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特開2024-55204建物管理装置、建物、及び、建物管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055204
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】建物管理装置、建物、及び、建物管理方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/63 20180101AFI20240411BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20240411BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
F24F11/63
F25D23/00 301N
F25D11/00 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161931
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】514004699
【氏名又は名称】人吉アサノ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】浦川 敬
【テーマコード(参考)】
3L045
3L260
3L345
【Fターム(参考)】
3L045AA02
3L045BA01
3L045CA02
3L045LA18
3L045PA04
3L260AA04
3L260AA20
3L260AB11
3L260AB15
3L260BA05
3L260BA12
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA17
3L260FB61
3L260FC01
3L260GA17
3L260JA12
3L345AA03
3L345AA26
3L345EE04
3L345EE05
3L345EE33
3L345EE36
3L345HH24
3L345HH25
3L345HH34
3L345JJ17
3L345KK04
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でありながら、管理対象領域内の環境を良好に保持することができ、管理対象領域の管理者の作業負担を軽減可能な建物管理装置、建物、及び、建物管理方法を提供する。
【解決手段】建物1は、建物本体10の屋内に管理対象領域11を有し、管理対象領域11には、管理対象領域の在室者に対する環境を改善可能な管理機器(換気装置3及び警報器4)が設置されており、建物管理装置2を構成する第1子機21と第2子機22が設置されている。管理対象領域11はオフィスである。建物管理装置2は、前述した第1子機21及び第2子機22、そして親機23により構成され、親機23は、建物2内且つ管理対象領域11外である管理室12に配置された態様である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物屋内における管理対象領域に設置され、該管理対象領域の温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を観測する観測機能、及び、該観測機能により観測された結果を信号化して機外に送信する観測情報送信機能を有する第1子機と、
前記管理対象領域に設置されると共に、同管理対象領域に設置されて同管理対象領域における有害環境を改善可能な管理機器に接続され、制御信号の受信機能、及び、受信した該制御信号に基づいて接続された前記管理機器を制御する制御機能を有する第2子機と、
前記第1子機から送信された観測データを受信する観測データ受信機能、受信した観測データに基づいて前記第2子機に対して送信する前記管理機器の制御信号を生成する制御信号生成機能、及び、生成された制御信号を自動又は手動で送信する制御信号送信機能を有する親機と、
を備える
建物管理装置。
【請求項2】
前記第1子機及び前記第2子機の設置場所が、教育施設又はオフィスにおける管理対象領域であって、
前記第1子機の観測機能が、管理対象領域内の温度、湿度、二酸化炭素濃度、アンモニア濃度、一酸化炭素濃度、二酸化窒素濃度、水素濃度、メタン濃度、エタノール濃度、プロパン濃度、ブタン濃度のいずれか一又はこれらの組み合わせを対象とするものであり、
前記第2子機に接続された前記管理機器が換気装置及び/又は警報器である
請求項1に記載の建物管理装置。
【請求項3】
前記第1子機及び前記第2子機の設置場所が、食品販売スペースの冷蔵冷凍ショーケース内又は近傍であって、
前記第1子機の観測機能が、少なくとも前記冷蔵冷凍ショーケース内又は近傍の温度を対象とするものであり、
前記第2子機に接続された前記管理機器が、前記冷蔵冷凍ショーケースの温度調節機能部及び/又は警報器である
請求項1に記載の建物管理装置。
【請求項4】
前記第1子機の観測機能が、前記冷蔵冷凍ショーケース内又は近傍の湿度、二酸化炭素濃度、アンモニア濃度、一酸化炭素濃度、二酸化窒素濃度、水素濃度、メタン濃度、エタノール濃度、プロパン濃度、ブタン濃度のいずれか一又はこれらの組み合わせを更に対象とするものであり、
前記第2子機に更に接続された前記管理機器が換気装置である
請求項3に記載の建物管理装置。
【請求項5】
前記第1子機及び前記第2子機の設置場所が、工場における管理対象領域であって、
前記第1子機の観測機能が、少なくとも前記管理対象領域の湿度を対象とするものであり、
前記第2子機に接続された前記管理機器が除湿機及び/又は警報器である
請求項1に記載の建物管理装置。
【請求項6】
前記第1子機の観測機能が、前記管理対象領域の温度、二酸化炭素濃度、アンモニア濃度、一酸化炭素濃度、二酸化窒素濃度、水素濃度、メタン濃度、エタノール濃度、プロパン濃度、ブタン濃度のいずれか一又はこれらの組み合わせを更に対象とするものであり、
前記第2子機に更に接続された前記管理機器が換気装置である
請求項5に記載の建物管理装置。
【請求項7】
前記親機が、入力される前記環境情報に関する閾値を記憶可能な閾値記憶機能を更に有し、前記制御信号生成機能が、該閾値と前記第1子機から受信した観測データとを対比して、同観測データに係る数値が前記閾値に近づくか又は超えた際に、前記第2子機に接続された前記管理機器の両方又はいずれか一方の制御信号を自動で生成し送信するように設けられている
請求項1乃至6のいずれかに記載の建物管理装置。
【請求項8】
前記親機が、受信した前記観測データと生成した前記制御信号のいずれか一又は両方を記憶する信号データ記憶機能を更に有する
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の建物管理装置。
【請求項9】
前記親機が、受信した前記観測データと生成した前記制御信号のいずれか一又は両方を記憶する信号データ記憶機能を更に有する
請求項7のいずれかに記載の建物管理装置。
【請求項10】
前記親機が、インターネット回線に接続され、前記信号データ記憶機能に記憶された前記観測データと前記制御信号のいずれか一又は両方を外部情報通信端末に送信可能なインターネット送信機能を更に有する
請求項8に記載の建物管理装置。
【請求項11】
前記親機が、インターネット回線に接続され、前記信号データ記憶機能に記憶された前記観測データと前記制御信号のいずれか一又は両方を外部情報通信端末に送信可能なインターネット送信機能を更に有する
請求項9に記載の建物管理装置。
【請求項12】
前記親機が、インターネット受信機能を更に有し、前記制御信号生成機能が、該インターネット受信機能を介して外部情報通信端末から受信したリクエストに基づいて前記管理機器の制御信号を生成する
請求項10に記載の建物管理装置。
【請求項13】
前記親機が、インターネット受信機能を更に有し、前記制御信号生成機能が、該インターネット受信機能を介して外部情報通信端末から受信したリクエストに基づいて前記管理機器の制御信号を生成する
請求項11に記載の建物管理装置。
【請求項14】
管理対象領域を屋内に有し、該管理対象領域に存在する人及び/又は物に対する環境を改善可能な管理機器が設置された建物本体と、
前記管理対象領域に設置され、同管理対象領域の温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を観測する観測機能、及び、該観測機能により観測された結果を信号化して送信する観測データ送信機能を有する第1子機と、
前記管理対象領域に設置されると共に、前記管理機器に接続され、制御信号の受信機能、及び、受信した該制御信号に基づいて接続された前記管理機器を制御する制御機能を有する第2子機と、
を備える
建物。
【請求項15】
建物の管理対象領域に設置された第1子機、該管理対象領域に設置されると共に、同管理対象領域に設置されて同管理対象領域に存在する人及び/又は物に対する有害環境を改善可能な管理機器に接続された第2子機、及び、前記管理対象領域内又は同管理対象領域外に配置された親機を使用し、
前記第1子機が、該管理対象領域の温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を観測し、観測された結果を信号化して観測データとして送信する第1ステップと、
前記親機が、前記第1子機から送信された観測データを受信し、受信した観測データに基づいて第2子機に対して送信する管理機器の制御信号を生成し、生成された制御信号を自動又は手動で送信する第2ステップと、
前記第2子機が、制御信号を受信し、受信した制御信号に基づいて接続された前記管理機器を制御する第3ステップと、
を備える
建物管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物管理装置、建物、及び、建物管理方法に関する。詳しくは、簡易な構成でありながら、管理対象領域内の環境を良好に保持することができ、管理対象領域の管理者の作業負担を軽減可能なものに関する。なお、本明細書中において用語「管理者」は、管理に従事する直接的な担当者のみならず、建物所有者や経営者等の建物の最終的な管理責任を負う責任者を含む意味で使用している。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の設備を遠隔管理する考え方があり、このような遠隔管理を行うものとして、例えば、下記特許文献1に記載されているようなデマンドコントロールユニットが提案されている。当該デマンドコントロールユニットは、端末機器を制御可能に接続されると共に、機外で生成された同端末機器の制御信号を受信可能な第一の子機と、単位時間内に最大需要電力が設定値に切迫ないし達した際に発せられる電力デマンドの監視装置からのアラートを受信する機能と、受信した前記アラートの内容に応じて単位時間内の最大需要電力が設定値を超えない運転に切り換える前記端末機器への制御信号を生成する機能と、該制御信号を前記第一の子機へ送信する機能とを有する親機とを備えるものである。
【0003】
特許文献1記載のデマンドコントロールユニットによれば、既設の電力デマンド監視装置をそのまま利用して設置できると共に、第一の子機が建物に設置された端末機器に接続され、親機が生成し第一の子機へ送信する制御信号を以て、同端末機器の消費電力が単位時間内に係る最大需要電力の設定値を超えないための運転を実行し、電力デマンドの設定値を超える運転状況が発生することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-213410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、食品、精密機器、印刷又は繊維の工場、オフィスや教育施設においては、運営コスト増加を招く消費電力抑制も重要な事項であるが、製品の品質保持や労働者等の労働環境への配慮も重要な事案である。
【0006】
例えば、工場においては、消費電力抑制によるコスト減に成功したとしても、空調機器等の運転抑制に起因する温度や湿度等の変化で製品に劣化が生じるようであれば、製品廃棄や取引先への金銭賠償や信用毀損を招き、より多額の損害が生じる可能性がありうる。
【0007】
また、近年の異常高温や低温の気候に合わせて空調機器等を稼働させれば、自ずと電力デマンドの設定値を超える運転状況が発生することが予測されるが、空調機器の運転を止める等して工場内が過度に高温又は低温になる或いは二酸化炭素等の有害ガス濃度が上昇するような環境悪化が生じれば、熱中症を発症するなど工場労働者の健康にも直接的な影響が及び、集中力低下による事故発生や、勤労意欲の低下にも繋がりうるし、長期的にみれば離職者の増加等も想定される。オフィスで勤務する者、教育施設で授業を受ける学生等についても同様である。
【0008】
そして、前述のような環境悪化を予防すべく、工場等に施設の管理者を置くことが好ましいが、特に中小規模の企業や施設においては人員不足や管理設備の自動化が遅れといった問題もあり、環境悪化を招かないようにきめ細やかな管理を行うとすると、管理者の作業負担の増大を招く。
【0009】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、簡易な構成でありながら、管理対象領域内の環境を良好に保持することができ、管理対象領域の管理者の作業負担を軽減可能な建物管理装置、建物、及び、建物管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の建物管理装置は、建物屋内における管理対象領域に設置され、該管理対象領域の温度、湿度、浮遊粉塵濃度及び有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を観測する観測機能、及び、該観測機能により観測された結果を信号化して機外に送信する観測情報送信機能を有する第1子機と、前記管理対象領域に設置されると共に、同管理対象領域に設置されて同管理対象領域における有害環境を改善可能な管理機器に接続され、制御信号の受信機能、及び、受信した該制御信号に基づいて接続された前記管理機器を制御する制御機能を有する第2子機と、前記第1子機から送信された観測データを受信する観測データ受信機能、受信した観測データに基づいて前記第2子機に対して送信する前記管理機器の制御信号を生成する制御信号生成機能、及び、生成された制御信号を自動又は手動で送信する制御信号送信機能を有する親機と、を備える。
【0011】
ここで、第1子機は、前述の観測機能を有することにより、設置された管理対象領域内の温度、湿度、浮遊粉塵濃度及び有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を観測することができる。そして、第1子機は、前述の観測データ送信機能を有することにより、観測された管理対象領域内の温度等の環境情報を信号化し、観測データとして送信することができる。
【0012】
第2子機は、接続された管理機器を制御して管理対象領域内における有害環境を改善することができる。なお、第2子機に係る管理機器の制御は、親機から送信され、受信機能で受信する制御信号に基づいて行われる。
【0013】
ここで改善される「有害環境」とは、管理対象領域内に存在する生物や物にとっての有害な環境を意味し、例えば、「生物」としては、管理対象領域内に在室する者、管理対象領域内にいる動物等が挙げられ、「物」としては、管理対象領域内で製造又は保管等する物が挙げられる。また、管理機器が改善する有害環境は、人及び物の両方が対象となる場合があり、例えば、管理対象領域内で製造等する物が温度や湿度の管理を要すると共に、人体に有害なガスを経時的に放出するものであるような場合は、換気装置が人及び物の両方にとっての有害環境を改善する機器となりうる。
【0014】
「有害環境」の例としては、管理対象領域内における極端に高低な気温、湿度、許容値を上回る浮遊粉塵又はアンモニア等の各種有害ガスのいずれか一又はこれらの組み合わせに係る環境が挙げられる。また、「有害ガス」の例としては、二酸化炭素、アンモニア、一酸化炭素、二酸化窒素、水素、メタン、エタノール、プロパン、ブタンのいずれか一又はこれらの組み合わせたものが挙げられる。そして、このような環境を改善可能な「管理機器」の例としては、換気扇等の換気装置、送風機、エアコン、吸塵機、ミストやオゾン等の発生機、有害ガスの発生源を清掃するための洗浄液や消毒液の噴霧機あるいは射出機、これらを制御するポンプ等の機器が挙げられる。なお、「有害環境」、「有害ガス」は上記事例に限定するものではなく、管理対象領域内に存在する生物や物に応じて異なる有害環境や有害ガスがあり、その場合の有害環境を改善するための機器や設備装置は、上記事例で記載した機器に限定されるものではなく適宜選択又は設置しうる。
【0015】
親機は、前述の観測データ受信機能を有することにより、第1子機からの観測データを受信することができる。これにより、管理対象領域内の温度や有害ガス濃度等の環境情報を入手することができる。
【0016】
そして、親機は、前述の制御信号生成機能を有することにより、受信した観測データに基づいて自動又は手動で第2子機に対して送信する管理機器の制御信号を生成することができる。なお、同制御信号の生成は自動又は手動で行われるものが含まれる。これにより、管理対象領域内の温度や有害ガス濃度等の環境を改善する制御信号を生成することができる。また、親機は、制御信号送信機能を有することにより、生成された制御信号を自動又は手動で送信することができる。これにより、第2子機が制御信号を受信することができる。
【0017】
このように、親機は、観測信号受信機能、制御信号生成機能及び制御信号送信機能を有することにより、第1子機から受信した環境情報に係る信号を受信して、管理対象領域内の環境改善に係る制御信号を生成及び送信し、第2子機を通じて管理機器を制御することができる。
【0018】
なお、親機は、第1子機及び第2子機と離隔配置が可能な構造となっており、管理対象領域や建物の外に設置してもよいし、管理対象領域内に設置してもよい。そして、親機を管理対象領域外(例えば、管理対象領域外の管理室や、建物外の管理棟等)に設置し、管理対象領域が工場(作業者の居ない自動化された生産ライン)や畜舎である場合は、管理者は、空調が整備され、臭気等が届かない、快適に過ごせる環境から管理対象領域の管理を行うことができる。つまり、本発明の建物管理装置の利用により、管理者の労働環境向上にも寄与し、改善前の有害環境による健康被害も未然に防ぐことも可能となる。
【0019】
このように、本発明の建物管理装置は、第1子機、第2子機及び親機を備える簡易な構成であり、設置作業が容易で、装置の調達及び設置コストを低減化することができる。また、本発明の建物管理装置は、管理者が管理対象領域に滞在しなくとも、同装置を設置した管理対象領域内の環境を良好に保持することができ、管理者の作業負担を軽減することができるものとなっている。
【0020】
更に、本発明の建物管理装置は、既存の建物や管理対象領域にも大きな改装を行うことなく容易に適用可能なものであり、既存の管理対象領域に適用し、既設の管理機器を活用できる場合には、既設の管理機器の廃棄や新規機器の導入が不要となって工事費用等が抑制することもでき、管理者(建物所有者を含む)の経済的負担や既設の管理機器の廃棄に伴う環境負荷の軽減を図ることもできる。なお、本発明の建物管理装置は、新設する建物や管理対象領域に適用することも当然可能である。
【0021】
また、前述した建物管理装置は、第1子機及び第2子機の設置場所が、教育施設又はオフィスにおける管理対象領域であって、第1子機の観測機能が、管理対象領域内の温度、湿度、二酸化炭素濃度、アンモニア濃度、一酸化炭素濃度、二酸化窒素濃度、水素濃度、メタン濃度、エタノール濃度、プロパン濃度、ブタン濃度のいずれか一又はこれらの組み合わせを対象とするものであり、第2子機に接続された管理機器が換気装置及び/又は警報器である態様であってもよい。
【0022】
本態様の場合、まず、第1子機が、管理対象領域内(教育施設やオフィス)における温度、湿度、二酸化炭素濃度等の状況(環境情報)を観測して信号化し、親機へ観測データとして送信する。親機は、観測データ受信機能により第1子機から送信された観測データを受信し、管理対象領域内が在室者(人体)に有害な温度、湿度、二酸化炭素濃度等の状況に至っている際には、制御信号生成機能により、観測データに基づいて前述の管理機器の制御信号を生成し、制御信号送信機能により同制御信号を第2子機に送信する。第2子機は、制御信号を受信し、これに接続された管理機器である換気装置を稼働させて換気を行うことにより、環境を改善することができる。
【0023】
更に、第2子機は、親機から受信した前述の制御信号によって、接続された警報器を稼働させて、環境悪化を在室者に知らせて注意喚起を行うことができる。そして、警報器は、これにより警報を知った在室者が管理者に連絡したり、在室者自身で窓を開けて換気を行う等の追加措置を行うきっかけを生じさせたりすることができる。
【0024】
なお、本態様で用いる表現「管理機器が換気装置及び/又は警報器である」とは、管理機器が換気装置及び警報器の両方である場合と、管理機器が換気装置又は警報器のいずれか一方のみである場合の、いずれの態様も含む意味である。
【0025】
このように、本建物管理装置によれば、管理者が管理対象領域である教育施設又はオフィスに滞在しなくとも、同装置を設置した管理対象領域内の環境を良好に保持することができ、管理者の作業負担を軽減することができ、且つ、在室者の健康や快適性の保持に資するものとなっている。
【0026】
また、前述した建物管理装置は、第1子機及び第2子機の設置場所が、食品販売スペースの冷蔵冷凍ショーケース内又は近傍であって、第1子機の観測機能が、少なくとも冷蔵冷凍ショーケース内又は近傍の温度を対象とするものであり、第2子機に接続された管理機器が、冷蔵冷凍ショーケースの温度調節機能部及び/又は警報器である態様であってもよい。
【0027】
本態様の場合、まず、第1子機が、食品販売スペースの冷蔵冷凍ショーケース内又は近傍における温度の状況(環境情報)を観測して信号化し、親機へ観測データとして送信する。親機は、観測データ受信機能により第1子機から送信された観測データを受信し、冷蔵冷凍ショーケース内又は近傍が保管物に有害な温度状況に至っている際には、制御信号生成機能により、観測データに基づいて前述の管理機器の制御信号を生成し、制御信号送信機能により同制御信号を第2子機に送信する。第2子機は、制御信号を受信し、これに接続された管理機器である冷蔵冷凍ショーケースの温度調節機能部を稼働させて温度の調節を行うことにより、環境を改善することができる。
【0028】
更に、第2子機は、親機から受信した前述の制御信号によって、接続された警報器を稼働させて、環境悪化を管理者(売り場の担当者も含む)に知らせて注意喚起を行うことができる。そして、警報器は、これにより警報を知った売り場の担当者等が管理者に連絡したり、売り場の担当者等自身で周辺環境の整備を行う等の追加措置を行うきっかけを生じさせたりすることができる。
【0029】
なお、本態様で用いる表現「食品販売スペース」とは、食品のみを取り扱う小売店のみならず、コンビニエンスストア、百貨店や総合スーパーマーケット等の生活雑貨等を取り扱う総合小売店の食品販売エリアを含む意味で使用している。また、本態様で用いる表現「温度調節機能部及び/又は警報器である」とは、管理機器が温度調節機能部及び警報器の両方である場合と、管理機器が温度調節機能部又は警報器のいずれか一方のみである場合の、いずれの態様も含む意味である。更にまた、本態様で用いる表現「少なくとも冷蔵冷凍ショーケース内又は近傍の温度を対象とする」とは、後述するように、第1子機の観測機能の観測対象として、温度以外を除外する趣旨ではないという意味である。
【0030】
このように、本建物管理装置によれば、管理者が管理対象領域である食品販売スペースの冷蔵冷凍ショーケース内又は近傍に滞在しなくとも、同装置を設置した管理対象領域内の環境を良好に保持することができ、管理者(売り場の担当者も含む)の作業負担を軽減することができ、且つ、冷蔵冷凍ショーケースで保管する商品等の品質保持に資するものとなっている。
【0031】
また、前述した建物管理装置は、第1子機の観測機能が、冷蔵冷凍ショーケース内又は近傍の湿度、二酸化炭素濃度、アンモニア濃度、一酸化炭素濃度、二酸化窒素濃度、水素濃度、メタン濃度、エタノール濃度、プロパン濃度、ブタン濃度のいずれか一又はこれらの組み合わせを更に対象とするものであり、第2子機に更に接続された管理機器が換気装置である態様であってもよい。
【0032】
本態様の場合、まず、第1子機が、食品販売スペースの冷蔵冷凍ショーケース内又は近傍における温度に加え、その他の状況(環境情報)を観測して信号化し、親機へ観測データとして送信する。親機は、観測データ受信機能により第1子機から送信された観測データを受信し、冷蔵冷凍ショーケース内又は近傍が、前述の温度のほかに、保管物に有害な湿度等の状況に至っている際には、制御信号生成機能により、観測データに基づいて前述の管理機器の制御信号を生成し、制御信号送信機能により同制御信号を第2子機に送信する。第2子機は、制御信号を受信し、これに接続された管理機器である換気装置を稼働させて温度の調節を行うことにより、環境を改善することができる。
【0033】
更に、冷蔵冷凍ショーケース内又は近傍が保管物に有害な温度に至っている際には、温度調節機能部も同時に稼働させてもよい。また、第2子機は、冷蔵冷凍ショーケース内又は近傍が保管物に有害な湿度等の状況に至っている際には、接続された警報器を稼働させて、環境悪化を管理者(売り場の担当者も含む)に知らせて注意喚起を行うことができる。そして、警報器は、これにより警報を知った売り場の担当者等が管理者に連絡したり、売り場の担当者等自身で換気等の環境整備を行う等の追加措置を行うきっかけを生じさせたりすることができる。
【0034】
このように、本建物管理装置によれば、管理者が管理対象領域である食品販売スペースの冷蔵冷凍ショーケース内又は近傍に滞在しなくとも、同装置を設置した管理対象領域内の環境を更に良好に保持することができ、管理者(売り場の担当者も含む)の作業負担を軽減することができ、且つ、冷蔵冷凍ショーケースで保管する商品等の品質保持に資するものとなっている。
【0035】
また、前述した建物管理装置は、第1子機及び第2子機の設置場所が、工場における管理対象領域であって、第1子機の観測機能が、少なくとも管理対象領域の湿度を対象とするものであり、第2子機に接続された管理機器が除湿機及び/又は警報器である態様であってもよい。
【0036】
本態様の場合、まず、第1子機が、工場の管理対象領域における湿度の状況(環境情報)を観測して信号化し、親機へ観測データとして送信する。なお、本態様における「工場」としては、例えば、湿度管理を特に要する食品、精密機器、印刷又は繊維の工場が挙げられるが、これに限定するものではなく、他の製品の工場であってもよい。また、本態様における「管理対象領域」としては、例えば、材料倉庫、生産ラインが設置された部屋、完成品(製品)の保管庫等の湿気を管理すべき対象物が存在する領域が挙げられるが、他にも、福利厚生の観点から管理室、従業員の休憩室等を除外するものではない。
【0037】
親機は、観測データ受信機能により第1子機から送信された観測データを受信し、管理対象領域が管理すべき対象物に有害な湿度状況に至っている際には、制御信号生成機能により、観測データに基づいて前述の管理機器の制御信号を生成し、制御信号送信機能により同制御信号を第2子機に送信する。第2子機は、制御信号を受信し、これに接続された管理機器である除湿機を稼働させて湿度の調節を行うことにより、環境を改善することができる。
【0038】
更に、第2子機は、親機から受信した前述の制御信号によって、接続された警報器を稼働させて、環境悪化を管理者や管理対象領域の在室者(例えば工場内の作業者)に知らせて注意喚起を行うことができる。そして、警報器は、これにより警報を知った管理対象領域の在室者等が管理者に連絡したり、在室者自身で窓を開けて換気を行う等の追加措置を行うきっかけを生じさせたりすることができる。
【0039】
なお、本態様で用いる表現「除湿機及び/又は警報器である」とは、管理機器が除湿機及び警報器の両方である場合と、管理機器が除湿機又は警報器のいずれか一方のみである場合の、いずれの態様も含む意味である。また、本態様で用いる表現「少なくとも前記管理対象領域の湿度を対象とする」とは、後述するように、第1子機の観測機能の観測対象として、湿度以外を除外する趣旨ではないという意味である。
【0040】
このように、本建物管理装置によれば、管理者が管理対象領域である工場に滞在しなくとも、同装置を設置した管理対象領域内の環境を良好に保持することができ、管理者の作業負担を軽減することができ、且つ、工場で製造される完成品(製品)の品質保持に資するものとなっている。
【0041】
また、前述した建物管理装置は、第1子機の観測機能が、管理対象領域の温度、二酸化炭素濃度、アンモニア濃度、一酸化炭素濃度、二酸化窒素濃度、水素濃度、メタン濃度、エタノール濃度、プロパン濃度、ブタン濃度のいずれか一又はこれらの組み合わせを更に対象とするものであり、第2子機に更に接続された管理機器が換気装置である態様であってもよい。
【0042】
本態様の場合、まず、第1子機が、工場における管理対象領域における湿度に加え、その他の状況(環境情報)を観測して信号化し、親機へ観測データとして送信する。なお、本態様における「管理対象領域」も生産ラインが設置された部屋等であり、第1子機の観測機能の更なる対象について「温度や二酸化炭素濃度等」と総称する場合がある。
【0043】
親機は、観測データ受信機能により第1子機から送信された観測データを受信し、管理対象領域が、前述の湿度のほかに、管理すべき対象物や在室者に有害な温度や二酸化炭素濃度等の状況に至っている際には、制御信号生成機能により、観測データに基づいて前述の管理機器の制御信号を生成し、制御信号送信機能により同制御信号を第2子機に送信する。第2子機は、制御信号を受信し、これに接続された管理機器である換気装置を稼働させて温度や二酸化炭素濃度等の調節を行うことにより、環境を改善することができる。
【0044】
更に、管理すべき対象物や在室者に有害な温度や二酸化炭素濃度等に至っている際には、換気装置も同時に稼働させてもよい。また、第2子機は、管理すべき対象物や在室者に有害な温度や二酸化炭素濃度等の状況に至っている際には、接続された警報器を稼働させて、環境悪化を管理者や管理対象領域の在室者に知らせて注意喚起を行うことができる。そして、警報器は、これにより管理対象領域の在室者等が管理者に連絡したり、管理対象領域の在室者等自身で換気等の環境整備を行う等の追加措置を行うきっかけを生じさせたりすることができる。
【0045】
このように、本建物管理装置によれば、管理者が管理対象領域である工場に滞在しなくとも、同装置を設置した管理対象領域内の環境を更に良好に保持することができ、管理者の作業負担を軽減することができ、且つ、工場で製造される完成品(製品)の品質保持及び作業者等の管理対象領域内の在室者の健康維持に資するものとなっている。
【0046】
また、前述した建物管理装置は、親機が、入力される環境情報に関する閾値を記憶可能な閾値記憶機能を更に有し、制御信号生成機能が、閾値と第1子機から受信した観測データとを対比して、同観測データに係る数値が閾値に近づくか又は超えた際に、第2子機に接続された管理機器の両方又はいずれか一方の制御信号を自動で生成し送信するように設けられている態様であってもよい。本態様の場合、管理対象領域内で行われる環境改善作業と在室者への警告報知(あるいは注意喚起)の両方又はいずれか一方を自動化することができ、これによって、管理者の作業負担が更に軽減されると共に、管理対象領域内の環境管理の精度を更に向上させることができる。
【0047】
詳しくは、前述の閾値記憶機能を有することにより、入力される環境情報に関する閾値を記憶する機能を親機に付与することができる。そして、制御信号生成機能は、第1子機から受信した観測データと閾値記憶機能に入力され記憶した閾値とを対比し、観測データに基づく数値が閾値に近づくか又は超えた際に、第2子機に接続された管理機器の両方又はいずれか一方の制御信号を自動で生成し且つ自動で送信することができる。
【0048】
つまり、管理者が管理対象領域内の環境を常時監視しなくても、自動化された親機によって、受信した観測データと閾値を比較して管理機器の制御判断が行われ、第2子機に接続された2以上の管理機器(換気ファン等の有害環境を改善可能な機器、或いは、警報器)の一方又は両方が稼働する。
【0049】
これにより、管理機器の少なくとも一方が稼働する場合は管理対象領域内の環境改善又は環境悪化の注意喚起が行われ、管理機器の両方が稼働する場合は管理対象領域内の環境改善及び環境悪化の注意喚起が行われることになるので、対象となる管理対象領域によっては昼夜に亘る管理者の監視及び制御判断の負担を軽減することができる。この負担軽減に伴って、出張先や旅行先等の外出先からも管理対象領域の管理を行うことも可能となるので、管理者の労働環境の改善や休暇取得等の労働条件向上にも寄与することができ、併せて、親機による即時対応によって、管理対象領域内の環境を常時良好に保持することができる。
【0050】
なお、「閾値」としては、管理対象領域に在室する者に健康被害が及ぶおそれがある温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は有害ガス濃度や、管理対象領域で管理される対象物に影響を与えるおそれがある温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は有害ガス濃度の数値が挙げられる。また、入力される「閾値」は、温度、湿度、浮遊粉塵濃度及び有害ガス濃度の中から選択された少なくともいずれか一に係る数値であり、温度、湿度、浮遊粉塵濃度及び有害ガス濃度の中から選択された二以上に係る数値であってもよい。
【0051】
また、前述した建物管理装置は、親機が、受信した観測データと生成した制御信号のいずれか一又は両方を記憶する信号データ記憶機能を更に有する態様であってもよい。本態様の場合、親機が記憶した観測データと制御信号の記録を、管理者は親機から直接的又は間接的に知覚することができる。これにより、管理者は管理対象領域内の環境変化とその対処に関する履歴を理解あるいは把握でき、更なる対処の要否判断や、以後の管理対象領域の運用や管理の知識に役立てることができる。
【0052】
なお、「親機から直接的」及び「知覚する」とは、例えば、親機が有するモニタ等を介して、数値化された観測データと制御信号を読み取る態様が挙げられる。また、「親機から間接的」及び「知覚する」とは、例えば、親機に接続されたパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」という)のモニタ等を介して、あるいは、親機に接続されたサーバやインターネット回線を通じて接続された外部情報端末の表示画面を介して、数値化された観測データと制御信号を読み取る態様が挙げられる。
【0053】
また、前述した建物管理装置は、親機が、インターネット回線に接続され、信号データ記憶機能に記憶された観測データと制御信号のいずれか一又は両方を外部情報通信端末に送信可能なインターネット送信機能を更に有する態様であってもよい。本態様の場合、管理者は、建物又は建物における管理対象領域から離れていても、情報通信端末を通じて管理対象領域の情報を得ることができる。
【0054】
詳しくは、管理者は、信号データ記憶機能に記憶された観測データの情報を得ることにより、管理対象領域内の環境変化を知ることができる。加えて、管理者は、信号データ記憶機能に記憶された制御信号の情報を得ることにより、外部情報通信端末で受信した制御信号の履歴を閲覧することで、管理対象領域内の環境変化を改善した管理機器の稼働履歴を知ることができる。
【0055】
また、前述した建物管理装置は、親機が、インターネット受信機能を更に有し、制御信号生成機能がインターネット受信機能を介して外部情報通信端末から受信したリクエストに基づいて管理機器の制御信号を生成する態様であってもよい。本態様の場合、管理者は、管理対象領域から離れていても、情報通信端末を通じて親機にリクエストを送信し、管理対象領域内の管理機器を手動で制御して、管理対象領域内の環境を改善することができる。
【0056】
上記の目的を達成するために、本発明の建物は、管理対象領域を屋内に有し、該管理対象領域に存在する人及び/又は物に対する環境を改善可能な管理機器が設置された建物本体と、前記管理対象領域に設置され、同管理対象領域の温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を観測する観測機能、及び、該観測機能により観測された結果を信号化して送信する観測データ送信機能を有する第1子機と、前記管理対象領域に設置されると共に、前記管理機器に接続され、制御信号の受信機能、及び、受信した該制御信号に基づいて接続された前記管理機器を制御する制御機能を有する第2子機と、を備える。
【0057】
本発明の建物で用いる表現「人及び/又は物」とは、人及び物の両方である場合と、人又は物のいずれか一方のみである場合の、いずれの態様も含む意味である。
【0058】
ここで、建物は、第1子機が前述の観測機能を有することにより、屋内の管理対象領域内の温度、湿度、浮遊粉塵濃度及び有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を観測することができる。そして、第1子機は、前述の観測データ送信機能を有することにより、観測された管理対象領域内の温度等の環境情報を信号化し、観測データとして送信することができる。
【0059】
第2子機は、接続された管理機器を制御して管理対象領域内における有害環境を改善することができる。なお、第2子機に係る管理機器の制御は、親機から送信され、受信機能で受信する制御信号に基づいて行われる。
【0060】
なお、第1子機及び第2子機と有線方式又は無線方式で接続される親機は、建物の外(屋外)に設置される態様が挙げられるが、管理対象領域や、管理対象領域以外の建物内に設置する態様を除外するものではない。この親機は、少なくとも、第1子機から送信された観測データを受信する観測データ受信機能、受信した観測データに基づいて第2子機に対して送信する管理機器の制御信号を生成する制御信号生成機能、及び、生成された制御信号を自動又は手動で送信する制御信号送信機能を有するものである。
【0061】
親機は、前述の観測データ受信機能を有することにより、第1子機からの観測データを受信することができ、管理対象領域内の温度や有害ガス濃度等の環境情報を入手することができる。また、親機は、前述の制御信号生成機能を有することにより、受信した観測データに基づいて第2子機に対して送信する管理機器の制御信号を生成することができる。この、制御信号は、管理装置を以て管理対象領域内の温度や有害ガス濃度等の環境を改善するためのものである。更にまた、親機は、前述の制御信号送信機能を有することにより、生成された制御信号を自動又は手動で送信することができ、第2子機が制御信号を受信することができる。
【0062】
このように、本発明の建物は、建物本体、第1子機及び第2子機を備える簡易な構成であり、設置作業が容易で、装置の調達及び設置コストを低減化することができる。また、本発明の建物は、管理者が管理対象領域に滞在しなくとも、管理対象領域内の環境を良好に保持することができ、管理者の作業負担を軽減することができるものとなっている。また、本発明の建物は、親機を管理対象領域外に設置し、管理対象領域が工場や畜舎である場合は、管理者は、空調が整備され、臭気等が届かない、快適に過ごせる環境から管理対象領域の管理を行うことができる。つまり、本発明の建物の利用により、管理者の労働環境向上にも寄与し、改善前の有害環境による健康被害も未然に防ぐことも可能となる。
【0063】
上記の目的を達成するために、本発明の建物管理方法は、建物の管理対象領域に設置された第1子機、該管理対象領域に設置されると共に、同管理対象領域に設置されて同管理対象領域に存在する人及び/又は物に対する有害環境を改善可能な管理機器に接続された第2子機、及び、前記管理対象領域内又は同管理対象領域外に配置された親機を使用し、前記第1子機が、該管理対象領域の温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を観測し、観測された結果を信号化して観測データとして送信する第1ステップと、前記親機が、前記第1子機から送信された観測データを受信し、受信した観測データに基づいて第2子機に対して送信する管理機器の制御信号を生成し、生成された制御信号を自動又は手動で送信する第2ステップと、前記第2子機が、制御信号を受信し、受信した制御信号に基づいて接続された前記管理機器を制御する第3ステップと、を備える。
【0064】
本発明の建物管理方法で用いる表現「人及び/又は物」とは、人及び物の両方である場合と、人又は物のいずれか一方のみである場合の、いずれの態様も含む意味である。また、表現「有害環境」、「有害ガス」、「管理機器」については、前述の通りであるので説明を省略する。
【0065】
ここで、前述した第1ステップを備えることにより、建物に設置された第1子機が、建物における管理対象領域の温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を観測し、観測された結果を信号化して観測データとして送信することができる。
【0066】
そして、前述した第2ステップを備えることにより、管理対象領域内又は管理対象領域外に配置された親機が、第1子機から送信された観測データを受信し、受信した観測データに基づいて管理機器の制御信号を生成し、生成された制御信号を第2子機に対して自動又は手動で送信することができる。
【0067】
更に、前述した第3ステップを備えることにより、管理対象領域に設置された第2子機が、受信した制御信号に基づいて、これに接続された管理機器を制御し、同管理機器の機能を以て管理対象領域における人及び/又は物に対する有害環境を改善することができる。
【0068】
本発明の建物管理方法では、親機が第1子機及び第2子機と離隔配置が可能なものであり、親機を管理対象領域や建物の外に設置してもよいし、管理対象領域内に設置してもよい。そして、親機を管理対象領域外(例えば、管理対象領域外の管理室や、建物外の管理棟等)に設置し、管理対象領域が工場(作業者の居ない自動化された生産ライン)や畜舎である場合は、管理者は、空調が整備され、臭気等が届かない、快適に過ごせる環境から管理対象領域の管理を行うことができる。つまり、本発明の建物管理方法によれば、管理者の労働環境向上にも寄与し、改善前の有害環境による健康被害も未然に防ぐことも可能となる。
【0069】
そして、本発明の建物管理方法は、第1子機、第2子機及び親機による簡易な構成であり、設置作業が容易で、装置の調達及び設置コストを低減化することができる。また、本発明の建物管理方法は、管理者が管理対象領域に滞在しなくとも管理対象領域内の環境を良好に保持することができ、管理者の作業負担を軽減することができるものとなっている。
【0070】
更に、本発明の建物管理方法は、既存の建物や管理対象領域にも大きな改装を行うことなく容易に適用可能なものであり、既存の管理対象領域に適用し、既設の管理機器を活用できる場合には、既設の管理機器の廃棄や新規機器の導入が不要となって工事費用等が抑制することもでき、管理者(建物所有者を含む)の経済的負担や既設の管理機器の廃棄に伴う環境負荷の軽減を図ることもできる。なお、本発明の建物管理方法は、新設する建物や管理対象領域に適用することも当然可能である。
【発明の効果】
【0071】
本発明の建物管理装置、建物、及び、建物管理方法によれば、簡易な構成でありながら、管理対象領域内の環境を良好に保持することができ、管理対象領域の管理者の作業負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】本発明の第1実施形態に係る建物及び建物管理装置、通信経路の構成を含む建物管理方法を示す説明図である。
図2図1に示す建物管理装置の構成部品を示しており、(a)は第1子機の構造の模式図、(b)は第2子機の構造の模式図、(c)は親機の構造の模式図、である。
図3】本発明の変形例1に係る建物及び建物管理装置、通信経路の構成を含む建物管理方法を示す説明図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る建物及び建物管理装置、通信経路の構成を含む建物管理方法を示す説明図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る建物及び建物管理装置、通信経路の構成を含む建物管理方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
図1図5を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。以下の説明は、〔第1実施形態〕、〔変形例1〕、〔第2実施形態〕、〔第3実施形態〕の順序により行う。また、図面各図における符号は、煩雑さを軽減し理解を容易にする範囲内で付しており、同一符号が付される複数の同等物についてはその一部にのみ符号を付す場合がある。
【0074】
〔第1実施形態〕
〔建物1及び建物管理装置2〕
図1図2を参照する。建物1は、建物本体10の屋内に管理対象領域11を有し、管理対象領域11には、管理対象領域に存在する人に対する環境を改善可能な管理機器が設置されており、建物管理装置2を構成する第1子機21(1機)と、第2子機22(2機)が設置されている。なお、本実施形態において、管理対象領域11はオフィスであり(以下、本実施形態における説明ではオフィス11という)、管理機器は換気装置3及び警報器(パトランプ)4である。また、本実施形態において、建物管理装置2は、前述した第1子機21及び第2子機22、そして親機23により構成され、親機23は、建物2内且つオフィス11外である管理室12に配置された態様である。建物1及び建物管理装置2の各部について、以下詳述する。
【0075】
(建物1)
建物1(建物本体10)は、その屋内にオフィス11と管理室12を有する。オフィス11は、所定位置に、第1子機21、第2子機22、換気装置3及び警報器4が設置されている。管理室12は、親機23が設置されている。
【0076】
(建物管理装置2)
建物管理装置2は、第1子機21、第2子機22、親機23により構成される。
【0077】
(第1子機21)
第1子機21は、オフィス11において、環境情報の観測に好適な箇所に設置されている(図1参照)。本実施形態では、オフィス11における在室者にとっての有害環境が観測対象であって、特に二酸化炭素濃度の観測が重要視されるため、第1子機21の設置箇所は、室内複数箇所を仮計測した上で二酸化炭素濃度が高く計測された箇所であって、ドア・窓・給気口・空調設備の吹出口等から極力離れ(外気の影響を避けるため)、在室者の席等から50cm以上離れ(呼気の直接的な影響を避けるため)、床上75~150cmの高さで、且つ、室内の燃焼設備(ストーブ・コンロ等)から離れた箇所であることが好ましい。
【0078】
図2(a)を参照する。第1子機21は、そのケーシング内に、観測機能部211、観測データ送信機能部212、電源部(図示省略)、シリアルポート213及びBluetooth(登録商標。以下省略)通信部214を有する。なお、図1に示す本実施形態では、1機の第1子機21が設置されているが、これに限定するものではなく、例えば、オフィス11が広い場合や、よりきめ細やかな観測を目的とする場合は、2機以上の第1子機を増設した態様であってもよい。
【0079】
観測機能部211は、オフィス11内の環境情報を観測する機能を有する。本実施形態で、観測機能部211は、温湿度センサ、浮遊粉塵濃度センサ、二酸化炭素濃度センサ及びマルチチャンネルガスセンサを有し、マルチチャンネルガスセンサは、アンモニア濃度、一酸化炭素濃度、二酸化窒素濃度、水素濃度、メタン濃度、エタノール濃度、プロパン濃度、及び、ブタン濃度を計測可能なものを採用している。
【0080】
観測データ送信機能部212は、観測機能部211により観測された結果を信号化して送信する機能を有する。本実施形態で、データ送信に係る通信規格は、Zigbee(登録商標。以下省略)であるが、これに限定するものではなく、例えば、Bluetooth、UWB(Ultra Wide Band)等であってもよい。
【0081】
電源部は、観測機能部211や観測データ送信機能部212等の第1子機21の構成部品を稼働させる電力を供給する。本実施形態で、電源部は、バッテリー等を内蔵する構造であるが、これに限定するものではなく、例えば、ACアダプタ付き電気コードを介して外部から入力される構造であってもよい。
【0082】
シリアルポート213及びBluetooth通信部214は、観測機能部211の一部を構成する部材であり、シリアルポート213は有線方式で、Bluetooth通信部214は無線方式で、それぞれ観測機能部211と接続されるものであり、シリアルポート213を介して接続される外部観測機器やBluetooth通信機能214を有する外部観測機器と接続されて、該外部観測機器からの観測情報を受信することもできる。なお「外部観測機器」としては、オフィス11内の温度計や湿度計等が挙げられ、既設又は新設のいずれの態様も含まれる。なお、本実施形態では、シリアルポート213及びBluetooth通信部214を設けているが、これに限定するものではなく、例えば、ポートがシリアル以外の規格であったり、通信部がBluetooth以外の規格であったりしてもよいし、また、ポート数及び通信部は2以上であってもよい。
【0083】
(第2子機22)
第2子機22は、1機が換気ファン3に接続され、他の1機が警報器4に接続された態様で、オフィス11内に設置されている(図1参照)。
【0084】
図2(b)を参照する。第2子機22は、そのケーシング内に、受信機能部221、制御機能部222、アナログ接続ポート223、HDMI(登録商標。以下省略)接続ポート224、及び、電源部(図示省略)を有する。
【0085】
なお、図1に示す本実施形態では、2機の第2子機22が設置されているが、これに限定するものではなく、例えば、接続される管理機器の数に応じて第2子機を増減してもよいし、設置された各管理機器の距離が近いようであれば1機の第2子機に複数の管理機器を接続することもできる。また、本実施形態では、アナログ接続ポート223及びHDMI接続ポート224を設けているが、これに限定するものではなく、例えば、ポートがデジタル接続方式であったり、HDMI以外の規格であったりしてもよいし、また、ポート数も2以上であってもよい。
【0086】
受信機能部221は、親機23が生成し送信した制御信号を受信する機能を有する。本実施形態で、受信機能部221が受信する制御信号は、換気装置3や警報器4の制御信号であるが、これに限定するものではなく、例えば、オゾン発生装置の制御信号等の人や物に対する有害環境を改善可能な管理機器を制御する制御信号を受信する機能を有していてもよい。また、本実施形態で、受信可能な制御信号に係る通信規格は、Zigbeeであるが、これに限定するものではなく、例えば、Bluetooth、UWB等であってもよい。
【0087】
制御機能部222は、アナログ接続ポート223及びHDMI接続ポート224を介して換気装置3や警報器4と有線方式又は無線方式で接続され、受信機能部221で受信した制御信号に基づいて換気装置3や警報器4を制御する機能を有する。
【0088】
電源部は、受信機能部221や制御機能部222等の第2子機22の構成部品を稼働させる電力を供給する。本実施形態で、電源部は、バッテリー等を内蔵する構造であるが、これに限定するものではなく、例えば、ACアダプタ付き電気コードを介して外部から入力される構造であってもよい。
【0089】
アナログ接続ポート223は、換気装置3や警報器4との接続部分であり、これを介して各機器への制御信号を送信することができる。本実施形態の換気装置3は換気ファンである。なお、本実施形態の警報器4は、光で警告を行うものであるが、これに限定するものではなく、例えば、音や文字等によって警告を行うものであってもよい。
【0090】
HDMI接続ポート224は、これを介してモニタ等に接続可能であり、例えばモニタに接続して、親機を介して受信した観測データを表示し、オフィス11内の在室者が周辺環境の観測データを目視することができる。また、HDMI接続ポート224は、警告表示等機能を有するモニタ方式の警報器に接続することもできる。
【0091】
(親機23)
図2(c)を参照する。親機23は、そのケーシング内に、観測データ受信機能部231、制御信号生成機能部232、制御信号送信機能部233、閾値記憶機能部234、信号データ記憶機能部235、インターネット回線接続部236、インターネット送信機能部237、インターネット受信機能部238、及び、電源部(図示省略)を有する。
【0092】
観測データ受信機能部231は、第1子機21から送信された観測データを受信する機能を有する。
【0093】
制御信号生成機能部232は、第1子機21から受信した観測データと後述する閾値記憶機能部234に記憶された閾値とを対比して、同観測データに係る数値が前述の閾値に近づいた際に(超えた際も含む)に、換気装置3や警報器4を制御する制御信号を自動生成する機能を有する。また、制御信号生成機能部232は、インターネット受信機能部238を介して外部情報通信端末から受信したリクエストに基づいて、前述の制御信号を生成する機能も有する。
【0094】
制御信号送信機能部233は、前述の生成された制御信号が伝達され、同制御信号を第2子機22へ自動送信する機能を有する。
【0095】
閾値記憶機能部234は、入力される環境情報に関する閾値を記憶する機能を有する。本実施形態において入力される閾値は、少なくとも人体に健康被害が及ぶおそれがある温度、湿度、二酸化炭素濃度、浮遊粉塵濃度、アンモニア濃度、一酸化炭素濃度、二酸化窒素濃度、水素濃度、メタン濃度、エタノール濃度、プロパン濃度、及び、ブタン濃度の数値であるが、これに限定するものではなく、センサ等で検知可能なものであれば、管理者が適宜種類及びその閾値を設定しうる。
【0096】
信号データ記憶機能部235は、親機23が受信した観測データと、親機23で生成した制御信号の両方を記憶する機能を有する。
【0097】
インターネット回線接続部236は、インターネット送信機能部237及びインターネット受信機能部238に接続され、機外とインターネット通信可能に接続するポート部分である。インターネット送信機能部237は、信号データ記憶機能部235に記憶された観測データと制御信号の両方を外部情報通信端末に送信する機能を有する。インターネット受信機能部238は、外部情報通信端末からのリクエストを受信し、制御信号送信機能部233に送る機能を有する。
【0098】
電源部は、観測データ受信機能部231や制御信号生成機能部232等の親機23の構成部品を稼働させる電力を供給する。本実施形態で、電源部は、ACアダプタ付き電気コードを介して外部から入力される構造であるが、これに限定するものではなく、例えば、バッテリー等を内蔵する構造であってもよい。
【0099】
なお、本実施形態において、第1子機21と親機23、及び、第2子機22と親機23の間の信号伝達は、無線方式であるが、有線方式を除外するものではない。
【0100】
〔建物及び建物管理装置の作用、建物管理方法〕
図1図2を参照して、建物1及び建物管理装置2の作用、建物管理方法について説明する。
【0101】
建物管理方法は、少なくとも下記の第1ステップ、第2ステップ、第3ステップ、を備える。具体的には、
(1)第1ステップでは、オフィス11に設置された第1子機21により、オフィス11内の温度、湿度、浮遊粉塵濃度及び有害ガス濃度等の環境情報を観測し、観測された結果を信号化して観測データとして送信し、
(2)第2ステップでは、管理室12に配置された親機23が、第1子機21から送信された観測データを受信し、受信した観測データに基づいて第2子機22に対して送信する換気装置3や警報器4の制御信号を生成して自動で(手動でも可能)送信し、
(3)第3ステップでは、第2子機22が、制御信号を受信し、受信した制御信号に基づいて接続された換気装置3や警報器4を制御し、換気装置3を稼働させてオフィス11内の換気を行うと共に、警報器4で環境悪化を在室者に知らせて注意喚起を行う。
【0102】
建物1及び建物管理装置2の作用について説明する。
第1子機21は、観測機能部211によって、オフィス11内の温度、湿度、浮遊粉塵濃度及び有害ガス濃度等の環境情報を観測する。そして、第1子機21は、観測データ送信機能部212によって、観測されたオフィス11内の環境情報を信号化し、観測データとして送信する。
【0103】
そして、第1子機21の観測データ送信機能部212は、データ送信に係る通信規格がZigbeeであるため、端末に中継機能が付与され、中継を繰り返す事でZigbee素子同士が通信を行うことで情報伝達が可能であり、低電力消費であるためバッテリーでも長期間稼動し、無配線のネットワークを構築することもできる。また、第1子機21のシリアルポート213及びBluetooth通信部214は、シリアルポート213を介して接続される外部観測機器やBluetooth通信機能を有する外部観測機器と接続されて、これら外部観測機器からの観測情報を受信することもでき、拡張性が高い。
【0104】
親機23は、観測データ受信機能部231により、第1子機21からの観測データを受信する。これにより、オフィス11内の温度等の環境情報を入手することができる。そして、親機23は、制御信号生成機能部232により、第1子機21から受信した観測データと閾値記憶機能部234に記憶された閾値とを対比して、同観測データに係る数値が前述の閾値に近づいた際に(超えた際も含む。管理対象領域内が在室者(人体)に有害な温度、湿度、二酸化炭素濃度等の状況に至っている際とも換言できる)に、換気装置3や警報器4を制御する制御信号を自動生成する。
【0105】
また、管理者の選択により、換気装置3や警報器4を制御する制御信号を手動で生成させることもできる。なお、制御信号生成機能部232は、インターネット受信機能部238を介して外部情報通信端末であるパソコンD1やスマートフォンD2から受信した管理者のリクエストに基づいて、前述の制御信号を生成することもある。
【0106】
親機23は、制御信号送信機能部233に制御信号生成機能部232で生成された制御信号が伝達され、同制御信号を第2子機22へ自動送信する(手動での送信も可能)。
【0107】
親機23は、閾値記憶機能部234により、親機23の出荷時であるか又は管理者等の購入後に入力された、人体にとって好適な数値である環境情報に関する閾値を記憶する。これにより、前述した制御信号生成機能部232の制御信号生成機能と協働して、観測データと閾値とのを対比、換気装置3や警報器4への制御信号生成の自動化が可能となる。
【0108】
親機23は、信号データ記憶機能部235により、親機23が受信した観測データと、親機23で生成(自動又は手動の両方を含む)した制御信号の両方を記憶する。親機23は、インターネット回線接続部236により、親機23の機外とインターネット通信可能に接続し、インターネット送信機能部23により、信号データ記憶機能部235に記憶された観測データと制御信号の両方をパソコンD1やスマートフォンD2に送信し、インターネット受信機能部238により、パソコンD1やスマートフォンD2からのリクエストを受信し、制御信号送信機能部233に送る。
【0109】
これにより、管理者は、親機23が記憶した観測データと制御信号の記録について、親機23が有するか接続されたモニタ等を介して直接的に知覚するか、又は、親機23にアクセスするか或いは信号データ記憶機能部235のデータが記録されたサーバD3にアクセスして、パソコンD1やスマートフォンD2を使用して間接的に知覚することができる。
【0110】
そして、親機23は、第1子機21から受信した環境情報に係る信号を受信して、オフィス11の環境改善に係る制御信号を生成及び送信し、第2子機22を通じて換気装置3や警報器4を制御する。
【0111】
第2子機22は、第1子機21がオフィス11内における各種有害ガス濃度や室温の上昇(オフィス11における人体に対する有害環境)を観測した際に、親機23から受信した制御信号に基づき、接続された換気装置3や警報器4を稼働させる制御を行う。これにより、オフィス11内は、在室者にとって快適な温度等の雰囲気に改善される。
【0112】
第2子機22は、受信機能部221は、親機23が生成し送信した制御信号を受信する。なお、受信機能部221は、データ送信に係る通信規格がZigbeeであるため、端末に中継機能が付与され、中継を繰り返す事でZigbee素子同士が通信を行うことで情報伝達が可能であり、低電力消費であるためバッテリーでも長期間稼動し、無配線のネットワークを構築することもできる。
【0113】
第2子機22は、制御機能部222により換気装置3や警報器4と接続され、受信機能部221で受信した制御信号に基づいて換気装置3や警報器4を制御する。なお、制御信号は、アナログ接続ポート223を介して、換気装置3や警報器4へ送信する。
【0114】
なお、HDMI接続ポート224は、これを介してモニタ等に接続可能であり、例えばモニタに接続して、親機を介して受信した観測データを表示し、オフィス11の在室者が周辺環境の観測データを目視することもできる。また、HDMI接続ポート224は警報器4に接続することもでき、オフィス11の在室者は目視によって環境情報を得ることができるので、これにより警報を知った在室者が管理者に連絡したり、在室者自身で窓を開けて換気を行う等の追加措置を行うきっかけを生じさせたりすることができる。
【0115】
このように、管理者は、オフィス11に居なくても(オフィス11から離れていても)、パソコンD1やスマートフォンD2を使用して、親機23に記憶された観測データの情報を得て、オフィス11の環境変化を知ることができる。
【0116】
同様に、管理者は、パソコンD1やスマートフォンD2を使用して、親機23に記憶された制御信号の履歴を閲覧でき、オフィス11の環境変化を改善した換気装置3や警報器4の稼働履歴を知ることができる。そして、管理者は、信号データ記憶機能部235に記憶した前述の観測データや制御信号を閲覧することで、オフィス11の環境変化とその対処に関する履歴を理解あるいは把握でき、更なる対処の要否判断や、以後の畜舎運営の知識として役立てることができる。
【0117】
なお、第1子機21と親機23、及び、第2子機22と親機23の間の信号伝達が無線方式であることで、オフィス11内での配線が不要で、設置時の手間が少なくて済む。また、設置後において、オフィス11内での配線が目に付くことがないため見た目が良い。
【0118】
このように、建物管理装置2を備える建物1は、第1子機21、第2子機22及び親機23が協働することにより、オフィス11内の環境を良好に保持することができ、管理者の作業負担を軽減可能なものとなっている。
【0119】
建物管理装置2は、第1子機21、第2子機22及び親機23を有する簡易な構成であり、建物1における設置作業が容易で、装置の調達及び設置コストを低減化することができる。更に、建物管理装置2は、新築の建物1に適用可能なことは当然であるが、既存の建物1にも大きな改装を行うことなく容易に適用可能なものとなっている。そして、建物管理装置2を既存の建物に適用し、既設の管理機器を活用できる場合には、既設の管理機器の廃棄や新規機器の導入が不要となって工事費用等が抑制することもでき、管理者(建物所有者を含む)の経済的負担の軽減を図ることもできる。加えて、既設の管理機器が、専業メーカーの精密な機器である場合、これを利用できることにより、第1子機21の観測機能部211を観測機能が少ないコストの安い部品にして簡素化するか、又は、部品を省略することもできるので、製品単価を下げることができる。
【0120】
そして、建物管理装置2を備える建物1によれば、管理者が管理対象領域(オフィス)11の環境を常時監視しなくても、親機23によって観測データと閾値を比較して自動で換気装置3や警報器4の制御判断が行われ、これらを稼働させて管理対象領域であるオフィス11内の環境改善が行われる。これにより、昼夜に亘る管理者による監視及び制御判断の負担を軽減することができて、更には、出張先や旅行先等の外出先からもオフィス11の管理を行うことも可能となる。この結果、管理者の労働環境の改善や休暇取得等の労働条件向上にも寄与することができ、併せて、親機23による即時対応によって、オフィス11の環境を常時良好に保持することができる。換言すると、建物1(オフィス11)は、様々な環境値をモニタリング・記録・監視することで、現在人手で行っている作業を自動化したり、経験と勘頼りの管理項目を数値化したりすることができるものとなっている。
【0121】
〔変形例1〕
建物1aは、図1に示した建物1及び管理対象領域11の他の態様(変形例1)であり、図3を参照して変形例1について説明する。
【0122】
建物1aは教育施設であって、建物本体10の屋内に、管理対象領域11aである教室(以下、本変形例における説明では教室11aという)と管理室12を有する。教室11aの所定位置には、第1子機21、第2子機22、換気装置3及び警報器4が設置されており、管理室12には親機23が設置されている。
【0123】
建物1aにおいても、第1実施形態のオフィス11と同様の建物管理装置2(第1子機21、第2子機22、親機23)により構成され、管理装置(換気装置3及び警報器4)も同じであるため、共通部分の構造及び作用効果の説明については省略する。
【0124】
建物管理装置2を備える建物1aは、第1子機21、第2子機22及び親機23が協働することにより、教室11a内に在室する生徒や教員に対する環境を良好に保持することができ、管理者の作業負担を軽減可能なものとなっている。
【0125】
〔第2実施形態〕
図4を参照する。建物1bは、スーパーマーケット等の食品販売スペースであって、建物本体10の屋内に、管理対象領域11bである冷蔵冷凍ショーケース(以下、本実施形態における説明では冷蔵冷凍ショーケース11bという)と管理室12を有する。
【0126】
冷蔵冷凍ショーケース11bは、その近傍に、第1子機21b、第2子機22・22b、換気装置3及び警報器4が設置されており、管理室12には親機23bが設置されている。つまり、本実施形態における建物管理装置2は、2機の第1子機21b、2機の第2子機22、2機の第2子機22b、及び、親機23bにより構成されている。
【0127】
第1子機21bは、その構造及び作用効果が第1実施形態の第1子機21と概ね共通するため、共通する構造及び作用効果については説明を省略し、相違する構造及び作用効果について後述する。同様に、第2子機22b、親機23bについても、その構造及び作用効果が第1実施形態の第2子機22、親機23の各々と概ね共通するため、共通する構造及び作用効果については説明を省略し、相違する構造及び作用効果について後述する。
【0128】
第1子機21bは、その観測機能部211が冷蔵冷凍ショーケース11b内又は近傍の温度を観測する機能を有しており、冷蔵冷凍ショーケース11b内又は近傍における温度の状況(環境情報)を観測して信号化し、親機23bへ観測データとして送信する。併せて、第1子機21bは、その観測機能部211が、冷蔵冷凍ショーケース11b内又は近傍の湿度、二酸化炭素濃度、アンモニア濃度、一酸化炭素濃度、二酸化窒素濃度、水素濃度、メタン濃度、エタノール濃度、プロパン濃度、及び、ブタン濃度を観測する機能を更に有している。これにより、冷蔵冷凍ショーケース11b内又は近傍における温度以外の状況(環境情報)も観測して信号化し、親機23bへ観測データとして送信する。
【0129】
親機23bは、観測データ受信機能部231により第1子機21bから送信された観測データを受信し、冷蔵冷凍ショーケース11b内又は近傍が、保管物(冷蔵物・冷凍物)に有害な温度状況に至っている際には、制御信号生成機能部233により、観測データに基づいて管理機器の一つである冷蔵冷凍ショーケース11bの温度調節機能部(図示及び符号省略。以下同じ)の制御信号を生成し、制御信号送信機能233により同制御信号を、冷蔵冷凍ショーケース11bの温度調節機能部に接続された第2子機22bに送信する。
【0130】
更に、親機23bは、温度以外の観測データ(前述のアンモニア濃度等)を第1子機21bから受信し、冷蔵冷凍ショーケース11b内又は近傍が、保管物に有害な環境に至っているか或いは周辺に滞在する買物客等に不快又は有害な環境に至っている際には、制御信号生成機能部233により、観測データに基づいて換気装置3及び警報器4の制御信号を生成し、同制御信号を第2子機22に送信する。
【0131】
第2子機22は、これに接続された管理装置が換気装置3及び警報器4であり、第2子機22bは、これに接続された管理装置が冷蔵冷凍ショーケース11bの温度調節機能部である。
【0132】
第2子機22bは、制御信号を受信し、これに接続された管理機器である冷蔵冷凍ショーケース11bの温度調節機能部を稼働させ、冷蔵冷凍ショーケース11b内の温度の調節を行うことにより、保管物の保管に関する環境を改善することができる。
【0133】
第2子機22は、制御信号を受信して換気装置3を稼働させ、周辺に滞在する買物客等に不快なアンモニアの臭気等又は有害ガスの拡散或いは希釈化(場合によっては冷蔵冷凍ショーケース11bの温度の調節)を行うことにより、冷蔵冷凍ショーケース11b内やその周辺の環境を改善することができる。
【0134】
更に、第2子機22は、親機23bから受信した前述の制御信号によって、警報器4を稼働させ、環境悪化を管理者(売り場の担当者も含む)に知らせて注意喚起を行うことができる。そして、警報器4は、これにより警報を知った売り場の担当者等が管理者に連絡したり、売り場の担当者等自身で温度調節を含む周辺環境の整備を行う等の追加措置を行うきっかけを生じさせたりすることができる。
【0135】
このように、建物1bによれば、管理者が冷蔵冷凍ショーケース11b近傍に滞在しなくとも、冷蔵冷凍ショーケース11b内及びその近傍の環境を良好に保持することができ、管理者(売り場の担当者も含む)の作業負担を軽減することができ、且つ、販売商品等の冷蔵冷凍ショーケース11b内の保管品の品質保持に資するものとなっている。
【0136】
〔第3実施形態〕
図5を参照する。建物1cは、精密機器の組立工場であって、建物本体10の屋内に、管理対象領域11cである生産ライン室(以下、本実施形態における説明では生産ライン室11cという)と管理室12を有する。
【0137】
生産ライン室11cは、第1子機21c、第2子機22・22c、換気装置3、警報器4及び除湿機5が設置されており、管理室12には親機23cが設置されている。つまり、本実施形態における建物管理装置2は、1機の第1子機21c、2機の第2子機22、1機の第2子機22c、及び、親機23cにより構成されている。
【0138】
第1子機21cは、その構造及び作用効果が第1実施形態の第1子機21と概ね共通するため、共通する構造及び作用効果については説明を省略し、相違する構造及び作用効果について後述する。同様に、第2子機22c、親機23cについても、その構造及び作用効果が第1実施形態の第2子機22、親機23の各々と概ね共通するため、共通する構造及び作用効果については説明を省略し、相違する構造及び作用効果について後述する。
【0139】
第1子機21cは、その観測機能部211が生産ライン室11c内の湿度を観測する機能を有しており、生産ライン室11c内における湿度の状況(環境情報)を観測して信号化し、親機23cへ観測データとして送信する。併せて、第1子機21cは、その観測機能部211が、生産ライン室11c内の温度、二酸化炭素濃度、アンモニア濃度、一酸化炭素濃度、二酸化窒素濃度、水素濃度、メタン濃度、エタノール濃度、プロパン濃度、及び、ブタン濃度を観測する機能を更に有している。これにより、生産ライン室11c内における湿度以外の状況(環境情報)も観測して信号化し、親機23cへ観測データとして送信する。
【0140】
親機23cは、観測データ受信機能部231により第1子機21cから送信された観測データを受信し、生産ライン室11c内が製造物(管理すべき対象物)に有害な湿度状況に至っている際には、制御信号生成機能部233により、観測データに基づいて管理機器の一つである除湿機5の制御信号を生成し、制御信号送信機能233により同制御信号を、除湿機5に接続された第2子機22cに送信する。
【0141】
更に、親機23cは、湿度以外の観測データ(前述の温度や二酸化炭素濃度等)を第1子機21cから受信し、生産ライン室11c内が、製造物にとって有害な環境に至っているか或いは製造作業従事者等の生産ライン室11c内の在室者に不快又は有害な環境に至っている際には、制御信号生成機能部233により、観測データに基づいて換気装置3及び警報器4の制御信号を生成し、同制御信号を第2子機22に送信する。
【0142】
第2子機22は、これに接続された管理装置が換気装置3及び警報器4であり、第2子機22cは、これに接続された管理装置が除湿機5である。第2子機22cは、制御信号を受信し、これに接続された管理機器である除湿機5を稼働させ、生産ライン室11c内の湿度の調節を行うことにより、製造物に関する環境を改善することができる。
【0143】
第2子機22は、制御信号を受信して換気装置3を稼働させ、在室者に不快な臭気等又は二酸化炭素等の有害ガスの拡散或いは希釈化(場合によっては生産ライン室11cの温度の調節)を行うことにより、生産ライン室11c内の環境を改善することができる。
【0144】
更に、第2子機22は、親機23cから受信した前述の制御信号によって、警報器4を稼働させ、環境悪化を管理者(生産ライン室11c内の在室者も含む)に知らせて注意喚起を行うことができる。そして、警報器4は、これにより警報を知った生産ライン室11c内の在室者等が管理者に連絡したり、生産ライン室11c内の在室者等自身で湿度調節を含む周辺環境の整備を行う等の追加措置を行うきっかけを生じさせたりすることができる。
【0145】
このように、建物1cによれば、管理者が生産ライン室11c内に滞在しなくとも、生産ライン室11c内の環境を良好に保持することができ、管理者(生産ライン室11c内の在室者も含む)の作業負担を軽減することができ、且つ、精密機器の工場で製造される完成品(製品)の品質保持及び作業者等の生産ライン室11c内の在室者の健康維持に資するものとなっている。
【0146】
本実施形態においては、管理対象領域として生産ライン室11cを挙げているが、これに限定するものではなく、例えば、材料倉庫、完成品(製品)の保管庫等の湿気を管理すべき対象物が存在する領域が挙げられ、他にも、福利厚生の観点から管理室、従業員の休憩室等を除外するものではない。
【0147】
本明細書および特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書および特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。また、第一、第二等の言葉は、等級や重要度を意味するものではなく、一つの要素を他の要素から区別するために使用したものである。
【符号の説明】
【0148】
1、1a、1b、1c 建物
10 建物本体
11 管理対象領域(オフィス)
11a 管理対象領域(教室)
11b 管理対象領域(冷蔵冷凍ショーケース)
11c 管理対象領域(生産ライン室)
12 管理室
2 建物管理装置
21、21b、21c 第1子機
211 観測機能部
212 観測データ送信機能部
213 シリアルポート
214 Bluetooth通信部
22、22b、22c 第2子機
221 受信機能部
222 制御機能部
223 アナログ接続ポート
224 HDMI接続ポート
23、23b、23c 親機
231 観測データ受信機能部
232 制御信号生成機能部
233 制御信号送信機能部
234 閾値記憶機能部
235 信号データ記憶機能部
236 インターネット回線接続部
237 インターネット送信機能部
238 インターネット受信機能部
3 換気装置
4 警報器
5 除湿機
D1 パソコン
D2 スマートフォン
D3 サーバ

図1
図2
図3
図4
図5