IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特開-遠心ファン及び電子機器 図1
  • 特開-遠心ファン及び電子機器 図2
  • 特開-遠心ファン及び電子機器 図3
  • 特開-遠心ファン及び電子機器 図4
  • 特開-遠心ファン及び電子機器 図5
  • 特開-遠心ファン及び電子機器 図6
  • 特開-遠心ファン及び電子機器 図7
  • 特開-遠心ファン及び電子機器 図8
  • 特開-遠心ファン及び電子機器 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055133
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】遠心ファン及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/30 20060101AFI20240411BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240411BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20240411BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
F04D29/30 F
H05K7/20 H
G06F1/16 312E
G06F1/20 B
G06F1/20 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161806
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】橋場 惇輝
(72)【発明者】
【氏名】富沢 周作
(72)【発明者】
【氏名】安達 貴光
【テーマコード(参考)】
3H130
5E322
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB06
3H130AB26
3H130AB42
3H130AC19
3H130BA17C
3H130BA33H
3H130CB01
3H130DF01Z
3H130DG03X
3H130EA06C
3H130EA07C
5E322AA01
5E322AA02
5E322BA01
5E322BB03
5E322BC03
5E322DB10
5E322DB12
(57)【要約】
【課題】ノイズの発生を抑制することができる遠心ファン及びこれを備える電子機器を提供する。
【解決手段】遠心ファンは、中心軸周りに回転するモータ部と、該モータ部の外周に設けられた複数のブレードとを有するファンと、前記ファンを収容すると共に、前記中心軸の軸方向に吸気口が設けられ、前記中心軸と直交する方向に排気口が設けられたケーシングと、を備え、前記複数のブレードの前記吸気口に対向する端面には、前記モータ部に向かって切り欠かれるように傾斜した切欠形状部がそれぞれ設けられ、前記複数のブレードは、該ブレードの先端から前記モータ部に向かう方向で、前記切欠形状部が傾斜を開始する始点の位置が異なる複数のブレード群を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心ファンであって、
中心軸周りに回転するモータ部と、該モータ部の外周に設けられた複数のブレードとを有するファンと、
前記ファンを収容すると共に、前記中心軸の軸方向に吸気口が設けられ、前記中心軸と直交する方向に排気口が設けられたケーシングと、
を備え、
前記複数のブレードの前記吸気口に対向する端面には、前記モータ部に向かって切り欠かれるように傾斜した切欠形状部がそれぞれ設けられ、
前記複数のブレードは、該ブレードの先端から前記モータ部に向かう方向で、前記切欠形状部が傾斜を開始する始点の位置が異なる複数のブレード群を含む
ことを特徴とする遠心ファン。
【請求項2】
請求項1に記載の遠心ファンであって、
各ブレード群のブレードが、1枚ずつ又は複数枚ずつ順に並んでいる
ことを特徴とする遠心ファン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の遠心ファンであって、
前記複数のブレード群は、前記始点の位置が異なる第1のブレード群、第2のブレード群、及び第3のブレード群を含む
ことを特徴とする遠心ファン。
【請求項4】
遠心ファンであって、
中心軸周りに回転するモータ部と、該モータ部の外周に設けられた複数のブレードとを有するファンと、
前記ファンを収容すると共に、前記中心軸の軸方向に吸気口が設けられ、前記中心軸と直交する方向に排気口が設けられたケーシングと、
を備え、
前記複数のブレードの前記吸気口に対向する端面には、前記モータ部に向かって切り欠かれるように傾斜した切欠形状部がそれぞれ設けられ、
前記複数のブレードは、該ブレードの先端から前記モータ部に向かう方向での前記切欠形状部の長さが異なる複数のブレード群を含む
ことを特徴とする遠心ファン。
【請求項5】
遠心ファンであって、
中心軸周りに回転するモータ部と、該モータ部の外周に設けられた複数のブレードとを有するファンと、
前記ファンを収容すると共に、前記中心軸の軸方向に吸気口が設けられ、前記中心軸と直交する方向に排気口が設けられたケーシングと、
を備え、
前記複数のブレードの前記吸気口に対向する端面には、前記モータ部に向かって切り欠かれるように傾斜した切欠形状部がそれぞれ設けられ、
前記複数のブレードは、該ブレードの先端から前記モータ部に向かう方向での前記切欠形状部が傾斜を開始する始点の位置が、隣接するブレード同士で異なる
ことを特徴とする遠心ファン。
【請求項6】
請求項1に記載の遠心ファンを備える電子機器であって、
筐体と、
前記筐体内に設けられた発熱体と、
前記筐体内に設けられ、前記発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、
を備え、
前記冷却モジュールは、
前記遠心ファンと、
前記排気口に面して配置されるフィンと、
前記発熱体が発生する熱を前記フィンに輸送する熱輸送デバイスと、
を備える
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項6に記載の電子機器であって、
前記筐体は、その底面で開口する筐体吸気口を備え、
前記吸気口は、前記筐体吸気口と対向している
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心ファン及びこれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PC等のような電子機器は、筐体の内部にCPU等の電子部品から発せられた熱を外部に排気するための遠心ファンを搭載している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-117678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電子機器は、静音化の要望が強い。そこで、遠心ファンは、想定以上のノイズを発生することを防止するため、ノイズを一定とする運転制御が行われることが多い。つまり遠心ファンは、静粛性を向上させることができれば、回転数の上昇が可能となる。そうすると、遠心ファンの風量が増加し、電子機器全体の冷却性能が向上する。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、ノイズの発生を抑制することができる遠心ファン及びこれを備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る遠心ファンは、中心軸周りに回転するモータ部と、該モータ部の外周に設けられた複数のブレードとを有するファンと、前記ファンを収容すると共に、前記中心軸の軸方向に吸気口が設けられ、前記中心軸と直交する方向に排気口が設けられたケーシングと、を備え、前記複数のブレードの前記吸気口に対向する端面には、前記モータ部に向かって切り欠かれるように傾斜した切欠形状部がそれぞれ設けられ、前記複数のブレードは、該ブレードの先端から前記モータ部に向かう方向で、前記切欠形状部が傾斜を開始する始点の位置が異なる複数のブレード群を含む。
【0007】
本発明の第2態様に係る遠心ファンは、中心軸周りに回転するモータ部と、該モータ部の外周に設けられた複数のブレードとを有するファンと、前記ファンを収容すると共に、前記中心軸の軸方向に吸気口が設けられ、前記中心軸と直交する方向に排気口が設けられたケーシングと、を備え、前記複数のブレードの前記吸気口に対向する端面には、前記モータ部に向かって切り欠かれるように傾斜した切欠形状部がそれぞれ設けられ、前記複数のブレードは、該ブレードの先端から前記モータ部に向かう方向での前記切欠形状部の長さが異なる複数のブレード群を含む。
【0008】
本発明の第3態様に係る遠心ファンは、中心軸周りに回転するモータ部と、該モータ部の外周に設けられた複数のブレードとを有するファンと、前記ファンを収容すると共に、前記中心軸の軸方向に吸気口が設けられ、前記中心軸と直交する方向に排気口が設けられたケーシングと、を備え、前記複数のブレードの前記吸気口に対向する端面には、前記モータ部に向かって切り欠かれるように傾斜した切欠形状部がそれぞれ設けられ、前記複数のブレードは、該ブレードの先端から前記モータ部に向かう方向での前記切欠形状部が傾斜を開始する始点の位置が、隣接するブレード同士で異なる。
【0009】
本発明の第4態様に係る電子機器は、上記構成の遠心ファンを備える電子機器であって、筐体と、前記筐体内に設けられた発熱体と、前記筐体内に設けられ、前記発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、を備え、前記冷却モジュールは、前記遠心ファンと、前記排気口に面して配置されるフィンと、前記発熱体が発生する熱を前記フィンに輸送する熱輸送デバイスと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記態様によれば、ノイズの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
図2図2は、筐体の内部構造を模式的に示す底面図である。
図3図3は、筐体の模式的な側面断面図である。
図4図4は、ファンの斜視図である。
図5図5は、図4に示すファンの一部を拡大した斜視図である。
図6図6は、ファンの平面図である。
図7図7は、ファンの一部を展開して各ブレードを平行に並べた模式的な平面図である。
図8図8は、第1変形例に係るファンの一部を展開して各ブレードを平行に並べた模式的な平面図である。
図9図9は、第2変形例に係るファンの一部を展開して各ブレードを平行に並べた模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る遠心ファン及び電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。図1に示すように、電子機器10は、ディスプレイ筐体12と筐体14とをヒンジ16で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCである。本発明に係る電子機器は、ノート型PC以外、例えばデスクトップ型PC、タブレット型PC、スマートフォン、又はゲーム機等でもよい。
【0014】
ディスプレイ筐体12は、薄い扁平な箱体である。ディスプレイ筐体12には、ディスプレイ18が搭載されている。ディスプレイ18は、例えば有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)や液晶で構成される。
【0015】
以下、筐体14及びこれに搭載された各要素について、筐体12,14間を図1に示すように開いた状態とし、ディスプレイ18を視認する姿勢を基準とし、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右、高さ方向(筐体14の厚み方向)を上下、と呼んで説明する。
【0016】
筐体14は、薄い扁平な箱体である。筐体14は、上面及び四周側面を形成するカバー部材14Aと、底面を形成するカバー部材14Bとで構成されている。上側のカバー部材14Aは、下面が開口した略バスタブ形状を有する。下側のカバー部材14Bは、略平板形状を有し、カバー部材14Aの底面側開口を閉じる蓋体となる。カバー部材14A,14Bは、厚み方向に重ね合わされて互いに着脱可能に連結される。筐体14の上面には、キーボード20及びタッチパッド21が設けられている。筐体14は、後端部がヒンジ16を用いてディスプレイ筐体12と連結されている。
【0017】
図2は、筐体14の内部構造を模式的に示す底面図である。
【0018】
図2に示すように、筐体14の内部には、冷却モジュール22と、マザーボード24と、バッテリ装置26とが設けられている。筐体14の内部には、さらに各種の電子部品や機械部品等が設けられる。
【0019】
マザーボード24は、電子機器10のメインボードである。マザーボード24は、筐体14の後方寄りに配置され、左右方向に沿って延在している。マザーボード24は、CPU30及びGPU31の他、メモリ、通信モジュール、及び接続端子等の各種電子部品が実装されたプリント基板である。マザーボード24は、キーボード20の下に配置され、キーボード20の裏面やカバー部材14Aの内面にねじ止めされている。本実施形態の場合、マザーボード24は、上面がカバー部材14Aに対する取付面となり、下面がCPU30等の実装面となる(図5参照)。
【0020】
CPU30は、電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う。GPU31は、GPU31は、3Dグラフィックス等の画像描写に必要な演算を行う。図2中の参照符号30aは、CPU30のダイが実装されたパッケージ基板である。同様に参照符号31aは、GPU31のダイが実装されたパッケージ基板である。
【0021】
バッテリ装置26は、電子機器10の電源となる充電池である。バッテリ装置26は、マザーボード24の前方に配置され、筐体14の前端部に沿って左右に延在している。
【0022】
次に、冷却モジュール22の構成を説明する。
【0023】
CPU30及びGPU31は、筐体14内に搭載された電子部品中で最大級の発熱量の発熱体である。そこで、冷却モジュール22は、CPU30及びGPU31が発生する熱を吸熱及び拡散し、さらに筐体14外へと排出する。冷却モジュール22は、マザーボード24の実装面の一部、具体的にはCPU30及びGPU31が実装された範囲を覆うように積層される。
【0024】
図2に示すように、冷却モジュール22は、ベーパーチャンバ32と、ヒートパイプ34と、左右一対のヒートシンク36,37と、左右一対の遠心ファン38,39と、を備える。
【0025】
ベーパーチャンバ32は、プレート型の熱輸送デバイスである。ベーパーチャンバ32は、2枚の薄い金属プレートの間にウィックを収容した密閉空間を形成し、この密閉空間に作動流体を封入したものである。作動流体は、密閉空間内で相変化を生じながら流通し、これにより高効率な熱輸送を可能とする。ベーパーチャンバ32は、CPU30及びGPU31の熱を吸熱及び拡散すると共に、この熱を下面に接続されたヒートパイプ34に伝達する。図2では、マザーボード24の下面側に積層されるベーパーチャンバ32、ヒートパイプ34及び金属プレート35を2点鎖線で図示している。
【0026】
ヒートパイプ34は、パイプ型の熱輸送デバイスである。ヒートパイプ34は、CPU30及びGPU31と上下方向にオーバーラップする位置でベーパーチャンバ32の下面に接続されている。本実施形態では、2本のヒートパイプを前後に2本1組で並列し、これらの両端部を左右のヒートシンク36,37に接続した構成を例示している。ヒートパイプ34は、1本や3本以上で用いてもよい。ヒートパイプ34は、金属パイプを薄く扁平に潰して断面楕円形状に形成し、金属パイプ内の密閉空間にウィックを収容し、作動流体を封入したものである。作動流体は、密閉空間内で相変化を生じながら流通し、これにより高効率な熱輸送を可能とする。
【0027】
図2中の参照符号35は、アルミニウムや銅等の薄い金属プレートであり、ベーパーチャンバ32の前縁部に接続されている。金属プレート35は、例えばマザーボード24に実装されたパワーコンポーネント等を覆うように設けられる。
【0028】
ヒートシンク36,37は、複数のプレート状のフィンを左右方向に等間隔に並べた構造である。各フィンは、アルミニウムや銅のような高い熱伝導率を有する金属で形成された薄いプレートである。各フィンは、上下方向に起立し、前後方向に延在している。隣接するフィンの間には、遠心ファン38,39から送られた空気が通過する隙間が形成されている。ヒートシンク36,37には、ヒートパイプ34以外の他の熱輸送デバイス、例えばベーパーチャンバ32或いはその代替となるヒートスプレッダ等が接続されてもよい。
【0029】
次に、遠心ファン38,39について説明する。
【0030】
図3は、筐体14の模式的な側面断面図であり、遠心ファン38及びその周辺部を拡大した図である。左右の遠心ファン38,39は、大きさが多少異なるが、基本的な構成は同一でよい。そこで、以下では一方の遠心ファン38について代表的に説明し、他方の遠心ファン39については図中で遠心ファン38の各構成要素と同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。遠心ファン38,39は、一方を省略してもよい。
【0031】
図2及び図3に示すように、遠心ファン38は、ファン40と、ケーシング42とを備える。
【0032】
ケーシング42は、ファン40の上部及び外周側面を囲むフレーム44と、ファン40の下部を囲むカバープレート45とで構成されている。ケーシング42の上下は逆でもよい。フレーム44には吸気口42aが形成され、カバープレート45には吸気口42bが形成されている。吸気口42a,42bは、例えばリング状の開口である。吸気口42a,42bは、平面視で後述するモータ部46の周囲を囲むように設けられ、各ブレード48の端面と対向している。下面側の吸気口42bの直下には、カバー部材14Bに形成された筐体吸気口14Baが対向している。筐体吸気口14Baは、筐体14の底面で開口している。
【0033】
また、フレーム44の後側面には排気口42cが形成されている。遠心ファン38の排気口42cはヒートシンク36の前面に対向し、遠心ファン39の排気口42cはヒートシンク37の前面に対向している。ヒートシンク36,37の直後には筐体14の後面で開口する筐体排気口が対向している。
【0034】
図4は、ファン40の斜視図である。図5は、図4に示すファン40の一部を拡大した斜視図である。図6は、ファン40の平面図である。図3図6に示すように、ファン40は、モータ部46と、複数のブレード48とを有する。
【0035】
モータ部46は、円筒状のハブにモータを収容したものであり、その中心軸O周りに回転する。各ブレード48は、モータ部46の外周側面から放射状に突出している。各ブレード48は、モータ部46側の根本から先端48aに向かって平面視で略S字状に湾曲している。各ブレード48は、S字以外の湾曲形状でもよいし、直線形状でもよい。各ブレード48は、先端48aよりも多少根本側にオフセットした部分がリング状のリングプレート50によって接続され、補強されている。本実施形態の場合、モータ部46のハブ、各ブレード48、及びリングプレート50は、例えば樹脂材料で一体に形成されている。これらハブ、各ブレード48、及びリングプレート50は、少なくとも一つが金属材料で形成されていてもよい。
【0036】
このような冷却モジュール22は、CPU30及びGPU31が発生する熱がベーパーチャンバ32によって吸熱及び拡散されると共に、ヒートパイプ34に伝達されてヒートシンク36,37に輸送される。そして、冷却モジュール22は、遠心ファン38,39の吸気口42a,42bから吸気して排気口42cから排出される空気Aがヒートシンク36,37を通過して筐体14外に排気される(図3参照)。これにより冷却モジュール22は、CPU30及びGPU31を効率よく冷却することができる。
【0037】
ところで、例えばノート型PCである電子機器10に搭載された遠心ファン38(39)は、通常、ノイズ値を一定とした運転制御が行われる。これは、電子機器10に搭載された部品中で最大級のノイズの発生源となる遠心ファン38,39の発生ノイズを許容範囲に抑え、機器全体としての静粛性を担保するためである。つまり遠心ファン38,39は、静粛性を向上させれば回転数の上昇が可能となり、風量の増加による冷却性能の向上が見込まれる。
【0038】
そこで、次に、遠心ファン38,39のノイズを低減するための構成について説明する。なお、ここでも、一方の遠心ファン38について代表的に説明する。
【0039】
図3図6に示すように、遠心ファン38は、吸気口42bの内側でブレード48n全体がすり鉢状に凹んだ凹状部52を有する。凹状部52は、ファン40による吸気口42bからの吸気効率を向上させるための部分である。なお、形状は異なるが、吸気口42aの内側にもブレード48の全体を凹ませた凹状部53が設けられている(図3参照)。
【0040】
各ブレード48の吸気口42bに対向する端面48bには、先端48aから根本(モータ部46側)に向かって切り欠かれるように傾斜した切欠形状部54a~54cが形成されている。図3図5に示すように、切欠形状部54a~54cは、ブレード48の先端から根本に向かって、ブレード48の高さを次第に低くするように湾曲しながら傾斜しており、根本が最も低くなっている。これら切欠形状部54a~54cは、ブレード48の全体として凹状部52を形成している。
【0041】
図7は、ファン40の一部を展開して各ブレード48を平行に並べた模式的な平面図である。図7では、切欠形状部54a~54cにはドットパターンを付して明示している。
【0042】
図3図7に示すように、切欠形状部54a~54cは、端面48bにおける先端からモータ部46に向かう方向で、切欠形状部が傾斜を開始する始点P1~P3の位置がそれぞれ異なる。切欠形状部54aの始点P1は、切欠形状部54b,54cの始点P2,P3よりも先端48aに近い位置にある。一方、切欠形状部54cの始点P3は、切欠形状部54a,54bの始点P1,P2よりも先端48aから遠い位置、つまり根本に近い位置にある。このため、切欠形状部54bの始点P2は、始点P1と始点P3との間にある。従って、ブレード48の先端48aからモータ部46に向かう方向での長さは、切欠形状部54a,54b,54cの順に長い。
【0043】
このように、ファン40は、始点P1を有する切欠形状部54aが形成された第1のブレード群48Aと、始点P2を有する切欠形状部54bが形成された第2のブレード群48Bと、始点P3を有する切欠形状部54cが形成された第3のブレード群48Cとを含む。各ブレード群48A~48Bは、それぞれ複数のブレード48で構成される。本実施形態の場合、各ブレード群48A~48Bを構成するブレード48の枚数はそれぞれ18枚で同一である(図6参照)。各ブレード群48A~48Bを構成するブレード48の枚数は異なってもよい。但し、後述するノイズ低減効果のためには、各ブレード群48A~48Bを構成するブレード48の枚数が同一され、ファン40を構成するブレード48の全体が均等に配置されることが好ましい。
【0044】
図4図7に示す構成例では、各ブレード群48A~48Cを構成するブレード48が順に1枚ずつ並んでいる。より具体的には、各ブレード48は、第1のブレード群48Aのブレード48の隣に第2のブレード群48Bのブレード48が配置され、第2のブレード群48Bのブレード48の隣には第3のブレード群48Cのブレード48が配置されるように配列されている。
【0045】
図6中に太線で示す仮想線VLは、このような各ブレード48の始点P1~P3を順に通過する軌跡を示している。図6に示す仮想線VLは、波状に歪んだ円弧形状を描いており、略丸ノコ形状或いは略歯車形状とも呼べる形状となっている。
【0046】
ここで、表1を参照して、このように始点P1~P3が位置ずれした切欠形状部54a~54cを有するブレード48を備えた実施例の遠心ファン38,39と、始点P1~P3が位置ずれした切欠形状部54a~54cを有していない従来構成のブレードを備えた比較例の遠心ファンとを比較した実験結果を説明する。
【0047】
実験は、図2に示す冷却モジュール22を用いて行った。なお、比較例の遠心ファンは、実施例の遠心ファン38,39と比べて、切欠形状部54a~54c以外は同一仕様のものを使用した。そして、実施例及び比較例の遠心ファンについて、設定ノイズを「45dB」、「42dB」、「38dB」、「32dB」、「28dB」でそれぞれ一定とした際のファン40の回転数(rpm)を測定した。表1において、「CPU」はCPU30を主として冷却するための遠心ファン39の測定結果を示し、「GPU」はGPU31を主として冷却するための遠心ファン38の測定結果を示している。また、表1において、「Δ」は、比較例の回転数に対する実施例の回転数の増加率を示しており、「CPU」、「GPU」の結果を平均して設定ノイズ毎に算出したものである。
【0048】
表1に示すように、実験の結果、実施例の遠心ファン38,39は、比較例の遠心ファンに比べて、各設定ノイズでファン40の回転数が増加し、最大では6%増加した。このように実施例の遠心ファン38,39は、比較例の遠心ファンに比べて、同一の回転数であればノイズが低減され、静粛性が向上していることが分かった。
【0049】
【表1】
【0050】
以上のように、本実施形態の遠心ファン38(39)は、複数のブレード48の吸気口42bに対向する端面48bには、モータ部46に向かって切り欠かれるように傾斜した切欠形状部54a~54cがそれぞれ設けられている。これによりファン40は、複数のブレード48の端面48b全体が吸気口42bの内側ですり鉢状に凹んだ凹状部52を形成している。そして、複数のブレード48は、その先端48aからモータ部46に向かう方向で、切欠形状部54a~54cが傾斜を開始する始点P1~P3の位置が異なる複数のブレード群48A~48Cを含む。この場合、当該遠心ファン38(39)は、ブレード48の先端48aからモータ部46に向かう方向での切欠形状部54a~54cの長さが異なる複数のブレード群48A~48Cを含むと言うこともできる。また、当該遠心ファン38(39)は、始点P1~P3の位置が隣接するブレード48,48同士で異なる構成であると言うこともできる。
【0051】
これにより当該遠心ファン38(39)は、従来の遠心ファンと比べてノイズの発生を抑制することができることが分かった。その結果、遠心ファン38(39)は、従来の遠心ファンと比べて同一ノイズであれば回転数を増加させて風量を増加させることができる。このため、このような遠心ファン38(39)を備える電子機器10は、同一ノイズとすれば冷却性能を向上させてCPU30等のパフォーマンスを控除うることができ、同一の冷却性能とすれば静粛性を向上させることができる。
【0052】
図3に示すように、当該遠心ファン38(39)は、上下面に吸気口42a,42bを備えるが、筐体14の底面に開口する筐体吸気口14Baと対向する吸気口42bと対向する端面48bに切欠形状部54a~54cを設けることが好ましい。筐体14外から直接的に吸気する吸気口42bは、筐体14内から吸気する吸気口42aよりも吸気量が大きく、切欠形状部54a~54cによるノイズ低減効果も大きいからである。なお、このような両面吸気の遠心ファン38(39)の場合は、切欠形状部54a~54cを上下端面にそれぞれ設けてもよいし、一面側のみに設けてもよい。
【0053】
図8は、第1変形例に係るファン60の一部を展開して各ブレード48を平行に並べた模式的な平面図である。本変形例に係るファン60において、上記したファン40と同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略し、図9に示すファン62についても同様とする。
【0054】
図8に示すファン60は、図4図7に示すファン40と比べて、各ブレード群48A~48Cを構成するブレード48の並び方が異なる。すなわちファン40は、各ブレード群48A~48Cを構成するブレード48を順に1枚ずつ並べている。これに対してファン60は、各ブレード群48A~48Cを構成するブレード48を順に2枚ずつ並べている。ファン60において、各ブレード群48A~48Cを構成するブレード48は3枚以上ずつ並べてもよい。このようなファン60を備える遠心ファン38(39)についても、上記したファン40を備える構成と同様にノイズの発生を抑制することできる。
【0055】
図9は、第2変形例に係るファン62の一部を展開して各ブレード48を平行に並べた模式的な平面図である。
【0056】
図9に示すファン62は、図4図7に示すファン40と比べて、第3のブレード群48Cを有していない点が異なる。すなわちファン62は、第1及び第2のブレード群48A,48Bを構成するブレード48を順に1枚ずつ並べた構成である。ファン62においても、図8に示すファン60と同様に、各ブレード群48A,48Bを構成するブレード48は2枚以上ずつ並べてもよい。このように、遠心ファン38(39)は、2種類の切欠形状部54a,54bを備える構成としてもよい。
【0057】
遠心ファン38(39)において、切欠形状部の種類は、上記した3又は2種類ではなく、4種類以上でもよく、その配列も図7図9に示す構成以外でもよい。これらは、遠心ファンの仕様や用途等によって適宜最適なものを選択することができる。
【0058】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
10 電子機器
14 筐体
14Ba 筐体吸気口
22 冷却モジュール
30 CPU
31 GPU
38,39 遠心ファン
40,60,62 ファン
42 ケーシング
42a,42b 吸気口
42c 排気口
46 モータ部
48 ブレード
48A 第1のブレード群
48B 第2のブレード群
48C 第3のブレード群
54a~54c 切欠形状部
P1~P3 始点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9