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特開2024-55160温度測定装置、温度測定方法及び温度測定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055160
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】温度測定装置、温度測定方法及び温度測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/70 20220101AFI20240411BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20240411BHJP
   G01J 5/0805 20220101ALI20240411BHJP
【FI】
G01J5/70 E
G01J1/02 C
G01J5/0805 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161863
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】524066085
【氏名又は名称】FCNT合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船引 大輝
【テーマコード(参考)】
2G065
2G066
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AA20
2G065AB02
2G065BB21
2G065BB24
2G065BC28
2G065BC35
2G065CA21
2G066BA23
2G066BA36
2G066BB11
2G066BC07
2G066BC15
2G066BC30
(57)【要約】
【課題】小型化が容易で可及的に精度よく測定対象の温度を測定できる温度測定装置を提供する。
【解決手段】本温度測定装置は、受光した赤外線の強度に応じた信号を出力する赤外線センサと、温度測定の対象となる測定対象と上記赤外線センサとの間に配置され、印加される電圧によって上記測定対象から上記赤外線センサに到達する上記赤外線の透過率が変動する透過部材と、上記赤外線センサからの上記信号を基に上記測定対象の温度を測定する測定部と、を備える。上記測定部は、上記透過部材に上記測定対象からの上記赤外線を遮断させた状態における上記赤外線センサからの上記信号を基に第1温度を測定する処理と、上記第1温度と、上記透過部材に上記測定対象からの上記赤外線を透過させた状態における上記赤外線センサからの上記信号とを用いて、上記測定対象の温度を測定する処理と、を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光した赤外線の強度に応じた信号を出力する赤外線センサと、
温度測定の対象となる測定対象と前記赤外線センサとの間に配置され、印加される電圧によって前記測定対象から前記赤外線センサに到達する前記赤外線の透過率が変動する透過部材と、
前記赤外線センサからの前記信号を基に前記測定対象の温度を測定する測定部と、を備え、
前記測定部は、
前記透過部材に前記測定対象からの前記赤外線を遮断させた状態における前記赤外線センサからの前記信号を基に第1温度を測定する処理と、
前記第1温度と、前記透過部材に前記測定対象からの前記赤外線を透過させた状態における前記赤外線センサからの前記信号とを用いて、前記測定対象の温度を測定する処理と、を実行する、
温度測定装置。
【請求項2】
前記測定対象の温度を測定する処理は、
前記透過部材の透過率を、前記透過部材を透過する前記赤外線が前記第1温度に対応する強度だけ減衰する第1透過率に制御する処理と、
前記第1透過率に透過率が制御された前記透過部材を透過した前記測定対象からの前記赤外線を用いて前記測定対象の温度を測定する処理と、を含む、
請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項3】
前記測定対象の温度を測定する処理は、
前記透過部材に前記測定対象からの前記赤外線を透過させた状態における前記赤外線センサからの前記信号を基に第2温度を測定する処理と、
前記第2温度から前記第1温度を減算して前記測定対象の温度を算出する処理と、を含む、
請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項4】
前記透過部材は、液晶を用いた光学シャッターを含む、
請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項5】
受光した赤外線の強度に応じた信号を出力する赤外線センサと、
温度測定の対象となる測定対象と前記赤外線センサとの間に配置され、前記測定対象から放射される赤外線を前記赤外線センサに透過させる透過部材と、
前記透過部材の温度を測定する温度センサと、
前記温度センサが示す前記透過部材の部材温度と、前記部材温度における前記透過部材が放射する赤外線が入射したときにおける前記赤外線センサの前記信号の値との対応関係を記憶する記憶部と、
前記赤外線センサからの前記信号を基に前記測定対象の温度を測定する測定部と、を備え、
前記測定部は、
前記温度センサが示す前記部材温度に対応する前記赤外線センサの前記信号の値を前記対応関係を参照して取得し、
前記透過部材に前記測定対象からの前記赤外線を透過させた状態における前記赤外線センサからの前記信号と、前記対応関係を参照して取得した前記信号の値とを用いて、前記測定対象の温度を測定する処理と、を実行する
温度測定装置。
【請求項6】
ミリ波帯の電波を用いて通信を行う通信部をさらに備える、
請求項1から5のいずれか一項に記載の温度測定装置。
【請求項7】
受光した赤外線の強度に応じた信号を出力する赤外線センサと、温度測定の対象となる測定対象と前記赤外線センサとの間に配置され、印加される電圧によって前記測定対象から前記赤外線センサに到達する前記赤外線の透過率が変動する透過部材と、を備える温度測定装置が、
前記透過部材に前記測定対象からの前記赤外線を遮断させた状態における前記赤外線センサからの前記信号を基に第1温度を測定する処理と、
前記第1温度と、前記透過部材に前記測定対象からの前記赤外線を透過させた状態における前記赤外線センサからの前記信号とを用いて、前記測定対象の温度を測定する処理と、を実行する、
温度測定方法。
【請求項8】
受光した赤外線の強度に応じた信号を出力する赤外線センサと、温度測定の対象となる測定対象と前記赤外線センサとの間に配置され、印加される電圧によって前記測定対象から前記赤外線センサに到達する前記赤外線の透過率が変動する透過部材と、を備える温度測定装置に、
前記透過部材に前記測定対象からの前記赤外線を遮断させた状態における前記赤外線センサからの前記信号を基に第1温度を測定する処理と、
前記第1温度と、前記透過部材に前記測定対象からの前記赤外線を透過させた状態における前記赤外線センサからの前記信号とを用いて、前記測定対象の温度を測定する処理と、を実行させる、
温度測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度測定装置、温度測定方法及び温度測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ等の透光部材を介して入射する赤外線を赤外線センサ(IRセンサ)によって検知することで測定対象の温度を測定する非接触型の温度測定装置が利用されている。
【0003】
このような温度測定装置では、装置内の電子部品等の発熱の影響でレンズ等が温められ、温められたレンズ等から放射される赤外線の影響により、測定対象の温度が高めに測定されてしまう虞がある。そこで、レンズ等の前方に機械的なシャッター機構等を設け、シャッター機構を閉じたときにIRセンサによって測定された温度を用いて、シャッター機構を開いて測定した測定対象の温度を補正する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-115557号公報
【特許文献2】特開平11-051773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、機械的なシャッター機構を設けてしまうと、シャッター機構を機械的に駆動する機構が温度測定装置の内部に設けられることになるため、温度測定装置の構成が複雑になるとともに小型化が困難となる。
【0006】
開示の技術の1つの側面は、小型化が容易で可及的に精度よく測定対象の温度を測定できる温度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術の1つの側面は、次のような温度測定装置によって例示される。本温度測定装置は、受光した赤外線の強度に応じた信号を出力する赤外線センサと、温度測定の対象となる測定対象と上記赤外線センサとの間に配置され、印加される電圧によって上記測定対象から上記赤外線センサに到達する上記赤外線の透過率が変動する透過部材と、上記赤外線センサからの上記信号を基に上記測定対象の温度を測定する測定部と、を備える。上記測定部は、上記透過部材に上記測定対象からの上記赤外線を遮断させた状態における上記赤外線センサからの上記信号を基に第1温度を測定する処理と、上記第1温度と、上記透過部材に上記測定対象からの上記赤外線を透過させた状態における上記赤外線センサからの上記信号とを用いて、上記測定対象の温度を測定する処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、小型化が容易で可及的に精度よく測定対象の温度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るスマートフォンの外観の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係るスマートフォンのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、温度測定部の構成の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係るスマートフォンの処理ブロックの一例を示す図である。
図5図5は、IRセンサの出力を模式的に示す第1の図である。
図6図6は、実施形態に係るスマートフォンによる温度測定の処理フローの一例を示す図である。
図7図7は、第1変形例に係るスマートフォンの処理ブロックの一例を示す図である。
図8図8は、第2変形例に係るスマートフォンの外観の一例を示す図である。
図9図9は、温度測定部の構成の一例を示す図である。
図10図10は、第2変形例に係るスマートフォンの処理ブロックの一例を示す図である。
図11図11は、管理データベースに格納される管理テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
以下に示す実施形態の構成は例示であり、開示の技術は実施形態の構成に限定されない。実施形態に係る温度測定装置は、例えば、以下の構成を備える。本実施形態に係る温度測定装置は、受光した赤外線の強度に応じた信号を出力する赤外線センサと、温度測定の対象となる測定対象と上記赤外線センサとの間に配置され、印加される電圧によって上記測定対象から上記赤外線センサに到達する上記赤外線の透過率が変動する透過部材と、上記赤外線センサからの上記信号を基に上記測定対象の温度を測定する測定部と、を備える。
【0011】
上記測定部は、上記透過部材に上記測定対象からの上記赤外線を遮断させた状態における上記赤外線センサからの上記信号を基に第1温度を測定する処理と、上記第1温度と、上記透過部材に上記測定対象からの上記赤外線を透過させた状態における上記赤外線センサからの上記信号とを用いて、上記測定対象の温度を測定する処理と、を実行する。
【0012】
上記温度測定装置によれば、例えば、装置内部に配置された電子部品等によって温められた上記透過部材から放射される赤外線が上記赤外線センサに入射することで測定される第1温度を取得できる。このような第1温度は、上記測定対象の温度を測定する際のノイズとなり得る。上記温度測定装置は、第1温度と上記透過部材に上記測定対象からの上記赤外線を透過させた状態における上記赤外線センサからの上記信号を用いることで、第1温度による測定対象の温度測定に対する影響を抑制できる。ひいては、上記温度測定装置は、可及的に精度よく測定対象の温度を測定することができる。
【0013】
また、上記温度測定装置は、機械的なシャッター機構ではなく印加される電圧によって上記測定対象から上記赤外線センサに到達する上記赤外線の透過率が変動する透過部材が採用される。そのため、上記温度測定装置は、シャッターを駆動する機械的な機構が設けられなくともよいため、小型化が容易となる。本実施形態は、上記温度測定装置によって実行される温度測定方法、及び、上記温度測定装置に温度を測定させる温度測定プログラムの側面からも把握することができる。
【0014】
以下、図面を参照して上記温度測定装置をスマートフォンに適用した実施形態についてさらに説明する。図1は、実施形態に係るスマートフォン100の外観の一例を示す図である。図1は、スマートフォン100の一方から見た外観(前面側の外観とする)と、他方から見た外観(背面側の外観とする)を例示する。図1では、矢印によって、スマートフォン100の前面側と背面側が入れ替えて配置され、例示される。スマートフォン10
0は、板状の筐体110を有する。したがって、図1には描かれていないが、筐体110の前面と背面との間の距離(厚み)は、前面または背面の外形寸法と比較して短い。図1で紙面に向かって上側が筐体110の上側であり、紙面に向かって下側が筐体110の下側であると仮定する。以下、本明細書において、筐体110の上下方向をY方向、Y方向と直交する筐体110の幅方向をX方向、筐体110の厚さ方向をZ方向とも称する。
【0015】
スマートフォン100は、可搬型の無線通信端末であり、情報処理装置である。筐体110の前面にはスピーカー111、マイクロフォン112及びディスプレイ113が設けられる。筐体110の背面には温度測定部121が設けられる。
【0016】
図2は、実施形態に係るスマートフォン100のハードウェア構成の一例を示す図である。スマートフォン100は、CPU101、主記憶部102、補助記憶部103、通信部104、スピーカー111、マイクロフォン112、ディスプレイ113及び温度測定部121を備える。CPU101、主記憶部102、補助記憶部103、通信部104、スピーカー111、マイクロフォン112、ディスプレイ113及び温度測定部121は、接続バスB1によって相互に接続される。
【0017】
CPU101は、マイクロプロセッサーユニット(MPU)、プロセッサーとも呼ばれる。CPU101は、単一のプロセッサーに限定される訳ではなく、マルチプロセッサー構成であってもよい。また、単一のソケットで接続される単一のCPU101がマルチコア構成を有していてもよい。CPU101が実行する処理のうち少なくとも一部は、CPU101以外のプロセッサー、例えば、Digital Signal Processor(DSP)、Graphics Processing Unit(GPU)、数値演算プロセッサー、ベクトルプロセッサー、画像処理プロセッサー等の専用プロセッサーで行われてもよい。また、CPU101が実行する処理のうち少なくとも一部は、集積回路(IC)、その他のデジタル回路によって実行されてもよい。また、CPU101の少なくとも一部にアナログ回路が含まれてもよい。集積回路は、Large Scale Integrated circuit(LSI)、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)を含む。PLDは、例えば、Field-Programmable Gate Array(FPGA)を含む。CPU101は、プロセッサーと集積回路との組み合わせであってもよい。組み合わせは、例えば、マイクロコントローラーユニット(MCU)、System-on-a-chip(SoC)、システムLSI、チップセットなどと呼ばれる。スマートフォン100では、CPU101が補助記憶部103に記憶されたプログラムを主記憶部102の作業領域に展開し、プログラムの実行を通じて周辺装置の制御を行う。これにより、スマートフォン100は、所定の目的に合致した処理を実行することができる。主記憶部102及び補助記憶部103は、スマートフォン100が読み取り可能な記録媒体である。
【0018】
主記憶部102は、CPU101から直接アクセスされる記憶部として例示される。主記憶部102は、Random Access Memory(RAM)及びRead Only Memory(ROM)を含む。
【0019】
補助記憶部103は、各種のプログラム及び各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納する。補助記憶部103は外部記憶装置とも呼ばれる。補助記憶部103には、オペレーティングシステム(Operating System、OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。OSは、通信部104を介して接続される外部装置等とのデータの受け渡しを行う通信インターフェースプログラムを含む。外部装置等には、例えば、コンピューターネットワーク等で接続された、他の情報処理装置及び外部記憶装置が含まれる。なお、補助記憶部103は、例えば、ネットワーク上のコンピューター群であ
るクラウドシステムの一部であってもよい。
【0020】
補助記憶部103は、例えば、Erasable Programmable ROM(EPROM)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive、SSD)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive、HDD)等である。
【0021】
通信部104は、例えば、携帯電話会社によって提供される第5世代移動通信システム(5G)とのインターフェースである。通信部104は、第5世代移動通信システムを介して外部の装置と通信を行う。通信部104は、例えば、ミリ波帯の電波を送受信するアンテナと、アンテナを介して送受信される高周波信号を処理する高周波回路を含む。第5世代移動通信システムで利用される高周波信号を処理することから通信部104の発熱量は大きい。
【0022】
スピーカー111は、音を出力する装置である。スピーカー111は、スマートフォン100を用いた通話において、通話相手の音声等の音を出力する。マイクロフォン112は、音取得に用いられる装置である。
【0023】
ディスプレイ113は、CPU101で処理されるデータや主記憶部102に記憶されるデータを表示する。ディスプレイ113は、例えば、Liquid Crystal Display(LCD)、Plasma Display Panel(PDP)、無機Electroluminescence(EL)パネル、有機ELパネルである。ディスプレイ113には、例えば、ユーザーの指等によるタッチ操作を検知するタッチパネルが重畳して設けられてもよい。スマートフォン100は、ディスプレイ113にタッチパネルが重畳して設けられることで、直感的な操作環境をユーザーに提供することができる。
【0024】
温度測定部121は、例えば、測定対象から放射される赤外線を受光して、受光した赤外線の強度に応じた測定信号をCPU101に出力する。スマートフォン100では、測定対象からの赤外線を受光した温度測定部121からの測定信号を用いることで、非接触で測定対象の温度を測定することができる。図3は、温度測定部121の構成の一例を示す図である。図3では、図1のA-A線断面が例示される。温度測定部121は、可変IRフィルタ131、赤外線透過部材132、IRセンサ133を含む。そして、温度測定部121の近傍には、例えば、通信部104が配置される。
【0025】
可変IRフィルタ131は、例えば、液晶を用いた光学シャッターである。可変IRフィルタ131は、IRセンサ133と測定対象500との間に配置される。可変IRフィルタ131は、電圧の印加に応じて液晶の配列状態が変更されることで、赤外線501の透過率を変更できるフィルタである。可変IRフィルタ131は、電圧が印加されたときに赤外線の透過率が高くなるフィルタであっても、電圧が印加されたときに赤外線501の透過率が低くなるフィルタであってもよい。また、可変IRフィルタ131は、電圧印加の有無に応じて、赤外線501を透過させない第1状態と赤外線501を可及的に透過させる第2状態とを切り替えるフィルタであってもよい。可変IRフィルタ131としては、例えば、株式会社光洋の液晶光シャッターフィルムや凸版印刷株式会社の液晶調光フィルム等を採用することができる。
【0026】
可変IRフィルタ131とIRセンサ133との間には、赤外線透過部材132が配置される。赤外線透過部材132は、赤外線501を透過させる。赤外線透過部材132は、可視光等の赤外線501以外の波長範囲の光を透過させてもよい。赤外線透過部材132としては、例えば、ガラス板やレンズを採用することができる。可変IRフィルタ13
1は、例えば、赤外線透過部材132の測定対象500側の面に貼り付けられてもよい。可変IRフィルタ131と赤外線透過部材132は、「透過部材」の一例である。
【0027】
基板105は、例えば、IRセンサ133や通信部104等の電子部品が配置されるプリント配線基板である。基板105には、IRセンサ133や通信部104以外の電子部品が配置されてもよい。なお、図3の例では、筐体110と基板105とが接触しているが、筐体110と基板105とは接触せずに離れていてもよい。
【0028】
IRセンサ133は、受光した赤外線の強度に応じた測定信号をCPU101に出力する。IRセンサ133は、スマートフォン100の筐体110内に収容された基板105上に配置される。IRセンサ133には、可変IRフィルタ131及び赤外線透過部材132を介して測定対象500からの赤外線501が入射する。IRセンサ133は、「赤外線センサ」の一例である。
【0029】
ここで、温度測定部121の近傍には通信部104が配置される。通信部104は、例えば、基板105上に配置される。通信部104は、上記の通り発熱量が大きいため、その熱が基板105や筐体110、赤外線透過部材132に伝わることがある。温度測定部121による測定対象500の温度測定時において、通信部104からの熱が伝わった基板105、筐体110、赤外線透過部材132からの赤外線もIRセンサ133に入射することになる。筐体110、赤外線透過部材132から入射する赤外線の影響により、温度測定部121による測定対象500の温度測定精度が低下する虞がある。本実施形態では、このような温度測定精度の低下を抑制するため、以下のような構成を採用する。
【0030】
<スマートフォン100の処理ブロック>
図4は、実施形態に係るスマートフォン100の処理ブロックの一例を示す図である。スマートフォン100は、第1測定部11、補正部12、第2測定部13及び出力部14を備える。スマートフォン100は、主記憶部102に実行可能に展開されたコンピュータープログラムをCPU101が実行することで、上記スマートフォン100の、第1測定部11、補正部12、第2測定部13及び出力部14等の各部としての処理を実行する。
【0031】
第1測定部11は、可変IRフィルタ131の状態を赤外線501を透過させない第1状態に切り替える。第1測定部11は、可変IRフィルタ131を第1状態に切り替えた上で、IRセンサ133から出力された測定信号を基に第1温度を測定する。第1測定部11は、測定した第1温度を補助記憶部103に記憶させる。
【0032】
図5は、IRセンサ133の出力を模式的に示す図である。図5Aでは、可変IRフィルタ131を第1状態としたときに測定対象500の温度測定を行った場合におけるIRセンサ133の出力値が模式的に示される。可変IRフィルタ131が赤外線501を透過しないため、測定対象500からの赤外線501はIRセンサ133には届かない。そのため、IRセンサ133の出力値は、通信部104等の筐体110内に配置された電子部品からの熱によって温められた赤外線透過部材132から放射された赤外線による出力値T1となる。IRセンサ133の出力値T1が示す温度が、第1温度に対応する。
【0033】
図5Bでは、可変IRフィルタ131を第2状態としたときに測定対象500の温度測定を行った場合におけるIRセンサ133の出力値が模式的に示される。
【0034】
IRセンサ133の出力値T2は、測定対象500から放射された赤外線501による出力値T21と、通信部104等の筐体110内に配置された電子部品からの熱によって温められた赤外線透過部材132から放射された赤外線による出力値T1の合計となる。
すなわち、出力値T2を基に測定対象500の温度を測定すると、出力値T1の影響により測定対象500の温度が正しく測定されない。
【0035】
そこで、補正部12は、補助記憶部103に記憶された出力値T1が示す強度だけ赤外線501を透過させないように可変IRフィルタ131の透過率を制御する。第2測定部13は、補正部12によって可変IRフィルタ131の透過率が制御された状態で、IRセンサ133からの測定信号を基に測定対象500の温度を測定する。補正部12によって制御された透過率は、「第1透過率」の一例である。
【0036】
図5Cでは、補正部12によって可変IRフィルタ131の透過率が制御された場合におけるIRセンサ133の出力値が模式的に示される。補正部12によって可変IRフィルタ131の透過率が制御されることで、可変IRフィルタ131によって出力値T1分だけ赤外線501が遮蔽される。すなわち、IRセンサ133に入射する赤外光から出力値T1分の赤外光が除外される。そのため、IRセンサ133の出力値は、測定対象500からの赤外線501の強度を示す出力値T21となる。第2測定部13は、出力値T21である測定信号を基に測定対象500の温度を測定する。第1測定部11、補正部12及び第2測定部13は、「測定部」の一例である。
【0037】
出力部14は、第2測定部13によって測定された測定対象500の温度を示す情報を出力する。出力部14は、例えば、第2測定部13によって測定された測定対象500の温度を示す情報をディスプレイ113に出力する。出力部14は、例えば、第2測定部13によって測定された測定対象500の温度を示す情報をスピーカー111に出力してもよい。
【0038】
<スマートフォン100による温度測定の処理フロー>
図6は、実施形態に係るスマートフォン100による温度測定の処理フローの一例を示す図である。以下、図6を参照して、スマートフォン100による温度測定の処理フローの一例について説明する。
【0039】
ステップP1では、温度測定部121が測定対象500に向けられる。ステップP2では、第1測定部11による測定が行われる。第1測定部11は、可変IRフィルタ131を第1状態に切り替えた上で、IRセンサ133から出力された測定信号を基に第1温度を測定する。第1測定部11は、測定した第1温度を補助記憶部103に記憶させる。
【0040】
ステップP3では、補正部12は、補助記憶部103に記憶された出力値T1が示す強度分だけ赤外線501を透過させないように可変IRフィルタ131の透過率を制御する。
【0041】
ステップP4では、第2測定部13は、ステップP3で可変IRフィルタ131の透過率が制御された状態で、IRセンサ133からの測定信号を基に測定対象500の温度を測定する。
【0042】
ステップP5では、出力部14は、ステップP4で測定された測定対象500の温度をディスプレイ113等に出力する。
【0043】
<実施形態の作用効果>
スマートフォン100では、IRセンサ133が受光する赤外線の強度を基に測定対象500の温度が測定される。ここで、スマートフォン100の筐体110内には、通信部104等の発熱する電子部品が実装される。このような電子部品からの熱により、例えば、赤外線透過部材132が温められる。温められた赤外線透過部材132からも赤外線が
放射されるため、IRセンサ133は、測定対象500からの赤外線501と赤外線透過部材132からの赤外線を受光することになる。測定対象500からの赤外線501と赤外線透過部材132からの赤外線を受光したIRセンサ133からの測定信号を基に測定対象500の温度が測定されると、赤外線透過部材132から放射される赤外線の分だけ高めの温度が測定されてしまう。
【0044】
そこで、本実施形態では、通信部104等の筐体110内に配置された電子部品からの熱によって温められた赤外線透過部材132から放射された赤外線による出力値T1が示す強度分だけ、赤外線501を透過させないように可変IRフィルタ131の透過率が補正部12によって制御される。そして、第2測定部13は、補正部12によって可変IRフィルタ131の透過率が制御された状態で、IRセンサ133からの測定信号を基に測定対象500の温度を測定する。そのため、本実施形態によれば、赤外線透過部材132が放射する赤外線による影響を抑制し、測定対象500の温度を高精度に測定することができる。
【0045】
また、本実施形態では、赤外線501の透過率を制御する部材として、可変IRフィルタ131が採用される。可変IRフィルタ131は、例えば、液晶を用いた光学シャッターである。液晶を用いた光学シャッターでは、赤外線501の透過率を変化させる際に開口することが無い。例えば、可変IRフィルタ131として機械式のシャッターが採用される場合、赤外線501を透過させる場合には当該シャッターが開口することになる。そのため、当該機械式のシャッターの開口を介して筐体110内に水等が浸入する虞がある。一方、液晶を用いた光学シャッターでは上記の通り開口しないため、光学シャッターを介して筐体110内に水が浸入することが抑制される。すなわち、可変IRフィルタ131として液晶を用いた光学シャッターを採用したスマートフォン100は、防水端末とすることが容易である。
【0046】
また、液晶を用いた光学シャッターは印加される電圧に応じて赤外線501の透過率が変動するため、機械的なシャッター機構とは異なりシャッターを開閉するための複雑な機構を筐体110内に設けなくともよい。そのため、本実施形態によれば、スマートフォン100の小型化が容易となる。
【0047】
また、本実施形態では、測定対象500の温度測定時におけるIRセンサ133への赤外線の入射量が可変IRフィルタ131によって抑制される。そのため、強い赤外線がIRセンサ133に入射されることが抑制され、ひいては、IRセンサ133の長寿命化に資することとなる。
【0048】
<第1変形例>
以上説明した実施形態では、出力値T1が示す強度分だけ赤外線501を透過させないように可変IRフィルタ131の透過率が制御されることで、測定対象500の温度測定の精度向上が図られた。第1変形例では、可変IRフィルタ131が赤外線501を遮蔽した状態におけるIRセンサ133の出力値を基に測定した温度と可変IRフィルタ131が赤外線501を透過させた状態におけるIRセンサ133の出力値を基に測定した温度とを基に、測定対象500の温度を高精度に測定する構成について説明する。実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。以下、図面を参照して、第1変形例について説明する。
【0049】
図7は、第1変形例に係るスマートフォン100Aの処理ブロックの一例を示す図である。スマートフォン100Aは、補正部12に代えて補正部12Aを備えるとともに、第2測定部13に代えて第2測定部13Aを備える点で、実施形態に係るスマートフォン100とは異なる。
【0050】
第2測定部13Aは、赤外線501を可及的に透過させる第2状態に可変IRフィルタ131の状態を切り替える。第2測定部13Aは、可変IRフィルタ131を第2状態に切り替えた上で、IRセンサ133から出力された測定信号を基に第2温度を測定する。
【0051】
補正部12Aは、第2測定部13Aによって測定された第2温度から第1測定部11によって測定された第1温度を基に補正して測定対象500の温度を算出する。このような補正は、例えば、第2温度から第1温度を減算することで行われる。
【0052】
図5Bを参照して説明した様に、可変IRフィルタ131を第2状態としたときにおけるIRセンサ133の出力値には、測定対象500から放射された赤外線501による出力値T21と、通信部104等の筐体110内に配置された電子部品からの熱によって温められた赤外線透過部材132から放射された赤外線による出力値T1が含まれる。そのため、IRセンサ133が第2状態において測定された第2温度は、測定対象500の温度と赤外線透過部材132の温度との合計となる。そして、赤外線透過部材132の温度は、出力値T1が示す温度に対応する。第1変形例では、第2温度から赤外線透過部材132の温度を減算することで、赤外線透過部材132が放射する赤外線による影響を抑制して、測定対象500の温度の測定精度を向上させることができる。
【0053】
<第2変形例>
以上説明した実施形態及び第1変形例では、可変IRフィルタ131の透過率を制御して測定対象500の温度の測定精度が向上された。第2変形例では、可変IRフィルタ131の透過率を制御することに代えて、赤外線透過部材132の温度を測定し、測定した赤外線透過部材132の温度を用いて測定対象500の温度の測定精度を向上させる構成について説明する。実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。以下、図面を参照して、第2変形例について説明する。
【0054】
図8は、第2変形例に係るスマートフォン100Bの外観の一例を示す図である。スマートフォン100Bは、温度測定部121に代えて温度測定部121Aを備える点で、実施形態に係るスマートフォン100とは異なる。
【0055】
図9は、温度測定部121Aの構成の一例を示す図である。図9では、図8のB-B線断面が例示される。温度測定部121Aは、可変IRフィルタ131が省略される一方で、温度センサ134が設けられる点で、実施形態に係るスマートフォン100が備える温度測定部121とは異なる。
【0056】
温度センサ134は、赤外線透過部材132の近傍に配置され、赤外線透過部材132の温度を測定するセンサである。温度センサ134によって測定された赤外線透過部材132の温度は、例えば、接続バスB1を介してCPU101に出力される。温度センサ134によって測定される赤外線透過部材132の温度は、「部材温度」の一例である。
【0057】
図10は、第2変形例に係るスマートフォン100Bの処理ブロックの一例を示す図である。スマートフォン100Bは、第1測定部11が省略された上で、補正部12に代えて補正部12Bを、第2測定部13に代えて第2測定部13Bを備えるとともに、管理データベース15をさらに備える点で実施形態に係るスマートフォン100とは異なる。
【0058】
管理データベース15には、温度センサ134によって測定される赤外線透過部材132の温度とIRセンサ133の出力値との対応関係が記憶される。管理データベース15は、例えば、補助記憶部103に記憶される。図11は、管理データベース15に格納される管理テーブル151の一例を示す図である。管理テーブル151は、「温度センサ(
℃)」及び「IRセンサ(μV)」の各項目を含む。「温度センサ(℃)」には、赤外線透過部材132によって測定される赤外線透過部材132の温度を示す情報が格納される。「IRセンサ(μV)」には、赤外線透過部材132の温度に対するIRセンサ133の出力値が格納される。管理テーブル151は、例えば、スマートフォン100Bの出荷前の段階で予め管理データベース15に格納される。
【0059】
補正部12Bは、温度センサ134から赤外線透過部材132の温度を取得する。補正部12Bは、取得した赤外線透過部材132の温度に対応するIRセンサ133の出力値を管理テーブル151を参照して取得する。
【0060】
第2測定部13Bは、測定対象500からの赤外線501を受光したIRセンサ133からの測定信号を受信する。第2測定部13Bは、受信した測定信号から補正部12Bによって取得された出力値を減算する。第2測定部13Bは、受信した測定信号から補正部12Bによって取得された出力値を減算した値を基に、測定対象500の温度を測定する。
【0061】
第2変形例では、通信部104等の筐体110内に配置された電子部品からの熱によって温められた赤外線透過部材132の温度に対応するIRセンサ133の出力値を用いて、第2測定部13Bが測定対象500Bの温度を補正する。そのため、第2変形例によれば、赤外線透過部材132が放射する赤外線による影響を抑制して、測定対象500の温度の測定精度を向上させることができる。
【0062】
<その他の変形>
可変IRフィルタ131が赤外線501を遮蔽した状態においても、完全にスマートフォン100の外部の温度による影響がIRセンサ133の出力値に及ばないとは限らない。そのため、スマートフォン100の外部の温度の影響が第1温度に含まれることも考えられる。また、スマートフォン100の内部における発熱によって生じた赤外光が可変IRフィルタ131によって反射され、反射された赤外光がIRセンサ133に入射することも考えられる。すなわち、外部の影響を排除した理想的な第1温度よりも、実際に測定される第1温度は高くなることが考えられる。このような場合、補正部12Aによる補正と、補正部12Bによる補正を併用することで、第1温度が補正されてもよい。例えば、可変IRフィルタ131が赤外線501を遮蔽した状態におけるIRセンサ133の出力値と、スマートフォン100内部に設けられた内部温度センサによって測定された温度を基に想定されるIRセンサ133の出力値とを基に、第1温度が補正されてもよい。上記内部温度センサとしては、上記の温度センサ134を用いてもよいし、温度センサ134とは別の温度センサがスマートフォン100の内部に設けられてもよい。想定されるIRセンサ133の出力値の算出には、例えば、予め補助記憶部103に記憶された、上記内部温度センサによって測定された温度とIRセンサ133の出力値との対応関係を用いればよい。このような処理を行うことで、第1温度に対する外部の温度の影響をより抑制することができるため、測定対象500の温度の測定精度を向上させることができる。
【0063】
以上説明した実施形態及び変形例では、測定対象500の温度を測定する温度測定装置の一例としてスマートフォン100、100A、100Bが挙げられた。しかしながら、測定対象500の温度を測定する温度測定装置がスマートフォン100、100A、100Bに限定されるわけではない。測定対象500の温度を測定する温度測定装置は、例えば、ウェアラブル端末であってもよい。また、測定対象500の温度を測定する温度測定装置は、例えば、通信機能を備えない温度測定装置であってもよい。
【0064】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0065】
11・・第1測定部
12・・補正部
12A・・補正部
12B・・補正部
13・・第2測定部
13A・・第2測定部
13B・・第2測定部
14・・出力部
15・・管理データベース
151・・管理テーブル
100・・スマートフォン
100A・・スマートフォン
100B・・スマートフォン
101・・CPU
102・・主記憶部
103・・補助記憶部
104・・通信部
105・・基板
110・・筐体
111・・スピーカー
112・・マイクロフォン
113・・ディスプレイ
121・・温度測定部
121A・・温度測定部
131・・可変IRフィルタ
132・・赤外線透過部材
133・・IRセンサ
134・・温度センサ
500・・測定対象
501・・赤外線
B1・・接続バス
図1
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図6
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図11