(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005525
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】電池パック及び電気機器
(51)【国際特許分類】
H01M 50/289 20210101AFI20240110BHJP
H01M 50/213 20210101ALI20240110BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20240110BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20240110BHJP
H01M 50/569 20210101ALI20240110BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240110BHJP
【FI】
H01M50/289
H01M50/213
H01M50/291
H01M50/284
H01M50/569
H01M50/204 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105735
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】菅野 翔太
【テーマコード(参考)】
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H040AA03
5H040AA32
5H040AS19
5H040AT01
5H040AY04
5H040AY05
5H040AY10
5H040CC17
5H040DD10
5H043AA19
5H043CA03
5H043CA21
5H043FA37
5H043JA01F
5H043JA06F
(57)【要約】
【課題】防水性を高め、組み立て性を向上させたセパレータ構造を有する電池パックを実現する。
【解決手段】複数の電池セル101~110がセパレータ(31、61)によって固定される電池パックにおいて、セパレータを上側セパレータ31と下側セパレータ61によって上下に2分割して構成した。上側セパレータ31は、電池セルの長手方向における端部を覆う右側壁40、左側壁50を有し、右側壁40と左側壁50には接続端子を取り付ける貫通穴(41、43、51~56等)が形成される。電池セル101~110は、上側セパレータ31の右側壁40と左側壁50によって長手方向の両端が挟まれた状態で電池パックのケース内に収容される。貫通穴はシール状の防水シートで塞がれる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルと、
前記複数の電池セルを保持するセパレータと、
前記複数の電池セル及び前記セパレータを収容するケースと、
を備えた電池パックであって、
前記セパレータは、前記電池セルの上側に位置する上側セパレータと、前記電池セルの下側に位置する下側セパレータと、に分割可能に構成され、
前記電池セルは、前記上側セパレータと前記下側セパレータとにより挟まれた状態で前記ケースに収容されるよう構成し、
前記上側セパレータ及び前記下側セパレータの少なくとも一方は、前記電池セルの長手方向の端部を覆う壁部を有する、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記上側セパレータと前記下側セパレータとを互いに係合する係合部を備える、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項3】
請求項2に記載の電池パックであって、
前記係合部は、前記上側セパレータと前記下側セパレータの一方に設けた爪部と、他方に設けられ前記爪部と係合する被係合部と、を有する、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項4】
請求項2に記載の電池パックであって、
前記ケースは、上ケースと下ケースを有し、
前記係合部を前記上ケースと前記下ケースで挟むようにして前記セパレータを保持することを特徴とする電池パック。
【請求項5】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記複数の電池セルは、上側に位置する上側電池セルと、下側に位置する下側電池セルと、を有し、
前記壁部は、前記上側電池セルの長手方向における端部を覆うよう構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項6】
請求項5に記載の電池パックであって、
前記壁部は、前記下側電池セルの長手方向における端部を覆うよう構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の電池パックであって、
前記壁部は、前記端部に設けられた電池セルの電極を露出させる貫通穴を有する、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項8】
請求項7に記載の電池パックであって、
前記複数の電池セルの上方に設けられる基板を備え、
前記貫通穴を介して前記電極と前記基板とを電気的に接続する接続タブが設けられる、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項9】
請求項8に記載の電池パックであって、
前記壁部は、前記接続タブが位置する凹部を有する、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項10】
請求項8に記載の電池パックであって、
前記接続タブは、前記壁部に沿って前記電池セルの径方向に延びる第1部分と、前記第1部分から前記電池セルの長手方向に延びる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との接続部と、を有し、
前記接続部は前記壁部から離れる方向に湾曲する湾曲部を有する、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項11】
請求項10に記載の電池パックであって、
前記壁部の外側に取り付けられる防水部材を有し、
前記電池セルの長手方向における前記湾曲部の最外部は、前記防水部材の内面と同一面又は前記内面より外側に位置する、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項12】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記壁部の外側に、前記壁部を覆う防水部材を設けた、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項13】
請求項12に記載の電池パックであって、
前記複数の電池セルの上方に設けられる基板と、
前記電池セルの電極と前記基板とを電気的に接続する接続タブと、
を備え、
前記防水部材は、前記接続タブを覆うようにして前記壁部に固定される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項14】
請求項1から6、12、13のいずれか一項に記載の電池パックと、
前記電池パックを装着可能な電池パック装着部を有する電気機器本体と、
を備えることを特徴とする電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池セルを保持するセパレータを改良した電池パック及びそれを用いた電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電動工具等の携帯型の電気機器が、二次電池を用いた電池パックにて駆動されることにより、電気機器のコードレス化が進んでいる。例えば、モータにより先端工具を駆動する手持ち式の電動工具においては、複数の二次電池セルを収容した電池パックが用いられ、電池パックに蓄電された電気エネルギーにてモータを駆動する。電池パックは電動工具本体に着脱可能に構成され、放電によって電圧が低下したら電池パックを電動工具本体から取り外して、外部充電装置を用いて充電される。このような電池パックを用いた電動工具として特許文献1や特許文献2の技術が知られている。特許文献1の電池パックは複数の電池セルを有し、電池セルは、複数の電池セルの位置決めをする1つのセパレータ(セル挿入孔)の断面形状が円形の収容部に側面から入れ込まれる構造である。セパレータの両側の側面からは電池セルの端部が露出しており、そこに通電部および接続タブが接続され、それらの上から絶縁シートが貼り付けられる。このように、従来の特許文献1、2では電池セルの端部が露出している上に、絶縁シートには穴部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-141890号公報
【特許文献2】特開2019-021594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コードレス型の電動工具では使用場所の制約が少ないため、過酷な環境下での使用によって電池パック内への浸水も起こりうる。従って、浸水による電池セルの劣化の改善が課題となりつつあり、耐水性を向上することで電池パックの寿命改善が求められている。耐水性を向上するためには、防水構造や排水構造等を電池パックに施すことが望ましいが、電池パックを構成する部品の点数が多くなり、組立工数が増加して既存の電池パックと同等の価格での提供が困難になってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、部品点数の増加を抑えつつ組立性を向上させた電池パック及び電気機器を提供することである。
本発明の他の目的は、電池セルに水分が付着することを抑制できるようなセパレータ形状、接続タブの取り回し構造を実現して、耐水性を向上させた電池パック及び電気機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち代表的な特徴を説明すれば次のとおりである。
本発明の一つの特徴によれば、複数の電池セルと、複数の電池セルを保持するセパレータと、複数の電池セル及びセパレータを収容するケースと、を備えた電池パックであって、セパレータは、電池セルの上側に位置する上側セパレータと、電池セルの下側に位置する下側セパレータと、に上下に分割可能に構成され、電池セルは上側セパレータと下側セパレータとにより挟まれた状態でケースに収容される。上側セパレータ及び下側セパレータの少なくとも一方は、電池セルの長手方向の端部を覆う壁部を有する。また、上側セパレータと下側セパレータには、それぞれ互いに係合するための係合部を備える。係合部は、上側セパレータと下側セパレータの一方に設けた爪部と、他方に設けられ爪部と係合する被係合部により形成できる。電池パックのケースは、上ケースと下ケースを有し、係合部を上ケースと下ケースで挟むようにして上ケースと下ケースを固定することによりセパレータを強固に保持する。
【0007】
本発明の他の特徴によれば、複数の電池セルは、上側に位置する上側電池セルと、下側に位置する下側電池セルを有し、上側セパレータ及び下側セパレータの少なくとも一方は、電池セルの長手方向の端部を覆う壁部を有する。上側セパレータの壁部は、上側電池セルの長手方向における端部を覆うように構成されるか、又は、上側電池セル及び下側電池セルの長手方向における双方の端部を覆うように構成される。上側セパレータの壁部には、端部に設けられた電池セルの電極を露出させて接続タブを取り付けるための貫通穴が形成される。
【0008】
本発明のさらに他の特徴によれば、電池パックは、複数の電池セルの上方に設けられる基板(回路基板)を備え、貫通穴を介して接続タブにより電池セルの電極と基板が電気的に接続される。また壁部には、上下方向に壁部の外面を沿わせた接続タブを収容(案内)するための上下に細長い凹部を有する。接続タブは、壁部に沿って電池セルの径方向に延びる第1部分と、第1部分から電池セルの長手方向に延びる第2部分と、第1部分と第2部分との接続部と、を有し、接続部には壁部から離れる方向に湾曲する湾曲部を有する。さらに、壁部の外側(外面)に取り付けられるシート状の防水部材を有し、電池セルの長手方向における湾曲部の最外部は、防水部材の内面と同一面又は内面より外側に位置するように構成される。
【0009】
本発明のさらに他の特徴によれば、複数の電池セルと、複数の電池セルを保持するセパレータと、複数の電池セル及びセパレータを収容するケースと、を備えた電池パックであって、セパレータは、電池セルの長手方向における端部を覆う壁部を有し、壁部の外側に、壁部を覆う防水部材を設けた。また、電池パックは複数の電池セルの上方に設けられる基板と、電池セルの電極と基板とを電気的に接続する接続タブと、を備え、絶縁防水シート等の防水部材は、接続タブを覆うようにして壁部に固定される。このような電池パックと、電池パックを装着可能な電池パック装着部を有する電気機器本体を組み合わせて電気機器を構成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、部品点数の増加を抑えつつ組立性、及び、耐水性を向上させた電池パック及び電気機器を提供することできた。また、電池セルに水分が付着することを抑制できるようなセパレータ形状、接続タブの取り回し構造を実現することができた。上側セパレータ及び下側セパレータを嵌合する係合部については、電池パックの外郭ケースにて係合部を挟み込むようにしたので、振動や衝撃による上側及び下側セパレータの不意な嵌合解除を防止できる。さらに、電池セルの両側端部を上側セパレータから下方向に延在する壁部によって覆うように構成し、壁部に形成された貫通穴を介して接続タブを設けるようにし、さらには貫通穴及び接続タブを防水部材にて閉鎖するように構成したので、セパレータ構造を極力簡略化しつつ、耐水性、防水性を大幅に向上させた電池パックを実現できた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施例の電気機器本体1及びそれに装着される電池パック10の側面図である。
【
図2】本発明の実施例に係る電池パック10の斜視図である。
【
図4】
図3のセパレータ組30と回路基板140の斜視図である。
【
図5】電池セル101~110がセパレータ組30から引き出された状態を示す展開図である。
【
図6】
図4に示したセパレータ組30と回路基板140の展開斜視図である。
【
図7】
図4に示したセパレータ組30に絶縁防水シート161、162を貼る状態を示す斜視図である。
【
図8】上側セパレータ31の前方下側から見た斜視図である。
【
図9】
図3のセパレータ組30と回路基板140の左右中心を通る鉛直面における縦断面図である。
【
図10】
図9の被係合部37と爪部67のケース部(11、20)との係合状態を示す部分拡大図である。
【
図12】本発明の実施例に係る電池パック10の接続タブ91、92と上側セパレータ31との位置関係を示す部分斜視図である。
【
図13】本発明の実施例に係る電池パック10の、電池セル101と106の中心軸を通る縦断面図(部分図)であり、絶縁防水シート162を貼る前の状態を示す図である。
【
図14】
図13の状態から絶縁防水シート162を貼った後の状態を示す縦断面図(部分図)である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。尚、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0013】
図1は、本発明の本実施例に係る電気機器本体1及びそれに装着される電池パック10の側面図である。電気機器本体1は、電池パック10を電源として、モータ、光源、音響装置、熱源等の電力を消費する負荷部を稼働させるための機器である。電気機器本体1には、ハウジング2を有し、ハウジング2の一部に電池パック10を装着可能とするための電池パック装着部3が形成される。
図1の例では、公知のインパクト工具のハンドル部の下部に形成される電池パック装着部3が部分的に図示されている。電池パック10は、電気機器本体1に対して所定方向からレール部に沿って装着方向に移動させることで装着することができる。電池パック10が、電気機器本体1に対して装着方向の所定位置まで装着されると、図示しないラッチ機構が動作して電池パック10が電気機器本体1から脱落しないように固定する。電池パック10を電気機器本体1から取り外すときは、ラッチボタン18a、18b(
図2参照)を押した後に電池パック装着を装着方向と反対方向に移動させる。
【0014】
図2は電池パック10の斜視図である。電池パック10の筐体は、不導体である合成樹脂製であって、上下方向に分割可能な下ケース20と上ケース11により形成される。上ケース11には、電池パック装着部3に形成された図示しないレール部と嵌合するための2本のレール溝17a、17bが形成される。レール溝17a、17bは平行になるように配置され、これらの間を繋いだ面が上段面14である。上ケース11の前方側には平らな下段面12が形成され、下段面12と上段面14は階段状に形成され、それらの接続部分は上段面より段差状に下がる鉛直面をもつ段差部13となっている。段差部13から上段面14にかけてスロット群配置領域20が形成され、そこには前方から後方まで切り欠かれるような複数のスロットが形成される。複数のスロットは、段差部13から後方側に延びるように電池パック装着方向に所定の長さを有するように切り欠かれた部分であって、装着方向と平行なスロット内の空間には、電気機器本体1又は外部の充電装置(図示せず)の機器側端子と嵌合可能な複数の金属製の接続端子(図示せず)が配設される。
【0015】
上段面14の後方側には、隆起するように形成された隆起部15が形成される。隆起部15はその外形が上段面14より上側に隆起する形状で、その内部にラッチ機構が収容される。隆起部15の中央付近には窪み部16が形成される。窪み部16は、電池パック10を、電池パック装着部3に装着した際に、電池パック装着部3の突起部(図示せず)に突き当てられる面となるもので、電気機器本体1側の突起部が窪み部16に当接する位置まで相対移動すると、電気機器本体1に配設された複数の端子(機器側端子)と電池パック10に配設された複数の接続端子が接触して導通状態となる。同時に、電池パック10のラッチ機構のラッチ爪19a(図示せず)、19bがばねの作用によりレール溝17a、17bの溝部よりも左右方向に飛び出して、電気機器本体1のレール溝(図示せず)に形成された図示しない凹部と係合することにより、電池パック10の電気機器本体1からの脱落が防止される。
【0016】
レール溝17aは電池パック10の右側壁面から内側に凹状に窪むように形成された溝部分で、電池パック10の前方から後方まで直線状に形成される。同様にしてレール溝17bは電池パック10の左側壁面から内側に窪むように形成された溝部分で、電池パック10の前方から後方まで直線状に形成される。レール溝17a、17bの前方側端部は開放端となり、後方側端部は隆起部15の前側壁面と接続された閉鎖端となる。このレール溝17a、17bと、電気機器本体1側のレール部の凹部(図示せず)と嵌合するラッチ爪19a、19bが電池パック10の装着及び固定機能を実現する。作業者が左右両側にあるボタン状のラッチボタン18a、18bを押しこむと、ラッチ爪19a、19bによる電気機器本体1側のレール部の凹部と嵌合状態が解除されるので、その状態のまま電池パック10を装着方向と反対側に移動させることで、電池パック10を電気機器本体1から取り外しできる。
【0017】
図3は
図2の電池パック10の展開斜視図である。電池パック10の筐体は、上下方向に分離可能な上ケース11と下ケース20によって形成され、下ケース20の内部空間には、10本の電池セルが収容される。
図3では、
図7で後述する絶縁防水シート161、162の図示は省略している。下ケース20の前方側壁面には、上ケース11とのネジ止め用に2つのネジ穴23a、23bが形成され、下から上方向にネジ穴23a、23bを貫通するようにして図示しないネジが通される。下ケース20の後方側壁面にも2つのネジ穴23c(図では見えない)、23dが形成される。複数の電池セル(後述の
図4参照)は、5本ずつ2段にスタックさせた状態で、合成樹脂等の不導体で構成されたセパレータ組30にて固定される。セパレータ組30は電池セルの両端の一部分だけが開口するように、右側壁40と左側壁50を有する。
【0018】
セパレータ組30の上側には、回路基板140が固定される。回路基板140には接続端子群141が半田付けによって固定されると共に、これら接続端子群141と回路基板140に形成された回路パターン(図示せず)によって電気的な接続を行う。接続端子群141は、金属製の複数の接続端子が横方向に並べて固定されたもので、右側から充電用正極端子(C+)、正極端子(+)、T端子、V端子、LS端子、負極端子(-)、LD端子が配置される。本発明の電池パック10では、接続端子群141を構成する端子の数、種類、形状等は任意に構成できる。接続端子群141の前方側には、横方向に延在する平面状の端子カバー149が形成される。本発明は、出力用の正極端子と負極端子が1つずつである固定電圧式の電池パックに適用できるが、出力用の正極端子と負極端子として上下に分離した2組の腕部を有する端子を用いて、高電圧/低電圧の出力切り替えが可能となるようにした、いわゆる2電圧切替え可能な電池パックにおいても同様に適用できる。
【0019】
回路基板140は、電池保護ICやマイクロコンピュータ、PTCサーミスタ、抵抗、コンデンサ、ヒューズ、発光ダイオード等の様々な電子素子(ここでは図示していない)を搭載する。回路基板140の材質は、素材に対して絶縁性のある樹脂を含浸した基板上に、銅箔など導電体によってパターン配線を印刷したプリント基板と呼ばれるものであり、単層基板、両面基板、多層基板を用いることができる。本実施例では、少なくとも回路基板140の上面に配線パターンが形成される。
【0020】
下ケース20は、上面が開口された略直方体の形状であって、底面22eと、底面に対して鉛直方向に延びる前面壁22a、後面壁22b、右側壁22c、左側壁22dにより構成される。下ケース20の内部空間はセパレータ組30を収容するのに好適な形状とされ、セパレータ組30を安定して保持するために底面内側に形成される多数の固定用リブ24が形成される。底面22eの内側形状は、強度向上のためとセパレータ組30との良好な接触を行うために平面ではなくて、電池セルの外周面の形状に近い複数の円筒曲面にて形成される。前面壁22aのほぼ中央には、スリット25が設けられる。上ケース11のスリット16aは、充電装置にて充電を行う際に電池パック10の内部空間に充電装置側から送出される冷却風を流入させるための流入口として用いられ、下ケース20のスリット25は冷却風の排出口として用いられる。
【0021】
次に
図4の斜視図を用いてセパレータ組30から回路基板140を用いた電池セルのスタック状況および配線方法を説明する。セパレータ組30は10本の電池セル101~110(後述の
図5参照)を5本ずつ、上下2段にスタックしたものである。各電池セルの長手方向の中心軸線はそれぞれ左右方向に延びて、隣接する電池セルの中心軸線と平行になるように積み重ねられる。また、隣接する電池セルの向き(+端子が位置する側)が左方向又は右方向に、交互に順に並ぶように配置して、隣接する電池セルの正極端子と負極端子を金属製の接続タブ82~85(後述の
図6参照)、及び、接続タブ92~95にて接続する。このようにして、上側5本の電池セル101~105(符号は後述の
図5参照)は直列接続され、前側端部に位置する電池セル101と後側端部に位置する電池セル105から、接続タブ81と96を介して回路基板140に電力が出力される。同様に、下段の電池セル106~110(符号は後述の
図5参照)は、前側端部に位置する電池セル106と後側端部に位置する電池セル110から接続タブ91及び86(後述の
図6参照)を介して回路基板140に電力が出力される。
【0022】
接続タブ81、86(図では見えない)、91、96の電池セルと離れた側の引き出しタブ81d、86d、91d、96dは上下に延在する薄板状のタブとして形成される。引き出しタブ81d、86d、91d、96dは回路基板140の下側から上側まで貫通するスリット状の貫通穴を、下側から上側まで貫通され、上側に突出した引き出しタブ81d、86d、91d、96dをはんだ付けすることによって回路基板140に形成された回路パターンと電気的に接続される。また、前後に隣接する2つの電気セルを接続する接続タブ92~95からも上方向に延びる金属製の接続板92b、94b、95b等が形成され、回路基板140の下側から上側まで貫通するように配置される引き出しタブ92d、93d、94d、95dまで電気的に接続される。つまり、5本の電池セルの中間電圧も、グランド電位に対する引き出しタブ92d、93d、94d、95dの電位を測定することによって回路基板140に搭載されるマイコン(図示せず)によって検出され、監視される。
図4では見えないが、セパレータ組30の右側においても、前後に隣接する2つの電気セルを接続する接続タブ82~85が設けられ、接続タブ82~85には上方向に延びる金属板が形成され、それらの引き出しタブ82d、83d(図では見えない)、84d、85dが回路基板140上の配線パターン(図示せず)にはんだ付けにより固定される。
【0023】
セパレータ組30は、個々の電池セルの円筒面の全体を覆うように形成されると共に、中心軸線方向の両側端部、即ち正極が位置する端面、負極となる端面が中心軸の近傍を除いて合成樹脂製の側壁部分で覆われる形状にて形成される。つまり、各電池セルは、セパレータ組30の右側壁40と左側壁50によって、中心軸線方向に動かないように保持される。右側壁40と左側壁50は、電池セルと電気的に接続するために電池セルの電極を露出させると共に、電極に対して接続タブ部位を接触させることができる形状だけを左右方向に貫通させた貫通穴41~46(後述の
図8参照)と貫通穴51~56が形成される。この結果、各電池セル101~110は、接続タブ81~86(図では見えない)、91~96との接触領域付近を除いて、電池セル101~101の外面の全部、即ち円筒面の全部と、正極側端部、負極側端部を合成樹脂製のセパレータ組30と接続端子によって覆われることになる。
【0024】
図5は電池セル101~110がセパレータ組30から引き出された状態を示す展開図である。セパレータ組30は、上限に分解可能な2つの部品、即ち、上側セパレータ31と下側セパレータ61によって形成される。ここでは、5直列2並列電池パックの例であり、セパレータを上段セル中央で上下に分割し、上側セパレータ30に右側壁40と左側壁50を形成して、上段と下段の電池セルの側面を覆うようにした。設けられた左側壁50には接続タブ用の貫通穴51~56が形成されている。同様に右側壁40にも接続タブ用の貫通穴41~46(図では42、44~46は見えない)が形成されている。上側セパレータ31と下側セパレータ61の前辺部分は、上側に位置する電池セル101の上下方向の範囲内の分割面32aで分割される。同様にして、上側セパレータ31と下側セパレータ61の後辺部分は、上側に位置する電池セル101の上下方向の範囲内の分割面32b(後述の
図8参照)で分割される。このように上側セパレータ30の上壁31aに対して、右側壁40及び左側壁50が一体に形成され、上下方向に小さい高さ分の前壁31bと後壁31cが一体に形成されるので、セパレータ組30で見た際に、上壁31aとそれに接続される側面部分(右側壁40、左側壁50、前壁31b、後壁31c)との角部(接続部)が閉鎖されている状態にあるので、電池パック10のスロット部分から流入する水に対して良好な防水性を達成できる。本実施例では、上側の電池セル101~105の中心軸線(例えばA1)と上下に同じ位置に分割面32a、32bが形成される。つまり、上側セパレータ31は、上側の電池セル101~105の上側半分の外周面を覆うような形状とされる。
【0025】
下側セパレータ61は、上側の電池セル101~105の下側半分の外周面を保持するように電池セル保持面71~75が形成され、下側の電池セル106~110の中心軸B1方向にすべて覆うような筒状の電池セル収容部76~80が形成される。電池セル収容部76~80は左右両端に開口を有した全円形状である。電池セル106~110は、下側セパレータ61の左側の開口部から挿入可能であるが、下側セパレータ61の右側の開口部からも挿入可能である。
【0026】
上側セパレータ31の左側壁50の貫通穴51~56には、
図6で後述する接続タブ91~96の接続板91a~96aが収容される。また、左側壁50には貫通穴52から上方向の延在する細長い溝部57と58が形成される。溝部57と58部分は、左側壁50の内側までは貫通していない。
図5では部分的にしか見えないが、右側壁40にも左側壁50と同様に、貫通穴41~46(後述の
図8参照)と、細長い溝部47と48(後述の
図8参照)が形成される。
【0027】
セパレータ組30の組立時には、下側セパレータ61の電池セル収容部76~80に電池セル106~110が挿入され、電池セル保持面71~75に電池セル101~105が載置された状態にしてから、上側セパレータ31を下側セパレータ61にかぶせるようにして、上側セパレータ31と下側セパレータ61を固定する。上側セパレータ31と下側セパレータ61は、前後方向に2か所形成された係合部を用いて互いに係合させる。係合部は、下側セパレータに設けた爪部67、68と、上側セパレータ31に設けた被係合部37、38(後述の
図9参照)により形成される。
【0028】
電池セル101~110は、18650サイズと呼ばれる直径18mm、長さ65mmの複数回充放電可能なリチウムイオン電池セル(図示せず)が用いられる。尚、本発明によれば電池パック10に収容される電池セルの数は任意である。また、
図5の例では前後に5本の電池セル101~105、106~110が上下2段に配置されているが、電池パック10の定格電圧に合わせて前後に4本の配置でも良いし、その他の本数としても良い。また、上下に1段だけの配置でも良いし、3段の配置でも良い。さらには、使用する電池セルは18650サイズだけに限られずに、いわゆる21700サイズの電池セルや、その他のサイズの電池セルであっても良い。また電池セルの形状は円筒形だけに限られずに、直方体のもの、ラミネート形状のもの、その他の形状であっても良い。電池セルの種類はリチウムイオン電池だけに限られずに、ニッケル水素電池セル、リチウムイオンポリマー電池セル、ニッケルカドミウム電池セル等の任意の種類の二次電池を用いても良い。
【0029】
図6は
図4に示したセパレータ組30と回路基板140の展開斜視図である。
図6の状態のセパレータ組30は、上側セパレータ31と下側セパレータ61の間に電池セル101~110を装着した直後の状態であり、その状態において、最初に複数の接続タブ81~86、及び、接続タブ91~96を、上側セパレータ31の貫通穴41~46(後述の
図8参照)、51~56に対応するように位置づけし、所定の溶接個所にて接続タブ81~86、91~96を電池セル101~110の端子(正極、負極)に固定する。この溶接による接続端子の固定方法は従来の電池パックにおける固定方法と同じであるので詳細な説明は省略する。ここで重要なことは、接続タブ91~95が位置付けられる部位は、すべて上側セパレータ31の左側壁50と上壁31aの範囲内にあって、下側セパレータ61とは接したり、干渉したりしないことである。尚、接続タブ96は、接続板の引き出しの関係上、下側セパレータ61の後方側を通すために、下側セパレータ61と接触するような位置関係となる。接続タブ82~86も接続タブ91~95と同様に、位置付けられる部位は、すべて上側セパレータ31の右側壁40と上壁31aの範囲内にあって、下側セパレータ61とは接したり、干渉したりしない。唯一、接続タブ81だけが接続板の引き出しの関係上、下側セパレータ61の前方側を通すために、下側セパレータ61と接触するような位置関係となる。
【0030】
接続タブ91~95は、電池セルと接触する接続板91a~95aと、接続板91a~95aから上方向(電池セルの径方向上側)に鉛直に延在する第1部分91b~95bと、第1部分91b~95bから90°曲げられて水平方向に延在する第2部分91c~95cと、第2部分91c~95cから上方向に再び曲げられた引き出しタブ91d~95dを有して構成される。引き出し位置の関係から、接続タブ96だけ、第1部分96bがセパレータ組30の後面側に沿って配置され、それに伴い、第2部分95cの延在方向が前後方向となり、引き出しタブ96dの配置方向が、他の引き出しタブ91d~95dとは90°異なる向きになる。
【0031】
セパレータ組30の右側に配置される接続タブ82~86は、電池セルと接触する接続板82a~86aと、接続板82a~86aから上方向に鉛直方向に延在する第1部分82b~86bと、第1部分82b~86bから90°曲げられて水平方向に延在する第2部分82c~86cと、第2部分82c~86cから上方向に再び曲げられた引き出しタブ82d~86dを有して構成される。引き出し位置の関係から、接続タブ81だけ、第1部分81bがセパレータ組30の前面側に沿って配置され、それに伴い、第2部分81cの延在方向が前後方向となり、引き出しタブ81dの配置方向が、他の引き出しタブ82d~86dとは90°異なる向きになる。接続タブ82~86、91~96は、電池セル溶接部から回路基板140へほぼ最短で接続されるように配置される。また、接続タブ82~86、91~96は、セパレータ組30の上部に回路基板140を位置付ける際に、回路基板140の貫通穴に貫通可能とするために鉛直方向に延在する。さらに、第1部分82b~86bから第2部分82c~86cへの曲げ部分は特徴的な形状にて湾曲しており、第1部分91b~95bから第2部分91c~95cへの曲げ部分は特徴的な形状にて湾曲している。この湾曲形状については
図11~
図14にて後述する。
【0032】
回路基板140はセパレータ組30の上側に2本のネジ146、147によって固定されると共に、
図4で前述した複数の接続タブ81~86の引き出しタブ81d~86d、接続タブ91~96の引き出しタブ91d~96dが回路基板140にはんだ付けされる。上側セパレータ31の上面部分には、2つのネジボス33a、33bが形成される。また、回路基板140の下面と当接することにより回路基板140を安定して固定するための支持ボス34a、34b、34c等が上側セパレータ31の上壁31aに形成される。尚、これら支持ボス34a、34b、34c以外にも回路基板140の下面と接触する領域があるが、その説明は省略する。
【0033】
以上のように、電池セル101~110を組み込んだ状態のセパレータ組30に、接続タブ81~86、91~96を位置付けて電池セル101~110に溶接したら、接続タブ81~86の引き出しタブ81d~86dを回路基板140の接続箇所にある貫通穴(図示せず)を下から上方向に貫通する様に位置づける。回路基板140を上側セパレータ31に近づけて、接続タブ91~96の引き出しタブ91d~96dが回路基板140の接続箇所にある貫通穴(図示せず)を下から上方向に貫通させたら、回路基板140を上側セパレータ31にネジ146、147を用いてネジ止めする。その後に、引き出しタブ81d~86d及び引き出しタブ91d~96dを、はんだ付けにより回路基板140の上面に形成された図示しない回路パターンと接続する。これらの組立工程後の状態を示すのが
図7である。
【0034】
図7で示すセパレータ組30及び回路基板140は、
図6の展開図で示す部位を組み立てたあとの状態を示し、
図4と同じ状態である。この状態において、上側セパレータ31の右側壁161に防水部材たる絶縁防水シート161を矢印163の方向に貼り付け、左側壁50に絶縁防水シート162を矢印164の方向に貼り付ける。絶縁防水シート161、162は、電気を通さない上に防水性を有する素材によって製造された薄いシート状、又はフィルム状の部材であり、ここではプラスチック板や厚紙等の防水部材を用いることができる。絶縁防水シート161、162の片面にシール材があらかじめ塗布されているものを用いると、セパレータ組30への貼り付け作業が容易になる。ここで、絶縁防水シート162の大きさは、すべての貫通穴51~56と、溝部57、58を同時に塞ぐのに十分な面積を有することが重要である。具体的には、上側セパレータ31の左側壁50の外面の大きさに近い面積を有する。従って、電気の絶縁性と防水性をを有する絶縁防水シート162を左側壁50に貼り付けることによって、貫通穴51~56を介して水がセパレータ組30の内側に入ることを防止できる。同様にして、同じ大きさの絶縁防水シート161が矢印163のように上側セパレータ31の右側壁40に貼り付けられる。尚、絶縁防水シート161、162には貫通する穴部が形成されないようにすると良いが、防水性に影響が出なければ部分的に切り欠きや貫通穴があっても良い。
【0035】
図8は上側セパレータ31の前方下側から見た斜視図である。上側セパレータ31は合成樹脂製の成形によって製造され、回路基板140を保持する上壁部分と右側壁40と左側壁50が上壁31aと一体に製造される。右側壁40には、壁の外側から内側まで貫通する大きな貫通穴41~46が形成される。貫通穴から上壁部に向けて溝部47、48が形成される。溝部47、48は、右側壁40を貫通しておらず、外面から凹状にくぼむ形状であり、接続タブ83の第1部分83bと、接続タブ85の第1部分85bを収容する空間を形成する。溝部47、48の開口部分は絶縁防水シート161(
図7参照)によって密閉される。貫通穴42、43、44、45には、接続タブ82、83、84の屈曲部分との干渉を避けるための、切り欠き溝42a、43a、44a、45aが形成される。切り欠き溝42a、43a、44a、45aは貫通穴42、43、44、45部分の外縁の一部に接続されるようにして形成され、壁部の内側から外側までを貫通する。
【0036】
左側壁50の形状は右側壁40と同様であり、壁の外側から内側まで貫通する大きな貫通穴51~56が形成される。また、左側壁50の外面から凹状にくぼむ溝部57、58(ともに
図7参照)が形成されるが、
図8により溝部57、58部分は内側に貫通していないことが理解できるであろう。尚、貫通穴52、53、54には、接続タブ92、93、94の屈曲部分との干渉を避けるための、切り欠き溝52a、53a、54a等が形成される。切り欠き溝52a、53a、54a、55aは貫通穴52、53、54、55部分の外縁の一部に接続されるようにして形成され、壁部の内側から外側までを貫通する。
【0037】
上側セパレータ31の上壁31aの内側(下側面)には、収容される電池セル101~105の外面に対応した半円筒状の電池セル保持面35a~35eが形成される。電池セル保持面35aの前側縁部は、上側セパレータ31との分割面32aになっており、分割面32aの左右中央位置には、下側セパレータ61の爪部67と係合するための掛止部37が形成される。同様に、電池セル保持面35eの後側縁部は、上側セパレータ31との分割面32bになっており、分割面32bの左右中央位置には、下側セパレータ61の爪部68と係合するための掛止部38が形成される。
【0038】
図9は、
図3のセパレータ組30と回路基板140の左右中心を通る鉛直面における縦断面図である。セパレータ組30の前辺と後辺部分における上側セパレータ31と下側セパレータ61の分割面の上下位置は、上側に配置される電池セル101~105の中心軸(電池セル105でみると中心軸A1)と同じ位置に形成される。つまり、
図9のように電池セル101~105と、電池セル106~110を上下に2段に積層する場合は、上側セパレータ31と下側セパレータ61の分割位置は、上側電池セル101の中心位置(中心軸A1)を通る位置とする。尚、複数の電池セルを上下方向に1段だけ積層するような電池パック(例えば、電池セル101~105だけの電池パック)の場合は、前後に並べる電池セルの中心軸を通る位置に、上側セパレータ31と下側セパレータ61の分割面を形成すると良い。
【0039】
複数の電池セルを上下方向に複数段積層するような電池パックの場合は、最上段の電池セルの中心軸A1を通る位置に、上側セパレータ31と下側セパレータ61の前辺と後辺部分の分割面を形成すると良い。例えば、上下方向に3段積層として、前後方向に5本の電池セルを収容する電池パックの場合は、下側セパレータに筒状の電池セル収容部76~80を上下に2段形成するようにすれば良い。このように、積層される電池セルの最上段の電池セルの上下中心位置にてセパレータ組30前壁及び後壁の分割面を形成することにより、複数段のすべての電池セルの右側壁40と左側壁50を上側セパレータ31と一体に形成することが可能となる。尚、上下に3段以上の電池セルを積層する場合は、上下に細長く形成される溝部(例えば溝部47、48のようなもの)を形成できない虞がある。しかしながら、すべての中間電位を溝部に形成される金属製の第1部分によって回路基板140まで接続する必要はなく、右側壁40及び左側壁50の外面に沿わせるように図示しないリード線を用いて接続板と回路基板140を電気的に接続するようにすれば良い。その場合は、リード線の大半を絶縁防水シート161、162によって右側壁40及び左側壁50に挟むようにして絶縁防水シート161、162を貼り付けると、十分な防水性を確保できる。
【0040】
下側セパレータ61には、前後に2つの爪部67、68が形成される。上側セパレータ31には爪部67、68に掛止されることにより係合する掛止部37、38が形成され、掛止部37、38が係合部たる爪部67、68に組み合わされる被係合部になる。被係合部37、38は合成樹脂製であるため、わずかに塑性変形が可能であり、上側セパレータ31と下側セパレータ61を上下に嵌め合わせることにより、上側セパレータ31と下側セパレータ61が固定される。このようにして、上側の電池セル101~105は、上側セパレータ31と下側セパレータ61とにより挟まれた状態で電池パック10のケース(
図2の上ケース11と下ケース20)内に収容されることになる。この構造は従来の一体構造のセパレータと比較すると、セパレータの分割の必要はあるが、セパレータ同士を固定させるためのネジやピン等の追加部品が不要であるので、組立作業工数の増加を抑制と質量の増加を抑制でき、製品価格の高騰を抑制できる。尚、上側セパレータ31と下側セパレータ61をネジによって固定するようにしても良い。また、その他の公知の固定方法を用いて上側セパレータ31と下側セパレータ61を固定しても良い。しかしながら、本実施例のように爪部67、68に対して被係合部37、38を係合させる方法であれば、これら固定手段を設けるのに必要なスペースを最小に収めることができ、さらには、分解時に容易に上側セパレータ31と下側セパレータ61を容易に分離することが可能となる。
【0041】
上側セパレータ31と下側セパレータ61は、
図9で示した固定手段を用いることに加えて、上ケース11と下ケース20を用いてさらに固定される。
図10は
図9の被係合部37と爪部67付近の部分拡大図である。
図3で説明したように上ケース11と下ケース20は、4本の図示しないネジによって強固に固定される。下ケース20の被係合部37が当接する部分には、窪み部26(又は段差部)を形成する。上ケース11の左右中央位置には、上側壁面(
図2の下段面12の左右方向中央、前側端部付近)から下方向に延在するリブ119を形成する。このような上ケース11と下ケース20の内部にセパレータ組30を収容して、上ケース11と下ケース20をネジにより固定すると、被係合部37は、窪み部26とリブ下面119aによって上下方向に挟まれるため、上下ケースによって動かないように固定されることになる。また、この固定状態では、被係合部37と爪部67の嵌合状態が解除できないため、セパレータ組30も安定的に嵌合状態が維持される。さらに、被係合部37の左右両面を、略直方体状の窪み部26の壁面に当接するように保持すれば、セパレータ組30の左右方向の移動も効果的に阻止される。尚、本実施例では上側セパレータ31に掛止部37、38を形成し、下側セパレータ61に爪部67、68を形成したが、これらの関係を逆にして、上側セパレータ31に爪部を形成し、下側セパレータ61に掛止部等の被係合部を形成しても良い。
【0042】
図11は、接続タブ91の形状を示す斜視図である。接続タブ91は、電池セル101(
図5参照)に溶接される接続板91a、接続板91aから上方向に延在する第1部分91b、鉛直部から略90度曲げられて水平方向に延在する第2部分91c、第2部分91cから上方向に90度曲げられた引き出しタブ91dの4つの主な部位によって形成される。接続タブ91は、5本直列に接続される電池セル101~105の取り出し側の電極であるため、接続板91aは1つの電池セル101にだけ接続される。他の接続タブ92~94(
図6参照)は、隣接する電池セルの電極間を接続するため、前後方向の幅が接続タブ91の接続板91aの幅の倍以上となっている。接続板91aに領域では、4箇所のスポット溶接部位911~914にて接続タブ91と電池セル101が強固に固定される。スポット溶接911、913の組と、912,914の組の間には縦方向に細長く切り欠かれた切り欠き部915にて前後に分離される。尚、前後方向に隣接する2つのセル、例えば接続タブ92(
図6参照)では、切り欠き部の形状がカギかっこ状の切り抜きになり、切り抜きの前後にスポット溶接個所が配置される。これらの接続板91a、92aのスポット溶接個所付近の形状は、従来の電池パックと同様の形状とすることができるので、接続板91a部分の形状は
図11で示した形状だけに限定されない。
【0043】
第1部分91bは接続板91aから上方向に延在させた部位である。第1部分91の幅(前後方向の長さ)は、電池セル101~105の直列接続の電源引き出し用の端子であるため、十分な幅を有するように形成される。これは、大電流が流れる為であり、接続タブ96(
図6参照)の同様の思想で形成される。よって、第1部分91bは接続板91aと同じ幅(前後方向の長さ)を有して、湾曲部91eに接続される、ここで、従来のセパレータにおいては、左側壁50が存在しなかったので、湾曲部91eを設けずに単に第1部分91bと第2部分91cを直接接続し、それらを直角に、又は小さい曲率半径をつけて曲げればよかった。しかしながら、本実施例においては、電池セル101~110の両側端子の端面を覆うように、右側壁40、左側壁50(
図8参照)が形成され、それらに形成された貫通穴41~46、51~56(
図8参照)を貫通させて接続板91a等を溶接する必要があるため、右側壁40、左側壁50を避けるために湾曲部91eを介在させるようにした。湾曲部91eは、外側に向けて曲げることによって左側壁50の外面付近まで位置付ける第1の曲げ部916と、第1部分91bと第2部分91cが直角になるように曲げる第2の曲げ部917と、第2の曲げ部917から第2部分91cに続く水平面918が形成される。水平面918と第2の曲げ部917は高さ方向が同一ではないので、第3の曲げ部919を介して接続される。尚、第1の曲げ部916から第2の曲げ部917に至る間に、わずかに鉛直面が形成されるが、これでは符号を付していない。
【0044】
接続タブ91の接続端子群141への接続点(引き出しタブ91d)は、比較的中心付近にありネジボス33a(
図6参照)に近い部分である。そのため、比較的長めの第2部分91cが設けられる。第2部分91cをどの程度の長さとするかは、回路基板140における引き出しタブ91dの固定位置による。引き出しタブ91dと第2部分91cとはほぼ垂直に曲げられる。この角部においてどの程度の曲率半径を持たせて曲げるかは任意である。本実施例では、湾曲部91eを
図11のように、第1の曲げ部916、第3の曲げ部919を有するように湾曲部91eを形成したことで、湾曲形状振動による破損防止効果に加えて、絶縁防水シート162による防水性を高める効果を得ることができた。
【0045】
図12は本発明の実施例に係る電池パック10の接続タブ91、92と上側セパレータ31との位置関係を示す部分斜視図である。接続タブ91は基本的には上側セパレータ31外面に配置されるが、接続板91a部分だけは電池セル101(図では見えない)の端部に接するように配置される。つまり、接続タブ91のうち接続板91aと第1部分91bの部分は、左側壁50(上側セパレータ31の一部)の内面付近に位置し、それ以外は上側セパレータ31の外面に位置することになる。このため、内面部分から外面部分への移行箇所として第1の曲げ部916が形成される。隣接する接続タブ92ではこの第1の曲げ部は926に相当するが、湾曲部92eに至る引出し板92bの部分において既に左側壁50の外面側(正確には溝部57内)に位置しているので、接続タブ91の第1の曲げ部916に比べて第1の曲げ部926の曲げの曲率半径が小さくなっている。
【0046】
接続タブ92からの引き出し部分(第1部分92b)は高電流が流れる電力線ではないので、前後方向の幅が、接続タブ91の引き出し部分(第1部分91b)に比べて狭くなっている。溝部57の深さは、第1部分92bの板厚よりもわずかに大きい程度である。従って、第1部分92bは、左側壁50の表面より左側には突出しないような位置関係になる。接続タブ92の湾曲部92eの形状は、接続タブ91の湾曲部91eの形状と同じ思想で形成される。但し、接続タブ92の第1部分92bが、貫通穴52の縁部でなく、貫通穴52から離れた上側外面に形成され、溝部57の溝内に配置される関係から、第1部分92bから外側に曲がる部分は湾曲部91eには存在せずに、第2の曲げ部927と段差部929が存在する。
【0047】
図13は本発明の実施例に係る電池パック10の、電池セル101と106の中心軸を通る縦断面図(部分図)であり、絶縁防水シート162(
図7参照)を貼る前の状態を示す。接続タブ91は、電池セル101(
図5参照)に溶接される接続板91aから、第1部分91bが上方向に延在し、貫通穴51の上側縁部付近を内側から外側に向けて曲げられ(第1の曲げ部916)、矢印916の部分で上側セパレータ31の外面位置に到達する。矢印916a付近では、接続タブ91の内側は上側セパレータ31の外面に接する。湾曲部91eでは、湾曲部91aから鉛直方向に延在した金属板が上側セパレータ31の中心方向に向けて水平になるように曲げられるが、矢印918付近では上側セパレータ31の上壁面に形成される溝部の底面から上方に離れた部位を通るようにして、その下面が上側セパレータ31の外壁面と離れるように形成することによって湾曲部91eに十分なばね性をもたせている。また、湾曲部91eから接続板91aと離れる方向に向かうと、その後に第3の曲げ部919を通って水平方向に延在する第2部分91cと接続される。接続タブ91の第2部分91cは、溝部39aの中に配置されることになる。第2部分91cの電池セル101から離れた端部は、上方向に90度曲げられ、回路基板140を貫通する引き出しタブ91dに接続される。
【0048】
上側セパレータ31の左側壁50は、内壁部分が下側セパレータ61の電池セル保持面71の外縁部に良好に接すると共に(矢印50a付近)、電池セル収容部76の外縁部にも接する(矢印50b付近)。これらの接触箇所では良好に面接触するので、これら接触面を介してセパレータ組30の内部に水が入ることを防止でき、良好な防水性を維持することができる。
【0049】
図14は、
図13の状態のセパレータ組30の外面に、絶縁防水シート162を貼った状態を示す縦断面図(部分図)である。絶縁防水シート162の厚さは、上側セパレータ31の左側壁50よりもやや薄い程度であり、内側(ここでは右側)に予め接着面が形成されているので、左側壁50の外側に容易に貼り付けて固定できる。この絶縁防水シート162の貼り付けによって貫通穴51、52等が完全に塞がれることになるので、貫通穴51~56を通してセパレータ組30の内部空間(電池セル101~110が収容される空間)と外部との水や空気の伝達は完全に阻止される。
【0050】
電池セルの長手方向(左右方向)に見た、湾曲部91eの最外位置は、絶縁防水シート162の内面と同一面又は前記内面よりわずかに外側に位置する。矢印916aで示す付近の湾曲部91eにおいては、上側セパレータ31と絶縁防水シート162に挟まれるようにして接続タブ91が引き出されることになる。しかしながら、矢印916a付近で接続タブ91の内面が上側セパレータ31の外面に接しており、接続タブ91の外面側が絶縁防水シート162によって密着されるので、矢印920付近に生ずる隙間を最小に抑えることができるので、良好な防水性を達成できる。このように、各接続タブ91~96は、左側壁50の内面付近から外面付近に位置するように曲げられる部分において、湾曲部の内側を左側壁50の外面と接するように配置されるので、左側壁50と絶縁防水シート162との間に生ずる隙間をきわめて少なく構成できる。尚、防水性をさらに高めることが必要な場合は、矢印920付近の絶縁防水シート162の外縁位置に防水コーキング材、シリコン等の樹脂、接着剤等のシール部材を設けても良い。
【0051】
本実施例の
図11~
図14においては、セパレータ組30の左側壁50の部分形状について説明したが、セパレータ組30の右側壁40の構成、右側壁40に配置される接続タブ81~86についても左側壁50と同様の構成にすることができる。本実施例では、電池パック10のセパレータ組30の右側壁40と左側壁50を形成することにより、電池セル101~110全体を覆うようにしたので、電池パック10において耐水性を大幅に向上させることができた。また、セパレータ組30を上下に2分割の構成としたが、上側セパレータ31と下側セパレータ61の接合を、一方に設けた爪部67、68と、他方に設けられ爪部67、68と係合する被係合部37、38によって容易に接続できるようにしたので、部品点数の増大を抑制すると共に、製造のおける工数増大を抑制し、製造コスト増大による価格への影響を抑え、電池パック10の質量増加への影響も抑えることができた。
【0052】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。