(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055193
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240411BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20240411BHJP
F01P 11/10 20060101ALI20240411BHJP
F01P 11/08 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
E02F9/00 M
B60K11/04 E
F01P11/10 K
F01P11/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161919
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】久保 亮平
【テーマコード(参考)】
2D015
3D038
【Fターム(参考)】
2D015CA02
3D038AA07
3D038AB09
3D038AC14
3D038AC15
3D038AC16
3D038AC20
3D038AC23
3D038AC26
(57)【要約】
【課題】冷却ファンによって吸い込まれて冷却ユニットを通過した空気が冷却ユニットの上流側の空間に逆流するのを抑制できるショベルを提供すること。
【解決手段】ショベル100は、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に搭載される上部旋回体2と、上部旋回体2に搭載されるエンジン8と、エンジン8によって駆動される冷却ファン17と、冷却ファン17を挟んでエンジン8と反対側に配置される冷却ユニット70と、シールクッションSCと、ブラケットBCと、を有する。ブラケットBCは、冷却ユニット70に対してシールクッションSCを押し付ける態様で冷却ユニット70に取り付けられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に搭載される原動機と、
前記原動機によって駆動される冷却ファンと、
前記冷却ファンを挟んで前記原動機と反対側に配置される冷却ユニットと、
シールクッションと、
ブラケットと、を有し、
前記ブラケットは、前記冷却ユニットに対して前記シールクッションを押し付ける態様で前記冷却ユニットに取り付けられる、
ショベル。
【請求項2】
前記原動機が配置される第1空間と、
前記第1空間とは別の第2空間と、
前記第1空間と前記第2空間とを隔てる封止板と、を有し、
前記シールクッションは、前記封止板の周囲にある、前記第1空間と前記第2空間とを繋ぐ隙間を埋めるように配置されている、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記冷却ユニットは、ラジエータと、前記ラジエータに冷却水を流入させる流入管と、を有し、
前記シールクッションは、前記流入管に取り付けられる、
請求項1に記載のショベル。
【請求項4】
前記ブラケットは、逆U字形状を有する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項5】
前記流入管は、前記シールクッションを貫通するように配置されている、
請求項3に記載のショベル。
【請求項6】
前記ブラケットは、前記封止板に固定されている、
請求項2に記載のショベル。
【請求項7】
前記シールクッションは、前記ブラケットと前記冷却ユニットとの間で圧縮される、
請求項1に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンを冷却するための冷却ファンを備えたショベルが知られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のショベルにおける冷却ファンは、車両外部の比較的冷たい空気を吸い込むことによって、冷却ファンの上流側に設置された冷却ユニットに冷たい空気を当てることで、エンジンを冷却できるように配置されている。
【0005】
しかしながら、冷却ユニットの上流側の空間と冷却ユニットの下流側の空間との間の隔離が十分でないと、冷却ユニットを通過するときに加熱された空気が冷却ユニットの上流側の空間に逆流して再び冷却ユニットに取り込まれてしまい、エンジンを効率的に冷却できなくなってしまうおそれがある。
【0006】
そこで、冷却ファンによって吸い込まれて冷却ユニットを通過した空気が冷却ユニットの上流側の空間に逆流するのを抑制できるショベルを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るショベルは、下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に搭載される原動機と、前記原動機によって駆動される冷却ファンと、前記冷却ファンを挟んで前記原動機と反対側に配置される冷却ユニットと、シールクッションと、ブラケットと、を有し、前記ブラケットは、前記冷却ユニットに対して前記シールクッションを押し付ける態様で前記冷却ユニットに取り付けられる。
【発明の効果】
【0008】
上述のショベルは、冷却ファンによって吸い込まれて冷却ユニットを通過した空気が冷却ユニットの上流側の空間に逆流するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1のショベルの上部旋回体を概略的に示す上面図である。
【
図6】シールクッション及びブラケットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態に係るショベル100について説明する。なお、添付図面では同一又は対応する部材又は部品には同一又は対応する参照符号が付されている。また、図面では部材又は部品は必ずしも縮尺通りには描かれていない。従って、当業者は、以下の限定的でない実施形態を参照して具体的な寸法を任意に決定できる。
【0011】
図1は、本開示の実施形態に係る建設機械の一例である掘削機としてのショベル100の側面図を示す。ショベル100は、下部走行体1、上部旋回体2、及びキャブ3を有する。具体的には、下部走行体1には上部旋回体2が旋回可能に搭載され、上部旋回体2の前方左側部にはキャブ3が設けられ、上部旋回体2の後側にはハウジング2aが設けられている。また、上部旋回体2の前方中央部にはブーム4が回動可能に連結され、ブーム4の先端部にはアーム5が回動可能に連結され、アーム5の先端部にはバケット6が回動可能に連結されている。また、ハウジング2aの上部にはエンジンフード2bが取り付けられている。なお、本実施形態では、エンジンフード2bは回動(開閉)可能に構成され、エンジンフード2bの左側(Y1側)にはラジエータカバー(
図1では不可視)が配置され、エンジンフード2bの右側(Y2側)には排気ガス処理装置カバー(
図1では不可視)が配置されている。なお、ラジエータカバー及び排気ガス処理装置カバーは、回動(開閉)不能に構成されているが、回動(開閉)可能に構成されていてもよい。
【0012】
図2は、上部旋回体2の上面図である。
図2に示すように、上部旋回体2のハウジング2a内には第1空間7E(エンジン室)及び第2空間7R(冷却ユニット室)が形成され、第1空間7E内にはエンジン8及び発電機8a等が設置され、第1空間7Eと第2空間7Rとの間の境界部分には冷却ユニット70が設置されている。すなわち、冷却ユニット70は、第1空間7Eと第2空間7Rとを隔てる隔壁の一部を構成するように配置されている。
【0013】
エンジン8は、ショベル100の駆動源である原動機の一例である。図示例では、エンジン8はディーゼルエンジンである。なお、原動機は電動モータ又は水素エンジン等であってもよい。
【0014】
エンジン8の回転力は、ファンベルト8bを介して発電機8a及び冷却ファン17のそれぞれに伝達され、且つ、変速機を介して油圧ポンプ14に伝達される。また、エンジン8の下部にはエンジンオイルを溜めておくオイルパン8cが備えられている。そして、エンジン8のY2側にはエンジンオイルの量を測定するためのオイルレベルゲージ8dが設けられている。
【0015】
また、エンジン8は、第1空間7Eの外部に設置されたエアフィルタ9a及び吸気管9bを通じて外気を吸入する。そして、エンジン8には排気管9cが接続され、排気管9cの下流側にはエンジン排気ガス中の窒素酸化物(以下、「NOx」という。)を浄化する排気ガス処理装置10が設置されている。
【0016】
図示例では、排気ガス処理装置10は、還元剤として尿素水を用いる尿素選択還元型のNOx処理装置である。排気ガス処理装置10は、排気管9c内に備えられた還元触媒の上流側に尿素水を噴射して排気ガス中のNOxを還元し、この還元反応を還元触媒により促進してNOxを無害化する。
【0017】
尿素水タンク20は、尿素水を蓄えるための容器であり、上部旋回体2において、ブーム4を挟んでキャブ3の反対側(ブーム4のY2側)に配置されている。図示例では、尿素水タンク20の後側(X2側)には燃料タンク19が配置され、燃料タンク19の後側(X2側)には作動油タンク18が配置されている。また、作動油タンク18、燃料タンク19、及び尿素水タンク20は第1空間7Eの外部に設置されている。また、尿素水タンク20は、尿素水ホース69及び尿素水供給ポンプPM等を介して排気ガス処理装置10に接続されている。
【0018】
冷却ユニット70は、冷却水、作動油、冷媒、圧縮空気、及び燃料等を冷却する複数の装置の組み合わせであり、熱交換機ユニットとも称される。図示例では、冷却ユニット70は、ショベル100に搭載される様々な機器で使用される液体又は気体を冷却するように構成されている。具体的には、冷却ユニット70は、
図2に示すように、エンジン8の左側(Y1側)に設置されている。より具体的には、冷却ユニット70は、
図3及び
図4に示すように、ラジエータ72、シュラウド73、リップ74、オイルクーラ75、エアコン用コンデンサ80、インタークーラ85、及び燃料クーラ90等を含む。
【0019】
図3は、冷却ユニット70の上面図である。なお、
図3では、明瞭化のため、冷却ユニット70のY2側に冷却ファン17が図示されている。
図4は、冷却ユニット70の断面図であり、
図3の切断線L1で表される断面を示している。なお、
図4では、明瞭化のため、冷却ユニット70のY2側に冷却ファン17、エンジン8、及び油圧ポンプ14等が図示されている。
【0020】
図示例では、エアコン用コンデンサ80、インタークーラ85、及び燃料クーラ90は、ラジエータ72及びオイルクーラ75の外側(Y1側)に取り付けられている。ラジエータ72及びオイルクーラ75の外側は、冷却ファン17によって生成される冷却風Wの流れに関する上流側に相当する。冷却風Wは、ラジエータ72、オイルクーラ75、エアコン用コンデンサ80、インタークーラ85、及び燃料クーラ90のそれぞれを冷却できるように冷却ファン17によって生成される。ハウジング2a内では、
図2及び
図4に示すように、冷却ファン17によって生成される冷却風WはY1側からY2側へ向けて流れる。そのため、冷却ファン17のY1側(ラジエータ72側)が上流側であり、冷却ファン17のY2側(エンジン8側)が下流側である。
【0021】
また、図示例では、冷却ファン17はエンジン8によって駆動される。具体的には、エンジン8は、冷却ファン17の回転駆動源として機能する。そして、冷却ファン17の回転軸17Xは、
図4に示すようにファンベルト8bを介して、エンジン8の回転軸8Xに連結されている。ファンベルト8bは、エンジン8の回転力を冷却ファン17に伝える。冷却ファン17は、シュラウド73と、シュラウド73の端部に取り付けられた筒状のリップ74とによって形成される空間内に配置されている。
【0022】
冷却ファン17は、回転中心から径方向外側に延びる複数のブレード17aを有する。シュラウド73の下流側開口73Cとリップ74は、冷却ファン17のブレード17aの翼端より外周側に配置されるようにその径の大きさが設定されている。
【0023】
ラジエータ72は、エンジン8内を循環する冷却水を冷却するための装置である。オイルクーラ75は、油圧ポンプ14等の油圧機器で使用される作動油を冷却するための装置である。エアコン用コンデンサ80は、エアコンで使用される冷媒を冷却するための装置である。インタークーラ85は、過給機で使用される圧縮空気を冷却するための装置である。燃料クーラ90は、エンジン8で消費される燃料を冷却するための装置である。
【0024】
シュラウド73は、冷却ファン17の冷却効率(送風効率)を高めるために冷却ファン17の周囲に設置される覆いである。具体的には、シュラウド73は、ラジエータ72及びオイルクーラ75のそれぞれの下流側にある空間を囲むように形成される筒状部73Aと、この筒状部73Aの下流側端部を塞ぐように延びる平板部73Bとを有する。平板部73Bの中央には円形状の下流側開口73Cが形成される。下流側開口73Cの径は、冷却ファン17の径よりも僅かに大きくなるように設定されている。
【0025】
上記構成により、シュラウド73は、冷却ファン17によって第1空間7E側に引き込まれる(冷却ファン17の上流側にある)空気が冷却ユニット70の全体を偏りなく冷却できるように、その空気の流れを導くことができる。また、冷却ファン17は、冷却ユニット70を通過した空気(冷却風W)を、エンジン8及び油圧ポンプ14に沿って更に下流側に導くことができる。
【0026】
リップ74は、シュラウド73の平板部73Bにおける下流側開口73Cに接する縁部から下流側に突出する円筒状の部材である。具体的には、リップ74は、シュラウド73の下流側に設けられ、冷却風Wを下流側に導くことができるように構成されている。
【0027】
次に、
図5を参照し、第1空間7Eと第2空間7Rとを隔てる隔壁の一部を構成する冷却ユニット70の詳細について説明する。
図5は、冷却ユニット70の斜視図である。
【0028】
本実施形態では、冷却ユニット70は、ラジエータ72及びオイルクーラ75を支持するフレーム50を有する。具体的には、フレーム50は、締結部材の一例であるボルトBTDによって旋回フレーム等に締結されている。そして、フレーム50は、前側フレーム50F及び後側フレーム50Bを含む。ラジエータ72及びオイルクーラ75は、前側フレーム50Fと後側フレーム50Bとの間に配置されている。作業者は、前側フレーム50Fと後側フレーム50Bとの間に配置されているラジエータ72を上方に引き上げることによってラジエータ72を冷却ユニット70から取り外すことができる。オイルクーラ75についても同様である。
【0029】
後側フレーム50B及び前側フレーム50Fは、金属板に折り曲げ加工を施すことにより、上面視でU字形状となるように構成されている。具体的には、後側フレーム50Bは、後側板状部50BS、左側板状部50BL、及び右側板状部50BRを含み、前側フレーム50Fは、前側板状部50FS、左側板状部50FL、及び右側板状部50FRを含む。
【0030】
ラジエータ72は、後端部(X2側の端部)が後側フレーム50Bの後側板状部50BSと対向するように配置されている。図示例では、ラジエータ72は、上側タンク72UT、コア72C、及び下側タンク72LTを含む。上側タンク72UTは、冷却水の流入管72Iが接続される部材であり、その上面にはリザーブキャップ72CP(
図3参照)が設けられている。下側タンク72LTは、冷却水の流出管72Eが接続される部材である。コア72Cは、冷却フィンを収容する部材である。
図5では、流入管72Iには上側ホースUHが取り付けられ、流出管72Eには下側ホースLHが取り付けられている。
【0031】
オイルクーラ75は、前端部(X1側の端部)が前側フレーム50Fの前側板状部50FSと対向するように配置されている。図示例では、オイルクーラ75は、上側タンク75UT、コア75C、及び下側タンク75LTを含む。上側タンク75UTは、作動油の流入管75Iが接続される部材である。下側タンク75LTは、作動油の流出管75Eが接続される部材である。コア75Cは、冷却フィンを収容する部材である。
【0032】
シュラウド73は、締結部材によってフレーム50に締結されている。図示例では、シュラウド73は、前端部(X1側の端部)がボルト(
図5では不可視)によって前側フレーム50Fの右側板状部50FRに締結され、後端部(X2側の端部)がボルトBTRによって後側フレーム50Bの右側板状部50BRに締結されている。
【0033】
ラジエータ72の上側タンク72UTのY2側(右側)、及び、オイルクーラ75の上側タンク75UTのY2側(右側)で、且つ、シュラウド73のZ1側(上側)には封止板PWが設けられている。
図5に示す例では、封止板PWは、金属板で形成された平板状部材であり、ボルトBTUによってシュラウド73の上面に締結されている。
【0034】
ラジエータ72の上側タンク72UTのY2側(右側)の面のうち、流入管72Iが設けられている部分のY2側(右側)には封止板PWが設置されていない。ラジエータ72の流入管72Iには、シュラウド73の上端部に沿って下流側(Y2側)に延びる上側ホースUHが取り付けられるためである。図示例では、上側ホースUHは、ホースベルトHB(
図6の下図を参照)によって流入管72Iに固定されている。同様に、オイルクーラ75の上側タンク75UTのY2側(右側)の面のうち、流入管75Iが設けられている部分のY2側(右側)にも封止板PWが設置されていない。オイルクーラ75の流入管75Iには、シュラウド73の上端部に沿って下流側(Y2側)に延びる不図示の上側ホースが取り付けられるためである。
【0035】
そのため、ラジエータ72の上側タンク72UTのY2側(右側)における、封止板PWが設置されていない部分には、第1空間7Eと前記第2空間7Rとを繋ぐ隙間を埋めるように、シールクッションSC及びブラケットBCが配置されている。
【0036】
シールクッションSCは、発泡樹脂又は発泡ゴム等の発泡体で形成される部材である。本実施形態では、シールクッションSCは、スポンジ状の部材であり、第1空間7Eと第2空間7Rとを繋ぐ隙間を塞いで第1空間7Eと第2空間7Rとの間の空気の流れを遮断できるように構成されている。図示例では、シールクッションSCは、第1シールクッションSC1、第2シールクッションSC2、及び第3シールクッションSC3を含む。第1シールクッションSC1、第2シールクッションSC2、及び第3シールクッションSC3は何れもウレタンフォームで形成されている。なお、図示例では、第1シールクッションSC1、第2シールクッションSC2、及び第3シールクッションSC3は何れも略直方体の外形を有しているが、円柱体、楕円柱体、又は多角柱体等の他の外形を有していてもよい。
【0037】
ブラケットBCは、金属板で形成される部材である。本実施形態では、ブラケットBCは、封止板PWとフレーム50との間に配置されるように構成されている。図示例では、ブラケットBCは、封止板PWの後端部(X2側の端部)と後側フレーム50Bとを連結するための第1ブラケットBC1、及び、封止板PWの前端部(X1側の端部)と前側フレーム50Fとを連結するための第2ブラケットBC2を含む。
【0038】
第1シールクッションSC1は、ラジエータ72の上側タンク72UTのY2側(右側)の面と第1ブラケットBC1のY1側(左側)の面との間で圧縮されて挟持される。第1シールクッションSC1は、後掲の
図6の上図に示すように、略直方体の外形を有し、中央部に円柱状の貫通孔TH1を有する矩形環状の部材である。貫通孔TH1は、その内径が流入管72Iの外径と略同じになるように、或いは、その内径が流入管72Iの外径よりも僅かに小さくなるように構成されている。第1シールクッションSC1の貫通孔TH1の内周面と流入管72Iの外周面との間に隙間が形成されないようにするためである。なお、貫通孔TH1は、一部が外方に開いた切り欠きであってもよい。
【0039】
第2シールクッションSC2は、第2ブラケットBC2のY2側(右側)の面と第3シールクッションSC3のY1側(左側)の面との間で挟持される。第2シールクッションSC2は、略直方体の外形を有し、中央部に円柱状の貫通孔TH2を有する矩形環状の部材である。貫通孔TH2は、その内径がオイルクーラ75の流入管75Iの外径と略同じになるように、或いは、その内径が流入管75Iの外径よりも僅かに小さくなるように構成されている。第2シールクッションSC2の貫通孔TH2の内周面と流入管75Iの外周面との間に隙間が形成されないようにするためである。なお、貫通孔TH2は、一部が外方に開いた切り欠きであってもよい。
【0040】
第3シールクッションSC3は、第2ブラケットBC2のY2側(右側)の面と第3シールクッションSC3のY1側(左側)の面との間に第2シールクッションSC2の前端部(X1側の端部)を挟んだ状態でボルトBTLによって前側フレーム50Fの右側板状部50FRに締結される。
【0041】
図示例では、シールクッションSCを取り付ける際に接着剤が用いられることはない。そのため、シールクッションSCは、ラジエータ72又はオイルクーラ75等のシールクッションSCが接している部材(被交換部材)の交換の際に、被交換部材から容易に分離されるため、被交換部材と同時に交換される必要はない。
【0042】
なお、エンジンフード2bの天井面には、封止板PW及びブラケットBCのそれぞれとエンジンフード2bとの間の隙間を埋めるための上部発泡体(図示せず)が貼り付けられている。そのため、エンジンフード2bが閉じられると、その上部発泡体は、封止板PW及びブラケットBCのそれぞれとエンジンフード2bとの間で圧縮されてその隙間を塞ぎ、その隙間を通って空気が第1空間7Eから前記第2空間7Rに逆流するのを抑制できる。
【0043】
次に、
図6を参照し、第1シールクッションSC1の取り付け方法について説明する。
図6は、第1シールクッションSC1及び第1ブラケットBC1の斜視図であり、
図5の破線で囲まれた範囲R1の拡大図に相当する。具体的には、
図6の上図は、第1シールクッションSC1がラジエータ72の上側タンク72UTと第1ブラケットBC1との間で挟持される前の第1シールクッションSC1及び第1ブラケットBC1の斜視図を示し、
図6の下図は、第1シールクッションSC1がラジエータ72の上側タンク72UTと第1ブラケットBC1との間で挟持された後の第1シールクッションSC1及び第1ブラケットBC1の斜視図を示す。
【0044】
第1シールクッションSC1は、単一の発泡体で構成されており、ラジエータ72の流入管72Iが貫通孔TH1に挿通された状態で、そのY1側(左側)の面とラジエータ72の上側タンク72UTのY2側(右側)の面RSとが接触するようにY1側(左側)に押し付けられる。
【0045】
なお、第1シールクッションSC1は、二つ以上の発泡体の組み合わせで構成されていてもよい。この場合、貫通孔TH1は、第1の発泡体に形成された半円柱状の切り欠きと第2の発泡体に形成された半円柱状の切り欠きと合わせることによって貫通孔TH1と同じような貫通孔を実現できるように構成されていてもよい。この構成は、第1シールクッションSC1の流入管72Iへの取り付けが容易になるという効果をもたらす。
【0046】
また、第1シールクッションSC1が二つの発泡体の組み合わせで構成される場合、二つの発泡体は、
図6の上図における一点鎖線L2を含むYZ平面に平行な面で分離されることが望ましい。第1シールクッションSC1が流入管72Iに取り付けられたときに、二つの発泡体のそれぞれの少なくとも一部が流入管72Iの下側に配置され、流入管72Iからの抜け落ちが抑制されるためである。
【0047】
また、第1シールクッションSC1は、左右方向(Y軸方向)に重ねられる二つ以上の発泡体の組み合わせで構成されていてもよい。この場合、二つ以上の発泡体のそれぞれは、互いに硬さ又は圧縮性等の特性が異なるように構成されていてもよい。
【0048】
また、第1シールクッションSC1は、左右方向(Y軸方向)における幅(厚さ)が、第1ブラケットBC1が封止板PW及び後側フレーム50Bのそれぞれに締結されたときの第1ブラケットBC1のY1側(左側)の面とラジエータ72の上側タンク72UTのY2側(右側)の面RSとの間の距離よりも大きくなるように構成されている。第1ブラケットBC1のY1側(左側)の面とラジエータ72の上側タンク72UTのY2側(右側)の面RSとの間で第1シールクッションSC1が圧縮されるようにするためである。
【0049】
但し、第1ブラケットBC1のY1側(左側)の面と第1シールクッションSC1のY2側(右側)の面との間の密着が確保されるのであれば、第1シールクッションSC1のY1側(左側)の面と上側タンク72UTのY2側(右側)の面RSとは密着していなくてもよい。すなわち、第1シールクッションSC1は、そのY1側(左側)の面と上側タンク72UTとが部分的(局所的)に接触するように構成されていてもよい。この構成は、上側タンク72UTのY2側(右側)の面RSが複雑な形状を有し、第1シールクッションSC1のY1側(左側)の面と上側タンク72UTのY2側(右側)の面RSとの間の密着(広範囲にわたる面接触)が困難な場合にも、第1ブラケットBC1と第1シールクッションSC1とを密着させることができるという効果をもたらす。そのため、この構成は、第1ブラケットBC1と第1シールクッションSC1との間の隙間を通って空気が第1空間7Eから前記第2空間7Rに逆流するのを抑制できるという効果をもたらす。
【0050】
第1ブラケットBC1は、
図6の上図に示すように、略矩形の金属板に折り曲げ加工及び打ち抜き加工を施すことによって作製される逆U字形状(アーチ形状)の部材であり、第1平板部FP1、第2平板部FP2、及び、第1平板部FP1と第2平板部FP2とを連結する段差部STを有する。
【0051】
第1平板部FP1は、第1シールクッションSC1と接触する逆U字形状(アーチ形状)の部分であり、切り欠きCTと二つの貫通孔HL1とが形成されている。
【0052】
第2平板部FP2は、後側フレーム50Bの右側板状部50BRと接触する部分であり、二つの貫通孔HL2が形成されている。
【0053】
切り欠きCTは、前後方向(X軸方向)における幅が流入管72Iの外径よりも大きくなるように構成されている。第1ブラケットBC1が封止板PW及び後側フレーム50Bのそれぞれに締結されたときに第1ブラケットBC1と流入管72Iとが干渉してしまうのを防止するためである。
【0054】
第1ブラケットBC1の第1平板部FP1は、第1平板部FP1に形成された貫通孔HL1と封止板PWに形成された貫通孔HL3とに挿通されるボルトBT1によって封止板PWに締結される。また、第1ブラケットBC1の第2平板部FP2は、第2平板部FP2に形成された貫通孔HL2と後側フレーム50Bの右側板状部50BRに形成された貫通孔HL4とに挿通されるボルトBT2によって右側板状部50BRに締結される。
【0055】
このような構成により、第1ブラケットBC1は、後側フレーム50B及び封止板PWのそれぞれに締結されたときに、第1ブラケットBC1とラジエータ72の上側タンク72UTとの間で第1シールクッションSC1を圧縮できる。すなわち、第1ブラケットBC1は、第1シールクッションSC1をラジエータ72の上側タンク72UTのY2側(右側)の面RSに押し付けることができる。そのため、第1ブラケットBC1は、第1ブラケットBC1とラジエータ72の上側タンク72UTとの間から第1シールクッションSC1が抜け落ちてしまうのを抑制できる。また、第1ブラケットBC1は、第1ブラケットBC1と第1シールクッションSC1との間の隙間を通って空気が第1空間7Eから前記第2空間7Rに逆流するのを抑制できる。
【0056】
次に、
図7を参照し、第1シールクッションSC1によってもたらされる効果について説明する。
図7は、冷却ユニット70の一部の断面図であり、
図4の破線で囲まれた範囲R2の拡大図に相当する。具体的には、
図7の上図は、第1シールクッションSC1が組み付けられていない冷却ユニット70の一部の断面を示し、
図7の下図は、第1シールクッションSC1が組み付けられている冷却ユニット70の一部の断面を示す。
【0057】
図7の上図に示すように、第1シールクッションSC1が冷却ユニット70に組み付けられていない場合、第1空間7E内の高温空気の一部は、矢印BFで示すように、第1ブラケットBC1とラジエータ72の流入管72Iとの間の隙間GPを通って第2空間7Rに逆流する。この場合、第2空間7Rに逆流した高温空気は、冷却ファン17によって冷却ユニット70内に引き込まれてしまい、冷却ユニット70による冷却効果を低減させてしまう。
【0058】
本開示のショベル100は、第1シールクッションSC1が冷却ユニット70に組み付けられているため、
図7の上図における矢印BFで示すような高温空気の逆流が発生してしまうのを防止でき、冷却ユニット70による冷却効果の低減を抑制できる。
図7の下図に示すように、第1シールクッションSC1が冷却ユニット70に組み付けられている場合、第1ブラケットBC1とラジエータ72の流入管72Iとの間の隙間GPは、第1シールクッションSC1によって塞がれるためである。
【0059】
上述のように、本発明の一実施形態に係るショベル100は、
図1及び
図2に示すように、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に搭載される上部旋回体2と、上部旋回体2に搭載される原動機(エンジン8)と、原動機(エンジン8)によって駆動される冷却ファン17と、冷却ファン17を挟んで原動機(エンジン8)と反対側に配置される冷却ユニット70と、を有する。また、ショベル100は、
図3~
図5に示すように、シールクッションSCと、冷却ファン17の上流側の空間(第2空間7R)と下流側の空間(第1空間7E)とを隔てる隔壁の一部を構成するブラケットBCと、を有する。ブラケットBCには、管又はケーブル等を通すための貫通孔又は切り欠き等が形成されている。そして、ブラケットBCは、冷却ユニット70に対してシールクッションSCを押し付ける態様で冷却ユニット70に取り付けられている。この構成は、冷却ユニット70を通過するときに加熱された空気が冷却ファン17の上流側の空間に逆流するのを抑制できるという効果をもたらす。ブラケットBCに形成された貫通孔又は切り欠き等を通って、原動機(エンジン8)が設置されている第1空間7Eから、冷却ユニット70の上流側にある第2空間7Rに空気が逆流するのを抑制できるためである。
【0060】
なお、ショベル100は、原動機(エンジン8)が配置される第1空間7E(エンジン室)と、第1空間7E(エンジン室)とは別の第2空間7R(冷却ユニット室)と、第1空間7Eと第2空間7Rとを隔てる封止板PWと、を有していてもよい。この場合、シールクッションSC(第1シールクッションSC1)は、封止板PWの周囲にある、第1空間7Eと前記第2空間7Rとを繋ぐ隙間GP(
図7の上図参照)を埋めるように配置されていてもよい。この構成は、冷却ユニット70を通過するときに加熱された空気が冷却ファン17の上流側の空間に逆流するのをより確実に抑制できるという効果をもたらす。封止板PWによって第1空間7Eから第2空間7Rに空気が逆流するのを抑制した上で、封止板PWに固定されたブラケットBCにおける貫通孔を通って空気が逆流するのをシールクッションSCによって抑制できるためである。
【0061】
冷却ユニット70は、
図3~
図5に示すように、ラジエータ72と、ラジエータ72に冷却水を流入させる流入管72Iと、を有していてもよい。この場合、シールクッションSC(第1シールクッションSC1)は、流入管72Iに取り付けられていてもよい。この構成は、冷却ユニット70を通過するときに加熱された空気が冷却ファン17の上流側の空間に逆流するのをより確実に抑制できるという効果をもたらす。ラジエータ72の上側タンク72UTに接続される流入管72Iと第1ブラケットBC1との間の隙間GPが第1シールクッションSC1によって塞がれるためである。
【0062】
ブラケットBC(第1ブラケットBC1)は、
図6の上図に示すように、逆U字形状(アーチ形状)を有していてもよい。この構成により、作業者は、ラジエータ72の上側タンク72UTに接続される流入管72Iと第1ブラケットBC1とが干渉するのを回避しながら、第1ブラケットBC1を容易に冷却ユニット70に取り付けることができる。
【0063】
流入管72Iは、
図6の下図に示すように、シールクッションSC(第1シールクッションSC1)を貫通するように配置されてもよい。この構成は、冷却ユニット70を通過するときに加熱された空気が冷却ファン17の上流側の空間に逆流するのをより確実に抑制できるという効果をもたらす。第1シールクッションSC1の貫通孔TH1の内周面と流入管72Iの外周面との間の隙間が第1シールクッションSC1によって塞がれるためである。
【0064】
ブラケットBC(第1ブラケットBC1)は、
図6の下図に示すように、封止板PWに固定されていてもよい。この構成は、ブラケットBC(第1ブラケットBC1)の冷却ユニット70に対する固定が容易になるという効果をもたらす。
【0065】
シールクッションSC(第1シールクッションSC1)は、
図6の下図に示すように、ブラケットBC(第1ブラケットBC1)と冷却ユニット70(ラジエータ72の上側タンク72UT)との間で圧縮されてもよい。この構成は、接着剤を用いずとも、第1シールクッションSC1と上側タンク72UT及び第1ブラケットBC1のそれぞれとの間の密着強度を高めることができ、第1シールクッションSC1が冷却ユニット70から抜け落ちてしまうのを抑制できるという効果をもたらす。また、この構成は、第1空間7Eと第2空間7Rとの間の密閉性を高めることができるという効果をもたらす。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形、置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1・・・下部走行体 2・・・上部旋回体 2a・・・ハウジング 2b・・・エンジンフード 3・・・キャブ 4・・・ブーム 5・・・アーム 6・・・バケット 7E・・・第1空間 7R・・・第2空間 8・・・エンジン 8a・・・発電機 8b・・・ファンベルト 8c・・・オイルパン 8d・・・オイルレベルゲージ 9a・・・エアフィルタ 9b・・・吸気管 9c・・・排気管 10・・・排気ガス処理装置 14・・・油圧ポンプ 17・・・冷却ファン 18・・・作動油タンク 19・・・燃料タンク 20・・・尿素水タンク 69・・・尿素水ホース 70・・・冷却ユニット 100・・・ショベル BC・・・ブラケット PM・・・尿素水供給ポンプ SC・・・シールクッション SC1・・・第1シールクッション SC2・・・第2シールクッション SC3・・・第3シールクッション PW・・・封止板