(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005524
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ブロックマット用樹脂シート、およびブロックマット
(51)【国際特許分類】
E02B 3/12 20060101AFI20240110BHJP
E02D 17/20 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
E02B3/12
E02D17/20 103B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105734
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515162442
【氏名又は名称】旭化成アドバンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】戸出 良平
(72)【発明者】
【氏名】関下 啓誠
【テーマコード(参考)】
2D044
2D118
【Fターム(参考)】
2D044DB05
2D118AA05
2D118AA20
2D118BA03
2D118BA07
2D118BA15
2D118CA07
2D118DA01
2D118FA06
2D118GA16
(57)【要約】
【課題】複数並べて設置した際も遮水性が良好に保持されるブロックマットを製造することができるブロックマット用樹脂シートを提供する。
【解決手段】支持シートと、支持シートに接着されるブロックとを有するブロックマットに接合されるブロックマット用樹脂シート1は、遮水性を有する基材層10と、不織布からなり、基材層の一方の面に設けられた接合層20とを備え、一方向における端部に接合層の存在しない未接合領域2を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持シートと、前記支持シートに接着されるブロックとを有するブロックマットに接合される、ブロックマット用樹脂シートであって、
遮水性を有する基材層と、
不織布からなり、前記基材層の一方の面に設けられた接合層と、
を備え、
一方向における端部に前記接合層の存在しない未接合領域を有する、
ブロックマット用樹脂シート。
【請求項2】
前記不織布の目付が40g/m2以上である、
請求項1に記載のブロックマット用樹脂シート。
【請求項3】
前記一方向における前記未接合領域の寸法が、100mm以上300mm以下である、
請求項1に記載のブロックマット用樹脂シート。
【請求項4】
請求項1に記載のブロックマット用樹脂シートと、
前記接合層に接合された支持シートと、
前記支持シートに接合された複数のブロックと、
を備え、
前記一方向における前記未接合領域の寸法が、前記一方向における前記ブロックの寸法の40%以上である、
ブロックマット。
【請求項5】
前記一方向における前記未接合領域の寸法が、前記一方向における前記ブロックの寸法の160%以下である、
請求項4に記載のブロックマット。
【請求項6】
前記未接合領域を有する端部から最も近い前記ブロックまでの距離が、前記一方向における前記ブロックの寸法以上である、
請求項4に記載のブロックマット。
【請求項7】
前記ブロックが接合された側と反対側の面に不織布が取り付けられている、
請求項4に記載のブロックマット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックマット用樹脂シートに関する。この樹脂シートを用いたブロックマットについても言及する。
【背景技術】
【0002】
河川の護岸や造成地等の法面(のりめん)の保護のために、施工性が良く運搬容易なブロックマットが広く用いられている。
一般にブロックマットは、可撓性を有する支持シート上に多数のコンクリートブロックが接着された構成を有する。ブロックマットは、整地した斜面にクレーン等を用いて敷かれ、アンカーピン等で固定されることで、迅速かつ簡便に施工できる。
【0003】
近年、温暖化の影響もあり、全国各地で豪雨による被害が増えている。豪雨により河川が増水すると、河岸の土砂が運び去られることにより、河岸の決壊や氾濫等が起こる。増水による決壊や氾濫等を防止する観点から、遮水性、防水性を備えたブロックマットの必要性が高まっている。
特許文献1には、ブロックマットのシートを、コンクリートブロック側の基材シートとコンクリートブロックとは反対側の遮水シートとを備える構成とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
広い範囲にブロックマットを設置する場合、多数のブロックマットが並べて設置される。発明者らは、このような場合に特許文献1に記載のシートで発生する問題を新たに見出し、本発明を完成させた。
【0006】
本発明は、複数並べて設置した際も遮水性が良好に保持されるブロックマットを製造することができるブロックマット用樹脂シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、支持シートと、支持シートに接着されるブロックとを有するブロックマットに接合されるブロックマット用樹脂シートである。
このブロックマット用樹脂シートは、遮水性を有する基材層と、不織布からなり、基材層の一方の面に設けられた接合層とを備え、一方向における端部に接合層の存在しない未接合領域を有する。
【0008】
本発明の第二の態様は、第一の態様に係るブロックマット用樹脂シートと、接合層に接合された支持シートと、支持シートに接合された複数のブロックとを備えるブロックマットである。
このブロックマットにおいて、一方向における未接合領域の寸法が、一方向におけるブロックの寸法の40%以上である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数並べて設置した際も遮水性が良好に保持されるブロックマットを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るブロックマット用樹脂シートの模式的断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るブロックマットの斜視図である。
【
図4】同ブロックマットの製造における一過程を示す図である。
【
図6】製造における接着剤の塗布箇所の一例を示す図である。
【
図8】(a)は、従来のブロックマットの端部を重ねた状態を、(b)は、本発明の一実施形態に係るブロックマットの端部を重ねた状態を、それぞれ示す図である。
【
図9】同ブロックマットの変形例における部分模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について、
図1から
図8を参照して説明する。
図1は、本実施形態のブロックマット用樹脂シート(以下、単に「樹脂シート」と称する。)1を模式的に示す断面図である。樹脂シート1は、遮水性を有する基材層10と、基材層10の一方の面に設けられた接合層20とを備えている。
【0012】
基材層10の材料としては、熱可塑性樹脂を用いることができ、低密度ポリエチレン(以下、「LDPE」)、エチレン酢酸ビニル(以下、「EVA」)、塩化ビニル(以下「PVC」)などを例示することができる。基材層10は、単層であってもよいし、複数の層で構成されてもよい。
【0013】
接合層20は、公知の不織布で構成することができ、例えば、合成繊維を絡みあわせてシート状にした不織布を例示することができる。このほかにも、天然繊維で形成された不織布を用いることもできる。また、紙も、本発明における不織布に含まれる。
不織布としては、目付が40g/m2以上の物が好ましい。
【0014】
樹脂シート1の製造方法には特に制限はなく、公知の各種方法を適宜選択することができる。例えば、基材層10となる樹脂フィルムと接合層20となる不織布とを、熱ラミネーションやドライラミネーションにより貼りあわせる方法や、基材層10となる樹脂材料と、接合層20となる樹脂材料とを、共押し出しすることによりシート状に成型する方法などを例示することができる。
【0015】
接合層20は、一方向において基材層よりも小さい。これにより、樹脂シート1の一方向における一方の端部には、接合層20が存在しない未接合領域2が存在する。未接合領域2においては、遮水性を有する基材層10の上面が露出している。
樹脂シート1がロールツーロール方式等により連続的に製造される場合、上記一方向は、MD方向に直交するTD方向となり、TD方向における一方の側に、一定の幅の未接合領域2が形成される。
【0016】
樹脂シート1は、基材層10が遮水性を有することにより、全体として遮水性を発揮する。したがって、ブロックマットを製造する過程で後述する支持シートに貼りあわせることにより遮水性を有するブロックマットを製造することができる。他の使用法として、既に完成したブロックマットの支持シートに樹脂シート1を接合することにより、ブロックマットに遮水性を付与することもできる。
【0017】
樹脂シート1の厚みは適宜設定できるが、200μm以上が好ましく、500μm以上がより好ましい。樹脂シート1は、折り重ねられて保管・運搬等されているときや、ブロックマットが地面に設置された後などに、摩擦によりダメージを受ける。樹脂シート1が破れてしまうと、樹脂シート1自身、あるいは樹脂シート1が接合されたブロックマットの遮水性が損なわれるが、樹脂シート1の厚みが200μm以上、より好ましくは300μm以上あれば、これらの摩擦にも十分に耐えて、遮水性を好適に維持することができる。
【0018】
図2に、樹脂シート1を備えた本実施形態のブロックマット51を示す。
図3は、ブロックマット51の一部分を示す模式断面図である。
図2および
図3に示すように、ブロックマット51は、支持シート30と、支持シート30の第一面30aに接合された樹脂シート1と、支持シート30の第二面30bに接着された複数のブロック40とを備えている。
【0019】
ブロックマット51において、未接合領域2が設けられた端部から最も近いブロック40までの距離D1は、ブロック40の一方向における寸法以上の値に設定されている。
図2において、未接合領域2が設けられた端部と最も近いブロック40との間には、支持シート30が存在しているが、これは必須ではなく、未接合領域2が設けられた端部と最も近いブロック40との間がすべて未接合領域であってもよい。
【0020】
支持シート30およびブロック40は、公知のブロックマットに用いられているものと同様である。支持シート30としては、液体透過性を有し、かつ柔軟性を有する網目状のフィルタークロス、繊維シート、多孔質樹脂シートなどの織布や不織布、樹脂製シート等を用いることができ、特許第5711474号公報に記載されたブロックマット用織布または編物シートを例示できる。ブロック40としては、例えばコンクリートブロックを用いることができる。ブロック40の形状や数について、特に制限はない。また、各々形状が異なる複数の自然石がブロック40として用いられてもよい。
例えば、縦200mm×横200mm×高さ100mmの5kg以上のブロックを1m2当り25個、125kg以上/m2となるように配置することができる。
ブロックは、ブロックマットの使用地域の状況、環境に応じてブロックの材質、大きさ、重さ、個数、平方メートル当りの荷重を適宜設定することができる。
【0021】
ブロック40および樹脂シート1は、接着剤52により支持シート30に接合されている。塗布される接着剤52は、支持シート30を透過して第一面30aと樹脂シート1との間に位置する第一部分52aと、第二面30bとブロック40との間に位置する第二部分52bと、支持シート30内に浸透して位置する第三部分52cとを有する。樹脂シート1と支持シート30とは、第一部分52aにより一体に接合されている。ブロック40と支持シート30とは、第二部分52bにより一体に接合されている。さらに、ブロック40と樹脂シート1とは、接着剤52の第一部分52a、第三部分52c、および第二部分52bにより一体に接合されるため、強固に一体化されている。その結果、ブロック40や支持シート30が樹脂シート1から剥がれ落ちることが防止される。
【0022】
本実施形態のブロックマット51の製造方法について説明する。
まず、
図4に示すように、接合層20を上側にして樹脂シート1を置く。次に、
図5に示すように、第一面30aを樹脂シート1側にして、支持シート30を樹脂シート1上に配置する。支持シート30において、第一面と第二面とで、構造等が同一である場合は、単に樹脂シート1上に支持シート30を配置すればよい。この場合は、樹脂シート1と接触している側の面を第一面30aと定義する。
図5において、支持シート30の寸法は接合層20より小さいが、これは必須ではなく、支持シート30と同一の大きさであったり、わずかに大きかったりしてもよい。支持シート30の大きさは、少なくともブロックマット設置箇所をカバーするサイズであればよい。
【0023】
次に、第二面30b側から液状の接着剤52を供給する。第二面30b側から供給された接着剤52は、その流動性により、一部が支持シート30の繊維の間等を通過して第一面30aと接合層20との間に移動したり、概ねすべてが第二面30b上に留まったりする。
接着剤52の種類は、ブロック40や接合層20の材質を考慮して適宜決定でき、エポキシ樹脂系接着剤等を使用できる。
【0024】
接着剤52の供給の仕方は適宜設定できる。例えば、
図6に示すように、ブロック載置予定箇所R1内の4点に接着剤52を塗布して浸透させてもよい。塗布領域の数も4点には限られず、ブロック40の寸法等を考慮して任意に設定できる。
【0025】
次に、第二面30b上の各ブロック載置予定箇所R1に、ブロック40を配置する。第二面30b上に位置する接着剤52は、ブロック40に押されることで、一部支持シート30内に移動しつつ圧縮される。さらに、支持シート30内に移動した接着剤52や、ブロック配置前に支持シート30内に位置していた接着剤の一部が、第一面30aと接合層20との間に移動する。ブロック40は、第二面30b全体に配置されてもよいし、第二面30bの周縁の一部等にブロック40が配置されない部位が存在してもよい。
ここまでの工程を経て、第二面30b側から供給された接着剤52は、
図7に示すように、第一部分52a、第二部分52b、および第三部分52cを有する状態になる。この状態において、接着剤52は、支持シート30を貫通して樹脂シート1およびブロック40と接触している。
【0026】
図7に示す状態で、接着剤52が硬化されると、支持シート30と樹脂シート1とが接合されるとともに、支持シート30とブロック40とが接合され、ブロックマット51が完成する。
接着剤52が熱硬化型等の場合は、この工程において接着剤52が加熱されてもよい。この場合、樹脂シート1を構成する樹脂材料として、接着剤の硬化温度よりも高い融点を持つ材料を選択する。例えば、40℃~50℃程度の硬化反応工程が必要な接着剤を用いる場合は、樹脂シートを構成する樹脂材料の融点を65℃以上とすればよい。
【0027】
以上説明したように、本実施形態に係るブロックマット51においては、支持シート30の第二面30b側から供給した接着剤52により、樹脂シート1とブロック40との両方を支持シート30に接合できる。したがって、支持シート30の両面に接着剤52を塗布する必要がない。その結果、遮水性に優れた施工性のよいブロックマットを、簡便に効率よく製造することができる。
【0028】
また、樹脂シート1が不織布からなる接合層20を備えるため、不織布表面の微細な凹凸がアンカーとして機能する。その結果、接合層20によって、支持シート30との接合強度が高められ、施工後の支持シートからの剥離が好適に防止される。
【0029】
さらに、接着剤52において、支持シート30と樹脂シート1とを接合する第一部分52aと、支持シート30とブロック40とを接合する第二部分52bとが、支持シート30内に位置する第三部分52cによって接続されている。したがって、樹脂シート1とブロック40とが、互いに他方の抜け止めとして作用し、支持シート30から外れることを抑制する。したがって、施工後も、支持シート30に対する樹脂シート1およびブロック40の接合状態が好適に保持される。
【0030】
ブロックマットが広い面積に設置される場合、複数のブロックマットが並べて設置される。このとき、設置面にブロックマットで覆われない部分が生じないように、隣接するブロックマットの端部を重ねて設置することが一般的であるが、発明者らは、その際に樹脂シートの遮水性が充分に発揮されないことがあることを見出した。
【0031】
接合層20と基材層10とが同一寸法であり、基材層10の一方の面全体を接合層が覆う樹脂シートを用いたブロックマットの端部を重ねると、
図8の(a)に示すように、上側の樹脂シートの基材層10Aの下に下側の樹脂シートの接合層20Bが配置されることになる。そうすると、下側のブロックマットにかかった雨や河川の水等は、矢印で示すように、接合層20Bを通って基材層10Aの下の設置面に到達してしまう。結果として、樹脂シートとしては十分な遮水性を持っているにもかかわらず、ブロックマットの設置態様によりその遮水性が充分に発揮されない事態が生じてしまう。
【0032】
発明者らは、自ら見出した上記課題を踏まえ、樹脂シートに未接合領域2を設けることにより、本発明を完成させた。本実施形態に係るブロックマットにおいては、
図8の(b)に示すように、上側のブロックマットを下側の樹脂シートの未接合領域2に重ねることにより、上側の樹脂シートの基材層10Aと、下側の樹脂シートの基材層10Bとが間に接合層20Bを挟まずに直接重なる部位が生じる。したがって、接合層20Bを通った水等も、基材層10Aと基材層10Bとが直接重なり密着した部位でせき止められ、基材層10Aの下の設置面に到達することが著しく抑制される、したがって、端部を重ねて複数のブロックマットを設置しても、樹脂シートが本来備えている遮水効果が充分に発揮される。
また、上述した距離D1がブロックの一方向における寸法以上であると、ブロックマットを重ねて配置する際に、下側のブロックマットの未接合領域上に1個以上のブロックを確実に配置することができ、設置状態を安定して保持させることができる。さらに、ブロックによる荷重により、上側の樹脂シートの基材層10Aと下側の樹脂シートの基材層10Bとの密着が強くなり、遮水効果をより確実に発揮させることができる。
【0033】
本実施形態において、
図1に符号D2で示す未接合領域2の幅寸法は適宜設定できるが、小さすぎると基材層10Aと基材層10Bとを充分密着させにくく、接合層を通って多量の水が入ってきた等の場合に止めきれなくなり、基材層同士が離間して漏水を生じてしまう可能性がある。一方、大きすぎると、未接合領域2の重量が大きくなりすぎる結果、設置時にブロックや支持シートをつかんでブロックマットを吊り上げる際に樹脂シートが支持シートからはがれやすくなり、施工作業が煩雑となる。さらに、未接合領域には接合層がないため、ブロックを配置しても十分な接着性が得られず、ブロックの配置範囲が限られてしまう点で好ましくない。
このような観点からは、未接合領域の幅寸法には好適な範囲が存在する。この好適範囲については、以下に実施例を用いて詳細に説明する。
【0034】
本発明の樹脂シートおよびブロックマットについて、実施例および比較例を用いてさらに説明する。本発明の技術的範囲は、実施例および比較例の内容によって何ら制限されない。
(実施例1)
PVC樹脂を1mm厚で最終幅が1515mmとなるように連続製造し、東洋紡社製の不織布(目付50g/m2)を、幅方向の一方の端部に100mmの未接合部が生じるように貼り合わせて接合層を形成した。以上により、PVCからなる基材層と、不織布からなる接合層とを備える実施例1に係る樹脂シート(幅1515mm、未接合領域の幅100mm、長さ5000mm)を作製した。
【0035】
この樹脂シートの接合層上に、旭化成アドバンス社製のブロックマット「ソルコマット」(登録商標)に使用されている合成繊維製のフィルタークロス(織布タイプ)を、支持シートとして貼り合わせた。支持シートの寸法は、幅1315mm、長さ5000mmであり、接合層より狭い。
さらに、支持シート上に、平面視において一辺200mmの正方形状のコンクリート製のブロックを、幅方向に6個、長さ方向に20個、計120個隙間なく貼り付けた。接着剤としては、2液硬化型のエポキシ樹脂系接着剤を用い、ブロック1個あたり4箇所に塗布した。
その後、50℃で2時間静置して接着剤を硬化させることにより、実施例1に係るブロックマットを得た。完成したブロックマットにおいては、幅方向の未接合領域側に315mm、長さ方向両側に500mmのブロック未配置領域が生じた。
【0036】
(実施例2)
接合層の幅を1215mmとした(未接合領域の幅300mm)点を除き、実施例1と同様の手順で実施例2に係る樹脂シートおよびブロックマットを作製した。
【0037】
(比較例1)
接合層の幅を1515mmとした(未接合領域なし)点を除き、実施例1と同様の手順で実施例2に係る樹脂シートおよびブロックマットを作製した。
【0038】
(比較例2)
接合層の幅を1115mmとした(未接合領域の幅400mm)点を除き、実施例1と同様の手順で実施例2に係る樹脂シートおよびブロックマットを作製した。
【0039】
以下の2項目について、各例のブロックマットを評価した。
(漏水性)
国交省共通仕様書に従い、以下の要領で行った。
水平面に対して傾斜して固定された金網に、各例における未接合領域を含む端部の構造を再現した部材を貼り付けた。未接合領域のない比較例1については、樹脂シートの一部を再現した部材を貼り付けた。この際、上述した接合層を経由する経路以外の漏水が生じないように、ビニールテープで目止めを行った。
この部材を覆うように、各例に係るブロックマットを配置し、60秒間の漏水試験を行った。測定された漏水量をml/sec/1.8m2に換算し、共通仕様書における規格値の50%である12.5ml/sec/1.8m2以下のものを合格(○)、を超えるものを不合格(×)とした。
【0040】
(接着性)
各例に係るブロックマットの長さ方向の端部を、支持シートをつかんでクレーンで吊り上げ、基材層が接着剤を塗布した箇所から剥がれるか否かを確認した。剥がれが生じなかった場合を合格(○)、1箇所でも剥がれが生じたものを不合格(×)とした。
結果を表1に示す。
【0041】
【0042】
表1に示すように、未接合領域を有さない比較例1においては、比較的多くの漏水が生じ、もっぱら接合層を経由して生じたものと推測された。
比較例2においては、吊り上げた際に基材層の剥がれが生じた。これは、ブロックの一部が未接合領域にかかっており樹脂シートとの接合強度が不十分であったこと、および未接合領域が大きすぎることにより未接合領域の重量を接着剤の塗布部分のみで支えきれなくなったことが一因であると推測された。
【0043】
一方、実施例は、いずれも漏水が充分抑制されており、端部を重ねながら広範囲に設置した際も、接合層を経由して生じる漏水を充分抑制でき、良好な遮水性を保持することが期待できる。さらに、基材の接着性も良好であり、現場での施工も円滑に行えることが期待される。
実施例および比較例の結果から、未接合領域の幅寸法をブロックの一辺の40%以上160%以下程度とすることで、漏水の抑制と良好な接着性とを両立できることが示された。
【0044】
以上、本発明の実施形態および実施例について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態等の内容に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。
【0045】
本発明に係る樹脂シートにおいては、未接合領域が複数の端部に設けられてもよい。上述したTD方向における両端に未接合領域を有する構成であれば、比較的簡便に連続製造することも可能である。
【0046】
上述した例では、載置予定箇所R1内の複数個所に接着剤52が配置されているが、本実施形態の態様はこれには限られない。
図9に示す変形例では、接着剤52がブロック40の下面の全体と接触するように配置されている。
接着剤52は、
図9の変形例の様に配置されてもよいが、ブロック載置予定箇所R1内の複数個所に比較的小さく接着剤を供給すると、接着剤の塗布量を節約したり、ブロックマットの製造過程において接着剤が支持シート外にはみ出したりすることを抑制できる利点がある。
【0047】
本発明に係る樹脂シートにおいては、接合層が設けられた面と反対側の面に不織布が取り付けられてもよい。このようにすると、設置面との摩擦が増大することにより、設置後のずれや滑り等を好適に抑制することができる。この不織布については、基材層の全面に設けられてもよいし、ある大きさの単位が間隔を空けて複数配置されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ブロックマット用樹脂シート
2 未接合領域
10、10A、10B 基材層
20、20B 接合層
30 支持シート
40 ブロック
51 ブロックマット