(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055136
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】偏光板及びこれを用いた表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240411BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20240411BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240411BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/14
B32B7/023
G02F1/1335 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161815
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】314017635
【氏名又は名称】株式会社トッパンTOMOEGAWAオプティカルフィルム
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川田 伸
(72)【発明者】
【氏名】荒堀 和真
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB12
2H149AB13
2H149AB14
2H149CA02
2H149EA13
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA05X
2H149FA08X
2H149FC03
2H149FD18
2H149FD32
2H149FD47
2H291FA22
2H291FA94
2H291FA95
2H291FB02
2H291FB04
2H291MA03
2K009AA15
2K009BB14
2K009BB28
4F100AJ06B
4F100AK03D
4F100AK21C
4F100AK25A
4F100AK25D
4F100AK25E
4F100AK42D
4F100AT00
4F100BA05
4F100GB41
4F100JD04
4F100JN10
(57)【要約】
【課題】高温高湿環境における耐久性を備えた偏光板及びこれを用いた表示装置を提供する。
【解決手段】偏光子の一方面に保護フィルムAが貼り合わされ、他方面に保護フィルムBが貼り合わされた偏光板であって、保護フィルムAが、透明基材の一面にハードコート層が形成されたハードコートフィルムであり、透明基材の樹脂成分からなる基材層と、ハードコート成分からなる最表層と、基材層及び最表層の間に形成され、透明基材の樹脂成分及びハードコート成分が混ざり合った相溶層とを有し、40℃90%RHにおける保護フィルムAの透湿度TA及び保護フィルムBの透湿度TBが以下の条件(1)及び(2)を同時に満足し、最表層の厚みaと相溶層の厚みbとが以下の条件(3)を満足する、偏光板。
240g/m
2/day>TA>70g/m
2/day ・・・(1)
70g/m
2/day≧TB ・・・(2)
0.60≦a/b≦0.85 ・・・(3)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子の一方面に保護フィルムAが貼り合わされ、他方面に保護フィルムBが貼り合わされた偏光板であって、
前記保護フィルムAが、透明基材の一面にハードコート層が形成されたハードコートフィルムであり、前記透明基材の樹脂成分からなる基材層と、ハードコート成分からなる最表層と、前記基材層及び前記最表層の間に形成され、前記透明基材の樹脂成分及び前記ハードコート成分が混ざり合った相溶層とを有し、
40℃90%RHにおける前記保護フィルムAの透湿度TA及び前記保護フィルムBの透湿度TBが以下の条件(1)及び(2)を同時に満足し、
前記最表層の厚みaと前記相溶層の厚みbとが以下の条件(3)を満足する、偏光板。
240g/m2/day>TA>70g/m2/day ・・・(1)
70g/m2/day≧TB ・・・(2)
0.60≦a/b≦0.85 ・・・(3)
【請求項2】
前記透明基材がトリアセチルセルロースフィルムである、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
40℃、20%RH、放射強度500±50W/m2の条件で前記保護フィルムの前記ハードコート層に光を照射する耐候試験を200時間行った後に前記ハードコート層に剥離が生じない、請求項1に記載の偏光板。
【請求項4】
前記保護フィルムAの鉛筆硬度が3H以上である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項5】
前記保護フィルムBが、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート及びポリメチルメタクリレートのいずれか1種からなるフィルムである、請求項1に記載の偏光板。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の偏光板を備える、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板及びこれを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置に用いられる偏光板には、主にポリビニルアルコール(PVA)が使用されている。PVAは耐水性が極めて悪いため、両面に保護フィルムが貼り合わされる。偏光板の保護フィルムには、従来、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムにハードコート層を積層した、透湿度が300~1000g/m2/day程度のハードコートフィルムが使用されてきたが、高温高湿の過酷条件下では、PVAの吸水を防ぎきれずに劣化を引き起こすという問題であった。
【0003】
そこで、TACに代えて、シクロオレフィンポリマー(COP)や、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた保護フィルムの開発が進められ、保護フィルムの透湿度は、5~100g/m2/day程度まで低減されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車載用途などで、極めて高い温湿度での耐久性を有する偏光板が求められている。高温湿度環境下において、保護フィルムの水蒸気バリア性が高すぎると、外部からの水分の侵入はないものの、基材や、保護フィルムの貼り合わせに用いた粘着剤から発生した水分が、偏光板中に留まり劣化を引き起こすという事例が観測されている。
【0006】
それ故に、本発明は、高温高湿環境における耐久性を備えた偏光板及びこれを用いた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る偏光板は、偏光子の一方面に保護フィルムAが貼り合わされ、他方面に保護フィルムBが貼り合わされた偏光板であって、保護フィルムAが、透明基材の一面にハードコート層が形成されたハードコートフィルムであり、透明基材の樹脂成分からなる基材層と、ハードコート成分からなる最表層と、基材層及び最表層の間に形成され、透明基材の樹脂成分及びハードコート成分が混ざり合った相溶層とを有し、40℃90%RHにおける保護フィルムAの透湿度TA及び保護フィルムBの透湿度TBが以下の条件(1)及び(2)を同時に満足し、最表層の厚みaと相溶層の厚みbとが以下の条件(3)を満足するものである。
240g/m2/day>TA>70g/m2/day ・・・(1)
70g/m2/day≧TB ・・・(2)
0.60≦a/b≦0.85 ・・・(3)
【0008】
また、本発明に係る表示装置は、上記の偏光板を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温高湿環境における耐久性を備えた偏光板及びこれを用いた表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る偏光板の概略構成を示す断面図
【
図2】
図1に示した保護フィルムAの概略構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態に係る偏光板の概略構成を示す断面図である。
【0012】
偏光板10は、偏光子1と、偏光子1の一方面側に貼り合わされる保護フィルムAと、偏光子1の他方面側に貼り合わされる保護フィルムBとを備える。偏光子1は、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムにヨウ素または染料を吸着させ配向させることによって形成されたものである。偏光子1を構成するPVAは、強度及び耐水性に劣るため、偏光子1の両面に保護フィルムA及びBが貼り合わされる。
【0013】
保護フィルムAは、透明基材の一面にハードコート層が形成されたハードコートフィルムである。ハードコート層は、柔軟な透明基材を覆い、保護フィルムAに硬度と水蒸気バリア性を付与する機能層である。透明基材としては、透明性に優れるトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを好適に使用することができる。
【0014】
図2は、
図1に示した保護フィルムAの概略構成を示す断面図である。
【0015】
保護フィルムAは、活性エネルギー線硬化型化合物と、疎水性材料と、光重合開始剤と、溶剤とを含有するハードコート層形成用組成物を透明基材の一面に塗布して乾燥させ、紫外線照射により塗膜を硬化させることによって形成することができる。
【0016】
ハードコート層形成用組成物を透明基材に塗布すると、ハードコート層形成用組成物に含まれる溶剤により透明基材の一部が膨潤または溶解し、ハードコート層形性用組成物の成分(ハードコート成分)と、透明基材を構成する樹脂成分とが混ざり合った層が形成される。ハードコート層形性用組成物の塗膜を乾燥させた後、紫外線照射により塗膜を硬化させると、
図2に示すように、透明基材の樹脂成分を主体とする基材層2と、ハードコート成分を主体とする硬化層である最表層3と、基材層2及び最表層3との間に形成され、透明基材の樹脂成分とハードコート成分とが混ざり合って硬化した相溶層4とが形成される。尚、基材層2及び相溶層4の界面、並びに、相溶層4及び最表層3の界面は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた保護フィルムAの断面観察により確認することができ、基材層2、相溶層4及び最表層3の厚みは、SEM画像から特定することが可能である。相溶層4の厚みは、ハードコート層形成用組成物の塗工後の乾燥時間や乾燥温度により制御することが可能である。例えば、乾燥時間を長くした場合、溶剤による透明基材の膨潤または溶解がより進行するため、相溶層4を厚くすることができる。また、乾燥温度を高くすると、乾燥がより早く進行するため、溶剤による透明基材の膨潤または溶解を抑え、相溶層4を薄くすることができる。
【0017】
活性エネルギー線硬化型化合物としては、例えば、単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを使用できる。尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方の総称であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルの両方の総称である。
【0018】
単官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、bフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタン、アダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレート等のアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
2官能の(メタ)アクリレートの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(
メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
3官能以上の(メタ)アクリレートの例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0021】
また、多官能モノマーとして、ウレタン(メタ)アクリレートも使用できる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることによって得られるものを挙げることができる。
【0022】
ウレタン(メタ)アクリレートの例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0023】
上述した多官能モノマーは1種を用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、上述した多官能モノマーは、組成物中でモノマーであっても良いし、一部が重合したオリゴマーであっても良い。
【0024】
疎水性材料は、ハードコート層に疎水性を発現させ、保護フィルムAの透湿度を調節するための成分である。ハードコート層に含有させる疎水性材料としては、シクロオレフィンポリマーや、脂環式構造を含む(メタ)アクリレートを使用することができる。
【0025】
脂環式構造を含む(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロペンタン構造、ジシクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロデカン構造、トリシクロデカン構造、イソボルニル構造、アダマンタン構造の1種以上を有する(メタ)アクリレートを使用することができる。
【0026】
脂環式構造を含む(メタ)アクリレートの具体例として、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、2-ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレートや、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、ボルニルジ(メタ)アクリレート、イソボルニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジエタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメチロールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサントリメタノールトリ(メタ)アクリレート、アダマンチルトリ(メタ)アクリレート、アダマンタントリメタノールトリ(メタ)アクリレート、ノルボルナントリメチロールトリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカントリメタノールトリ(メタ)アクリレート、パーヒドロ-1,4,5,8-ジメタノナフタレン-2,3,7-(オキシメチル)トリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは、単独で使用しても良いし、1種以上を混合して使用しても良い。
【0027】
光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、アシルフォスフィンオキシド等のラジカル重合開始剤に使用することができる。重合開始剤として、例えば、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2,2-ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-フェニルアセトフェノン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、p-クロロベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2-クロロチオキサントン等を使用できる。これらのうち1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0028】
溶剤としては、透明基材を膨潤または溶解させることができるものであれば良く、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジアセトンアルコール等のケトンアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセロソルブ、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、炭酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、N-メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド等のうち、1種類または2種類以上を混合して使用できる。
【0029】
また、ハードコート層形成用組成物には、帯電防止剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、色材、光安定剤、重合禁止剤、光増感剤、防汚剤、レベリング剤、撥油剤、撥水剤、指紋付着防止剤等の各種添加剤等を必要に応じて添加しても良い。
【0030】
ハードコート層形成用組成物の塗工方法は特に限定されず、例えば、スピンコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーター、スプレーコーター、アプリケーター等を用いて塗工することができる。
【0031】
ハードコート層形成用組成物の塗布厚み(塗膜の膜厚)は、8μm以下とすることが好ましい。ハードコート層形成用組成物の塗布厚みが8μmを超える場合、塗膜の硬化時の収縮によりカールが生じやすくなるため好ましくない。
【0032】
また、保護フィルムA(ハードコートフィルム)の鉛筆硬度は3H以上であることが好ましい。保護フィルムAの鉛筆硬度が3H以上である場合、偏光板の表面硬度に優れ、耐久性が向上する
【0033】
保護フィルムBは、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリメチルメタクリレート(PMMA)のいずれかからなるフィルム低透湿性のフィルムである。保護フィルムBは、例えば、紫外線硬化性の接着剤を介して偏光子1に貼り合わされる。保護フィルムBの厚みは、特に限定されないが、10~100μmであることが好ましい。
【0034】
尚、表示装置において、保護フィルムBが表示パネル側に配置され、保護フィルムAのハードコート層が視認側(表示パネルとは反対側)に配置される。
【0035】
保護フィルムAの透明基材(基材層2)は、接着剤として水糊(PVA水溶液)を用いて偏光子1のPVAフィルムに貼り合わされる。尚、透明基材とPVAフィルムとの密着性を確保するため、貼り合わせの前に保護フィルムAに鹸化処理が施される。保護フィルムAの偏光子1への貼り合わせに水糊を用いるため、乾燥工程を経た後においても、接着剤層中及びTACフィルム中には水分が含まれ得る。保護フィルムA及びBの両方を透湿度の低いフィルムを用いて構成した場合、外部からの水分の侵入は抑制されるものの、夏場の車内等の極めて高温な環境下において、接着剤及び/または透明基材に含まれていた水分が偏光板10内に留まり続けるため、偏光子1の劣化を引き起こす。
【0036】
そこで、本実施形態に係る偏光板10においては、保護フィルムAの透湿度と保護フィルムBの透湿度とに差を設け、かつ、保護フィルムA及び保護フィルムBの透湿度をそれぞれ特定の範囲とすることによって、接着剤及び/またはTACフィルム由来の水分による偏光子1の劣化を抑制する。
【0037】
具体的に、40℃90%RHにおける保護フィルムA及びBの透湿度をそれぞれTA及びTBとすると、TA及びTBは以下の条件(1)及び(2)を同時に満足する。尚、透湿度TA及びTBはいずれも、JIS Z 0208:1976に規定される、防湿包装材料の透湿度試験法(カップ法)に準拠して測定した値である。
240g/m2/day>TA>70g/m2/day ・・・(1)
70g/m2/day≧TB ・・・(2)
【0038】
本実施形態に係る偏光板10は、上記の条件(1)及び(2)を同時に満足することにより、外部から偏光板内部への水分の侵入を抑制しつつ、例えば、85℃の高温環境下に晒された場合に、保護フィルムAと偏光子1との貼り合わせに用いた接着剤及び/または保護フィルムAの透明基材から発生した水分を外部に排出させることができる。
【0039】
偏光板10は、表示装置に組み込まれた状態で、長時間に渡って光源の光に晒される。したがって、保護フィルムAには、長時間光に晒された場合でも劣化によりハードコート層(最表層3)が剥離せず、保護フィルムAの低透湿性と表面硬度とを維持できることが求められる。最表層3の密着性には、保護フィルムAに形成される相溶層4の厚みが関係しており、最表層3の厚みに対して一定以上の厚みがあれば、最表層3と基材層2との密着性が良好となる。また、相溶層4の厚みは保護フィルムAの低透湿性にも影響する。ハードコート層形成用組成物の塗布厚みが一定である場合、相溶層4が厚くなるほど、低透湿性への寄与が大きい最表層3の厚みが減少するため、透湿度が低下する。
【0040】
具体的に、本実施形態に係る保護フィルムAは、最表層3の厚みaと相溶層4の厚みbとが以下の条件(3)を満足するように形成されている。
0.60≦a/b≦0.85 ・・・(3)
【0041】
a/bが0.60未満の場合、最表層3の厚みに対して相溶層4の厚みが十分に厚いため、基材層2に対する最表層3の密着性は良好である。ただし、相溶層4を厚く形成したことにより最表層3の厚みが不足するため、透湿度が高くなり、条件(1)を満たすことができなくなってしまう。一方、a/bが0.85を超える場合、最表層3が厚くなるため、透湿度は低くなるが、最表層3の厚みに対して相溶層4の厚みが不足するため、基材層2に対する最表層3の密着性が悪化する。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る偏光板10は、上記条件(1)~(3)を満足する保護フィルムA及び保護フィルムBを備える。この構成により、表示パネル側に配置される保護フィルムBは水分の出入りをほぼ遮断する。一方、視認側に配置される保護フィルムAは、外部から偏光板10内部への水分の侵入を抑制しつつ、極めて高温な環境下において、偏光板10内部で発生した水分の放出を可能とする。したがって、本実施形態に係る偏光板10においては、高温環境下で用いられた場合に、偏光板10の内部で発生した水分が留まらないため、偏光子の劣化を抑制し、より長期に渡って偏光板10の光学性能を維持することが可能となる。
【0043】
また、保護フィルムAの最表層3及び相溶層4の厚みが上記条件(3)を満足することにより、保護フィルムAの透湿度を抑制しつつ、長時間に渡って光が照射された場合でも、光による劣化を抑制し基材層2に対する最表層3の密着性を維持することができる。この結果、保護フィルムAの低透湿性と表面硬度を長期間に渡って維持することができ、偏光板の耐久性を向上することが可能となる。
【0044】
したがって、本実施形態によれば、高温高湿環境における耐久性に優れた偏光板10を提供できる。
【0045】
本実施形態に係る偏光板10は、液晶パネルや有機ELパネル等の画像表示パネルと組み合わせて画像表示装置を構成するのに利用することができる。画像表示装置は、タッチパネルを備えても良い。本実施形態に係る偏光板10は、高温高湿環境における優れた耐久性を有するので、極めて高温かつ多湿となる車内等の環境に搭載される画像表示装置として好適に利用できる。
【実施例0046】
以下、本発明を具体的に実施した実施例を説明する。
【0047】
主材料(重合性材料)、疎水性材料、光重合開始剤及び溶剤を表1に示す割合で含有するハードコート層形成用組成物を調整した。尚、表1に示すIrgacure(登録商標) 184は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンであり、TPOは、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドである。
【0048】
調整したハードコート層形成用組成物を厚み40μmのTACフィルム(商品名:TJ40 富士フイルム社製)に、ワイヤーバーコーターを用いて、表2に記載の塗布厚となるように塗布した。オーブン内で加熱して塗膜を乾燥させた後、UV硬化装置において窒素雰囲気下(酸素濃度500ppm以下)、積算光量が100mJ/cm2となるように紫外線を照射して塗膜を硬化させ、実施例1~6及び比較例1~6に係る保護フィルムA(ハードコートフィルム)を作製した。実施例7及び8では、保護フィルムAとして、厚み60μmのポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム及び厚み26μmのシクロオレフィンポリマー(COP)フィルムを使用した。また、厚み26μmのCOPフィルムを保護フィルムBとした。
【0049】
【0050】
保護フィルムAのTACフィルム面と偏光子とを水糊を用いて貼り合わせて乾燥させた後、紫外線硬化性接着剤を用いて偏光子に保護フィルムBを貼り合わせ、紫外線を照射することにより紫外線硬化性接着剤を硬化させ、偏光板を得た。
【0051】
偏光子に貼り合わせる前の保護フィルムAを表面に対して直交する方向に裁断し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影し、断面画像から最表層の厚みaと、相溶層の厚みbとを算出した。
【0052】
(透湿度)
偏光子に貼り合わせる前の保護フィルムAの透湿度TA及び保護フィルムBの透湿度TBを、JIS Z 0208:1976に規定される、防湿包装材料の透湿度試験法(カップ法)に準拠して、40℃、90RH%の条件で測定した。
【0053】
(鉛筆硬度)
鉛筆(三菱鉛筆株式会社製 uni、3H)及びクレメンス型引っ掻き試験機(HA-301、テスター産業株式会社製)を用いて、荷重500g、引っ掻き速度0.5mm/secの条件で、保護フィルムAのハードコート層表面の引っ掻き試験を行った。5枚のサンプルで引っ掻き試験を行い、ハードコート層表面に傷が認められたサンプルが2枚以上あった場合をNG、それ以外をOKと評価した。
【0054】
(密着性)
偏光子に貼り合わせる前の保護フィルムAのハードコート面に、紫外線フェードメーター(U48、スガ試験機社製)を用いて、40℃、20%RH、放射強度(300~700nmの積算照度)500±50W/m2の条件で200時間光を照射する耐光性試験を実施した。旧JIS K 5400 塗料一般試験方法に規定されていた碁盤目試験に準拠し、耐光性試験後の保護フィルムAのハードコート面に1mm2のマス目を100個形成した。形成したマス目に粘着テープ(CT405AP-24、ニチバン株式会社)を貼り付け、ヘラを用いて均一に押し付けた後、90°方向に粘着テープを剥離させ、最表層の剥離の有無を目視にて確認した。各マスの面積の10%以上の剥離が生じた場合を剥離ありと判定し、剥離ありのマスが0個の場合の評価をOK、剥離ありのマスが1個以上確認された場合の評価をNGとした。
【0055】
(高温高湿耐久試験後の偏光板の偏光度)
各実施例及び各比較例に係る偏光板を85℃、85%RHの恒温槽に投入し、投入から240時間後及び500時間後の偏光度を測定した。尚、偏光度は、積分球付き吸光光度計(V7100、日本分光社製)により測定した値に対して、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行うことで算出した。
【0056】
表2に、各実施例及び各比較例に係る保護フィルムA及びBの諸特性と、偏光板の偏光度の測定値(初期値、高温高湿耐久試験前及び後)を示す。
【0057】
【0058】
実施例1~6に係る偏光板は、保護フィルムAの透湿度TA及び保護フィルムBの透湿度TBが上記の条件(1)及び(2)を満足し、更に、最表層の厚みaと相溶層の厚みbとが上記の条件(3)を満足するものである。このため、85℃85%RHの恒温槽に500時間投入された後でも高い偏光度の値を示し、耐光性試験後における最表層の密着性に優れ、表面硬度も良好であった。
【0059】
これに対して、比較例1及び3においては、保護フィルムAのa/bの値が条件(3)の範囲を超え、最表層の厚みに対して相溶層の厚みが不足したため、基材層に対する最表層の密着性が悪くなった。
【0060】
比較例2及び4においては、保護フィルムAのa/bの値が条件(3)の範囲を下回り、相溶層が厚い代わりに最表層が薄くなったため、保護フィルムAの透湿度TAが高くなった。このため、外部からの水分の侵入を十分に抑制できず、85℃、85%RHの恒温槽に500時間投入された後の偏光度が悪化した。
【0061】
比較例5及び6においては、疎水性材料を配合していないハードコート層形成用組成物を用いてハードコート層を形成したため、保護フィルムAの透湿度TAが高くなった。このため、外部からの水分の侵入を十分に抑制できず、85℃、85%RHの恒温槽に500時間投入された後の偏光度が実施例と比べて低下した。
【0062】
比較例7及び8においては、保護フィルムAとして極めて透湿度TAが低いPMMAフィルム及びCOPフィルムをそれぞれ使用したが、85℃、85%RHの恒温槽に500時間投入された後の偏光度が悪化した。これは、保護フィルムAの透湿度TAが低過ぎるために、高温高湿下に晒された場合に、保護フィルムA及び/または接着剤(水糊)に含まれていた水分が偏光板内に留まり続け、偏光子の劣化を引き起こしたと考えられる。また、比較例7及び8の保護フィルムAは、ハードコート層が設けられていないため、実施例と比べて表面硬度が劣っていた。