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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055224
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】仮固定用接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/16 20060101AFI20240411BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240411BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240411BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C09J175/16
C08F290/06
C09J11/06
C09J4/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161982
(22)【出願日】2022-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】河田 祐希
【テーマコード(参考)】
4J040
4J127
【Fターム(参考)】
4J040FA131
4J040FA291
4J040GA22
4J040JA01
4J040JB08
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA31
4J040LA06
4J040NA18
4J040NA20
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB031
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC151
4J127BD471
4J127BG141
4J127BG14Y
4J127BG281
4J127BG28Y
4J127CB152
4J127CB161
4J127CB163
4J127CC132
4J127CC251
4J127CC253
4J127DA16
4J127DA54
4J127DA61
4J127EA12
4J127FA14
(57)【要約】
【課題】 本発明は、プレート状部材同士を剥離可能に積層させて積層体を形成することができ、積層状態のプレート状部材の円滑な加工を可能とする一方、プレート状部材の加工後においては、50℃以下の低温水によってプレート状部材同士を容易に剥離することができる仮固定用接着剤組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の仮固定用接着剤組成物は、(メタ)アクリルアミド(A)と、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)と、分子量が1000以下の水溶性可塑剤(C)とを含むことを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリルアミド(A)と、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)と、分子量が1000以下の水溶性可塑剤(C)とを含むことを特徴とする仮固定用接着剤組成物。
【請求項2】
単官能(メタ)アクリレート(D)を含むことを特徴とする請求項1に記載の仮固定用接着剤組成物。
【請求項3】
分子量が1000以下の水溶性可塑剤(C)の含有量は、モノマーの総量100質量部に対して10~20質量部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の仮固定用接着剤組成物。
【請求項4】
(メタ)アクリルアミド(A)は、式(1)で示される(メタ)アクリルアミドと、式(2)で示される(メタ)アクリルアミドとを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の仮固定用接着剤組成物。
【化1】

但し、式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子又はアルキル基である。R3は、水素原子又はメチル基である。
【化2】

但し、式(2)中、R4及びR5は、それぞれ独立して水素原子又はアルキル基である。R6は、水素原子又はメチル基である。nは、繰り返し単位の数であって自然数である。
【請求項5】
(メタ)アクリルアミド(A)は、N,N-ジメチルアクリルアミドを含むことを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の仮固定用接着剤組成物。
【請求項6】
多官能ウレタンアクリレート(B)は、その主鎖中にポリアルキレンオキサイド骨格を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の仮固定用接着剤組成物。
【請求項7】
分子量が1000以下の水溶性可塑剤(C)は、分子中にポリアルキレンオキサイド骨格を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の仮固定用接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮固定用接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、プリズム、レンズ、シリコンウエハ及び半導体実装部品などのプレート状部材は、1枚単独では強度が低いため、仮固定剤を用いて複数枚を積層して積層体とした上で加工することが行われている。
【0003】
プレート状部材を積層して積層体とするために、両面テープ、ワックス又はホットメルト接着剤などが用いられている。
【0004】
しかしながら、両面テープは、その厚みの制御が難しく、プレート状部材を精度よく積層して積層体を作製することができないため、プレート状部材の加工精度が低下するという問題点を有する。
【0005】
又、両面テープは、上述の通り、厚みの制御が難しいため、プレート状部材同士を強固に接着することができず、プレート状部材の加工時に剥離してしまうという問題点も有する。
【0006】
ホットメルト接着剤は、プレート状部材の積層時と積層状態のプレート状部材同士の剥離時に100℃以上の高温に加熱する必要があるため、プレート状部材が熱に弱い場合には用いることができないと共に、剥離後のプレート状部材に糊残りが生じるため、プレート状部材をアルカリ溶剤又は有機溶剤を用いて洗浄する必要があり、作業環境上も好ましくないという問題点を有している。
【0007】
そこで、特許文献1には、(A)分子の末端又は側鎖に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、分子量が500以上の(メタ)アクリレート、(B)多官能(メタ)アクリレート、(C)前記(A)、(B)以外の(メタ)アクリレート、(D)光重合開始剤を含有する組成物が開示されている。
【0008】
特許文献2には、水に可溶な複素環状2級アミン残基を有する(メタ)アクリルアミドの樹脂成分と、光重合開始剤と、必要に応じて水とを含んでなる接着硬化物が水に可溶な仮固定用紫外線硬化性接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-290957号公報
【特許文献2】特開平6-116534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の組成物は、水との親和性が低いため、80℃以下の温水では積層状態のプレート状部材同士を剥離するには長時間を要すると共に、大判のプレート状部材には用いることができないという問題点を有する。
【0011】
特許文献2の仮固定用紫外線硬化性接着剤組成物は、水に可溶であるため、プレート状部材同士を剥離するための剥離水が汚染され、この汚染された剥離水から取り出したプレート状部材を洗浄する必要があるという問題点を有している。
【0012】
本発明は、プレート状部材同士を剥離可能に積層させて積層体を形成することができ、積層状態のプレート状部材の円滑な加工を可能とする一方、プレート状部材の加工後においては、50℃以下の低温水によってプレート状部材同士を容易に剥離することができる仮固定用接着剤組成物を提供する。
【0013】
本発明の仮固定用接着剤組成物は、特に、大判のプレート状部材に好適に用いることができ、大判のプレート状部材同士の積層及びこれらプレート状部材同士の剥離を円滑に行うことができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の仮固定用接着剤組成物は、(メタ)アクリルアミド(A)と、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)と、分子量が1000以下の水溶性可塑剤(C)とを含む。なお、(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0015】
[(メタ)アクリルアミド(A)]
仮固定用接着剤組成物は、(メタ)アクリルアミド(A)を含有する。仮固定用接着剤組成物は、(メタ)アクリルアミド(A)を含有しているので、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材の不測の剥離を防止してプレート状部材の切削などの加工を円滑に行うことができる。
【0016】
(メタ)アクリルアミド(A)としては、特に限定されない。(メタ)アクリルアミド(A)としては、後述する、式(1)で示される(メタ)アクリルアミド、式(2)で示される(メタ)アクリルアミド、式(3)で示される(メタ)アクリルアミドなどが挙げられ、式(1)及び式(2)で示されるアクリルアミドが好ましく、式(1)及び式(2)で示されるアクリルアミドを含むことがより好ましい。なお、(メタ)アクリルアミド(A)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0017】
式(1)で示される(メタ)アクリルアミドは、下記の通りの構造式を有している。
【0018】
【化1】
【0019】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子又はアルキル基である。R1及びR2は、互いに同一であっても相違してもよい。R3は、水素原子又はメチル基である。R1及びR2がアルキル基の場合、アルキル基は、直鎖状又は分岐状の何れであってもよい。なお、アルキル基とは、脂肪族飽和炭化水素から水素原子1個を引き抜いて形成される1価の原子団をいう。
【0020】
式(1)で示される(メタ)アクリルアミド(A)のアルキル基の水素は、他の原子又は原子団によって置換されていないことが好ましい。
【0021】
1及び/又はR2がアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上するので、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。R3は、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上するので、水素原子が好ましい。
【0022】
1及び/又はR2がアルキル基である場合、アルキル基としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)、n-ペンチル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基がより好ましい。
【0023】
仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材同士の不測の剥離又はずれを防止してプレート状部材の切削、切断及び研磨などの加工をより円滑に行うことができるので、式(1)において、R1及びR2がアルキル基で且つR3が水素原子であることが好ましい。
【0024】
式(1)で示される(メタ)アクリルアミド(A)としては、特に限定されず、例えば、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)、N,N-ジエチルアクリルアミド(DEAA)、N,N-ジメチルメタクリルアミド、イソプロピルアクリルアミドなどが挙げられ、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上するので、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)、N,N-ジエチルアクリルアミド(DEAA)が好ましく、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)がより好ましい。
【0025】
式(2)で示される(メタ)アクリルアミドは、下記の通りの構造式を有している。
【0026】
【化2】
【0027】
式(2)中、R4及びR5は、それぞれ独立して水素原子又はアルキル基である。R4及びR5は、互いに同一であっても相違してもよい。R4及びR5がアルキル基の場合、アルキル基は、直鎖状又は分岐状の何れであってもよい。式(2)で示される(メタ)アクリルアミド(A)のアルキル基の水素は、他の原子又は原子団によって置換されていないことが好ましい。R6は、水素原子又はメチル基である。nは、繰り返し単位の数であって自然数であり、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。nが上記範囲内であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物の吸水性を向上させ、剥離工程において、仮固定用接着剤組成物の硬化物が水を円滑に吸収し膨潤して接着性を低下させ、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層されたプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0028】
4及び/又はR5がアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上するので、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。R6は、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上するので、水素原子が好ましい。
【0029】
4及び/又はR5がアルキル基である場合、アルキル基としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)、n-ペンチル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基がより好ましい。
【0030】
仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材同士の不測の剥離又はずれを防止してプレート状部材の切削、切断及び研磨などの加工をより円滑に行うことができるので、式(2)において、R4及びR5がアルキル基で且つR6が水素原子であることが好ましい。
【0031】
式(2)で示される(メタ)アクリルアミドとしては、特に限定されず、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド、N-[2―(ジメチルアミノ)エチル]アクリルアミドなどが挙げられ、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上するので、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミドが好ましく、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドがより好ましい。
【0032】
式(3)で示される(メタ)アクリルアミドは、下記の通りの構造式を有している。
【0033】
【化3】
【0034】
式(3)中、R7は、水素原子又はメチル基である。mは、繰り返し単位の数であって自然数であり、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。mが上記範囲内であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物の吸水性を向上させ、剥離工程において、仮固定用接着剤組成物の硬化物が水を円滑に吸収し膨潤して接着性を低下させ、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層されたプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0035】
仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材同士の不測の剥離又はずれを防止してプレート状部材の切削、切断及び研磨などの加工をより円滑に行うことができるので、式(3)において、R7は水素原子であることが好ましい。
【0036】
式(3)で示される(メタ)アクリルアミドとしては、特に限定されず、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N-ヒドロキシメチルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリルアミド(A)のガラス転移温度Tgは、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上がより好ましい。(メタ)アクリルアミド(A)のガラス転移温度Tgは、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、135℃以下がより好ましく、130℃以下がより好ましい。(メタ)アクリルアミド(A)のガラス転移温度Tgが80℃以上であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材の不測の剥離を防止してプレート状部材の切削などの加工を円滑に行うことができる。(メタ)アクリルアミド(A)のガラス転移温度Tgが150℃以下であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層された積層状態のプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0038】
式(1)で示される(メタ)アクリルアミド(A)のガラス転移温度Tgは、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上がより好ましい。(メタ)アクリルアミド(A)のガラス転移温度Tgは、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、135℃以下がより好ましく、130℃以下がより好ましい。(メタ)アクリルアミド(A)のガラス転移温度Tgが80℃以上であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材の不測の剥離を防止してプレート状部材の切削などの加工を円滑に行うことができる。(メタ)アクリルアミド(A)のガラス転移温度Tgが150℃以下であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層された積層状態のプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0039】
式(2)で示される(メタ)アクリルアミド(A)のガラス転移温度Tgは、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上がより好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上がより好ましく、125℃以上がより好ましい。(メタ)アクリルアミド(A)のガラス転移温度Tgは、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、135℃以下がより好ましく、130℃以下がより好ましい。(メタ)アクリルアミド(A)のガラス転移温度Tgが80℃以上であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材の不測の剥離を防止してプレート状部材の切削などの加工を円滑に行うことができる。(メタ)アクリルアミド(A)のガラス転移温度Tgが150℃以下であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層された積層状態のプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0040】
本発明において、モノマーのホモポリマーのガラス転移温度Tgは、示差走査熱量(DSC)測定において、昇温速度10℃/分、及び、測定温度領域20~200℃の測定条件下にて測定された低温側のベースラインを高温側に延長した直線および高温側のベースラインを低温側に延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度とする。約10mgのポリマーを用い、例えば、下記の条件下にて、モノマーのホモポリマーのガラス転移温度を測定する。
測定機器:示差走査熱量計 DSC200(日立ハイテクサイエンス社製)
昇温速度:10℃/分
測定温度領域:20~200℃
【0041】
(メタ)アクリルアミド(A)は、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上させることができるので、式(1)で示される(メタ)アクリルアミド又は式(2)で示される(メタ)アクリルアミドを含むことが好ましく、式(1)で示される(メタ)アクリルアミドを含むことが好ましく、N,N-ジメチルアクリルアミドを含むことが好ましい。
【0042】
(メタ)アクリルアミド(A)中における式(1)で示される(メタ)アクリルアミドの含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、65質量%以上がより好ましい。(メタ)アクリルアミド(A)中における式(1)で示される(メタ)アクリルアミドの含有量は、95質量%以下が好ましく、93質量%以下がより好ましく、90質量%以下がより好ましい。式(1)で示される(メタ)アクリルアミドの含有量は、50質量%以上であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材の不測の剥離を防止してプレート状部材の切削などの加工を円滑に行うことができる。式(1)で示される(メタ)アクリルアミドの含有量は、95質量%以下であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層された積層状態のプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0043】
式(1)で示される(メタ)アクリルアミド中におけるN,N-ジメチルアクリルアミドの含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0044】
(メタ)アクリルアミド(A)中における式(2)で示される(メタ)アクリルアミドの含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、65質量%以上がより好ましい。(メタ)アクリルアミド(A)中における式(2)で示される(メタ)アクリルアミドの含有量は、95質量%以下が好ましく、93質量%以下がより好ましく、90質量%以下がより好ましい。式(2)で示される(メタ)アクリルアミドの含有量は、50質量%以上であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材の不測の剥離を防止してプレート状部材の切削などの加工を円滑に行うことができる。式(2)で示される(メタ)アクリルアミドの含有量は、95質量%以下であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層された積層状態のプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0045】
式(2)で示される(メタ)アクリルアミド中におけるN,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドの含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0046】
(メタ)アクリルアミド(A)は、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層された積層状態のプレート状部材同士の剥離性を向上させることができるので、式(1)で示される(メタ)アクリルアミドと、式(2)で示される(メタ)アクリルアミドとを含むことが好ましい。
【0047】
(メタ)アクリルアミド(A)が、式(1)で示される(メタ)アクリルアミドと、式(2)で示される(メタ)アクリルアミドとを含む場合、式(1)で示される(メタ)アクリルアミドと式(2)で示される(メタ)アクリルアミドとの質量比[式(1)で示される(メタ)アクリルアミドの含有量/式(2)で示される(メタ)アクリルアミドの含有量]は、1.5以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がより好ましく、5以上がより好ましく、6以上がより好ましい。式(1)で示される(メタ)アクリルアミドと式(2)で示される(メタ)アクリルアミドとの質量比[式(1)で示される(メタ)アクリルアミドの含有量/式(2)で示される(メタ)アクリルアミドの含有量]は、12以下が好ましく、11以下がより好ましく、10以下がより好ましく、9以下がより好ましい。式(1)で示される(メタ)アクリルアミドと式(2)で示される(メタ)アクリルアミドとの質量比[式(1)で示される(メタ)アクリルアミドの含有量/式(2)で示される(メタ)アクリルアミドの含有量]が1.5以上であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層された積層状態のプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。式(1)で示される(メタ)アクリルアミドと式(2)で示される(メタ)アクリルアミドとの質量比[式(1)で示される(メタ)アクリルアミドの含有量/式(2)で示される(メタ)アクリルアミドの含有量]が12以下であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層された積層状態のプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0048】
仮固定用接着剤組成物中における(メタ)アクリルアミド(A)の含有量は、モノマーの総量100質量部に対して10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上がより好ましい。仮固定用接着剤組成物中における(メタ)アクリルアミド(A)の含有量は、モノマーの総量100質量部に対して60質量部以下が好ましく、55質量部以下がより好ましく、50質量部以下がより好ましい。仮固定用接着剤組成物中における(メタ)アクリルアミド(A)の含有量が10質量部以上であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材の不測の剥離を防止してプレート状部材の切削などの加工を円滑に行うことができる。仮固定用接着剤組成物中における(メタ)アクリルアミド(A)の含有量が60質量部以下であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層された積層状態のプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0049】
なお、本発明において、仮固定用接着剤組成物中のモノマーとは、仮固定用接着剤組成物の硬化時に重合反応を生じる化合物をいう。
【0050】
[多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)]
仮固定用接着剤組成物は、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)を含有する。仮固定用接着剤組成物は、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)を含有するので、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層状態となったプレート状部材同士の剥離時において、仮固定用接着剤組成物の硬化物は、シート状を維持しながらプレート状部材の表面から容易に剥離し、プレート状部材同士を容易に剥離することができる。そして、仮固定用接着剤組成物の硬化物は、プレート状部材の剥離時において、シート状を維持するので、互いに剥離されたプレート状部材の表面に糊残りが生じるのを低減化することができると共に、プレート状部材の剥離工程において用いられる剥離用処理水を汚染することも低減化することができ、剥離用処理水によるプレート状部材の汚染も低減化することができる。
【0051】
仮固定用接着剤組成物は、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)を含有しているので、仮固定用接着剤組成物の硬化物において、(メタ)アクリルアミド(A)に起因するプレート状部材に対する接着性を緩和して、プレート状部材に対する仮固定用接着剤組成物の硬化物の接着性を適度なものとし、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層された積層状態のプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0052】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)は、分子中にウレタン結合を有し且つ(メタ)アクリロイル基及び/又は(メタ)アクリロキシ基を複数個有する。多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)は、分子中にウレタン結合を有しているので、仮固定用接着剤組成物の硬化物に強靭性を与え、シート状を維持しやすくなるので、互いに剥離されたプレート状部材の表面に糊残りが生じるのを低減化することができる。
【0053】
アクリロキシ基は、式(4)で示される1価の原子団を、メタクリロキシ基は、式(5)で示される1価の原子団を、アクリロイル基(CH2=CHCO-)は、式(6)で示される1価の原子団を、メタクリロイル基[(CH2=CH(CH3)CO-)]は、式(7)で示される1価の原子団をいう。式(4)~(7)において、*1~*4は、結合手であって単結合を意味する。なお、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。(メタ)アクリロキシ基は、アクリロキシ基又はメタクリロキシ基を意味する。
【0054】
【化4】
【0055】
【化5】
【0056】
【化6】
【0057】
【化7】
【0058】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)中における(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリロキシ基の総数は、2~4個が好ましく、2~3個がより好ましく、2個がより好ましい。多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)中における(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリロキシ基の総数が2~4個であると、剥離工程において、仮固定用接着剤組成物の硬化物をシート形態を保持しながらプレート状部材から円滑に剥離することができると共に、仮固定用接着剤組成物の硬化物が剥離用処理水を吸収して膨潤しやすくなり、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層状態となっているプレート状部材同士を容易に剥離することができる。
【0059】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)は、その主鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基及び/又は(メタ)アクリロキシ基を有していることが好ましく、(メタ)アクリロキシ基を有していることがより好ましい。仮固定用接着剤組成物の硬化物は、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)によって架橋構造が導入されている。主鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基及び/又は(メタ)アクリロキシ基を有している多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)が架橋構造に取り込まれると、仮固定用接着剤組成物の硬化物において架橋点間の距離が大きく形成され、剥離工程において、仮固定用接着剤組成物の硬化物中に剥離用処理水を容易に取り込むことができ、仮固定用接着剤組成物の硬化物を円滑に膨潤させることができる。従って、仮固定用接着剤組成物の硬化物によるプレート状部材同士の接着力を容易に低下させることができ、積層状態のプレート状部材を容易に剥離することができる。
【0060】
なお、本発明において、主鎖とは、分子中において最も長い鎖をいう。鎖の長さは、鎖を構成している原子数によって判断され、原子数が多いほど、鎖の長さが長いと判断される。
【0061】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)は、その主鎖中にポリアルキレンオキサイド骨格を有していることが好ましい。多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)が、その主鎖中にアルキレンオキサイド骨格を有していることによって、仮固定用接着剤組成物の硬化物は、水に対する親和性が向上し、吸水性に優れ、剥離工程において、仮固定用接着剤組成物の硬化物が水を円滑に吸収し膨潤して接着性を低下させ、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層されたプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0062】
ポリアルキレンオキサイド骨格は、一般式:-(R8-O)p-(式中、R8は炭素数が1~14のアルキレン基を表し、pは、繰り返し単位の数であって自然数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体骨格が好ましく挙げられる。ポリアルキレンオキサイド骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0063】
本発明において、アルキレン基とは、脂肪族飽和炭化水素中の異なる2個の炭素原子に結合する2個の水素原子を引き抜いて生じる2価の原子団であり、直鎖状及び分岐状の双方の原子団を含む。なお、分岐状とは、1個の炭素(メチル基)が側鎖として結合している場合も含まれる。
【0064】
アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基[-CH2-CH2-CH2-(トリメチレン基)、-CH(CH3)-CH2-]、ブチレン基、アミレン基、ヘキシレン基などが挙げられる。
【0065】
ポリアルキレンオキサイド骨格としては、ポリエチレンオキサイド骨格、ポリプロピレンオキサイド骨格、ポリブチレンオキサイド骨格、ポリテトラメチレンオキサイド骨格、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体骨格、及びポリプロピレンオキサイド-ポリブチレンオキサイド共重合体骨格などが挙げられる。なかでも、ポリエチレンオキサイド骨格、ポリプロピレンオキサイド骨格が好ましい。ポリアルキレンオキサイド骨格がポリエチレンオキサイド骨格又はポリプロピレンオキサイド骨格であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物は、水に対する親和性が向上し、吸水性に優れ、剥離工程において、仮固定用接着剤組成物の硬化物が水を円滑に吸収し膨潤して接着性を低下させ、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層されたプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0066】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)は、その主鎖骨格にポリアルキレンオキサイド骨格を含み且つ主鎖両末端に(メタ)アクリロイル基及び/又は(メタ)アクリロキシ基を有していることが好ましく、その主鎖骨格にポリアルキレンオキサイド骨格を含み且つ主鎖両末端に(メタ)アクリロキシ基を有していることがより好ましい。
【0067】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)の重量平均分子量は、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましい。多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)の重量平均分子量は、30000以下が好ましく、20000以下がより好ましく、9000以下がより好ましい。多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)の重量平均分子量が1000以上であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材の不測の剥離を防止してプレート状部材の切削などの加工を円滑に行うことができる。多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)の重量平均分子量が30000以下であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層された積層状態のプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0068】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値を意味する。
【0069】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)の重量平均分子量Mwは、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 Waters社製 ACQUITY APCシステム
測定条件 カラム:Waters社製 HSPgel(TM)HR MB-M
移動相:テトラヒドロフラン使用 0.5mL/分
検出器:RI検出器
標準物質:ポリスチレン
SEC温度:40℃
【0070】
仮固定用接着剤組成物中における多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)の含有量は、モノマーの総量100質量部に対して10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上がより好ましい。仮固定用接着剤組成物中における多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)の含有量は、モノマーの総量100質量部に対して60質量部以下が好ましく、55質量部以下がより好ましく、50質量部以下がより好ましい。仮固定用接着剤組成物中における多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)の含有量が10質量部以上であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物をプレート状部材から糊残りを略生じさせることなく除去することができる。仮固定用接着剤組成物中における多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)の含有量が60質量部以下であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を剥離用処理水によって容易に膨潤させることができ、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層状態のプレート状部材同士を容易に剥離することができる。
【0071】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)は、分子中にウレタン結合を有し且つ(メタ)アクリロイル基及び/又は(メタ)アクリロキシ基を複数個有しており、その製造方法は、公知の反応方法を用いて製造される。以下に、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)の製造方法の一例を説明する。
【0072】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)は、ジイソシアネート及び活性水素を有する(メタ)アクリレートをモル比1:1で反応させて得られる化合物(S)と、この化合物(S)に対して1/2モル数のポリオールとを50~150℃でウレタン化反応させることによって製造することができる。
【0073】
[ジイソシアネート]
ジイソシアネートとは、1分子内に2個のイソシアネート基(-N=C=O)を有する化合物である。
【0074】
ジイソシアネートとしては、特に限定されず、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。なお、ジイソシアネートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0075】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、オクタデシレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。なお、脂肪族ジイソシアネートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0076】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン-2,4(又は2,6)-ジイソシアネート、1,3-(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)などが挙げられる。なお、脂環族ジイソシアネートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0077】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ハロゲン化フェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、3-フェニル-2-エチレンジイソシアネート、クメン-2,4-ジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-エトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4’-ジイソシアネートジフェニルエーテル、5,6-ジメチル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートジフェニルエーテル、ベンジジンジイゾシアネート、9,10-アンスラセンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートベンジル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアネートジフェニルメタン、2,6-ジメチル-4,4’-ジイソシアネートジフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジイソシアネートジフェニル、1,4-アンスラセンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。なお、芳香族ジイソシアネートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0078】
[活性水素基を有する(メタ)アクリレート]
「活性水素基」とは、イソシアネート基とウレタン化反応可能な置換基を意味する。活性水素基を有する(メタ)アクリレートとは、イソシアネート基とウレタン化反応可能な置換基を有する(メタ)アクリレートを意味する。活性水素基としては、例えば、水酸基、アミノ基、イミノ基などが挙げられ、水酸基(-OH)が好ましい。
【0079】
活性水素基を有する(メタ)アクリレート中の活性水素基の数は、特に限定されないが、全ての活性水素基がジイソシアネート中のイソシアネート基と反応を行うという点から、2個以下が好ましく、1個がより好ましい。
【0080】
活性水素基を有する(メタ)アクリレートとしては、特に限定されず、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1-アクリロキシ-3-(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0081】
ジイソシアネート及び活性水素を有する(メタ)アクリレートをモル比1:1で反応させて得られる化合物(S)は、公知の製造方法で合成されればよい。従来公知の製造方法としては、例えば、特開2002-138112号公報、又は特表2012-523385号公報に記載の製造方法を好適に用いることができる。
【0082】
[ポリオール]
ポリオールとは、1分子中に2個以上の水酸基(-OH)を有する化合物である。ポリオール中の水酸基と、化合物(S)中のイソシアネート基とが反応することによって、ウレタン結合を生成する。
【0083】
ポリオールは、特に限定されず、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールなどが挙げられる。仮固定用接着剤組成物の硬化物は、水に対する親和性が向上し、吸水性に優れ、剥離工程において、仮固定用接着剤組成物の硬化物が水を円滑に吸収し膨潤して接着性を低下させ、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層されたプレート状部材同士の剥離性を向上させることができるので、ポリオールは、ポリエーテルポリオールが好ましく、ポリオキシアルキレンポリオールがより好ましい。なお、ポリオールは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0084】
ポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)ポリオール及びポリオキシテトラメチレンポリオールなどが挙げられる。仮固定用接着剤組成物の硬化物は、水に対する親和性が向上し、吸水性に優れ、剥離工程において、仮固定用接着剤組成物の硬化物が水を円滑に吸収し膨潤して接着性を低下させ、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層されたプレート状部材同士の剥離性を向上させることができるので、ポリオキシアルキレンポリオールは、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールが好ましい。
【0085】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、カーボネートと低分子量ジオールとの反応生成物が挙げられる。カーボネートとしては、例えば、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートなどが挙げられる。低分子量ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ノナンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0086】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記低分子量ジオールから選ばれる少なくとも1種と、ジカルボン酸やその反応性誘導体の少なくとも1種からなる酸成分との反応物が挙げられる。酸成分としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸などの二塩基酸又はその無水物などが挙げられる。
【0087】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、化合物(S)と、化合物(S)に対して1/2モル数のポリオールとを反応させ、ポリオール中の活性水素基と、化合物(S)中のイソシアネート基とをウレタン化反応させることによって製造することができる。なお、ウレタン化反応の反応時間は、触媒の有無、種類、及び温度によって異なるが、一般的には12~36時間程度である。
【0088】
仮固定用接着剤組成物中における多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)の含有量は、モノマーの総量100質量部に対して10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上がより好ましく、35質量部以上がより好ましい。仮固定用接着剤組成物中における多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)の含有量は、モノマーの総量100質量部に対して60質量部以下が好ましく、55質量部以下がより好ましく、50質量部以下がより好ましい。仮固定用接着剤組成物中における多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)の含有量が10質量部以上であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層されたプレート状部材同士の剥離を容易に行うことができると共に、剥離工程において、仮固定用接着剤組成物の硬化物をシート状に剥離することができ、剥離用処理水の汚染を概ね抑制し、剥離されたプレート状部材が汚染されるのを抑制することができる。仮固定用接着剤組成物中における多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)の含有量が60質量部以下であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上させることができる。
【0089】
[分子量が1000以下の水溶性可塑剤(C)]
仮固定用接着剤組成物は、分子量が1000以下の水溶性可塑剤(C)(以下、単に「水溶性可塑剤(C)」ということがある)を含有している。仮固定用接着剤組成物が、分子量が1000以下の水溶性可塑剤(C)を含有していることによって、仮固定用接着剤組成物の硬化物は吸水性に優れ、剥離工程において、仮固定用接着剤組成物の硬化物が水を円滑に吸収し膨潤して接着性を低下させ、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層されたプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0090】
水溶性可塑剤(C)は、仮固定用接着剤組成物の硬化物に塑性を付与して柔軟性を向上させており、プレート状部材の表面凹凸への追従性を向上させ、仮固定用接着剤組成物の硬化物によるプレート状部材同士の接着性を向上させている。
【0091】
水溶性可塑剤(C)は、25℃の水に対する溶解性33g/L以上であることが好ましく、25℃の水に対する溶解性が100g/L以上であることが好ましい。水溶性可塑剤(C)は、25℃の水に対する溶解性が2000g/L以下であることが好ましく、25℃の水に対する溶解性が1500g/L以下であることが好ましい。なお、水溶性可塑剤(C)の25℃の水に対する溶解性は下記の要領で測定される。水溶性可塑剤1gを25℃の純水中に供給し、5分ごとに強く30秒間振とうさせ、振とう開始から30分以内に、水溶性可塑剤の全量が純水に完全に溶解するために必要な最小限の純水の体積W(L)を測定し、下記式に基づいて25℃の水に対する溶解性を算出する。
水溶性可塑剤(C)における25℃の水に対する溶解性(g/L)=1/W
【0092】
水溶性可塑剤(C)は、仮固定用接着剤組成物中に含まれているモノマーとの反応性(重合性)を有しておらず、仮固定用接着剤組成物の硬化物中に遊離した状態で存在している。そして、水溶性可塑剤(C)は、その分子量が1000以下であることから、仮固定用接着剤組成物の硬化物中において移動に対する自由度が高く、仮固定用接着剤組成物の硬化物中への水の取り込み性を向上させており、剥離工程において、仮固定用接着剤組成物の硬化物を円滑に膨潤させて接着性を低下させ、硬化物を介して積層されたプレート状部材同士の剥離性を向上させている。
【0093】
水溶性可塑剤(C)の分子量は、上述の理由から、1000以下であり、500以下がより好ましく、250以下がより好ましい。水溶性可塑剤(C)の分子量は、積層されたプレート状部材同士の剥離工程において、仮固定用接着剤組成物の硬化物が剥離用処理水中に溶出し、剥離用処理水が汚染されることを低減することができるので、60以上が好ましく、100以上がより好ましい。
【0094】
水溶性可塑剤(C)が重合体である場合、水溶性可塑剤の分子量は、「重量平均分子量」とする。なお、水溶性可塑剤(C)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値を意味する。
【0095】
水溶性可塑剤(C)の重量平均分子量Mwは、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 Waters社製 ACQUITY APCシステム
測定条件 カラム:Waters社製 HSPgel(TM)HR MB-M
移動相:テトラヒドロフラン使用 0.5mL/分
検出器:RI検出器
標準物質:ポリスチレン
SEC温度:40℃
【0096】
水溶性可塑剤(C)としては、分子量が1000以下で且つ水溶性であれば、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジアルキレングリコール(ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなど)、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、ブチルグリコール、イソブチルグリコール、ヘキシルグリコール、2-エチルヘキシルグリコールなどが挙げられ、ジアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールが好ましく、ジエチレングリコールが好ましい。なお、水溶性可塑剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0097】
仮固定用接着剤組成物中における水溶性可塑剤(C)の含有量は、仮固定用接着剤組成物中のモノマーの総量100質量部に対して10質量部以上が好ましく、12質量部以上がより好ましく、15質量部以上がより好ましい。仮固定用接着剤組成物中における水溶性可塑剤の含有量は、仮固定用接着剤組成物中のモノマーの総量100質量部に対して40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、25質量部以下がより好ましい。仮固定用接着剤組成物中における水溶性可塑剤(C)の含有量が10質量部以上であると、剥離工程において、仮固定用接着剤組成物の硬化物を円滑に膨潤させて接着性を低下させ、硬化物を介して積層されたプレート状部材同士の剥離性を向上させている一方、仮固定用接着剤組成物の硬化物に塑性を付与して柔軟性を向上させ、プレート状部材の表面凹凸への追従性を向上させることにより、仮固定用接着剤組成物の硬化物によるプレート状部材同士の接着性を向上させることができる。仮固定用接着剤組成物中における水溶性可塑剤(C)の含有量が40質量部以下であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上させることができる。
【0098】
[単官能(メタ)アクリレート(D)]
仮固定用接着剤組成物は、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層された積層状態のプレート状部材同士の剥離性を向上させることができるので、単官能(メタ)アクリレート(D)を含有していることが好ましい。単官能(メタ)アクリレート(D)は、分子内にアミド結合を有しない。単官能(メタ)アクリレート(D)は、仮固定用接着剤組成物に含まれているモノマーと重合反応し得るエチレン性不飽和二重結合を1個のみ有している。
【0099】
仮固定用接着剤組成物が、単官能(メタ)アクリレート(D)を含有していると、仮固定用接着剤組成物の硬化物において、(メタ)アクリルアミド(A)に起因するプレート状部材に対する接着性を緩和して、プレート状部材に対する仮固定用接着剤組成物の硬化物の接着性をより適度なものとし、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層された積層状態のプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0100】
単官能(メタ)アクリレート(D)は、その主鎖中にポリアルキレンオキサイド骨格を含むことが好ましい。単官能(メタ)アクリレート(D)が、その主鎖中にアルキレンオキサイド骨格を含むことによって、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層された積層状態のプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0101】
ポリアルキレンオキサイド骨格は、一般式:-(R9-O)q-(式中、R9は炭素数が1~14のアルキレン基を表し、qは、繰り返し単位の数であって自然数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体骨格が好ましく挙げられる。qは2~20が好ましい。繰り返し単位の数が2~20であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層された積層状態のプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。ポリアルキレンオキサイド骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。アルキレン基は、直鎖状及び分岐状の双方の原子団を含む。
【0102】
アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基[-CH2-CH2-CH2-(トリメチレン基)、-CH(CH3)-CH2-]、ブチレン基、アミレン基、ヘキシレン基などが挙げられる。
【0103】
ポリアルキレンオキサイド骨格としては、ポリエチレンオキサイド骨格、ポリプロピレンオキサイド骨格、ポリブチレンオキサイド骨格、ポリテトラメチレンオキサイド骨格、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体骨格、及びポリプロピレンオキサイド-ポリブチレンオキサイド共重合体骨格などが挙げられる。なかでも、ポリエチレンオキサイド骨格、ポリプロピレンオキサイド骨格が好ましい。ポリアルキレンオキサイド骨格がポリエチレンオキサイド骨格又はポリプロピレンオキサイド骨格であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層された積層状態のプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0104】
単官能(メタ)アクリレート(D)は、その主鎖骨格にポリアルキレンオキサイド骨格を含み且つ主鎖の一方の末端のみに(メタ)アクリロキシ基を有していることが好ましい。単官能(メタ)アクリレート(D)は、その主鎖骨格にポリアルキレンオキサイド骨格を含み且つ主鎖の一方の末端に(メタ)アクリロキシ基を有し、主鎖の他方の末端に水酸基(-OH)を有していることが好ましい。
【0105】
単官能(メタ)アクリレート(D)は、その主鎖骨格にポリアルキレンオキサイド骨格を含むことによって、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層された積層状態のプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0106】
単官能(メタ)アクリレート(D)としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールモノアクリレート、エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの主鎖の末端にアルコキシ基を持つポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられ、ポリアルキレングリコールモノアクリレートが好ましく、ポリエチレングリコールモノアクリレートがより好ましい。
【0107】
単官能(メタ)アクリレート(D)のホモポリマーのガラス転移温度Tgは、-80℃以上が好ましく、-75℃以上がより好ましく、-70℃以上がより好ましい。単官能(メタ)アクリレート(D)のガラス転移温度Tgは、0℃以下が好ましく、-10℃以下がより好ましく、-20℃以下がより好ましい。単官能(メタ)アクリレート(D)のガラス転移温度Tgが-80℃以上であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材の不測の剥離を防止してプレート状部材の切削などの加工を円滑に行うことができる。更に、剥離工程において、仮固定用接着剤組成物の硬化物による剥離用処理水の汚染を低減化し、剥離されたプレート状部材の汚染を抑制することができる。単官能(メタ)アクリレート(D)のガラス転移温度Tgが0℃以下であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層された積層状態のプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0108】
仮固定用接着剤組成物中における単官能(メタ)アクリレート(D)の含有量は、モノマーの総量100質量部に対して1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がより好ましく、3.5質量部以上がより好ましい。仮固定用接着剤組成物中における単官能(メタ)アクリレート(D)の含有量は、モノマーの総量100質量部に対して60質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、40質量部以下がより好ましい。仮固定用接着剤組成物中における単官能(メタ)アクリレート(D)の含有量が1質量部以上であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層されたプレート状部材同士の剥離を容易に行うことができると共に、剥離したプレート状部材の表面に糊残りが生じるのを低減化することができる。仮固定用接着剤組成物中における単官能(メタ)アクリレート(D)の含有量が60質量部以下であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材の不測の剥離を防止してプレート状部材の切削などの加工を円滑に行うことができる。
【0109】
[光ラジカル重合開始剤]
仮固定用接着剤組成物は、光ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。光ラジカル重合開始剤は、放射線の照射によってラジカルを発生し、仮固定用接着剤組成物に含まれているモノマーをラジカル重合させる。
【0110】
光ラジカル重合開始剤としては、仮固定用接着剤組成物中に含まれるモノマーをラジカル重合させることができれば、特に限定されない。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、チオキサントン系光ラジカル重合開始剤、トリアジン系光ラジカル重合開始剤が好ましく、仮固定用接着剤組成物を一液型とすることができ仮固定用接着剤組成物の作業性に優れ且つ仮固定用接着剤組成物の光硬化性に優れているので、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤がより好ましい。
【0111】
アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0112】
アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オンなどが挙げられる。
【0113】
チオキサントン系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,4-ジエチルチオキサントンなどが挙げられる。
【0114】
トリアジン系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2-[2-(フラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[(4-メトキシフェニル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[(3,4-ジメトキシフェニル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0115】
仮固定用接着剤組成物において、光ラジカル重合開始剤の含有量は、仮固定用接着剤組成物に含まれるモノマー全量100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。仮固定用接着剤組成物において、光ラジカル重合開始剤の含有量は、仮固定用接着剤組成物に含まれるモノマー全量100質量部に対して5.0質量部以下が好ましく、3.0質量部以下がより好ましく、2.0質量部以下がより好ましい。光ラジカル重合開始剤の含有量が0.1質量部以上であると、仮固定用接着剤組成物が光硬化性に優れているので好ましい。光ラジカル重合開始剤の含有量が5.0質量部以下であると、仮固定用接着剤組成物は光硬化性に優れている。
【0116】
[添加剤]
仮固定用接着剤組成物は、その物性を阻害しない範囲内において、チクソトロピック剤、ウレタンアクリレート、アクリル系ポリマー、接着性付与樹脂、可塑剤、非熱膨張性微粒子、染料、顔料、難燃剤、シランカップリング剤、界面活性剤などを含有してもよい。
【0117】
[仮固定用接着剤組成物]
仮固定用接着剤組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリルアミド(A)と、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)と、分子量が1000以下の水溶性可塑剤(C)と、必要に応じて含有される単官能(メタ)アクリレート(D)及びその他の添加剤を汎用の要領で好ましくは減圧下において均一に混合することによって製造することができる。
【0118】
仮固定用接着剤組成物のガラス転移温度Tgは、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上がより好ましい。仮固定用接着剤組成物のガラス転移温度Tgは、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下がより好ましい。仮固定用接着剤組成物のガラス転移温度Tgが20℃以上であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介したプレート状部材同士の接着性を向上させ、積層状態のプレート状部材の加工時におけるプレート状部材の不測の剥離を防止してプレート状部材の切削などの加工を円滑に行うことができる。更に、剥離工程において、仮固定用接着剤組成物の硬化物のタックを低減し、プレート状部材同士の剥離を短時間のうちに行うことができると共に、プレート状部材に糊残りが生じることを抑制することができる。仮固定用接着剤組成物のガラス転移温度Tgが80℃以下であると、仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層された積層状態のプレート状部材同士の剥離性を向上させることができる。
【0119】
仮固定用接着剤組成物のガラス転移温度Tgは、示差走査熱量(DSC)測定において、昇温速度10℃/分、及び、測定温度領域0~200℃の測定条件下にて測定された低温側のベースラインを高温側に延長した直線および高温側のベースラインを低温側に延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度とする。約10mgの仮固定用接着剤組成物を用い、例えば、下記の条件下にて、仮固定用接着剤組成物のガラス転移温度を測定する。
測定機器:示差走査熱量計 DSC200(日立ハイテクサイエンス社製)
昇温速度:10℃/分
測定温度領域:0~200℃
【0120】
[プレート状部材の加工方法]
仮固定用接着剤組成物は、プレート状部材の加工時にプレート状部材同士を積層状態に重ね合わせて仮固定するために用いられる。プレート状部材としては、特に限定されず、例えば、薄層ガラス、ガラス、水晶、石英、プリズム、光学レンズ、シリコンウエハ及び半導体実装部品などが挙げられる。
【0121】
仮固定用接着剤組成物は、大判のプレート状部材に特に好適に適用することができる。仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して大判のプレート状部材を積層状に重ね合わせている場合、積層状態のプレート状部材同士の剥離時、通常、プレート状部材の中央部におけるプレート状部材同士の接着状態の解除が難しいが、上記仮固定用接着剤組成物によれば、低温の剥離用処理水に、積層状のプレート状部材を浸漬させるだけで、プレート状部材の中央部同士を接着している仮固定用接着剤組成物の硬化物にも剥離用処理水を円滑に浸透させて接着強度を低下させ、プレート状部材同士を円滑に剥離することができる。なお、大判のプレート状部材とは、平面から見た面積(最大となる方向から見た面積)が1000mm2以上の面積を有するプレート状部材をいう。
【0122】
仮固定用接着剤組成物を用いた加工方法の一例を説明する。なお、ガラス及びシリコンウエア以外のプレート状部材にも適用できることはいうまでもない。
【0123】
先ず、ガラスとシリコンウエハとをガラス及びシリコンウエハの対向面間に仮固定用接着剤組成物を介在させた状態に積層させて積層体を製造する(積層工程)。なお、複数枚のガラスをガラスの対向面間に仮固定用接着剤組成物を介在させた状態に積層させて積層体を製造してもよい。
【0124】
仮固定用接着剤組成物は一液型であるため、積層体を作製するにあたって二液を混合するといった煩雑な作業を必要とせず、積層体を容易に製造することができる。
【0125】
次に、得られた積層体全体に、この積層体の積層方向から、放射線を照射し、積層体のガラスとシリコンウエハとの間に介在させた仮固定用接着剤組成物を硬化させて硬化物を生成する(硬化工程)。この硬化物によってガラスとシリコンウエハとを仮固定し、ガラスとシリコンウエハとが仮固定用接着剤組成物の硬化物によって剥離可能に積層一体化されてなる硬化体を製造する。
【0126】
放射線のピーク波長は、仮固定用接着剤組成物の硬化性に優れているので、500nm以下であることが好ましい。放射線を積層体の積層方向(厚み方向)に照射するが、放射線は、波長が320nm以上の光が好ましい。波長が320nm以上の放射線を用いることによって、ガラスに放射線が吸収されるのを概ね防止することができると共に、複数層の白濁状の仮固定用接着剤組成物であっても十分に放射線を透過させることができる。そして、仮固定用接着剤組成物中に必要に応じて含まれる光ラジカル重合開始剤が放射線を効果的に吸収して、仮固定用接着剤組成物中に含まれるモノマーのラジカル重合を円滑に進行させることができる。
【0127】
更に、積層体に対する放射線の照射は、仮固定用接着剤組成物が複数層存在しても、仮固定用接着剤組成物の各層ごとに行う必要はなく、積層体を作製した後、この積層体の積層方向に積層体の厚み全体に放射線を照射することによって、積層体を構成している仮固定用接着剤組成物の全てに放射線を照射して短時間のうちに確実に硬化させ、ガラスとシリコンウエハとを仮固定して一体化させて硬化体を製造することができる。
【0128】
積層体は、ガラスとシリコンウエハとが仮固定用接着剤組成物の硬化物によって剥離可能に積層一体化され、全体として機械的強度に優れており、ガラス及びシリコンウエハの研磨、切削、エッチングなどの加工をガラス及びシリコンウエハの破損なく容易に行うことができる(加工工程)。
【0129】
仮固定用接着剤組成物は、(メタ)アクリルアミド(A)、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)及び分子量が1000以下の水溶性可塑剤(C)を含有するので、仮固定用接着剤組成物の硬化物は、ガラス及びシリコンウエハに対する密着性及び接着性に優れており、更に、仮固定用接着剤組成物の硬化物は、優れた柔軟性を有し、ガラス及びシリコンウエハの表面凹凸に円滑に追従してガラス及びシリコンウエハに対して優れた接着性を発現する。従って、加工工程において、積層状態のガラス及びシリコンウエハにずれが生じることはなく、積層状態のガラス及びシリコンウエハに破損を生じさせることなく所定の加工を精度良く施すことができる。
【0130】
しかる後、硬化体を剥離用処理水に浸漬する。剥離用処理水は、これに添加剤を添加する必要はなく、通常の水が用いられ、水道水などであってもよい。仮固定用接着剤組成物の硬化物は、剥離用処理水の優れた吸収性を有しているので、剥離用処理水の温度は低温であってもよく、具体的には、50℃以下が好ましい。剥離用処理水の温度は、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上がより好ましい。
【0131】
硬化体における仮固定用接着剤組成物の硬化物は、(メタ)アクリルアミド(A)、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)及び水溶性可塑剤(C)の作用によって、内部まで剥離用処理水を十分に吸収して膨潤し、ガラス及びシリコンウエハに対する接着強度を円滑に低下させることができる。従って、硬化体を剥離用処理水に浸漬することによって、ガラスとシリコンウエハとを円滑に分離し剥離することができる(剥離工程)。
【0132】
仮固定用接着剤組成物の硬化物は、上述のように剥離用処理水の吸収性に優れているので、ガラス及びシリコンウエハが大判であっても、ガラス及びシリコンウエハの平面視中央部を接着している硬化物部分まで剥離用処理水を十分に且つ速やかに吸収させ、仮固定用接着剤組成物の硬化物を膨潤させて接着強度を低下させることができる。
【0133】
仮固定用接着剤組成物の硬化物は、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)によって架橋されており、ガラス及びシリコンウエハからの離脱時においてもシート状を維持し、剥離用処理水に溶解せず、剥離用処理水を汚染することはないので、ガラス及びシリコンウエハを汚染させることなく剥離用処理水から取り出すことができる。そして、シート状の硬化物は、ガラス及びシリコンウエハから糊残りなく離脱するので、ガラス及びシリコンウエハの汚染を防止し、加工後のガラス及びシリコンウエハの洗浄を省略して作業の効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0134】
本発明の仮固定用接着剤組成物は、プレート状部材同士を剥離可能に強固に接着一体化させることができ、プレート状部材の加工を円滑に行うことができる。
【0135】
仮固定用接着剤組成物の硬化物は、プレート状部材同士の剥離工程において、低温の水であっても円滑に水を吸収して膨潤し、プレート状部材に対する接着強度を速やかに低下させ、プレート状部材同士の剥離作業を容易に行うことができる。
【0136】
仮固定用接着剤組成物の硬化物は、プレート状部材同士の剥離工程において、シート状を維持したまま、プレート状部材から離脱するので、プレート状部材の表面に糊残りを略防止することができると共に、水に溶解することも概ね抑制されており、水の汚染を略防止することができる。従って、互いに剥離されたプレート状部材が汚染されることを概ね防止されており、プレート状部材に改めて洗浄工程を施す必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0137】
図1】接着強度の測定要領を示した断面図である。
図2】接着強度の測定要領を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0138】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、「課題を解決するための手段」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」として定義されている数値)に代替することができる。
【実施例0139】
実施例及び比較例において、下記の化合物を用いた。
【0140】
[(メタ)アクリルアミド(A)]
・N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA、式(1)で示されるアクリルアミド、ガラス転移温度Tg:119℃)
・N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(式(2)で示されるアクリルアミド、ガラス転移温度Tg:134℃)
【0141】
[多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)]
・多官能ウレタンアクリレート(主鎖骨格:ポリアルキレンオキサイド骨格を含む、主鎖両末端にアクリロキシ基を有している、分子中のアクリロキシ基の数:2個、重量平均分子量:2800、ダイセル・オルネクス社製 商品名「EBECRYL2000」)
【0142】
[分子量が1000以下の水溶性可塑剤(C)]
・ジエチレングリコール
・ポリエチレングリコール1(東邦化学工業社製 商品名「PEG#400」、重量平均分子量:400、25℃の水に対する溶解性:256g/L)
・ポリエチレングリコール2(東邦化学工業社製 商品名「PEG#600」、重量平均分子量:600、25℃の水に対する溶解性:256g/L)
・カルボキシ基を有するアクリル系ポリマー(東亜合成社製 商品名「ARUFON UC-3510」、重量平均分子量:2000、25℃の水に対する溶解性:33g/L未満)
【0143】
[単官能(メタ)アクリレート(D)]
・ポリエチレングリコールモノアクリレート(主鎖はポリアルキレンオキサイド骨格(繰り返し単位の数qは約9)を含む、主鎖の一方の末端のみにアクリロキシ基を有する、主鎖の他方のみに水酸基(-OH)を有する、ガラス転移温度Tg:-64℃、日油社製 商品名「ブレンマーAE-400」)
【0144】
[光ラジカル重合開始剤]
・光ラジカル重合開始剤[2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、IGM Resins B.V.社製 商品名「Omnirad TPO H」]
【0145】
(実施例1~9、比較例1~3)
表1に示す所定量の(メタ)アクリルアミド(A)、多官能ウレタンアクリレート(B)、分子量が1000以下の水溶性可塑剤(C)及び単官能(メタ)アクリレート(D)をそれぞれ、ポリプロピレン製の反応容器内に供給して混合、溶解させて混合液を作製した。
【0146】
次に、混合液中に、表1に示した所定量の光ラジカル重合開始剤を供給し、光ラジカル重合開始剤が混合液中に完全に溶解するまで混合して仮固定用接着剤組成物を得た。
【0147】
得られた仮固定用接着剤組成物について、ガラス転移温度Tgを測定し、その結果を表1に示した。
【0148】
得られた仮固定用接着剤組成物について、対ガラス接着力、50℃温水剥離試験及び剥離時形態を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0149】
[対ガラス接着力]
縦50mm×横25mm×厚み5mmの直方体形状の板ガラス1、2を2枚用意した。2枚の板ガラスの表面全面をエタノールによって洗浄し乾燥した。
【0150】
図1及び図2に示したように、一方の板ガラス1を水平な載置面3上に載置し、この板ガラス1の長辺側の端縁部上に、他方の板ガラス2の長辺側の端縁部を重ね合わせた。2枚の板ガラス1、2の端縁部同士の重なり幅は12.5mmであった。2枚の板ガラス1、2の長辺側の端縁部間には仮固定用接着剤組成物5が介在しており、仮固定用接着剤組成物5は、2枚の板ガラス1、2における長辺側の端縁部の対向面間における横方向の全長に充填されていた。仮固定用接着剤組成物5は、長さ25mm×幅12.5mm×厚み0.1mmであった。上側に重ね合わせた板ガラスと載置面間の隙間に支持用板ガラス4を配設し、上側の板ガラス2を支持用板ガラス4で支持した。
【0151】
2枚の板ガラス1、2の重ね合わせ部分に介在させた仮固定用接着剤組成物5に、紫外線ランプ(東芝ライテック社製 商品名「FL20S・BL」)を用いて、ピーク波長が360nmである紫外線を照度2mW/cm2にて10分間に亘って照射して仮固定用接着剤組成物5を硬化させて硬化体を作製した。紫外線ランプは、2枚の板ガラスの重ね合わせ部の垂直上方で且つ載置面から高さ80mmの位置に配設した。
【0152】
得られた硬化体について、卓上形精密万能試験機(島津製作所製 商品名「オートグラフAGS-100NX」)を用いて3点曲げ試験により10mm/minの押込速度にて2枚の板ガラスの重ね合わせ部を押し込み、得られた最大強度を測定強度(N)とし、下記式に基づいて剥離強度を算出した。
【0153】
剥離強度(N/mm2)=測定強度(N)/(25×12.5)(mm2
【0154】
[50℃温水剥離試験]
縦75mm×横25mm×厚み0.5mmの第1ガラスを用意した。第1ガラスの中央部に仮固定用接着剤組成物を載置した。この仮固定用接着剤組成物上に縦75mm×横25mm×厚み0.1mmの第2ガラスを載置し、第1ガラスと第2ガラスの対向面間に仮固定用接着剤組成物が完全に充填された状態として積層体を製造した。仮固定用接着剤組成物の厚みは150μmであった。
【0155】
積層体に紫外線ランプ(東芝ライテック社製 商品名「FL20S・BL」)を用いて、ピーク波長が360nmである紫外線を照度2mW/cm2にて10分間に亘って照射して仮固定用接着剤組成物を硬化させ、第1ガラス及び第2ガラスが仮固定用接着剤組成物の硬化物を介して積層一体化してなる硬化体を作製した。紫外線ランプは、積層体の垂直上方で且つ下側保護用ガラス板を載置した載置面から高さ80mmの位置に配設した。
【0156】
得られた硬化体を50℃に保持した温水に浸漬した。硬化体を温水に浸漬した直後から、第1ガラスと第2ガラスが完全に剥離されるまでの剥離時間(h)を測定した。
【0157】
比較例1及び3は、硬化体を温水に浸漬してから24時間経過後においても第1ガラスと第2ガラスが完全に剥離されなかった。
【0158】
[剥離時形態]
50℃温水剥離試験と同様の要領で剥離試験を行い、第1ガラスと第2ガラスとが完全に剥離された時点における仮固定用接着剤組成物の硬化物の形態を目視観察し、下記の基準に基づいて評価した。なお、仮固定用接着剤組成物の硬化物が「シート状」とは、第1ガラス及び第2ガラスの対向面間に介在していた平面形態(縦75mm×横25mmの長方形状)を維持していることをいう。なお、比較例1及び3は、第1ガラスと第2ガラスが完全に剥離されなかったので、測定できなかった。
A・・・仮固定用接着剤組成物の硬化物がシート状であった。
B・・・仮固定用接着剤組成物の硬化物がシート状ではなかった。
【0159】
【表1】
【符号の説明】
【0160】
1 板ガラス
2 板ガラス
3 載置面
4 支持用板ガラス
5 仮固定用接着剤組成物
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
(メタ)アクリルアミド(A)は、N,N-ジメチルアクリルアミドを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の仮固定用接着剤組成物。