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特開2024-55145極低温冷凍機の運転方法および極低温冷凍機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055145
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】極低温冷凍機の運転方法および極低温冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/14 20060101AFI20240411BHJP
   F25B 9/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
F25B9/14 530Z
F25B9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161835
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】横土 敬幸
(72)【発明者】
【氏名】松井 孝聡
(57)【要約】
【課題】極低温冷凍機の初期冷却時間を短縮する。
【解決手段】極低温冷凍機10の運転方法は、第2圧縮機80を高圧ライン63上または低圧ライン64上で第1圧縮機12と直列に接続することと、バッファ容積70を、供給バルブ72を介して低圧ライン64に接続することと、膨張機14を初期温度から極低温に冷却する初期冷却を、第2圧縮機80とバッファ容積70が極低温冷凍機10に接続された状態で実行することと、初期冷却に後続して膨張機14を極低温に維持する定常運転を実行することと、を備える。初期冷却を実行することは、第1圧縮機12および第2圧縮機80を使用して作動ガスを膨張機14に供給することと、測定された高圧ライン63の圧力に基づいて、高圧ライン63の圧力を予め設定した適正圧力範囲に保つように供給バルブ72を制御することと、を備える。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温冷凍機の運転方法であって、前記極低温冷凍機は、第1圧縮機と、膨張機と、前記第1圧縮機を前記膨張機に接続する高圧ラインおよび低圧ラインとを備え、前記方法は、
第2圧縮機を前記高圧ライン上または前記低圧ライン上で前記第1圧縮機と直列に接続することと、
バッファ容積を、供給バルブを介して前記低圧ラインに接続することと、
前記膨張機を初期温度から極低温に冷却する初期冷却を、前記第2圧縮機と前記バッファ容積が前記極低温冷凍機に接続された状態で実行することと、
前記初期冷却に後続して前記膨張機を前記極低温に維持する定常運転を実行することと、を備え、
前記初期冷却を実行することは、
前記第1圧縮機および前記第2圧縮機を使用して作動ガスを前記膨張機に供給することと、
測定された前記高圧ラインの圧力に基づいて、前記高圧ラインの圧力を予め設定した適正圧力範囲に保つように前記供給バルブを制御することと、を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記初期冷却の後、前記第2圧縮機を取り外すことをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記初期冷却の後、前記バッファ容積を取り外すことをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記初期冷却を実行することは、
測定された前記低圧ラインの圧力が予め設定した低圧しきい値を下回るとき、前記高圧ラインの圧力に基づく前記供給バルブの制御を中断することと、
測定された前記低圧ラインの圧力に基づいて、前記低圧ラインの圧力を前記低圧しきい値に回復させるように前記供給バルブを制御することと、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記初期冷却を実行することは、
測定された前記高圧ラインの圧力が高圧しきい値を下回るとき、前記低圧ラインの圧力に基づく前記供給バルブの制御を中断することと、
測定された前記高圧ラインの圧力に基づいて、前記高圧ラインの圧力を前記高圧しきい値に回復させるように前記供給バルブを制御することと、を備えることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
極低温冷凍機の運転方法であって、前記極低温冷凍機は、第1圧縮機と、膨張機と、前記第1圧縮機を前記膨張機に接続する高圧ラインおよび低圧ラインとを備え、前記方法は、
第2圧縮機を前記高圧ライン上または前記低圧ライン上で前記第1圧縮機と直列に接続することと、
前記膨張機を初期温度から極低温に冷却する初期冷却を、前記第2圧縮機が前記極低温冷凍機に接続された状態で実行することと、
前記初期冷却に後続して前記膨張機を前記極低温に維持する定常運転を実行することと、を備え、
前記第1圧縮機または前記第2圧縮機は、運転周波数を可変とする圧縮機モータを有し、前記圧縮機モータによって駆動され、
前記初期冷却を実行することは、
前記第1圧縮機および前記第2圧縮機を使用して作動ガスを前記膨張機に供給することと、
測定された前記高圧ラインの圧力に基づいて、前記高圧ラインの圧力を予め設定した適正圧力範囲に保つように前記圧縮機モータの運転周波数を制御することと、を備えることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記初期冷却の後、前記第2圧縮機を取り外すことをさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
バッファ容積を、供給バルブを介して前記低圧ラインに接続することをさらに備え、
前記初期冷却を実行することは、測定された前記高圧ラインの圧力に基づいて、前記高圧ラインの圧力を予め設定した適正圧力範囲に保つように前記供給バルブを制御することを備えることを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記初期冷却の後、前記バッファ容積を取り外すことをさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
初期温度から極低温に冷却する初期冷却と、前記初期冷却に後続して前記極低温を維持する定常運転とを実行可能な膨張機と、
前記膨張機に接続される高圧ラインおよび低圧ラインと、
前記高圧ラインの圧力を測定する第1圧力センサと、
前記低圧ラインの圧力を測定する第2圧力センサと、
作動ガスを貯留するバッファ容積と、
前記バッファ容積を前記低圧ラインに接続する供給バルブと、
前記初期冷却の最中に、前記第1圧力センサによって測定された前記高圧ラインの圧力に基づいて、前記高圧ラインの圧力を予め設定した適正圧力範囲に保つように前記供給バルブを制御するように構成されるコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記第2圧力センサによって測定された前記低圧ラインの圧力が予め設定した低圧しきい値を下回るとき、前記高圧ラインの圧力に基づく前記供給バルブの制御を中断し、
前記第2圧力センサによって測定された前記低圧ラインの圧力に基づいて、前記低圧ラインの圧力を前記低圧しきい値に回復させるように前記供給バルブを制御するように構成されることを特徴とする極低温冷凍機。
【請求項11】
前記コントローラは、
前記第1圧力センサによって測定された前記高圧ラインの圧力が高圧しきい値を下回るとき、前記低圧ラインの圧力に基づく前記供給バルブの制御を中断し、
前記第1圧力センサによって測定された前記高圧ラインの圧力に基づいて、前記高圧ラインの圧力を前記高圧しきい値に回復させるように前記供給バルブを制御するように構成されることを特徴とする請求項10に記載の極低温冷凍機。
【請求項12】
前記高圧ラインおよび前記低圧ラインを通じて前記膨張機に接続される第1圧縮機と、
前記高圧ライン上または前記低圧ライン上で前記第1圧縮機と直列に接続される第2圧縮機と、をさらに備えることを特徴とする請求項10または11に記載の極低温冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温冷凍機の運転方法および極低温冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
極低温冷凍機は、極低温環境で使用される超伝導機器、測定機器、試料など様々な対象物を冷却するために利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-112315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
極低温冷凍機で対象物を冷却するには、まず、極低温冷凍機を起動し、初期温度から目的の極低温まで極低温冷凍機を冷却しなければならない。このような極低温冷凍機の初期冷却はクールダウンとも称される。初期冷却は対象物の冷却を始めるための準備にすぎないから、その所要時間はなるべく短いことが望まれる。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、極低温冷凍機の初期冷却時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機の運転方法が提供される。極低温冷凍機は、第1圧縮機と、膨張機と、第1圧縮機を膨張機に接続する高圧ラインおよび低圧ラインとを備える。方法は、第2圧縮機を高圧ライン上または低圧ライン上で第1圧縮機と直列に接続することと、バッファ容積を、供給バルブを介して低圧ラインに接続することと、膨張機を初期温度から極低温に冷却する初期冷却を、第2圧縮機とバッファ容積が極低温冷凍機に接続された状態で実行することと、初期冷却に後続して膨張機を極低温に維持する定常運転を実行することと、を備える。初期冷却を実行することは、第1圧縮機および第2圧縮機を使用して作動ガスを膨張機に供給することと、測定された高圧ラインの圧力に基づいて、高圧ラインの圧力を予め設定した適正圧力範囲に保つように供給バルブを制御することと、を備える。
【0007】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機の運転方法が提供される。極低温冷凍機は、第1圧縮機と、膨張機と、第1圧縮機を膨張機に接続する高圧ラインおよび低圧ラインとを備える。方法は、第2圧縮機を高圧ライン上または低圧ライン上で第1圧縮機と直列に接続することと、膨張機を初期温度から極低温に冷却する初期冷却を、第2圧縮機が極低温冷凍機に接続された状態で実行することと、初期冷却に後続して膨張機を極低温に維持する定常運転を実行することと、を備える。前記第1圧縮機または第2圧縮機は、運転周波数を可変とする圧縮機モータを有し、圧縮機モータによって駆動される。初期冷却を実行することは、第1圧縮機および第2圧縮機を使用して作動ガスを膨張機に供給することと、測定された高圧ラインの圧力に基づいて、高圧ラインの圧力を予め設定した適正圧力範囲に保つように圧縮機モータの運転周波数を制御することと、を備える。
【0008】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機は、初期温度から極低温に冷却する初期冷却と、初期冷却に後続して極低温を維持する定常運転とを実行可能な膨張機と、膨張機に接続される高圧ラインおよび低圧ラインと、高圧ラインの圧力を測定する第1圧力センサと、低圧ラインの圧力を測定する第2圧力センサと、作動ガスを貯留するバッファ容積と、バッファ容積を低圧ラインに接続する供給バルブと、初期冷却の最中に、第1圧力センサによって測定された高圧ラインの圧力に基づいて、高圧ラインの圧力を予め設定した適正圧力範囲に保つように供給バルブを制御するように構成されるコントローラと、を備える。コントローラは、第2圧力センサによって測定された低圧ラインの圧力が予め設定した低圧しきい値を下回るとき、高圧ラインの圧力に基づく供給バルブの制御を中断し、第2圧力センサによって測定された低圧ラインの圧力に基づいて、低圧ラインの圧力を低圧しきい値に回復させるように供給バルブを制御するように構成される。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、極低温冷凍機の初期冷却時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
図2】第1の実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
図3】第1の実施の形態に係る極低温冷凍機の制御方法を説明するフローチャートである。
図4】第1の実施の形態に係る極低温冷凍機の制御方法を説明するフローチャートである。
図5】第1の実施の形態に係り、極低温冷凍機の運転中の温度と圧力の変化の一例を示すグラフである。
図6図6(A)および図6(B)は、第1の実施の形態に係り、極低温冷凍機の運転中の圧力の変化の一例を示すグラフである。
図7】第1の実施の形態に係り、極低温冷凍機の運転中の温度と圧力の変化の一例を示すグラフである。
図8】第1の実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
図9】第1の実施の形態に係る極低温冷凍機の制御方法を説明するフローチャートである。
図10】第1の実施の形態に係る極低温冷凍機の制御方法を説明するフローチャートである。
図11】第1の実施の形態に係る極低温冷凍機の制御方法を説明するフローチャートである。
図12】第2の実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
図13】第2の実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
図14】第2の実施の形態に係る極低温冷凍機の運転方法を説明するフローチャートである。
図15】第3の実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
図16】第3の実施の形態に係る極低温冷凍機の運転方法を説明するフローチャートである。
図17】第3の実施の形態に係る極低温冷凍機の運転方法を説明するフローチャートである。
図18】第3の実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
図19】第3の実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1および図2は、第1の実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。極低温冷凍機10は、一例として、二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機である。図1には、極低温冷凍機10を構成する圧縮機12と膨張機14が制御装置100とともに模式的に示され、図2には、極低温冷凍機10の膨張機14の内部構造が示される。
【0014】
圧縮機12は、極低温冷凍機10の作動ガスを膨張機14から回収し、回収した作動ガスを昇圧して、再び作動ガスを膨張機14に供給するよう構成されている。圧縮機12と膨張機14により極低温冷凍機10の冷凍サイクルが構成され、それにより極低温冷凍機10は所望の極低温冷却を提供することができる。膨張機14は、コールドヘッドとも称される。作動ガスは、冷媒ガスとも称され、通例はヘリウムガスであるが、適切な他のガスが用いられてもよい。理解のために、作動ガスの流れる方向を図1に矢印で示す。
【0015】
なお、一般に、圧縮機12から膨張機14に供給される作動ガスの圧力と、膨張機14から圧縮機12に回収される作動ガスの圧力は、ともに大気圧よりかなり高く、それぞれ第1高圧及び第2高圧と呼ぶことができる。説明の便宜上、第1高圧及び第2高圧はそれぞれ単に高圧及び低圧とも呼ばれる。典型的には、高圧は例えば2~3MPaである。低圧は例えば0.5~1.5MPaであり、例えば約0.8MPaである。理解のために、作動ガスの流れる方向を矢印で示す。
【0016】
膨張機14は、冷凍機シリンダ16と、ディスプレーサ組立体18とを備える。冷凍機シリンダ16は、ディスプレーサ組立体18の直線往復運動をガイドするとともに、ディスプレーサ組立体18との間に作動ガスの膨張室(32、34)を形成する。また、膨張機14は、膨張室への作動ガスの吸気開始タイミングおよび膨張室からの作動ガスの排気開始タイミングを定める圧力切替バルブ40を備える。
【0017】
本書では、極低温冷凍機10の構成要素間の位置関係を説明するために、便宜上、ディスプレーサの軸方向往復動の上死点に近い側を「上」、下死点に近い側を「下」と表記することとする。上死点は膨張空間の容積が最大となるディスプレーサの位置であり、下死点は膨張空間の容積が最小となるディスプレーサの位置である。極低温冷凍機10の運転時には軸方向上方から下方へと温度が下がる温度勾配が生じるので、上側を高温側、下側を低温側と呼ぶこともできる。
【0018】
冷凍機シリンダ16は、第1シリンダ16a、第2シリンダ16bを有する。第1シリンダ16aと第2シリンダ16bは、一例として、円筒形状を有する部材であり、第2シリンダ16bが第1シリンダ16aよりも小径である。第1シリンダ16aと第2シリンダ16bは同軸に配置され、第1シリンダ16aの下端が第2シリンダ16bの上端に剛に連結されている。
【0019】
ディスプレーサ組立体18は、互いに連結された第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bを備え、これらは一体に移動する。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは、一例として、円筒形状を有する部材であり、第2ディスプレーサ18bが第1ディスプレーサ18aよりも小径である。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは同軸に配置されている。
【0020】
第1ディスプレーサ18aは、第1シリンダ16aに収容され、第2ディスプレーサ18bは、第2シリンダ16bに収容されている。第1ディスプレーサ18aは、第1シリンダ16aに沿って軸方向に往復移動可能であり、第2ディスプレーサ18bは、第2シリンダ16bに沿って軸方向に往復移動可能である。
【0021】
図2に示されるように、第1ディスプレーサ18aは、第1蓄冷器26を収容する。第1蓄冷器26は、第1ディスプレーサ18aの筒状の本体部の中に、例えば銅などの金網またはその他適宜の第1蓄冷材を充填することによって形成されている。第1ディスプレーサ18aの上蓋部および下蓋部は第1ディスプレーサ18aの本体部とは別の部材として提供されてもよく、第1ディスプレーサ18aの上蓋部および下蓋部は、締結、溶接など適宜の手段で本体に固定され、それにより第1蓄冷材が第1ディスプレーサ18aに収容されてもよい。
【0022】
同様に、第2ディスプレーサ18bは、第2蓄冷器28を収容する。第2蓄冷器28は、第2ディスプレーサ18bの筒状の本体部の中に、例えばビスマスなどの非磁性蓄冷材、HoCuなどの磁性蓄冷材、またはその他適宜の第2蓄冷材を充填することによって形成されている。第2蓄冷材は粒状に成形されていてもよい。第2ディスプレーサ18bの上蓋部および下蓋部は第2ディスプレーサ18bの本体部とは別の部材として提供されてもよく、第2ディスプレーサ18bの上蓋部の下蓋部は、締結、溶接など適宜の手段で本体に固定され、それにより第2蓄冷材が第2ディスプレーサ18bに収容されてもよい。
【0023】
ディスプレーサ組立体18は、室温室30、第1膨張室32、第2膨張室34を冷凍機シリンダ16の内部に形成する。極低温冷凍機10によって冷却すべき所望の物体または媒体との熱交換のために、膨張機14は、第1冷却ステージ33と第2冷却ステージ35を備える。室温室30は、第1ディスプレーサ18aの上蓋部と第1シリンダ16aの上部との間に形成される。第1膨張室32は、第1ディスプレーサ18aの下蓋部と第1冷却ステージ33との間に形成される。第2膨張室34は、第2ディスプレーサ18bの下蓋部と第2冷却ステージ35との間に形成される。第1冷却ステージ33は、第1膨張室32を取り囲むように第1シリンダ16aの下部に固着され、第2冷却ステージ35は、第2膨張室34を取り囲むように第2シリンダ16bの下部に固着されている。
【0024】
第1蓄冷器26は、第1ディスプレーサ18aの上蓋部に形成された作動ガス流路36aを通じて室温室30に接続され、第1ディスプレーサ18aの下蓋部に形成された作動ガス流路36bを通じて第1膨張室32に接続されている。第2蓄冷器28は、第1ディスプレーサ18aの下蓋部から第2ディスプレーサ18bの上蓋部へと形成された作動ガス流路36cを通じて第1蓄冷器26に接続されている。また、第2蓄冷器28は、第2ディスプレーサ18bの下蓋部に形成された作動ガス流路36dを通じて第2膨張室34に接続されている。
【0025】
第1膨張室32、第2膨張室34と室温室30との間の作動ガス流れが、冷凍機シリンダ16とディスプレーサ組立体18との間のクリアランスではなく、第1蓄冷器26、第2蓄冷器28に導かれるようにするために、第1シール38a、第2シール38bが設けられていてもよい。第1シール38aは、第1ディスプレーサ18aと第1シリンダ16aとの間に配置されるように第1ディスプレーサ18aの上蓋部に装着されてもよい。第2シール38bは、第2ディスプレーサ18bと第2シリンダ16bとの間に配置されるように第2ディスプレーサ18bの上蓋部に装着されてもよい。
【0026】
図1に示されるように、膨張機14は、圧力切替バルブ40を収容する冷凍機ハウジング20を備える。冷凍機ハウジング20は、冷凍機シリンダ16と結合され、それにより、圧力切替バルブ40およびディスプレーサ組立体18を収容する気密容器が構成される。
【0027】
圧力切替バルブ40は、図2に示されるように、高圧バルブ40aと低圧バルブ40bを備え、冷凍機シリンダ16内に周期的圧力変動を発生させるように構成されている。圧縮機12の作動ガス吐出口が高圧バルブ40aを介して室温室30に接続され、圧縮機12の作動ガス吸入口が低圧バルブ40bを介して室温室30に接続されている。高圧バルブ40aと低圧バルブ40bは、選択的かつ交互に開閉するように(すなわち、一方が開いているとき他方が閉じるように)構成されている。
【0028】
圧力切替バルブ40は、ロータリーバルブの形式をとってもよい。すなわち、圧力切替バルブ40は、静止したバルブ本体に対するバルブディスクの回転摺動によって高圧バルブ40aと低圧バルブ40bが交互に開閉されるように構成されていてもよい。その場合、膨張機モータ42が圧力切替バルブ40のバルブディスクを回転させるように圧力切替バルブ40に連結されていてもよい。たとえば、圧力切替バルブ40は、バルブ回転軸が膨張機モータ42の回転軸と同軸となるように配置される。
【0029】
あるいは、高圧バルブ40aと低圧バルブ40bはそれぞれ個別に制御可能なバルブであってもよく、その場合、圧力切替バルブ40は、膨張機モータ42に連結されていなくてもよい。
【0030】
膨張機モータ42は、たとえばスコッチヨーク機構などの運動変換機構43を介してディスプレーサ駆動軸44に連結されている。膨張機モータ42は、冷凍機ハウジング20に取り付けられている。運動変換機構43は、圧力切替バルブ40と同様に、冷凍機ハウジング20に収容されている。運動変換機構43は、膨張機モータ42が出力する回転運動をディスプレーサ駆動軸44の直線往復運動に変換する。ディスプレーサ駆動軸44は、運動変換機構43から室温室30の中へと延び、第1ディスプレーサ18aの上蓋部に固定されている。膨張機モータ42の回転は運動変換機構43によってディスプレーサ駆動軸44の軸方向往復動に変換され、ディスプレーサ組立体18は冷凍機シリンダ16内を軸方向に直線的に往復する。
【0031】
また、膨張機14は、第2冷却ステージ35(及び/または第1冷却ステージ33)の温度を測定し、測定温度を示す測定温度信号を出力する温度センサ46を備えてもよい。
【0032】
圧縮機12は、高圧ガス出口50、低圧ガス入口51、高圧流路52、低圧流路53、第1圧力センサ54、第2圧力センサ55、バイパスライン56、圧縮機本体57、および圧縮機筐体58を備える。高圧ガス出口50は、圧縮機12の作動ガス吐出ポートとして圧縮機筐体58に設置され、低圧ガス入口51は、圧縮機12の作動ガス吸入ポートとして圧縮機筐体58に設置されている。高圧流路52は、圧縮機本体57の吐出口を高圧ガス出口50に接続し、低圧流路53は、低圧ガス入口51を圧縮機本体57の吸入口に接続する。圧縮機筐体58は、高圧流路52、低圧流路53、第1圧力センサ54、第2圧力センサ55、バイパスライン56、および圧縮機本体57を収容する。圧縮機12は、圧縮機ユニットとも称される。
【0033】
圧縮機本体57は、その吸入口から吸入される作動ガスを内部で圧縮して吐出口から吐出するよう構成されている。圧縮機本体57は、例えば、スクロール方式、ロータリ式、または作動ガスを昇圧するそのほかのポンプであってもよい。この実施の形態では、圧縮機本体57は、固定された一定の作動ガス流量を吐出するよう構成されている。あるいは、圧縮機本体57は、吐出する作動ガス流量を可変とするよう構成されていてもよい。圧縮機本体57は、圧縮カプセルと称されることもある。
【0034】
第1圧力センサ54は、高圧流路52を流れる作動ガスの圧力を測定するよう高圧流路52に配置されている。第1圧力センサ54は、測定された圧力を表す第1測定圧信号PHを出力するよう構成されている。第2圧力センサ55は、低圧流路53を流れる作動ガスの圧力を測定するよう低圧流路53に配置されている。第2圧力センサ55は、測定された圧力を表す第2測定圧信号PLを出力するよう構成されている。よって第1圧力センサ54、第2圧力センサ55はそれぞれ、高圧センサ、低圧センサと呼ぶこともできる。また本書では、第1圧力センサ54と第2圧力センサ55のいずれかを指して、または両方を総称して、単に「圧力センサ」と表記することもある。
【0035】
バイパスライン56は、膨張機14を迂回して高圧流路52から低圧流路53に作動ガスを還流させるように高圧流路52を低圧流路53に接続する。バイパスライン56には、バイパスライン56を開閉し、またはバイパスライン56を流れる作動ガスの流量を制御するためのリリーフバルブ60が設けられている。リリーフバルブ60は、その出入口間に設定圧以上の差圧が作用するとき開くように構成されている。リリーフバルブ60は、オンオフ弁または流量制御弁であってもよく、例えば電磁弁でもよい。設定圧は、設計者の経験的知見または設計者による実験やシミュレーション等に基づき適宜設定することが可能である。これにより、高圧ライン63と低圧ライン64の差圧がこの設定圧を超えて過大となることを防ぐことができる。また、高圧ライン63の圧力が過大となることを防ぐことができる。
【0036】
リリーフバルブ60は、いわゆる安全弁として作動するように構成されていてもよく、すなわち、出入口間に設定圧以上の差圧が作用するとき機械的に開放されてもよい。あるいは、リリーフバルブ60は、制御装置100による制御によって開閉されてもよい。制御装置100は、測定される高圧ライン63と低圧ライン64の差圧を設定圧と比較し、測定差圧が設定圧以上の場合にリリーフバルブ60を開き、測定差圧が設定差圧未満の場合にリリーフバルブ60を閉じるようにリリーフバルブ60を制御してもよい。制御装置100は、高圧ライン63と低圧ライン64の測定差圧を、第1圧力センサ54からの第1測定圧信号PHと第2圧力センサ55からの第2測定圧信号PLに基づいて取得してもよい。別の例として、制御装置100は、第1測定圧信号PHに基づいて高圧ライン63の測定圧力を上限圧と比較し、測定圧力が上限圧以上の場合にリリーフバルブ60を開き、測定圧力が上限圧未満の場合にリリーフバルブ60を閉じるようにリリーフバルブ60を制御してもよい。
【0037】
なお、圧縮機12は、そのほか種々の構成要素を有しうる。例えば、高圧流路52には、オイルセパレータ、アドソーバなどが設けられていてもよい。低圧流路53には、ストレージタンクそのほかの構成要素が設けられていてもよい。また、圧縮機12には、圧縮機本体57をオイルで冷却するオイル循環系や、オイルを冷却する冷却系などが設けられていてもよい。
【0038】
また、極低温冷凍機10は、圧縮機12と膨張機14の間で作動ガスを循環させるガスライン62を備える。ガスライン62は、圧縮機12から膨張機14に作動ガスを供給するように圧縮機12を膨張機14に接続する高圧ライン63と、膨張機14から圧縮機12に作動ガスを回収するように圧縮機12を膨張機14に接続する低圧ライン64とを備える。膨張機14の冷凍機ハウジング20には高圧ガス入口22と低圧ガス出口24が設けられている。高圧ガス入口22は、高圧配管65によって高圧ガス出口50に接続され、低圧ガス出口24は、低圧配管66によって低圧ガス入口51に接続されている。高圧ライン63は、高圧配管65と高圧流路52からなり、低圧ライン64は、低圧配管66と低圧流路53からなる。バイパスライン56は、ガスライン62の一部であるとみなされてもよい。バイパスライン56は、膨張機14を迂回して高圧ライン63から低圧ライン64に作動ガスを還流させるように高圧ライン63を低圧ライン64に接続する。
【0039】
したがって、膨張機14から圧縮機12に回収される作動ガスは、膨張機14の低圧ガス出口24から低圧配管66を通じて圧縮機12の低圧ガス入口51に入り、さらに低圧流路53を経て圧縮機本体57に戻り、圧縮機本体57によって圧縮され昇圧される。圧縮機12から膨張機14に供給される作動ガスは、圧縮機本体57から高圧流路52を通じて圧縮機12の高圧ガス出口50から出て、さらに高圧配管65と膨張機14の高圧ガス入口22を経て膨張機14に供給される。
【0040】
さらに、極低温冷凍機10は、バッファ容積70と、供給バルブ72と、回収バルブ74とを備える。バッファ容積70は、作動ガスを貯留する容積であり、例えばバッファタンクであってもよい。供給バルブ72は、バッファ容積70を低圧ライン64に接続し、回収バルブ74は、バッファ容積70を高圧ライン63に接続する。供給バルブ72と回収バルブ74は、オンオフ弁または流量制御弁であってもよく、例えば電磁弁でもよい。
【0041】
バッファ容積70の圧力は、極低温冷凍機10が運転停止しているときには、極低温冷凍機10への作動ガスの封入圧となる。極低温冷凍機10が運転しているときには(例えば、初期冷却や定常運転の間)、バッファ容積70の圧力は、高圧ライン63の圧力と低圧ライン64の圧力の中間の圧力(例えば、高圧と低圧の平均圧)となる。
【0042】
したがって、極低温冷凍機10の運転中、供給バルブ72が開くと、バッファ容積70から供給バルブ72を通じて低圧ライン64へと作動ガスが供給される。供給バルブ72が閉じると、バッファ容積70から低圧ライン64への作動ガスの供給は停止される。また、回収バルブ74が開くと、高圧ライン63から回収バルブ74を通じてバッファ容積70に作動ガスが回収される。回収バルブ74が閉じると、高圧ライン63からバッファ容積70への作動ガスの回収は停止される。このようにして、供給バルブ72と回収バルブ74を開閉することにより、ガスライン62を循環する作動ガスの量を調整することができ、その結果として、高圧ライン63と低圧ライン64それぞれの圧力も制御されうる。
【0043】
図1に示されるように、極低温冷凍機10を制御する制御装置100は、供給バルブ72および回収バルブ74を制御するコントローラ110を備える。コントローラ110は、第1測定圧信号PHおよび第2測定圧信号PLを取得するよう第1圧力センサ54および第2圧力センサ55と電気的に接続されている。後述のように、コントローラ110は、第1圧力センサ54から第1測定圧信号PHを受け、第1測定圧信号PHが示す高圧ライン63の測定圧力に基づいて供給バルブ72および回収バルブ74を開閉するように構成されている。また、コントローラ110は、温度センサ46からの測定温度信号を取得するよう温度センサ46と電気的に接続されている。
【0044】
図示される例では、制御装置100は、圧縮機12および膨張機14とは別に設けられこれらと接続されているが、その限りでない。制御装置100は、圧縮機12に搭載されてもよい。制御装置100は、膨張機モータ42に搭載される等、膨張機14に設けられてもよい。コントローラ110は、供給バルブ72に、または回収バルブ74に、または供給バルブ72と回収バルブ74それぞれに設けられてもよい。
【0045】
制御装置100は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図1では適宜、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0046】
極低温冷凍機10は、圧縮機12および膨張機モータ42が運転されるとき、第1膨張室32および第2膨張室34において周期的な容積変動とこれに同期した作動ガスの圧力変動を発生させる。典型的には、吸気工程においては、低圧バルブ40bが閉じ高圧バルブ40aが開くことによって、高圧の作動ガスが圧縮機12から高圧バルブ40aを通じて室温室30に流入し、第1蓄冷器26を通じて第1膨張室32に供給され、第2蓄冷器28を通じて第2膨張室34に供給される。こうして、第1膨張室32、第2膨張室34は低圧から高圧へと昇圧される。このとき、ディスプレーサ組立体18が下死点から上死点へと上動され第1膨張室32と第2膨張室34の容積が増加される。高圧バルブ40aが閉じると吸気工程は終了する。
【0047】
排気工程においては、高圧バルブ40aが閉じ低圧バルブ40bが開くことによって、高圧の第1膨張室32、第2膨張室34が圧縮機12の低圧の作動ガス吸入口に開放されるので、作動ガスが第1膨張室32、第2膨張室34で膨張し、その結果低圧となった作動ガスが第1膨張室32、第2膨張室34から第1蓄冷器26、第2蓄冷器28を通じて室温室30へと排出される。このとき、ディスプレーサ組立体18が上死点から下死点へと下動され第1膨張室32と第2膨張室34の容積が減少される。作動ガスは膨張機14から低圧バルブ40bを通じて圧縮機12に回収される。低圧バルブ40bが閉じると排気工程は終了する。
【0048】
このようにして、たとえばGMサイクルなどの冷凍サイクルが構成され、第1冷却ステージ33および第2冷却ステージ35が所望の極低温に冷却される。第1冷却ステージ33は、例えば約20K~約40Kの範囲にある第1冷却温度に冷却されることができる。第2冷却ステージ35は、第1冷却温度より低い第2冷却温度(例えば、約1K~約4K)に冷却されることができる。
【0049】
極低温冷凍機10は、初期冷却と、初期冷却に後続する定常運転とを実行可能である。初期冷却は、極低温冷凍機10の起動時に、初期温度から極低温に急速に冷却する膨張機14の運転モードであり、定常運転は、初期冷却によって極低温に冷却された状態を維持する膨張機14の運転モードである。初期温度は、周囲温度(例えば室温)であってもよい。また、初期冷却は、極低温冷凍機10が搭載された極低温装置(例えばMRI(Magnetic Resonance Imaging)システムなどの超伝導機器)のメンテナンス後に再稼働するときにも行われうる。メンテナンスの間、極低温装置内の被冷却物は周囲温度まで昇温されずに比較的低い温度(例えば20~80K)に保たれている場合がある。この場合、初期温度は、そうした低温であってもよい。
【0050】
膨張機14は、初期冷却によって標準冷却温度に冷却され、定常運転ではこの標準冷却温度を含む極低温の許容温度範囲内に維持される。標準冷却温度は、極低温冷凍機10の用途と設定に応じて異なるが、例えば超伝導装置の冷却用途では典型的に、約4.2K以下である。ある他の冷却用途では、標準冷却温度は、例えば約10K~20K、または10K以下であってもよい。初期冷却は、上述のように、クールダウンと呼ぶこともできる。
【0051】
ところで、初期冷却の際、初期温度から極低温への降温につれて、膨張機14内で作動ガスの密度が増加する。これに伴い、膨張機14内に溜まる作動ガスの量が増え、いわば、作動ガスがガスライン62から膨張機14に吸収されていく。その結果、膨張機14の冷却が進むとともに、ガスライン62を循環する作動ガスの圧力が徐々に低下する。作動ガスの圧力低下は極低温冷凍機10の冷凍能力の低下をもたらすから、初期冷却にかかる時間を長くする要因となることが懸念される。初期冷却は極低温冷凍機によって対象物の冷却を始めるため準備にすぎないから、その所要時間はなるべく短いことが望まれる。
【0052】
このような問題に対処するために、この実施の形態では、コントローラ110は、初期冷却の最中に、第1圧力センサ54によって測定された高圧ライン63の圧力に基づいて、高圧ライン63の圧力を予め設定した適正圧力範囲に保つように供給バルブ72を制御する。より具体的には、コントローラ110は、初期冷却の最中に、測定された高圧ライン63の圧力を適正圧力範囲の下限値Pcと比較し、高圧ライン63の圧力が下限値Pcを下回らないように供給バルブ72の開閉を繰り返すように供給バルブ72を動作させてもよい。
【0053】
また、この実施の形態では、コントローラ110は、初期冷却の最中に、第1圧力センサ54によって測定された高圧ライン63の圧力に基づいて、高圧ライン63の圧力を適正圧力範囲に保つように回収バルブ74を制御する。より具体的には、コントローラ110は、初期冷却の最中に、測定された高圧ライン63の圧力を適正圧力範囲の上限値Pdと比較し、高圧ライン63の圧力が上限値Pdを超えないように回収バルブ74の開閉を繰り返すように回収バルブ74を動作させてもよい。
【0054】
図3は、第1の実施の形態に係る極低温冷凍機10の制御方法を説明するフローチャートである。本方法は、極低温冷凍機10の初期冷却においてコントローラ110によって所定の周期で繰り返し実行される。なお本方法は、初期冷却の最中だけでなく、極低温冷凍機10の定常運転においても継続して実行されてもよい。
【0055】
まず、高圧ライン63の圧力が測定される(S10)。第1圧力センサ54は、高圧ライン63の圧力を測定し、測定された高圧ライン63の圧力を表す第1測定圧信号PHを出力する。コントローラ110は、第1測定圧信号PHを受け、高圧ライン63の測定圧力を取得する。
【0056】
次に、測定された高圧ライン63の圧力が、適正圧力範囲と比較される(S12)。適正圧力範囲の下限値Pcは、極低温冷凍機10が十分な冷凍能力を提供するように設定される。適正圧力範囲の上限値Pdは、高圧ライン63に過剰な圧力を発生させないように設定される。適正圧力範囲の上限値Pdは、リリーフバルブ60が開く上述の設定圧よりも小さい圧力値に設定されてもよい。適正圧力範囲は、設計者の経験的知見または設計者による実験やシミュレーション等に基づき適宜設定することが可能である。適正圧力範囲は、極低温冷凍機10の初期設定としてコントローラ110に予め保存されていてもよく、または極低温冷凍機10の運転前にユーザーによってコントローラ110に設定されてもよい。
【0057】
一例として、適正圧力範囲の上限値Pdと下限値Pcは、例えば、2MPaから3MPaの範囲、または2.1MPaから2.7MPaの範囲から選択されてもよい。適正圧力範囲の幅、つまり適正圧力範囲の上限値Pdと下限値Pcの差は、例えば、0.5MPa以内、または0.3MPa以内、または0.1MPa以内のある値に設定されてもよい。例えば、適正圧力範囲は、2.45±0.05MPaと設定されてもよく、この場合適正圧力範囲の幅が0.1MPa、上限値Pdが2.5MPa、下限値Pcが2.4MPaとなる。
【0058】
コントローラ110は、高圧ライン63の測定圧力を適正圧力範囲の下限値Pcと比較し、高圧ライン63の測定圧力が下限値Pcを下回る場合に(PH<Pc)、供給バルブ72を開く(S14)。これにより、バッファ容積70から供給バルブ72を通じて低圧ライン64へと作動ガスが供給される。ガスライン62を循環する作動ガスの量が増えるので、高圧ライン63の圧力が回復される。
【0059】
コントローラ110は、高圧ライン63の測定圧力が適正圧力範囲に回復したとき、供給バルブ72を閉じる(S16)。例えば、コントローラ110は、高圧ライン63の測定圧力を適正圧力範囲の下限値Pcと比較し、高圧ライン63の測定圧力が下限値Pcを上回る場合に(PH>Pc、またはPH≧Pc)、供給バルブ72を閉じてもよい。供給バルブ72が閉じると、バッファ容積70から低圧ライン64への作動ガスの供給は停止される。こうして、本方法は終了し、次回の制御周期で再び実行される。
【0060】
なお、供給バルブ72を閉じる圧力しきい値は、適正圧力範囲の下限値Pcと異なってもよく、例えば、下限値Pcより大きくてもよい。この圧力しきい値は、適正圧力範囲の上限値Pdを超えないように設定されてもよい。例えば、圧力しきい値は、適正圧力範囲の幅(上限値Pd-下限値Pc)の所定割合を下限値Pcに加えた値でもよい。所定割合は例えば50%以下、30%以下、または10%以下の割合であってもよい。
【0061】
図4は、第1の実施の形態に係る極低温冷凍機10の制御方法を説明するフローチャートである。本方法は、極低温冷凍機10の初期冷却においてコントローラ110によって所定の周期で繰り返し実行される。本方法は、図3に示される方法と並行して実行されてもよい。なお本方法は、初期冷却の最中だけでなく、極低温冷凍機10の定常運転においても継続して実行されてもよい。
【0062】
まず、高圧ライン63の圧力が第1圧力センサ54を使用して測定される(S20)。コントローラ110は、第1圧力センサ54から第1測定圧信号PHを受け、高圧ライン63の測定圧力を取得する。
【0063】
次に、測定された高圧ライン63の圧力が、適正圧力範囲と比較される(S22)。コントローラ110は、高圧ライン63の測定圧力を適正圧力範囲の上限値Pdと比較し、高圧ライン63の測定圧力が上限値Pdを上回る場合に(PH>Pd)、回収バルブ74を開く(S24)。これにより、高圧ライン63から回収バルブ74を通じてバッファ容積70に作動ガスが回収され、高圧ライン63の圧力が低下する。
【0064】
コントローラ110は、高圧ライン63の測定圧力が適正圧力範囲に回復したとき、回収バルブ74を閉じる(S26)。例えば、コントローラ110は、高圧ライン63の測定圧力を適正圧力範囲の上限値Pdと比較し、高圧ライン63の測定圧力が上限値Pdを下回る場合に(PH<Pd、またはPH≦Pd)、回収バルブ74を閉じてもよい。回収バルブ74が閉じると、高圧ライン63からバッファ容積70への作動ガスの回収は停止される。こうして、本方法は終了し、次回の制御周期で再び実行される。
【0065】
なお、回収バルブ74を閉じる圧力しきい値は、適正圧力範囲の上限値Pdと異なってもよく、例えば、上限値Pdより小さくてもよい。この圧力しきい値は、適正圧力範囲から選択され、すなわち適正圧力範囲の下限値Pcより大きくてもよい。
【0066】
適正圧力範囲は、極低温冷凍機10の運転中に変更されてもよい。例えば、初期冷却での適正圧力範囲は、定常運転での適正圧力範囲と異なってもよく、例えば、定常運転での適正圧力範囲より高くてもよい。例えば、初期冷却での下限値Pcが定常運転での下限値Pcより高く、及び/または、初期冷却での上限値Pdが定常運転での上限値Pdより高くてもよい。
【0067】
この場合、初期冷却から定常運転への切替、および適正圧力範囲の変更は、制御装置100によって制御されてもよい。例えば、制御装置100は、温度センサ46からの測定温度信号に基づいて、第2冷却ステージ35(及び/または第1冷却ステージ33)の測定温度を上述の標準冷却温度と比較し、測定温度が標準冷却温度より高い場合には初期冷却を実行し、測定温度が標準冷却温度以下の場合には初期冷却から定常運転に移行してもよい。初期冷却から定常運転への移行に伴って、コントローラ110が適正圧力範囲を変更してもよい。
【0068】
また、図7および図8を参照して後述するように、初期冷却から定常運転への切替、および適正圧力範囲の変更は、バッファ容積70の圧力に基づいて、または高圧ライン63と低圧ライン64の差圧に基づいて、行われてもよい。このようにすれば、制御装置100は、温度センサ46に依存せずに、極低温冷凍機10の初期冷却を完了することができる。
【0069】
ここで、バッファ容積70からの作動ガス供給を確実にするために、バッファ容積70に望まれる条件を考える。理想気体の状態方程式から、極低温冷凍機10の運転停止中(つまり初期冷却前)には、
PI(VH+VL+VB)=nRT (1)
が成り立つ。ここで、PI(MPa)は、温度T(K)での極低温冷凍機10の作動ガス封入圧、VH(L)は高圧ライン63の容積、VL(L)は低圧ライン64の容積、VB(L)はバッファ容積70の容積、n(mol)は極低温冷凍機10内の作動ガス量、Rは気体定数を表す。
【0070】
同様にして、極低温冷凍機10の定常運転中には、
PHVH+PLVL+PBVB=nRT (2)
が成り立つ。ここで、PH(MPa)は温度Tでの定常運転における高圧ライン63の圧力、PL(MPa)は温度Tでの定常運転での低圧ライン64の圧力、PB(MPa)は温度Tでの定常運転でのバッファ容積70の圧力を表す。
【0071】
式(1)および(2)から、
PI(VH+VL+VB)=PHVH+PLVL+PBVB (3)
となる。
【0072】
極低温冷凍機10の運転中の任意のタイミングでバッファ容積70から低圧ライン64に作動ガスを供給するには、極低温冷凍機10の初期温度から極低温までの温度範囲における任意の温度Tについて、
PL≦PB (4)
を満たすべきである。
【0073】
式(3)をPBについて解き、式(4)に代入すると、以下の関係が得られる。
VB≧VH(PH-PI)/(PI-PL)-VL (5)
【0074】
したがって、バッファ容積70から低圧ライン64への作動ガス供給を確実にするには、初期温度から極低温までの温度範囲における任意の温度について、バッファ容積70が式(5)を満たすことが好ましい。
【0075】
同様にして、バッファ容積70へのガス回収を確実にするために、バッファ容積70に望まれる条件を考える。この場合、極低温冷凍機10の運転中の任意のタイミングでバッファ容積70から高圧ライン63に作動ガスを供給するには、極低温冷凍機10の初期温度から極低温までの温度範囲における任意の温度Tについて、
PB≦PH (6)
を満たすべきである。
【0076】
式(3)をPBについて解き、式(6)に代入すると、以下の関係が得られる。
VB≧-VH+VL(PI-PL)/(PH-PI) (7)
【0077】
したがって、高圧ライン63からバッファ容積70への作動ガス回収を確実にするには、初期温度から極低温までの温度範囲における任意の温度について、バッファ容積70が式(7)を満たすことが好ましい。
【0078】
図5は、第1の実施の形態に係り、極低温冷凍機10の運転中の温度と圧力の時間変化の一例を示すグラフである。図示される圧力変化は、実験により取得したものであり、図5の上部には、第1圧力センサ54によって測定された高圧ライン63の圧力PHと第2圧力センサ55によって測定された低圧ライン64の圧力PLが示される。図5の下部には、第1冷却ステージ33の温度T1と第2冷却ステージ35の温度T2が示される。横軸は時間を示す。
【0079】
極低温冷凍機10の起動前(時刻0)では、高圧ライン63の圧力PHと低圧ライン64の圧力PLはともに封入圧PIであり、第1冷却ステージ33の温度T1と第2冷却ステージ35の温度T2はともに室温(約300K)である。極低温冷凍機10が起動され、初期冷却が開始されると、圧縮機12と膨張機14が作動し、高圧ライン63の圧力PHは封入圧PIから増加し、低圧ライン64の圧力PLは封入圧PIから低下する。初期冷却により第1冷却ステージ33の温度T1と第2冷却ステージ35の温度T2は低下していく。第1冷却ステージ33と第2冷却ステージ35がそれぞれ上述の標準冷却温度まで冷却されると(例えば、T1≦30K、T2≦4K)、初期冷却は完了し、定常運転に移行する。
【0080】
図6(A)は、図5に示されるA部を拡大して模式的に示し、図6(B)は、図5に示されるB部を拡大して模式的に示す。図6(A)には、初期冷却の開始直後の高圧ライン63の圧力PHが回収バルブ74の開閉状態とともに示され、図6(B)には、A部より後の高圧ライン63の圧力PHが供給バルブ72の開閉状態とともに示される。
【0081】
図6(A)に示されるように、高圧ライン63の圧力PHが適正圧力範囲の上限値Pdを超えると、回収バルブ74が開く。高圧ライン63から回収バルブ74を通じてバッファ容積70に作動ガスが回収されるので、高圧ライン63の圧力PHは低下する。高圧ライン63の圧力PHが上限圧Pdを下回ると、回収バルブ74は閉じる。このようにして、高圧ライン63の過剰な昇圧を避けることができる。過剰な昇圧による圧縮機12の緊急停止のリスクは低減される。また、作動ガスの回収によりバッファ容積70が昇圧されるので、バッファ容積70から低圧ライン64への作動ガス供給に有効利用できる。
【0082】
図6(B)に示されるように、高圧ライン63の圧力PHが適正圧力範囲の下限値Pcを下回ると、供給バルブ72が開く。バッファ容積70から供給バルブ72を通じて低圧ライン64へと作動ガスが供給される。ガスライン62を循環する作動ガスの量が増えるので、高圧ライン63の圧力が回復される。こうして高圧ライン63の圧力PHが下限値Pcを超えると、供給バルブ72は閉じる。
【0083】
上述のように、初期冷却中の膨張機14の温度低下により膨張機14内で作動ガスの密度が増加し、これは高圧ライン63の圧力PHを低下させる効果をもたらす。そのため、高圧ライン63の圧力PHは一度回復しても、下限値Pcを再び下回る。再び供給バルブ72が開き、高圧ライン63の圧力が回復され、供給バルブ72は閉じる。このようにして、供給バルブ72は、高圧ライン63の圧力PHを適正圧力範囲に維持するように開閉を繰り返すように動作する。
【0084】
仮に、初期冷却の最中に作動ガスがガスライン62に供給されなかったとしたら、膨張機14の温度低下により高圧ライン63の圧力PHは顕著に低下しうる。極低温冷凍機10の冷凍能力は高圧ライン63の圧力PHに相関するから、初期冷却が進むにつれて極低温冷凍機10の冷凍能力が低下しうる。これは、初期冷却にかかる時間を長くする要因となりうる。
【0085】
これに対して、実施の形態によると、初期冷却の最中に供給バルブ72を制御することにより高圧ライン63の圧力PHを適正圧力範囲に維持することができる。よって、極低温冷凍機10の冷凍能力を適正に保持することができ、初期冷却時間の増加を抑えることができる。また、高圧ライン63の圧力PHをおおむね一定に保つことにより、極低温冷凍機10は、安定した冷凍能力を提供することができる。
【0086】
高圧ライン63の圧力PHを適正圧力範囲に維持するために、低圧ライン64の圧力に基づいて供給バルブ72と回収バルブ74を制御する方法も考えられる。低圧ライン64の圧力は、膨張機14の冷却温度の影響を受ける(冷却温度によって変動する)。そのため、低圧ライン64の適正圧力範囲、すなわち供給バルブ72と回収バルブ74を開閉するための低圧ライン64の圧力しきい値は、冷却温度に応じて異なる値に定めることが実用上必須となり、制御の設計が煩雑となる。また、低圧ライン64が適正圧力範囲にあったとしても、冷却温度によっては、高圧ライン63の圧力が過剰に高くなるケースもありうる。したがって、実施の形態のように高圧ライン63の圧力に基づく方法は、このような不都合が緩和または防止される点で有利である。
【0087】
図7は、第1の実施の形態に係り、極低温冷凍機10の運転中の温度と圧力の変化の一例を示すグラフである。図8は、第1の実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。
【0088】
上述の実施の形態と同様に、極低温冷凍機10は、圧縮機12、膨張機14、バッファ容積70、および制御装置100を備える。コントローラ110は、初期冷却の最中に、第1圧力センサ54によって測定された高圧ライン63の圧力に基づいて、高圧ライン63の圧力を予め設定した適正圧力範囲に保つように供給バルブ72を制御する。また、コントローラ110は、初期冷却の最中に、第1圧力センサ54によって測定された高圧ライン63の圧力に基づいて、高圧ライン63の圧力を適正圧力範囲に保つように回収バルブ74を制御する。
【0089】
極低温冷凍機10は、バッファ容積70の圧力を測定するようバッファ容積70に接続されたバッファ圧センサ76を備える。バッファ圧センサ76は、制御装置100と電気的に接続され、測定された圧力を表す測定バッファ圧信号PBを制御装置100に出力するよう構成されている。
【0090】
図7の上部には、図5に示される高圧ライン63の圧力PHおよび低圧ライン64の圧力PLに加えて、バッファ圧センサ76によって測定されたバッファ容積70の圧力PBが示される。図7の下部には、第1冷却ステージ33の温度T1と第2冷却ステージ35の温度T2が示される。図7から理解されるように、初期冷却の完了により極低温冷凍機10が充分に冷却され第1冷却ステージ33と第2冷却ステージ35の温度が安定すれば、高圧ライン63の圧力PHおよび低圧ライン64の圧力PLも安定する。このとき、供給バルブ72と回収バルブ74はともに閉鎖され、バッファ容積70はガスライン62から切り離される。そのため、バッファ容積70の圧力PBも一定となる(図7に示される最終バッファ圧PF)。
【0091】
したがって、バッファ容積70の圧力PBの安定化を検出することによって、初期冷却の完了を判定することができる。極低温冷凍機10の作動ガス封入圧PIと運転条件(例えば、高圧PH、低圧PL、温度T1、T2など)が既知であれば、初期冷却完了時の最終的なバッファ容積70の圧力を予測できる。この場合、コントローラ110は、最終バッファ圧の予測値と測定されるバッファ容積70の圧力PBを比較し、比較結果に基づいてバッファ容積70の測定圧力PBが最終バッファ圧の予測値に等しいか否かを判定してもよい。コントローラ110は、バッファ容積70の測定圧力PBが最終バッファ圧の予測値に等しい状態が所定時間(例えば数分)にわたり継続する場合に、初期冷却を完了してもよい。
【0092】
あるいは、コントローラ110は、初期冷却の最中にバッファ容積70の測定圧力PBと参照圧力の差を算出し、算出された圧力差の安定化を検出することによって、初期冷却の完了を判定してもよい。参照圧力は、以前に測定されたバッファ容積70の圧力であってもよく、例えば、初期冷却の最中に測定されたバッファ容積70の圧力の最大値PMであってもよい。バッファ容積70の圧力は、初期冷却の開始直後に封入圧PIから増加して最大値PMをとることが図7から理解される。
【0093】
コントローラ110は、算出された圧力差(すなわちバッファ容積70の測定圧力PBと参照圧力の差)と圧力差目標値を比較し、比較結果に基づいて、算出された圧力差が圧力差目標値に等しいか否かを判定してもよい。コントローラ110は、算出された圧力差が圧力差目標値に等しい状態が所定時間にわたり継続する場合に、初期冷却を完了してもよい。所定時間は、例えば1分以上10分以下の範囲から選択されてもよい。算出された圧力差と圧力差目標値との差が所定値(例えば0.05MPa)以内である場合、算出された圧力差が圧力差目標値に等しいとみなすことができる。この圧力差目標値は封入圧PIに依存しないので、封入圧PIが未知であっても初期冷却の完了を判定することができる。
【0094】
参照圧力の他の一例として、バッファ容積70の測定圧力PBと同じタイミングで測定された高圧ライン63の圧力PH(または低圧ライン64の圧力PL)が使用されてもよい。コントローラ110は、バッファ容積70の測定圧力PBと高圧ライン63の測定圧力PH(または低圧ライン64の測定圧力PL)の差を算出し、算出された圧力差の安定化を検出することによって、初期冷却の完了を判定してもよい。コントローラ110は、上述の例と同様に、算出された圧力差と圧力差目標値を比較し、算出された圧力差が圧力差目標値に所定時間にわたり等しい場合に、初期冷却を完了してもよい。
【0095】
更なる代替例として、コントローラ110は、高圧ライン63の測定圧力PHと低圧ライン64の測定圧力PLの差を算出し、算出された圧力差の安定化を検出することによって、初期冷却の完了を判定してもよい。
【0096】
上述の実施の形態では、初期冷却の最中に、測定された高圧ライン63の圧力に基づいて供給バルブ72が制御され(これを以下、高圧優先制御ともいう)、高圧ライン63の圧力が適正圧力範囲に保たれる。このとき、低圧ライン64の圧力は管理されていないため、場合によっては、低圧ライン64の圧力が低くなりすぎるといった望ましくない現象が発生する可能性がある。
【0097】
このような問題に対処するために、コントローラ110は、第2圧力センサ55によって測定された低圧ライン64の圧力が予め設定した低圧しきい値を下回るとき、高圧ライン63の圧力に基づく供給バルブ72の制御(すなわち高圧優先制御)を中断するように構成されてもよい。コントローラ110は、第2圧力センサ55によって測定された低圧ライン64の圧力に基づいて、低圧ライン64の圧力を低圧しきい値に回復させるように供給バルブ72を制御するように構成されてもよい。低圧ライン64の圧力に基づく供給バルブ72の制御を以下では、低圧優先制御ともいう。このような高圧優先制御から低圧優先制御への切替処理の一例を、図9を参照して後述する。
【0098】
図9は、第1の実施の形態に係る極低温冷凍機10の制御方法を説明するフローチャートである。本方法は、極低温冷凍機10の初期冷却においてコントローラ110によって所定の周期で繰り返し実行される。なお本方法は、初期冷却の最中だけでなく、極低温冷凍機10の定常運転においても継続して実行されてもよい。
【0099】
まず、低圧ライン64の圧力が測定される(S30)。第2圧力センサ55は、低圧ライン64の圧力を測定し、測定された低圧ライン64の圧力を表す第2測定圧信号PLを出力する。コントローラ110は、第2測定圧信号PLを受け、低圧ライン64の測定圧力を取得する。
【0100】
次に、測定された低圧ライン64の圧力PLが、低圧しきい値Peと比較される(S32)。低圧しきい値Peは、例えば、圧縮機12の安定した運転を保証する観点から、低圧ライン64の圧力の下限値として定められてもよい。例えば、低圧しきい値Peは、0.2MPaから0.4MPaの範囲から選択されてもよい。低圧しきい値Peは、設計者の経験的知見または設計者による実験やシミュレーション等に基づき適宜設定することが可能である。低圧しきい値Peは、極低温冷凍機10の初期設定としてコントローラ110に予め保存されていてもよく、または極低温冷凍機10の運転前にユーザーによってコントローラ110に設定されてもよい。
【0101】
コントローラ110は、低圧ライン64の測定圧力を低圧しきい値Peと比較し、低圧ライン64の測定圧力がこの低圧しきい値Peを上回る場合(PL>Pe、またはPL≧Pe)、高圧優先制御を選択する(S34)。この場合、図3を参照して説明したように、コントローラ110は、測定された高圧ライン63の圧力を適正圧力範囲の下限値Pcと比較し、高圧ライン63の圧力が下限値Pcを下回らないように供給バルブ72の開閉を繰り返すように供給バルブ72を動作させる。このようにして、高圧優先制御が継続して実行される。
【0102】
一方、低圧ライン64の測定圧力が低圧しきい値Peを下回る場合(PL<Pe)、コントローラ110は、低圧優先制御を選択する(S36)。高圧優先制御は中断され、低圧優先制御が開始されることになる。低圧優先制御の一例は、図10を参照して後述する。このようにして、高圧優先制御から低圧優先制御への切替処理は終了する。
【0103】
低圧優先制御ではまず、図10に示されるように、低圧ライン64の圧力が測定される(S40)。次に、測定された低圧ライン64の圧力が低圧しきい値Peと比較される(S42)。低圧ライン64の測定圧力が低圧しきい値Peを下回る場合(PL<Pe)、コントローラ110は、供給バルブ72を開く(S44)。これにより、バッファ容積70から供給バルブ72を通じて低圧ライン64へと作動ガスが供給され、低圧ライン64の圧力が回復される。
【0104】
一方、低圧ライン64の測定圧力が低圧しきい値Peを上回る場合(PL>Pe、またはPL≧Pe)、コントローラ110は、供給バルブ72を閉じる(S46)。バッファ容積70から低圧ライン64への作動ガスの供給は停止される。なお、供給バルブ72を閉じる圧力しきい値は、低圧しきい値Peと異なってもよく、例えば、低圧しきい値Peよりいくらか大きくてもよい。こうして、本方法は終了し、次回の制御周期で再び実行される。
【0105】
上述の低圧優先制御によれば、低圧ライン64の圧力に基づいて供給バルブ72が開閉され、低圧ライン64の圧力を低圧しきい値Peに回復させることができる。しかしながら、低圧優先制御では、高圧ライン63の圧力が管理されていない。そのため、低圧優先制御の最中に、今度は、高圧ライン63の圧力が低くなりすぎるといった望ましくない現象が発生する可能性がある。
【0106】
そこで、コントローラ110は、第1圧力センサ54によって測定された高圧ライン63の圧力が高圧しきい値を下回るとき、低圧ライン64の圧力に基づく供給バルブ72の制御を中断するように構成されてもよい。コントローラ110は、第1圧力センサ54によって測定された高圧ライン63の圧力に基づいて、高圧ライン63の圧力を高圧しきい値に回復させるように供給バルブ72を制御するように構成されてもよい。このような低圧優先制御から高圧優先制御への復帰処理の一例を、図11を参照して後述する。
【0107】
図11は、第1の実施の形態に係る極低温冷凍機10の制御方法を説明するフローチャートである。本方法は、上述の低圧優先制御の実行中、コントローラ110によって所定の周期で繰り返し実行される。
【0108】
まず、高圧ライン63の圧力が測定される(S50)。次に、測定された高圧ライン63の圧力が、高圧しきい値Pfと比較される(S52)。高圧しきい値Pfは、例えば、適正圧力範囲の下限値Pcであってもよい。高圧しきい値Pfは、設計者の経験的知見または設計者による実験やシミュレーション等に基づき適宜設定することが可能である。高圧しきい値Pfは、極低温冷凍機10の初期設定としてコントローラ110に予め保存されていてもよく、または極低温冷凍機10の運転前にユーザーによってコントローラ110に設定されてもよい。
【0109】
コントローラ110は、高圧ライン63の測定圧力を高圧しきい値Pfと比較し、高圧ライン63の測定圧力がこの高圧しきい値Pfを上回る場合(PH>Pf、またはPH≧Pf)、低圧優先制御を選択する(S54)。この場合、低圧優先制御が継続して実行される。
【0110】
一方、高圧ライン63の測定圧力が高圧しきい値Pfを下回る場合(PH<Pf)、コントローラ110は、高圧優先制御を選択する(S56)。このようにして、低圧優先制御から高圧優先制御への切替処理は終了する。高圧優先制御に再び切り替わることにより、測定された高圧ライン63の圧力に基づいて供給バルブ72が制御され、高圧ライン63の圧力が適正圧力範囲に保たれることになる。
【0111】
ところで、極低温冷凍機10の運転差圧(高圧ライン63と低圧ライン64の圧力差)を拡大し、それにより極低温冷凍機10の冷凍能力を増加させることによって、初期冷却の所要時間を短くすることも可能である。しかしながら、上述の実施の形態では、高圧ライン63と低圧ライン64をバイパスするリリーフバルブ60がその障害となりうる。リリーフバルブ60がその出入口間に設定圧以上の差圧が作用するとき機械的に開かれるタイプのものである場合、極低温冷凍機10の運転差圧は、この設定圧に制限されうる。高圧ライン63と低圧ライン64の圧力差がリリーフバルブ60の設定圧を超えると、リリーフバルブ60が機械的に開き、リリーフバルブ60を通じて高圧ライン63から低圧ライン64に作動ガスが流出し、その結果、極低温冷凍機10の運転差圧の増加が妨げられうるからである。
【0112】
これに対処するために、以下に説明するように、追加の圧縮機が初期冷却のために極低温冷凍機10に一時的に設置されてもよい。説明の便宜上、以下では、極低温冷凍機10のメインの圧縮機12を第1圧縮機12と呼び、追加されるサブの圧縮機を第2圧縮機80と呼ぶことにする。
【0113】
図12および図13は、第2の実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。図12には、初期冷却における極低温冷凍機10のセッティングが示され、図13には、初期冷却前、または初期冷却後の定常運転における極低温冷凍機10の基本のセッティングが示される。図14は、第2の実施の形態に係る極低温冷凍機10の運転方法を説明するフローチャートである。
【0114】
第2の実施の形態に係る極低温冷凍機10およびその運転方法は、第2圧縮機80を除いて、第1の実施の形態に係る極低温冷凍機10およびその運転方法と同様でありうる。そこで、図12および図13では、第1の実施の形態と共通する構成に同じ参照符号を付し、その詳細な説明は冗長を避けるため適宜省略する。
【0115】
極低温冷凍機10は、初期冷却が行われる前、図13に示されるように、第1圧縮機12および膨張機14を有する基本セッティングをとる。第1圧縮機12と膨張機14は、高圧ライン63および低圧ライン64により接続されている。第2圧縮機80とバッファ容積70は、極低温冷凍機10に接続されていない。
【0116】
第2の実施の形態に係る極低温冷凍機10の運転方法では、図14に示されるように、初期冷却の前処理として、第2圧縮機80とバッファ容積70が極低温冷凍機10に接続される(S60、S61)。第2圧縮機80とバッファ容積70の取付順序は問わない。
【0117】
第2圧縮機80は、高圧ライン63上で第1圧縮機12と直列に接続される。より具体的には、図12に示されるように、第1圧縮機12の高圧ガス出口50が第2圧縮機80の吸入口に接続され、第2圧縮機80の吐出口が膨張機14の高圧ガス入口22に接続される。したがって、極低温冷凍機10は、第1圧縮機12と第2圧縮機80からなる二段式の圧縮機構成を有する。
【0118】
バッファ容積70は、供給バルブ72を介して低圧ライン64に接続されるとともに、回収バルブ74を介して高圧ライン63に接続される。供給バルブ72および回収バルブ74は、バッファ容積70とともに一つの筐体に収められ、バッファ容積ユニットを構成してもよい。バッファ容積ユニットと第2圧縮機80は、極低温冷凍機10が運転される現場に例えばサービスマンによって持ち込まれ、極低温冷凍機10に接続されてもよい。
【0119】
こうして第2圧縮機80とバッファ容積70が極低温冷凍機10に接続されると、極低温冷凍機10は起動され、初期冷却が開始される(S62)。初期冷却は上述のように、極低温冷凍機10の定常運転の準備として、極低温冷凍機10を初期温度から目的の極低温まで冷却する工程である。初期温度は、周囲温度(例えば室温)であってもよいし、あるいは、周囲温度より低く目的の極低温よりも高い温度(例えば、20Kから80Kの範囲から選択される温度)であってもよい。初期冷却によって、膨張機14の第1冷却ステージ33は第1冷却温度に冷却され、第2冷却ステージ35は第2冷却温度に冷却される。
【0120】
初期冷却は、第2圧縮機80とバッファ容積70が極低温冷凍機10に接続された状態で実行される。したがって、初期冷却においては、作動ガスは、第1圧縮機12および第2圧縮機80を使用して膨張機14に供給される。第1圧縮機12は、膨張機14から低圧ライン64を通じて回収される極低温冷凍機10の作動ガスを昇圧し、昇圧された作動ガスを第2圧縮機80に供給する。第2圧縮機80は、第1圧縮機12からの作動ガスをさらに昇圧して、これを再び膨張機14に供給する。
【0121】
また、初期冷却において、バッファ容積70は、第1の実施の形態と同様に、高圧ライン63の圧力を適正圧力範囲に保つために利用される。すなわち、供給バルブ72は、初期冷却の最中に、第1圧力センサ54によって測定された高圧ライン63の圧力に基づいて、高圧ライン63の圧力を適正圧力範囲に保つように制御される。
【0122】
初期冷却が完了すると、第2圧縮機80とバッファ容積70は、極低温冷凍機10から取り外される(S63、S64)。第2圧縮機80とバッファ容積70の取り外しの順序は問わない。極低温冷凍機10は、図14に示される基本セッティングに戻される。そして、極低温冷凍機10の定常運転が行われる(S65)。
【0123】
第2の実施の形態によると、第2圧縮機80を追加することにより、極低温冷凍機10の運転差圧を拡大することができる。とくに、上述した第1圧縮機12のリリーフバルブ60の設定圧に起因する制限を超えて、極低温冷凍機10の運転差圧を拡大することができる。運転差圧の拡大は極低温冷凍機10の冷凍能力の増加をもたらし、初期冷却の所要時間を短縮することができる。
【0124】
極低温冷凍機10の運転差圧を拡大する別の方法として、第1圧縮機12よりも高出力の大型圧縮機を外部から現場に持ち込んで、第1圧縮機12と交換することも考えられる。しかし、このような大型圧縮機は一般に、サイズおよび重量ともに大きいため、持ち運びに不向きである。これに対して、第2圧縮機80は、第1圧縮機12と併用されるので、比較的小型でよく、持ち運び容易である。
【0125】
上述の実施の形態では、二段式の圧縮機構成を作るために、第2圧縮機80が第1圧縮機12の吐出側(出口側)に接続されている。しかしながら、他の構成もありうる。例えば、第2圧縮機80は、原理的には、第1圧縮機12の吸入側(入口側)に接続されてもよい。すなわち、第2圧縮機80は、低圧ライン64上で第1圧縮機12と直列に接続されてもよい。
【0126】
なお、バッファ容積70が取り外されることは必須ではない。第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、図1に示されるように、バッファ容積70が極低温冷凍機10に接続された状態で極低温冷凍機10の定常運転が行われてもよい。あるいは、第1の実施の形態においても、第2の実施の形態と同様に、初期冷却の後、バッファ容積70が極低温冷凍機10から取り外されてもよい。
【0127】
図15は、第3の実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。図16および図17は、第3の実施の形態に係る極低温冷凍機10の運転方法を説明するフローチャートである。
【0128】
第3の実施の形態に係る極低温冷凍機10およびその運転方法は、第2圧縮機80を除いて、第1の実施の形態に係る極低温冷凍機10およびその運転方法と同様でありうる。そこで、図15では、第1の実施の形態と共通する構成に同じ参照符号を付し、その詳細な説明は冗長を避けるため適宜省略する。
【0129】
第3の実施の形態においても第2の実施の形態と同様に、極低温冷凍機10は、初期冷却が行われる前、図13に示されるように、第1圧縮機12および膨張機14を有する基本セッティングをとる。第1圧縮機12と膨張機14は、高圧ライン63および低圧ライン64により接続されている。第2圧縮機80は、極低温冷凍機10に接続されていない。
【0130】
第3の実施の形態に係る極低温冷凍機10の運転方法では、図16に示されるように、初期冷却の前処理として、第2圧縮機80が極低温冷凍機10に接続される(S70)。第2圧縮機80は、高圧ライン63上で第1圧縮機12と直列に接続される。図15に示されるように、第1圧縮機12の高圧ガス出口50が第2圧縮機80の吸入口に接続され、第2圧縮機80の吐出口が膨張機14の高圧ガス入口22に接続される。したがって、極低温冷凍機10は、第1圧縮機12と第2圧縮機80からなる二段式の圧縮機構成を有する。第2圧縮機80は、極低温冷凍機10が運転される現場に例えばサービスマンによって持ち込まれ、極低温冷凍機10に接続されてもよい。
【0131】
第2圧縮機80は、第1圧縮機12と同様に、圧縮機本体57を備える。また、第2圧縮機80は、運転周波数(すなわち回転数)を可変とする圧縮機モータ82を備え、圧縮機本体57は圧縮機モータ82によって駆動される。圧縮機モータ82は、例えば電気モータであり、またはそのほか任意の適切な形式のモータであってもよい。圧縮機モータ82の運転周波数を増加させることにより、圧縮機本体57の吐出流量が増加され、その結果、高圧ライン63の圧力が増加されうる。逆に、圧縮機モータ82の運転周波数を減少させることにより、圧縮機本体57の吐出流量が減少され、その結果、高圧ライン63の圧力が減少されうる。
【0132】
制御装置100は、圧縮機モータ82の運転周波数を制御するインバータ90を備える。圧縮機モータ82およびインバータ90は、商用電源(三相交流電源)などの外部電源92から給電される。インバータ90は、後述のようにコントローラ110による制御のもとで、外部電源92から入力される電力の周波数を調整し、任意の周波数で圧縮機モータ82に出力するように構成される。圧縮機モータ82の運転周波数は、インバータ90の出力周波数に相当し、例えば、30Hzから100Hzの範囲、または40Hzから70Hzの範囲で調整可能である。
【0133】
第2圧縮機80が極低温冷凍機10に接続された状態で、極低温冷凍機10は起動され、初期冷却が行われる(S72)。作動ガスは、第1圧縮機12および第2圧縮機80を使用して膨張機14に供給される。第1圧縮機12は、膨張機14から低圧ライン64を通じて回収される極低温冷凍機10の作動ガスを昇圧し、昇圧された作動ガスを第2圧縮機80に供給する。第2圧縮機80は、第1圧縮機12からの作動ガスをさらに昇圧して、これを再び膨張機14に供給する。後述するように、第2圧縮機80の圧縮機モータ82の運転周波数は、測定された高圧ライン63の圧力に基づいて、高圧ライン63の圧力を適正圧力範囲に保つように制御される。
【0134】
初期冷却が完了すると、第2圧縮機80は、極低温冷凍機10から取り外される(S73)。極低温冷凍機10は、図13に示される基本セッティングに戻される。そして、極低温冷凍機10の定常運転が行われる(S75)。
【0135】
図17を参照して、測定された高圧ライン63の圧力に基づく圧縮機モータ82の運転周波数の制御処理の一例を説明する。この処理は、極低温冷凍機10の初期冷却においてコントローラ110によって所定の周期で繰り返し実行される。
【0136】
まず、高圧ライン63の圧力が測定される(S80)。次に、測定された高圧ライン63の圧力が、高圧目標値Pgと比較される(S82)。高圧目標値Pgは、例えば、適正圧力範囲の下限値Pcであってもよい。高圧目標値Pgは、設計者の経験的知見または設計者による実験やシミュレーション等に基づき適宜設定することが可能である。高圧目標値Pgは、極低温冷凍機10の初期設定としてコントローラ110に予め保存されていてもよく、または極低温冷凍機10の運転前にユーザーによってコントローラ110に設定されてもよい。
【0137】
コントローラ110は、高圧ライン63の測定圧力PHを高圧目標値Pgと比較し、比較結果として両者の大小関係を出力する。すなわち、コントローラ110による比較結果は、次の3つの状態、(i)測定圧力PHが高圧目標値Pgより小さい、(ii)測定圧力PHが高圧目標値Pgより大きい、(iii)測定圧力PHが高圧目標値Pgと等しい、のうちいずれかを表す。
【0138】
コントローラ110による比較結果に基づいてインバータ90が制御され、インバータ90の出力周波数に従って圧縮機モータ82の運転周波数が制御される。具体的には、(i)測定圧力PHが高圧目標値Pgより小さい場合には、コントローラ110は、圧縮機モータ82の運転周波数を増加させるようにインバータ90を制御する(S84)。これにより、高圧ライン63の圧力は増加されうる。(ii)測定圧力PHが高圧目標値Pgより大きい場合には、コントローラ110は、圧縮機モータ82の運転周波数を減少させるようにインバータ90を制御する(S18)。これにより、高圧ライン63の圧力は減少されうる。(iii)測定圧力PHが高圧目標値Pgと等しい場合には、圧縮機モータ82の運転周波数を増減させる必要が無いので、コントローラ110は、現在の運転周波数を維持するようにインバータ90を制御する。なお、(iii)の場合を(i)または(ii)のいずれかに含めてもよい。
【0139】
圧縮機モータ82の運転周波数を増加または減少させるとき、コントローラ110は、圧縮機モータ82の現在の運転周波数の値から運転周波数を所定量増加または減少させてもよい。ただし、運転周波数を増加させようとするとき現在の運転周波数の値が既に上限値に達している場合には、コントローラ110は、運転周波数を増加させずに、その上限値に維持してもよい。例えば、圧縮機モータ82の運転周波数のとりうる範囲が30Hz~100Hzであって現在の値が既に上限値の100Hzである場合には、コントローラ110は、運転周波数を100Hzからさらに増加させるのではなく、100Hzを維持する。同様に、運転周波数を減少させようとするとき現在の運転周波数の値が既に下限値に達している場合には、コントローラ110は、運転周波数を減少させずに、その下限値に維持してもよい。
【0140】
あるいは、コントローラ110は、高圧目標値Pgからの測定圧力PHの偏差を最小化するように(例えばPID制御などフィードバック制御により)圧縮機モータ82の運転周波数を調整するようにインバータ90を制御してもよい。このようにして、コントローラ110は、高圧ライン63の圧力を目標圧と比較し、高圧ライン63の圧力が目標圧を上回る場合に圧縮機モータ82の運転周波数を減少させ、高圧ライン63の圧力が目標圧を下回る場合に圧縮機モータ82の運転周波数を増加させるように、インバータ90を制御してもよい。
【0141】
第3の実施の形態によると、第2圧縮機80を追加することにより、極低温冷凍機10の運転差圧を拡大することができる。とくに、上述した第1圧縮機12のリリーフバルブ60の設定圧に起因する制限を超えて、極低温冷凍機10の運転差圧を拡大することができる。運転差圧の拡大は極低温冷凍機10の冷凍能力の増加をもたらし、初期冷却の所要時間を短縮することができる。また、第2圧縮機80は、第1圧縮機12と併用されるので、比較的小型でよく、持ち運び容易である。
【0142】
第2の実施の形態と同様に、第3の実施の形態においても、図18に示されるように、バッファ容積70が供給バルブ72および回収バルブ74とともに、初期冷却のために極低温冷凍機10に接続されてもよい。初期冷却の前処理として、バッファ容積70は、供給バルブ72を介して低圧ライン64に接続されるとともに、回収バルブ74を介して高圧ライン63に接続される。初期冷却の実行中には、バッファ容積70は、第1の実施の形態と同様に、高圧ライン63の圧力を適正圧力範囲に保つために利用される。すなわち、供給バルブ72は、初期冷却の最中に、第1圧力センサ54によって測定された高圧ライン63の圧力に基づいて、高圧ライン63の圧力を適正圧力範囲に保つように制御される。初期冷却の後、バッファ容積70は供給バルブ72および回収バルブ74とともに、極低温冷凍機10から取り外されてもよい。このように、バッファ容積70を初期冷却に利用することで、上述の実施の形態と同様に、初期冷却の所要時間を短縮することができる。
【0143】
また、図19に示されるように、二段式の圧縮機構成を形成するために、第2圧縮機80は、第1圧縮機12の吸入側(入口側)に接続されてもよい。すなわち、第2圧縮機80は、低圧ライン64上で第1圧縮機12と直列に接続されてもよい。この場合、第1圧縮機12の圧縮機本体57を駆動する圧縮機モータ82が運転周波数可変であってもよい。コントローラ110およびインバータ90によって、圧縮機モータ82の運転周波数は、測定された高圧ライン63の圧力に基づいて、高圧ライン63の圧力を適正圧力範囲に保つように制御されてもよい。これとともに、またはこれに代えて、図15に示す実施の形態と同様に、第2圧縮機80の圧縮機モータ82の運転周波数がコントローラ110およびインバータ90によって制御されてもよい。
【0144】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0145】
例えば、第1の実施の形態に関して説明した制御処理(例えば、バッファ圧に基づく初期冷却の完了処理、高圧優先制御から低圧優先制御への切替処理、低圧優先制御から高圧優先制御への切替処理)は、第2および第3の実施の形態に適用されてもよい。
【0146】
上述の実施の形態では、膨張機モータ42が一定の運転周波数(モータ回転数)で作動する場合(つまり、膨張機モータ42が初期冷却と定常運転で同じ運転周波数で作動する場合)を例として説明しているが、本発明はこれに限られない。極低温冷凍機10は、運転周波数を可変とする膨張機モータ42を備えてもよく、初期冷却の最中に、膨張機モータ42を定常運転に比べて高い運転周波数で作動させる、いわゆる加速冷却を実行してもよい。この場合、初期冷却(加速冷却)から定常運転への切替、および運転周波数の変更は、図7および図8を参照して上述したように、バッファ容積70の圧力に基づいて、または高圧ライン63と低圧ライン64の差圧に基づいて、行われてもよい。加速冷却を実行することにより、初期冷却時間をさらに短縮することができる。
【0147】
第1圧力センサ54、第2圧力センサ55等の圧力センサは、圧縮機12に設けられることは必須ではなく、ガスライン62、膨張機14など圧力を測定可能な任意の場所に設けられてもよい。例えば、第1圧力センサ54は高圧ライン63の任意の場所に設けられてもよく、第2圧力センサ55は低圧ライン64の任意の場所に設けられてもよい。
【0148】
上述の実施の形態では、供給バルブ72と回収バルブ74は別々のバルブとして用意され、それぞれがバッファ容積70に接続されているが、本発明はこれに限られない。例えば、供給バルブ72と回収バルブ74は、一体化されていてもよく、例えば、バッファ容積70に接続された三方弁であってもよい。三方弁を切り替えることにより、バッファ容積70を低圧ライン64に接続する供給状態とバッファ容積70を高圧ライン63に接続する回収状態が切り替えられてもよい。
【0149】
上述の実施の形態では、バッファ容積70は、単一のバッファタンクであるが、ある実施の形態では、バッファ容積70は、複数のバッファタンクであってもよい。一つのバッファタンクが供給バルブ72により低圧ライン64に接続され、別のバッファタンクが回収バルブ74により高圧ライン63に接続されてもよい。また、上述の実施の形態では、バッファ容積70は、圧縮機12および膨張機14の外に配置されているが、これに限られない。例えば、バッファ容積70は、圧縮機12の中に配置されてもよい。
【0150】
上述の実施の形態は、極低温冷凍機10が二段式のGM冷凍機である場合を例として説明しているが、これに限られない。極低温冷凍機10は、単段式または多段式のGM冷凍機であってもよく、さらには、パルス管冷凍機などその他のタイプの極低温冷凍機であってもよい。
【0151】
本発明の実施の形態は以下のように表現することもできる。
1.初期温度から極低温に冷却する初期冷却と、前記初期冷却に後続して前記極低温を維持する定常運転とを実行可能な膨張機と、
前記膨張機に接続され、前記膨張機に吸気される作動ガスが流れる高圧ラインと、
前記膨張機に接続され、前記膨張機から排気される作動ガスが流れる低圧ラインと、
前記高圧ラインの圧力を測定する第1圧力センサと、
作動ガスを貯留するバッファ容積と、
前記バッファ容積を前記低圧ラインに接続する供給バルブと、
前記初期冷却の最中に、前記第1圧力センサによって測定された前記高圧ラインの圧力に基づいて、前記高圧ラインの圧力を予め設定した適正圧力範囲に保つように前記供給バルブを制御するコントローラと、を備えることを特徴とする極低温冷凍機。
2.前記コントローラは、前記初期冷却の最中に、測定された前記高圧ラインの圧力を前記適正圧力範囲の下限値と比較し、前記高圧ラインの圧力が前記下限値を下回らないように前記供給バルブの開閉を繰り返すように前記供給バルブを動作させることを特徴とする項1に記載の極低温冷凍機。
3.前記バッファ容積をVB、前記高圧ラインの容積をVH、前記低圧ラインの容積をVL、ある温度での作動ガス封入圧をPI、当該温度での前記定常運転における前記高圧ラインの圧力をPH、当該温度での前記定常運転での前記低圧ラインの圧力をPLと表すとき、前記初期温度から前記極低温までの温度範囲における任意の温度について、前記バッファ容積が、VB≧VH(PH-PI)/(PI-PL)-VLを満たすことを特徴とする項1または2に記載の極低温冷凍機。
4.前記バッファ容積を前記高圧ラインに接続する回収バルブをさらに備え、
前記コントローラは、前記高圧ラインの圧力を前記適正圧力範囲に保つように前記回収バルブを制御することを特徴とする項1から3のいずれかに記載の極低温冷凍機。
5.前記バッファ容積をVB、前記高圧ラインの容積をVH、前記低圧ラインの容積をVL、ある温度での作動ガス封入圧をPI、当該温度での前記定常運転における前記高圧ラインの圧力をPH、当該温度での前記定常運転での前記低圧ラインの圧力をPLと表すとき、前記初期温度から前記極低温までの温度範囲における任意の温度について、前記バッファ容積が、VB≧-VH+VL(PI-PL)/(PH-PI)を満たすことを特徴とする項4に記載の極低温冷凍機。
6.前記バッファ容積の圧力を測定するバッファ圧センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記バッファ圧センサによって測定された前記バッファ容積の圧力に基づいて、前記初期冷却を完了することを特徴とする項1から5のいずれかに記載の極低温冷凍機。
7.前記低圧ラインの圧力を測定する第2圧力センサをさらに備え、
前記コントローラは、
前記第2圧力センサによって測定された前記低圧ラインの圧力が予め設定した低圧しきい値を下回るとき、前記高圧ラインの圧力に基づく前記供給バルブの制御を中断し、
前記第2圧力センサによって測定された前記低圧ラインの圧力に基づいて、前記低圧ラインの圧力を前記低圧しきい値に回復させるように前記供給バルブを制御するように構成されることを特徴とする項1から6のいずれかに記載の極低温冷凍機。
8.前記コントローラは、
前記第1圧力センサによって測定された前記高圧ラインの圧力が前記第1適正圧力範囲を下回るとき、前記低圧ラインの圧力に基づく前記圧縮機モータの運転周波数の制御を中断し、
前記第1圧力センサによって測定された前記高圧ラインの圧力に基づいて、前記高圧ラインの圧力を前記第1適正圧力範囲に復帰させるように前記圧縮機モータの運転周波数を制御するように構成されることを特徴とする項7に記載の極低温冷凍機。
9.前記高圧ラインおよび前記低圧ラインを通じて前記膨張機に接続される第1圧縮機と、
前記高圧ライン上または前記低圧ライン上で前記第1圧縮機と直列に接続される第2圧縮機と、をさらに備えることを特徴とする項1から8のいずれかに記載の極低温冷凍機。
10.前記第1圧縮機または前記第2圧縮機は、運転周波数を可変とする圧縮機モータを有し、前記圧縮機モータによって駆動され、
前記コントローラは、前記初期冷却の最中に、前記第1圧力センサによって測定された前記高圧ラインの圧力に基づいて、前記高圧ラインの圧力を前記適正圧力範囲に保つように前記圧縮機モータの運転周波数を制御するように構成されることを特徴とする項9に記載の極低温冷凍機。
11.極低温冷凍機の運転方法であって、前記極低温冷凍機は、第1圧縮機と、膨張機と、前記第1圧縮機を前記膨張機に接続する高圧ラインおよび低圧ラインとを備え、前記方法は、
第2圧縮機を前記高圧ライン上または前記低圧ライン上で前記第1圧縮機と直列に接続することと、
バッファ容積を、供給バルブを介して前記低圧ラインに接続することと、
前記膨張機を初期温度から極低温に冷却する初期冷却を、前記第2圧縮機と前記バッファ容積が前記極低温冷凍機に接続された状態で実行することと、
前記初期冷却に後続して前記膨張機を前記極低温に維持する定常運転を実行することと、を備え、
前記初期冷却を実行することは、
前記第1圧縮機および前記第2圧縮機を使用して作動ガスを前記膨張機に供給することと、
測定された前記高圧ラインの圧力に基づいて、前記高圧ラインの圧力を予め設定した適正圧力範囲に保つように前記供給バルブを制御することと、を備えることを特徴とする方法。
12.前記初期冷却の後、前記第2圧縮機を取り外すことをさらに備えることを特徴とする項11に記載の方法。
13.前記初期冷却の後、前記バッファ容積を取り外すことをさらに備えることを特徴とする項11または12に記載の方法。
14.前記初期冷却を実行することは、
測定された前記低圧ラインの圧力が予め設定した低圧しきい値を下回るとき、前記高圧ラインの圧力に基づく前記供給バルブの制御を中断することと、
測定された前記低圧ラインの圧力に基づいて、前記低圧ラインの圧力を前記低圧しきい値に回復させるように前記供給バルブを制御することと、を備えることを特徴とする項11から13のいずれかに記載の方法。
15.前記初期冷却を実行することは、
測定された前記高圧ラインの圧力が高圧しきい値を下回るとき、前記低圧ラインの圧力に基づく前記供給バルブの制御を中断することと、
測定された前記高圧ラインの圧力に基づいて、前記高圧ラインの圧力を前記高圧しきい値に回復させるように前記供給バルブを制御することと、を備えることを特徴とする項14に記載の方法。
16.前記第1圧縮機または前記第2圧縮機は、運転周波数を可変とする圧縮機モータを有し、前記圧縮機モータによって駆動され、
前記初期冷却を実行することは、測定された前記高圧ラインの圧力に基づいて、前記高圧ラインの圧力を予め設定した適正圧力範囲に保つように前記圧縮機モータの運転周波数を制御することを備えることを特徴とする項11から15のいずれかに記載の方法。
17.前記初期冷却を実行することは、
前記初期冷却の最中に、前記バッファ容積の圧力を測定することと、
測定された前記バッファ容積の圧力に基づいて前記初期冷却を完了することと、をさらに備えることを特徴とする項11から16のいずれかに記載の方法。
18.極低温冷凍機の運転方法であって、前記極低温冷凍機は、第1圧縮機と、膨張機と、前記第1圧縮機を前記膨張機に接続する高圧ラインおよび低圧ラインとを備え、前記方法は、
第2圧縮機を前記高圧ライン上または前記低圧ライン上で前記第1圧縮機と直列に接続することと、
前記膨張機を初期温度から極低温に冷却する初期冷却を、前記第2圧縮機が前記極低温冷凍機に接続された状態で実行することと、
前記初期冷却に後続して前記膨張機を前記極低温に維持する定常運転を実行することと、を備え、
前記第1圧縮機または前記第2圧縮機は、運転周波数を可変とする圧縮機モータを有し、前記圧縮機モータによって駆動され、
前記初期冷却を実行することは、
前記第1圧縮機および前記第2圧縮機を使用して作動ガスを前記膨張機に供給することと、
測定された前記高圧ラインの圧力に基づいて、前記高圧ラインの圧力を予め設定した適正圧力範囲に保つように前記圧縮機モータの運転周波数を制御することと、を備えることを特徴とする方法。
19.前記初期冷却の後、前記第2圧縮機を取り外すことをさらに備えることを特徴とする項18に記載の方法。
20.バッファ容積を、供給バルブを介して前記低圧ラインに接続することをさらに備え、
前記初期冷却を実行することは、測定された前記高圧ラインの圧力に基づいて、前記高圧ラインの圧力を予め設定した適正圧力範囲に保つように前記供給バルブを制御することを備えることを特徴とする項18または19に記載の方法。
21.前記初期冷却の後、前記バッファ容積を取り外すことをさらに備えることを特徴とする項20に記載の方法。
22.前記初期冷却を実行することは、
前記初期冷却の最中に、前記バッファ容積の圧力を測定することと、
測定された前記バッファ容積の圧力に基づいて前記初期冷却を完了することと、をさらに備えることを特徴とする項20または21に記載の方法。
【0152】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0153】
10 極低温冷凍機、 12 圧縮機、 14 膨張機、 54 第1圧力センサ、 55 第2圧力センサ、 63 高圧ライン、 64 低圧ライン、 70 バッファ容積、 72 供給バルブ、 80 第2圧縮機、 82 圧縮機モータ、 110 コントローラ。
図1
図2
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図5
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図10
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