IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

特開2024-55184運動量推定装置、運動量管理システム、運動量推定方法及びコンピュータプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055184
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】運動量推定装置、運動量管理システム、運動量推定方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
A01K29/00 A
A01K29/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161900
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100163902
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 奈月
(72)【発明者】
【氏名】小川 弘純
(72)【発明者】
【氏名】今村 裕一
(72)【発明者】
【氏名】林 圭子
(72)【発明者】
【氏名】山上 晶暉
(57)【要約】
【課題】四足歩行の動物の運動量を推定する。
【解決手段】演算回路を有し、計測期間における四足歩行の動物の運動量を推定する運動量推定装置であって、演算回路は、動物に取り付けられたセンサで計測された加速度及び角速度を取得し、加速度及び前記角速度を分析し、分析で得られた分析結果に基づいて、計測期間における動物の歩様の種別を検出し、検出された歩様の種別に基づいて、加速度及び角速度の値から動物の歩行速度を求め、求められた歩行速度に応じて、計測期間における、動物の運動量を推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算回路を有し、計測期間における四足歩行の動物の運動量を推定する運動量推定装置であって、
前記演算回路は、
前記動物に取り付けられたセンサで計測された加速度及び角速度を取得し、
前記加速度及び前記角速度を分析し、
前記分析で得られた分析結果に基づいて、前記計測期間における前記動物の歩様の種別を検出し、
検出された前記歩様の種別に基づいて、前記加速度及び前記角速度の値から前記動物の歩行速度を求め、
求められた前記歩行速度に応じて、前記計測期間における、前記動物の運動量を推定する
運動量推定装置。
【請求項2】
前記演算回路は、
加速度及び角速度により分析された値の範囲と歩様の種別とが予め関連付けられるデータを参照して、前記分析で得られた分析結果に応じて、前記計測期間における前記動物の歩様の種別を検出し、
歩様の種別と動物の歩行速度とが予め関連付けられるデータを参照して、検出された前記歩様の種別に応じて、前記動物の歩行速度を求め、
歩行速度と運動量とが予め関連付けられるデータを参照して、求められた前記歩行速度に応じて、前記計測期間における、前記動物の運動量を推定する
請求項1に記載の運動量推定装置。
【請求項3】
演算回路を有し、計測期間における四足歩行の動物の運動量を推定する運動量推定装置であって、
前記演算回路は、
前記動物に取り付けられたセンサで計測された加速度を取得し、
前記加速度の位相を分析し、
前記分析で得られた分析結果に基づいて、前記計測期間における前記動物の歩様の種別を検出し、
検出された前記歩様の種別に基づいて、前記動物の歩行速度を求め、
求められた前記歩行速度に応じて、前記計測期間における、前記動物の運動量を推定する
運動量推定装置。
【請求項4】
前記演算回路は、
加速度の位相の範囲と歩様の種別とが予め関連付けられるデータを参照して、前記分析で得られた分析結果に応じて、前記計測期間における前記動物の歩様の種別を検出し、
歩様の種別と動物の歩行速度とが予め関連付けられるデータを参照して、検出された前記歩様の種別に応じて、前記動物の歩行速度を求め、
歩行速度と運動量とが予め関連付けられるデータを参照して、求められた前記歩行速度に応じて、前記計測期間における、前記動物の運動量を推定する
請求項3に記載の運動量推定装置。
【請求項5】
前記演算回路は、
前記加速度及び前記角速度の分析では、
前記センサで計測された前記角速度から、角速度のパワースペクトルを求めて、角速度のパワースペクトルの最大値の場合の周波数を特定し、
前記センサで計測された前記加速度から、加速度のパワースペクトルを求め、
前記加速度のパワースペクトルから、前記角速度のパワースペクトルの最大値の場合の周波数を所定倍した値のときの前記加速度のパワースペクトルの値を抽出し、
前記歩様の種別の検出では、
抽出された前記加速度のパワースペクトルの値が所定の範囲内であるとき、前記歩様の種別をウォークであると検出する、
請求項1に記載の運動量推定装置。
【請求項6】
前記演算回路は、
前記歩様の種別の検出では、
抽出された前記加速度のパワースペクトルの値が前記所定の範囲外であるとき、前記歩様の種別をペースであると検出する、
請求項5に記載の運動量推定装置。
【請求項7】
前記演算回路は、
前記加速度及び前記角速度の分析では、
前記計測期間における前記加速度の最大値の平均値及び最小値の平均値を求めて、前記加速度の平均振幅を算出し、
前記計測期間における前記角速度の最大値の平均値及び最小値の平均値を求めて、前記角速度の平均振幅を算出し、
前記歩様の種別の検出では、
算出した前記加速度の平均振幅又は前記角速度の平均振幅の少なくともいずれかが、それぞれ定められる所定の条件を満たさないとき、前記歩様の種別をペースであると検出する
請求項1に記載の運動量推定装置。
【請求項8】
前記演算回路は、
前記歩様の種別の検出では、
算出した前記加速度の平均振幅及び前記角速度の平均振幅の両方が、それぞれ定められる所定の条件を満たすとき、前記歩様の種別をトロットであると検出する
請求項7に記載の運動量推定装置。
【請求項9】
前記演算回路は、
前記加速度及び前記角速度の分析では、
所定期間における加速度が所定の値以下となる時間を求め、
前記歩様の種別の検出では、
前記所定期間における加速度が所定の値以下となる時間が所定の割合未満であるとき、トロットであると検出する
請求項1に記載の運動量推定装置。
【請求項10】
前記演算回路は、
前記歩様の種別の検出では、
前記所定期間における加速度が所定の値以下となる時間が所定の割合以上であるとき、キャンターであると検出する
請求項9に記載の運動量推定装置。
【請求項11】
前記演算回路は、
前記加速度の位相の分析では、第1の軸の加速度と第2の軸の加速度とが同位相であるか否かを分析し、
前記歩様の種別の検出では、
前記第1の軸の方向の加速度と、前記第2の軸の方向の加速度とが同位相であるとき、前記動物の歩様の種別は、歩く、であると検出し、
前記第1の軸の方向の加速度と、前記第2の軸の方向の加速度とが逆位相であるとき、前記動物の歩様の種別は、走る、であると検出する
請求項3に記載の運動量推定装置。
【請求項12】
前記演算回路は、
前記位相の分析では、
第1の絶対値として、任意の所定間隔における前記第1の軸の方向の加速度の最大値と、前記任意の所定間隔における前記第2の軸の方向の加速度の最大値との差分の絶対値を求めるとともに、
第2の絶対値として、前記第1の軸の方向の加速度の最大値、前記任意の所定間隔に続く次の所定間隔における前記第1の軸の方向の加速度の最大値との差分の絶対値を求め、及び/又は、第3の絶対値として、前記第2の軸の方向の加速度の最大値Z1と、前記次の所定間隔における前記第2の軸の方向の加速度の最大値Z2との差分の絶対値を求め、
前記第1の絶対値が、前記第2の絶対値の1/2以下であるとき、及び/又は、前記第1の絶対値が、前記第3の絶対値の1/2以下であるとき、
前記第1の軸の方向の加速度と前記第2の軸の方向の加速度とが同位相であるとする
請求項11に記載の運動量推定装置。
【請求項13】
前記演算回路は、
前記位相の分析では、
第1の絶対値として、任意の所定間隔における前記第1の軸の方向の加速度の最大値と、前記任意の所定間隔における前記第2の軸の方向の加速度の最大値との差分の絶対値を求めるとともに、
第2の絶対値として、前記第1の軸の方向の加速度の最大値、前記任意の所定間隔に続く次の所定間隔における前記第1の軸の方向の加速度の最大値との差分の絶対値を求め、及び/又は、第3の絶対値として、前記第2の軸の方向の加速度の最大値Z1と、前記次の所定間隔における前記第2の軸の方向の加速度の最大値Z2との差分の絶対値を求め、
前記第1の絶対値が、前記第2の絶対値の1/2より大きいとき、及び/又は、前記第1の絶対値が、前記第3の絶対値の1/2より大きいとき、
前記第1の軸の方向の加速度と前記第2の軸の方向の加速度とが逆位相であるとする
請求項11に記載の運動量推定装置。
【請求項14】
前記演算回路は、
前記動物の体格を表す値を取得すると、
前記歩様の種別と、前記動物の歩行速度との対応では、前記歩様の種別毎の、前記動物の体格を表す値と、前記体格の動物の歩行速度との対応を予め関連付け、
前記歩行速度を求める際、
前記検出された歩様の種別と、取得した前記動物の体格を表す値とに応じて、
前記動物の歩行速度を求める、
請求項1又は3に記載の運動量推定装置。
【請求項15】
前記演算回路は、
前記位相の分析では、第1の軸の方向の加速度の任意の極小値のタイミングから、当該任意の極小値の次の極小値のタイミングまでの、第2の軸の方向の加速度の最大値を抽出し、
前記第2の軸の方向の加速度の最大値のタイミングの、前記第1の軸の加速度の値を前記第2の軸の方向の加速度の最大値に対応する値として抽出し、
前記第2の軸の方向の加速度の最大値と、前記対応する値との差が所定範囲内であるとき同位相と判定し、前記差が所定範囲外であるとき逆位相であると判定する
請求項11に記載の運動量推定装置。
【請求項16】
前記歩様の種別の検出では、前記計測期間に生じた複数の歩様の種別を検出可能であって、
前記演算回路は、
前記運動量の算出では、
歩様の種別毎に推定した運動量の合計を、前記計測期間における、前記動物の運動量として推定する
請求項1又は3に記載の運動量推定装置。
【請求項17】
前記演算回路は、
前処理として、加速度を用いて、歩様以外の動作を検出し、
前記歩様以外の動作を除いた期間における運動量を推定する
請求項1又は3に記載の運動量推定装置。
【請求項18】
前記演算回路は、
前記歩様以外の動作の検出として、所定期間内における異なる複数の方向の加速度の少なくともいずれかが、それぞれ所定範囲内であるか否かに応じて、前記動物の停止を検出する
請求項17に記載の運動量推定装置。
【請求項19】
前記演算回路は、
前記歩様以外の動作の検出として、所定期間内における加速度の複数のピーク値が所定範囲内であるかを判定し、隣り合うピーク値の時間間隔が、所定間隔である期間に応じて、前記動物の胴震いを検出する
請求項17に記載の運動量推定装置。
【請求項20】
前記演算回路は、
求めた前記運動量に基づく推定結果データを、登録される端末に送信する
請求項1又は3に記載の運動量推定装置。
【請求項21】
請求項20に記載の運動量推定装置と、前記動物のオーナーの端末と、前記動物の健康を管理する管理者の端末とが接続されるシステムであって、
前記管理者の端末は、
前記推定結果データを受信すると、前記推定結果データに基づく運動量に応じた前記動物の生活に関する提案を含む提案データを生成し、前記オーナーの端末に送信する
運動量管理システム。
【請求項22】
演算回路を有する運動量推定装置において、計測期間における四足歩行の動物の運動量を推定する運動量推定方法であって、
前記演算回路において、
前記動物に取り付けられたセンサで計測された加速度及び角速度を取得し、
前記加速度及び前記角速度を分析し、
前記分析で得られた分析結果に基づいて、前記計測期間における前記動物の歩様の種別を検出し、
検出された前記歩様の種別に基づいて、前記加速度及び前記角速度の値から前記動物の歩行速度を求め、
求められた前記歩行速度に応じて、前記計測期間における、前記動物の運動量を推定する
運動量推定方法。
【請求項23】
請求項22に記載の運動量推定方法を、前記演算回路に実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運動量推定装置、運動量管理システム、運動量推定方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットの増加・高寿命化に伴い、ペットの日々の健康状態・運動量を把握するアニマルヘルスケアが注目されている。
【0003】
特許文献1には、四脚動物に取り付けられた加速度センサで取得した加速度データを用いて、四脚動物の所定の脚が着地したと判定してから再度着地したと判定するまでの移動の加速度の平均値を算出させる計測プログラムが開示されている。
【0004】
特許文献2には、動物に固定される3次元の加速度センサからの加速度信号に基づいて、左右傾き角、および前後傾き角を算出し、画面上に表示する動物活動計測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-113976号公報
【特許文献2】特開2011-217928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、運動量推定装置、運動量管理システム、運動量推定方法及びコンピュータプログラムを提供する。例えば、加速度センサで得られる加速度を用いて、より高精度に運動量を推定することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態にかかる運動量推定装置は、演算回路を有し、計測期間における四足歩行の動物の運動量を推定する運動量推定装置であって、演算回路は、動物に取り付けられたセンサで計測された加速度及び角速度を取得し、加速度及び角速度を分析し、分析で得られた分析結果に基づいて、計測期間における動物の歩様の種別を検出し、検出された歩様の種別に基づいて、加速度及び角速度の値から動物の歩行速度を求め、求められた歩行速度に応じて、計測期間における、動物の運動量を推定する。
【0008】
本実施形態にかかる運動量推定装置は、演算回路を有し、計測期間における四足歩行の動物の運動量を推定する運動量推定装置であって、演算回路は、動物に取り付けられたセンサで計測された加速度を取得し、加速度の位相を分析し、分析で得られた分析結果に基づいて、計測期間における動物の歩様の種別を検出し、検出された歩様の種別に基づいて、加速度及び角速度の値から動物の歩行速度を求め、求められた歩行速度に応じて、計測期間における、動物の運動量を推定する。
【0009】
本実施形態にかかる運動量推定方法は、演算回路を有する運動量推定装置において、計測期間における四足歩行の動物の運動量を求める運動量推定方法であって、演算回路において、動物に取り付けられたセンサで計測された加速度及び角速度を取得し、加速度及び角速度を分析し、分析で得られた分析結果に基づいて、計測期間における動物の歩様の種別を検出し、検出された歩様の種別に基づいて、加速度及び角速度の値から動物の歩行速度を求め、求められた歩行速度に応じて、計測期間における、動物の運動量を推定する。
【0010】
本実施形態にかかるプログラムは、演算回路を有する運動量推定装置において、計測期間における四足歩行の動物の運動量を求める運動量推定方法であって、演算回路において、動物に取り付けられたセンサで計測された加速度及び角速度を取得し、加速度及び角速度を分析し、分析で得られた分析結果に基づいて、計測期間における動物の歩様の種別を検出し、検出された歩様の種別に基づいて、加速度及び角速度の値から動物の歩行速度を求め、求められた歩行速度に応じて、計測期間における、動物の運動量を推定する運動量推定方法を演算回路に実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本実施形態にかかる運動量推定装置、運動量推定方法及びコンピュータプログラムによれば、加速度センサで得られる加速度を用いて、より高精度に運動量を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る運動量管理システムを示す概略図である。
図2A図1の運動量管理システムで利用するx軸、y軸及びz軸を示す概略図である。
図2B図2Aとともに、図1の運動量管理システムで利用するx軸、y軸及びz軸を示す概略図である。
図3図1の運動量管理システムが含む運動量推定装置を示すブロック図である。
図4図1の運動量管理システムが含む計測装置を示すブロック図である。
図5図1の運動量管理システムが含む端末を示すブロック図である。
図6A】z軸の角速度から得られたパワースペクトルからウォークの検出を説明する一例である。
図6B図6Aとともにz軸の加速度から得られたパワースペクトルからウォークの検出を説明する一例である。
図7A】z軸の加速度の波形からペースの検出を説明する一例である。
図7B図7Aとともにz軸の角速度の波形からペースの検出を説明する一例である。
図8】z軸の加速度の波形からトロット又はキャンターの検出を説明する一例である。
図9】歩行速度の推定に利用する速度モデルの一例である。
図10】第1の実施形態に係る運動量推定装置における処理の一例を示すフローチャートである。
図11】y軸加速度及びz軸加速度から同位相と逆位相の判定を説明する一例である。
図12】第2の実施形態に係る運動量推定装置における処理の一例を示すフローチャートである。
図13A】x軸の加速度の波形から停止の範囲の検出を説明する一例である。
図13B】y軸の加速度の波形から停止の範囲の検出を説明する一例である。
図13C】z軸の加速度の波形から停止の範囲の検出を説明する一例である。
図14A】x軸の加速度の波形から胴震いの開始の検出を説明する一例である。
図14B】x軸の加速度の波形から胴震いの終了の検出を説明する一例である。
図15A】変形例2の運動量推定装置において、y軸加速度、およびz軸加速度を用いて歩く又は走るを検出する一例である。
図15B】変形例2の運動量推定装置において、y軸加速度、およびz軸加速度を用いて歩く又は走るを検出する他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して本開示に係る運動量推定装置、運動量管理システム、運動量推定方法及びコンピュータプログラムについて説明する。本開示の運動量推定装置、運動量管理システム、運動量推定方法及びコンピュータプログラムは、四足歩行の動物の運動状態を用いて運動量を推定する。具体的に、四足歩行の動物は人間に飼育され得る動物であってもよい。なお、以下の説明では、同一の構成について、同一の符号を付して説明を省略する。
【0014】
本実施形態にかかる運動量推定装置、運動量管理システム、運動量推定方法及びコンピュータプログラムは、加速度センサを利用する。加速度センサは、x軸、y軸又はz軸方向の少なくともいずれかの加速度を計測する。運動量管理システムは、加速度センサとして、x軸、y軸、およびz軸の加速度を計測可能な3軸加速度センサを用いてもよい。また、運動量管理システムは、加速度センサに代えて、x軸、y軸、およびz軸の加速度とともにx軸、y軸、およびz軸の角速度も計測可能な6軸センサを用いてもよい。さらに、運動量管理システムは、x軸、y軸及びz軸の向きを補正するため、加速度センサ又は6軸センサとともに、地磁気センサを用いてもよい。
【0015】
本実施形態にかかる運動量推定装置、運動量管理システム、運動量推定方法及びコンピュータプログラムは、運動量を推定する過程で、四足歩行の動物の歩様を分類する。また、本実施形態にかかる運動量推定装置、運動量管理システム、運動量推定方法及びコンピュータプログラムは、歩様の種別に応じて歩行速度を特定し、歩行速度を利用して運動量を推定する。以下に、分類対象となる歩様について説明する。
【0016】
「ウォーク(並足)」は、3本の足が接地している状態の歩様である。
「ペース(側対歩)」は、2本の足が接地している状態であって、片側の前後足が接地し、反対側の前後足が移動する歩様である。
「トロット(速歩)」は、2本の足が接地している状態であって、対角の関係、具体的には、右前足と左後ろ足が前方に移動した後、左前足と右後ろ足が移動する歩様である。
「キャンター(駆け足)」は、非対称歩行であって、一瞬、身体が空中に浮き4本の足が接地しない状態を含み、例えば、左後ろ足、右後ろ足、左前足、右前足の順番で足が移動する歩様である。
他に、「ギャロップ(襲歩)」があるが、キャンターと足の動かし方(歩様)、及び、歩行速度が類似する。したがって、本開示においては、ギャロップは、キャンターに含まれるとして扱う。
【0017】
上記のように歩様を4つに分類した場合、キャンターの歩行速度が最も速い。また、キャンターと比較すると、ウォーク、ペース及びトロットの歩行速度は遅い。歩様によって歩行速度が異なるため、上記のうち、歩行速度の類似するウォーク、ペース及びトロットを「歩く」と分類し、他と歩行速度が大きく異なるキャンターを「走る」と分類してもよい。
【0018】
本実施形態では「歩行速度」は、「歩く」場合の速度と、「走る」場合の速度とを区別することなく使用する。
【0019】
[第1の実施形態]
〈速度推定システム〉
図1に示す第1の実施形態に係る運動量管理システム1は、動物の運動量として、消費エネルギーを推定する。ここで、動物の消費エネルギーは、動物の歩行速度に依存する。また、動物の歩行速度は、動物の歩様の種別毎に異なる。したがって、第1の実施形態に係る運動量推定装置10は、動物の運動状態を用いて歩様を分類し、その歩様に応じて歩行速度を求め、求めた歩行速度を用いて消費エネルギーを推定する。
【0020】
図1に示すように、運動量管理システム1は、運動量推定装置10と、端末20Aと、端末20Bと、端末20Cと、計測装置30とを含む。運動量推定装置10と、端末20Aと、端末20Bと、端末20Cは、通信ネットワーク40を介してデータ通信可能に接続される。計測装置30は、動物に取り付けられ、動物の運動状態を計測し、端末20Aに提供する。端末20Aは、動物の飼い主等のオーナーに利用される。端末20Aは、計測装置30で計測された動物の運動状態を示すデータを、計測装置30から取得する。端末20Aは、受け取ったデータを、通信ネットワーク40を介して運動量推定装置10に送信する。また、端末20Bと20Cは、動物の運動量を管理するユーザ(例えば、獣医師、栄養士、ペットトレーナー等)に利用される。図1に示す一例では、端末20Bは、獣医師が使用する。また、図1に示す一例では、端末20Cは、栄養士が使用する。運動量推定装置10は、端末20Aで受信した運動状態から動物の運動量を推定し、推定結果データを、通信ネットワーク40を介して登録される端末20A~20Cに送信する。なお、図1に示す例では、運動量管理システム1は、3台の端末20A~20Cを含む例で説明するが、運動量管理システム1が含む端末の数はこれに限定されない。以下では、動物は犬であって、犬の散歩中の運動状態を図4を用いて後述する計測装置30のセンサ34で計測し、その運動状態に応じて歩行速度を推定する一例を説明する。
【0021】
ここで、図4を用いて後述する計測装置30のセンサ34は、動物の進行方向、進行方向に対して設定される左右方向、及び/又は、進行方向に対して設定される上下方向の速度の変化率の少なくともいずれかを取得する。以下の説明では、図2A及び図2Bに示すように、犬が前方に進むとしたとき、進行方向をy軸方向、進行方向であるy軸に対して左右方向をx軸方向、進行方向であるy軸に対して上下方向をz軸方向とする。換言すると、犬の進行方向を+y軸、地面鉛直上向きを+z軸、+y軸から+z軸への外積ベクトル方向を+x軸とする。
【0022】
〈運動量推定装置〉
図1に示した運動量推定装置10は、計測期間における四足歩行の動物の運動量を推定する装置であって、動物に取り付けられたセンサで計測された加速度及び角速度を取得する。また、運動量推定装置10は、加速度及び角速度を分析する。その後、運動量推定装置10は、分析で得られた分析結果に基づいて、計測期間における動物の歩様の種別を検出する。次に、運動量推定装置10は、検出された歩様の種別に基づいて、加速度及び角速度の値から動物の歩行速度を求める。続いて、運動量推定装置10は、求められた歩行速度に応じて、計測期間における、動物の運動量を推定する。具体的には、運動量推定装置10は、加速度及び角速度により分析された値の範囲と歩様の種別とが予め関連付けられるデータを参照して、分析で得られた分析結果に応じて、計測期間における動物の歩様の種別を検出する。続いて、運動量推定装置10は、歩様の種別と動物の歩行速度とが予め関連付けられるデータを参照して、検出された歩様の種別に応じて、動物の歩行速度を求める。さらに、運動量推定装置10は、歩行速度と消費エネルギーとが予め関連付けられるデータを参照して、求められた歩行速度に応じて、計測期間における、動物の運動量を推定する。運動量推定装置10は、図3のブロック図に一例を示すように、主として、演算回路11と、記憶装置12と、入力装置13と、出力装置14と、通信回路15とを備えるパーソナルコンピュータ等の情報処理装置によって実現される。
【0023】
入力装置13は、操作やデータの入力に利用される操作ボタン、キーボード、マウス、タッチパネル、マイクロフォン等を含む。出力装置14は、処理結果やデータの出力に利用されるディスプレイ、スピーカ等を含む。
【0024】
通信回路15は、例えば、通信ネットワーク40を介して、端末20A~20C等の外部の装置とのデータ通信を可能とする。また例えば、通信回路15は、計測装置30とのデータ通信を可能とする。上述したデータ通信は、公知の通信規格にしたがって行われ得る。例えば、運動量推定装置10は、通信回路15として、有線によるデータ通信を可能とする回路と、無線によるデータ通信を可能とする回路との異なる通信規格に従う複数の回路を含んでもよい。具体的には、通信回路15は、有線によるデータ通信を可能とする回路と、無線によるデータ通信を可能とする回路との異なる複数種類の回路を包含する表現であってもよい。例えば、有線によるデータ通信は、イーサネット(登録商標)規格、および/またはUSB(登録商標)規格等に準拠して動作する半導体集積回路の通信コントローラを通信回路15として用いることによって行われる。また無線によるデータ通信は、LAN(Local Area Network)に関するIEEE802.11規格、および/または移動体通信に関する、いわゆる4G/5Gと呼ばれる、第4世代/第5世代移動通信システム等に準拠して動作する半導体集積回路の通信コントローラを通信回路15として用いることによって行われる。さらに、例えば、無線によるデータ通信は、Bluetooth(登録商標)規格に準拠して動作する通信コントローラを通信回路15として用いることによって行われる。
【0025】
記憶装置12は、種々の情報を記録する記録媒体である。記憶装置12は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、その他の記憶デバイス又はそれらを適宜組み合わせて実現される。記憶装置12は、演算回路11が実行する推定プログラムP1と、速度モデル121と、運動量モデル122とを記憶する。なお、図3では、速度モデル121と、運動量モデル122とが、記憶装置12に記憶される一例として図示するが、運動量推定装置10は、クラウド等の外部の装置に記憶されるデータ及び/又はモデルを必要に応じて読み出して利用してもよい。
【0026】
速度モデル121は、歩様の種別と歩行速度とを関連付けるモデルである。ここで動物の体格が歩行速度に影響することがある。したがって、速度モデル121は、歩様の種別毎の動物の体格を表す所定部位のサイズと、当該動物の歩行速度との関係を示す。この速度モデル121は、予め、所定部位のサイズが測定された複数の動物について、所定の歩行速度の際の歩様を特定して得られたモデルである。速度モデル121を用いることで、動物の歩行時の歩様及び所定部位のサイズに基づいて、歩行速度を推定することができる。例えば、速度モデル121は、犬の体格を表す所定部位のサイズ及び当該サイズである犬の散歩時に検出された歩様から、当該散歩時の歩行速度を導く数式であってもよい。また例えば、速度モデル121は、所定部位のサイズの範囲と、所定サイズが該当の範囲である犬の歩様と、当該歩行時の歩行速度との関係を規定するテーブルであってもよい。体格を表す所定部位のサイズとは、例えば、体長、体高又は前肢の長さの少なくともいずれかとすることができる。ここで、動物の「体長」は、胸からお尻の先端までの長さ、「体高」は、動物が四足で立っている場合の地面から背中までの高さ、「脚の長さ」は、動物が四足で立っている場合の地面から脚の付け根までの高さをいう。
【0027】
運動量モデル122は、歩行速度と消費エネルギーとを関連付けるモデルである。この運動量モデル122は、歩行速度から消費エネルギーを導く数式であってもよい。また例えば、運動量モデル122は、歩行速度の範囲と、歩行速度が該当の範囲である場合の消費エネルギーとの関係を規定するテーブルであってもよい。同じ歩行速度であっても、体格によって消費エネルギーが異なるため、運動量モデル122は、例えば、動物の体格を表す体重と、歩行速度に応じた消費エネルギーとの関係を含んでもよい。
【0028】
演算回路11は、運動量推定装置10全体の制御を司るコントローラである。演算回路11は、記憶装置12に記憶されるコンピュータプログラムである推定プログラムP1を実行することにより、対象の動物の運動量を推定する一連の処理を実行する。演算回路11は、CPU、MPU、GPU、FPGA、DSP、ASIC等、種々のプロセッサであってもよい。また、演算回路11は、所定の機能を実現する専用に設計されたハードウェア回路でもよい。
【0029】
《計測データの取得》
演算回路11は、通信回路15を介して、端末20Aから計測装置30で計測された加速度及び角速度を含む計測データを取得する。
【0030】
《計測データの分析及び歩様の検出》
第1の実施形態では、運動量推定装置10は、動物の歩様の種別が「ウォーク」、「ペース」、「トロット」又は「キャンター」のいずれであるかを検出し、検出した歩様の種別に応じて動物の歩行速度を推定する。以下では、各歩様に関する計測データの分析及び検出について説明する。
【0031】
・ウォークの検出
「ウォーク」を検出するため、演算回路11は、z軸の加速度及びz軸の角速度のパワースペクトルを分析する。演算回路11は、z軸の加速度及びz軸の角速度のパワースペクトルの関係から、「ウォーク」を検出する。
【0032】
具体的には、演算回路11は、センサ34で計測された角速度から、角速度のパワースペクトルを求めて、角速度のパワースペクトルの最大値の場合の周波数(ZAVF1)を特定する。また、演算回路11は、センサ34で計測された加速度から、加速度のパワースペクトルを求めて、加速度のパワースペクトルから、角速度のパワースペクトルの最大値の場合の周波数(ZAVF1)を所定倍(例えば、2倍)した値のときの加速度のパワースペクトルの値(ZAM2)を抽出する。
【0033】
その後、演算回路11は、角速度のパワースペクトルの最大値の場合の周波数(ZAVF1)に基づいて抽出された加速度のパワースペクトルの値(ZAM2)が所定の範囲内であるとき、歩様の種別を「ウォーク」であると検出する。
【0034】
図6Aは、z軸の角速度から求めたパワースペクトルを示す。また、図6Bは、z軸の加速度から求めたパワースペクトルを示す。図6Aに示す例では、z軸の角速度のパワースペクトルの最大値は、パワースペクトルにおいて丸印をした箇所であり、パワースペクトルの最大値の場合の周波数(ZAVF1)は、1.8Hzであった。また、図6Bに示すように、演算回路11は、この周波数の値1.8Hzを、所定倍である2倍した周波数(ZF2)の値3.6Hzとなる加速度のパワースペクトルの値(振幅)(ZAM2)として、6.1e-3[G2]を抽出する。なお、図6Bに示す一例では、周波数(ZF2)3.6Hzの場合のパワースペクトルの値(ZAM2)は、最大値付近であるが、最大値であるかどうかと無関係である。演算回路11は、この周波数3.6Hzの値が所定の条件を満たすか否かを判定する。例えば、ZAM2<6.9e-6[G2]を「ウォーク」と判定する所定の範囲として定めているとき、図6A及び6Bに示す例では、抽出された加速度のパワースペクトルの値(ZAM2)の値は所定の範囲外であるため、演算回路11は、「ウォーク以外」であると検出する。また、抽出された加速度のパワースペクトルの値(ZAM2)所定の範囲外であり、「ウォーク以外」であると検出した場合、演算回路11は、「ペースの候補」と検出してもよい。なお、ウォークではなく、ペースの候補となる場合、歩き方の規則性が強く表れるため、z軸の加速度のパワースペクトルの最大値の周波数(ZAVF1)の約2倍の周波数(ZF2)の値がy軸のパワースペクトルの最大値に近い傾向にある。したがって、上述の一例では、所定倍として2倍を用いたが、2倍に限定されず、歩き方の規則性を検出できる値であれば、限定されない。
【0035】
なお、ここで「ウォーク」の検出に用いる値(6.9e-6[G2])は、予め「ウォーク」と特定された複数の動物の歩行時の加速度及び角速度のパワースペクトルに応じて定められる値であって、上述した値は一例である。またここでは、z軸の加速度及び角速度を用いてパワースペクトルを求めたが、これに限定されず、他の軸の加速度及び角速度を用いてもよい。
【0036】
・ペースの検出
「ペース」を検出するため、演算回路11は、z軸の加速度及びz軸の角速度の平均振幅を分析する。具体的には、演算回路11は、第1の所定期間毎に、加速度の最大値及び最小値を抽出し、抽出した加速度の最大値の平均値及び最小値の平均値を算出する。続いて、演算回路11は、計測期間における加速度の最大値の平均値及び最小値の平均値を求めて、加速度の平均振幅(ZAVAVG)を算出する。また、演算回路11は、第2の所定期間毎に、角速度の最大値及び最小値を抽出し、抽出した角速度の最大値の平均値及び最小値の平均値を算出する。続いて、演算回路11は、計測期間における角速度の最大値の平均値及び最小値の平均値を求めて、角速度の平均振幅(ZACCAVG)を算出する。ここで、第1の所定期間は、ペースで歩行する動物の足の動きに対応する周期に応じて定めることができる。例えば、「動物が右前足を出してから、次に右前足を出すまでの期間」や、「動物が右前足を出してから、左前足を出すまでの期間」に応じて定めることができる。また、第2の所定期間も、同様に、ペースで歩行する犬の足の動きに対応する周期に応じて定めることができる。さらに、第1の所定期間及び第2の所定期間は、動物の個体毎に調整可能としても良い。例えば、犬のサイズ、年齢、運動特性等に応じて決定し、又は、調整可能としてもよい。なお、第1の所定期間と、第2の所定期間とは、同一の期間であってもよい。
【0037】
その後、演算回路11は、算出した加速度の平均振幅(ZAVAVG)及び角速度の平均振幅(ZACCAVG)がそれぞれ所定の条件を満たさないとき、歩様の種別を「ペース」であると検出する。
【0038】
図7Aは、z軸の加速度を表す波形を示す。図7Bは、z軸の角速度を表す波形を示す。図7A及び図7Bに示す例では、z軸の加速度及びz軸の角速度からそれぞれの所定期間毎に抽出された最大値と最小値に丸印を付す。なお、図7A及び図7Bでは、第1の所定期間と第2の所定期間とは異なり、第2の所定期間が、第1の所定期間の約2倍である一例を示す。図7Aに示す例では、z軸の加速度から求めた加速度の平均振幅(ZAVAVG)は0.673[G]であった。また、図7Bに示す例では、z軸の角速度から求めた各速度の平均振幅(ZACCAVG)は221.304[dps]であった。例えば、ZACCAVG>1.5[G]及びZAVAVG>120[dps]の少なくともいずれかを満たさない場合を「ペース」として定めているとき、図7A及び図7Bに示す例では、演算回路11は、ペースと検出する。また、ZACCAVG>1.5[G]及びZAVAVG>120[dps]の両方を満たす場合、演算回路11は、「トロットの候補」と検出してもよい。
【0039】
ここで「ペース」の検出に用いる値(1.5[G]及び120[dps])は、予め「ペース」と特定された複数の動物の歩行時の加速度及び角速度に応じて定められる値であって、上述した値は一例である。またここでは、z軸の加速度及び角速度を用いて平均振幅を求めたが、これに限定されず、他の軸の加速度及び角速度を用いてもよい。
【0040】
なお、演算回路11は、上述した「ウォーク」の検出において、「ウォーク以外」と検出された場合に、ペースの検出の対象として上記の処理を実行してもよい。
【0041】
・トロットの検出
「トロット」を検出するため、演算回路11は、所定期間において、z軸の加速度が所定の値以下となる時間を抽出し、抽出した時間の合計を求める。その後、演算回路11は、所定期間において、z軸の加速度が所定の値以下となる時間の合計が所定の割合未満であるとき、歩様の種別を「トロット」であると検出する。
【0042】
図8は、所定期間におけるz軸の加速度から、加速度が所定の値(500[mG])以下となる時間を抽出した一例である。図8に示す例では、抽出された時間を破線の矩形で示す。例えば、演算回路11は、所定期間全体の時間に対し、抽出された時間の合計が、所定の割合未満(例えば、0.5未満)であるとき、「トロット」であると検出する。図8に示す例では、所定期間全体の時間に対し、抽出された時間の合計の割合が、0.533であり、「トロット以外」であると検出される一例である。
【0043】
ここで「トロット」の検出に用いる値(500[mG])及び割合(0.5)は、予め「トロット」と特定された複数の動物の歩行時の加速度に応じて定められる値であって、上述した値は一例である。またここでは、z軸の加速度を用いて割合を求めたが、これに限定されず、他の軸の加速度を用いてもよい。
【0044】
なお、演算回路11は、上述した「ペース」の検出において、「トロットの候補」として検出された場合に、「トロット」の検出の対象として上記の処理を実行してもよい。
【0045】
・キャンターの検出
「キャンター」の検出は、「トロット」の検出と同一の処理により検出することができる。演算回路11は、所定期間において、z軸の加速度が所定の値以下となる時間の合計が所定の割合以上であるとき、歩様の種別を「キャンター」であると検出する。
【0046】
従って、図8は、所定期間全体の時間に対し、抽出された時間の合計が0.533であるため、「キャンター」であると検出される一例である。
【0047】
《歩行速度の特定》
動物の歩行速度は、歩様の種別と動物の歩行速度との関係を示す速度モデル121を用いて特定することができる。ここで、歩様の種別から歩行速度を導くとき、動物のサイズが歩行速度に影響する。したがって、運動量推定装置10は、体格補正を考慮して生成された速度モデル121を用いて歩行速度を求めてもよい。例えば、運動量推定装置10は、歩様の種別毎に生成された、動物の歩行速度と、動物の体高との関係を示す速度モデル121を利用する。図9に、速度モデル121の一部である、歩様の種別が「キャンター」である場合の動物の歩行速度と体高との関係を表す一例を示す。具体的には、図9は、体高が異なる4匹の動物が「キャンター」で歩行した場合の歩行速度に関し、体高と歩行速度との関係をプロットし、プロットされた4点に基づいて、特定された歩行速度と体高との点を、動物の歩行速度と体高との関係として、破線で示す。図9に示す速度モデル121の関係を用いて、動物の歩様が「キャンター」である場合、動物の体高から、歩行速度を求めることができる。なお、図9に示す一例は、速度モデル121のうち、「キャンター」の場合の関係であるが、歩様毎に、このような関係を含む。図9に示す速度モデル121を用いた場合、例えば、体高が約35cmの犬が「キャンター」で歩行したとき、その歩行速度は約2.9m/sであることを求めることができる。
【0048】
《運動量の推定》
演算回路11は、消費エネルギーを推定するため、既知の手法(例えば、“Energetics and mechanics of terrestrial locomotion.” C R Taylor, N C Heglund, G M Maloiy J Exp Biol. 1982 Apr;97:1-21)を利用することができる。具体的には、演算回路11は、上記で求めた歩行速度(vg[m/s])に加え、犬の体重(Mb[kg])を利用して、以下の式(1)を用いて、体重あたりの消費エネルギーを求めることができる。
Emetab/Mb = 10.7×Mb-0.316×vg + 6.03×Mb-0.316 …(1)
【0049】
これにより、演算回路11は、体重あたりの消費エネルギー(Emetab/Mb [Watts/kg])を推定することができる。式(1)を利用する場合、運動量推定装置10は、予め対象の動物の体重を取得する。また、演算回路11は、歩行速度vgに、歩行した時間を掛けて計算することで、歩行した移動距離を求めることができる。
【0050】
また、歩様の種別の検出において、計測期間に生じた複数の歩様の種別を検出したとき、演算回路11は、消費エネルギーの推定において、歩様の種別毎に推定された消費エネルギー(例えば、1回の散歩中の歩様毎の消費エネルギー)の合計を、計測期間における、動物の消費エネルギー(例えば、1回の散歩での消費エネルギー)の推定値として算出する。これにより、演算回路11は、例えば、散歩の全時間における消費エネルギーを推定することができる。なお、演算回路11は、演算の処理においてエラーを検出した場合、エラーを検出した期間におけるデータを、消費エネルギーの推定に使用しないようにしてもよい。
【0051】
《推定結果の送信》
演算回路11は、通信回路15を介して、推定した消費エネルギーを含む推定結果データを生成し、接続される端末20A~20Cに送信する。推定結果データは、推定した消費エネルギーに加え、計測期間における歩様の種別、各歩様の種別で歩行した歩行時間等を含むことができる。
【0052】
このように、運動量推定装置10は、加速度及び角速度の分析を用いて検出した動物の歩様から歩行速度を求め、求めた歩行速度から動物の運動量として、動物の消費エネルギーを推定することができる。
【0053】
〈計測装置〉
計測装置30は、運動量の推定対象となる動物である犬に取り付けられる。計測装置30は、図4のブロック図に一例を示すように、演算回路31と、記憶装置32、通信回路33と、センサ34とを備える。演算回路31、記憶装置32及び通信回路33は、図3を用いて上述した演算回路11、記憶装置12及び通信回路15と同様の構成である。
【0054】
演算回路31は、記憶装置32に記憶されるコンピュータプログラムである計測プログラムP3を実行することにより、センサ34による加速度及び角速度の計測、計測データの記憶、及び計測データの送信等の処理を実行する。
【0055】
記憶装置32は、演算回路31が実行する計測プログラムP3と、加速度及び角速度の計測によって得られた計測データ321等の種々のデータ等が格納される。
【0056】
通信回路33は、外部の装置(例えば、端末20A)とのデータ通信を可能とする。上述したデータ通信は、無線または有線による公知の通信規格にしたがって行われ得る。犬の散歩中にデータ通信を行う場合、無線通信であってもよい。通信回路33として、例えば、Bluetooth(登録商標)規格の通信を行うことが可能な通信回路を採用することができる。
【0057】
センサ34は、xyz軸の3軸の加速度を計測可能な3軸加速度センサであってもよい。なお、運動量の推定に角速度を用いる場合、計測装置30は、センサ34として、xyz軸の3軸の加速度と、xyz軸の3軸の角速度を計測可能な6軸センサを利用してもよい。さらに、計測装置30は、加速度センサ又は6軸センサとともに、地磁気センサを用いて、x軸、y軸及びz軸の向きを補正してもよい。
【0058】
《計測データの記録》
演算回路31は、運動状態の計測のタイミングで、センサで計測される加速度及び角速度を、計測データ321として記憶装置32に記憶させる。運動状態の計測のタイミングは、例えば、端末20Aによって操作されたタイミングであってもよい。この計測データ321は、例えば、加速度及び角速度を計測した時刻を含むことができる。
【0059】
《計測データの送信》
演算回路31は、所定のタイミングで、記憶装置32で記憶する計測データ321を、通信回路33を介して端末20Aに送信する。所定のタイミングとは、例えば、犬の散歩中の定期的なタイミングであってもよいし、犬の散歩が終了したタイミングであってもよい。例えば、演算回路31は、計測データ321を介して端末20Aに送信後に記憶装置32から計測データ321を削除してもよい。また例えば、端末20Aからの操作に応じて、記憶装置32から計測データ321を削除してもよい。
【0060】
《計測装置の取り付け》
計測装置30は、例えば、歩行速度の推定の対象の犬の散歩で利用される「リード」、「首輪」、「ハーネス」等に取り付けることができる。ここで、「リード」とは、散歩の際に人と犬を繋ぐ紐である。「首輪」は、犬の首周りに装着される輪である。例えば、この首輪は、リードを付けることが可能に形成されてもよい。「ハーネス」は、犬の胴に装着されるいわゆる胴輪である。この胴輪には、リードを取り付けることが可能に形成されてもよい。一般的には、犬の散歩の際にはリードの一端が首輪またはハーネスの少なくともいずれかに取り付けられ、他端が飼い主等の人間に保持される。
【0061】
仮にリードに計測装置30を取り付けた場合には、首輪やハーネスと比較して犬の動き以外が原因となる動きが大きいため、センサ34によって計測される動物の運動状態にブレが生じることが考えられる。したがって、計測装置30は、リードよりも犬に密着し、犬の動き以外の影響を受けにくい首輪やハーネスに取り付けることができる。また、首輪の場合、首に密着しているものの、首の周囲を回転することがあり得るが、ハーネスの場合、胴に密着して回転する恐れも少ないため、首輪よりもハーネスに取り付けられてもよい。さらに、計測装置30は、動物の背骨に沿った位置に取り付けられてもよい。したがって、計測装置30のうち特にセンサ34の位置が、犬の背骨に沿った位置に配置されるようにハーネスに取り付けられてもよい。
【0062】
〈端末〉
端末20Aは、図5のブロック図に一例を示すように、演算回路21と、記憶装置22と、入力装置23と、出力装置24と、通信回路25とを備えるスマートフォンやパーソナルコンピュータ等の情報処理装置によって実現される。演算回路21、記憶装置22及び通信回路25は、図3を用いて上述した演算回路11、記憶装置12及び通信回路15と同様の構成である。
【0063】
演算回路21は、記憶装置22に記憶されるコンピュータプログラムである管理プログラムP2を実行することにより、運動量管理システム1における動物の健康管理のための一連の処理を実行する。
【0064】
記憶装置22は、演算回路21が実行する管理プログラムP2と、運動量の推定の対象である動物の体格に関する体格データ221と、計測装置30から受信した計測データを蓄積した蓄積データ222等の種々のデータが格納される。
【0065】
入力装置23は、操作やデータの入力に利用される操作ボタン、タッチパネル、マイクロフォン等を含む。出力装置24は、処理結果やデータの出力に利用されるディスプレイ、スピーカ等を含む。
【0066】
通信回路25は、運動量推定装置10とのデータの通信を可能とする。また、通信回路25は、計測装置30とのデータの通信を可能とする。
【0067】
《体格の登録》
演算回路21は、記憶装置22に体格データ221を登録する。例えば、ユーザは、運動量管理システム1の利用を開始する初期設定のタイミングで、入力装置23を介して、犬の体格を表す所定部位のサイズ及び体重を含む体格データ221を入力する。また、演算回路21は、所定のタイミングで、入力装置23を介して取得するデータで、体格データ221を更新してもよい。所定のタイミングは、ユーザによってリクエストされたタイミングであってもよいし、演算回路21によってリクエストされる定期的なタイミングであってもよいし、運動量推定装置10によってリクエストされる定期的なタイミングであってもよい。なお、成長した犬については、通常、所定部位のサイズが大きく変化することはない。したがって、演算回路21は、初期設定のタイミングで入力された体格データ221を一度登録すると、このサイズデータD3を後の歩行速度の推定で使用することができる。一方、体重については成長した犬であっても増減することがあるため、演算回路21は、体格データ221の体重を更新することで、より正確に運動量を推定することができる。
【0068】
《計測データの蓄積》
演算回路21は、通信回路25を介して計測装置30から送信された計測データを受信すると、計測データを蓄積データ222として記憶装置22に記憶させる。
【0069】
《データの送信》
演算回路21は、所定のタイミングで、蓄積データ222から、運動量の推定の対象とする所定の期間の加速度及び角速度を抽出し、通信回路25を介して運動量推定装置10に送信する。このとき、演算回路21は、加速度及び角速度とともに、体格データ221に含まれる動物の体格に関するデータを送信してもよい。
《データの受信》
演算回路21は、加速度及び角速度を用いて運動量推定装置10で推定された運動量を含む推定結果データを、通信回路25を介して受信する。また、演算回路21は、受信した推定結果データを、ディスプレイ又はスピーカである出力装置24に出力する。
【0070】
このように、端末20Aによれば、運動量推定装置10において加速度及び角速度を分析して得られた動物の消費エネルギーを用いて、動物の健康状態を把握することができる。
【0071】
なお、図示を用いた説明を省略するが、端末20B及び端末20Cも、図5に示す端末20Aと同様に、演算回路21、記憶装置22、入力装置23、出力装置24及び通信回路25等を備える情報処理端末である。端末20B及び端末20Cは、消費エネルギーから得られる付加的な情報を生成し、端末20Aに提供することができる。
【0072】
《獣医師の端末》
図1に示す例では、端末20Bは、獣医師に保有される。端末20Bは、運動量推定装置10から送信された推定結果データを受信する。また、端末20Bは、運動量推定装置10から受信した推定結果データに含まれる推定された動物の運動量に応じて、運動量や健康状態等の健康管理に関する提案データを生成し、端末20Aに送信する。例えば、端末20Bは、動物の体重の変化と消費エネルギーの変化から、消費エネルギーが体重の変化に反映する否かの判定結果に応じた提案データを生成してもよい。具体的には、端末20Bは、体重が増加している場合であって、消費エネルギーが少ない場合、運動を増やす提案データを送信してもよい。また、消費エネルギーが増加している場合であって、体重も増加している場合、端末20Bは、食事量を制限する提案データを送信してもよい。この場合、端末20Bは、動物の年齢に応じた提案データを生成してもよい。なお、これらの提案データは、獣医師による入力装置23を介した操作に応じて生成され得る。
【0073】
《栄養士の端末》
図1に示す例では、端末20Cは、動物の栄養士に保有される。端末20Cは、運動量推定装置10から送信された推定結果データを受信する。また、端末20Cは、運動量推定装置10から受信した推定結果データに含まれる推定された動物の運動量に応じて、動物の食事等に関する提案データを生成し、端末20Aに送信してもよい。具体的には、提案データは、適正なペットフードの量や種類としてもよい。また、提案データは、栄養士のコメントを含んでいてもよい。
【0074】
また例えば、運動量推定装置10は、通信ネットワーク40を介して、ペットトレーナーの保有する端末と接続してもよい。ペットトレーナーの保有する端末は、運動量推定装置10から送信された推定結果データを受信する。また、ペットトレーナーの保有する端末は、例えば、異なる複数のタイミングで受信した推定結果データによって示される動物の体重の変化と消費エネルギーの変化から、運動の適否の判定結果に応じた運動の改善に関する提案データを生成してもよい。具体的には、ペットトレーナーの保有する端末は、動物の体重が増加している場合、歩行速度を上げる散歩を勧める提案データを送信してもよい。この場合、ペットトレーナーが保有する端末は、動物の年齢に応じた提案データを生成してもよい。具体的には、動物が高齢の犬である場合、ペットトレーナーが保有する端末は、短い散歩時間内で運動の頻度を増加させたり、短時間の散歩自体の頻度を増加させたりしてもよい。
【0075】
その他、ペット保険の保険料を提案するため、運動量推定装置10は、通信ネットワーク40を介して、保険業者の端末と接続されてもよい。また、動物の快適な生活を実現するため、運動量推定装置10は、通信ネットワーク40を介して、動物及び動物のためにオーナーが利用することのあるショップ、ホテル、トリミングサロン等の端末と接続されてもよい。
【0076】
このように、種々の専門家の利用する端末20B,20Cは、運動量推定装置10で推定された消費エネルギーから、動物の健康及び快適な生活を実現するための付加的な情報である提案データを動物のオーナーの端末20Aに提供することができる。
【0077】
〈歩行速度推定方法〉
図10に示すフローチャートを用いて、第1の実施形態に係る運動量推定装置10において実施される歩行速度の推定方法について説明する。フローチャートの個々のステップの具体的な処理は上述したので、各ステップを簡略化して説明する。
【0078】
運動量推定装置10は、端末20Aから送信された、対象の計測期間の加速度及び角速度と、動物の体格のデータとを、通信回路15及び通信ネットワーク40を介して取得する(S01)。ここで対象とする計測期間は、例えば、散歩の開始から終了までの期間である。
【0079】
運動量推定装置10は、ステップS01で取得した加速度及び角速度を用いて、z軸の加速度のパワースペクトルと、z軸の角速度のパワースペクトルを求める(S02)。
【0080】
運動量推定装置10は、ステップS02で求めたz軸の加速度のパワースペクトルと、z軸の角速度のパワースペクトルを利用して、ウォークの範囲を検出する(S03)。ここで、運動量推定装置10は、「ウォーク」の範囲として検出されない範囲を、「ペースの候補」とする。
【0081】
運動量推定装置10は、ステップS01で取得した加速度及び角速度を用いて、z軸の加速度の平均振幅及びz軸の角速度の平均振幅を求める(S04)。
【0082】
運動量推定装置10は、ステップS05で求めたz軸の加速度の平均振幅及びz軸の角速度の平均振幅を利用して、ステップS03で「ペース」の候補とされた範囲から、「ペース」の範囲を検出する(S05)。ここで、運動量推定装置10は、「ペース」の範囲としても検出されない範囲を、「トロットの候補」とする。
【0083】
運動量推定装置10は、ステップS03でウォークの範囲として検出されず、ステップS05で「ペース」の範囲として検出されない残りの範囲のz軸の加速度から、所定値を下回る範囲を抽出する(S06)。
【0084】
運動量推定装置10は、一定期間内において、ステップS05で「トロットの候補」とされた範囲のうち、ステップS06で所定値未満と抽出された範囲の割合が、所定の割合未満の範囲を、「トロット」の範囲として検出する(S07)。
【0085】
また、運動量推定装置10は、一定期間内において、ステップS05で「トロットの候補」とされた範囲のうち、ステップS06で所定値を未満と抽出された範囲の割合が、所定の割合以上の範囲を、「キャンター」の範囲として検出する(S08)。
【0086】
運動量推定装置10は、ステップS02~S08の一連の処理で、計測期間における各歩様の種別を検出すると、ステップS01で取得した体格データと、記憶装置12に記憶される速度モデル121を用いて、歩様の種別毎に、動物の歩行速度を特定する(S09)。
【0087】
運動量推定装置10は、各種別の歩様で歩行した歩行時間を求め、ステップS01で取得した体格データと、ステップS09で得られた歩様の種別毎の歩行速度と、記憶装置12に記憶される速度モデル121を用いて、歩様の種別毎の消費エネルギーを推定する(S10)。
【0088】
運動量推定装置10は、ステップS10で推定した歩様の種別毎の消費エネルギーの合計を、計測期間における消費エネルギーとして推定する(S11)。
【0089】
運動量推定装置10は、ステップS11で得られた推定結果を、通信回路15及び通信ネットワーク40を介して、端末20A~20Cに提供する(S12)。
【0090】
このように、第1の実施形態に係る運動量推定装置10は、加速度及び角速度の分析結果に基づいて、四足歩行動物の運動量を推定することができる。
【0091】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る運動量管理システムは、図1を用いて上述した運動量管理システム1と同一の構成であり、運動量推定装置10で実行される処理が異なる。具体的には、第1の実施形態に係る運動量推定装置10は、センサで計測された加速度及び角速度を分析して動物の歩様の種別を検出する。これに対し、第2の実施形態に係る運動量推定装置10は、加速度の位相を分析して動物の歩様の種別を検出する点で異なる。したがって、第2の実施形態に係る運動量推定装置10は、少なくともセンサで計測された加速度を取得する。以下で、第2の実施形態に係る運動量推定装置10の演算回路11における処理について、第1の実施形態で上述した処理と異なる点を説明する。
【0092】
第2の実施形態に係る運動量推定装置10は、動物の歩様の種別が「歩く」又は「走る」のいずれであるかを検出し、検出した歩様の種別に応じて動物の消費エネルギーを求める。ここで、「歩く」は、主に、第1の実施形態で分類した「ウォーク」、「ペース」及び「トロット」を含む。また、「走る」は、主に「キャンター」を含む。
【0093】
・走る/歩くの検出
「走る」を検出するため、演算回路11は、動物の進行方向に設けられたy軸の加速度と地面に鉛直方向に設けられたz軸の加速度とが同位相であるか否かを分析する。具体的には、演算回路11は、図11に示すように、所定期間毎に、x軸の加速度の最大値と、y軸の加速度の最大値を抽出し、複数の所定期間のうち選択された任意の期間におけるy軸の最大値(Y1)と、選択された任意の期間内にあるz軸の最大値(Z1)の差分の絶対値(|Y1-Z1|)を、第1の絶対値として求める。ここで、所定期間は、歩行する動物の足の動きに対応する周期に応じて定めることができる。例えば、「動物が右前足を出してから、次に右前足を出すまでの期間」や、「動物が右前足を出してから、左前足を出すまでの期間」に応じて定めることができる。さらに、所定期間は、動物の個体毎に調整可能としても良い。例えば、動物のサイズ、年齢、運動特性等に応じて決定し、又は、調整可能としてもよい。
【0094】
また、演算回路11は、選択された任意の期間におけるy軸の最大値(Y1)と、選択された任意の期間に続く所定期間におけるy軸の最大値(Y2)との差分の絶対値(|Y1-Y2|)を、第2の絶対値として求める。または、演算回路11は、選択された任意の期間におけるz軸の最大値(Z1)と、選択された任意の期間に続く所定期間におけるz軸の最大値(Z2)との差分の絶対値(|Z1-Z2|)を、第3の絶対値として求める。ここで、演算回路11は、第2の絶対値又は第3の絶対値の少なくともいずれかを求めることで、y軸の加速度とz軸の加速度とが同位相であるか否かを分析することができる。
【0095】
演算回路11は、求めた第1の絶対値と第2の絶対値とを比較する。具体的には、第1の絶対値が第2の絶対値の1/2以下であるか否かを判定する。または、演算回路11は、求めた第1の絶対値と第3の絶対値とを比較する。具体的には、第1の絶対値が第3の絶対値の1/2以下であるか否かを判定する。
【0096】
演算回路11は、第1の絶対値が、第2の絶対値の1/2以下であるとき、及び/又は、第1の絶対値が、第3の絶対値の1/2以下であるとき、演算回路11は、y軸の加速度とz軸の加速度とが同位相であると分析する。また、演算回路11は、y軸の加速度とz軸の加速度とが同位相であると分析したとき、動物の歩様は「歩く」であると検出する。
【0097】
演算回路11は、第1の絶対値が、第2の絶対値の1/2より大きいとき、及び/又は、第1の絶対値が、第3の絶対値の1/2より大きいとき、y軸の加速度とz軸の加速度とが逆位相であると分析する。また、演算回路11は、y軸の加速度とz軸の加速度とが同位相であると分析したとき、動物の歩様は「走る」であると検出する。
【0098】
このように、運動量推定装置10は、加速度の位相の分析結果に基づいて、計測期間における四足歩行動物の運動量を推定することができる。
【0099】
〈歩行速度推定方法〉
図12に示すフローチャートを用いて、第1の実施形態に係る運動量推定装置10において実施される歩行速度の推定方法について説明する。図12のフローチャートにおいて、図9で上述した処理と異なる処理については符号に下線を付す。
【0100】
運動量推定装置10は、通信ネットワーク40を介して、端末20Aから送信された、対象の計測期間の加速度と、動物の体格のデータとを取得する(S21)。ここで対象とする計測期間は、例えば、散歩の開始から終了までの期間である。
【0101】
運動量推定装置10は、ステップS21で取得した加速度用いて、y軸の加速度の位相とz軸の加速度の位相を比較する(S22)。
【0102】
運動量推定装置10は、ステップS22の比較の結果、y軸の角速度の位相とz軸の加速度の位相が同位相の範囲を、歩くの範囲と検出する(S23)。
【0103】
運動量推定装置10は、ステップS22の比較の結果、y軸の角速度の位相とz軸の加速度の位相が逆位相の範囲を、走るの範囲と検出する(S24)。
【0104】
運動量推定装置10は、ステップS22~S24の一連の処理で、計測期間における各歩様の種別を検出すると、ステップS21で取得した体格データと、記憶装置12に記憶される速度モデル121を用いて、歩様の種別毎に、動物の歩行速度を特定する(S09)。
【0105】
運動量推定装置10は、各種別の歩様で歩行した歩行時間を求め、ステップS01で取得した体格データと、ステップS09で得られた歩様の種別毎の歩行速度と、記憶装置12に記憶される速度モデル121を用いて、歩様の種別毎の消費エネルギーを推定する(S10)。
【0106】
運動量推定装置10は、ステップS10で推定した歩様の種別毎の消費エネルギーの合計を、計測期間における消費エネルギーとして推定する(S11)。
【0107】
運動量推定装置10は、ステップS11で得られた推定結果を、通信ネットワーク40を介して、端末20A~20Cに提供する(S12)。
【0108】
このように、運動量推定装置10は、計測期間における歩様を検出して歩行速度を特定し、消費エネルギーを推定することができる。
【0109】
〈変形例1〉
上述した各実施形態において、運動量推定装置10は、計測期間における歩様を検出し、運動量を推定する。一方、例えば、散歩中であっても、対象の犬は歩行するだけでなく、停止することもある。また、対象の犬は、胴震いする等の歩行以外の動作をすることもある。したがって、前処理として、このような停止や胴震いの動作を除く処理を実行し、その後に各種の歩様を検出することで、より高精度に運動量を推定することができる。なお、変形例1に係る運動量推定装置10も、図3を用いて上述した構成であるため、図3を参照して説明する。
【0110】
《前処理》
演算回路11は、前処理として、端末20Aから取得した加速度を用いて、歩様以外の動作を検出し、歩様以外の動作を除いた期間における消費エネルギーを推定する。以下に、前処理において、歩様以外の動作として実行される、計測データの分析及び検出について説明する。以下、演算回路11は、前処理において「停止」及び「胴震い」を検出する一例を説明する。
【0111】
・停止の検出
「停止」を検出するため、演算回路11は、x軸の加速度、y軸の加速度及びz軸の加速度を取得し、分析する。また、演算回路11は、x軸の加速度、y軸の加速度及びz軸の加速度の少なくともいずれが、それぞれ所定の範囲内であるか否かに応じて、動物の停止を検出することができる。ここでは、演算回路11は、z軸の加速度については、重力が加わるため、重力加速度の影響を考慮して補正し、各軸の加速度の判定に同一の範囲を利用する例で説明する。具体的には、演算回路11は、z軸の加速度の値から重力加速度として1[G]を減算して調整する。
【0112】
図13Aに、x軸の加速度を示す。図13Bに、y軸の加速度を示す。図13Cに、重力加速度の影響を調整したz軸の加速度を示す。また、図13A図13Cにおいて、矢印で示される範囲が、目視において、停止であると認められた範囲である。停止である場合、各軸の加速度の変化が小さくなる。したがって、運動量推定装置10は、停止と判定できる加速度の範囲を設け、各軸の加速度が、それぞれ当該範囲内であるかに応じて、停止を検出する。
【0113】
図13A図13Cに示す例では-0.5[G]~0.5[G]を、停止を検出する範囲とした一例である。図13Aでは、点Px1が、x軸の加速度が当該範囲を超えた時点であり、また、点Px2が、x軸の加速度が、当該範囲内に収まった時点である。図13Bでは、点Py1が、y軸の加速度が、当該範囲を超えた時点であり、また、点Py2が、y軸の加速度が当該範囲内に収まった時点である。さらに、図13Cでは、点Pz1が、z軸の加速度を調整後の値が当該範囲を超えた時点であり、また、Pz2が、z軸の加速度を調整後の値が、当該範囲内に収まった時点である。図13A図13Cからも、各軸の加速度又は加速度を調整した値の少なくともいずれかが、-0.5[G]~0.5[G]の範囲内である場合、演算回路11は、停止と検出することができることがわかる。なお、ここで停止の検出に利用すると設定した範囲(-0.5[G]~0.5[G])は限定されず、例えば、動物の特性等に応じて設定することができる。上記範囲を調整する制御信号は、オーナーの端末20Aを介して、動物毎の情報として、予め運動量推定装置10に登録されていてもよい。また例えば、散歩時の動物の状態に応じて、散歩時の特定の期間毎に、オーナーの端末20Aから運動量推定装置10に送信されてもよい。動物の特性に応じて上記範囲を調整する値は、例えば、動物が静止しているように見える場合であっても、微妙に震えている場合、その震えを胴震い等と検出されないために、上記の停止の範囲を広く調整する値である。また例えば、上記範囲を調整する値は、動物の特性に応じて調整する値は、動物が落ち着き無く、歩行や胴震いをしていないにもかかわらず、身体が動いている場合、その身体の動きを歩行や胴震い等と検出されないために上記の停止の範囲を広く調整する値である。この調整値は、上記範囲の上限と下限の両方を同一のレンジで調整する値であってもよいし、別々のレンジで調整する値であってもよい。
【0114】
・胴震いの検出
「胴震い」を検出するため、演算回路11は、x軸の加速度を取得し、分析する。また、演算回路11は、x軸の加速度のピークの変化が所定の条件を満たすか否かに応じて、胴震いを検出することができる。例えば、演算回路11は、x軸の加速度が所定の範囲外(例えば、-0.5[G]~0.5[G]の範囲外)で、間隔が所定の範囲内(例えば、200[ms]以内)のピークを、所定回(例えば、4回以上)連続して検出することで、胴震いを検出する。
【0115】
図14Aは、x軸の加速度を用いて、胴震いの開始を検出する一例を示す。演算回路11は、x軸の加速度から-0.5[G]~0.5[G]の範囲外に存在する複数のピークを検出する。図14Aにおいて、-0.5[G]~0.5[G]の範囲外に存在するピークを三角印で示す。また、演算回路11は、前のピークとの間隔が、所定時間内(例えば、200[ms]以内)に存在する場合、カウント数をインクリメントする。図14Aにおいて、ピークを示す黒色の三角印上に記載される0、1、2等の数値が、カウントされた値である。また、各ピークの間を示す170、140等の数値は、隣り合うピークの間隔([ms])である。図14Aに示す例において、演算回路11は、カウント「0」の状態で-0.5[G]~0.5[G]の範囲外でピークを検出し、次に-0.5[G]~0.5[G]の範囲外でピークを検出したとき、ピーク間の間隔が200[ms]以内であったため、カウントを「1」とインクリメントする。また、演算回路11は、次に検出したピークも-0.5[G]~0.5[G]の範囲外であるため、カウント数を「2」とインクリメントする。演算回路11は、その次に検出したピーク(図14Aの白抜きの三角印)が、-0.5[G]~0.5[G]の範囲外であるため、カウント数を「0」にリセットする。続いて、演算回路11は、-0.5[G]~0.5[G]の範囲外でピークを検出するが、この前の-0.5[G]~0.5[G]の範囲外のピークとの間隔が、290であり、200[ms]を超える。したがって、演算回路11は、カウント数をインクリメントすることなく、カウント数「0」のまま、次のピークの検出の処理に進む。図14Aに示す例では、続いて、演算回路11は、-0.5[G]~0.5[G]の範囲外で、それぞれの間隔が200[ms]以内のピークを、4回連続して抽出する。したがって、演算回路11は、各ピークでカウント数をインクリメントすることで、カウント数が「4」となる。このカウント数のインクリメントが続き、所定数以上(例えば、“4”以上)となったとき、カウントの開始のピークのタイミングに遡って「胴震いの開始」として検出する。
【0116】
図14Bは、x軸の加速度を用いて、胴震いの終了を検出する一例を示す。胴震いの開始を検出した後、演算回路11は、x軸の加速度が-0.5[G]~0.5[G]の範囲外に存在するか否かを検出する。また、x軸の加速度が-0.5[G]~0.5[G]の範囲内となった後、500[ms]の間もx軸の加速度が継続して-0.5[G]~0.5[G]の範囲内であるとき、演算回路11は、「胴震いの終了」として検出する。
【0117】
演算回路11は、図14A及び図14Bを用いて上述したように、胴震いの開始及び終了を検出することで、計測期間における胴震いの期間を検出することができる。なお、上述した胴震いの検出に用いられた範囲(-0.5[G]~0.5[G])及び数値(200[ms]、“4”、500[ms])は、限定されず、図13A~13Cで上述した場合と同様に、動物の特性等に応じて定めることができる。上記範囲を調整する制御信号は、オーナーの端末20Aを介して、動物毎の情報として、予め運動量推定装置10に登録されていてもよい。
【0118】
〈変形例2〉
第2の実施形態において上述した例では、第1乃至第3の絶対値を求め、これらの絶対値を用いて同位相と逆位相のいずれであるかを分析し、「歩く」と「走る」を検出する一例で説明した。変形例2に係る運動量推定装置の演算回路11は、特定の範囲でのY軸加速度の最大値YMAXと、対応するZ軸加速度の値ZYMAXを抽出しその差を用いて同位相と逆位相のいずれであるかを分析し、「歩く」と「走る」を検出する。
【0119】
図15Aに、同位相であり、「歩く」と判定される一例を示す。(1)演算回路11は、所定の第1の区間TP1におけるZ軸加速度の最大値である第1の最大値ZMAX1を取得する。(2)また、演算回路11は、第1の区間TP1に続く、所定の第2の区間TP2におけるZ軸加速度の最大値である第2の最大値ZMAX2を取得する。ここで、各区間は、Z軸加速度の任意の極小値から、この任意の極小値の次の極小値までの期間に応じて定めることができる。(3)次に、演算回路11は、第1の最大値ZMAX1のタイミング(開始から4.303秒経過時)から、第2の最大値ZMAX2のタイミング(開始から、4.443秒経過時)までの間TPで、Y軸加速度の最大値YMAX(1.0402[G])を取得する。(4)続いて、演算回路11は、取得されたY軸加速度の最大値YMAXのタイミング(開始から、4.443秒経過時)の、Z軸加速度の値ZYMAX(2.2478[G])を抽出する。(5)さらに、演算回路11は、このようにして求めたY軸加速度の最大値YMAXから、対応するZ軸加速度の値ZYMAXを減算した値YMAX-ZYMAX(-1.4378[G])を求める。図15Aに示す一例のように、求めた差YMAX-ZYMAXが、所定の範囲内(例えば、閾値0.5[G]未満)である場合、演算回路11は、同位相であるとし、この第2の最大値ZMAX2のタイミング以降は「歩く」であると判定する。一方、求めた差が所定の範囲外である場合、演算回路11は、逆位相であるとし、この第2の最大値ZMAX2のタイミング以降は「走る」であると判定する。
【0120】
図15Bに、逆位相であり、「走る」と判定される一例を示す。(1)、(2)この場合も、演算回路11は、図15Aを用いて上述した方法と同様の方法で第1の最大値ZMAX1と第2の最大値ZMAX2を取得する。(3)また、演算回路11は、第1の最大値ZMAX1のタイミング(開始から5.677秒)から、第2の最大値ZMAX2のタイミング(開始から5.947秒)までの間TPで、Y軸加速度の最大値YMAX(1.7077[G])を取得する。(4)続いて、演算回路11は、取得されたY軸加速度の最大値YMAXのタイミング(開始から、5.857秒)の、Z軸加速度の値YZMAX(0.4707[G])を抽出する。(5)さらに、演算回路11は、Y軸加速度の最大値YMAXから、対応するZ軸加速度の値ZYMAXを減算した値YMAX-ZYMAX(1.237[G])を求める。図15Bに示す一例のように、求めた差YMAX-ZYMAXが所定の範囲外(例えば、閾値0.5[m]以上)である場合、演算回路11は、逆位相であるとし、この第2の最大値ZMAX2のタイミング以降は「走る」であると判定する。
【0121】
演算回路11では、このように、特定の範囲でのY軸加速度の最大値YMAXから、対応するZ軸加速度の値ZYMAXを減算した値YMAX-ZYMAXを用いる方法により、「歩く」と「走る」を検出してもよい。具体的には、演算回路11は、Z軸加速度から継続して検出される極小値を用いて上述した処理を繰り返すことで、動物の歩様の検出を継続することができる。ここで、図15Aに示す一例では、ZMAX2のタイミング以降をそれぞれ歩くとして示すが、それより前の時点でもYMAX-ZMAXが所定の範囲内であれば、歩くとして検出される。また、図15Bに示す一例でも、ZMAX2のタイミング以降を走るとして示すが、それより前の時点でもYMAX-ZMAXが所定の範囲外であれば、走るとして検出される。
【0122】
〈変形例3〉
上述した各実施形態において、運動量管理システム1は、運動量推定装置10と、動物のオーナーに利用される端末20Aと、動物に取り付けられる計測装置30とを含む一例で説明した。しかしながら、運動量管理システム1は、この形態に限定されない。例えば、端末20A自体が、運動量推定装置10として機能してもよい。
【0123】
以上のように、本出願において開示する技術の例を示し、上記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。
【0124】
本開示の請求項に記載の運動量推定装置、運動量管理システム、および運動量推定方法は、ハードウェア資源(例えば、プロセッサ、メモリ)及びコンピュータプログラムとの協働などによって、実現される。
【0125】
<1>
演算回路を有し、計測期間における四足歩行の動物の運動量を推定する運動量推定装置であって、
前記演算回路は、
前記動物に取り付けられたセンサで計測された加速度及び角速度を取得し、
前記加速度及び前記角速度を分析し、
前記分析で得られた分析結果に基づいて、前記計測期間における前記動物の歩様の種別を検出し、
検出された前記歩様の種別に基づいて、前記加速度及び前記角速度の値から前記動物の歩行速度を求め、
求められた前記歩行速度に応じて、前記計測期間における、前記動物の運動量を推定する
運動量推定装置。
【0126】
<2>
前記演算回路は、
加速度及び角速度により分析された値の範囲と歩様の種別とが予め関連付けられるデータを参照して、前記分析で得られた分析結果に応じて、前記計測期間における前記動物の歩様の種別を検出し、
歩様の種別と動物の歩行速度とが予め関連付けられるデータを参照して、検出された前記歩様の種別に応じて、前記動物の歩行速度を求め、
歩行速度と運動量とが予め関連付けられるデータを参照して、求められた前記歩行速度に応じて、前記計測期間における、前記動物の運動量を推定する
<1>記載の運動量推定装置。
【0127】
<3>
演算回路を有し、計測期間における四足歩行の動物の運動量を推定する運動量推定装置であって、
前記演算回路は、
前記動物に取り付けられたセンサで計測された加速度を取得し、
前記加速度の位相を分析し、
前記分析で得られた分析結果に基づいて、前記計測期間における前記動物の歩様の種別を検出し、
検出された前記歩様の種別に基づいて、前記動物の歩行速度を求め、
求められた前記歩行速度に応じて、前記計測期間における、前記動物の運動量を推定する
運動量推定装置。
【0128】
<4>
前記演算回路は、
加速度の位相の範囲と、歩様の種別とが予め関連付けられるデータを参照して、前記分析で得られた分析結果に応じて、前記計測期間における前記動物の歩様の種別を検出し、
歩様の種別と動物の歩行速度とが予め関連付けられるデータを参照して、検出された前記歩様の種別に応じて、前記動物の歩行速度を求め、
歩行速度と運動量とが予め関連付けられるデータを参照して、求められた前記歩行速度に応じて、前記計測期間における、前記動物の運動量を推定する
<3>記載の運動量推定装置。
【0129】
<5>
前記演算回路は、
前記加速度及び前記角速度の分析では、
前記センサで計測された前記角速度から、角速度のパワースペクトルを求めて、角速度のパワースペクトルの最大値の場合の周波数を特定し、
前記センサで計測された前記加速度から、加速度のパワースペクトルを求め、
前記加速度のパワースペクトルから、前記角速度のパワースペクトルの最大値の場合の周波数を所定倍した値のときの前記加速度のパワースペクトルの値を抽出し、
前記歩様の種別の検出では、
抽出された前記加速度のパワースペクトルの値が所定の範囲内であるとき、前記歩様の種別をウォークであると検出する
<1>または<2>に記載の運動量推定装置。
【0130】
<6>
前記演算回路は、
前記歩様の種別の検出では、
抽出された前記加速度のパワースペクトルの値が前記所定の範囲外であるとき、前記歩様の種別をペースであると検出する
<5>記載の運動量推定装置。
【0131】
<7>
前記演算回路は、
前記加速度及び前記角速度の分析では、
前記計測期間における前記加速度の最大値の平均値及び最小値の平均値を求めて、前記加速度の平均振幅を算出し、
前記計測期間における前記角速度の最大値の平均値及び最小値の平均値を求めて、前記角速度の平均振幅を算出し、
前記歩様の種別の検出では、
算出した前記加速度の平均振幅又は前記角速度の平均振幅の少なくともいずれかが、それぞれ定められる所定の条件を満たさないとき、前記歩様の種別をペースであると検出する
<1>、<2>、<5>又は<6>のいずれか1つに記載の運動量推定装置。
【0132】
<8>
前記演算回路は、
前記歩様の種別の検出では、
算出した前記加速度の平均振幅及び前記角速度の平均振幅の両方が、それぞれ定められる所定の条件を満たすとき、前記歩様の種別をトロットであると検出する
<1>、<2>、<5>から<7>のいずれか1つに記載の運動量推定装置。
【0133】
<9>
前記演算回路は、
前記加速度及び前記角速度の分析では、
所定期間における加速度が所定の値以下となる時間を求め、
前記歩様の種別の検出では、
前記所定期間における加速度が所定の値以下となる時間が所定の割合未満であるとき、トロットであると検出する
<1>、<2>、<5>から<8>のいずれか1つに記載の運動量推定装置。
【0134】
<10>
前記演算回路は、
前記歩様の種別の検出では、
前記所定期間における加速度が所定の値以下となる時間が所定の割合以上であるとき、キャンターであると検出する
<9>に記載の運動量推定装置。
【0135】
<11>
前記演算回路は、
前記加速度の位相の分析では、第1の軸の加速度と第2の軸の加速度とが同位相であるか否かを分析し、
前記歩様の種別の検出では、
前記第1の軸の方向の加速度と、前記第2の軸の方向の加速度とが同位相であるとき、前記動物の歩様の種別は、歩く、であると検出し、
前記第1の軸の方向の加速度と、前記第2の軸の方向の加速度とが逆位相であるとき、前記動物の歩様の種別は、走る、であると検出する
<3>または<4>に記載の運動量推定装置。
【0136】
<12>
前記演算回路は、
前記位相の分析では、
第1の絶対値として、任意の所定間隔における前記第1の軸の方向の加速度の最大値と、前記任意の所定間隔における前記第2の軸の方向の加速度の最大値との差分の絶対値を求めるとともに、
第2の絶対値として、前記第1の軸の方向の加速度の最大値、前記任意の所定間隔に続く次の所定間隔における前記第1の軸の方向の加速度の最大値との差分の絶対値を求め、及び/又は、第3の絶対値として、前記第2の軸の方向の加速度の最大値Z1と、前記次の所定間隔における前記第2の軸の方向の加速度の最大値Z2との差分の絶対値を求め、
前記第1の絶対値が、前記第2の絶対値の1/2以下であるとき、及び/又は、前記第1の絶対値が、前記第3の絶対値の1/2以下であるとき、
前記第1の軸の方向の加速度と前記第2の軸の方向の加速度とが同位相であると判定する
<11>記載の運動量推定装置。
【0137】
<13>
前記演算回路は、
前記位相の分析では、
第1の絶対値として、任意の所定間隔における前記第1の軸の方向の加速度の最大値と、前記任意の所定間隔における前記第2の軸の方向の加速度の最大値との差分の絶対値を求めるとともに、
第2の絶対値として、前記第1の軸の方向の加速度の最大値、前記任意の所定間隔に続く次の所定間隔における前記第1の軸の方向の加速度の最大値との差分の絶対値を求め、及び/又は、第3の絶対値として、前記第2の軸の方向の加速度の最大値Z1と、前記次の所定間隔における前記第2の軸の方向の加速度の最大値Z2との差分の絶対値を求め、
前記第1の絶対値が、前記第2の絶対値の1/2より大きいとき、及び/又は、前記第1の絶対値が、前記第3の絶対値の1/2より大きいとき、
前記第1の軸の方向の加速度と前記第2の軸の方向の加速度とが逆位相であると判定する
<11>又は<12>に記載の運動量推定装置。
【0138】
<14>
前記演算回路は、
前記動物の体格を表す値を取得すると、
前記歩様の種別と、前記動物の歩行速度との対応では、前記歩様の種別毎の、前記動物の体格を表す値と、前記体格の動物の歩行速度との対応を予め関連付け、
前記歩行速度を求める際、
前記検出された歩様の種別と、取得した前記動物の体格を表す値とに応じて、
前記動物の歩行速度を求める
<1>から<13>のいずれか1つに記載の運動量推定装置。
【0139】
<15>
前記演算回路は、
前記位相の分析では、第1の軸の方向の加速度の任意の極小値のタイミングから、当該任意の極小値の次の極小値のタイミングまでの、第2の軸の方向の加速度の最大値を抽出し、
前記第2の軸の方向の加速度の最大値のタイミングの、前記第1の軸の加速度の値を前記第2の軸の方向の加速度の最大値に対応する値として抽出し、
前記第2の軸の方向の加速度の最大値と、前記対応する値との差が所定範囲内であるとき同位相と判定し、前記差が所定範囲外であるとき逆位相であると判定する
<11>に記載の運動量推定装置。
【0140】
<16>
前記歩様の種別の検出では、前記計測期間に生じた複数の歩様の種別を検出可能であって、
前記演算回路は、
前記運動量の算出では、
歩様の種別毎に求めた運動量の合計を、前記計測期間における、前記動物の運動量として算出する
<1>から<15>のいずれか1つに記載の運動量推定装置。
【0141】
<17>
前記演算回路は、
前処理として、加速度を用いて、歩様以外の動作を検出し、
前記歩様以外の動作を除いた期間における運動量を算出する
<1>から<16>のいずれか1つに記載の運動量推定装置。
【0142】
<18>
前記演算回路は、
前記歩様以外の動作の検出として、所定期間内における異なる複数の方向の加速度の少なくともいずれかが、それぞれ所定範囲内であるか否かに応じて、前記動物の停止を検出する
<17>記載の運動量推定装置。
【0143】
<19>
前記演算回路は、
前記歩様以外の動作の検出として、所定期間内における加速度の複数のピーク値が所定範囲内であるかを判定し、隣り合うピーク値の時間間隔が、所定間隔である期間に応じて、前記動物の胴震いを検出する
<17>または<18>に記載の運動量推定装置。
【0144】
<20>
前記演算回路は、
求めた前記運動量に基づく推定結果データを、登録される端末に送信する
<1>から<19>のいずれか1つに記載の運動量推定装置。
【0145】
<21>
<20>に記載の運動量推定装置と、前記動物のオーナーの端末と、前記動物の健康を管理する管理者の端末とが接続されるシステムであって、
前記管理者の端末は、
前記推定結果データを受信すると、前記推定結果データに含まれる運動量に応じた前記動物の生活に関する提案を含む提案データを生成し、前記オーナーの端末に送信する
運動量管理システム。
【0146】
<22>
演算回路を有する運動量推定装置において、計測期間における四足歩行の動物の運動量を推定する運動量推定方法であって、
前記演算回路において、
前記動物に取り付けられたセンサで計測された加速度及び角速度を取得し、
前記加速度及び前記角速度を分析し、
前記分析で得られた分析結果に基づいて、前記計測期間における前記動物の歩様の種別を検出し、
検出された前記歩様の種別に基づいて、前記加速度及び前記角速度の値から前記動物の歩行速度を求め、
求められた前記歩行速度に応じて、前記計測期間における、前記動物の運動量を推定する
運動量推定方法。
【0147】
<23>
<22>に記載の運動量推定方法を、前記演算回路に実行させるためのコンピュータプログラム。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本開示の運動量推定装置、運動量管理システム、運動量推定方法及びコンピュータプログラムは、四足の動物の運動量の把握に有用である。
【符号の説明】
【0149】
1 運動量管理システム
10 運動量推定装置
20A~10C 端末
30 計測装置
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15A
図15B