結果となる。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
上記表1~表3の結果から明らかなように、比較例1の中綿Eは、Peak1:位置1.903、半値幅0.094、Peak2:位置1.826、半値幅0.205であった。ピーク位置は対数表示にしているので、1.903は79.98μm、1.826は66.99μmに相当する。この結果から、ピーク間の距離は0.077(=1.903-1.826)と確認することができる。成分ピークの半値幅の半分は、それぞれPeak1で0.047、Peak2で0.103ですので、その和は0.150となります。ピーク幅の半分の和(n=0.150)よりもピーク間距離(m=0.077)が小さいので、2つのピークは分離して観測できませんでした。
これに対して、実施例1の中綿Aは、Peak1:位置1.921、半値幅0.059、Peak2:位置1.835、半値幅0.074であった。ピーク位置は対数表示にしているので、1.921は83.37μm、1.835は68.39μmに相当する。上記と同様に計算すると、中綿Aでは、ピーク幅の半分の和(n=0.067)よりもピーク間距離(m=0.086)が大きいので、2つのピークは分離して観測されているといえる。以上のように、ピーク分離の結果を用いて、成分ピーク間の距離と各線幅の関係から、中綿Aでは2ピーク存在すること、すなわち、細孔径分布が2つ有することが確認できた。
【0058】
次いで、中綿Aの細孔径分布の特性を、上述の方法により求めピーク分離して、第一の細孔径は、23μmであり、第二の細孔径は、17μmであり(第一の細孔径の74%)であった。この第二の細孔径部分は、中綿Aの径方向の中央に配置され、第二の細孔径部分の面積は、第一の細孔径部分の面積の33%であった。第一の細孔径の気孔率は90%、第二細孔径の気孔率85%(第一の細孔径の気孔の94%)であった。
【0059】
上記実施例1、比較例1で得られた中綿A、Eと同様にして中綿B~D,Fについて、細孔径分布の有無を水銀ポロシメーターによる測定で、検証した。
中綿B~D、Fについて、細孔径分布の有無を水銀ポロシメーターによる測定結果を下記表2に示す。中綿B~D、Fについても、上記中綿A、Eの解析と同様に行い、下記表2に示す結果となる。
比較例2の中綿Fは、ピーク幅の半分の和(n=0.091)よりもピーク間距離(m=0.090)が小さいので、2つのピークは分離して観測できませんでした。
これに対して、実施例2~4の中綿B~Dは、共にピーク幅の半分の和(n)よりもピーク間距離(m)が大きいので、2つのピークは分離して観測されているといえる。以上のように、ピーク分離の結果を用いて、成分ピーク間の距離と各線幅の関係から、中綿B~Dでは2ピーク存在すること、すなわち、細孔径分布が2つ有することが確認できた。
この結果から、中綿B~Dにおいても、2ピーク存在すること、すなわち、細孔径分布が2つ有することが確認できた。
【0060】
次いで、中綿Bの細孔径分布の特性を、上述の方法により求めピーク分離して、第一の細孔径は、23μmであり、第二の細孔径は、17μmであり(第一の細孔径の74%)であった。この第二の細孔径部分は、中綿Bの径方向の中央に配置され、第二の細孔径部分の面積は、第一の細孔径部分の面積の35%であった。第一の細孔径の気孔率は89%、第二細孔径の気孔率84%(第一の細孔径の気孔の94%)であった。
【0061】
また、中綿Cの細孔径分布の特性を、上述の方法により求めピーク分離して、第一の細孔径は、17μmであり、第二の細孔径は、14μmであり(第一の細孔径の82%)であった。この第二の細孔径部分は、中綿Bの径方向の中央に配置され、第二の細孔径部分の面積は、第一の細孔径部分の面積の34%であった。第一の細孔径の気孔率は90%、第二細孔径の気孔率85%(第一の細孔径の気孔の94%)であった。
【0062】
また、中綿Dの細孔径分布の特性を、上述の方法により求めピーク分離して、第一の細孔径は、17μmであり、第二の細孔径は、31μmであり(第一の細孔径の180%)であった。この第二の細孔径部分は、中綿Bの径方向の中央に配置され、第二の細孔径部分の面積は、第一の細孔径部分の面積の34%であった。第一の細孔径の気孔率は90%、第二細孔径の気孔率88%(第一の細孔径の気孔の98%)であった。
【0063】
〔参考実施例1及び参考比較例1〕
実施例1、比較例1で得た中綿A、E、下記構成及び
図2~
図7に準拠するペン先を有する筆記具、下記組成の筆記具用インクを使用した。ペン先の寸法等は下記に示す大きさ等を使用した。
【0064】
〔ペン先20(筆記部25,インク誘導部26、保持体30)の構成〕
筆記部25:ポリエチレン製焼結芯、気孔率:50%、4×3×6mm、T=3mm、W=5.5mm
インク誘導部26:PET製繊維芯、幅方向長さ:2mm、長手方向長さ:20mm、厚さt:0.8mm
保持体30:アクリル樹脂製、可視光線透過率85%〔スガ試験機社製、多光源分光測色計(MSC-5N)にて反射率を測定し、可視光線透過率とした。〕
可視部(窓部)33(四角形)の大きさ:S=3.8mm(最大4.5mm)×Y=8mm×幅(厚さ)2.5mm
【0065】
筆記具用中綿:上記実施例1、比較例1で得た中綿A、E(φ6×80mm)を用いた。
外皮:PET製フィルム
筆記具本体10、キャップ50、60:ポリプロピレン(PP)製
ペン先40:ポリエステル製繊維束芯、気孔率60%、φ2×40mm
摩擦体52:αオレフィン系共重合体にパラフィン系オイルを添加してなる粘弾性ポリオレフィン系エラストマーと、スチレン系エラストマーと、結晶性ポリプロピレンとからなるペレット混合物により射出成形によるもの。デュロメータA硬度は、押針接触開始直後:85、押針接触開始から15秒後:60であり、下式で定義される値の変化(ΔHS)が25であった〔ΔHS=(押針接触開始直後のデュロメータA硬度値-押針接触開始から15秒後のショアA硬度値)〕。
【0066】
(筆記具用インク組成:インク色:蛍光黄色)
筆記具用インクとして、下記組成のインク(合計100質量%)を使用した。
分散液: 50質量%
トリエタノールアミン: 2質量%
エチレングリコール: 5質量%
界面活性剤: 0.5質量%
蒸留水: 42.5質量%
pH:4.0
粘度(25℃):3.5mPa・s(コンプレート型粘度計、TOKIMEC社製、TV-20)
表面張力(25℃):35mN/m(自動表面張力計、協和界面科学社製、DY-300)
【0067】
この
図1~
図7準拠の参考実施例1のペン先20を用いた筆記具では、実施例1の中綿Aは、細孔径が2種以上の分布を持ち、第一の細孔径は、30~200μmであり、第二の細孔径は、第一の細孔径の50~90%である特徴を備えたものであるので、ペン先20、40に対して確実にインクを供給でき、インク拡散性を高めることができものとなっている。また、中綿Aからのインクの誘導を流出性のある薄板状の開放型のインク誘導部26で筆記部25まで誘導するものであり、この筆記部25は樹脂製焼結芯、インク誘導部26は繊維束芯から構成されおり、気孔率に対する毛管力の強さが大きく、しかも、その厚さは極めて薄くでき、インク流出性が良好であり、インク誘導部を太く設計する必要がなく、可視部33の最小幅Xが3.7mm以上であり、その長さYが7.4mm以上であるので、筆記方向を視認することができる可視部33の有効面積の最大化と見やすさ、並びに、筆記のしやすさを高度に両立できるものとなっている。
また、インク誘導部26が筆記の際に手前側に配置されるので、自然な筆記角度をつけたときにも、インク誘導部26が進行方向の文字にかかわらず、可視部33の見通しが更によいものとなり、右利きで左から右方向に筆記する際に、可視部33で筆記方向を視認しながら筆記部25で描線を引くことなどができ、インク流出性も良好で有り、インクの流出性を損なうことなく、可視部33の格段の見やすさ、筆記のしやすさを達成することができる筆記具が得られることが確認された。また、杉板の上から1mの高さから落下させた後でも、掠れることなく筆記できることが確認できた。
【0068】
更に、自動筆記装置にこの筆記具をセットして、JIS S6037に準拠した試験方法に従い、上質紙面上で筆記角度65°、筆記荷重1N、速度7cm/sで直線筆記後、筆記した描線状態を目視にて確認したところ、上記好ましいインク組成のものを使用しているため、ペン先20のインク流量(10mg/m)も良好で、ペン先の乾燥を抑えながらも、描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない機能を発現することが判った。
【0069】
これに対して、細孔径分布を持たない比較例1の中綿Eを搭載した参考比較例1の筆記具では、ペン先20、40に対して、インク供給に1時間以上も時間を要し、また100本中3本は、1日後もペン先にインクが含浸しておらず、インクを供給できないものもあった。
本実施形態の筆記具用中綿は、アンダーラインペン、ペイントマーカー、油性マーカー、水性マーカーと呼ばれるマーキングタイプの筆記具用の中綿として好適に適用することができる。