(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005517
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】形状制御装置
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20240110BHJP
B64G 1/40 20060101ALI20240110BHJP
B06B 1/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B06B1/04 Z
B64G1/40 700
B06B1/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105723
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】高尾 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】森 治
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 秋人
(72)【発明者】
【氏名】武井 祥平
(72)【発明者】
【氏名】江川 主民
(72)【発明者】
【氏名】藤井 樹里
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107CC01
5D107CC10
(57)【要約】
【課題】膜状体を比較的長期間にわたって安定的に基準軸に沿う方向に振動させることができる形状制御装置を提供する。
【解決手段】形状制御装置2は、膜状体100を厚さ方向に見たときの中心部を保持する保持部13と、ロータリーソレノイド又は圧電素子を有し、保持部を厚さ方向に沿う基準軸O1に沿う方向に振動させる軸線駆動部12と、軸線駆動部を基準軸回りに回転させる回転駆動部35と、軸線駆動部及び回転駆動部を制御する制御部45と、を備え、制御部は、回転駆動部により軸線駆動部を基準軸回りに回転させつつ、軸線駆動部により保持部を基準軸に沿う方向に振動させながら、基準軸回りの所定の向きに保持部が配置されたときに、基準軸に沿う方向において、保持部が同じ位置に配置されるように軸線駆動部を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜状体を厚さ方向に見たときの中心部を保持する保持部と、
ロータリーソレノイド又は圧電素子を有し、前記保持部を前記厚さ方向に沿う基準軸に沿う方向に振動させる軸線駆動部と、
前記軸線駆動部を前記基準軸回りに回転させる回転駆動部と、
前記軸線駆動部及び前記回転駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記回転駆動部により前記軸線駆動部を前記基準軸回りに回転させつつ、前記軸線駆動部により前記保持部を前記基準軸に沿う方向に振動させながら、
前記基準軸回りの所定の向きに前記保持部が配置されたときに、前記基準軸に沿う方向において、前記保持部が同じ位置に配置されるように前記軸線駆動部を制御する、形状制御装置。
【請求項2】
前記軸線駆動部は、前記ロータリーソレノイドを有し、
前記軸線駆動部が前記保持部を回転させることにより、前記保持部における前記膜状体を保持する部分が前記基準軸に沿う方向に振動する、請求項1に記載の形状制御装置。
【請求項3】
前記保持部及び前記軸線駆動部の組を複数備え、
前記複数の軸線駆動部は、前記基準軸回りに並べて配置される、請求項1又は2に記載の形状制御装置。
【請求項4】
前記制御部が前記複数の軸線駆動部による前記保持部の振動を制御するのに用いる複数の制御波形は、互いに位相のみが異なる、請求項3に記載の形状制御装置。
【請求項5】
膜状体を厚さ方向に見たときの中心部を保持する保持部と、
ロータリーソレノイド又は圧電素子を有し、前記保持部を前記厚さ方向に沿う基準軸に沿う方向に振動させる軸線駆動部と、
前記軸線駆動部を前記基準軸回りに回転させる回転駆動部と、
前記軸線駆動部及び前記回転駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記回転駆動部により前記軸線駆動部を前記基準軸回りに回転させつつ、前記軸線駆動部により前記保持部を前記基準軸に沿う方向に振動させながら、
前記基準軸回りの所定の向きに前記保持部が配置されたときの前記保持部の前記基準軸に沿う方向の位置と、前記保持部がさらに前記基準軸回りに、1回転に加えて変位角度ずれた位置まで回転したときの前記保持部の前記基準軸に沿う方向の位置とが、互いに等しくなるように、前記軸線駆動部を制御する、形状制御装置。
【請求項6】
線状体の端部を保持する保持部と、
ロータリーソレノイド又は圧電素子を有し、前記保持部を基準軸に沿う方向に振動させる軸線駆動部と、
前記軸線駆動部を前記基準軸回りに回転させる回転駆動部と、
前記軸線駆動部及び前記回転駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記回転駆動部により前記軸線駆動部を前記基準軸回りに回転させつつ、前記軸線駆動部により前記保持部を前記基準軸に沿う方向に振動させながら、
前記基準軸回りの所定の向きに前記保持部が配置されたときに、前記基準軸に沿う方向において、前記保持部が同じ位置に配置されるように前記軸線駆動部を制御する、形状制御装置。
【請求項7】
線状体の端部を保持する保持部と、
ロータリーソレノイド又は圧電素子を有し、前記保持部を基準軸に沿う方向に振動させる軸線駆動部と、
前記軸線駆動部を前記基準軸回りに回転させる回転駆動部と、
前記軸線駆動部及び前記回転駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記回転駆動部により前記軸線駆動部を前記基準軸回りに回転させつつ、前記軸線駆動部により前記保持部を前記基準軸に沿う方向に振動させながら、
前記基準軸回りの所定の向きに前記保持部が配置されたときの前記保持部の前記基準軸に沿う方向の位置と、前記保持部がさらに前記基準軸回りに、1回転に加えて変位角度ずれた位置まで回転したときの前記保持部の前記基準軸に沿う方向の位置とが、互いに等しくなるように、前記軸線駆動部を制御する、形状制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、膜状体の形状を制御するのに、例えば、非特許文献1及び2に記載の形状制御装置が知られている。
形状制御装置では、ステッピングモータ(stepper motor)及びリンク機構を介して、膜状体を保持する保持部に接続されている。
形状制御装置の保持部により膜状体を保持した状態で、膜状体の中心部を基準軸に沿う方向に振動させるとともに、基準軸回りに回転させることにより、膜状体を所望の形状に変形させることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Bo Fu, Evan Sperber, Fidelis Eke “Solar sail technology-A state of the art review” Progress in Aerospace Sciences, 86(2016), p. 1-19
【非特許文献2】Yuki Takao, Osamu Mori, Masanori Matsushita, Nobukatsu Okuizumi, Yasutaka Satou, and Junichiro Kawaguchi "Active Shape Control of Membrane Structures Using Spin-Synchronous Vibrations", JOURNAL OF SPACECRAFT AND ROCKETS, Vol. 59, No. 1, January-February 2022
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1及び2に記載の形状制御装置では、リンク機構を構成する部材等が摺動する。このため、形状制御装置が損傷する場合がある。この場合には、形状制御装置を、例えば宇宙用に用いる場合等、数年等の比較的長期間にわたって使用するのが困難になる。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、膜状体又は線状体を比較的長期間にわたって安定的に基準軸に沿う方向に振動させることができる形状制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の態様1は、膜状体を厚さ方向に見たときの中心部を保持する保持部と、ロータリーソレノイド又は圧電素子を有し、前記保持部を前記厚さ方向に沿う基準軸に沿う方向に振動させる軸線駆動部と、前記軸線駆動部を前記基準軸回りに回転させる回転駆動部と、前記軸線駆動部及び前記回転駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記回転駆動部により前記軸線駆動部を前記基準軸回りに回転させつつ、前記軸線駆動部により前記保持部を前記基準軸に沿う方向に振動させながら、前記基準軸回りの所定の向きに前記保持部が配置されたときに、前記基準軸に沿う方向において、前記保持部が同じ位置に配置されるように前記軸線駆動部を制御する、形状制御装置である。
【0007】
この発明では、膜状体の中心部を保持部により保持した状態で、制御部は、回転駆動部により、保持部を移動させる軸線駆動部を基準軸回りに回転させる。すると、膜状体は、遠心力により基準軸に直交する方向に広がる。
このとき、制御部は、軸線駆動部により保持部を基準軸に沿う方向に振動させながら、基準軸回りの所定の向きに保持部が配置されたときに、基準軸に沿う方向において、保持部が同じ位置に配置されるように軸線駆動部を制御する。すると、慣性系において、基準軸回りに回転する膜状体全体としての形状が一定の形状になる。
軸線駆動部は、一般的に動作が安定しているロータリーソレノイド又は圧電素子を有し、例えばリンク機構を用いることなく保持部に直接接続されているため、膜状体を比較的長期間にわたって安定的に基準軸に沿う方向に振動させることができる。
【0008】
(2)本発明の態様2は、前記軸線駆動部は、前記ロータリーソレノイドを有し、前記軸線駆動部が前記保持部を回転させることにより、前記保持部における前記膜状体を保持する部分が前記基準軸に沿う方向に振動する、前記(1)に記載の形状制御装置であってもよい。
この発明では、ロータリーソレノイドにより保持部を長期間にわたって安定的に回転させることができる。これにより、膜状体の形状を比較的長期間にわたって安定的に基準軸に沿う方向に振動させることができる。
【0009】
(3)本発明の態様3は、前記保持部及び前記軸線駆動部の組を複数備え、前記複数の軸線駆動部は、前記基準軸回りに並べて配置される、前記(1)又は(2)に記載の形状制御装置であってもよい。
この発明では、複数の軸線駆動部及び複数の保持部により、膜状体の形状を、所望の形状により近い形状に制御することができる。
【0010】
(4)本発明の態様4は、前記制御部が前記複数の軸線駆動部による前記保持部の振動を制御するのに用いる複数の制御波形は、互いに位相のみが異なる、前記(3)に記載の形状制御装置であってもよい。
この発明では、制御部が複数の軸線駆動部を制御するのに必要な複数の制御波形を、比較的簡単に作ることができる。
【0011】
(5)本発明の態様5は、膜状体を厚さ方向に見たときの中心部を保持する保持部と、ロータリーソレノイド又は圧電素子により構成され、前記保持部を前記厚さ方向に沿う基準軸に沿う方向に振動させる軸線駆動部と、前記軸線駆動部を前記基準軸回りに回転させる回転駆動部と、前記軸線駆動部及び前記回転駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記回転駆動部により前記軸線駆動部を前記基準軸回りに回転させつつ、前記軸線駆動部により前記保持部を前記基準軸に沿う方向に振動させながら、前記基準軸回りの所定の向きに前記保持部が配置されたときの前記保持部の前記基準軸に沿う方向の位置と、前記保持部がさらに前記基準軸回りに、1回転に加えて変位角度ずれた位置まで回転したときの前記保持部の前記基準軸に沿う方向の位置とが、互いに等しくなるように、前記軸線駆動部を制御する、形状制御装置である。
【0012】
この発明では、膜状体の中心部を保持部により保持した状態で、制御部は、回転駆動部により、保持部を移動させる軸線駆動部を基準軸回りに回転させる。すると、膜状体は、遠心力により基準軸に直交する方向に広がる。
このとき、制御部は、軸線駆動部により保持部を基準軸に沿う方向に振動させながら、軸線駆動部を以下のように制御する。すなわち、基準軸回りの所定の向きに保持部が配置されたときの保持部の基準軸に沿う方向の位置と、保持部がさらに基準軸回りに、1回転に加えて変位角度ずれた位置まで回転したときの保持部の基準軸に沿う方向の位置とが、互いに等しくなるように、軸線駆動部を制御する。すると、慣性系において、基準軸回りに回転する膜状体全体としての形状が、一定の形状を保ちつつ、基準軸回りに所定の速度で回転する。
軸線駆動部は、一般的に動作が安定しているロータリーソレノイド又は圧電素子を有し、例えばリンク機構を用いることなく保持部直接に接続されているため、膜状体を比較的長期間にわたって安定的に基準軸に沿う方向に振動させることができる。
【0013】
(6)本発明の態様6は、線状体の端部を保持する保持部と、ロータリーソレノイド又は圧電素子を有し、前記保持部を基準軸に沿う方向に振動させる軸線駆動部と、前記軸線駆動部を前記基準軸回りに回転させる回転駆動部と、前記軸線駆動部及び前記回転駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記回転駆動部により前記軸線駆動部を前記基準軸回りに回転させつつ、前記軸線駆動部により前記保持部を前記基準軸に沿う方向に振動させながら、前記基準軸回りの所定の向きに前記保持部が配置されたときに、前記基準軸に沿う方向において、前記保持部が同じ位置に配置されるように前記軸線駆動部を制御する、形状制御装置である。
【0014】
この発明では、線状体の端部を保持部により保持した状態で、制御部は、回転駆動部により、保持部を移動させる軸線駆動部を基準軸回りに回転させる。すると、線状体は、遠心力により基準軸に直交する方向に広がる。
このとき、制御部は、軸線駆動部により保持部を基準軸に沿う方向に振動させながら、基準軸回りの所定の向きに保持部が配置されたときに、基準軸に沿う方向において、保持部が同じ位置に配置されるように軸線駆動部を制御する。すると、慣性系において、基準軸回りに回転する線状体の軌跡が一定の形状になる。
軸線駆動部は、一般的に動作が安定しているロータリーソレノイド又は圧電素子を有し、例えばリンク機構を用いることなく保持部に直接接続されているため、線状体を比較的長期間にわたって安定的に基準軸に沿う方向に振動させることができる。
【0015】
(7)本発明の態様7は、線状体の端部を保持する保持部と、ロータリーソレノイド又は圧電素子を有し、前記保持部を基準軸に沿う方向に振動させる軸線駆動部と、前記軸線駆動部を前記基準軸回りに回転させる回転駆動部と、前記軸線駆動部及び前記回転駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記回転駆動部により前記軸線駆動部を前記基準軸回りに回転させつつ、前記軸線駆動部により前記保持部を前記基準軸に沿う方向に振動させながら、前記基準軸回りの所定の向きに前記保持部が配置されたときの前記保持部の前記基準軸に沿う方向の位置と、前記保持部がさらに前記基準軸回りに、1回転に加えて変位角度ずれた位置まで回転したときの前記保持部の前記基準軸に沿う方向の位置とが、互いに等しくなるように、前記軸線駆動部を制御する、形状制御装置である。
【0016】
この発明では、線状体の端部を保持部により保持した状態で、制御部は、回転駆動部により、保持部を移動させる軸線駆動部を基準軸回りに回転させる。すると、線状体は、遠心力により基準軸に直交する方向に広がる。
このとき、制御部は、軸線駆動部により保持部を基準軸に沿う方向に振動させながら、軸線駆動部を以下のように制御する。すなわち、基準軸回りの所定の向きに保持部が配置されたときの保持部の基準軸に沿う方向の位置と、保持部がさらに基準軸回りに、1回転に加えて変位角度ずれた位置まで回転したときの保持部の基準軸に沿う方向の位置とが、互いに等しくなるように、軸線駆動部を制御する。すると、慣性系において、基準軸回りに回転する線状体の軌跡の形状が、一定の形状を保ちつつ、基準軸回りに所定の速度で回転する。
軸線駆動部は、一般的に動作が安定しているロータリーソレノイド又は圧電素子を有し構成され、例えばリンク機構を用いることなく保持部に直接接続されているため、線状体を比較的長期間にわたって安定的に基準軸に沿う方向に振動させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の形状制御装置では、膜状体又は線状体を比較的長期間にわたって安定的に基準軸に沿う方向に振動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態の形状制御装置が用いられる宇宙機の、一部を模式的に示す斜視図である。
【
図2】同形状制御装置における軸線駆動ユニットの斜視図である。
【
図3】CPUが発生するクロック信号及び制御波形のタイミングチャートの一例を示す図である。
【
図5】同形状制御装置により膜状体の形状を制御した実験における写真である。
【
図8】本発明の第1実施形態の変形例における形状制御装置の要部を示す図である。
【
図9】同形状制御装置においてフラップを変形させた要部を示す図である。
【
図10】本発明の第2実施形態の形状制御装置が用いられる宇宙機の、一部を模式的に示す斜視図である。
【
図11】線状体に対して規定されるx軸及びz軸を説明する図である。
【
図12】線状体の微小線要素に作用する力の釣り合い条件を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る形状制御装置の第1実施形態が用いられる宇宙機を、
図1から
図9を参照しながら説明する。
【0020】
〔1.1.第1実施形態の形状制御装置が用いられた宇宙機の構成〕
図1に示すように、本実施形態の形状制御装置2は、例えばソーラーセイル(太陽帆)等の宇宙機1用の構体(本体)3に取付けて用いられる。形状制御装置2は、膜状体100を所望の形状に制御するための装置である。なお、
図1において、膜状体100を二点鎖線で示している。
ここで、外力が作用しない自然状態での(平坦な形状にした)膜状体において、最も短い寸法となる方向を最短方向と言う。最短方向に直交する方向を、直交方向と言う。例えば、ここで言う膜状体とは、最短方向の長さに対して、直交方向の長さの最小値が10倍以上である形状を意味する。
【0021】
例えば、膜状体100は、ポリイミド樹脂で、円環のフィルム状に形成されている。
形状制御装置2は、複数の軸線駆動ユニット10と、回転駆動部35と、制御部45と、を備える。
【0022】
図2に示すように、軸線駆動ユニット10は、フレーム11と、軸線駆動部12と、フラップ(保持部)13と、を有する。
フレーム11は、側面視でC字状である。フレーム11は、側壁17と、天壁18と、底壁19と、を有する。側壁17、天壁18、及び底壁19は、それぞれ板状である。側壁17には、図示しない複数の雌メネジが形成されている。例えば、複数の雌メネジは、マトリクス状に配置されている。側壁17には、符号を省略した貫通孔が形成されている。
天壁18及び底壁19は、側壁17における幅方向の各端縁から、側壁17の厚さ方向に延びている。天壁18及び底壁19は、互いに対向するように配置されている。
【0023】
側壁17における天壁18及び底壁19が延びる側とは反対側の面17aには、円筒状のストッパ20が複数取付けられている。ストッパ20には、図示しない雄ネジが設けられている。この雄ネジが側壁17の雌メネジに嵌め合うことで、側壁17にストッパ20が着脱可能に取付けられている。ストッパ20は、側壁17に取付けられる位置を調整可能である。
なお、軸線駆動ユニットがモータ等を備えることにより、側壁17に対してストッパ20が自動的に移動できてもよい。
【0024】
この例では、軸線駆動部12は、ロータリーソレノイドを有する。言い換えれば、軸線駆動部12は、ロータリーソレノイドのみで構成され、リンク機構を有さない。軸線駆動部12は、公知の構成である。例えば、軸線駆動部12は、ケース23と、コイル(不図示)と、シャフト24と、一対の配線25と、を有する。
ケース23は、側壁17における面17aとは反対側の面17bにおいて、天壁18と底壁19との間に固定されている。コイルは、ケース23に収容されている。
シャフト24の第1端部は、コイル内に配置されている。シャフト24における第1端部とは反対側の第2端部は、ケース23から突出している。この第2端部は、側壁17の貫通孔を通して、側壁17の面17aから突出している。
【0025】
一対の配線25は、コイルの各端部にそれぞれ接続されている。一対の配線25は、側壁17の貫通孔を通して、側壁17の面17aから突出している。
【0026】
図2に示すように、フラップ13は、本体28と、一対の腕部29と、を有する。
本体28は、棒状である。本体28は、側壁17の面17aに沿って配置されている。本体28の第1端部(符号省略)は、シャフト24の第2端部に直接固定されている。本体28における第1端部とは反対側の第2端部28b(フラップ13における膜状体100を保持する部分)は、側壁17から突出している。
一対の腕部29は、本体28の第1端部に固定されている。例えば、一対の腕部29は、鈍角をなしている。一対の腕部29における鈍角をなす側の間に、複数のストッパ20が配置されている。複数のストッパ20に一対の腕部29が係止することにより、シャフト24周りのフラップ13の回動範囲が規制されている。
シャフト24が回転することにより、フラップ13の第2端部28bは、後述する基準軸O1に沿う方向に振動する。
なお、一対の腕部29がなす角度は、鈍角に限定されない。一対の腕部29がなす角度は、複数のストッパ20の配置等に応じて、適宜設定される。
【0027】
回転駆動部35は、複数の軸線駆動ユニット10(軸線駆動部12)を、後述する基準軸O1回りに回転させる。
図1に示すように、例えば、回転駆動部35は、取付け部材36と、軸部37と、複数のスラスタ38A,38Bと、を有する。
取付け部材36は円板状であり、軸部37は棒状である。取付け部材36及び軸部37それぞれの中心軸は、共通軸と同軸に配置されている。以下では、共通軸を基準軸O1と言う。形状制御装置2を基準軸O1に沿う方向から見て、基準軸O1に直交する方向を径方向と言い、基準軸O1回りに周回する方向を周方向と言う。
【0028】
取付け部材36の外周縁には、複数の軸線駆動ユニット10のフレーム11が固定されている。複数の軸線駆動ユニット10(軸線駆動部12)は、基準軸O1回りに並べて配置されている。複数の軸線駆動ユニット10のフラップ13の第2端部28bは、取付け部材36から径方向外側に向かって突出するように配置されている。
複数の軸線駆動ユニット10は、基準軸O1回りに等角度ごとに配置されていることが好ましい。
以下では、複数の軸線駆動ユニット10を区別して言うときには、基準軸O1回りに軸線駆動ユニット10A,10B,10C,‥と言う場合がある。
【0029】
膜状体100の内周縁は、フラップ13の第2端部28bに固定されている。フラップ13は、基準軸O1に沿う方向に見たときの膜状体100の中心部を保持する。
基準軸O1は、平坦な状態のときの膜状体100の厚さ方向に沿う。平坦な状態のときの膜状体100の厚さ方向は、基準軸O1に沿う方向である。
軸線駆動部12がフラップ13をシャフト24回りに回転させると、フラップ13の第2端部28bは基準軸O1に沿う方向に振動する。
【0030】
図1に示すように、軸部37は、小径部37aと、大径部37bと、を有する。小径部37aの第1端部は、取付け部材36に固定されている。大径部37bの外径は、小径部37aの外径よりも大きい。大径部37bは、小径部37aの第1端部に、小径部37aと同軸に固定されている。
例えば、複数のスラスタ38A,38Bは、燃料であるヒドラジンと酸化剤である四酸化二窒素を、ヘリウムガスで勢いよく押し出し混合する。そして、これらを燃焼させて燃焼ガスを噴射することにより、推力を発生させる。
複数のスラスタ38A,38Bは、形状制御装置2が取付けられる構体3の、後述するフレーム60に固定されている。
複数のスラスタ38Aは、燃焼ガスを噴射することにより、構体3を介して複数の軸線駆動ユニット10(軸線駆動部12)を、基準軸O1回りの第1側D1に回転させる。一方で、複数のスラスタ38Bは、燃焼ガスを噴射することにより、構体3を介して複数の軸線駆動ユニット10を、基準軸O1回りにおける第1側D1とは反対側の第2側D2に回転させる。
【0031】
制御部45は、主制御部45aと、複数の駆動制御部45bと、を有する。主制御部45aは、CPU(Central Processing Unit)46と、メモリ47と、通信部48と、電力供給部49と、を有する。CPU46、メモリ47、通信部48、及び電力供給部49は、バス50により互いに接続されている。
CPU46は、
図3に示すクロック信号S
CLK、及び制御波形(D信号)S
D_Aを発生する。なお、
図3において、横軸は時間tを表し、縦軸は、クロック信号S
CLK、及び制御波形S
D_A,S
D_B,S
D_Cが変化するタイミングを表す。制御波形S
D_A,S
D_B,S
D_Cを区別しないで言うときには、制御波形S
Dとも言う。制御波形S
D及びクロック信号S
CLKは、それぞれデジタル信号である。
クロック信号S
CLKにおける立ち上がりの時間差△tは、周方向に隣り合う軸線駆動部12のコイルに入力される制御波形S
Dの位相差に対応する。
【0032】
CPU46(制御部45)は、後述する観察部61の観察結果に基づいて、複数の駆動制御部45bを制御する。
メモリ47は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read Only Memory)等である。メモリ47には、CPU46を制御するための制御プログラム等が記憶されている。
通信部48は、有線通信等により構体3の後述する機構制御部と通信する。電力供給部49は、CPU46、メモリ47、通信部48、及び複数の駆動制御部45bにそれぞれ電力を供給する。
【0033】
図1に示すように、それぞれの駆動制御部45bは、軸線駆動ユニット10のフレーム11に固定されている。以下では、軸線駆動ユニット10A,10B,10C,‥のフレーム11に固定されている駆動制御部45bを、駆動制御部45bA,45bB,45bC,‥とも言う。複数の駆動制御部45bの構成は、互いに等しい、以下では、複数の駆動制御部45bのうち、駆動制御部45bAについて説明する。
【0034】
図2及び
図4に示すように、駆動制御部45bAは、基板52と、論理回路53と、フルブリッジ54と、第1コネクタ55aと、第2コネクタ55bと、第3コネクタ55cと、を有する。
基板52には、論理回路53、フルブリッジ54、コネクタ55a,55b,55cが設けられている。
例えば、論理回路53は、公知のDフリップフロップである。論理回路53は、D端子、CLK端子、Q端子を有する。コネクタ55aは、論理回路53のD端子及びCLK端子に接続されている。コネクタ55bは、論理回路53のCLK端子及びQ端子に接続されている。
【0035】
図1に示すように、駆動制御部45bAのコネクタ55aは、配線56を介してCPU46の出力ポートに接続されている。論理回路53のD端子、CLK端子には、コネクタ55aを介して、CPU46から送られる制御波形S
D_A、クロック信号S
CLKが入力される。なお、コネクタ55aには、電力供給部49から電力が供給される。
論理回路53は、制御波形S
D_A、クロック信号S
CLKに基づいて、Q端子から制御波形S
D_Bを出力する。
フルブリッジ54は、論理回路53のQ端子に接続されている。フルブリッジ54は、入力された制御波形S
D_Bに基づいて、アナログ信号を出力する。フルブリッジ54の出力ポートには、コネクタ55cが接続されている。コネクタ55cは、配線57を介して、軸線駆動ユニット10Aの一対の配線25に接続されている。
駆動制御部45bAのフルブリッジ54が出力するアナログ信号は、コネクタ55c、及び配線57を介して、軸線駆動ユニット10Aのコイルに印加される。
【0036】
駆動制御部45bAのコネクタ55bと駆動制御部45bBのコネクタ55aとは、配線58により互い接続されている。なお、駆動制御部45bAのコネクタ55bからは電力が出力され、この電力は、配線58を介して、駆動制御部45bBのコネクタ55aに入力される。
駆動制御部45bB及び駆動制御部45bC、駆動制御部45bC及び駆動制御部45bD、‥も、駆動制御部45bA及び駆動制御部45bBと同様に接続される。
駆動制御部45bBの論理回路53は、制御波形SD_B、クロック信号SCLKに基づいて、Q端子から制御波形SD_Cを出力する。駆動制御部45bBのフルブリッジ54は、入力された制御波形SD_Cに基づいて、軸線駆動ユニット10Bのコイルにアナログ信号を出力する。
【0037】
以上説明したように、複数の軸線駆動ユニット10のうち、制御部45のCPU46に接続される軸線駆動ユニット10は、軸線駆動ユニット10Aのみである。そして、形状制御装置2が備える軸線駆動ユニット10の数が変化しても、CPU46の出力ポートの数を変化させる必要がなく、対応が容易である。
以上のように、制御部45が複数の軸線駆動部12によるフラップ13の振動を制御するのに用いる複数の制御波形SDは、互いに位相のみが異なる場合がある(以下では、この制御を、位相制御と言う)。
【0038】
軸線駆動ユニット10の軸線駆動部12は、コイルの第1端部に正の電位が印加されるとともに、コイルの第1端部とは反対側の第2端部に負の電位が印加される第1印加状態になる。また、軸線駆動ユニット10の軸線駆動部12は、コイルの第1端部に負の電位が印加されるとともに、コイルの第2端部に正の電位が印加される第2印加状態になる。
このように、本実施形態では、軸線駆動ユニット10の軸線駆動部12は、第1印加状態と第2印加状態とに切り替えて制御される。
【0039】
以上のように、形状制御装置2は、フラップ13及び軸線駆動部12を有する軸線駆動ユニット10を複数備える。形状制御装置2は、フラップ13及び軸線駆動部12の組を複数備えている。
なお、形状制御装置2が備える軸線駆動ユニット10の数は、3つ以上であることが好ましい。3つの軸線駆動ユニット10のフラップ13により、膜状体100を保持する平面が、一意に規定される。
【0040】
図1に示すように、例えば、構体3は、フレーム60と、観察部61と、図示しない無線通信部と、機構制御部と、発電部と、を有する。
フレーム60は、構体3の外形を構成する。無線通信部、及び機構制御部は、フレーム60に内蔵されている。
観察部61は、カメラ等を有する。観察部61は、宇宙機1の周囲の状態を観察する。無線通信部は、地球上に設置された指令装置との間で、無線通信により信号のやりとりを行う。
機構制御部は、観察部及び無線通信部を制御するとともに、形状制御装置2の制御部45と有線通信により信号のやりとりを行う。
発電部は、太陽電池等を有し、フレーム60の外部に配置された状態でフレーム60に固定されている。発電部は、観察部61、無線通信部、及び機構制御部、形状制御装置2の電力供給部49にそれぞれ電力を供給する。
【0041】
〔1.2.膜状体が保持される場合の形状制御装置の制御方法〕
この制御方向は、公知の方法であり、例えば、下記の文献1に開示されている。
文献1:高尾勇輝,森治,松下将典,奥泉信克,佐藤泰貴,川口淳一郎、「展開型薄膜構造物のアクティブ励振による形状制御システムとその地上実証実験」、宇宙科学技術連合講演会講演集、2020年、64th。
以下に、この文献1の概要のみを、形状制御装置2に適用させて説明する。
【0042】
膜状体100を、基準軸O1回りに回転させつつ基準軸O1に沿う方向に振動させると、膜状体100全体を所望の形状にすることができる。基準軸O1に沿う方向に振動させて膜状体100に励起させた波の伝播を、基準軸O1回りの回転で相殺することにより、慣性系における膜状体100の波形を疑似的に静止させることができる。以下では、慣性系において静止した膜状体100の波形を、定在波と言う。
一方で、慣性系において、時間とともに膜状体100全体の形状が基準軸O1回りに変化する膜状体100の波形を、準定在波と言う。
【0043】
なお、以下に説明する長さ等の単位には、長さに対しては「m」といった、SI単位が好ましく用いられる。
膜状体100の基準軸O1回りの回転速度(スピンレート)を、Ωと規定する。膜状体100とともに回転する円筒座標系r-θ-zを規定する。膜状体100の微小量dμの時刻tにおけるz方向の変位を、w(r,θ,t)と規定する。膜状体100に対する単位面積あたりの入力を、f(r,θ,t)と規定する。このとき、反スピン方向に伝播する後退波だけを励起して定在波を形成する条件は、(1)式で与えられる。
【0044】
【0045】
このときに、慣性系で現れる波形は、慣性系に固定された円筒座標系r-φ-zへの座標変換φ=θ+Ωtによって、(2)式で得られる。
ただし、r^(記号「r」の上方に「^」の記号)を、(r/rb)と規定する。ただし、rbは、膜状体100の外径の半径である。φは、慣性空間における方位角である。
このとき、変位wは、(3)式を用いて(2)式のように表される。
【0046】
【0047】
回転数v0は、+φ方向への波の伝播速度、すなわち定在波の位相変化率を表す。従って、周波数ω0の入力に対しては、回転数v0で位相がシフトし、慣性系において膜状体100が準定在波となる。一方で、ω0=m0Ω、つまり周波数ω0が回転速度Ωの整数m0倍のときに、慣性系において膜状体100が定在波となる。
【0048】
なお、(1)式で表される入力f(r,θ,t)に基づいて複数の軸線駆動部12の第1印加状態と第2印加状態とを切り替えるには、以下のように処理する。
すなわち、例えば、入力f(r,θ,t)が正(0以上)のときに軸線駆動部12を第1印加状態にし、入力f(r,θ,t)が負のときに軸線駆動部12を第2印加状態にする。
【0049】
膜状体100の波形を定在波にするために、(1)式及び(2)式に基づいて、制御部45は、例えば以下のように制御する。
すなわち、制御部45は、慣性系において、回転駆動部35により軸線駆動部12を基準軸O1回りの所定の向きに回転させつつ、複数の軸線駆動部12によりフラップ13を基準軸O1に沿う方向に振動させる(以下では、この制御を、基本回転・振動制御と言う)。基本回転・振動制御を行いながら、制御部45は、慣性系において、基準軸O1回りの所定の向きにフラップ13の第2端部28bが配置されたときに、基準軸O1回りの膜状体100の回転数によらず、基準軸O1に沿う方向において、フラップ13の第2端部28bが同じ位置に配置されるように軸線駆動部12を制御する(以下では、この制御を、所定の向きに対する同一位置制御と言う)。
制御部45は、複数の軸線駆動部12それぞれに対して、慣性系において、基準軸O1回りの所定の向きにフラップ13の第2端部28bが配置されたときに、基準軸O1回りの膜状体100の回転数によらず、基準軸O1に沿う方向において、フラップ13の第2端部28bが同じ位置に配置されるように軸線駆動部12を制御することが好ましい。
【0050】
例えば、制御部45は、軸線駆動ユニット10Aに対して周方向の位置が異なる(円筒座標系で位置θずれた)軸線駆動ユニット10に対しては、(1)式に基づいて位相制御等を行う。
【0051】
一方で、膜状体100の波形を準定在波にするために、制御部45は、例えば以下のように制御する。
すなわち、前記基本回転・振動制御を行いながら、制御部45は、慣性系において、基準軸O1回りの所定の向きにフラップ13が配置されたときのフラップ13の第2端部28bの基準軸O1に沿う方向の位置と、フラップ13がさらに基準軸O1回りに、1回転に加えて変位角度ずれた位置まで回転したときのフラップ13の第2端部28bの基準軸O1に沿う方向の位置とが、互いに等しくなるように、軸線駆動部12を制御する(以下では、この制御を、ずれた位置に対する同一位置制御と言う)。ここで、変位角度は、例えば、予め定められる-180°以上180°未満の角度である。
制御部45は、複数の軸線駆動部12それぞれに対して、前記ずれた位置に対する同一位置制御を行うことが好ましい。例えば、制御部45は前記位相制御を行うことが好ましい。
【0052】
〔1.3.実験結果〕
前記形状制御装置2を用いて、地球上の大気圧下で実験を行った結果について説明する。この場合、膜状体100はポリエチレン樹脂で形成されることが好ましい。
図5に示すように、形状制御装置2により形状を制御された膜状体100には、慣性系において、2つの山部101と、2つの谷部102(1つの谷部102は不図示)とが形成される。山部101では、膜状体100が、基準軸O1に沿う方向の第1側に向かって突出している。谷部102では、膜状体100が、基準軸O1に沿う方向の第1側とは反対側の第2側に向かって突出している。
【0053】
〔1.4.宇宙機の動作〕
次に、以上のように構成された宇宙機1の動作について説明する。
図6に示すように、予め、宇宙機1が太陽110の回りの軌道111上を、矢印A1の向きに公転していると仮定する。構体3の発電部は、太陽110から発せられた太陽光L1により発電する。発電部は、観察部61、無線通信部、及び機構制御部、形状制御装置2の電力供給部49にそれぞれ電力を供給する。
観察部61は、宇宙機1の周囲の状態を観察する。これにより、宇宙機1の基準軸O1回りの回転速度を測定する。
【0054】
このとき、地球上の操作者は、宇宙機1を軌道111の外側に移動させたいと考えたと仮定する。宇宙機1の膜状体100には、太陽光L1が作用する。
この場合には、操作者は、指令装置を操作して、宇宙機1に向かって無線通信により信号を発する。宇宙機1の無線通信部がこの信号を受けると、信号は、機構制御部を介して形状制御装置2の制御部45に送られる。
【0055】
制御部45は、回転駆動部35により複数の軸線駆動部12を基準軸O1回りに回転させるとともに複数の軸線駆動部12により複数のフラップ13を基準軸O1に沿う方向に振動させる。そして、膜状体100の形状を、平坦でない所定の形状に変形させる。すると、膜状体100の基準軸O1回り(周方向)の位置により、太陽光L1により作用する力が変化し、宇宙機1の向きが変わる。
制御部45は、太陽110に対いて外側を向く基準軸O1が矢印A1の向きに傾くようにする。すると、膜状体100は、太陽光L1により矢印A2の向きに力を受け、宇宙機1は、軌道111の外側の、二点鎖線L5に示す位置に移動する。
【0056】
一方で、地球上の操作者は、宇宙機1を軌道111の内側に移動させたいと考えたと仮定する。この場合も、操作者により発せられた信号を受けると、制御部45は、宇宙機1の向きを変える。そして、
図7に示すように、制御部45は、太陽110に対いて外側を向く基準軸O1が矢印A1とは反対側の向きに傾くようにする。すると、膜状体100は、太陽光L1により矢印A3の向きに力を受け、宇宙機1は、軌道111の内側の、二点鎖線L6に示す位置に移動する。
【0057】
以上のように、太陽110に対する膜状体100の向きを制御することにより、宇宙機1を移動させる向きを変えることができる。例えば、宇宙機1の基準軸O1回りの回転速度を調節する場合には、制御部45は、回転駆動部35の複数のスラスタ38A,38Bにより適宜推力を発生させる。
そして、例えば、宇宙機1は、宇宙デブリ(debris:ゴミ)の捕獲や、小天体のサンプルを採取することができる。
なお、宇宙機1が自律的に、宇宙機1を移動させる向きを変えるように構成してもよい。具体的には、構体3の観察部が、宇宙空間における宇宙機1の位置を検出する。形状制御装置2の制御部45のメモリ47等には、予め宇宙機1の目標軌道が記憶されている。
制御部45は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)等の機能により、目標軌道に対する、検出した宇宙機1の位置から求めた実際の軌道のズレを算出する。そして、算出したズレに基づいて膜状体100の形状を変化させ、宇宙機1が目標軌道上に位置するように、自律的に制御してもよい。
【0058】
〔1.5.本実施形態の効果〕
以上説明したように、本実施形態の形状制御装置2では、制御部45は、例えば膜状体100の波形を定在波にする。すなわち、膜状体100の中心部を複数のフラップ13により保持した状態で、制御部45は、回転駆動部35により、複数のフラップ13を移動させる複数の軸線駆動部12を基準軸O1回りに回転させる。すると、膜状体100は、遠心力により基準軸O1に直交する方向に広がる。
このとき、制御部45は、複数の軸線駆動部12により複数のフラップ13を基準軸O1に沿う方向に振動させながら、基準軸O1回りの所定の向きにフラップ13が配置されたときに、基準軸O1に沿う方向において、フラップ13が同じ位置に配置されるように軸線駆動部12を制御する。すると、慣性系において、基準軸O1回りに回転する膜状体100全体としての形状が一定の形状になる。
複数の軸線駆動部12は、一般的に動作が安定しているロータリーソレノイドを有し、例えばリンク機構を用いることなくフラップ13に直接接続されているため、膜状体100を比較的長期間にわたって安定的に基準軸O1に沿う方向に振動させることができる。
【0059】
軸線駆動部12はロータリーソレノイドを有し、軸線駆動部12がフラップ13を回転させることにより、フラップ13の第2端部28bが基準軸O1に沿う方向に振動する。このため、ロータリーソレノイドによりフラップ13を長期間にわたって安定的に回転させることができる。これにより、膜状体100の形状を比較的長期間にわたって安定的に基準軸O1に沿う方向に振動させることができる。
形状制御装置2はフラップ13及び軸線駆動部12の組を複数備え、複数の軸線駆動部12は基準軸O1回りに並べて配置される。従って、複数の軸線駆動部12及び複数のフラップ13により、膜状体100の形状を、所望の形状により近い形状に制御することができる。
【0060】
制御部45が複数の軸線駆動部12によるフラップ13の振動を制御するのに用いる複数の制御波形SDは、互いに位相のみが異なる場合がある。この場合には、制御部45が複数の軸線駆動部12を制御するのに必要な複数の制御波形SDを、比較的簡単に作ることができる。
【0061】
制御部45は、膜状体100の波形を準定在波にしてもよい。すなわち、前記基本回転・振動制御を行いながら、制御部45は、慣性系において、基準軸O1回りの所定の向きにフラップ13が配置されたときのフラップ13の第2端部28bの基準軸O1に沿う方向の位置と、フラップ13がさらに基準軸O1回りに、1回転に加えて変位角度ずれた位置まで回転したときのフラップ13の第2端部28bの基準軸O1に沿う方向の位置とが、互いに等しくなるように、軸線駆動部12を制御してもよい。
この場合には、慣性系において、基準軸O1回りに回転する膜状体100全体としての形状が、一定の形状を保ちつつ、基準軸O1回りに所定の速度で回転する。
軸線駆動部12は、一般的に動作が安定しているロータリーソレノイドを有し、例えばリンク機構を用いることなくフラップ13に直接接続されているため、膜状体100の形状を比較的長期間にわたって安定的に基準軸O1に沿う方向に振動させることができる。
【0062】
なお、
図8に示すように、形状制御装置2Aの軸線駆動部62は、複数(本実施形態では一対)の圧電素子(ピエゾ素子)62a,62bにより構成されてもよい。この場合、例えば、圧電素子62aは、フラップ13の基準軸O1に沿う方向の第1側に固定される。圧電素子62bは、フラップ13の基準軸O1に沿う方向における第1側とは反対側の第2側に固定される。
例えば、制御部が、圧電素子62a,62bに電力を印加すると、圧電素子62a,62bがフラップ13の長手方向に縮む。
制御部が圧電素子62aのみに電力を印加すると、フラップ13の第2端部28bが基準軸O1に沿う方向の第1側に移動する。一方で、制御部が圧電素子62bのみに電力を印加すると、
図9に示すように、フラップ13の第2端部28bが基準軸O1に沿う方向の第2側に移動する。制御部が圧電素子62a,62bに交互に電力を印加することにより、フラップ13の第2端部28bが基準軸O1に沿う方向に振動する。
なお、軸線駆動部に用いられる圧電素子の数は、限定されない。
【0063】
一対の圧電素子を互いに直接貼り付けて構成されるピエゾベンダーにより、フラップ13を直接保持してもよい。
【0064】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図10から
図12を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0065】
〔2.1.第2実施形態の形状制御装置が用いられた宇宙機の構成〕
図10に示すように、本実施形態の形状制御装置4は、例えばソーラーセイル等の宇宙機5用の構体3に取付けて用いられる。形状制御装置4は、複数の線状体115を所望の形状に制御するための装置である。なお、
図10において、複数の線状体115を二点鎖線で示している。
ここで、外力が作用しない自然状態での(平坦な形状にした)線状体において、最も長い寸法となる方向を最長方向と言い、最も短い寸法となる方向を最短方向と言う。最長方向及び最短方向にそれぞれ直交する方向を、直交方向と言う。例えば、ここで言う線状体とは、最短方向の長さに対して直交方向の長さが1倍以上10倍未満であり、直交方向の長さに対して最長方向の長さが2倍以上である形状を意味する。線状体には、いわゆる帯状の物体(帯状体)も含む。
【0066】
例えば、線状体115は、ポリイミド樹脂で線状に形成されている。例えば、線状体115は、ロープ(tether:テザー)である。線状体115には、導電性を有する部材が埋め込まれていることが好ましい。この場合には、宇宙機をエレクトリックセイルとして用いることができる。
線状体の幅が比較的広い場合には、線状体の外面に、反射率が比較的高い被膜等が設けられていることが好ましい。この場合には、線状体により太陽光を反射して推進することにより、宇宙機をヘリオジャイロ(宇宙版のヘリコプター)として用いることができる。
【0067】
形状制御装置4は、第2実施形態の形状制御装置2の制御部45に代えて、制御部45Aを備える。
制御部45Aの主制御部45a1では、メモリ47Aに記憶されている、CPU46を制御するための制御プログラム等が、第1実施形態のメモリ47とは異なる。
線状体115の端部は、フラップ13の第2端部28bに固定されている。フラップ13は、線状体115の端部を保持している。
なお、形状制御装置4が備える軸線駆動ユニット10の数は、1つでもよい。この場合、形状制御装置は、フラップ13及び軸線駆動部12をそれぞれ1つずつ備える。
【0068】
〔2.2.線状体が保持される場合の形状制御装置の制御方法〕
〔2.2.1.線状体の運動方程式〕
図11に示すように、1本の線状体115に対して、線状体115の長手方向にx軸を規定する。線状体115の第1端をx軸の原点とし、線状体115の第1端から第2端に向かう向きを、x軸の正の向きとする。すなわち、xは、線状体115における(設定される)基準軸O1に直交する方向の座標である。x軸に直交し、基準軸O1と平行な方向に、z軸を規定する。
線状体115の長さを、Lと規定する。線状体115のz軸回りの回転速度を、Ωと規定する。
線状体115の線密度を、ρと規定する。位置xにおける、線状体115の張力をT(x)と規定し、線状体115のz方向の変位をw(x,t)と規定する。ただし、tは時間(時刻)である。
まず、線状体115に変位が無い(w=0)場合の、線状体115に作用する張力T(x)を求める。
【0069】
図12に示すように、x軸方向の長さ△x分の、線状体115の微小線要素116に作用する力の釣り合い条件は、(11)式のように表される。
【0070】
【0071】
(11)式において△x→0の極限を考えると、(12)式が得られる。
【0072】
【0073】
(12)式に、線状体115の第2端(x=L)で張力T(x)=0となるような境界条件を与えると、(13)式が得られる。
【0074】
【0075】
次に、変位が無いとした線状体115に対して、変位wが微小であるため、張力T(x)は変わらないと仮定する。このとき、微小線要素116に作用するz方向の力Fzは、(14)式により得られる。
【0076】
【0077】
よって、微小線要素116の運動方程式は、(15)式、すなわち(15)式を変形した(16)式となる。
【0078】
【0079】
〔2.2.2.線状体の自由振動の一般解〕
線状体115の変位w(x,t)が、位置xの関数であるΦ(x)と、時刻tの関数であるq(t)との積で、xとtとを分離して、w(x,t)=Φ(x)q(t)のように表されると仮定する。Φ(x)は、固有関数であり、固有振動モード形状を表す関数である。
すると、(19)式、及び(19)式を変形した(20)式が得られる。
【0080】
【0081】
張力T(x)は、xに依存する。このため、(20)式の左辺は時間tのみに依存し、(20)式の右辺はxのみに依存する。このため、変数分離法に基づいて、(20)式の両辺は定数として扱える。この定数を-ω2とすると、(21)式及び(22)式が得られる。
【0082】
【0083】
ここで、(x/L)を無次元化した位置x^と規定し、(ω/Ω)を無次元化した角周波数ω^と規定する。(22)式に、(13)式、位置x^、及び角周波数ω^を代入すると、(23)式及び(24)式が得られる。
【0084】
【0085】
ここで、2(ω^)2=n(n+1)とおくと、(24)式は、ルジャンドルの微分方程式と一致する。よって、固有関数Φ(x)は、ルジャンドル多項式で書ける。
ルジャンドル多項式は、2(ω^)2の値によって様々な値を取る。x^=1(線状体115の第2端)でルジャンドル多項式が有限の値となるためには、nは0以上の整数でなければならない。
この条件から、固有振動数ω^nが離散的に決まり、n次の固有関数Φn(x^)は(27)式により得られる。
【0086】
【0087】
以上より、z軸回りに回転する線状体115の変位w(x,t)の一般解は、(28)式で与えられる。ただし、An,Bnは、初期条件から決まる積分定数である。
【0088】
【0089】
重要な性質として、固有関数(ルジャンドル多項式)は、(29)式で表される直交性の性質を持つ。ただし、δmnは、クロネッカーのデルタである。
【0090】
【0091】
〔2.2.3.線状体の形状制御:外部入力応答〕
位置x及び時刻tにおいて、外力F(x,t)を線状体115に与えたとする。外力F(x,t)は、x軸方向の単位長さ当たりの、z軸方向の外力である。
このとき、線状体115の運動方程式は、(32)式で与えられる。
【0092】
【0093】
固有関数Φ(x)は、〔7.2〕における線状体115の自由振動と変わらず、モード座標q(t)が未知数であると仮定する。すると、(33)式が得られる。(33)式を(32)式に代入すると、(34)式が得られる。
【0094】
【0095】
(34)式の両辺にΦm(x^)をかけ、位置x^に関する区間[0,1]で積分する。すると、固有関数の直交性から、1つのモードだけが抽出され、(35)式が得られる。
ただし、M~
n、F~
nは、それぞれn次の一般化質量、一般化力であり、(36)式、(37)式で表される。
【0096】
【0097】
よって、外力F(x,t)が与えられた場合、(35)式をモード座標qn(t)について解き、固有関数で重ね合わせれば、応答としての線状体115の変位w(x,t)が求められる。
以下では、その変位w(x,t)について説明する。
【0098】
〔2.2.4.線状体の形状制御:制御側〕
z軸回りに回転する線状体115の第1端(x=0)において、(40)式で表される周期入力F0(t)を与えたと仮定する。
ただし、A0,α0は、定数である。ω0は、線状体115の端部を基準軸O1に沿う方向に振動させる角振動数である。
【0099】
【0100】
Diracのデルタ関数を用いて、F(x,t)=δ(x)F0(t)と表されると仮定する。このとき、一般化力F~
nは、(42)式で表される。
【0101】
【0102】
ここで、1自由度系の(35)式の周波数応答関数を、Hn(ω)と規定する。このとき、モード座標の応答は、(43)式で表される。
ただし、Hn(ω0)は、角振動数ω0に対応する周波数応答関数である。
【0103】
【0104】
ゆえに、線状体115の変位w(x,t)は、(44)式で表される。
【0105】
【0106】
ここで、入力に対する増幅率Gω0(x)が、(45)式で表されると規定する。このとき、変位w(x,t)は、(46)式で表される。
【0107】
【0108】
ここで、慣性空間における円筒座標系r-θ-zを規定する。rは、z軸を原点とする、線状体115における(設定される)基準軸O1に直交する方向の座標である。θは、それぞれの線状体115の基準軸O1回りの座標である。
線状体115は、z軸回りに回転速度Ωで回転している。線状体115が、時刻t=0で位置θ=0を通過すると仮定する。
ある角回転数ω0=mΩで、線状体115の第1端(根本)を加振する。線状体115の変形応答は、(49)式で表される。
【0109】
【0110】
ここで、θ=Ωtなので、位置θを通過するときの線状体115の変位w(r,θ,t)は、(50)式で表される。
【0111】
【0112】
よって、mが自然数であれば、(50)式の右辺におけるsin(mθ+α0)の項は、位置θに対してz軸回りの一周で閉じる波形(定在波)となる。
すなわち、慣性空間(慣性系)における線状体115の変位w(r,θ,t)は、時間tによらず一定となる。言い換えると、線状体115は、Gω0(r)A0sin(mθ+α0)で表される、慣性空間において静止した波面上をたどりながら振動変形する。
【0113】
〔2.2.5.制御部による線状体の制御〕
複数の線状体115の波形を定在波にするために、(50)式に基づいて、制御部45Aは、制御部45と同様に制御する。
一方で、複数の線状体115の波形を準定在波にするために、(50)式に基づいて、制御部45Aは、制御部45と同様に制御する。
【0114】
〔2.3.本実施形態の効果〕
以上説明したように、本実施形態の形状制御装置4では、制御部45Aは、複数の線状体115の波形を定在波にする。すなわち、前記基本回転・振動制御を行いながら、前記所定の向きに対する同一位置制御を行う。このとき、複数の線状体115の端部を複数のフラップ13により保持した状態で、制御部45Aは、回転駆動部35により、複数のフラップ13を移動させる複数の軸線駆動部12を基準軸O1回りに回転させる。すると、複数の線状体115は、遠心力により基準軸O1に直交する方向に広がる。
このとき、制御部45Aは、複数の軸線駆動部12により複数のフラップ13を基準軸O1に沿う方向に振動させながら、基準軸O1回りの所定の向きにフラップ13が配置されたときに、基準軸O1に沿う方向において、フラップ13が同じ位置に配置されるように軸線駆動部12を制御する。すると、慣性系において、基準軸O1回りに回転する複数の線状体115全体としての軌跡が一定の形状になる。
複数の軸線駆動部12は、一般的に動作が安定しているロータリーソレノイドを有し、例えばリンク機構を用いることなくフラップ13に直接接続されているため、複数の線状体115を比較的長期間にわたって安定的に基準軸O1に沿う方向に振動させることができる。
【0115】
制御部45Aは、複数の線状体115を準定在波にしてもよい。すなわち、前記基本回転・振動制御を行いながら、前記ずれた位置に対する同一位置制御を行う。このとき、慣性系において、基準軸O1回りに回転する複数の線状体115全体としての形状が、一定の形状を保ちつつ、基準軸O1回りに所定の速度で回転する。
軸線駆動部12は、一般的に動作が安定しているロータリーソレノイドを有し、例えばリンク機構を用いることなくフラップ13に直接接続されているため、複数の線状体115を比較的長期間にわたって安定的に基準軸O1に沿う方向に振動させることができる。
【0116】
なお、宇宙機5では、複数の線状体115に埋め込まれた導電性を有する部材に電流を流しながら、複数の線状体115を所望の形状に変形させる。そして、宇宙機5が太陽110等の磁場の影響を受ける際に、複数の線状体115がローレンツ力を受けることにより、宇宙機5を移動させる向きを変えることができる。
【0117】
〔3.形状制御装置の変形例〕
以上、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
【0118】
〔3.1.形状制御装置を宇宙空間で用いる場合〕
例えば、前記第1実施形態及び第2実施形態の形状制御装置では、電波を反射する素材で膜状体又は複数の線状体(以下では、膜状体等と言う)を形成し、膜状体等を焦点距離が可変なアンテナとして用いてもよい。
【0119】
〔3.2.形状制御装置を地上で用いる場合〕
回転駆動部として、スラスタに代えて、複数の軸線駆動ユニット10(軸線駆動部12)を基準軸O1回りに回転させるモータを用いる。モータとしては、ステッピングモータを用いることが好ましい。モータにおいて、本体に対する駆動軸の回転数を検出するために、エンコーダを用いてもよい。
この場合、エンコーダは、検出結果を制御部45に送る。制御部45は、送られた検出結果に基づいて、モータを制御する。
【0120】
地上において、室内で、壁面を覆うように膜状体等を取り付け、膜状体等を変形させてもよい。そして、膜状体等により音響効果を能動的に変えてもよい。この効果は、壁面の形が立体的に変形可能となることと等価である。
光を反射あるいは屈折透過するプリズム等の素材で形成した膜状体等の波形を定在波にしてもよい。そして、膜状体等に光を当てることで、様々な照明条件を能動的かつ連続的に変えることができる。このように、膜状体等を、ミラーボールに代わる照明装置として使用してもよい。
【0121】
LED(Light Emitting Diode)等の発光素子を取付けた膜状体等を変形させてもよい。そして、膜状体等を変形させると共に、発光素子の色や輝度、すなわち絵柄を変え、膜状体等を立体モニターとして使用してもよい。あるいは、所望の形状に変形させた膜状体等に対して、外部の光源を利用した立体プロジェクションマッピングを行ってもよい。
複数の線状体により、風力発電を行ってもよい。そして、形状制御装置を用いたUAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人航空機)の飛行経路をより立体化してもよいし、UAVの制御における発電効率を、向上させてもよい。
【符号の説明】
【0122】
2,2A,4 形状制御装置
12,62 軸線駆動部
13 フラップ(保持部)
35 回転駆動部
45,45A 制御部
62a,62b 圧電素子
100 膜状体
115 線状体
O1 基準軸
SD 制御波形