(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055183
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】ディスペンサ
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
B05C5/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161899
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】519231500
【氏名又は名称】ハンファ精密機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 洋一郎
【テーマコード(参考)】
4F041
【Fターム(参考)】
4F041AB01
4F041BA02
4F041BA12
4F041BA36
(57)【要約】
【課題】アクチュエータにかかる負荷を軽減し、その寿命を延長することのできるディスペンサを提供する。
【解決手段】ノズルと、前記ノズルに液体材料を供給する供給流路と、先端部が前記供給流路内を上下方向に往復動作するタペット34と、タペット34に変位を与える変位拡大機構14と、アクチュエータ15とを備えるディスペンサである。変位拡大機構14は、円柱形状の支点部材141と、支点部材141に接触する支点部142a、タペット34の上端部に接触する作用点部142b、及びアクチュエータ15の下端部に設けられた円柱形状又は球形状の変位伝達部材151に接触する力点部142cを有するレバー部材142とを含み、アクチュエータ15のストロークSのいずれかの位置において、支点部材の中心141a、作用点部142b及び変位伝達部材の中心151が水平線L上に位置するように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体材料を吐出するノズルと、前記ノズルに液体材料を供給する供給流路と、先端部が前記供給流路内を上下方向に往復動作するタペットと、前記タペットに変位を与える変位拡大機構と、前記変位拡大機構に変位を与えるアクチュエータとを備えるディスペンサであって、
前記変位拡大機構は、円柱形状の支点部材と、前記支点部材に接触する支点部、前記タペットの上端部に接触する作用点部、及び前記アクチュエータの下端部に設けられた円柱形状又は球形状の変位伝達部材に接触する力点部を有するレバー部材とを含み、
前記力点部は、前記支点部と前記作用点部との間にあり、
前記アクチュエータのストロークのいずれかの位置において、前記支点部材の中心、前記作用点部及び前記変位伝達部材の中心が水平線上に位置するように構成されている、ディスペンサ。
【請求項2】
前記アクチュエータのストロークの中間位置において、前記支点部材の中心、前記作用点部及び変位伝達部材の中心が水平線上に位置するように構成されている、請求項1に記載のディスペンサ。
【請求項3】
前記タペットを上方に向けて弾性的に付勢する第1付勢部材と、前記レバー部材の作用点部とは反対側の端部を下方に向けて弾性的に付勢する第2付勢部材とを更に備える、請求項1に記載のディスペンサ。
【請求項4】
前記アクチュエータはピエゾ素子を含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体材料を吐出するディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
水、油、レジンなどの液体材料を吐出するディスペンサは、半導体工程や医療分野などの様々な分野に使われている。特に半導体工程においては、アンダーフィル工程にディスペンサが多く使われており、半導体素子のパッケージの内部をレジンで充填する用途にもディスペンサが多く使われている。LED素子の製造工程においては、蛍光物質とレジンとが混合された蛍光液をLEDチップに塗布する工程にディスペンサが使われている。
【0003】
このように液体材料を吐出するディスペンサとしては、タペットの往復動作によってノズルから液体材料を吐出する形式のものが知られており、特許文献1では、液体材料を吐出するノズルと、ノズルに液体材料を供給する供給流路と、先端部が供給流路内を上下方向に往復動作するタペット(プランジャ)と、タペット(プランジャ)に変位を与える変位拡大機構と、変位拡大機構に変位を与えるアクチュエータとを備えるディスペンサ(液体塗布装置)が開示されている。また、特許文献1には、変位拡大機構として円柱形状の支点部材とレバー部材とを有する、いわゆるてこ機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが、変位拡大機構として特許文献1に開示されているようなてこ機構を含むディスペンサについて試験を行ったところ、アクチュエータにかかる負荷が大きく、その結果、アクチュエータの寿命が短いという問題のあることがわかった。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、アクチュエータにかかる負荷を軽減し、その寿命を延長することのできるディスペンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが、変位拡大機構として特許文献1に開示されているようなてこ機構を含むディスペンサにおいてアクチュエータの寿命が短くなる原因について調査及び解析を行った結果、詳細は後述するが、特許文献1ではアクチュエータのストロークの全長において、レバー部材の力点部が常時、レバー部材の回転中心である支点部材の中心より上方に位置するため、アクチュエータの駆動(伸縮)に伴いそのアクチュエータに大きな横向きの力がかかり、その横向きの力によりアクチュエータへの負荷が増大することが大きな原因であることが判明した。
【0008】
本発明は上記の原因解析に基づき想到されたもので、その要旨は次の通りである。
液体材料を吐出するノズルと、前記ノズルに液体材料を供給する供給流路と、先端部が前記供給流路内を上下方向に往復動作するタペットと、前記タペットに変位を与える変位拡大機構と、前記変位拡大機構に変位を与えるアクチュエータとを備えるディスペンサであって、
前記変位拡大機構は、円柱形状の支点部材と、前記支点部材に接触する支点部、前記タペットの上端部に接触する作用点部、及び前記アクチュエータの下端部に設けられた円柱形状又は球形状の変位伝達部材に接触する力点部を有するレバー部材とを含み、
前記力点部は、前記支点部と前記作用点部との間にあり、
前記アクチュエータのストロークのいずれかの位置において、前記支点部材の中心、前記作用点部及び前記変位伝達部材の中心が水平線上に位置するように構成されている、ディスペンサ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アクチュエータのストロークのいずれかの位置において、支点部材の中心、作用点部及び変位伝達部材の中心が水平線上に位置するように構成されていることから、アクチュエータのストロークの全長において、アクチュエータの駆動(伸縮)に伴いそのアクチュエータにかかる横向きの力を軽減することができる。これにより、アクチュエータにかかる負荷を軽減し、その寿命を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態であるディスペンサを一側面側から見た斜視図。
【
図3】タペット、変位拡大機構及びアクチュエータの関係を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、本発明の一実施形態であるディスペンサを一側面側から見た斜視図で示している。また、
図2A及び
図2Bにはそれぞれ
図1のディスペンサの要部を、側面図及び縦断面図として示している。
本実施形態のディスペンサXは、ディスペンサ本体1と、ディスペンサ本体1に着脱可能に装着されるノズルブロック3とを備えている。
【0012】
ディスペンサ本体1は、メインフレーム11の両側面がカバー111で覆われた形状を有し、その内部に後述する各部材が設置されている。なお、メインフレーム11の上面部には、メインフレーム11内に設置されている各部材へ電源を供給するための電源端子12、並びにメインフレーム11内に冷却用のエアを導入し排出するためのエア導入部13A及びエア排出部13Bが設けられている。
【0013】
ノズルブロック3は、メインフレーム11の下面側に着脱可能に装着されている。ノズルブロック3は、ブロック本体31と、液体材料を吐出するノズル32と、ノズル32に液体材料を供給する供給流路33と、先端部が供給流路33内を上下方向に往復動作するタペット34とを含む。
ノズル32は、ノズルナット321により、ブロック本体31の下面側のノズル装着部311に装着されている。
供給流路33は、ブロック本体31の上面部に設けられている液体材料導入部312とノズル32とを連通するように、ブロック本体31内に形成されている。なお、液体材料導入部312には、液体材料を貯留するタンク(図示省略)から液体材料が導入される。
タペット34はタペットホルダ341に保持されており、このタペット34を保持したタペットホルダ341が、ディスペンサ本体1のメインフレーム11の下面部に設けられているタペット装着孔112に装着されており、タペットホルダ341に保持されているタペット34の上端部がメインフレーム11内に突出している。また、タペットホルダ341にはタペット34を上方に向けて弾性的に付勢する第1付勢部材342が組み込まれている。第1付勢部材342としては典型的には圧縮コイルばねを用いることができる。
【0014】
図2Bに表れているようにディスペンサ本体1は、メインフレーム11内に、タペット34に変位を与える変位拡大機構14と、変位拡大機構14に変位を与えるアクチュエータ15とを更に備えている。ここで、
図3には、上述のタペット34、変位拡大機構14及びアクチュエータ15の関係を模式的に示している。
図2B及び
図3に表れているように変位拡大機構14は、支点部材141とレバー部材142とを含む。支点部材141は円柱形状であり、メインフレーム11に固定されている。レバー部材142は、支点部材141に接触する支点部142a、タペット34の上端部に接触する作用点部142b、及びアクチュエータ15の下端部に設けられた変位伝達部材151に接触する力点部142cを有する。そして、支点部142aは支点部材の曲率半径より大きい曲率半径を有する凹曲面であり、力点部142cは、支点部142aと作用点部142bとの間にある。力点部142cに接触する変位伝達部材151は円柱形状又は球形状であり、円柱形状の場合、その中心軸151a周りに回転可能にアクチュエータ15の下端部に取り付けられ、球形状の場合、その中心151a周りに回転自在にアクチュエータ15の下端部に取り付けられている。なお、本発明では変位伝達部材151が円柱形状の場合の中心軸151aを、変位伝達部材151が球形状の場合の中心151aと特に区別することなく、両者を共に中心151aという。
【0015】
引き続き
図2B及び
図3を参照すると、レバー部材の作用点部142bとは反対側の端部には、この端部を下方に向けて弾性的に付勢する第2付勢部材143が配置されている。第2付勢部材143としては典型的には圧縮コイルばねを用いることができる。このように変位拡大機構14は「てこ機構」であり、タペット34の上下方向の変位量をアクチュエータ15の上下方向の変位量よりも拡大する機能を担っている。
【0016】
一方、アクチュエータ15は変位拡大機構14に上下方向の変位を与え、その結果としてタペット34を上下方向に往復動作させるための駆動源として用いられ、モータやエア、ピエゾ素子などを含んで構成することができる。本実施形態においてアクチュエータ15はピエゾ素子を含んで構成している。ピエゾ素子は高速で駆動(伸縮)できる点で特に好ましい。また、本実施形態においてアクチュエータ15は
図3に示しているようにストロークSの範囲で上下方向に変位(伸縮)する。なお、
図3は、アクチュエータ15がそのストロークSの中間位置にある状態を示している。
【0017】
このような構成において本実施形態では、
図3に示しているようにアクチュエータ15のストロークSの中間位置において、支点部材141の中心141a、作用点部142b及び変位伝達部材151の中心151aが水平線L上に位置するように構成されている。このような構成とすることで、アクチュエータ15のストロークの全長において、アクチュエータ15の駆動(伸縮)に伴いアクチュエータ15にかかる横向きの力を従来技術に比べ軽減することができる。
【0018】
このことを、
図4を参照して説明する。
図4は、アクチュエータ15がストロークSの範囲で上下方向に変位(伸縮)する際の、変位伝達部材151の中心151aの軌跡を概念的に示している。なお、同図においてS1は、
図3に示したようにアクチュエータ15のストロークSの中間位置において、支点部材141の中心141a、作用点部142b及び変位伝達部材151の中心151aが水平線L上に位置するように構成されている場合のストロークを示している(以下、この例を「実施例1」という。)。また、S2はアクチュエータ15のストロークSの始点位置において、支点部材141の中心141a、作用点部142b及び変位伝達部材151の中心151aが水平線L上に位置するように構成されている場合のストロークを示している(以下、この例を「実施例2」という。)。更に、S3は上述した従来技術である特許文献1のように、アクチュエータのストロークの全長においてレバー部材の力点部(変位伝達部材151の中心151aに相当)が常時、レバー部材の回転中心である支点部材の中心141aより上方に位置するように構成されている場合のストロークを示している(以下、この例を「従来例」という。)。なお、各ストロークS1、S2及びS3の長さは、
図3に示したストロークSの長さと同一である。
【0019】
レバー部材142は、アクチュエータ15の駆動に伴い支点部材の中心141aを回転中心として回転し、その結果、変位伝達部材151の中心151aは
図4において仮想円Cの円周に沿って移動する。その移動の過程において、変位伝達部材151の中心151aは
図4に示しているように、実施例1ではW1、実施例2ではW2、従来例ではW3の長さだけ横方向(水平方向)に変位する。この横方向の変位が大きいほど、アクチュエータにかかる横向きの力が大きくなりアクチュエータへの負荷が増大するが、
図4より、W1<W2<<W3となることがわかる。すなわち、実施例1、2のように、アクチュエータ15のストロークのいずれかの位置において、支点部材の中心141a、作用点部142b及び変位伝達部材の中心151aが水平線L上に位置するように構成することで、従来例のように、アクチュエータのストロークの全長においてレバー部材の力点部(変位伝達部材151の中心151aに相当)が常時、支点部材の中心141aより上方に位置するように構成したときに比べ、アクチュエータの駆動(伸縮)に伴いそのアクチュエータにかかる横向きの力を軽減することができる。そのため、アクチュエータにかかる負荷を軽減し、その寿命を延長することができる。
なお、実施例1と実施例2との対比からわかるように、アクチュエータにかかる横向きの力を軽減する観点からは、実施例1のように、アクチュエータ15のストロークSの中間位置において、支点部材141の中心141a、作用点部142b及び変位伝達部材151の中心151aが水平線L上に位置するように構成することが好ましい。ここで、「ストロークの中間位置」とは厳密に中間位置である必要はなく、製造上の誤差等を含む形態で概ね中間位置であればよく、その範囲は技術常識により判断する。
【0020】
次に、ディスペンサXの動作について説明する。
液体材料導入部312を介して液体材料が導入、充填されている供給流路33内をタペット34の先端部が上方向に移動する際にノズル32近傍に液体材料が供給される。このとき液体材料導入部312に導入される液体材料には、液体材料の粘性等の性状に応じて適切な値の背圧をかけておく。
タペット34の先端部が供給流路33内をノズル32に近接する方向すなわち下方向に移動する際に、ノズル32近傍の液体材料圧力が上昇して液体材料が吐出される。
その後、タペット34の先端部が供給流路33内を上方向に移動すると再びノズル32近傍に液体材料が供給され、更にその後、タペット34の先端部が供給流路33内を下方向に移動するとノズル32から液体材料が吐出される。このようにタペット34の先端部が供給流路33内を上下方向に往復動作することで、ノズル32から液体材料が間欠的に吐出される。
【0021】
ここで上述の通り本実施形態では、アクチュエータ15のストロークのいずれかの位置において、支点部材の中心141a、作用点部142b及び変位伝達部材の中心151aが水平線L上に位置するように構成していることから、アクチュエータ15の駆動(伸縮)に伴いそのアクチュエータ15にかかる横向きの力を軽減することができる。そのため、アクチュエータ15にかかる負荷を軽減し、その寿命を延長することができる。また本実施形態では、タペット34を上方に向けて弾性的に付勢する第1付勢部材342と、レバー部材142の作用点部142bとは反対側の端部を下方に向けて弾性的に付勢する第2付勢部材143を備えていることから、その分、アクチュエータ15には負荷がかかりやすいが、本実施形態ではその負荷を軽減できるから、寿命を延長することができる。
【0022】
なお、本実施形態では、ノズルブロック3をディスペンサ本体1に着脱可能に装着するようにしているが、ノズルブロック3の構成をディスペンサ本体1に組み込んで一体化してもよい。
【符号の説明】
【0023】
X ディスペンサ
1 ディスペンサ本体
11 メインフレーム
111 カバー
112 タペット装着孔
12 電源端子
13A エア導入部
13B エア排出部
14 変位拡大機構
141 支点部材
141a 支点部材の中心
142 レバー部材
142a 支点部(凹曲面)
142b 作用点部
142c 力点部
143 第2付勢部材
15 アクチュエータ
151 変位伝達部材
151a 変位伝達部材の中心
3 ノズルブロック
31 ブロック本体
311 ノズル装着部
312 液体材料導入部
32 ノズル
321 ノズルナット
33 供給流路
34 タペット
341 タペットホルダ
342 第1付勢部材
S アクチュエータのストローク
C 仮想円