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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055239
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】液体塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 3/02 20060101AFI20240411BHJP
   B05B 15/00 20180101ALI20240411BHJP
   B05B 15/25 20180101ALI20240411BHJP
   B05B 14/00 20180101ALI20240411BHJP
   B05B 14/30 20180101ALI20240411BHJP
【FI】
B05B3/02 G
B05B15/00
B05B15/25
B05B14/00
B05B3/02 Z
B05B14/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162003
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】390033798
【氏名又は名称】御崎コンベヤー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081466
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 研一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 功一
【テーマコード(参考)】
4D073
4F033
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB03
4D073CA06
4D073CA16
4D073DB03
4D073DB40
4D073DC07
4D073DC09
4D073DC17
4D073DC22
4D073DD32
4F033PA11
4F033PA18
4F033PB02
4F033PB16
4F033PB18
4F033PD01
4F033PD03
(57)【要約】
【課題】被塗布体においてパン生地等が載置される液体塗布領域にのみ、液体を塗布してその消費量を低減する液体塗布装置を提供する。パン焼成後においては、被塗布体を、パン生地等が載置される液体塗布領域に塗布された液体のみを除去するように洗浄すればよく、洗浄作業の手間と時間を軽減して効率化する液体塗布装置を提供する。
【解決手段】被塗布体上において搬送方向及び搬送直交方向に所定の間隔を設けて複数の液体塗布領域を設定し、上記液体塗布領域幅及び数に対応して作動される開閉弁により開口部を閉鎖し、液体槽から対応する隔壁板間の液体溜りに液体を供給して回転する塗布回転板に付着させて飛散可能にする。被塗布体の搬送に伴って搬送方向に対する液体塗布領域幅に応じて開閉部材を開動作して液体が付着した塗布回転板の回転に伴って吐出開口部を介して液体を飛散させて搬送方向及び搬送直交方向に所定の間隔を設けて複数の液体塗布領域に液体を塗布する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケース内に設けられ、駆動部材により回転される液体保持回転体に付着した液体を、回転による遠心力により付着した液体を本体ケースに設けられた吐出開口部を介して搬送される被塗布体上に飛散して塗布する液体塗布装置において、
液体保持回転体は、搬送直交方向に軸線を有した回転軸に多数の塗布回転板を軸線方向へ所定の間隔をおいて設け、
液体保持回転体の下方に配置され、搬送方向へ延出する多数の隔壁板を搬送直交方向へ並行配置し、上記塗布回転板に対応して区画された多数の液体溜りが設けられた液体トラフと、
吐出開口部を選択的に開閉する開閉部材と、
上記開閉部材を開閉作動する開閉作動部材と、
上記開閉部材と反対側に位置する各隔壁板間に設けられた開口を、両側に位置する隔壁板に摺接しながら開閉する多数の開閉弁と、
各開閉弁を選択的に開閉作動させる開閉弁作動部材と、
上記液体トラフの上記開閉部材と反対側に設けられ、被塗布体に塗布される液体が溜められる液体槽と、
を備え、
被塗布体上において搬送方向及び搬送直交方向に所定の間隔を設けて複数の液体塗布領域を設定し、
上記液体塗布領域幅及び数に対応して作動される開閉弁により開口部を閉鎖し、液体槽から対応する隔壁板間の液体溜りに液体を供給して回転する塗布回転板に付着させて飛散可能にした状態で、
被塗布体の搬送に伴って搬送方向に対する液体塗布領域幅に応じて開閉部材を開動作して液体が付着した塗布回転板の回転に伴って吐出開口部を介して液体を飛散させて搬送方向及び搬送直交方向に所定の間隔を設けて複数の液体塗布領域に液体を塗布することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項2】
請求項1において、
塗布回転板は、搬送直交方向が円盤形状、多角形状、歯車形状のいずれかからなる液体塗布装置。
【請求項3】
請求項1において、
液体保持回転体は、請求項2に記載された異なる形状の塗布回転板を組み合わせた液体塗布装置。
【請求項4】
請求項1において、
各開閉弁は、両側に位置する隔壁板に摺接可能な円柱形状及び角柱形状のいずれかで、開閉部材側の一部に外部と連通するドレン溝が形成された液体塗布装置。
【請求項5】
請求項4において、
各開閉弁が開口部の開位置へ移動された際に、液体槽から対応する隔壁板間の液体溜りに対する液体の流入を規制すると共にドレン溝を外部と連通させる、
開閉弁が開口の閉位置へ移動された際に、ドレン溝を外部と連通不能にさせると共に対応する隔壁板間の液体溜りに対する液体の流入を可能にする、
ことを特徴とする液体塗布装置。
【請求項6】
請求項1において、
各開閉弁には、開閉方向へ移動可能に支持され、かつ弾性部材により開方向へ付勢された弁ロッドが取付けられ、開閉弁作動部材により搬送直交方向に対する液体塗布領域幅及び数に対応して弁ロッドを介して対応する開閉弁を閉方向へ移動させる液体塗布装置。
【請求項7】
請求項6において、
開閉弁作動部材は、各弁ロッドの上方にて回動可能で、かつ昇降可能に設けられる押圧回転体と、
該押圧回転体の外周にて適宜角度をおいて設けられ、搬送直交方向に対する液体塗布領域幅及び数に対応して搬送直交方向に延びる複数セットの押圧体と、
を備え、
押圧回転体を回動して搬送直交方向に亘って塗布される液体塗布領域に対応する押圧体を選択した後に、該押圧回転体の下降により押圧される弁ロッドを介して開閉弁を閉位置へ移動することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項8】
請求項7において、
押圧体は、搬送直交方向に対するそれぞれの液体塗布領域幅及び数の搬送直交方向長さからなるバー材からなる液体塗布装置。
【請求項9】
請求項7において、
押圧体は、搬送直交方向に対するそれぞれの液体塗布領域幅及び数で、かつ各弁ロッドに対応する複数の押圧ロッドからなる液体塗布装置。
【請求項10】
請求項6において、
開閉弁作動部材は、各弁ロッドに対応して配置される多数の直線作動部材からなり、
搬送直交方向に対する液体塗布領域幅及び数に対応する直線作動部材の作動により押圧される弁ロッドを介して開閉弁を閉位置へ移動することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項11】
請求項6において、
開閉弁作動部材は、各弁ロッドの上方にて回動可能に軸支された回動軸と、
該回動軸に対し、各弁ロッドに摺接可能に設けられる多数のカム体と、
上記回動軸を回動する回動部材と、
を備え、
各カム体には、搬送直交方向に設定される各液体塗布領域に対応する少なくとも2以上のカム面が形成され、
各液体塗布領域に対応する弁ロッドに摺接するカム面により弁ロッドを移動させることにより開閉弁を閉位置へ移動することを特徴とする液体塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種のパンや食材(以下においては、食パンや菓子パン等のパン類、菓子やケーキ等の菓子類、パテ等の食材を総称してパンと称する。)の被焼成物を焼成する際に使用する天板等の被塗布体の表面に油脂等の液体を塗布する液体塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、特許文献1においてパン焼成用の天板表面に油脂等の液体を塗布する液体塗布装置を提案した。該液体塗布装置は、ケース内に設けられ、駆動手段により回転駆動される液体保持回転体と、液体保持回転体の外周側に応じた箇所のケースに設けられ、液体保持回転体の回転に伴う遠心力により供給された液体をケース外へ放出可能にする開口部と、上記開口部を開閉する開閉弁と、開閉弁を開閉作動する作動部材と、開口部周縁のケースに設けられ、開口部周縁に付着した液体を回収する回収手段とから構成され、回転する液体保持回転体に付着した液体を、遠心力により開放された開口部を介して該開口部の下方にて搬送される天板の表面に塗布している。
【0003】
しかし、上記液体塗布装置は、例えば天板の搬送方向を列方向、搬送直交方向を行方向とすると、開閉弁を開閉作動することにより列方向に対しては適宜の間隔をおいて液体を間欠的に塗布することができるが、行方向に対しては適宜の間隔をおいた間欠状態で塗布することができなかった。
【0004】
例えば菓子パン用のパン焼成用の天板にあっては、行方向及び列方向に対して適宜の間隔をおいて被焼成物としてのパン生地等をマトリクス状に載置して焼成しているが、パン焼成前においては天板の表面に油脂を塗布する必要がある。上記液体塗布装置により天板の表面に油脂を塗布する場合、パン生地等の載置箇所以外の領域を含む少なくとも行方向全体に油脂を塗布することになる。このため、パン生地等が載置されない領域にも油脂が塗布されることにより油脂の消費量が多くなる問題を有している。
【0005】
また、上記液体塗布装置にあっては、上記したように少なくとも行方向全体に液体が塗布されるため、パン焼成後の天板洗浄時においては、パン生地等が載置されていない領域に塗布された油脂をも洗浄して除去しなければならず、洗剤の消費量が多くなると共に洗浄作業に手間と時間がかかる問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4947765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、被塗布体においてパン生地等の被焼成物が載置される液体塗布領域以外の領域にも油脂等の液体が塗布されるため、液体の消費量が多くなる点にある。
【0008】
また、被塗布体における少なくとも行方向全体に液体が塗布されるため、パン焼成後の被塗布体洗浄時においては、パン生地等が載置されていない領域に塗布された液体をも洗浄して除去しなければならず、洗剤の消費量が多くなると共に洗浄作業に手間と時間がかかる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、本体ケース内に設けられ、駆動部材により回転される液体保持回転体に付着した液体を、回転による遠心力により付着した液体を本体ケースに設けられた吐出開口部を介して搬送される被塗布体上に飛散して塗布する液体塗布装置において、液体保持回転体は、搬送直交方向に軸線を有した回転軸に多数の塗布回転板を軸線方向へ所定の間隔をおいて設け、液体保持回転体の下方に配置され、搬送方向へ延出する多数の隔壁板を搬送直交方向へ並行配置し、上記塗布回転板に対応して区画された多数の液体溜りが設けられた液体トラフと、吐出開口部を選択的に開閉する開閉部材と、上記開閉部材を開閉作動する開閉作動部材と、上記開閉部材と反対側に位置する各隔壁板間に設けられた開口を、両側に位置する隔壁板に摺接しながら開閉する多数の開閉弁と、各開閉弁を選択的に開閉作動させる開閉弁作動部材と、上記液体トラフの上記開閉部材と反対側に設けられ、被塗布体に塗布される液体が溜められる液体槽と、を備え、被塗布体上において搬送方向及び搬送直交方向に所定の間隔を設けて複数の液体塗布領域を設定し、上記液体塗布領域幅及び数に対応して作動される開閉弁により開口部を閉鎖し、液体槽から対応する隔壁板間の液体溜りに液体を供給して回転する塗布回転板に付着させて飛散可能にした状態で、被塗布体の搬送に伴って搬送方向に対する液体塗布領域幅に応じて開閉部材を開動作して液体が付着した塗布回転板の回転に伴って吐出開口部を介して液体を飛散させて搬送方向及び搬送直交方向に所定の間隔を設けて複数の液体塗布領域に液体を塗布することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、被塗布体において被焼成物が載置される液体塗布領域にのみ、液体を塗布してその消費量を低減することができる液体塗布装置を提供する。
【0011】
パン焼成後における被塗布体の洗浄作業においては、被焼成物が載置される液体塗布領域に塗布された液体のみを除去するように洗浄すればよく、洗剤の消費量を低減することができると共に洗浄作業の手間と時間を軽減して洗浄効率化することができる液体塗布装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】液体塗布装置としての油脂塗布装置の概略を示す一部破断側面図である。
図2】弁作動部材及び油脂飛散防止板を省略した油脂トラフを上方から視た略体平面図である。
図3】油脂保持回転体の概略を示す斜視図である。
図4】シャッタ周りの概略を示す略体斜視図である。
図5】弁作動部材の概略を示す略体斜視図である。
図6図2におけるA-A線縦断面図である。
図7図2におけるB-B線縦断面図である。
図8】天板に想定される油脂塗布領域の説明図である。
図9】弁作動部材による弁ロッドの選択的押圧状態を示す説明図である。
図10】天板における行方向の油脂塗布領域に油脂を塗布する際における開閉弁の閉鎖状態及び油脂溜まりに対する油脂の流入状態を示す説明図である。
図11】油脂溜り内の油脂排出状態を示す説明図である。
図12】天板に対する油脂の塗布状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
被塗布体上において搬送方向及び搬送直交方向に所定の間隔を設けて複数の液体塗布領域を設定し、上記液体塗布領域幅及び数に対応して作動される開閉弁により開口部を閉鎖し、液体槽から対応する隔壁板間の液体溜りに液体を供給して回転する塗布回転板に付着させて飛散可能にした状態で、被塗布体の搬送に伴って搬送方向に対する液体塗布領域幅に応じて開閉部材を開動作して液体が付着した塗布回転板の回転に伴って吐出開口部を介して液体を飛散させて搬送方向及び搬送直交方向に所定の間隔を設けて複数の液体塗布領域に液体を塗布することを最良の形態とする。
【実施例0014】
以下、本発明に係る液体塗布装置を、被塗布体としての天板上に油脂を塗布する天板油脂塗布装置として実施した実施例を示す図に従って説明する。
図1乃至図7に示すように、液体塗布装置としての天板油脂塗布装置1の本体ケース3の下方には、図示矢視方向へ搬送駆動される天板搬送装置5が配置され、該天板搬送装置5は、搬送方向上手側にて順次、載置されたパン焼成用の被塗布体としての天板7を一定の搬送速度で搬送させる。
【0015】
上記本体ケース3内の上部には、搬送直交方向に軸線を有した回転軸9が軸支され、該回転軸9には、側面視が円盤形状、多角形状(三角形状、四角形状、五角形状等)や、外周に多数の突部を有した歯車形状等の多数の塗布回転板11aが軸線方向に対して後述する隔壁板35相互の間隔をおいて配列され、これら回転軸9及び塗布回転板11aにより液体保持回転体としての油脂保持回転体11を構成している。
【0016】
また、上記油脂保持回転体11は、本体ケース3外に設けられた電動モータ13が、必要に応じて減速機構(図示せず)を介して連結され、電動モータ13の駆動に伴って図示時計方向へ回転される。
【0017】
上記油脂保持回転体11の下方に応じた上記本体ケース3内には、搬送直交方向が少なくとも天板7に対応する幅、搬送方向が適宜の幅で、かつ適宜深さの液体トラフとしての油脂トラフ15が配置される。該油脂トラフ15の搬送方向上手側には、上記油脂保持回転体11の回転軌跡に沿って上方に傾斜する傾斜部15aが設けられ、該傾斜部15aの搬送方向上手側端部と本体ケース3に設けられた傾斜板17の搬送方向下手側端部との間には、飛散する油脂の吐出開口部19が形成される。
【0018】
なお、油脂トラフ15は、その搬送方向上手側が搬送方向下手側より若干高くなるように傾斜配置され、後述する隔壁板35間の油脂溜り35a内の油脂が搬送方向下手側へ流動するように構成される。
【0019】
該吐出開口部19に応じた本体ケース3には、エアーシリンダ、電磁ソレノイド等の開閉作動部材23に連結された開閉軸25が軸支され、該開閉軸25には、上記吐出開口部19の開口幅に応じたシリコンゴム製、フッ化樹脂やポリアセタール樹脂等の合成樹脂製で側面が長楕円形状、板形状等の開閉部材としてのシャッタ27が設けられる。該シャッタ27は、上記開閉作動部材23の作動に伴って吐出開口部19を開閉させる。
【0020】
上記油脂保持回転体11の上部外周側に応じた本体ケース3には、側面が半円弧状の油脂飛散防止板29が配置される。また、上記吐出開口部19下方の搬送方向上手側及び下手側に応じた本体ケース3には、搬送直交方向へ延びる油脂回収トラフ31が取付けられ、吐出開口部19から放出される余分な油脂を受けて回収可能にしている。
【0021】
上記油脂トラフ15内には、搬送方向へ延びる多数の隔壁板35が、搬送直交方向に対して塗布回転板11aの相互間隔をおいて設けられ、これら隔壁板間には、油脂溜り35aが分割構成される。各隔壁板35間の油脂溜まり35a内には、対応する塗布回転板11aの外周側の一部が没入して油脂が付着される。また、搬送方向下手側端部に位置する各隔壁板35の相互間は、開放されている。
【0022】
上記油脂トラフ15の搬送方向下手側には、油脂トラフ15内に油脂を供給する液体槽としての油脂槽37が配置される。該油脂槽37は、後述する選択された開閉弁39が下降した際に該開閉弁39を乗り越えて隔壁板35間の油脂溜り35a内に油脂を供給する。
【0023】
搬送方向下手側端部側の各隔壁板35相互間に応じた油脂トラフ15の底面には、開口15bがそれぞれ設けられ、各開口15bには、開閉弁39が両側に位置する隔壁板35にそれぞれ当接して気密状態(本発明において気密状態とは、隔壁板35に対する当接により油脂槽37内の油脂が隔壁板35間の油脂溜り35aへ流入するのを規制可能にする状態をいう。)で、上下方向へ摺動可能に設けられる。該開閉弁39は、例えば円柱形状又は四角柱形状で、その搬送方向上手側面にはドレン溝39aが上下方向中間部より下方に向かって延びて外部と連通可能に形成される。
【0024】
また、各開閉弁39の上端部には、本体ケース3に設けられた支持板41に対して上下方向へ移動可能に支持された弁ロッド43がそれぞれ設けられ、各弁ロッド43は、支持板41と弁ロッド43の軸上部の間に設けられた圧縮ばねやゴムタンパー等の弾性部材45により軸線上方へ付勢される。
【0025】
各開閉弁39は、弁ロッド43が軸線上方へ移動した状態においては、対応するドレン溝39aの上部が隔壁板35間における油脂トラフ15の底面より上方に位置し、開口部15bの一部を外部と連通させて油脂溜り35a内に滞留する油脂を油脂トラフ15の下方に配置された油脂パン47へ排出させる。
【0026】
反対に、各開閉弁39は、弁ロッド43が軸線下方へ移動した状態においては、対応するドレン溝39aが油脂トラフ15の底面より下方に位置して開口部15bを閉鎖し、油脂溜り35a内に滞留した油脂が油脂パン47へ排出されるのを規制すると共に各開閉弁39が下方へ移動したことにより油脂槽37内に蓄えられた油脂が開閉弁の上部を乗り越えて各隔壁板35間に流入させる。
【0027】
なお、油脂回収トラフ31及び油脂パン47に回収された油脂は、接続されたポンプ(図示せず)に駆動に伴って油脂槽37内に戻され、再利用される。また、上記油脂槽37には、フロート形式、超音波形式等の液面検知器(図示せず)が設けられ、該液面検知器は、油脂槽37に溜められた油脂の消費により液面が低くなった際に検知信号を出力し、該検知信号に基づいて油脂タンク(図示せず)から油脂を供給する一方、非検知状態に遷移した際に油脂タンク(図示せず)から油脂の供給を停止し、油脂槽37に溜められる油脂量を一定化させる。
【0028】
各弁ロッド43の上方に応じた本体ケース3には、弁作動部材49が設けられる。該弁作動部材49は、各弁ロッド43に相対して本体ケース3に設けられたシリンダや電磁ソレノイド等の昇降部材49aにより上下方向へ昇降可能で、かつ連結された数値制御可能なパルスモータ等の電動モータ49bにより回動可能に連結され、天板7における行方向に設定される各油脂塗布領域aの行方向幅に応じた数の押圧ロッド49cを1群とする複数セットの押圧ロッド群49dが外周面の軸線周りに所定角度ごとに設けられた押圧回転体49eにより構成される。
【0029】
例えば押圧回転体49eにおける0度位置の外周には、行方向に2つの油脂塗布領域aを設定する場合には、各油脂塗布領域の行方向幅に対応する数の押圧ロッド49cからなる2セットの押圧ロッド群49d、90度位置の外周には、行方向に3つの油脂塗布領域aを設定する場合には、各油脂塗布領域の行方向幅に対応する数の押圧ロッド49cからなる3セットの押圧ロッド群49d、180度位置の外周には、行方向に4つの油脂塗布領域aを設定する場合には、各油脂塗布領域の行方向幅に対応する数の押圧ロッド49cからなる4セットの押圧ロッド群49d、270度位置の外周には、行方向に5つの油脂塗布領域aを設定する場合には、各油脂塗布領域の行方向幅に対応する数の押圧ロッド49cからなる5セットの押圧ロッド群49dが軸線方向に沿ってそれぞれ設けられる。
【0030】
弁作動部材49としては、上記構成の他に、例えば各弁ロッド43の上部に対応して配置される電磁ソレノイド又はエアーシリンダ等の直線作動部材(図示せず)、各弁ロッド43の上方にて連結された電動モータにより回動可能に軸支されたカム軸に対し、各弁ロッド43に対応して設けられ、外周面に天板7における搬送直交方向に対する複数の油脂塗布領域aに対応して弁ロッド43に摺接するカム面を有す複数セットのカム板が設けられたカム部材(図示せず)、押圧回転体49eの外周に、天板7の行方向に設定される各油脂塗布領域幅に対応する長さからなる複数セットのバー材(図示せず)を適宜の角度を設けて取り付けた構造のいずれであってもよい。
【0031】
弁作動部材49は、例えば天板7に対して搬送直交方向へ適宜の間隔をおいて3か所の油脂塗布領域aが設定される場合には、電動モータ49bを駆動して押圧回転体49eを回転し、油脂塗布領域aに対応する押圧ロッド群49dを、対応する弁ロッド43の上部に相対させた後、昇降部材49aを作動して押圧回転体49eを下降することにより弁ロッド43を弾性部材45の弾性力に抗して下降させる。
【0032】
次に、上記のように構成された天板油脂塗布装置1により、例えば図8に示すように天板7上の列方向に3列、行方向に4行の油脂塗布領域aを列方向及び行方向へ所定の間隔をおいて設定し、各油脂塗布領域aに油脂を塗布する例に従って説明する。
【0033】
なお、天板7上に想定される列方向及び行方向の油脂塗布領域数は、天板7上に載置される焼成後のパンや焼成前のパン生地の大きさ等により任意に設定されるもので、上記例に限定されないことは、勿論である。
【0034】
先ず、電動モータ49bを駆動して押圧回転体49eを回転し、行方向に所定の間隔をおいて3個、配列された押圧ロッド群49dが下方を向いて対応する弁ロッド43の上部に相対するように回動させた後、該状態にて昇降部材49aを作動して押圧回転体49eを下方へ移動して各押圧ロッド群49dに当接する各弁ロッド43を弾性部材45の弾性力に抗して下方へ移動させる。(図9参照)
【0035】
なお、行方向に対する油脂塗布領域数が上記以外の場合にあっては、電動モータ49bを駆動して押圧回転体49eを回転し、油脂塗布領域数に対応する押圧ロッド群49dを対応する弁ロッド43の上部に相対させる。
【0036】
各押圧ロッド群49dにより押し下げられた開閉弁39が、その上端部が油脂トラフ15の底面より若干、上方に位置するように下降して開口部15bが閉鎖されると、油脂槽37内に蓄えられた油脂が開閉弁39の上端部を乗り越えて下降した開閉弁39に対応する各隔壁板35の油脂溜り35a内に流入される。(図10参照)
【0037】
このとき、下降した開閉弁39に対応する油脂保持回転体11における塗布回転板11aの外周側の一部が油脂溜り35a内に流入した油脂内に没入して付着させられる。
【0038】
一方、押圧ロッド群49d相互間に位置する開閉弁39は、弾性部材45の弾性力による押上げ状態が維持され、油脂槽37からの油脂の流入が阻止されると共にドレン溝39aにより開口部15bの開放状態が維持され、対応する油脂溜まり35a内の油脂を流出可能にさせる。(図11参照)
【0039】
上記状態にて電動モータ13を駆動して油脂保持回転体11を図示時計方向へ回転させると、塗布回転板11aの回転に伴って外側端部を隔壁板35間に溜められた油脂内に没入して付着させながらその遠心力により付着した油脂を油脂保持回転体11のほぼ接線方向へ飛散させる。
【0040】
なお、上記状態においては、吐出開口部19は、シャッタ27により閉鎖状態が維持されているため、飛散する油脂が外部へ放出されるのが規制される。
【0041】
そして上記状態にて天板搬送装置5上に載置されて搬送される天板7が、天板油脂塗布装置1の搬送方向上手側に設けられた天板検知器(図示せず)を通過したタイミングで天板検知信号が出力されると、該天板検知信号の出力から所定時間t0、遅延したタイミングで開閉作動部材23を油脂塗布領域aの列方向幅に対応する時間t1、作動して開回動するシャッタ27により吐出開口部19を開放し、飛散する油脂を吐出開口部19から天板7における第1行目において行方向に所定の間隔をおいた3個の油脂塗布領域aを列方向に亘って塗布させる。(図12参照)
【0042】
そして上記時間t1、経過したタイミンクで開閉作動部材23を復動して閉回動するシャッタ27により吐出開口部19を閉鎖させて天板7上の列方向に対する塗布を中断させた後、上記時間t1から油脂塗布領域aの相互間隔に対応する時間t2、経過したタイミングで開閉作動部材23を上記時間t1、作動して開回動するシャッタ27により吐出開口部19を開放し、該吐出開口部19を介して外部に放出される油脂を行方向に所定の間隔をおいて設定される第2行目の油脂塗布領域aを列方向に亘って塗布させる。
【0043】
上記動作の繰り返しにより搬送される天板7上に対し、列方向及び行方向へ所定の間隔をおいて設定される3列、4行の油脂塗布領域aに油脂を塗布した後、搬出させる。
【0044】
なお、油脂保持回転体11の回転中においては、上方に移動したままの開閉弁39に応じた隔壁板35間の油脂溜り35a内に油脂が飛散して溜る恐れがある。この場合にあっても、隔壁板35間の油脂溜り35a内に飛散した油脂は、開閉弁39のドレン溝39aを介して油脂パン47に回収されるため、上記油脂溜り35a内に溜る理を防止することができ、従って行方向に設定される油脂塗布領域aに相互間に応じ天板7上に塗布されるのを防いでいる。
【0045】
天板7における行方向の油脂塗布領域数及び幅は、下降動作される押圧ロッド群49dを構成する押圧ロッド43の数で、また列方向の油脂塗布領域数及び幅は、シャッタ27による吐出開口部19の開放時間により任意に設定することができる。
【0046】
油脂保持回転体11の回転に伴って飛散する油脂が吐出開口部19を通過する際に、一部が吐出開口部19の外側周縁に付着して垂れ落ちる恐れがある。この場合にあっても、吐出開口部19の下方に配置された油脂回収トラフ31により垂れ落ちる油脂を回収して再利用することができる。
【0047】
上記説明においてシャッタ27は、その回動に伴って吐出開口部19を開閉する構成としたが、本発明にあっては、板状のシャッタ27をスライドして吐出開口部19を開閉する構成としても実施できる。
【0048】
本実施例は、パンを焼成する際にパン生地が載置される天板7に設定される列方向及び行方向の油脂塗布領域aに対してのみ、油脂を塗布することにより油脂の消費量を低減することができる。
【0049】
また、パン焼成後において天板を洗浄する際には、油脂塗布領域aに付着した油脂を除去すればよく、洗浄作業の手間や洗剤の消費量を低減することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 液体塗布装置としての天板油脂塗布装置
3 本体ケース
5 天板搬送装置
7 被塗布体としての天板
9 回転軸
11 液体保持回転体としての油脂保持回転体
11a 塗布回転板
13 電動モータ
15 液体トラフとしての油脂トラフ
15a 傾斜部
15b 開口部
17 傾斜板
19 吐出開口部
23 開閉作動部材
25 開閉軸
27 開閉部材としてのシャッタ
29 油脂飛散防止板
31 油脂回収トラフ
35 隔壁板
35a 油脂溜り
37 液体槽としての油脂槽
39 開閉弁
39a ドレン溝
41 支持板
43 弁ロッド
45 弾性部材
47 油脂パン
49 弁作動部材
49a 昇降部材
49b 電動モータ
49c 押圧ロッド
49d 押圧ロッド群
49e 押圧回転体
a 油脂塗布領域
t0、t1、t2 時間
図1
図2
図3
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図10
図11
図12