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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055250
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】床用接着剤組成物及び床構造
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20240411BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240411BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240411BHJP
   C09J 171/02 20060101ALI20240411BHJP
   E04F 15/04 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/04
C09J11/06
C09J171/02
E04F15/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162023
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】竹政 祐太
(72)【発明者】
【氏名】中島 奈未
【テーマコード(参考)】
2E220
4J040
【Fターム(参考)】
2E220AA51
2E220AB24
2E220AC01
2E220BA23
2E220DA02
2E220DB03
2E220EA11
2E220FA13
2E220GA01Z
2E220GA35Z
2E220GB60Z
4J040DF041
4J040DF051
4J040EE011
4J040GA31
4J040HA196
4J040HD32
4J040HD35
4J040HD36
4J040JB04
4J040KA30
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA06
4J040LA08
4J040MA06
4J040MA08
4J040MB12
4J040NA12
(57)【要約】
【課題】 本発明は、静的非流動性と動的流動性という相反する特性の双方に優れていると共に、加熱及び放熱に伴う接合部の伸縮に円滑に追従して優れた接着性を維持することができる床用接着剤組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の床用接着剤組成物は、湿気硬化性樹脂と、
表面処理が施されていない非表面処理炭酸カルシウム及び表面処理が施された表面処理炭酸カルシウムを含む充填材とを含み、
CPMG法によるパルスNMR測定によって測定される硬化物の80℃調温雰囲気において2成分分析を行った場合のS成分の緩和時間が30ms以上であり、粘度が所定条件を満たすことを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿気硬化性樹脂と、
表面処理が施されていない非表面処理炭酸カルシウム及び表面処理が施された表面処理炭酸カルシウムを含む充填材とを含む床用接着剤組成物であって、
上記床用接着剤組成物の硬化物について、CPMG法によるパルスNMR測定によって測定される80℃調温雰囲気において2成分分析を行った場合のS成分の緩和時間が30ms以上であり、
JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数1rpmの条件にて測定された粘度が400000mPa・s以上であると共に、
JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数1rpmの条件にて測定された粘度と、JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数10rpmの条件にて測定された粘度との比(回転数1rpmの条件にて測定された粘度/回転数10rpmの条件にて測定された粘度)が4以上であることを特徴とする床用接着剤組成物。
【請求項2】
湿気硬化性樹脂は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体を含むことを特徴とする請求項1に記載の床用接着剤組成物。
【請求項3】
シランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の床用接着剤組成物。
【請求項4】
湿気硬化性樹脂100質量部に対して充填材150~300質量部を含有していることを特徴とする請求項1に記載の床用接着剤組成物。
【請求項5】
非表面処理炭酸カルシウムの総表面積と、非表面処理炭酸カルシウム及び表面処理炭酸カルシウムの総表面積との比率[非表面処理炭酸カルシウムの総表面積/(非表面処理炭酸カルシウム及び表面処理炭酸カルシウムの総表面積)]が0.1~0.6であることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項4に記載の床用接着剤組成物。
【請求項6】
シランカップリング剤は、アミノシランカップリング剤及び/又はエポキシシランカップリング剤を含有していることを特徴とする請求項3に記載の床用接着剤組成物。
【請求項7】
非表面処理炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒子径が1~10μmで且つ表面処理炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒子径が0.01~1.0μmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の床用接着剤組成物。
【請求項8】
湿気硬化性樹脂の数平均分子量が8000~20000であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の床用接着剤組成物。
【請求項9】
床下地材と、
上記床下地材上に敷設された床仕上げ材とを含む床構造であって、
互いに隣接する床仕上げ材において、一方の床仕上げ材の対向端面に形成された溝部に、他方の床仕上げ材の対向端面に形成された突条部が嵌合されており、
上記床仕上げ材の溝部とこの溝部に嵌合された突条部とは、請求項1に記載の床用接着剤組成物の硬化物によって接着一体化されていることを特徴とする床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気により硬化する床用接着剤組成物及びこの床用接着剤組成物を用いた床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、接着剤を用いて、合板及びモルタルなどの下地材上に床仕上げ材を敷設する方法が用いられている。
【0003】
又、近年、床暖房が広く普及している。床暖房が施工されている床構造体においては、床下地材上に床暖房パネルが配設され、この床暖房パネル上に接着剤を用いて床仕上げ材が敷設一体されることによって床構造体が構成されている。
【0004】
床仕上げ材は、帯状に形成されており、幅方向の一端面には、長手方向に溝部が形成されている一方、幅方向の他端面には、上記溝部に嵌合可能な突条部が形成されている。そして、複数枚の床仕上げ材を一端面の溝部に他端面の突条部を嵌合させて接合させながら順次、接着剤によって一体化することによって床面を構築している。
【0005】
このような接着剤としては、特許文献1に、(A)珪素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋し得る珪素含有基を有するオキシアルキレン系重合体100質量部、(B)分子中に珪素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋し得る珪素含有基及びアミノ基を有する化合物又は該化合物のイミン誘導体0.1~20質量部、(C)4価の錫化合物 0.1~10質量部、及び(D)分子中に1個のエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物1~100質量部、を含有する木質床材用1液型常温湿気硬化性接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-59127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、床仕上げ材を接着剤を用いて接合一体化するには、床仕上げ材同士の接合位置に合わせて床下地材上に接着剤を塗工した後、床下地材上に床仕上げ材を敷設する。この時、互いに隣接する床仕上げ材において、溝部に突条部を嵌合させる際に床下地上に塗工した接着剤を溝部と突条部との対向面間に進入させ、この進入させた接着剤によって床仕上げ材同士を一体化している。
【0008】
しかしながら、上記木質床材用1液型常温湿気硬化性接着剤組成物は、床下地材上に塗工した後、床仕上げ材を敷設するまでの間に流動し、床下地材上の所定位置への塗工状態を維持することができず、床仕上げ材同士の接合部に接着剤を正確に塗工することができないという問題点を有している。
【0009】
更に、上記木質床材用1液型常温湿気硬化性接着剤組成物は、床下地上に敷設した床仕上げ材における互いに嵌合させる溝部及び突条部間に形成された隙間に十分に進入することができず、床仕上げ材同士の接着一体化が不十分であるという問題点も有する。
【0010】
又、床暖房パネル上に接着剤を用いて床仕上げ材が敷設一体される場合、床暖房パネルの使用及び不使用によって床仕上げ材が加熱及び放熱される。床仕上げ材は、加熱及び放熱に伴って膨張、収縮するため、床仕上げ材間の隙間も伸縮するが、上記木質床材用1液型常温湿気硬化性接着剤組成物は、硬化物の強度は高いものの、床仕上げ材間の隙間の伸縮に追従することができず、床仕上げ材同士の一体化が経時的に低下するという問題点を有している。
【0011】
木質床材用1液型常温湿気硬化性接着剤組成物は、硬化物の強度は大きいものの、ダンベルの伸び率が30~40%と小さくて変形追従性に乏しく、床仕上げ材の乾燥に起因した収縮時に生じる大きな剪断応力を吸収することができず、床仕上げ材の接合部分において接着破断が生じるという問題点を有している。
【0012】
本発明は、所望箇所に塗工した状態を維持することができる静的非流動性(以下、単に「静的非流動性」ということがある。)と、床仕上げ材の接合部に形成された隙間に円滑に進入する動的流動性(以下、単に「動的流動性」ということがある。)という相反する特性の双方に優れていると共に、加熱及び放熱に伴う接合部の伸縮に円滑に追従して優れた接着性を維持することができる床用接着剤組成物及びこの床用接着剤組成物を用いた床構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の床用接着剤組成物は、
湿気硬化性樹脂と、
表面処理が施されていない非表面処理炭酸カルシウム及び表面処理が施された表面処理炭酸カルシウムを含む充填材とを含む床用接着剤組成物であって、
上記床用接着剤組成物の硬化物について、CPMG法によるパルスNMR測定によって測定される80℃調温雰囲気において2成分分析を行った場合のS成分の緩和時間が30ms以上であり、
JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数1rpmの条件にて測定された粘度が400000mPa・s以上であると共に、
JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数1rpmの条件にて測定された粘度と、JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数10rpmの条件にて測定された粘度との比(回転数1rpmの条件にて測定された粘度/回転数10rpmの条件にて測定された粘度)が4以上であることを特徴とする。
【0014】
[湿気硬化性樹脂]
床用接着剤組成物は、湿気硬化性樹脂を含む。床用接着剤組成物は、湿気硬化性樹脂が空気中の水分又は被着体に含まれている水分によって硬化して被着体同士を接着一体化する。
【0015】
湿気硬化性樹脂としては、加水分解性シリル基を有する重合体、加水分解架橋性シリコーン系重合体、加水分解性イソシアネート基を有する重合体などが挙げられ、加水分解性シリル基を有する重合体を含むことが好ましい。
【0016】
加水分解性シリル基を含有する重合体は、水の存在下にて、加水分解性シリル基の加水分解性基が加水分解してシラノール基(≡SiOH)を生成する。そして、シラノール基同士が脱水縮合して架橋構造が形成される。加水分解性イソシアネート基を有する重合体は、加水分解性イソシアネート基が水の存在下にて、二酸化炭素を生成しながら尿素結合(-NHCONH-)を生成して架橋構造を形成する。
【0017】
加水分解性シリル基とは、珪素原子に1~3個の加水分解性基が結合してなる基である。加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基、オキシム基などが挙げられる。
【0018】
なかでも、加水分解性シリル基としては、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;プロピルジメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。
【0019】
加水分解性イソシアネート基とは、加水分解によって尿素結合(-NHCONH-)を形成し得るイソシアネート基をいう。
【0020】
湿気硬化性樹脂の数平均分子量は、8000以上がより好ましく、10000以上がより好ましい。湿気硬化性樹脂の数平均分子量は、20000以下が好ましく、18000以下がより好ましく、15000以下がより好ましい。湿気硬化性樹脂の数平均分子量が8000以上であると、床用接着剤組成物の静的非流動性に優れ、床用接着剤組成物を所望箇所に塗工して床仕上げ材同士を強固に接着一体化することができる。湿気硬化性樹脂の数平均分子量が20000以下であると、床用接着剤組成物の動的流動性に優れ、床仕上げ材同士を強固に接着一体化することができる。
【0021】
なお、本発明において、重合体の数平均分子量及び重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、重合体6~7mgを採取し、採取した重合体を試験管に供給した上で、試験管に0.05質量%のBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を含むo-DCB(オルトジクロロベンゼン)溶液を加えて重合体の濃度が1mg/mLとなるように希釈して希釈液を作製する。
【0022】
溶解濾過装置を用いて145℃にて回転速度25rpmにて1時間に亘って上記希釈液を振とうさせて重合体をBHTを含むo-DCB溶液に溶解させて測定試料とする。この測定試料を用いてGPC法によって重合体の数平均分子量及び重量平均分子量を測定することができる。
【0023】
なお、本発明において、重合体における数平均分子量及び重量平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o-DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500~8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
【0024】
[加水分解性シリル基を有する重合体]
加水分解性シリル基を有する重合体としては、特に限定されず、例えば、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体、加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体、加水分解性シリル基を有するウレタン系重合体、加水分解性シリル基を有するポリオレフィン系重合体などが挙げられる。加水分解性シリル基を有する重合体としては、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体を含有していることが好ましい。なお、加水分解性シリル基を有する重合体は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0025】
湿気硬化性樹脂中における加水分解性シリル基を有する重合体の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0026】
加水分解性シリル基を有する重合体の数平均分子量は、8000以上が好ましく、10000以上がより好ましい。加水分解性シリル基を有する重合体の数平均分子量は、20000以下がより好ましく、18000以下がより好ましく、15000以下がより好ましい。加水分解性シリル基を有する重合体の数平均分子量が8000以上であると、床用接着剤組成物の静的非流動性に優れ、床用接着剤組成物を所望箇所に塗工して床仕上げ材同士を強固に接着一体化することができる。加水分解性シリル基を有する重合体の数平均分子量が20000以下であると、床用接着剤組成物の動的流動性に優れ、床仕上げ材同士を強固に接着一体化することができる。
【0027】
[加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体]
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体において、加水分解性シリル基は、アルコキシシリル基が好ましく、ジアルコキシシリル基がより好ましく、ジメトキシシリル基がより好ましく、プロピルジメトキシシリル基がより好ましい。
【0028】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体中における加水分解性シリル基の数は、1分子中に平均して、1個以上が好ましく、1.1個以上がより好ましく、1.2個以上がより好ましく、1.5個以上がより好ましく、2.0個以上がより好ましい。加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体中における加水分解性シリル基の数は、4個以下が好ましい。加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体における加水分解性シリル基の数が上記範囲内にあると、静的非流動性及び動的流動性の双方に優れた床用接着剤組成物を得ることができると共に、床用接着剤組成物の硬化物は、接合部の伸縮に円滑に追従して優れた接着性を維持する常態せん断接着性(以下、単に「常態せん断接着性」ということがある。)を有する。加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体は、その主鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0029】
なお、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、1H-NMRにより求められるポリアルキレンオキサイド系重合体中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるポリアルキレンオキサイド系重合体の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0030】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体を構成しているポリアルキレンオキサイドとしては、主鎖が、一般式:-(R1-O)-(式中、R1は炭素数が1~14のアルキレン基を表し、mは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。ポリアルキレンオキサイド系重合体の主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。本発明において、主鎖とは、分子中において最も長い分子鎖をいう。分子鎖の長さは、分子鎖を構成している原子数で判断され、原子数が多いほど分子鎖が長いと判断される。
【0031】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体の主鎖において、ポリアルキレンオキサイドの含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0032】
本発明において、アルキレン基とは、脂肪族飽和炭化水素中の異なる2個の炭素原子に結合する2個の水素原子を除いて生じる2価の原子団であり、直鎖状及び分岐状の双方の原子団を含む。
【0033】
アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基[-CH(CH3)-CH2-]、トリメチレン基[-CH2-CH2-CH2-]、ブチレン基、アミレン基[-(CH25-]、ヘキシレン基などが挙げられる。
【0034】
ポリアルキレンオキサイド系重合体の主鎖骨格としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド-ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリプロピレンオキサイドが好ましい。ポリプロピレンオキサイドによれば、床用接着剤組成物の動的流動性を向上させることができる。
【0035】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体の数平均分子量は、8000以上がより好ましく、10000以上がより好ましい。加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド系重合体の数平均分子量は、20000以下がより好ましく、18000以下がより好ましく、15000以下がより好ましい。ポリアルキレンオキサイド系重合体の数平均分子量が8000以上であると、床用接着剤組成物の静的非流動性に優れ、床用接着剤組成物を所望箇所に塗工して床仕上げ材同士を強固に接着一体化することができる。ポリアルキレンオキサイド系重合体の数平均分子量が20000以下であると、床用接着剤組成物の動的流動性に優れ、床仕上げ材同士を強固に接着一体化することができる。
【0036】
加水分解性シリル基を有しているポリアルキレンオキサイド系重合体は、市販されているものを用いることができる。例えば、加水分解性シリル基を有しているポリアルキレンオキサイド系重合体としては、カネカ社製 商品名「MSポリマー EST280」、商品名「MSポリマー S-203」、「MSポリマー S-303」、「MSポリマー S-303H」、「サイリルポリマー SAT-200」、「サイリルポリマー SAT-350」及び「サイリルポリマー SAT-400」などが挙げられる。加水分解性シリル基を有しているポリアルキレンオキサイド系重合体としては、旭硝子社製 商品名「エクセスター ESS-6250」、商品名「エクセスター ESS-3620」、「エクセスター ESS-2420」、「エクセスター ESS2410」及び「エクセスター ESS3430」などが挙げられる。
【0037】
主鎖がポリプロピレンオキサイドで且つポリプロピレンオキサイドの末端に(メトキシメチル)ジメトキシシリル基を有しているポリアルキレンオキサイド系重合体は、カネカ社から商品名「HS-2」にて市販されている。
【0038】
主鎖がポリプロピレンオキサイドで且つポリプロピレンオキサイドの末端にイソプロピルジメトキシメチルシリル基を有しているポリアルキレンオキサイド系重合体は、カネカ社から商品名「SAX720」にて市販されている。
【0039】
湿気硬化性樹脂中における加水分解性シリル基を有しているポリアルキレンオキサイド系重合体の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0040】
[加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体]
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体に含有されている加水分解性シリル基としては、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシシリル基が好ましく、トリアルコキシシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が特に好ましい。
【0041】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体において、1分子中の加水分解性シリル基の平均個数は、1個以上が好ましく、2個以上がより好ましい。加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体において、1分子中の加水分解性シリル基の平均個数は、4個以下が好ましく、2.5個以下がより好ましい。加水分解性シリル基の数が上記範囲内であると、静的非流動性及び動的流動性の双方に優れた床用接着剤組成物を得ることができる。加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体は、その主鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0042】
アクリル系重合体への加水分解性シリル基の導入方法としては、特に限定されず、例えば、主鎖骨格を構成する単量体の共重合体に不飽和基を導入した後、加水分解性シリル基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する方法などが挙げられる。
【0043】
なお、加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、1H-NMRにより求められる加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められる加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体の数平均分子量に基づいて算出する。
【0044】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体の主鎖骨格は、メチル(メタ)アクリレート及びブチル(メタ)アクリレートを含む単量体の共重合体が好ましく、メチルメタクリレート及びブチルアクリレートを含む単量体の共重合体がより好ましく、メチルメタクリレート及びn-ブチルアクリレートを含む単量体の共重合体がより好ましい。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0045】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体において、主鎖骨格を構成している重合体に用いられる単量体は、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、及びブチルメタクリレートの他に、さらに他のモノマーを含んでいてもよい。他のモノマーとしては、例えば、スチレン、インデン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、p-クロロメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニルなどのビニルエステル基を持つ化合物、無水マレイン酸、N-ビニルピロリドン、N-ビニルモルフォリン、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、tert-アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4-ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン-1,4-ジオール-ジビニルエーテル、ヘキサン-1,6-ジオール-ジビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール-ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4-ビニロキシ)ブチル、グルタル酸ジ(4-ビニロキシ)ブチル、コハク酸ジ(4-ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、3-アミノプロピルビニルエーテル、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテルなどのビニロキシ基を持つ化合物などを挙げることができる。これらのモノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0046】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体の重合方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法などの各種重合法などが挙げられる。
【0047】
[充填材]
床用接着剤組成物は、充填材を含有している。床用接着剤組成物は、表面処理が施されていない非表面処理炭酸カルシウム及び表面処理が施された表面処理炭酸カルシウムを含む充填材を含有していることによって、床用接着剤組成物は、静的非流動性及び動的流動性の双方に優れていると共に、接合部の伸縮に円滑に追従して優れた接着性を維持する常態せん断接着性に優れている。
【0048】
充填材としては、炭酸カルシウム以外の他の充填材を含有していてもよい。このような充填材としては、特に限定されず、例えば、カーボンブラック、ベントナイト、有機ベントナイト、シラスバルーン、ガラスミクロバルーン、フェノール樹脂や塩化ビニリデン樹脂などの有機ミクロバルーン、ポリ塩化ビニル(PVC)粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末など樹脂粉末などが挙げられる。なお、充填材は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0049】
炭酸カルシウムとしては、天然石を粉砕して得られる重質炭酸カルシウム、天然石から化学的に合成して得られる合成炭酸カルシウム(例えば、沈降性炭酸カルシウム、コロライド炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム)などが挙げられる。
【0050】
表面処理炭酸カルシウムは、床用接着剤組成物のチクソトロピー性の向上効果が高いので、表面処理が施されたコロイダル炭酸カルシウムが好ましい。
【0051】
非表面処理炭酸カルシウムは、床用接着剤組成物の増粘抑制効果に優れているので、表面処理が施されていない重質炭酸カルシウムが好ましい。
【0052】
表面処理が施された炭酸カルシウムと表面処理が施されていない炭酸カルシウムとを併用することによって、床用接着剤組成物のチクソトロピー性を向上させて優れた動的流動性を発現させ、床仕上げ材の接合部における溝部と突条部との隙間に床用接着剤組成物を十分に充填させることができ、床仕上げ材同士を強固に接合一体化することができる。
【0053】
重質炭酸カルシウムは、例えば、天然のチョーク(白亜)、大理石、石灰石などの天然の炭酸カルシウムを微粉状に粉砕することにより得ることができる。
【0054】
合成炭酸カルシウムは、例えば、石灰石を原料として用い、化学的反応を経て製造することができる。
【0055】
充填材中における炭酸カルシウムの含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましく、100質量%が好ましい。
【0056】
充填材は、表面処理が施されていない炭酸カルシウム(非表面処理炭酸カルシウム)と、表面処理が施された炭酸カルシウム(表面処理炭酸カルシウム)とを含有している。充填材が、非表面処理炭酸カルシウム及び表面処理炭酸カルシウムを含有していることによって、床用接着剤組成物は、静的非流動性及び動的流動性の双方により優れており、床仕上げ材の接合部における溝部と突条部との隙間に床用接着剤組成物を十分に充填させることができ、床仕上げ材同士を強固に接合一体化することができる(以下、単に「嵌合接着性」ということがある)。更に、充填材が、非表面処理炭酸カルシウム及び表面処理炭酸カルシウムを含有していることによって、床用接着剤組成物の保存中において、湿気硬化性樹脂の影響で粘度が上昇し、又は、相分離が生じることで粘度が低下することを低減することができ、床用接着剤組成物の貯蔵安定性を向上させることができる。床用接着剤組成物の粘度を調整するために低分子量溶剤を用いた場合にあっても、床用接着剤組成物は、優れた貯蔵安定性を有する。
【0057】
表面処理炭酸カルシウムは、その表面に表面処理が施されている。表面処理炭酸カルシウムの表面処理は、特に限定されないが、脂肪酸、脂肪酸エステル又は脂肪酸金属塩によって処理されていることが好ましく、脂肪酸によって処理されていることがより好ましい。
【0058】
なお、非表面処理炭酸カルシウムは、表面処理を施す前の炭酸カルシウムを用いることができる。
【0059】
上記脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アライン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、オブッシル酸、カルロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、モリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレビン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸、ソルビン酸、リノール酸などが挙げられ、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が好ましい。
【0060】
上記脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ラウリル、パルミチン酸ステアリル、パルミチン酸ラウリルなどが挙げられる。
【0061】
上記脂肪酸金属塩としては、例えば、上記脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられ、ラウリン酸のナトリウム塩、ミリスチン酸のナトリウム塩、パルミチン酸のナトリウム塩、ステアリン酸のナトリウム塩又はオレイン酸のナトリウム塩が好ましい。
【0062】
表面処理炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒子径は、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましく、0.03μm以上がより好ましい。表面処理炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒子径は、1.0μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.1μm以下がより好ましい。表面処理炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒子径が0.01μm以上であると、動的流動性を向上させることができ、床仕上げ材同士を強固に接着一体化することができる。表面処理炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒子径が1.0μm以下であると、床用接着剤組成物のチクソトロピー性及び貯蔵安定性が向上すると共に、床用接着剤組成物の静的非流動性が向上し、床用接着剤組成物を所定位置に留まらせて、床用接着剤組成物を所望箇所に正確に充填することができる。
【0063】
非表面処理炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒子径は、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上がより好ましい。非表面処理炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒子径は、10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましい。非表面処理炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒子径が1μm以上であると、動的流動性を向上させることができ、床仕上げ材同士を強固に接着一体化することができる。非表面処理炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒子径が10μm以下であると、床用接着剤組成物のチクソトロピー性及び貯蔵安定性が向上すると共に、床用接着剤組成物の静的非流動性が向上し、床用接着剤組成物を所定位置に留まらせて、床用接着剤組成物を所望箇所に正確に充填することができる。
【0064】
なお、炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒子径は、炭酸カルシウム1g当たりの比表面積を用いて下記式に基づいて算出された値をいう。本発明において、炭酸カルシウム1g当たりの比表面積は、JIS Z8830に準拠して測定された値をいう。炭酸カルシウム1g当たりの比表面積は、例えば、島津製作所から商品名「SS-100型」にて市販されている粉体比表面積測定装置を用いることができる。
炭酸カルシウムの平均粒子径(μm)
=6×10000/[比重×比表面積(cm2/g)]
【0065】
非表面処理炭酸カルシウムの総表面積と、非表面処理炭酸カルシウム及び表面処理炭酸カルシウムの総表面積との比率[非表面処理炭酸カルシウムの総表面積/(非表面処理炭酸カルシウム及び表面処理炭酸カルシウムの総表面積)](以下、「表面積比率」ということがある。)は、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましい。非表面処理炭酸カルシウムの総表面積と、非表面処理炭酸カルシウム及び表面処理炭酸カルシウムの総表面積との比率[非表面処理炭酸カルシウムの総表面積/(非表面処理炭酸カルシウム及び表面処理炭酸カルシウムの総表面積)]は、0.6以下が好ましく、0.55以下がより好ましい。
【0066】
炭酸カルシウム1g当たりの比表面積は、上述と同様の要領で測定された値である。非表面処理炭酸カルシウムの総表面積と、非表面処理炭酸カルシウム及び表面処理炭酸カルシウムの総表面積は、下記式に基づいて算出された値である。
【0067】
非表面処理炭酸カルシウムの総表面積
=非表面処理炭酸カルシウムの1g当たりの比表面積(cm2/g)
×床用接着剤組成物に含まれている非表面処理炭酸カルシウムの含有量(g)
【0068】
非表面処理炭酸カルシウム及び表面処理炭酸カルシウムの総表面積
=非表面処理炭酸カルシウムの1g当たりの比表面積(cm2/g)
×床用接着剤組成物に含まれている非表面処理炭酸カルシウムの含有量(g)
+表面処理炭酸カルシウムの1g当たりの比表面積(cm2/g)
×床用接着剤組成物に含まれている表面処理炭酸カルシウムの含有量(g)
【0069】
表面積比率が0.1以上であると、床用接着剤組成物中の湿気硬化性樹脂の割合を低減させた上で、床用接着剤組成物の粘度を低下させることができ、動的流動性がより向上し、床仕上げ材同士の接合部に円滑に床用接着剤組成物を円滑に侵入させて、床仕上げ材同士を強固に接合一体化することができると共に、床用接着剤組成物中の湿気硬化性樹脂の割合を低減させることによって、床用接着剤組成物の保存中における粘度上昇を低減し、床用接着剤組成物の貯蔵安定性を向上させることができる。更に、床用接着剤組成物の硬化物は、繰り返し加えられる加熱及び放熱によっても優れた可撓性を維持し、床仕上げ材の接合物の伸縮に円滑に追従して床仕上げ材同士を長期間に亘って安定的に接合一体化した状態を維持することができる。
【0070】
表面積比率が0.6以下であると、床用接着剤組成物のチクソトロピー性が向上し、床下地材上の所望箇所に精度良く塗工することができると共に、床下地材上に塗工した床用接着剤組成物は、塗工された箇所に良好に留まることができ、床仕上げ材の接合部に床用接着剤組成物を精度良く供給し、床仕上げ材同士を強固に接合一体化することができる。更に、床用接着剤組成物の保存中における相分離を低減し、床用接着剤組成物の貯蔵安定性を向上させることができる。
【0071】
非表面処理炭酸カルシウム1g当たりの比表面積は、5000cm2/g以上が好ましく、7000cm2/g以上がより好ましく、9000cm2/g以上がより好ましい。非表面処理炭酸カルシウム1g当たりの比表面積は、20000cm2/g以下が好ましく、18000cm2/g以下がより好ましく、16000cm2/g以下がより好ましい。非表面処理炭酸カルシウム1g当たりの比表面積が5000cm2/g以上であると、床用接着剤組成物のチクソトロピー性が向上し、床下地材上の所望箇所に精度良く塗工することができると共に、床下地材上に塗工した床用接着剤組成物は、塗工された箇所に良好に留まることができ、床仕上げ材の接合部に床用接着剤組成物を精度良く供給し、床仕上げ材同士を強固に接合一体化することができる。非表面処理炭酸カルシウム1g当たりの比表面積が20000cm2/g以下であると、床用接着剤組成物の粘度を低下させることができ、動的流動性がより向上し、床仕上げ材同士の接合部に円滑に床用接着剤組成物を円滑に侵入させて、床仕上げ材同士を強固に接合一体化することができる。更に、床用接着剤組成物の硬化物は、繰り返し加えられる加熱及び放熱によっても優れた可撓性を維持し、床仕上げ材の接合物の伸縮に円滑に追従して床仕上げ材同士を長期間に亘って安定的に接合一体化した状態を維持することができる。
【0072】
表面処理炭酸カルシウム1g当たりの比表面積は、80000cm2/g以上が好ましく、100000cm2/g以上がより好ましく、120000cm2/g以上がより好ましい。表面処理炭酸カルシウム1g当たりの比表面積は、250000cm2/g以下が好ましく、230000cm2/g以下がより好ましく、200000cm2/g以下がより好ましく、180000cm2/g以下がより好ましい。表面処理炭酸カルシウム1g当たりの比表面積が80000cm2/g以上であると、床用接着剤組成物のチクソトロピー性が向上し、床下地材上の所望箇所に精度良く塗工することができると共に、床下地材上に塗工した床用接着剤組成物は、塗工された箇所に良好に留まることができ、床仕上げ材の接合部に床用接着剤組成物を精度良く供給し、床仕上げ材同士を強固に接合一体化することができる。表面処理炭酸カルシウム1g当たりの比表面積が250000cm2/g以下であると、床用接着剤組成物の粘度を低下させることができ、動的流動性がより向上し、床仕上げ材同士の接合部に円滑に床用接着剤組成物を円滑に侵入させて、床仕上げ材同士を強固に接合一体化することができる。更に、床用接着剤組成物の硬化物は、繰り返し加えられる加熱及び放熱によっても優れた可撓性を維持し、床仕上げ材の接合物の伸縮に円滑に追従して床仕上げ材同士を長期間に亘って安定的に接合一体化した状態を維持することができる。
【0073】
床用接着剤組成物中における充填材の含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して150質量部以上が好ましく、200質量部以上がより好ましい。床用接着剤組成物中における充填材の含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して300質量部以下が好ましい。床用接着剤組成物中における充填材の含有量が150質量部以上であると、床用接着剤組成物の硬化物は、繰り返し加えられる加熱及び放熱によっても優れた可撓性を維持し、床仕上げ材の接合物の伸縮に円滑に追従して床仕上げ材同士を長期間に亘って安定的に接合一体化した状態を維持することができる。床用接着剤組成物中における充填材の含有量が300質量部以下であると、床用接着剤組成物の硬化物は、繰り返し加えられる加熱及び放熱によっても優れた可撓性を維持し、床仕上げ材の接合物の伸縮に円滑に追従して床仕上げ材同士を長期間に亘って安定的に接合一体化した状態を維持することができる。
【0074】
床用接着剤組成物中における非表面処理炭酸カルシウムの含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して50質量部以上が好ましく、100質量部以上がより好ましく、150質量部以上がより好ましい。床用接着剤組成物中における非表面処理炭酸カルシウムの含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して400質量部以下が好ましく、350質量部以下がより好ましく、300質量部以下がより好ましい。非表面処理炭酸カルシウムの含有量が50質量部以上であると、床用接着剤組成物の粘度を低下させることができ、動的流動性がより向上し、床仕上げ材同士の接合部に円滑に床用接着剤組成物を円滑に侵入させて、床仕上げ材同士を強固に接合一体化することができる。非表面処理炭酸カルシウムの含有量が400質量部以下であると、床用接着剤組成物の硬化物は、繰り返し加えられる加熱及び放熱によっても優れた可撓性を維持し、床仕上げ材の接合物の伸縮に円滑に追従して床仕上げ材同士を長期間に亘って安定的に接合一体化した状態を維持することができる。
【0075】
床用接着剤組成物中における表面処理炭酸カルシウムの含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上がより好ましい。床用接着剤組成物中における表面処理炭酸カルシウムの含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して100質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、40質量部以下がより好ましい。表面処理炭酸カルシウムの含有量が5質量部以上であると、床用接着剤組成物のチクソトロピー性が向上し、床下地材上の所望箇所に精度良く塗工することができると共に、床下地材上に塗工した床用接着剤組成物は、塗工された箇所に良好に留まることができ、床仕上げ材の接合部に床用接着剤組成物を精度良く供給し、床仕上げ材同士を強固に接合一体化することができる。表面処理炭酸カルシウムの含有量が100質量部以下であると、床用接着剤組成物の粘度を低下させることができ、動的流動性がより向上し、床仕上げ材同士の接合部に円滑に床用接着剤組成物を円滑に侵入させて、床仕上げ材同士を強固に接合一体化することができる。更に、床用接着剤組成物の硬化物は、繰り返し加えられる加熱及び放熱によっても優れた可撓性を維持し、床仕上げ材の接合物の伸縮に円滑に追従して床仕上げ材同士を長期間に亘って安定的に接合一体化した状態を維持することができる。
【0076】
[低分子量重合体]
床用接着剤組成物は、低分子量重合体を含有していることが好ましく、低分子量ポリアルキレンオキサイド系重合体を含有していることがより好ましい。低分子量重合体は、数平均分子量が400~6000の重合体を意味する。低分子量重合体は、1分子中における加水分解性シリル基の平均個数が0~1.0個である低分子量重合体が好ましい。低分子量重合体は、主鎖の一方の末端にのみ加水分解性シリル基を有することが好ましい。低分子量重合体は、分子中に加水分解性シリル基を有しない低分子量重合体、主鎖の一方の末端にのみ加水分解性シリル基を有する低分子量重合体、又は、分子中に加水分解性シリル基を有しない低分子量重合体と主鎖の一方の末端にのみ加水分解性シリル基を有する低分子量重合体との混合物の何れであってもよい。低分子量重合体は、他の重合体と架橋構造を形成しない。床用接着剤組成物が低分子量重合体を含有していることによって、床用接着剤組成物の硬化物に可撓性を付与することができ、床用接着剤組成物の硬化物は、床仕上げ材の接合部の伸縮に円滑に追従することができ、床仕上げ材同士を長期間に亘って安定的に接合一体化することができる。
【0077】
低分子量ポリアルキレンオキサイド系重合体を構成しているポリアルキレンオキサイドとしては、主鎖が、一般式:-(R2-O)n-(式中、R2は炭素数が1~14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。ポリアルキレンオキサイド系重合体の主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。本発明において、主鎖とは、分子中において最も長い分子鎖をいう。分子鎖の長さは、分子鎖を構成している原子数で判断され、原子数が多いほど分子鎖が長いと判断される。
【0078】
低分子量ポリアルキレンオキサイド系重合体の主鎖において、ポリアルキレンオキサイドの含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0079】
アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基[-CH(CH3)-CH2-]、トリメチレン基[-CH2-CH2-CH2-]、ブチレン基、アミレン基[-(CH25-]、ヘキシレン基などが挙げられる。
【0080】
低分子量ポリアルキレンオキサイド系重合体の主鎖骨格としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド-ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリプロピレンオキサイドが好ましい。ポリプロピレンオキサイドによれば、床用接着剤組成物の動的流動性を向上させることができる。
【0081】
低分子量ポリアルキレンオキサイド系重合体の数平均分子量は、400以上であり、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましい。低分子量ポリアルキレンオキサイド系重合体の数平均分子量は、6000以下であり、5000以下が好ましく、4000以下がより好ましい。低分子量ポリアルキレンオキサイド系重合体の数平均分子量が400以上であると、床用接着剤組成物の静的非流動性に優れ、床用接着剤組成物を所望箇所に塗工して床仕上げ材同士を強固に接着一体化することができる。低分子量ポリアルキレンオキサイド系重合体の数平均分子量が6000以下であると、床用接着剤組成物の動的流動性に優れ、床仕上げ材同士を強固に接着一体化することができる。
【0082】
床用接着剤組成物において、低分子量重合体の含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。床用接着剤組成物において、低分子量重合体の含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。低分子量重合体の含有量が5質量部以上であると、床用接着剤組成物の硬化物の可塑性を向上させることができ、床用接着剤組成物の硬化物が、床仕上げ材の接合部の伸縮に円滑に追従することができ、床仕上げ材を長期間に亘って安定的に接合一体化させることができる。低分子量重合体の含有量が50質量部以下であると、床用接着剤組成物の硬化性が向上すると共に、貯蔵時に床用接着剤組成物の構成成分の分離が抑制され、床用接着剤組成物は優れた貯蔵安定性を有し、床用接着剤組成物は、長期間に亘って優れた動的流動性及び静的非流動性を保持することができ、嵌合接着性が向上し、床用接着剤組成物による床仕上げ材の接合一体化をより強固に行うことができる。
【0083】
[シランカップリング剤]
床用接着剤組成物は、シランカップリング剤を含有していることが好ましい。床用接着剤組成物がシランカップリング剤を含有していることによって、塗工されて外気に接触した後にあっても、優れた動的流動性を維持し、床仕上げ材同士を強固に接着一体化することができる。
【0084】
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、アルキルシランカップリング剤、アリールシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、アクリルシランカップリング剤、及びイソシアネートシランカップリング剤などが挙げられ、エポキシシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤が好ましく、エポキシシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤及びアミノシランカップリング剤を含有していることが好ましい。なお、シランカップリング剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0085】
床用接着剤組成物中にアミノシランカップリング剤が含有されていると、床用接着剤組成物の木材などの有機系基材への接着性が向上して好ましい。床用接着剤組成物にエポキシシランカップリング剤が含有されていると、金属などの無機系基材への接着性が向上すると共に、床用接着剤組成物の硬化物の耐水性が向上し好ましい。
【0086】
エポキシシランカップリング剤は、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、エポキシ基を有する官能基とを含む化合物を意味する。エポキシシランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0087】
ビニルシランカップリング剤は、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、ビニル基とを含む化合物を意味する。ビニルシランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルトリアルコキシシラン、p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリルシランカップリング剤などが挙げられる。
【0088】
アクリルシランカップリング剤は、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、アクリロキシ基[CH2=CHC(O)O-]又はメタクリロキシ基[CH2=C(CH3)C(O)O-]とを有する化合物を意味する。アクリルシランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0089】
アミノシランカップリング剤は、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、アミノ基を有する官能基とを含む化合物を意味する。アミノシランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0090】
床用接着剤組成物中におけるアミノシランカップリング剤の含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上が好ましい。床用接着剤組成物中におけるアミノシランカップリング剤の含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、6質量部以下がより好ましい。アミノシランカップリング剤の含有量が0.5質量部以上であると、床用接着剤組成物の硬化物は、接合部の伸縮に円滑に追従して優れた接着性を維持する常態せん断接着性を有する。アミノシランカップリング剤の含有量が10質量部以下であると、床用接着剤組成物は、優れた貯蔵安定性を有し、長期間に亘って保存された後においても、優れた動的流動性を維持し、床仕上げ材同士を強固に接着一体化することができる。
【0091】
床用接着剤組成物中におけるエポキシシランカップリング剤の含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.25質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。床用接着剤組成物中におけるエポキシシランカップリング剤の含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して2.5質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましく、1.5質量部以下がより好ましい。エポキシシランカップリング剤の含有量が0.1質量部以上であると、床用接着剤組成物の硬化物は、接合部の伸縮に円滑に追従して優れた接着性を維持する常態せん断接着性を有する。エポキシシランカップリング剤の含有量が2.5質量部以下であると、床用接着剤組成物は、優れた貯蔵安定性を有し、長期間に亘って保存された後においても、優れた動的流動性を維持し、床仕上げ材同士を強固に接着一体化することができる。
【0092】
床用接着剤組成物中におけるビニルシランカップリング剤の含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。床用接着剤組成物中におけるビニルシランカップリング剤の含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、6質量部以下がより好ましい。ビニルシランカップリング剤の含有量が0.5質量部以上であると、床用接着剤組成物は、優れた貯蔵安定性を有し、長期間に亘って保存された後においても、優れた動的流動性を維持し、床仕上げ材同士を強固に接着一体化することができる。ビニルシランカップリング剤の含有量が10質量部以下であると、床用接着剤組成物は優れた硬化性を有し、冬場の低温環境下においても迅速に硬化して床仕上げ材同士を強固に接着一体化することができる。
【0093】
アミノシランカップリング剤の含有量とエポキシシランカップリング剤の含有量の含有量の質量比(アミノシランカップリング剤の含有量/エポキシシランカップリング剤の含有量)は、1.3以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上がより好ましい。アミノシランカップリング剤の含有量とエポキシシランカップリング剤の含有量の含有量の質量比(アミノシランカップリング剤の含有量/エポキシシランカップリング剤の含有量)は、10以下が好ましく、9以下がより好ましく、8以下がより好ましく、6以下がより好ましい。アミノシランカップリング剤の含有量とエポキシシランカップリング剤の含有量の含有量の質量比(アミノシランカップリング剤の含有量/エポキシシランカップリング剤の含有量)が1以上であると、床用接着剤組成物は、優れた貯蔵安定性を有し、長期間に亘って保存された後においても、優れた動的流動性を維持し、床仕上げ材同士を強固に接着一体化することができる。アミノシランカップリング剤の含有量とエポキシシランカップリング剤の含有量の含有量の質量比(アミノシランカップリング剤の含有量/エポキシシランカップリング剤の含有量)が10以下であると、床用接着剤組成物の硬化物は、接合部の伸縮に円滑に追従して優れた接着性を維持する常態せん断接着性を有する。
【0094】
[シラノール縮合触媒]
床用接着剤組成物は、シラノール縮合触媒を含有していることが好ましい。シラノール縮合触媒とは、床用接着剤組成物を構成している化合物に含まれている加水分解性シリル基が加水分解することにより形成されたシラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。なお、シラノール基とは、ヒドロキシ基がケイ素原子に直接結合してなる三価の原子団(≡Si-OH)を意味する。
【0095】
シラノール縮合触媒としては、例えば、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサン、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレートビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル酸オキサイド、アルコキシシリル基を有する錫化合物、テトラ-n-ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート、ジブチルアミン-2-エチルヘキソエートなどが挙げられ、床用接着剤組成物の貯蔵安定性が向上するので、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサンが好ましい。シラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0096】
床用接着剤組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がより好ましい。床用接着剤組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して6質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、4質量部以下がより好ましい。シラノール縮合触媒の含有量が0.1質量部以上であると、床用接着剤組成物の硬化性が向上する。シラノール縮合触媒の含有量が6質量部以下であると、床用接着剤組成物は、塗工されて外気に接触した後にあっても、優れた動的流動性を維持し、床仕上げ材同士を強固に接着一体化することができる。
【0097】
[他の添加剤]
床用接着剤組成物は、必要に応じて、他の添加剤を更に含んでいてもよい。他の添加剤としては、脱水剤、気泡防止剤、酸化防止剤、タレ防止剤、紫外線吸収剤、顔料、溶剤、及び香料などが挙げられる。
【0098】
[脱水剤]
床用接着剤組成物は、脱水剤を含んでいることが好ましい。脱水剤によれば、床用接着剤組成物を保存している際に、空気中の湿気などの水分によって床用接着剤組成物が硬化することを抑制することができる。
【0099】
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシランなどのシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチルなどのエステル化合物などを挙げることができ、ビニルトリメトキシシランが好ましい。なお、脱水剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0100】
床用接着剤組成物中における脱水剤の含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して0.5~20質量部が好ましく、1~15質量部がより好ましく、1~10質量部がより好ましい。
【0101】
[溶剤]
床用接着剤組成物は、粘度調整のために溶剤を含有していてもよい。溶剤としては、水系溶剤が好ましい。水系溶剤としては、特に限定されず、例えば、水、アルコール(メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノールなど)、これらアルコールと水との混合溶媒などが挙げられる。
【0102】
床用接着剤組成物中における水系溶剤の含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。床用接着剤組成物中における水系溶剤の含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して20質量部以下が好ましく、18質量部以下がより好ましい。水系溶剤の含有量が1質量部以上であると、床用接着剤組成物の塗工性が向上する。水系溶剤の含有量が20質量部以下であると、湿気硬化性樹脂の硬化性の低下を防止して、床用接着剤組成物に優れた硬化性を付与することができる。特に、湿気硬化性樹脂が、加水分解性シリル基を有する重合体を含む場合、加水分解性シリル基の優れた加水分解性を維持し、湿気硬化性樹脂の硬化性を向上させることができる。
【0103】
[床用接着剤組成物]
床用接着剤組成物は、湿気硬化性樹脂及び充填材、並びに、必要に応じて添加される化合物を汎用の手段を用いて真空雰囲気下にて均一に混合することによって製造することができる。
【0104】
床用接着剤組成物は、CPMG法によるパルスNMR測定によって測定される硬化物の80℃調温雰囲気において2成分分析を行った場合のS成分の緩和時間(以下、単に「緩和時間」ということがある。)が30ms以上である。床用接着剤組成物における緩和時間が30ms以上であると、床用接着剤組成物の硬化物中における強固な成分であるS成分が十分な変形追従性を発揮することができ、加熱及び放熱に伴う接合部の伸縮に円滑に追従して優れた接着性を維持することができる床用接着剤組成物を提供することができる。
【0105】
床用接着剤組成物において、CPMG法によるパルスNMR測定によって測定される硬化物の80℃調温雰囲気において2成分分析を行った場合のS成分の緩和時間(以下、単に「緩和時間」ということがある。)は、60ms以下が好ましい。
【0106】
床用接着剤組成物は、CPMG法によるパルスNMR測定によって測定される硬化物のS成分の緩和時間は下記の要領で測定された値をいう。
【0107】
1HパルスNMR測定装置を用いる。1HパルスNMR測定装置は、測定試料中に存在する全プロトンに対し永久磁石による低周波数(数10MHz)下でパルス状のラジオ波を照射して核磁気共鳴を引き起こし、その応答(スピンースピン緩和時間)を観測する測定装置である。
【0108】
床用接着剤組成物を相対湿度50%及び23℃の環境下にて1週間、静置して床用接着剤組成物を硬化させる。床用接着剤組成物の硬化物を長さ1.5cm、幅5mm程度の短冊状に切断し、NMRチューブの底部に約1.2g測り取り、1HパルスNMR測定装置にセットし、以下の条件にて測定を行って減衰曲線を得る。なお、1HパルスNMR測定装置として、ブルカー社から商品名「minispec mq20」にて市販されている測定装置を用いることができる。
【0109】
周波数:20MHz
測定温度:80℃(10分保持)
測定条件:CPMG法
scans:32
Recycle delay:1.2s
90-180-Pluse Separation(tau):0.05
Total number of acquired echoes:8000
上記測定条件は一例であり、Scans及び90-180-Pluse Separation、Total number of acquired echoesは規格化した緩和曲線の強度が0.02ms 以下となるように設定し、Recycle Derayは縦緩和時間T1の5倍の値が望ましい。
【0110】
次に、解析用ソフトウェアを用いて、上述の要領で測定された床用接着剤組成物の硬化物の減衰曲線を2成分の緩和曲線に分解する。2個の緩和曲線ともワイブル係数を1(指数関数)とし、非線形最小二乗法を用いてフィッティングを行う。即ち、下記式におけるスピン-スピン緩和時間Tおよび成分比Aを算出する。その際、[SSR/err]の[err]が0又は1判定であり、2成分フィッティング後のデータが実測減衰曲線と充分に近似であることを確認する。なお、「^」は、累乗を意味する。
f(t) = A1×exp{-1/W(1)(t/T2(1))^W(1)}+A2×exp{-1/W(2)(t/T2(2))^W(2)}
【0111】
スピンースピン緩和時間のうちの短い方のスピンースピン緩和時間をスピンースピン緩和時間T2(1)とし、長い方のスピンースピン緩和時間をスピンースピン緩和時間T2(2)とする。スピンースピン緩和時間T2(1)を有する緩和曲線の成分比をA1とし、スピンースピン緩和時間T2(2)を有する緩和曲線の成分比をA2とする。W(1)及びW(2)を各緩和曲線のワイブル係数(いずれも1)とする。スピン-スピン緩和時間2(1)を床用接着剤組成物の硬化物のS成分の緩和時間とする。なお、解析用ソフトウェアとして、ブルカー社から商品名「TD-NMR Analyzer」にて市販されている解析用ソフトウェアを用いることができる。
【0112】
床用接着剤組成物の硬化物のS成分の緩和時間は、例えば、床用接着剤組成物の硬化物の架橋密度を小さくしたり、又は、床用接着剤組成物の硬化物において架橋点間の距離を長くすることによって長くすることができる。その他に、低分子量重合体の種類及び配合量を変化させることによっても調整することができる。
【0113】
床用接着剤組成物において、JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数1rpmの条件にて測定された粘度(以下、「粘度(1rpm)」ということがある。)は、400000mPa・s以上であり、450000mPa・s以上が好ましく、500000mPa・s以上がより好ましく、550000mPa・s以上がより好ましい。床用接着剤組成物において、JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数1rpmの条件にて測定された粘度は、1200000mPa・s以下が好ましく、1000000mPa・s以下がより好ましく、900000mPa・s以下がより好ましい。床用接着剤組成物の粘度(1rpm)が400000mPa・s以上であると、床用接着剤組成物を所望箇所に塗工した状態に維持することができ、床仕上げ材の接合部に正確に床用接着剤組成物を供給することができ、床仕上げ材同士を強固に接合一体化することができる。
【0114】
床用接着剤組成物において、JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数10rpmの条件にて測定された粘度(以下、「粘度(10rpm)」ということがある。)は、70000mPa・s以上が好ましく、80000mPa・s以上がより好ましい。床用接着剤組成物において、JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数10rpmの条件にて測定された粘度は、160000mPa・s以下が好ましく、150000mPa・s以下がより好ましい。床用接着剤組成物の粘度(10rpm)が160000mPa・s以下であると、床用接着剤組成物の動的流動性に優れ、床仕上げ材同士を強固に接着一体化することができる。
【0115】
床用接着剤組成物において、JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数1rpmの条件にて測定された粘度と、JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数10rpmの条件にて測定された粘度(以下、「粘度(10rpm)」ということがある。)との比(回転数1rpmの条件にて測定された粘度/回転数10rpmの条件にて測定された粘度)(以下、「粘度比」ということがある。)は、4以上であることが好ましく、4.5以上がより好ましい。粘度比が4以上であると、床用接着剤組成物の塗布時の切れ性がよく、床用接着剤組成物を不要な部分に付着させることなく所望部分に精密に塗工できるので、適切な量の床用接着剤組成物を床仕上げ材の接合部に供給することができ 、床仕上げ材の接合部における溝部と突条部との隙間に床用接着剤組成物を円滑に進入させ、床仕上げ材同士を強固に接合一体化させることができる。
【0116】
床用接着剤組成物において、JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数1rpmの条件にて測定された粘度と、JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数10rpmの条件にて測定された粘度(以下、「粘度(10rpm)」ということがある。)との比(回転数1rpmの条件にて測定された粘度/回転数10rpmの条件にて測定された粘度)は、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、7以下がより好ましい。
【0117】
床用接着剤組成物の使用要領を説明する。図1~3に示したように、床用接着剤組成物1は、床下地材2上に配設された床暖房パネル4の所望箇所に塗工される。床用接着剤組成物1が塗工された床暖房パネル4上に、所定幅を有する帯状の床仕上げ材3をこれらの床仕上げ材3の対向端面同士を接合させた状態にして敷設する。
【0118】
図1及び図2に示したように、床用接着剤組成物1は、静的非流動性に優れているので、床暖房パネル4上の塗工箇所に安定的に滞留する。床暖房パネル4上において、床仕上げ材3、3の接合部3Aが位置する箇所に床用接着剤組成物1を塗工することによって、床仕上げ材3、3の接合部3Aに床用接着剤組成物1を確実に供給することができる。
【0119】
また、床仕上げ材3は、所定幅を有する帯状に形成されており、幅方向の一端面には、長手方向に溝部31が形成されている一方、幅方向の他端面には、一端面に形成された溝部31に嵌合可能な突条部32が長手方向に形成されている。
【0120】
そして、図3に示したように、床暖房パネル4上に複数枚の床仕上げ材3、3・・・をこれらの対向端面同士が接合された状態に敷設して床面を構築している。互いに隣接する床仕上げ材3、3において、一方の床仕上げ材3の他端面の突条部32に、他方の床仕上げ材3の一端面の溝部31を嵌合させた状態となっている。
【0121】
床仕上げ材3の敷設作業において、床暖房パネル4上に塗工された床用接着剤組成物1は、床仕上げ材3の突条部32と溝部31とを嵌合させる際、具体的には、床仕上げ材3の突条部32に溝部31を嵌合させる際にせん断応力が加えられ、このせん断応力によって粘度が迅速に低下し、床仕上げ材3の溝部31と突条部32との対向面間に形成された隙間33に円滑に進入する。従って、床仕上げ材3の接合部3Aにおける溝部31と突条部32との隙間33に床用接着剤組成物1が十分に供給された状態となり、床仕上げ材3、3同士を強固に接合一体化させることができる。
【0122】
しかる後、床用接着剤組成物は、空気中、床仕上げ材3又は床暖房パネル4に含まれる湿気によって硬化し、生成される硬化物は、優れた常態せん断接着性を発現し、床仕上げ材3、3同士の接合部3Aの伸縮に円滑に追従して優れた接着性を維持する。
【0123】
上記では、床下地材2に敷設した床暖房パネル4上に床仕上げ材3を敷設した場合を説明したが、床下地材2上に床暖房パネル4を敷設することなく、床下地材2上に床仕上げ材が敷設されてもよく、床下地材2上に床仕上げ材3を敷設した場合も同様の作用効果を奏する。床下地材2と床仕上げ材3との間にその他の部材が介在していてもよく、この場合も同様の作用効果を奏する。
【0124】
床暖房パネル4上に床仕上げ材3を敷設した場合や床仕上げ材3上に暖房器具が載置される場合、床暖房パネル4及び暖房器具の使用及びその停止に伴って、床仕上げ材3が加熱及び放熱され、床仕上げ材3、3同士の接合部3Aにおける溝部31と突条部32との対向面間に形成された隙間33も伸縮するが、床用接着剤組成物の硬化物は、優れた可撓性を有していることから、床仕上げ材3、3の接合部3Aの伸縮に円滑に追従し、床仕上げ材3、3同士の接合一体化を安定的に維持することができる。
【発明の効果】
【0125】
本発明の床用接着剤組成物は、静的非流動性及び動的流動性という相反する特性の双方に優れていると共に、加熱及び放熱に伴う接合部の伸縮に円滑に追従して優れた接着性を維持することができる床用接着剤組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0126】
図1】床用接着剤組成物の使用要領を示した模式断面図である。
図2】床用接着剤組成物の使用要領を示した模式断面図である。
図3】床用接着剤組成物の使用要領を示した模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0127】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例0128】
実施例及び比較例の床用接着剤組成物の製造において下記の原料を使用した。
【0129】
[湿気硬化性樹脂]
・加水分解性シリル基を有するポリプロピレンオキサイド[架橋性ポリプロピレンオキサイド、主鎖骨格がポリプロピレンオキサイドからなり且つ主鎖の末端にジメトキシシリル基を有するポリプロピレンオキサイド、1分子中におけるジメトキシシリル基の平均個数:2.1個、25℃における粘度:7000mPa・s、数平均分子量Mn:10000、分子量分布(Mw/Mn)1.35、カネカ社製 製品名「サイリルポリマーEST-280」]
【0130】
[充填材]
・非表面処理炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム、1g当たりの比表面積:10800cm2/g、一次粒子の平均粒子径:8μm、清水工業社製 商品名「LW350」)
・表面処理炭酸カルシウム(コロイダル炭酸カルシウム、表面が脂肪酸によって処理されている、一次粒子の平均粒子径:0.05μm、1g当たりの比表面積:160000cm2/g、丸尾カルシウム社製 商品名「カルファイン200M」)
【0131】
[シランカップリング剤]
・アミノシランカップリング剤(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)
・エポキシシランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
・ビニルシランカップリング剤(ビニルトリメトキシシラン)
【0132】
[低分子量ポリプロピレンオキサイド系重合体]
・低分子量ポリプロピレンオキサイド1[非架橋性ポリプロピレンオキサイド、主鎖骨格:ポリプロピレンオキサイド、分子中に加水分解性シリル基を有しない、数平均分子量Mn:3000、AGC社製 製品名「EXCENOL3020」]
・低分子量ポリプロピレンオキサイド2[非架橋性ポリプロピレンオキサイド、主鎖骨格:ポリプロピレンオキサイド、主鎖の一方の末端にのみジメトキシシリル基を有する、数平均分子量Mn:3500、カネカ社製 製品名「SAT145」]
【0133】
[シラノール縮合触媒]
・シラノール縮合触媒(日東化成社製 商品名「ネオスタンU-700」)
【0134】
[溶剤]
・変性アルコール(エタノール:85質量%、n-プロピルアルコール:10質量%、イソプロパノール:5質量%)
【0135】
(実施例1~6、比較例1~6)
湿気硬化性樹脂、充填材、シランカップリング剤、低分子量ポリプロピレンオキサイド、シラノール縮合触媒及び溶剤をそれぞれ表1に示した配合量となるようにして、密封した攪拌機中で減圧しながら均一になるまで混合することにより床用接着剤組成物を得た。
【0136】
得られた床用接着剤組成物を23℃及び相対湿度50%の雰囲気下にて14日間に亘って養生して硬化させた。得られた床用接着剤組成物の硬化物について、CPMG法によるパルスNMR測定によって測定される硬化物の80℃調温雰囲気において2成分分析を行った場合のS成分の緩和時間を上記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0137】
得られた床用接着剤組成物について、JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数1rpm及び10rpmのそれぞれの条件にて測定された粘度を測定し、その結果を表1に示した。
【0138】
得られた床用接着剤組成物について、貯蔵安定性、嵌合接着性及びせん断接着性を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0139】
(貯蔵安定性)
得られた床用接着剤組成物について、JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数10rpmの条件で初期粘度を測定した。床用接着剤組成物を50℃の環境下にて1週間放置した後、23℃及び相対湿度50%で一日放置した。放置後の床用接着剤組成物について、JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数10rpmの条件で促進粘度を測定した。10rpm粘度の変化率を下記式に基づいて算出し、下記基準に基づいて評価した。
10rpm粘度の変化率(%)=100×促進粘度/初期粘度
○・・・粘度変化率が80~120%であった。
×・・・粘度変化率が80%未満又は120%を超えた。
【0140】
(嵌合接着性)
朝日ウッドテック社から商品名「AIRiS α」にて市販されている床仕上げ材から試験片を2枚切り出した。試験片は、一辺が40mmの平面正方形状に形成されていた。試験片のうちの一の端面には、その全長に亘って溝部が形成されている一方、溝部が形成された端面とは反対側の端面には、その全長に亘って上記溝部に嵌合可能な突条部が形成されていた。
【0141】
一方の試験片の突条部の基端部に床用接着剤組成物をノズル径5mmにてビート塗工した。ビート塗工後直ちに、一方の試験片の突条部を他方の試験片の溝部に嵌合させた。2枚の試験片を嵌合させた状態で23℃、相対湿度50%にて14日間養生した。次に、2枚の試験片の嵌合部を引き離す方向に引張速度3mm/分にて引張試験を実施し、最大引張強さ(N/mm2)を測定した。
【0142】
(せん断接着性)
朝日ウッドテック社から商品名「AIRiS α」にて市販されている床仕上げ材から試験片を2枚切り出した。試験片は、一辺が40mmの平面正方形状に形成されていた。
【0143】
一方の試験片の裏面の一半部(40mm×20mm)にJIS A5536に準拠した櫛目コテを用いて床用接着剤組成物を塗布した。塗布後直ちに、一方の試験片の裏面に、他方の試験片を互いに合致した状態に重ね合わせて1kgの重りで5秒間圧着して積層体を作製した。上記要領で2個の積層体を作製した。2個の積層体を23℃、相対湿度50%にて14日間養生した。1個の積層体について、速度5mm/分にて圧縮せん断を実施し、最大圧縮強さ(MPa)(これを「常態せん断接着性」とする)及び最大圧縮強さになった時点の変位(mm)を測定した。残余の1個の積層体を更に80℃及び相対湿度50%にて1000時間養生し、速度5mm/分にて圧縮せん断を実施し、最大圧縮強さ(MPa)(これを「熱耐久後のせん断接着性」とする)及び最大圧縮強さになった時点の変位(mm)を測定した。
【0144】
【表1】
【符号の説明】
【0145】
1 床用接着剤組成物
2 床下地材
3 床仕上げ材
31 溝部
32 突条部
3A 接合部
4 床暖房パネル
図1
図2
図3