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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055191
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】放電回路
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240411BHJP
   H01H 37/54 20060101ALI20240411BHJP
   H01H 37/52 20060101ALI20240411BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H02J7/00 302A
H01H37/54 C
H01H37/52 E
H02J7/00 S
H02J7/00 301C
H02J7/04 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161913
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】390025140
【氏名又は名称】ボーンズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】公文 高博
(72)【発明者】
【氏名】鈴間 孝明
【テーマコード(参考)】
5G041
5G503
【Fターム(参考)】
5G041AA20
5G041DA11
5G041DB01
5G041DC08
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503CB13
5G503DA04
5G503DA07
5G503FA02
5G503FA16
5G503FA18
5G503FA19
5G503GA11
(57)【要約】
【課題】2次電池セルの内部で短絡が生じたときであっても、2次電池セルの内部での温度上昇を抑制できる放電回路を提供する。
【解決手段】放電回路100は、2次電池セル111に対して並列に接続される第1熱応動スイッチ素子1を含む。第1熱応動スイッチ素子1は、2次電池セル111の発熱に伴いクローズする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次電池セルに対して並列に接続される第1熱応動スイッチ素子を含み、
前記第1熱応動スイッチ素子は、前記2次電池セルの発熱に伴いクローズする、
放電回路。
【請求項2】
前記第1熱応動スイッチ素子は、
固定接点を有する固定片と、
可動接点を有し、弾性変形することにより前記可動接点を前記固定接点に接触可能に配された可動片と、
温度上昇に伴って変形することにより該可動片を前記可動接点が前記固定接点から離隔するオープン状態から前記可動接点が前記固定接点に接触するクローズ状態へと移行させる熱応動素子とを備える、請求項1に記載の放電回路。
【請求項3】
前記第1熱応動スイッチ素子に対して直列に接続される負荷を含む、請求項1に記載の放電回路。
【請求項4】
前記負荷は、電気エネルギーを光エネルギー、運動エネルギー、音エネルギー及び化学エネルギーのうち少なくとも一つのエネルギーに変換する、請求項3に記載の放電回路。
【請求項5】
前記2次電池セルに対する前記負荷の距離は、前記2次電池セルに対する前記第1熱応動スイッチ素子の距離よりも大きい、請求項3に記載の放電回路。
【請求項6】
前記負荷は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する抵抗発熱体である、請求項5に記載の放電回路。
【請求項7】
前記2次電池セルに対して直列に接続される第2熱応動スイッチ素子を含み、
前記第2熱応動スイッチ素子は、前記2次電池セルの発熱に伴いオープンする、請求項1に記載の放電回路。
【請求項8】
前記第2熱応動スイッチ素子の動作温度は、前記第1熱応動スイッチ素子の動作温度よりも低い、請求項7に記載の放電回路。
【請求項9】
前記第2熱応動スイッチ素子は、前記固定片と可動片とを導通させる正特性サーミスターを含み、前記第1熱応動スイッチ素子は、正特性サーミスターを含まない、請求項7に記載の放電回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2次電池セルを保護するデバイスとしてブレーカーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-079594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されているブレーカーは、2次電池セル及び負荷によって構成される回路に直列に接続され、2次電池セルの温度上昇に伴い上記回路を遮断して、2次電池セルを保護するように構成されている。
【0005】
しかしながら、何らかの事情により2次電池セルの内部構造が破壊され、内部で短絡が生じたとき、ブレーカーが動作して上記回路を遮断したとしても、2次電池セルの内部の短絡回路を遮断することができないため、新たな技術が要望されている。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたものであり、2次電池セルの内部で短絡が生じたときであっても、2次電池セルの内部での温度上昇を抑制できる放電回路を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、2次電池セルに対して並列に接続される第1熱応動スイッチ素子を含み、前記第1熱応動スイッチ素子は、前記2次電池セルの発熱に伴いクローズする、放電回路である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の放電回路では、2次電池セルの発熱に伴い第1熱応動スイッチ素子がクローズし、第1熱応動スイッチ素子を含む回路が構築される。この回路は、2次電池セルの内部に生じた短絡回路に対して並列に接続されるバイパス回路として機能し、2次電池セルを放電する。これにより、2次電池セルに蓄えられた電荷の一部が2次電池セル外の放電回路で消費されるため、2次電池セルの内部での温度上昇が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態である放電回路を含む電気回路の構成を示す回路図。
図2図1の第1熱応動スイッチ素子の構成を示す組み立て前の斜視図。
図3】通常のオープン状態における図2の第1熱応動スイッチ素子を示す断面図。
図4】異常時のクローズ状態における図2の第1熱応動スイッチ素子を示す断面図。
図5図1の放電回路の変形例の回路図。
図6図5の放電回路の変形例の回路図。
図7図5の放電回路の別の変形例を含む電気回路の回路図。
図8図7の第2熱応動スイッチ素子の構成を示す組み立て前の斜視図。
図9】通常のクローズ状態における図8の第2熱応動スイッチ素子を示す断面図。
図10】異常時のオープン状態における図8の第2熱応動スイッチ素子を示す断面図。
図11図7の放電回路が温度上昇する際に、第1熱応動スイッチ素子よりも早く第2熱応動スイッチ素子が動作している状態を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態である放電回路100を含む電気回路500を示している。本実施形態の電気回路500は、2次電池110と、負荷120と給電部130とを含んでいる。
【0011】
電気回路500は、放電ライン501と充電ライン502とを有する。放電ライン501及び充電ライン502は、放電回路100に接続される接続ライン503を共有している。
【0012】
2次電池110は、放電ライン501を介して負荷120に電力を供給し放電する。2次電池110は、充電ライン502を介して給電部130から電力の供給を受け、充電される。2次電池110は、放電回路100の一部を構成する。
【0013】
2次電池110は、少なくとも1つの2次電池セル111を含んでいる。本実施形態の2次電池110は、複数の2次電池セル111が直列に接続されてなる。
【0014】
放電回路100は、2次電池セル111に対して並列に接続される第1熱応動スイッチ素子1を含んでいる。第1熱応動スイッチ素子1は、周囲の温度変化に伴い、開閉動作する。
【0015】
本実施形態の第1熱応動スイッチ素子1は、2次電池セル111の発熱の影響を受ける位置に配されている。第1熱応動スイッチ素子1は、2次電池セルの発熱に伴いクローズし、第1熱応動スイッチ素子1を含む回路が構築される。この回路は、2次電池セル111の内部に生じた短絡回路に対して並列に接続されるバイパス回路として機能し、2次電池セル111を放電する。これにより、2次電池セル111に蓄えられた電荷の一部が2次電池セル111外の放電回路100で消費されるため、2次電池セル111の内部での温度上昇が抑制される。
【0016】
図2乃至4は、第1熱応動スイッチ素子1の構成を示している。第1熱応動スイッチ素子1は、固定片2と、可動片4と、熱応動素子5とを備えている。第1熱応動スイッチ素子1は、固定片2と、可動片4と、熱応動素子5は、ケース10に収容されている。ケース10は、ケース本体(第1ケース)7とケース本体7に装着される蓋部材(第2ケース)8等によって構成されている。
【0017】
固定片2は、例えば、銅等を主成分とする金属板(この他、銅-チタニウム合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成され、ケース本体7にインサート成形により埋め込まれている。固定片2は、固定接点21と、外部回路と電気的に接続される端子22を有している。固定接点21は、ケース10の内部空間に収容されている。端子22は、ケース10の端縁の側壁から外側に突出している。
【0018】
固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル-銀合金の他、銅-銀合金、金-銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により可動接点41に対向する位置に形成され、ケース本体7の内部に形成されている開口73aの一部から露出されている。
【0019】
端子22は、固定片2の一端に形成されている。端子22はケース本体7の端縁の側壁から外側に突出している。
【0020】
本出願においては、特に断りのない限り、固定片2において、固定接点21が形成されている側の面(すなわち図2において上側の面)を第1面、その反対側の面を第2面として説明している。固定接点21から可動接点41に向く方向を第1方向と、第1方向とは反対の方向を第2方向とそれぞれ定義した場合、第1面は第1方向を向き、第2面は第2方向を向く。他の部品、例えば、可動片4及び熱応動素子5等についても同様である。
【0021】
可動片4は、銅等を主成分とする板状の金属材料をプレス加工することにより、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。
【0022】
可動片4の長手方向の先端部には、可動接点41が形成されている。可動接点41は、例えば、固定接点21と同等の材料によって形成され、溶接の他、クラッド、かしめ(crimping)等の手法によって可動片4の先端部に接合されている。
【0023】
可動片4の長手方向の他端部には、端子42が形成されている。端子42はケース10の端縁の側壁から外側に突出している。端子22及び端子42のうち、いずれか一方が2次電池110の陽極と接続され、他方が陰極と接続される。
【0024】
可動片4は、可動接点41と端子42の間に、当接部43及び弾性部44を有している。当接部43は、端子42と弾性部44との間でケース本体7及び蓋部材8と当接する。当接部43は、可動片4の短手方向に翼状に突出する突出部43aを有する。突出部43aが設けられていることにより、当接部43が幅広く大きな領域でケース本体7及び蓋部材8によって挟み込まれ、可動片4がケース10に対して強固に固定される。
【0025】
弾性部44は、当接部43から可動接点41の側に延出されている。可動片4は、弾性部44の基端側の当接部43で、ケース10によって片持ち支持され、その状態で弾性部44が弾性変形することにより、弾性部44の先端部に形成されている可動接点41が可動片4の厚さ方向に移動して、固定接点21と可動接点41との距離が変動し、第1熱応動スイッチ素子1の開閉が実現される。
【0026】
可動片4は、弾性部44において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収納できる限り特に限定はなく、動作温度及び復帰温度における弾性力、可動接点41の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。また、弾性部44の第2面には、熱応動素子5に対向して一対の突起44a,44bが形成されている。突起44aは、弾性部44の基端側で熱応動素子5に向って突出し、遮断状態で熱応動素子5と当接する。突起44bは、突起44aよりも先端側(すなわち可動接点41側)で熱応動素子5に向って突出し、遮断状態で熱応動素子5と当接する。突起44a,44bは、図3に示される初期状態の熱応動素子5とは接触して、可動片4の先端部が押し上げられる。過熱により熱応動素子5が変形すると、突起44a及び突起44bと熱応動素子5との当接は解かれ、可動片4の先端部は弾性部44の弾性力により可動接点41が固定接点21に押付けられる(図4参照)。
【0027】
熱応動素子5は、温度変化に伴って変形することにより、可動片4を作動させる。熱応動素子5は、熱膨張率の異なる2種類の材料が積層されることにより構成される。
【0028】
熱応動素子5は、円弧状に湾曲した初期形状をなし、熱膨張率の異なる薄板材を積層することにより形成される。過熱により作動温度に達すると、熱応動素子5の湾曲形状は、スナップモーションを伴って変形し、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形状が望ましく、小型でありながら弾性部44を効率的に押し上げるために正方形に近い長方形であるのが望ましい。
【0029】
熱応動素子5は、可動片4の状態を可動接点41が固定接点21から離隔する遮断状態から可動接点41が固定接点21に接触する導通状態に移行させる。熱応動素子5は、断面が円弧状に湾曲した初期形状をなし、熱膨張率の異なる薄板材を積層することにより、板状に形成されている。過熱により動作温度に達すると、熱応動素子5の湾曲形状は、スナップモーションを伴って変形し、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形状が望ましい。
【0030】
熱応動素子5の材料としては、以下に示されるように、熱膨張率が異なる2種類の板状の金属材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。
【0031】
図3及び図4に示されるように、熱応動素子5は、第1熱膨張率の第1層51と、第1熱膨張率より高い第2熱膨張率の第2層52とを有する、いわゆるバイメタルによって構成されている。第1層51には、例えば、鉄-ニッケル合金をはじめとする、洋白、黄銅、ステンレス鋼などの合金からなる材料が採用される。第2層52には、例えば、銅-ニッケル-マンガン合金又はニッケル-クロム-鉄合金などの合金からなる材料が採用される。熱応動素子5は、三層以上の積層構造のトリメタル等によって構成されていてもよい。
【0032】
本第1熱応動スイッチ素子1では、熱応動素子5の厚さ方向で、第1層51は固定接点21の側に、第2層52は可動接点41の側に配されている。すなわち、熱応動素子5の第1層51は第2方向の側、第2層52は第1方向の側に配されている。本第1熱応動スイッチ素子1において、熱応動素子5の初期形状は、第1層51の側に凸となるように形成されている。
【0033】
このような熱応動素子5は、放電回路100の通常の動作温度において可動片4を可動接点41が固定接点21から離隔するオープン状態とし、温度上昇に伴って変形することにより、可動片4を可動接点41が固定接点21に接触するクローズ状態へと移行させる。
【0034】
熱応動素子5単体での動作温度は、熱応動素子5を構成する金属の熱膨張率及び厚さ寸法並びに熱応動素子5の曲率等に依存する。従って、これらのパラメーターを適宜変更することにより、所望の動作温度の熱応動素子5を得ることができる。
【0035】
ケース10を構成するケース本体7及び蓋部材8は、難燃性のポリアミド、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの熱可塑性樹脂により成形されている。上述した樹脂と同等以上の特性が得られるのであれば、樹脂以外の材料が適用されてもよい。
【0036】
ケース本体7には、可動片4、熱応動素子5などを収容するための内部空間である凹部73が形成されている。凹部73は、可動片4を収容するための開口73a,73b、可動片4及び熱応動素子5を収容するための開口73c等を有している。なお、ケース本体7に組み込まれた可動片4、熱応動素子5の端縁は、凹部73の内部に形成されている枠によってそれぞれ当接され、熱応動素子5の変形時に案内される。
【0037】
図2ないし図4に示されるように、ケース本体7は、底壁75と、熱応動素子5と接触する接触部76とを有している。接触部76は、底壁75から熱応動素子5の側に突出し、熱応動素子5の第1層51と接触する。すなわち、熱応動素子5は、図2において、接触部76の上方に載置される。
【0038】
蓋部材8には、カバー片9がインサート成形によって埋め込まれている(図3、4参照)。カバー片9は、上述した銅等を主成分とする金属又はステンレス鋼等の金属をプレス加工することにより板状に形成される。カバー片9は、図3及び図4が示すように、可動片4の第1面と適宜当接し、可動片4の動きを規制すると共に、蓋部材8のひいては筐体としてのケース10の剛性・強度を高めつつ第1熱応動スイッチ素子1の小型化に貢献する。
【0039】
図2に示されるように、固定接点21、可動片4及び熱応動素子5等を収容したケース本体7の開口73a、73b、73c等を塞ぐように、蓋部材8が、ケース本体7に装着される。ケース本体7と蓋部材8とは、例えば超音波溶着によって接合される。このとき、ケース本体7と蓋部材8とは、それぞれの外縁部の全周にわたって連続的に接合され、ケース10の気密性が向上する。これにより、収容凹部73がもたらすケース10の内部空間は密閉され、固定接点21、可動片4及び熱応動素子5等の部品がケース10の外部の雰囲気から遮断され、保護されうる。また、超音波溶着によって、可動片4の当接部43がケース本体7及び蓋部材8と溶着される。
【0040】
図3は、通常温度における第1熱応動スイッチ素子1の動作を示している。通常温度の熱応動素子5は、図2及び3に示されるように、第2方向の側に凸となる初期形状を維持している。初期形状の熱応動素子5は、第1熱応動スイッチ素子1の長手方向での両端部において突起44a及び44bと当接する。このとき、熱応動素子5は、可動片4の弾性部44が発生する弾性力より大きい弾性力を発生し、可動片4の先端部の突起44bを第1方向の側に押し上げて、可動片4を可動接点41が固定接点21から離隔する遮断状態に維持している。従って、固定片2と可動片4との間の通電に伴うジュール熱は生じないため、熱応動素子5の温度は、第1熱応動スイッチ素子1の周辺の温度を正確に反映した温度となる。
【0041】
図4は、異常温度における第1熱応動スイッチ素子1の動作を示している。第1熱応動スイッチ素子1の周辺温度が過度に上昇すると、作動温度に達した熱応動素子5は第1方向の側に凸となる形状に変形する。熱応動素子5の上記作動温度は、例えば、70℃~90℃である。熱応動素子5の変形に伴い熱応動素子5が弾性部44を押し上げていた力が消滅または著しく減少し、弾性部44の弾性力によって、可動接点41が固定接点21の側に押圧されて固定接点21に接触する。これにより、可動片4が導通状態に移行する。
【0042】
図5は、図1の放電回路100の変形例である放電回路100Aの回路図である。放電回路100Aのうち、以下で説明されてない部分については、上述した放電回路100の構成が採用されうる。
【0043】
放電回路100Aは、第1熱応動スイッチ素子1に対して直列に接続される負荷115を含んでいる。負荷115は、2次電池セル111の外に配される。放電回路100Aでは、第1熱応動スイッチ素子1のクローズに伴って負荷115によって2次電池セル111に蓄えられた電荷の一部が消費される。これにより、2次電池セル111の内部での温度上昇がより一層抑制される。
【0044】
放電回路100Aにおいて、負荷115は、電気エネルギーを光エネルギー、運動エネルギー、音エネルギー及び化学エネルギーのうち少なくとも一つのエネルギーに変換するものが望ましい。電気エネルギーを光エネルギーに変換する負荷115の一例としては、LED(発光ダイオード)が挙げられる。電気エネルギーを運動エネルギーに変換する負荷115の一例としては、振動モーターが挙げられる。電気エネルギーを音エネルギーに変換する負荷115の一例としては、音を出力するスピーカーが挙げられる。負荷115が変換した光エネルギー、運動エネルギー及び音エネルギーは、2次電池セル111に異常が生じていることをユーザーに知らせる手段として用いることができる。
【0045】
電気エネルギーを化学エネルギーに変換する負荷115の一例としては、例えば、電気分解装置等が挙げられる。
【0046】
さらに、負荷115として、通電により2次電池セル111から熱を移動させるペルチエ素子が適用されていてもよい。このような構成にあっては、2次電池セル111の温度上昇がより一層抑制される。
【0047】
図6は、図5の放電回路100Aの変形例である放電回路100Bの回路図である。放電回路100Bのうち、以下で説明されてない部分については、上述した放電回路100、100Aの構成が採用されうる。
【0048】
放電回路100Bでは、2次電池セル111に対する負荷115の距離D2は、2次電池セル111に対する第1熱応動スイッチ素子1の距離D1よりも大きく構成されている、のが望ましい。これにより、第1熱応動スイッチ素子1が動作する異常時に熱源となる負荷115と2次電池セル111とが分散して配置されることとなり、2次電池セル111の温度上昇が抑制される。
【0049】
放電回路100A及び放電回路100Bにおいて、負荷115は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する抵抗発熱体116である、のが望ましい。「抵抗発熱体」とは、電気抵抗を有する導体に電流が流れる際に生ずるジュール熱により、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する発熱体である。放電回路100Bの負荷115として抵抗発熱体116が適用される形態では、異常時に熱源となる抵抗発熱体116と2次電池セル111とが分散して配置されることとなり、2次電池セル111の温度上昇が抑制される。
【0050】
図7は、図5の放電回路100Aの別の変形例である放電回路100Cを含む電気回路500Cの回路図である。放電回路100Cのうち、以下で説明されてない部分については、上述した放電回路100、100A及び100Bの構成が採用されうる。
【0051】
放電回路100Cは、2次電池セル111に対して直列に接続される第2熱応動スイッチ素子1Cを含む点で、放電回路100Aとは異なる。
【0052】
図8乃至10は、第2熱応動スイッチ素子1Cの構成を示している。第2熱応動スイッチ素子1Cのうち、以下で説明されてない部分については、上述した第1熱応動スイッチ素子1の構成が採用されうる。
【0053】
第2熱応動スイッチ素子1Cは、固定片2と、可動片4と、熱応動素子5Cとを備えている。第1熱膨張率の第1層51と、第1熱膨張率より高い第2熱膨張率の第2層52とを有する、いわゆるバイメタルによって構成されている。
【0054】
本第2熱応動スイッチ素子1Cでは、熱応動素子5Cの厚さ方向で、第1層51は可動接点41の側に、第2層52は固定接点21の側に配されている。すなわち、第1層51は第1方向の側、第2層52は第2方向の側に配されている。本第2熱応動スイッチ素子1Cにおいて、熱応動素子5の初期形状は、第1層51の側に凸となるように形成されている。
【0055】
このような熱応動素子5Cは、放電回路100Cの通常の動作温度において可動片4を可動接点41が固定接点21に接触するクローズ状態とし、温度上昇に伴って変形することにより、可動片4を可動接点41が固定接点21から離隔するオープン状態へと移行させる。
【0056】
図9は、通常の動作状態における第2熱応動スイッチ素子1Cの動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5Cは逆反り前の初期形状を維持している。弾性部44によって可動接点41が固定接点21の側に押圧されることにより、可動接点41と固定接点21とが接触し、第2熱応動スイッチ素子1Cの固定片2と可動片4とが導通可能なクローズ状態とされる。
【0057】
図9に示されるように、熱応動素子5は、導通状態の可動片4の突起44a及び突起44bと離隔していてもよい。これにより、可動接点41と固定接点21との接触圧力が高められ、両者間の接触抵抗が低減される。
【0058】
図10は、過充電状態又は異常時などにおける第2熱応動スイッチ素子1Cの動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、動作温度に達した熱応動素子5Cは逆反りして可動片4の弾性部44と接触し、弾性部44が押し上げられて固定接点21と可動接点41とが離隔する。このとき、固定接点21と可動接点41の間を流れていた電流は遮断される。すなわち、第2熱応動スイッチ素子1Cは、2次電池セル111の発熱に伴いオープンする。
【0059】
過充電状態を解除し、又は異常状態を解消すると、熱応動素子5は復帰温度に戻り、元の初期形状に復元する。そして、可動片4の弾性部44の弾性力によって可動接点41と固定接点21とは再び接触し、放電回路100Cを含む電気回路500は遮断状態を解かれ、図9に示される導通状態に復帰する。
【0060】
図10に示されるオープン状態の第2熱応動スイッチ素子1Cによって、2次電池110から負荷120に供給される放電電流又は給電部130から2次電池110に供給される充電電流が遮断される。これにより、2次電池110の過充電又は過放電から2次電池110を保護することが可能となる。
【0061】
第1熱応動スイッチ素子1及び第2熱応動スイッチ素子1Cの動作温度は、熱応動素子5、5Cの曲率、第1層51、第2層52の熱膨張率、厚さ等を変更することにより、調整可能である。
【0062】
第1熱応動スイッチ素子1は、2次電池セル111の内部で短絡が生じ、温度が急激に高まって危険な状態にある2次電池セル111を保護するために設けられている。これに対して、第2熱応動スイッチ素子1Cは、負荷120への過放電や給電部130からの過充電等の異常が発生したとき、2次電池セル111が危険な状態に陥るのを予防するために設けられている。そこで、放電回路100Cにおいては、第2熱応動スイッチ素子1Cの動作温度は、第1熱応動スイッチ素子1の動作温度よりも低い、のが望ましい。
【0063】
図11は、放電回路100Cが温度上昇する際に、第1熱応動スイッチ素子1よりも早く第2熱応動スイッチ素子1Cが動作している状態を示している。すなわち、同図は、第1熱応動スイッチ素子1のオープン状態が維持されたまま、第2熱応動スイッチ素子1Cがクローズ状態からオープン状態に移行した状態を示している。このような状態は、第2熱応動スイッチ素子1Cの動作温度を第1熱応動スイッチ素子1の動作温度よりも低く設定することにより実現される。
【0064】
放電回路100Cでは、第2熱応動スイッチ素子1Cの動作温度は、第1熱応動スイッチ素子1の動作温度よりも低く設定されているので、上述した過放電や過充電が発生する前に、第1熱応動スイッチ素子1がクローズ状態に移行して負荷115への放電が開始されることが抑制される。
【0065】
図8ないし10に示されるように、第2熱応動スイッチ素子1Cは、固定片2と熱応動素子5とを導通させるPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6を含んでいる、のが望ましい。PTCサーミスター6は、固定片2の支持部23の上方に配置されている。
【0066】
PTCサーミスター6は、可動片4が遮断状態にあるとき、固定片2と可動片4とを導通させる。PTCサーミスター6は、固定片2と熱応動素子5との間に配設されている。熱応動素子5の逆反り動作により固定片2と可動片4との通電が遮断されたとき、PTCサーミスター6に流れる電流が増大する。PTCサーミスター6は、温度上昇と共に抵抗値が増大して電流を制限する正特性サーミスターであれば、作動電流、作動電圧、作動温度、復帰温度などの必要に応じて種類を選択でき、その材料及び形状はこれらの諸特性を損なわない限り特に限定されるものではない。本実施形態では、チタニウム酸バリウム、チタニウム酸ストロンチウム又はチタニウム酸カルシウムを含むセラミック焼結体が用いられる。セラミック焼結体の他、ポリマーにカーボン等の導電性粒子を含有させたいわゆるポリマーPTCを用いてもよい。
【0067】
図10に示される遮断状態にある第2熱応動スイッチ素子1Cにおいて、熱応動素子5は、可動片4と接触して、僅かな漏れ電流が熱応動素子5及びPTCサーミスター6を通して流れることとなる。すなわち、PTCサーミスター6は、可動片4を遮断状態に移行させている熱応動素子5を介して、固定片2と可動片4とを導通させる。PTCサーミスター6は、このような漏れ電流の流れる限り発熱を続け、熱応動素子5を逆反り状態に維持させつつ抵抗値を激増させるので、電流は固定接点21と可動接点41の間の経路を流れず、上述の僅かな漏れ電流のみが存在する(自己保持回路を構成する)。この漏れ電流は電気回路の機能の一部に充てることができる。
【0068】
一方、2次電池セル111が危険にさらされていない通常の状態において、第1熱応動スイッチ素子1はオープン状態を維持している。従って、図2ないし4に示されるように、第1熱応動スイッチ素子1は、PTCサーミスターを含まない、のが望ましい。これにより、2次電池セル111が通常の状態において、負荷115への放電により、2次電池セル111の電力が無駄に消費されることが抑制される。
【0069】
以上、本発明の放電回路100等が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。すなわち、本発明の放電回路100等は、少なくとも、2次電池セル111に対して並列に接続される第1熱応動スイッチ素子1を含み、第1熱応動スイッチ素子1は、2次電池セル111の発熱に伴いクローズする、ように構成されていればよい。
【0070】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0071】
[本発明1]
2次電池セルに対して並列に接続される第1熱応動スイッチ素子を含み、
前記第1熱応動スイッチ素子は、前記2次電池セルの発熱に伴いクローズする、
放電回路。
[本発明2]
前記第1熱応動スイッチ素子は、
固定接点を有する固定片と、
可動接点を有し、弾性変形することにより前記可動接点を前記固定接点に接触可能に配された可動片と、
温度上昇に伴って変形することにより該可動片を前記可動接点が前記固定接点から離隔するオープン状態から前記可動接点が前記固定接点に接触するクローズ状態へと移行させる熱応動素子とを備える、本発明1に記載の放電回路。
[本発明3]
前記第1熱応動スイッチ素子に対して直列に接続される負荷を含む、本発明1に記載の放電回路。
[本発明4]
前記負荷は、電気エネルギーを光エネルギー、運動エネルギー、音エネルギー及び化学エネルギーのうち少なくとも一つのエネルギーに変換する、本発明3に記載の放電回路。
[本発明5]
前記2次電池セルに対する前記負荷の距離は、前記2次電池セルに対する前記第1熱応動スイッチ素子の距離よりも大きい、本発明3に記載の放電回路。
[本発明6]
前記負荷は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する抵抗発熱体である、本発明5に記載の放電回路。
[本発明7]
前記2次電池セルに対して直列に接続される第2熱応動スイッチ素子を含み、
前記第2熱応動スイッチ素子は、前記2次電池セルの発熱に伴いオープンする、本発明1に記載の放電回路。
[本発明8]
前記第2熱応動スイッチ素子の動作温度は、前記第1熱応動スイッチ素子の動作温度よりも低い、本発明7に記載の放電回路。
[本発明9]
前記第2熱応動スイッチ素子は、前記固定片と可動片とを導通させる正特性サーミスターを含み、前記第1熱応動スイッチ素子は、正特性サーミスターを含まない、本発明7または8に記載の放電回路。
【符号の説明】
【0072】
1 :第1熱応動スイッチ素子
1 :熱応動スイッチ素子
1C :第2熱応動スイッチ素子
2 :固定片
4 :可動片
5 :熱応動素子
5C :熱応動素子
6 :サーミスター
21 :固定接点
41 :可動接点
100 :放電回路
100A :放電回路
100B :放電回路
100C :放電回路
110 :2次電池
111 :2次電池セル
115 :負荷
116 :抵抗発熱体
120 :負荷
D1 :距離
D2 :距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11