(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055169
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】建具用形材及び建具
(51)【国際特許分類】
E06B 3/26 20060101AFI20240411BHJP
E06B 5/16 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
E06B3/26
E06B5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161878
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪 聡志
【テーマコード(参考)】
2E014
2E239
【Fターム(参考)】
2E014AA03
2E014BA02
2E014BA08
2E014BB01
2E014BB07
2E014BD08
2E239CA02
2E239CA22
2E239CA26
2E239CA32
2E239CA33
2E239CA44
2E239CA62
(57)【要約】
【課題】外形寸法を大型化することなく、断熱性及び耐風圧性の向上を図ること。
【解決手段】金属によって成形された金属成形部22Mと、樹脂によって成形された樹脂成形部22Pとの間に面材21の縁部を挟むように支持する建具用の形材であって、金属成形部22Mは、見込み方向に沿うように配置される金属基部22Maと、金属基部22Maの一方の縁部から内周側となる向きに延在することにより面材21の一方の表面を覆うように配置される第1横金属支持壁部22Mbと、金属基部22Maの他方の縁部から内周側となる向きに延在することにより面材21の他方の表面を覆うように配置される第2横金属支持壁部22Mcとを有し、樹脂成形部22Pは、第2横金属支持壁部22Mcを覆うように金属成形部22Mに支持されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属によって成形された金属成形部と、樹脂によって成形された樹脂成形部との間に面材の縁部を挟むように支持する建具用の形材であって、
前記金属成形部は、見込み方向に沿うように配置される金属基部と、前記金属基部の一方の縁部から内周側となる向きに延在することにより前記面材の一方の表面を覆うように配置される第1金属支持壁部と、前記金属基部の他方の縁部から内周側となる向きに延在することにより前記面材の他方の表面を覆うように配置される第2金属支持壁部とを有し、
前記樹脂成形部は、前記第2金属支持壁部を覆うように前記金属成形部に支持されていることを特徴とする建具用形材。
【請求項2】
前記金属基部には、前記樹脂成形部よりも外周側となる部分に外部に露出する見付け面が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具用形材。
【請求項3】
前記第1金属支持壁部において前記第2金属支持壁部に対向する内表面に熱膨張性部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具用形材。
【請求項4】
前記樹脂成形部には、外周側となる縁部に前記第1金属支持壁部に向けて延在する係合片部が設けられ、
前記第2金属支持壁部には、前記金属基部との間に前記係合片部が挿入可能となる溝部が設けられ、
前記樹脂成形部は、前記溝部に前記係合片部を挿入した状態で内周側となる縁部を前記第2金属支持壁部に係合させることによって前記金属成形部に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の建具用形材。
【請求項5】
障子を構成する縦框及び横框の少なくとも1つが、請求項1~請求項4のいずれか一つに記載した建具用形材を適用していることを特徴とする建具。
【請求項6】
障子を構成する2つの縦框及び2つの横框のいずれもが、請求項1~請求項4のいずれか一つに記載した建具用形材を適用していることを特徴とする建具。
【請求項7】
前記横框の前記第1金属支持壁部及び前記第2金属支持壁部が、前記縦框の前記第1金属支持壁部と前記第2金属支持壁部との間に配置され、かつ前記第1金属支持壁部が相互に当接するとともに、前記第2金属支持壁部が相互に当接した状態で前記横框及び前記縦框が接合されていることを特徴とする請求項6に記載の建具。
【請求項8】
前記横框を構成する建具用形材は、前記金属基部が中空状に構成され、
前記金属基部の中空内部には、前記縦框との間を連結するためのネジが螺合されるビスホールが長手に沿って1つのみ設けられていることを特徴とする請求項7に記載の建具。
【請求項9】
前記樹脂成形部のもっとも内周側に位置する縁部が、枠体を構成する形材のもっとも内周側に位置する見込み面と同一、または前記枠体を構成する形材のもっとも内周側に位置する見込み面よりも外周側に位置するように、前記枠体に対して前記障子が配設されていることを特徴とする請求項5に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具用形材及び建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建具には、障子を構成する框として、金属によって成形された室外側の金属成形部と、樹脂によって成形された室内側の樹脂成形部との間にガラス板等の面材の縁部を挟むように支持するものがある。この種の建具によれば、金属成形部と樹脂成形部とによって室内外方向の熱伝達が抑制されるため、例えば室内の温度に比べて室外の温度が低い場合にも室内に結露が生じる事態を防止することが可能になる等の利点がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のように、金属成形部と樹脂成形部との間において面材を支持するようにした建具では、耐風圧性を考慮した場合、樹脂成形部の剛性をできるだけ確保する必要がある。このため、框の外形寸法が大型化する傾向にあり、その分だけ障子の採光面積が減少するばかりでなく、枠体から框が大きく露出する等、外観品質の点でも好ましいとはいえない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、外形寸法を大型化することなく、断熱性及び耐風圧性の向上を図ることのできる建具用形材及び建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具用形材は、金属によって成形された金属成形部と、樹脂によって成形された樹脂成形部との間に面材の縁部を挟むように支持する建具用の形材であって、前記金属成形部は、見込み方向に沿うように配置される金属基部と、前記金属基部の一方の縁部から内周側となる向きに延在することにより前記面材の一方の表面を覆うように配置される第1金属支持壁部と、前記金属基部の他方の縁部から内周側となる向きに延在することにより前記面材の他方の表面を覆うように配置される第2金属支持壁部とを有し、前記樹脂成形部は、前記第2金属支持壁部を覆うように前記金属成形部に支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、面材の両方の表面に対して金属成形部の第1金属支持壁部及び第2金属支持壁部が覆うように配置されるため、樹脂成形部に対して大きな風圧に抗するだけの剛性を付与する必要がない。従って、樹脂成形部の小型化を図ることができ、外形寸法を大型化することなく断熱性及び耐風圧性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態である形材を備えて構成した建具を示すもので、(a)は室内側から見た姿図、(b)は室外側から見た姿図である。
【
図4】
図1に示した建具の障子を示す縦断面図である。
【
図5】
図1に示した建具の障子を示す横断面図である。
【
図6】
図1に示した建具の障子に適用する形材の金属成形部を示すもので、(a)は上框の縦断面図、(b)は縦框の横断面図、(c)は下框の縦断面図である。
【
図7】
図1に示した建具の障子を室外側から示すもので、(a)は分解斜視図、(b)は組み立てた状態の斜視図である。
【
図8】
図1に示した建具の障子に適用する金属成形部を室内側から示すもので、(a)は分解図、(b)は組み立てた状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具用形材及び建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる場合がある。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0010】
図1~
図5は、本発明の実施の形態である形材を備えて構成した建具を示すものである。ここで例示する建具は、縦すべり出し窓と称されるもので、枠体10及び障子20を備えている。枠体10は、上枠(形材)11、下枠(形材)12、左右の縦枠(形材)13を四周組することによって構成したものである。障子20は、四角形状を成す複層ガラス等の面材21の四周に上框(建具用形材:横框)22、下框(建具用形材:横框)23、左右の縦框(建具用形材)24を四周組することによって構成したものである。
【0011】
枠体10を構成する上枠11、下枠12、左右の縦枠13は、いずれもアルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材からなる金属枠部11M,12M,13Mと、樹脂によって成形した押し出し形材からなる樹脂枠部11P,12P,13Pとを備えた複合タイプのものである。なお、実施の形態の縦枠13は、互いに対称となるように構成してあるため、左右で同一の符号を付して説明することとする。
【0012】
上枠11の金属枠部11Mは、上枠金属基板部11Ma、上枠金属内周板部11Mbを有したものである。上枠金属基板部11Maは、見込み方向に沿ってほぼ水平に延在した平板状を成すものである。上枠金属基板部11Maの外周側で室外側となる部分には、上枠11外周中空部が構成してある。上枠金属内周板部11Mbは、上枠金属基板部11Maの内周側となる見込み面のほぼ中央となる部分から内周側に向けて延在した平板状を成すもので、上枠金属基板部11Maと一体に成形してある。
【0013】
上枠11の樹脂枠部11Pは、上枠金属内周板部11Mbの内周側縁部から上枠金属基板部11Maの室内側となる縁部までの間に設けたもので、上枠樹脂突出部11Pa、上枠樹脂基板部11Pbを有している。上枠樹脂突出部11Paは、断面が略直方体状を成すものである。上枠樹脂基板部11Pbは、上枠樹脂突出部11Paの外周側、かつ室内側となる隅部から外周側に向けて延在した後、室内側に向けて延在したものである。この樹脂枠部11Pは、上枠樹脂突出部11Paが上枠金属内周板部11Mbの内周側縁部から内周側に突出し、かつ上枠樹脂基板部11Pbの延在縁部が上枠金属基板部11Maの縁部よりも室内側に突出した状態で上枠11の金属枠部11Mの内周側となる部分に装着してある。
【0014】
下枠12の金属枠部12Mは、下枠金属基板部12Ma、下枠金属内周板部12Mbを有したものである。下枠金属基板部12Maは、見込み方向に沿い、かつ室外側に向けて段階的に下方となるように延在した板状を成すものである。下枠金属基板部12Maの外周側で室外側となる部分には、下枠外周中空部12Mcが構成してある。下枠金属内周板部12Mbは、下枠金属基板部12Maの内周側となる見込み面のほぼ中央となる部分から内周側に向けて延在した平板状を成すものである。下枠金属基板部12Maの内周側において下枠金属内周板部12Mbから室内側となる部分には、下枠内周中空部12Mdが構成してある。
【0015】
下枠12の樹脂枠部12Pは、下枠内周中空部12Mdの内周面全面を覆うように設けたもので、見込み方向に沿ってほぼ水平に延在している。樹脂枠部12Pの室内側に位置する縁部は、下枠内周中空部12Mdの室内側に位置する部分よりも室内側に突出している。
【0016】
縦枠13の金属枠部13Mは、縦枠金属基板部13Ma、縦枠金属内周板部13Mb、縦枠金属内方板部13Mcを有したものである。縦枠金属基板部13Maは、見込み方向に沿ってほぼ鉛直に延在した平板状を成すものである。縦枠金属内周板部13Mbは、縦枠金属基板部13Maの内周側となる見込み面のほぼ中央となる部分から内周側に向けて延在した平板状を成すものである。縦枠金属内方板部13Mcは、縦枠金属基板部13Maの室内側となる縁部から内周側に向けて延在した平板状を成すものである。
【0017】
縦枠13の樹脂枠部13Pは、縦枠金属内周板部13Mbから縦枠金属内方板部13Mcまでの内周面全面を覆うように設けたもので、見込み方向に沿ってほぼ鉛直に延在している。縦枠13の樹脂枠部13Pの室内側に位置する縁部は、縦枠金属内方板部13Mcよりも室内側に突出している。
【0018】
図4~
図8に示すように、障子20を構成する上框22、下框23、左右の縦框24は、枠体10と同様、いずれもアルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材からなる金属成形部22M,24Mと、樹脂によって成形した押し出し形材からなる樹脂成形部22P,24Pとを備えた複合タイプのものである。なお、実施の形態では、上框22及び下框23が互いに対称となるように構成してあるとともに、縦框24が互いに対称となるように構成してある。従って、上框22及び一方の縦框24についてのみ説明し、下框23については上框22と同一の符号を付し、縦框24については左右で同一の符号を付すこととする。
【0019】
上框22の金属成形部22Mは、横金属基部22Ma、第1横金属支持壁部(第1金属支持壁部)22Mb、第2横金属支持壁部(第2金属支持壁部)22Mc、横金属外周壁部22Mdを有したものである。横金属基部22Maは、断面が略長方形の中空状を成すもので、長方形の長手が見込み方向に沿うように構成してある。横金属基部22Maの中空内部には、ビスホール22Meが1つだけ設けてある。ビスホール22Meは、縦框24との間を連結する際にネジSが螺合される部分であり、中空内部の外周側、かつ室外側となる隅部に形成してある。第1横金属支持壁部22Mbは、横金属基部22Maの室外側、かつ内周側となる隅部から内周側に向けて見付け方向に延在した板状を成すものである。第1横金属支持壁部22Mbの延在縁部は、室内側に向けてわずかに屈曲している。第2横金属支持壁部22Mcは、横金属基部22Maの内周側となる見込み面において室内側に位置する部分に設けたものである。第2横金属支持壁部22Mcの基端部は、内周側に向けて延在した後、室内側に向けて延在することにより、横金属基部22Maとの間に見込み方向に沿い、かつ室内側に開口した横溝部22Mfを構成している。第2横金属支持壁部22Mcの先端部は、横金属基部22Maの室内に臨む見付け面よりも室外側となる部分から内周側に向けて見付け方向に延在している。横金属基部22Maからの第2横金属支持壁部22Mcの突出寸法は、第1横金属支持壁部22Mbよりも小さく設定してある。横金属外周壁部22Mdは、横金属基部22Maの室外側、かつ外周側となる隅部から外周側に向けて見付け方向に延在したものである。
【0020】
上框22の樹脂成形部22Pは、横樹脂基部22Pa、横支持突部22Pb、横係合片部22Pc、横フック部22Pdを有したものである。横樹脂基部22Paは、見付け方向に沿って延在した板状を成すものである。この横樹脂基部22Paには、室内に臨む見付け面に上框22の長手に沿って延在するリブ22Peが2本設けてある。横樹脂基部22Paの延在長さは、外周側となる縁部を横金属基部22Maの内周側となる見込み面に当接させた場合に内周側となる縁部が第2横金属支持壁部22Mcを超えて第1横金属支持壁部22Mbとほぼ同じとなるように設定してある。横支持突部22Pbは、横樹脂基部22Paの内周側となる縁部から室外側に向けて延在したものである。横係合片部22Pcは、横樹脂基部22Paの外周側となる縁部から室外側に向けて延在したものである。横フック部22Pdは、横樹脂基部22Paの室外に臨む見付け面から室外に向けて延在した後に外周側に屈曲したものである。より詳細に説明すると、この横フック部22Pdは、横樹脂基部22Paの外周側となる縁部を横金属基部22Maの内周側となる見込み面に当接させた場合に第2横金属支持壁部22Mcの先端縁よりも内周側となる部分から室外に向けて突出し、かつ屈曲した部分の延在縁部が、第2横金属支持壁部22Mcの先端縁より外周側に位置している。
【0021】
縦框24の金属成形部24Mは、縦金属基部24Ma、第1縦金属支持壁部(第1金属支持壁部)24Mb、第2縦金属支持壁部(第2金属支持壁部)24Mc、縦金属外周壁部24Mdを有したものである。縦金属基部24Maは、見込み方向に延在した略平板状を成すものである。縦金属基部24Maの室内側に位置する縁部は、内周側に向けてわずかに屈曲している。第1縦金属支持壁部24Mbは、縦金属基部24Maの室外側となる縁部から内周側に向けて見付け方向に延在したものである。第1縦金属支持壁部24Mbの延在縁部は、室内側に向けてわずかに屈曲している。第2縦金属支持壁部24Mcは、縦金属基部24Maの内周側となる見込み面において室内側に位置する部分に設けたものである。第2縦金属支持壁部24Mcの基端部は、内周側に向けて延在した後、室内側に向けて延在することにより、縦金属基部24Maとの間に見込み方向に沿い、かつ室内側に開口した縦溝部24Meを構成している。第2縦金属支持壁部24Mcの先端部は、縦金属基部24Maの室内に臨む縁部よりも室外側となる部分から内周側に向けてほぼ見付け方向に延在している。縦金属基部24Maからの第2縦金属支持壁部24Mcの突出寸法は、第1縦金属支持壁部24Mbよりも小さく設定してある。縦金属外周壁部24Mdは、縦金属基部24Maの室外側となる縁部から外周側に向けて見付け方向に延在したものである。
図6からも明らかなように、第1縦金属支持壁部24Mbの室内に臨む見付け面から第2縦金属支持壁部24Mcの室外に臨む見付け面までの距離aは、上框22及び下框23において第1横金属支持壁部22Mbの室外に臨む見付け面から第2横金属支持壁部22Mcの室内に臨む見付け面までの距離bとほぼ一致するように構成してある。
【0022】
図4~
図8に示すように、縦框24の樹脂成形部24Pは、縦樹脂基部24Pa、縦支持突部24Pb、縦係合片部24Pc、縦フック部24Pdを有したものである。縦樹脂基部24Paは、見付け方向に沿って延在した平板状を成すものである。縦樹脂基部24Paの延在長さは、外周側となる縁部を縦金属基部24Maの内周側となる見込み面に当接させた場合に内周側となる縁部が第2縦金属支持壁部24Mcを超えて第1縦金属支持壁部24Mbとほぼ同じとなるように設定してある。縦支持突部24Pbは、縦樹脂基部24Paの内周側となる縁部から室外側に向けて延在したものである。縦係合片部24Pcは、縦樹脂基部24Paの外周側となる縁部から室外側に向けて延在したものである。縦フック部24Pdは、縦樹脂基部24Paの室外に臨む見付け面から室外に向けて延在した後に外周側に屈曲したものである。より詳細に説明すると、この縦フック部24Pdは、縦樹脂基部24Paの外周側となる縁部を縦金属基部24Maの内周側となる見込み面に当接させた場合に第2縦金属支持壁部24Mcの先端縁よりも内周側となる部分から室外に向けて突出し、かつ屈曲した部分の延在縁部が、第2縦金属支持壁部24Mcの先端縁より外周側に位置している。
【0023】
上述した上框22及び下框23は、それぞれグレイジングチャンネル1を配設した面材21の上下縁部を金属成形部22Mの第1横金属支持壁部22Mbと第2横金属支持壁部22Mcの間に配置するとともに、第2横金属支持壁部22Mcに樹脂成形部22Pを支持させることにより、面材21の上縁部及び下縁部に配設した状態となる。樹脂成形部22Pを支持させる場合には、横係合片部22Pcを横溝部22Mfに挿入した後、横フック部22Pdを第2横金属支持壁部22Mcに係合させれば良い。横係合片部22Pcを横溝部22Mfに挿入した状態で第2横金属支持壁部22Mcの基端部をかしめれば、横溝部22Mfから横係合片部22Pcが逸脱する事態を防止することができ、樹脂成形部22Pが金属成形部22Mから脱落するおそれがなくなる。同様に、縦框24は、それぞれグレイジングチャンネル1を配設した面材21の左右側縁部を金属成形部24Mの第1縦金属支持壁部24Mbと第2縦金属支持壁部24Mcの間に配置するとともに、第2縦金属支持壁部24Mcにそれぞれ樹脂成形部24Pを支持させることにより、面材21の両側縁部に配設した状態となる。
【0024】
面材21の四周に上框22、下框23及び左右の縦框24を配設した後においては、縦框24の縦金属基部24Maを介して上框22のビスホール22Me及び下框23のビスホール22MeにそれぞれネジSを螺合することにより、上框22、下框23及び左右の縦框24が互いに連結された状態となり、障子20を構成することが可能となる。
図1~
図3に示すように、本実施の形態では、上框22の樹脂成形部22P、下框23の樹脂成形部22P及び左右の縦框24の樹脂成形部24Pのもっとも内周側に位置する縁部が、それぞれ枠体10によって構成される開口部よりも外周側に位置するように構成してある。この障子20は、上框22と上枠11との間、下框23と下枠12との間にそれぞれフリクションステー2を介在させることにより、枠体10に対して開閉可能となるように支持してある。枠体10に対する障子20の位置は、障子20を閉じた際に、上框22の樹脂成形部22P、下框23の樹脂成形部22P及び左右の縦框24の樹脂成形部24Pのもっとも内周側に位置する縁部がいずれも枠体10を構成する上枠11、下枠12及び左右の縦枠13のもっとも内周側に位置する見込み面に対して突出しないように調整してある。これにより、建具を室内側から見た場合に、上框22、下框23、左右の縦框24を視認することが困難となり、外観品質の点で有利となるばかり、採光面積の割合を大きく確保することができる利点もある。
【0025】
上記のように構成した障子20では、上框22、下框23及び左右の縦框24のすべてにおいて、第2横金属支持壁部22Mc及び第2縦金属支持壁部24Mcの室内に臨む部分を覆うように樹脂成形部22P,24Pが配設されるため、断熱性の点で有利となる。これにより、例えば室内の温度に比べて室外の温度が低い場合にも室内に結露が生じる事態を防止することが可能になる。しかも、面材21の室外に臨む表面の縁部に対しては、金属成形部22M,24Mの第1横金属支持壁部22Mb及び第1縦金属支持壁部24Mbが覆うように配置され、かつ面材21の室内に臨む表面の縁部に対しては、第2横金属支持壁部22Mc及び第2縦金属支持壁部24Mcが覆うように配置される。これにより、大きな風圧に対しては、金属成形部22M,24Mによってこれに抗することができ、それぞれの樹脂成形部22P,24Pに対して大きな風圧に抗するだけの剛性を確保する必要がない。従って、樹脂成形部22P,24Pとしては、中空部を有している必要はなく、単に板状を成すものを適用することができる等、小型化を図ることができ、上框22、下框23、左右の縦框24それぞれの外形寸法を大型化することなく断熱性及び耐風圧性を向上させることが可能となる。
【0026】
さらに、障子20の各隅部においては、室外側において上框22の第1横金属支持壁部22Mb及び下框23の第1横金属支持壁部22Mbがそれぞれ縦框24の第1縦金属支持壁部24Mbと接合し、かつ室内側において上框22の第2横金属支持壁部22Mc及び下框23の第2横金属支持壁部22Mcがそれぞれ縦框24の第2縦金属支持壁部24Mcと接合した状態にある。このため、ビスホール22MeにそれぞれネジSを1本ずつ螺合しただけでも縦框24に対して上框22や下框23が長手を軸心として回転するおそれがなく、耐風圧性の点でより有利となる。
【0027】
また、実施の形態においては、上框22及び下框23の第1横金属支持壁部22Mbにおいて第2横金属支持壁部22Mcに対向する部分に熱膨張性部材30が配設してある。同様に、縦框24の第1縦金属支持壁部24Mbにおいて第2縦金属支持壁部24Mcに対向する部分に熱膨張性部材31が配設してある。熱膨張性部材30,31は、熱により膨張する不燃性または難燃性の耐火部材であり、第1横金属支持壁部22Mb及び第1縦金属支持壁部24Mbの長手に沿ったほぼ全長にわたる部分に連続して設けてある。熱膨張性部材30,31としては、例えば熱膨張性を有した黒鉛含有の発泡材を適用することができる。従って、火災発生時等のように高温に晒された場合には、樹脂成形部22P,24Pが溶融もしくは焼失することになるものの、膨張した熱膨張性部材30,31を第1横金属支持壁部22Mbと第2横金属支持壁部22Mcとの間及び第1縦金属支持壁部24Mbと第2縦金属支持壁部24Mcとの間おいてに充填させることができる。これにより、別途補強材を設けることなく、室内外に火炎の貫通口が生じる事態を防止することができ、防火性を向上させることが可能となる。なお、図中の符号32は、上框22及び下框23の横金属外周壁部22Mdにおいて室内に臨む見付け面に設けた熱膨張性部材であり、符号33は、上枠11及び下枠12において熱膨張性部材32に対向する部分に設けた熱膨張性部材、符号34は、縦枠13において縦枠金属内周板部13Mbの室外に臨む見付け面に設けた熱膨張性部材である。図には明示していないがこれらの熱膨張性部材32,33,34は、上框22、下框23、上枠11、下枠12のそれぞれに対して長手に沿ったほぼ全長にわたる部分に連続して設けてある。
【0028】
さらに、上框22及び下框23においては、金属成形部22Mの横金属基部22Maが略長方形の中空状を成すように構成してあり、その室内に臨む見付け面22Mgが樹脂成形部22Pよりも外周側において外部に露出している。従って、上框22や下框23に部品を取り付ける場合に、樹脂成形部22Pを除去する等の加工が不要であり、例えば障子20を開閉するための操作ハンドル3と下框23との間を連結する金属アームを下框23の金属成形部22Mに容易に、かつ確実に取り付けることができるようになる。
【0029】
なお、上述した実施の形態では、縦すべり出し窓を例示しているが、本発明はこれに限定されず、引き違い窓やFIX窓等、その他の建具にも適用することが可能である。この場合、必ずしも四周すべての形材(框や枠)に適用する必要はなく、少なくとも一つの形材に適用すれば良い。また、本発明の形材を障子の框として適用する場合には、枠体を構成する枠が必ずしも金属枠部と樹脂枠部とを備えている必要はない。さらに、実施の形態では、適所に熱膨張性部材を設けるようにしているが、必ずしも熱膨張性部材を設ける必要はない。
【0030】
以上のように、本発明に係る建具用形材は、金属によって成形された金属成形部と、樹脂によって成形された樹脂成形部との間に面材の縁部を挟むように支持する建具用の形材であって、前記金属成形部は、見込み方向に沿うように配置される金属基部と、前記金属基部の一方の縁部から内周側となる向きに延在することにより前記面材の一方の表面を覆うように配置される第1金属支持壁部と、前記金属基部の他方の縁部から内周側となる向きに延在することにより前記面材の他方の表面を覆うように配置される第2金属支持壁部とを有し、前記樹脂成形部は、前記第2金属支持壁部を覆うように前記金属成形部に支持されていることを特徴としている。
この発明によれば、面材の両方の表面に対して金属成形部の第1金属支持壁部及び第2金属支持壁部が覆うように配置されるため、樹脂成形部に対して大きな風圧に抗するだけの剛性を付与する必要がない。従って、樹脂成形部の小型化を図ることができ、外形寸法を大型化することなく断熱性及び耐風圧性を向上させることが可能となる。
【0031】
また本発明は、上述した建具用形材において、前記金属基部には、前記樹脂成形部よりも外周側となる部分に外部に露出する見付け面が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、形材の見付け面に部品を取り付けることが容易となる。この場合、必ずしも金属基部が中空部を有するように構成されている必要はなく、単に金属基部の縁部から見付け方向に沿って見付け面が設けられていれば十分である。
【0032】
また本発明は、上述した建具用形材において、前記第1金属支持壁部において前記第2金属支持壁部に対向する内表面に熱膨張性部材が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、高温に晒された場合、膨張した熱膨張性部材を第1金属支持壁部と第2金属支持壁部との間に充填させることができ、別途補強材を設けることなく防火性を向上させることが可能となる。
【0033】
また本発明は、上述した建具用形材において、前記樹脂成形部には、外周側となる縁部に前記第1金属支持壁部に向けて延在する係合片部が設けられ、前記第2金属支持壁部には、前記金属基部との間に前記係合片部が挿入可能となる溝部が設けられ、前記樹脂成形部は、前記溝部に前記係合片部を挿入した状態で内周側となる縁部を前記第2金属支持壁部に係合させることによって前記金属成形部に支持されていることを特徴としている。
この発明によれば、金属成形部に対して樹脂成形部を確実に装着することができる。
【0034】
また、本発明に係る建具は、障子を構成する縦框及び横框の少なくとも1つが、上述した建具用形材を適用していることを特徴としている。
この発明によれば、面材の両方の表面に対して金属成形部の第1金属支持壁部及び第2金属支持壁部が覆うように配置されるため、樹脂成形部に対して大きな風圧に抗するだけの剛性を付与する必要がない。従って、樹脂成形部の小型化を図ることができ、外形寸法を大型化することなく断熱性及び耐風圧性を向上させることが可能となる。
【0035】
また、本発明に係る建具は、障子を構成する2つの縦框及び2つの横框のいずれもが、上述した建具用形材を適用していることを特徴としている。
この発明によれば、四周において樹脂成形部の大型化を抑えることができ、同じ外形寸法の障子に対して採光面積を増大させることが可能となる等の利点がある。
【0036】
また本発明は、上述した建具において、前記横框の前記第1金属支持壁部及び前記第2金属支持壁部が、前記縦框の前記第1金属支持壁部と前記第2金属支持壁部との間に配置され、かつ前記第1金属支持壁部が相互に当接するとともに、前記第2金属支持壁部が相互に当接した状態で前記横框及び前記縦框が接合されていることを特徴としている。
この発明によれば、横框と縦框との接合部において第1金属支持壁部及び第2金属支持壁部がそれぞれ重ね合わされた状態となる。これにより、横框及び縦框が強固に接合されることになり、耐風圧性の点で有利となる。
【0037】
また本発明は、上述した建具において、前記横框を構成する建具用形材は、前記金属基部が中空状に構成され、前記金属基部の中空内部には、前記縦框との間を連結するためのネジが螺合されるビスホールが長手に沿って1つのみ設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、中空部の外形寸法を小さく抑えることができ、障子の小型化を図ることが可能となる。しかも、横框と縦框との接合部においては、第1金属支持壁部及び第2金属支持壁部がそれぞれ重ね合わされた状態となるため、1つのビスホールにのみネジを螺合させた場合にも、縦框に対して横框がネジの軸部を中心に回転する事態が招来される懸念もない。
【0038】
また本発明は、上述した建具において、前記樹脂成形部のもっとも内周側に位置する縁部が、枠体を構成する形材のもっとも内周側に位置する見込み面と同一、または前記枠体を構成する形材のもっとも内周側に位置する見込み面よりも外周側に位置するように、前記枠体に対して前記障子が配設されていることを特徴としている。
この発明によれば、障子を構成する横框や縦框を視認することが困難となり、外観品質の点で有利となる。
【符号の説明】
【0039】
10 枠体、11 上枠、12 下枠、13 縦枠、20 障子、21 面材、22 上框、22M,24M 金属成形部、22Ma 横金属基部、22Mb 第1横金属支持壁部、22Mc 第2横金属支持壁部、22Me ビスホール、22Mf 横溝部、22Mg 見付け面、22P,24P 樹脂成形部、23 下框、24 縦框、24Ma 縦金属基部、24Mb 第1縦金属支持壁部、24Mc 第2縦金属支持壁部、24Md 縦金属外周壁部、24Me 縦溝部、30,31 熱膨張性部材、S ネジ