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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055260
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】メタルマスク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20240411BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240411BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H05B33/14 A
H05B33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162040
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】安在 祐二
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107FF15
3K107GG04
3K107GG33
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA62
4K029BB03
4K029BD01
4K029CA01
4K029HA02
4K029HA03
4K029HA04
4K029JA01
4K029JA06
(57)【要約】
【課題】応力をより均一に分散可能であり、シワが生じにくく、設置位置精度に優れるメタルマスク、及びその効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】有孔領域と、周囲領域と、を有し、前記有孔領域は、複数の貫通孔を有し、前記周囲領域は、前記有孔領域の周囲に位置し、前記周囲領域は、応力分散領域を有し、前記応力分散領域は、複数の凹部を有し、前記凹部の平面視における開口形状は、長さRの短軸を有し、前記応力分散領域は、前記短軸方向にピッチPで並ぶ前記凹部を有し、前記ピッチPに対する前記長さRの比(R/P)が、0.90以上である、メタルマスク。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有孔領域と、周囲領域と、を有し、
前記有孔領域は、複数の貫通孔を有し、
前記周囲領域は、前記有孔領域の周囲に位置し、
前記周囲領域は、応力分散領域を有し、
前記応力分散領域は、複数の凹部を有し、
前記凹部の平面視における開口形状は、長さRの短軸を有し、
前記応力分散領域は、前記短軸方向にピッチPで並ぶ前記凹部を有し、
前記ピッチPに対する前記長さRの比(R/P)が、0.90以上である、
メタルマスク。
【請求項2】
前記凹部は、千鳥状又は格子状に配列する、
請求項1に記載のメタルマスク。
【請求項3】
隣り合う前記凹部の壁面が、合流する、
請求項1に記載のメタルマスク。
【請求項4】
前記周囲領域の最も厚い部分は、高さH0を有し、
前記応力分散領域の最も薄い部分は、高さH1を有し、
前記高さH0に対する前記高さH1の比(H1/H0)が、0.20以上0.90以下である、
請求項1に記載のメタルマスク。
【請求項5】
前記周囲領域は、縁を有し、
前記応力分散領域は、前記縁と前記有孔領域の間に位置する、
請求項1に記載のメタルマスク。
【請求項6】
前記周囲領域の前記縁は、一対の長辺と一対の短辺とを有し、
前記応力分散領域は、前記長辺である前記縁と前記有孔領域の間に位置する、
請求項5に記載のメタルマスク。
【請求項7】
複数の前記有孔領域を有し、
前記応力分散領域は、複数の前記有孔領域の間に位置する、
請求項1に記載のメタルマスク。
【請求項8】
前記周囲領域は、カットラインを有し、
前記カットラインは、凹部又は貫通孔の列であり、
前記応力分散領域は、前記カットラインと前記有孔領域の間に位置する、
請求項1に記載のメタルマスク。
【請求項9】
前記周囲領域は、カットラインを有し、
前記カットラインは、凹部又は貫通孔の列であり、
前記カットラインは、前記応力分散領域と前記有孔領域の間に位置する、
請求項1に記載のメタルマスク。
【請求項10】
メタルマスクの製造方法であって、
第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面と、を有する金属板を準備する工程と、
前記金属板をエッチングすることによって前記メタルマスクを形成するエッチング工程と、を備え、
前記メタルマスクは、有孔領域と、周囲領域と、を有し、
前記有孔領域は、複数の貫通孔を有し、
前記周囲領域は、前記有孔領域の周囲に位置し、
前記周囲領域は、応力分散領域を有し、
前記応力分散領域は、複数の凹部を有し、
前記凹部の平面視における開口形状は、長さRの短軸を有し、
前記応力分散領域は、前記短軸方向にピッチPで並ぶ前記凹部を有し、
前記ピッチPに対する前記長さRの比(R/P)が、0.90以上である、
メタルマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、メタルマスク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置の画素はメタルマスクを用いて基板上に画素を形成する材料を蒸着により付着させることにより形成される。そのため、メタルマスクの性能向上は有機EL表示装置の画質の向上にとって重要である。例えば、特許文献1には、蒸着の均一性の向上を目的として、均一な貫通孔を有するメタルマスクを提供することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2019-508588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、引張時に加えられる応力を分散するために、ハーフエッチング部を形成することが開示されている。特許文献1に記載のハーフエッチング部の一つの凹部は、複数個の貫通孔を横切る長さを有する比較的大きなものである。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のように、一つの凹部を比較的大きく形成すると、同じ凹部のなかでも凹部の深さが異なりやすい。凹部の深さが異なると、応力を均一に分散し難い。応力が均一に分散されないと、メタルマスクをフレームに設置する時に、シワが生じたり、設置位置精度が低下したりする。ここで、「シワ」とは、メタルマスク長さ方向に引張力を掛けてメタルマスクをフレームに架張溶接する際に、マスク幅方向に発生する波打ちをいう。また、一つの凹部を比較的大きく形成すると、製造時に、凹部が裏面に貫通するリスクが高くなり、メタルマスクの歩留まりも低下し得る。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、応力をより均一に分散可能であり、シワが生じにくく、設置位置精度に優れるメタルマスク、及びその効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態によるメタルマスクは、
有孔領域と、周囲領域と、を有し、
前記有孔領域は、複数の貫通孔を有し、
前記周囲領域は、前記有孔領域の周囲に位置し、
前記周囲領域は、応力分散領域を有し、
前記応力分散領域は、複数の凹部を有し、
前記凹部の平面視における開口形状は、長さRの短軸を有し、
前記応力分散領域は、前記短軸方向にピッチPで並ぶ前記凹部を有し、
前記ピッチPに対する前記長さRの比(R/P)が、0.90以上である。
【0008】
本開示の一実施形態による上記メタルマスクの製造方法は、
第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面と、を有する金属板を準備する工程と、
前記金属板をエッチングすることによって前記メタルマスクを形成するエッチング工程と、を備え、
前記メタルマスクは、有孔領域と、周囲領域と、を有し、
前記有孔領域は、複数の貫通孔を有し、
前記周囲領域は、前記有孔領域の周囲に位置し、
前記周囲領域は、応力分散領域を有し、
前記応力分散領域は、複数の凹部を有し、
前記凹部の平面視における開口形状は、長さRの短軸を有し、
前記応力分散領域は、前記短軸方向にピッチPで並ぶ前記凹部を有し、
前記ピッチPに対する前記長さRの比(R/P)が、0.90以上である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一つの実施形態では、応力をより均一に分散可能であり、シワが生じにくく、設置位置精度に優れるメタルマスク、及びその効率的な製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態によるメタルマスクを示す平面図である。
図2A】有孔領域を第2面側から見た平面図である。
図2B図2Aに示すI-I’線に沿った断面図である。
図2C図2Aに示すII-II’線に沿った断面図である。
図2D図2Aに示すIII-III’線に沿った断面図である。
図2E図2Aに示す領域S1を第2面側から見た斜視図である。
図3A】応力分散領域を第2面側から見た平面図である。
図3B図3Aに示すIV-IV’線に沿った断面図である。
図3C図3Aに示すV-V’線に沿った断面図である。
図3D図3Aに示すV-VI’線に沿った断面図である。
図3E図3Aに示す領域S2を第2面側から見た斜視図である。
図4A】応力分散領域における凹部の配列例を示す平面図である。
図4B】応力分散領域における凹部の配列例を示す平面図である。
図4C】応力分散領域における凹部の配列例を示す平面図である。
図4D】応力分散領域における凹部の配列例を示す平面図である。
図4E】応力分散領域における凹部の配列例を示す平面図である。
図4F】応力分散領域における凹部の配列例を示す平面図である。
図5A】メタルマスクの製造方法の一例を説明するための模式図である。
図5B】金属板上にレジスト膜を形成する工程の一例を示す図である。
図5C】レジスト膜をパターニングする工程の一例を示す図である。
図5D】有孔領域における第1面エッチング工程の一例を示す図である。
図5E】有孔領域における第2面エッチング工程の一例を示す図である。
図5F】応力分散領域における第2面エッチング工程の一例を示す図である。
図6】本開示の一実施形態によるメタルマスク装置を示す図である。
図7】本開示の一実施形態による蒸着装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある場合がある。
【0012】
本明細書及び/又は本図面において、特別な記載が無い限りは、次のように解釈する。
【0013】
ある構成の基礎となる物質を意味する用語は、呼称の違いのみによって区別されなくてもよい。例えば、「基板」、「基材」、「板」、「シート」、又は「フィルム」等の用語が、上記記載に該当する。
【0014】
形状及び/又は幾何学的条件を意味する用語及び/又は数値は、厳密な意味に縛られる必要はなく、同様の機能を期待してもよい程度の範囲を含むものと解釈してもよい。例えば、「平行」及び/又は「直交」等が上記の用語に該当する。また、「長さの値」及び/又は「角度の値」等が上記の数値に該当する。
【0015】
ある構成が他の構成の「上に」、「下に」、「上側に」、「下側に」、「上方に」、又は「下方に」あると表現する場合には、ある構成が他の構成に直接的に接している態様と、ある構成と他の構成との間に別の構成が含まれている態様が含まれてもよい。ある構成と他の構成との間に別の構成が含まれている態様とは、言い換えると、ある構成が他の構成に間接的に接していると表現してもよい。また、「上」、「上側」、又は「上方」という表現は、「下」、「下側」、又は「下方」という表現と交換可能である。言い換えると、上下方向が逆転してもよい。
【0016】
同一部分及び/又は同様な機能を有する部分に、同一の符号又は類似の符号を付す際に、繰り返しの記載は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は、実際の比率とは異なる場合がある。また、実施形態の構成の一部が、図面から省略される場合がある。
【0017】
矛盾の生じない範囲で、実施形態の一つ以上の形態と変形例の一つ以上の形態とを組み合わせてもよい。また、矛盾の生じない範囲で、実施形態の一つ以上の形態同士を組み合わせてもよい。また、矛盾の生じない範囲で、変形例の一つ以上の形態同士を組み合わせてもよい。
【0018】
製造方法などの方法に関して複数の工程を開示する場合に、開示されている工程の間に、開示されていないその他の工程が実施されてもよい。また、矛盾の生じない範囲で、工程の順序は、限定されない。
【0019】
「~」及び/又は「-」という記号によって表現される数値範囲は、「~」及び/又は「-」という符号の前後に置かれた数値を含んでいる。例えば、「34~38質量%」と表現される数値範囲は、「34質量%以上且つ38質量%以下」と表現される数値範囲と同一である。
【0020】
本開示において記載する数値については、複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの任意の1つとを組み合わせることによって、数値範囲を画定してもよい。このほか、特に言及しなくとも、複数の上限の候補値のうちの任意の2つを組み合わせることによって数値範囲を画定してもよいし、複数の下限の候補値のうちの任意の2つを組み合わせることによって数値範囲を画定してもよい。
【0021】
本開示の一実施形態について、次の段落以降に記載する。本開示の一実施形態は、本開示の実施形態の一例である。本開示は、本開示の一実施形態のみに限定して解釈されない。
【0022】
本開示のメタルマスクは、種々の用途に用いることができる。特に限定されないが、例えば、本発明のメタルマスクは、有機EL表示装置の製造において有機材料を所望のパターンで基板上にパターニングするために用いられるメタルマスクとして用いることができる。本開示のメタルマスクは、高画素密度のパターニングを可能とすることができる。製造可能な有機EL表示装置には、スマートフォンやテレビなどのディスプレイのほか、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)を表現するための画像や映像を表示又は投影するための装置が含まれる。
【0023】
なお、本明細書及び本図面において特別な説明が無い限りは、本発明の一実施形態として、有機EL表示装置を製造する際に用いられるメタルマスクとその製造方法の例を記載する。
【0024】
本開示の第1の態様は、
有孔領域と、周囲領域と、を有し、
前記有孔領域は、複数の貫通孔を有し、
前記周囲領域は、前記有孔領域の周囲に位置し、
前記周囲領域は、応力分散領域を有し、
前記応力分散領域は、複数の凹部を有し、
前記凹部の平面視における開口形状は、長さRの短軸を有し、
前記応力分散領域は、前記短軸方向にピッチPで並ぶ前記凹部を有し、
前記ピッチPに対する前記長さRの比(R/P)が、0.90以上である、
メタルマスクである。
【0025】
本開示の第2の態様は、上述した第1の態様によるメタルマスクにおいて、前記凹部は、千鳥状又は格子状に配列する。
【0026】
本開示の第3の態様は、上述した第1の態様又は第2の態様のメタルマスクにおいて、隣り合う前記凹部の壁面が、合流する。
【0027】
本開示の第4の態様は、上述した第1の態様~第3の態様のいずれかのメタルマスクにおいて、
前記周囲領域の最も厚い部分は、高さH0を有し、
前記応力分散領域の最も薄い部分は、高さH1を有し、
前記高さH0に対する前記高さH1の比(H1/H0)が、0.20以上0.90以下である。
【0028】
本開示の第5の態様は、上述した第1の態様~第4の態様のいずれかのメタルマスクにおいて、
前記周囲領域は、縁を有し、
前記応力分散領域は、前記縁と前記有孔領域の間に位置する。
【0029】
本開示の第6の態様は、上述した第5の態様のメタルマスクにおいて、
前記周囲領域の前記縁は、一対の長辺と一対の短辺とを有し、
前記応力分散領域は、前記長辺である前記縁と前記有孔領域の間に位置する。
【0030】
本開示の第7の態様は、上述した第1の態様~第6の態様のいずれかのメタルマスクにおいて、
複数の前記有孔領域を有し、
前記応力分散領域は、複数の前記有孔領域の間に位置する。
【0031】
本開示の第8の態様は、上述した第1の態様~第7の態様のいずれかのメタルマスクにおいて、
前記周囲領域は、カットラインを有し、
前記カットラインは、凹部又は貫通孔の列であり、
前記応力分散領域は、前記カットラインと前記有孔領域の間に位置する。
【0032】
本開示の第9の態様は、上述した第1の態様~第8の態様のいずれかのメタルマスクにおいて、
前記周囲領域は、カットラインを有し、
前記カットラインは、凹部又は貫通孔の列であり、
前記カットラインは、前記応力分散領域と前記有孔領域の間に位置する。
【0033】
本開示の第10の態様は、
第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面と、を有する金属板を準備する工程と、
前記金属板をエッチングすることによって前記メタルマスクを形成するエッチング工程と、を備え、
前記メタルマスクは、有孔領域と、周囲領域と、を有し、
前記有孔領域は、複数の貫通孔を有し、
前記周囲領域は、前記有孔領域の周囲に位置し、
前記周囲領域は、応力分散領域を有し、
前記応力分散領域は、複数の凹部を有し、
前記凹部の平面視における開口形状は、長さRの短軸を有し、
前記応力分散領域は、前記短軸方向にピッチPで並ぶ前記凹部を有し、
前記ピッチPに対する前記長さRの比(R/P)が、0.90以上である、
メタルマスクの製造方法である。
【0034】
本開示のメタルマスク20は、有孔領域22と、周囲領域23と、を有する。有孔領域22は、複数の貫通孔25が形成された領域である。また、周囲領域23は、有孔領域22の周囲に位置する領域である。さらに、周囲領域23は、所定の凹部を有する応力分散領域24を有する。
【0035】
図1に、本開示の一実施形態のメタルマスク20の第2面20b側の平面図を示す。図1に示されるように、メタルマスク20は、平面視において略矩形状の輪郭を有してもよい。なお、本開示において、「平面視」とは、メタルマスク20の板面に沿った面からメタルマスク20を見ることをいう。
【0036】
本開示のメタルマスク20において、一つの有孔領域22は、一つの有機EL表示装置に対応するように構成されてもよい。例えば、図1に示すように、メタルマスク20は、長尺方向D2に沿って、所定の間隔をあけて一列に配置された複数の有孔領域22を有してもよい。図1では周囲領域23が各有孔領域22の周囲に位置する。このようなメタルマスク20を用いることにより、基板92に対して、複数の有機EL表示装置を蒸着することが可能となる。
【0037】
メタルマスク20を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、ニッケルを含む鉄合金、ステンレスなどのクロムを含む鉄合金、ニッケルやニッケル-コバルト合金などが挙げられる。
【0038】
このなかでも、ニッケルを含む鉄合金が好ましい。ニッケルを含む鉄合金を用いることにより、メタルマスク20の熱膨張係数を、フレーム15の熱膨張係数や基板92の熱膨張係数と同等の値とすることができる。これにより、蒸着処理の間に、メタルマスク20、フレーム15および基板92の寸法変化の差異に起因した位置ずれの発生を抑制できる。そのため、位置ずれに起因する、基板92上に付着する蒸着材料98の寸法精度や位置精度の低下を抑制できる。
【0039】
ニッケルを含む鉄合金としては、特に限定されないが、例えば、30質量%以上34質量%以下のニッケルに加えてさらにコバルトを含むスーパーインバー材、34質量%以上38質量%以下のニッケルを含むインバー材、48質量%以上54質量%以下のニッケルを含む低熱膨張Fe-Ni系めっき合金など、0質量%以上54質量%以下のニッケルを含む鉄合金が挙げられる。
【0040】
次いで、有孔領域22の詳細について説明する。初めに、有孔領域22の詳細に先立ち、本開示のメタルマスク20の有する面について説明する。本開示のメタルマスク20は、表裏面として、第1面20aと第2面20bとを有する。
【0041】
本開示においては、有孔領域22の表裏面における貫通孔25の口径によって、メタルマスク20の第1面20aと第2面20bとを区別する。具体的には、第1面20aは、有孔領域22において貫通孔25の開口面積が小さい面をいい、第2面20bは、貫通孔25の開口面積が大きい面をいう。また、図2Eなどに示すように、第2面20bにおいて、隣り合う貫通孔25の第2凹部35の第2壁面36が合流している場合には、1つの貫通孔25を囲う稜線33で閉じた範囲S3を貫通孔25の開口とみなしてもよい。この場合、稜線33で閉じた範囲が開口面積となる。
【0042】
また、蒸着工程の観点からは、第1面20aは、メタルマスク装置10が蒸着装置90に収容された場合に、基板92に対面するメタルマスク20の面であってもよい(図7参照)。また、第2面20bは、図7に示すようにしてメタルマスク装置10が蒸着装置90に収容された場合に、蒸着材料98を保持したるつぼ94側に位置するメタルマスク20の面であってもよい(図7参照)。
【0043】
図2Aに、有孔領域22を第2面20b側から見た平面図を示す。図2Aに示されるように、メタルマスク20の各有孔領域22は、複数の貫通孔25を有する。貫通孔25は、所望のパターンで形成されてもよい。例えば、貫通孔25は、互いに交差する二方向に沿ってそれぞれ所定のピッチで格子状に配列されてもよい。また、貫通孔25は、互いに交差する二方向に沿ってそれぞれ所定のピッチで千鳥状に配列されてもよい。
【0044】
上記二方向とは、メタルマスク20の長尺方向D2又は幅方向D1に一致してもよい。有孔領域22における貫通孔25のピッチは、特に限定されない。例えば、メタルマスク20が携帯電話やデジタルカメラ等のディスプレイ(0.5インチ以上32インチ以下程度)を作製するために用いられる場合、貫通孔25のピッチは、幅方向D1及び長尺方向D2のそれぞれにおいて、20μm以上254μm以下程度であってもよい。
【0045】
貫通孔25は、メタルマスク20の第1面20aから第2面20bへ厚さ方向Nに貫通している。蒸着工程において、蒸着材料98は貫通孔25を通過して、基板92上に付着する。つまり、各貫通孔25は、基板92上に蒸着材料が付着する場所を画する。有孔領域22の貫通孔25のパターンは、蒸着材料98を付着させるパターンに対応する。
【0046】
蒸着材料98の種類によって蒸着材料98を付着させるパターンが異なる場合には、蒸着材料98の種類によって貫通孔25のパターンの異なるメタルマスク20を用いることもできる。また、種類にかかわらず蒸着材料98を付着させるパターンが同じ場合には、同じメタルマスク20を用いてもよい。この場合には、メタルマスク20と基板92とを相対移動させることで、異なる種類の蒸着材料98を同じパターンで付着することができる。
【0047】
図2Aに示すように、有孔領域22は、複数の貫通孔25と複数の稜線33とを備えてもよい。また、稜線33は隣り合う貫通孔25を区切るように位置してもよい。
【0048】
次に、有孔領域の断面図及び斜視図により、貫通孔についてさらに詳説する。図2Bは、図2Aに示すI-I’線に沿った断面図である。図2Cは、図2Aに示すII-II’線に沿った断面図である。図2B及び図2Cに示す断面図は、貫通孔25と稜線33を横断する方向に、有孔領域22を切断した場合の断面図である。
【0049】
図2Dは、図2Aに示すIII-III’線に沿った断面図である。図2Dに示す断面図は、貫通孔25とトップ部32を通過する方向に、有孔領域22を切断した場合の断面図である。ここで、トップ部32は、有孔領域22において高さが極大となる部分である。また、トップ部32は、稜線33のなかで、高さが極大となる部分であってもよい。
【0050】
図2B図2Dに示すように、貫通孔25は、第1面20a側の第1凹部30と第2面20b側の第2凹部35とが連通したものであってもよい。この際、第1凹部30の平面視における面積は、第1面20aから第2面20bへ向けて、次第に小さくなってもよい。また、第2凹部35の平面視における面積は、第2面20bから第1面20aへ向けて、次第に小さくなってもよい。また、第1凹部30は、第2凹部35よりも小径の凹部として構成してもよい。
【0051】
また、図2B図2Dに示すように、第1凹部30の第1壁面31と、第2凹部35の第2壁面36とは、周状の接続部41を介して接続されてもよい。接続部41は、第1凹部30と第2凹部35とが接続される稜部である。接続部41では、貫通孔25の壁面の広がる方向が不連続に変化する。本開示の一実施形態においては、接続部41において、平面視における貫通孔25の開口面積が最小になってもよい。また、接続部41以外において、平面視における貫通孔25の開口面積が最小になってもよい。
【0052】
図2Eに、図2Aに示す領域S1を第2面20b側から見た斜視図を示す。図2Eに示すように、稜線33は、隣り合う貫通孔25を区切る。例えば、図2Eに示すように、有孔領域22の第2面20b側において、各貫通孔25は、複数の稜線33によって囲まれてもよい。
【0053】
図2Eに示すように、隣り合う第2凹部35の第2壁面36が合流してもよい。これは、隣り合う第2凹部35の間に、メタルマスク20を構成する金属板51の第2面51bが残っていない状態ともいえる。この場合には、合流した第2壁面36により稜線33が形成される。図2Eに示すように、合流した第2壁面36により形成される稜線33の高さは一定ではなく、貫通孔25の中心からの距離に応じて変化してもよい。例えば、貫通孔25の中心から稜線33までの距離が長いほど、稜線33の高さは高くなってもよい。
【0054】
このような貫通孔25は、後述する製造方法のように、隣り合う第2凹部35の間に金属板51の第2面51bが残存しないように金属板51をエッチングすることによって形成されてもよい。
【0055】
また、図示しないが、隣り合う第2凹部35の第2壁面36が合流しなくてもよい。これは、隣り合う第2凹部35は、第2面20bの面方向に沿って離間しているともいえる。この場合には、隣り合う第2凹部35の間で第2面20bとして残る部分が隣り合う貫通孔25を区切る稜線33となる。また、この場合には、稜線33は、隣り合う第1凹部30の間に残った金属板51の第1面51aであってもよい。この場合、稜線33の高さは、一定であってもよい。
【0056】
さらに、図示しないが、有孔領域22の第1面20a側において、隣り合う貫通孔25は、第1面20aの面方向に沿って離間してもよい。言い換えると、隣り合う第1凹部30の間に金属板51の第1面51aが残ってもよい。
【0057】
なお、金属板51の第1面51aは、メタルマスク20の第1面20aに対応し、なお、金属板51の第2面51bは、メタルマスク20の第2面20bに対応してもよい。
【0058】
周囲領域23は、有孔領域22の周囲に位置する領域である。周囲領域23は、有孔領域22を取り囲むように位置してもよい。周囲領域23は、有孔領域22の周囲に位置することで有孔領域22を支持する領域であってもよい。
【0059】
周囲領域23は、所定の応力分散領域24を有する。これにより、メタルマスクに張力をかけても、応力をより均一に分散することが可能となる。そのため、メタルマスクにシワが生じにくくなる。また、メタルマスクをフレームに設置するとき際の、設置位置精度がより向上する。なお、メタルマスクに張力がかかる場面としては、特に限定されないが、例えば、メタルマスクをフレームに設置するときや、メタルマスクを搬送するときなどが挙げられる。
【0060】
また、周囲領域23は、蒸着材料98が通過することを意図しない領域であってもよい。この観点から、周囲領域23は、主には貫通孔が形成されていない無孔面を有してもよい。ただし、種々の目的から、周囲領域23は、無孔面を有しつつも、無孔面以外の部分に局所的に、蒸着材料が通過することを目的としない貫通孔を有してもよい。本開示において、「無孔面」とは、貫通孔を有しない面を言う。
【0061】
後述するように、メタルマスク20は、フレーム15に固定されてメタルマスク装置10を構成する。周囲領域23は、フレーム15に固定される端部23aを有してもよい。図1に示すように、メタルマスク20が長尺のスティック状である場合には、端部23aは長尺方向D2における両端に位置してもよい。また、端部23aは、U字状の切り欠きなどを有してもよい。
【0062】
端部23aは、メタルマスク20をフレーム15に固定した後、その一部が切断可能に構成されてもよい。さらに、端部23aは、図1に示すように、他の周囲領域23と一体的に構成されてもよいし、他の周囲領域とは別の部材によって構成されてもよい。この場合、端部は、例えば溶接によって周囲領域の他の部分に接合されてもよい。
【0063】
周囲領域23の最も厚い部分は、高さH0を有する。周囲領域23の最も厚い部分は、周囲領域23における第1面20aから第2面20bまでの高さであってもよい。高さH0は、好ましくは、50μm以下であってもよく、45μm以下であってもよく、40μm以下であってもよく、35μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、25μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。周囲領域の高さを小さくすることにより、エッチングなどにより有孔領域22をより薄く構成することができ、蒸着工程において蒸着材料98が第2凹部35の第2壁面36に付着することを抑制できる傾向にある。
【0064】
高さH0は、好ましくは、2.5μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、15μm以上であってもよい。周囲領域の高さを大きくすることにより、メタルマスク20の強度がより向上する傾向にある。これにより、例えば有孔領域22の変形や破断がより抑制される傾向にある。
【0065】
応力分散領域24は、複数の凹部37を有する。応力分散領域24が有する凹部37は、「第3凹部37」ともいう。図3Aに、応力分散領域24を第2面20b側から見た平面図を示す。
【0066】
図3Aに示すように、応力分散領域24は、短軸方向にピッチPで並ぶ第3凹部37を有する。第3凹部37は長さRの短軸を有する。図3Aでは、短軸方向とD2方向とが並行である態様を示すが、これに制限されない。例えば、短軸方向はD1方向と並行であってもよいし、短軸方向はD1方向やD2方向と並行でなく、これら方向と交差する方向であってもよい。
【0067】
図3Bは、図3Aに示すIV-IV’線に沿った断面図である。ここで、IV-IV’線は、短軸方向と平行な線であってもよい。図3Bに示すように、第3凹部37の第3壁面38が合流し、稜線39を形成していてもよい。稜線39は、隣り合う第3凹部37を区切る。ここで、第3凹部37の平面視における開口形状は稜線39により画される形状であってもよい。
【0068】
図3Cは、図3Aに示すV-V’線に沿った断面図である。図3B及び図3Cに示す断面図は、第3凹部37と稜線39を横断する方向に、応力分散領域24を切断した場合の断面図である。図3Dは、図3Aに示すVI-VI’線に沿った断面図である。図3Dに示す断面図は、第3凹部37と稜線39の交点を通過する方向に、応力分散領域24を切断した場合の断面図である。
【0069】
また、図3Eに、図3Aに示す領域S2を第2面20b側から見た斜視図を示す。図3Eに示すように、稜線39は、隣り合う第3凹部37を区切る。例えば、図3Eに示すように、応力分散領域24の第2面20b側において、各第3凹部37は、複数の稜線39によって囲まれてもよい。
【0070】
なお、図3B図3Eでは、第3凹部37は第2面20bに形成された例を示す。しかしながら、これに限定されることなく、第3凹部37は、第2面20bに形成されてもよいし、第1面20aに形成されてもよいし、それらの両方に形成されてもよい。例えば、第2面20b側に第3凹部37を形成することにより、第2面20b側における有孔領域22と周囲領域23との体積差が小さくなり、応力分散効果がより向上し、架張時のシワ発生等がより抑制される傾向にある。第3凹部37の平面視における面積は、第2面20bから第1面20aへ向けて、次第に小さくなってもよい。
【0071】
第3凹部37は、所望のパターンで形成されてもよい。例えば、第3凹部37は、互いに交差する二方向(D1,D2)に沿ってそれぞれ所定のピッチで格子状に配列されてもよい。例えば、図3Aに示すように、隣り合う第3凹部37は面方向に沿って隣接してもよい。言い換えれば、隣り合う第3凹部37の第3壁面38が合流してもよい。また、図4Aに示すように、隣り合う第3凹部37は面方向に沿って離間してもよい。言い換えれば、隣り合う第3凹部37の第3壁面38が合流していなくてもよい。さらに、図4Bに示すように、所定の方向において、隣り合う第3凹部37は隣接しており、他の方向において、隣り合う第3凹部37は離間してもよい。
【0072】
また、第3凹部37は、互いに交差する二方向に沿ってそれぞれ所定のピッチで千鳥状に配列されてもよい。例えば、図4Cに示すように、隣り合う第3凹部37は面方向に沿って隣接してもよい。言い換えれば、隣り合う第3凹部37の第3壁面38が合流してもよい。また、図4Dに示すように、隣り合う第3凹部37は面方向に沿って離間してもよい。言い換えれば、隣り合う第3凹部37の第3壁面38が合流していなくてもよい。さらに、図4Eに示すように、所定の方向において、隣り合う第3凹部37は隣接しており、他の方向において、隣り合う第3凹部37は離間してもよい。
【0073】
上記二方向とは、メタルマスク20の長尺方向D2又は幅方向D1に一致してもよい。応力分散領域24における第3凹部37のピッチは、特に限定されないが、幅方向D1及び長尺方向D2のそれぞれにおいて、20μm以上254μm以下程度であってもよい。
【0074】
その他、第3凹部37は、上記以外の任意のパターンで配置されてもよい。また、その際に、隣り合う第3凹部37の壁面は、合流してもよいし、しなくてもよい。
【0075】
第3凹部37を平面視したとき開口形状は、円形、楕円形、四角形など様々な形状を有してもよい。例えば、図4Fに示すように、楕円形の第3凹部37が千鳥状に配列されてもよい。また、長尺な四角形が配列した、ストライプ状であってもよい。
【0076】
第3凹部37の平面視における開口形状は、長さRの短軸を有する。図4A及び図4Dのように、隣り合う第3凹部37は面方向に沿って離間している場合は、第2面20bにおける第3凹部37の開口形状から、短軸の長さRを特定してもよい。また、図3A図3Eなどのように、隣り合う第3凹部37は面方向に沿って隣接している場合は、1つの第3凹部37を囲う稜線39で閉じた範囲S4から、短軸の長さRを特定してもよい。
【0077】
開口形状における短軸とは、開口形状の重心点を通り開口形状を二分する線分のうち、その長さが最も短くなる線分をいう。
【0078】
より具体的には、開口形状が矩形であれば、短軸の方向と長さRはその短辺の方向と長さと一致する(図4A図4E参照)。開口形状が正方形であれば、短軸の方向と長さRはそのいずれかの辺の方向と長さと一致する。開口形状がひし形であれば、短軸の方向と長さRは短いほうの対角線の方向と長さと一致する。開口形状が楕円形であれば、短軸の方向と長さRはその短径の方向と長さと一致する(図4F参照)。開口形状が円形であれば、短軸の方向と長さRはその直径の方向と長さと一致する。
【0079】
また、本実施形態においてピッチPとは、短軸方向に並ぶ第3凹部37の間隔である。ピッチPは、短軸方向に並ぶ第3凹部37の重心点の間隔であってもよい。例えば、図4A図4Bのように格子状に第3凹部37が配列する場合には、短軸方向に隣り合う第3凹部37の間隔がピッチPとなる。また、図4C図4Fでは、短軸方向に隣り合う第3凹部37は、D1方向に位置ずれして、千鳥状に配列する。このような位置ずれがあるとしても、図4C図4Fのように、短軸方向に隣り合う第3凹部37の間隔がピッチPとなる。
【0080】
短軸長さRは、好ましくは、250μm以下であってもよく、225μm以下であってもよく、200μm以下であってもよく、175μm以下であってもよく、150μm以下であってもよく、125μm以下であってもよく、100μm以下であってもよく、75μm以下であってもよく、50μm以下であってもよく、40μm以下であってもよく、30μm以下であってもよい。また、短軸長さRは、好ましくは、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、40μm以上であってもよく、50μm以上であってもよく、60μm以上であってもよく、70μm以上であってもよく、80μm以上であってもよく、90μm以上であってもよく、100μm以上であってもよい。
【0081】
応力分散領域24は、短軸方向にピッチPで並ぶ第3凹部37を有する。ピッチPは、好ましくは、300μm以下であってもよく、250μm以下であってもよく、225μm以下であってもよく、200μm以下であってもよく、175μm以下であってもよく、150μm以下であってもよく、125μm以下であってもよく、100μm以下であってもよく、75μm以下であってもよく、50μm以下であってもよい。また、ピッチPは、好ましくは、20μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、40μm以上であってもよく、50μm以上であってもよく、60μm以上であってもよく、70μm以上であってもよく、80μm以上であってもよく、90μm以上であってもよく、100μm以上であってもよい。
【0082】
また、ピッチPに対する長さRの比(R/P)は、0.90以上であり、好ましくは、0.92以上であってもよく、0.94以上であってもよく、0.96以上であってもよく、0.98以上であってもよい。比(R/P)は、好ましくは、1.00以下であってもよく、0.99以下であってもよく、0.98以下であってもよい。
【0083】
なお、図3Aに示すように、隣り合う第3凹部37の第3壁面38が合流する場合は、短軸方向に並ぶ第3凹部37のピッチPと、短軸の長さRは等しくなる。そのため、この場合の比(R/P)は、1.00となる。
【0084】
短軸長さR、及び比(R/P)を上記下限値以上にすることにより、応力分散領域24において、第3凹部37がより大きくかつ近く構成される。そのため、応力分散領域24によって応力をより均一に分散できる。これにより、メタルマスクに張力をかけた場合でも、シワが生じにくく、設置位置精度を向上できる。また、短軸長さR1及び比(R/P)を上記上限値以下にすることにより、メタルマスクの強度がより向上する傾向にある。
【0085】
また、ピッチPを上記上限値以下にすることにより、応力分散領域24において、隣り合う第3凹部37がより近く構成される。そのため、応力分散領域24によって応力をより均一に分散できる。これにより、メタルマスクに張力をかけた場合でも、シワが生じにくく、設置位置精度を向上できる。また、ピッチPを上記下限値以上にすることにより、メタルマスクの強度がより向上する傾向にある。
【0086】
なお、短軸長さR、ピッチP、及び比(R/P)の範囲は、上述の複数の下限の候補値のうちの任意の1つと、上述の複数の上限の候補値のうちの任意の1つの組み合わせによって定められてもよい。
【0087】
応力分散領域24の最も薄い部分は、高さH1を有する。応力分散領域24の最も薄い部分は、応力分散領域24における第3凹部37の底の部分であってもよい。例えば、第3凹部37が第2面20bに形成される場合は、高さH1は第1面20aから第3凹部37の底までの高さであってもよい。また、第3凹部37が第1面20aに形成される場合は、高さH1は第2面20bから第3凹部37の底までの高さであってもよい。なお、第3凹部37の底とは、応力分散領域24において高さが極小となる部分であってもよい。
【0088】
高さH1は、好ましくは、45μm以下であってもよく、40μm以下であってもよく、35μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、25μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。高さH1は、好ましくは、2.5μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。
【0089】
また、高さH0に対する高さH1の比(H1/H0)は、好ましくは、0.20以上であってもよく、0.25以上であってもよく、0.30以上であってもよく、0.35以上であってもよく、0.40以上であってもよく、0.45以上であってもよい。また、H1の比(H1/H0)は、好ましくは、0.80以下であってもよく、0.75以下であってもよく、0.70以下であってもよく、0.65以下であってもよく、0.60以下であってもよく、0.55以下であってもよい。
【0090】
高さH1及び比(H1/H0)を上記範囲内にすることにより、応力の分散性能が向上し、また、その均一分散性がより向上する傾向にある。
【0091】
なお、高さH1及び比(H1/H0)の範囲は、上述の複数の下限の候補値のうちの任意の1つと、上述の複数の上限の候補値のうちの任意の1つの組み合わせによって定められてもよい。
【0092】
応力分散領域24は周囲領域23の任意の位置に形成することができる。以下、図1を参照して、周囲領域23における、応力分散領域24の位置の例について説明する。図1には、位置に応じて、応力分散領域24a~24dを示す。
【0093】
応力分散領域24は、周囲領域23の縁23bと有孔領域22との間に位置してもよい。図1において、周囲領域23の縁23bは、一対の長辺23cと一対の短辺23dとを有する。このとき、応力分散領域24aは、長辺23cと有孔領域22との間に位置してもよい。また、応力分散領域24c,24dは、短辺23dと有孔領域22との間に位置してもよい。さらに、応力分散領域24aは、有孔領域22の周囲に位置してもよいし、応力分散領域24aは有孔領域22の周囲を囲むように位置してもよい。
【0094】
長尺方向D2において、応力分散領域24aの幅L1と、有孔領域22の幅L2は、略同一としてもよい。幅L2に対する幅L1の比(L1/L2)は、好ましくは、0.80以上であってもよく、0.90以上であってもよく、1.00以上であってもよい。また、比(L1/L2)は、好ましくは、2.00以下であってもよく、1.50以下であってもよく、1.20以下であってもよく、1.10以下であってもよく、1.00以下であってもよい。
【0095】
幅方向D1において、応力分散領域24c,24dの幅L3と、有孔領域22の幅L4は、略同一としてもよい。幅L4に対する幅L3の比(L3/L4)は、好ましくは、0.80以上であってもよく、0.90以上であってもよく、1.00以上であってもよい。また、比(L3/L4)は、好ましくは、1.20以下であってもよく、1.10以下であってもよく、1.00以下であってもよい。
【0096】
幅方向D1において、応力分散領域24c,24dの幅L3と、周囲領域23の幅L0は、略同一としてもよい。幅L0に対する幅L3の比(L3/L0)は、好ましくは、0.70以上であってもよく、0.80以上であってもよく、0.90以上であってもよい。また、比(L3/L0)は、好ましくは、0.95以下であってもよく、0.90以下であってもよく、0.85以下であってもよい。
【0097】
有孔領域22が複数あるとき、応力分散領域24bは、複数の有孔領域22の間に位置してもよい。
【0098】
幅方向D1において、応力分散領域24bの幅L5と、有孔領域22の幅L4は、略同一としてもよい。幅L4に対する幅L5の比(L5/L4)は、好ましくは、0.80以上であってもよく、0.90以上であってもよく、1.00以上であってもよい。また、比(L5/L4)は、好ましくは、1.20以下であってもよく、1.10以下であってもよく、1.00以下であってもよい。
【0099】
幅方向D1において、応力分散領域24bの幅L5と、周囲領域23の幅L0は、略同一としてもよい。幅L0に対する幅L5の比(L5/L0)は、好ましくは、0.70以上であってもよく、0.80以上であってもよく、0.90以上であってもよい。また、比(L5/L0)は、好ましくは、0.95以下であってもよく、0.90以下であってもよく、0.85以下であってもよい。
【0100】
周囲領域23は、カットライン26を有してもよい。カットライン26は、周囲領域23を切断する際の切断線となる。カットライン26は、例えば、貫通孔又はハーフエッチング等された凹部が、所定の間隔で並ぶ列であってもよい。カットライン26において、周囲領域23は切断可能としてもよい。例えば、メタルマスク20をフレーム15に溶接した後、溶接した個所よりも外側に位置するカットライン26において、周囲領域23を切断可能としてもよい。
【0101】
応力分散領域24cは、カットライン26と有孔領域22の間に位置してもよい。また、応力分散領域24dは、カットライン26と短辺23dの間に位置してもよい。言い換えれば、カットライン26は、応力分散領域24dと有孔領域22の間に位置してもよい。
【0102】
応力分散領域24は、矩形状であってもよいし、略扇状、多角形状、円状、又は楕円状であってもよい。有孔領域22と応力分散領域24は、ともに矩形状を有してもよい。このとき、応力分散領域24の一辺は、有孔領域22の一辺と略並行に位置してもよい。
【0103】
本開示の一実施形態に係るメタルマスクの製造方法は、第1面51aと、第1面51aの反対側に位置する第2面51bと、を有する金属板51を準備する準備工程と、金属板51をエッチングすることによって上記メタルマスク20を形成するエッチング工程と、を備える。
【0104】
なお、以下においては、エッチングによりメタルマスク20を製造する方法について説明するが、メタルマスク20は、エッチングにより形成されたものであっても、レーザー加工により形成されたものであっても、電鋳法により形成されたものであってもよい。
【0105】
本開示の一実施形態に係るメタルマスク20の製造方法について、主に図5A図5Fを参照して説明する。図5Aは、金属板51を用いてメタルマスク20を製造する製造装置70を、その処理順序とともに示す概略図である。図5Aには、レジスト膜形成装置71から剥離装置74まで、金属板51が連続して供給される例が示されている。しかしながら、本開示のメタルマスク20の製造方法は、これに限定されず、例えば、各装置による処理を経るごとに金属板51を巻き取って巻回体の状態としてもよい。また、各装置に金属板51を供給するときには、巻回体から金属板51を巻きだして供給してもよい。
【0106】
以下、メタルマスク20の製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0107】
まず、所望の厚さを有する金属板51を準備する(準備工程)。金属板51は巻回体50の状態であってもよい。所望の厚さを有する金属板51を作製する方法としては、特に限定されないが、例えば、圧延法、めっき成膜法などが挙げられる。
【0108】
続いて、レジスト膜形成装置71を用いて、金属板51の第1面51a及び第2面51bに、レジスト膜53a、53bを形成する(図5B)。具体的には、レジスト膜53a、53bは、ドライフィルムレジストを第1面51a及び第2面51bに貼り付けることによって形成してもよい。また、レジスト膜53a、53bは、感光性レジスト材料を含む塗布液を第1面51a及び第2面51bに塗布し、乾燥して形成してもよい。
【0109】
ドライフィルムレジストや塗布液としては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。また、このようにして形成されるレジスト膜53a、53bはネガ型レジストであってもポジ型レジストであってもよい。なかでも、ネガ型が好ましく用いられる。
【0110】
レジスト膜53a、53bの厚さは、15μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、6μm以下であってもよく、4μm以下であってもよい。また、レジスト膜53a、53bの厚さは、1μm以上であってもよく、3μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、7μm以上であってもよい。レジスト膜53a、53bの厚さの範囲は、上述の複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、上述の複数の下限の候補値のうちの任意の1つの組み合わせによって定められてもよい。
【0111】
続いて、露光・現像装置72を用いて、レジスト膜53a、53bを露光及び現像する。これにより、図5Cに示すように、第1面51a上に第1レジストパターン53cを形成し、第2面51b上に第2レジストパターン53dを形成できる。例えば、ネガ型のレジスト膜を用いた場合には、レジスト膜のうちの除去したい領域に光を透過させないようにしたフォトマスクをレジスト膜上に配置し、レジスト膜をフォトマスク越しに露光し、さらにレジスト膜を現像するようにしてもよい。
【0112】
続いて、エッチング装置73を用いて、第1レジストパターン53c、第2レジストパターン53dをマスクとして金属板51をエッチングする(エッチング工程)。エッチング工程は、第1面エッチング工程及び第2面エッチング工程を含んでもよい。
【0113】
図5Dに、有孔領域22における第1面エッチング工程の一例を表す概略図を示す。第1面エッチング工程においては、第1面51aのうち第1レジストパターン53cによって覆われていない領域を、エッチング液を用いてエッチングする。この際、第2面51bは、エッチング液に対する耐性を有する樹脂などによって覆われてもよい。
【0114】
エッチング液により、第1レジストパターン53cによって覆われていない第1面51aにおいて、浸食が進む(図5D)。これによって、第1面51aに多数の第1凹部30が形成される。なお、金属板51のエッチングはレジストパターンの穴から様々な方向に向けて等方的に進行し得る。そのため、メタルマスク20の厚さ方向に沿った各位置における第1凹部30や第2凹部35の断面積は、表面から厚さ方向に進行するにしたがって次第に小さくなっていくような形状となる。
【0115】
図5Eに、有孔領域22における第2面エッチング工程の一例を表す概略図を示す。第2面エッチング工程においては、第2面51bのうち第2レジストパターン53dによって覆われていない領域を、エッチング液を用いてエッチングする。この際、第1面エッチング工程において第2面51bを覆っていたフィルムなどは予め剥離してもよい。また、第1面51aは、エッチング液に対する耐性を有する樹脂54などによって覆われてもよい。
【0116】
エッチング液により、第2レジストパターン53dによって覆われていない第2面51bにおいて、浸食が進む(図5E)。これによって、第2面51bに第2凹部35が形成される。そして、第1凹部30と第2凹部35とが互いに通じ合い、これによって貫通孔25が形成される。
【0117】
エッチング液としては、従来公知のものであれば特に限定されないが、例えば、塩化第2鉄溶液及び塩酸を含むものが挙げられる。
【0118】
第2面エッチング工程においては、図5Eに示すように、隣り合う第2凹部35が接続されるまでエッチングを進行してもよい。隣り合う第2凹部35が接続された箇所においては、隣り合う第2凹部35が合流して稜線33が形成される。また、稜線33は第2レジストパターン53dから離間して、稜線33の頂部においてエッチングによる浸食が金属板51の厚さ方向にも進む。これにより、第2レジストパターン53dが金属板51から剥離する。なお、隣り合う第2凹部35の間に第2面51bが部分的に残ってもよい。
【0119】
図5Fに、応力分散領域24における第2面エッチング工程の一例を表す概略図を示す。有孔領域22の第2凹部35と応力分散領域24の第3凹部37とは、同じ第2面エッチング工程によって形成してもよい。第2面エッチング工程においては、図5Fに示すように、隣り合う第3凹部37が接続されるまでエッチングを進行してもよい。隣り合う第3凹部37が接続された箇所においては、隣り合う第3凹部37が合流して稜線39が形成される。
【0120】
さらに、剥離装置74を用いて、レジストパターンやエッチング液に耐性を有する樹脂54などを金属板51から剥離する。そして、分離装置75を用いて、長尺の金属板51を裁断することによって、枚葉状の金属板からなるメタルマスク20を金属板51から分離する分離工程を実施する。このようにして、メタルマスク20を得ることができる。
【0121】
本開示の一実施形態によるメタルマスク装置10は、フレーム15と、フレーム15に設置された上記メタルマスク20と、を有する。メタルマスク20は、第2面20bがフレーム15と接触して、フレーム15に設置されてもよい。図6に、メタルマスク装置10をメタルマスク20の第1面20a側から見た平面図を示す。また、図7に、蒸着装置を表す断面図を示す。
【0122】
本開示のメタルマスク装置10は、一つのフレームに対して複数のメタルマスク20が取り付けられてもよい(図6)。この場合、複数のメタルマスク20は、メタルマスク20の長尺方向D2に交差する幅方向D1に並んでもよい。また、各メタルマスク20は、メタルマスク20の長尺方向D2の両端部23aにおいて、フレーム15に固定されてもよい。
【0123】
また、一つのフレーム15に対して図1Cに示すような一枚のメタルマスク20が取り付けられてもよい。このとき、メタルマスク20は、周囲領域23の端部23aにおいて、フレーム15に固定されてもよい。
【0124】
フレーム15への固定方法は、特に限定されないが、例えば、溶接などが挙げられる。
【0125】
メタルマスク装置10は、フレーム15に固定され、メタルマスク20の厚さ方向においてメタルマスク20に部分的に重なる部材を備えてもよい。そのような部材の例としては、特に限定されないが、例えば、メタルマスク20の長尺方向に交差する方向に延び、メタルマスク20を支持する部材、隣り合う2つのメタルマスクの間の隙間に重なる部材などが挙げられる。
【0126】
次に、本開示に係るメタルマスク20を用いて有機EL表示装置を製造する方法について、図7を参照しつつ説明する。有機EL表示装置は、基板92と、パターン状に設けられた蒸着材料98を含む蒸着層と、を積層した状態で備えてもよい。
【0127】
本開示の一実施形態の有機EL表示装置の製造方法は、特に限定されないが、例えば、メタルマスク20を用いて基板92などの基板上に蒸着材料98を蒸着させる蒸着工程を備える。
【0128】
蒸着工程においては、まず、メタルマスク20が基板92に対向するようメタルマスク装置10を配置する。この際、図7に示すように、メタルマスク20の第1面20aが基板92に対向するようにしてもよい。ここで、基板92は、ガラス基板などの蒸着対象物である。
【0129】
図7に示すようにしてメタルマスク装置10が蒸着装置90に収容された場合、基板92に対面するメタルマスク20の面が第1面20aであり、蒸着材料98を保持したるつぼ94側に位置するメタルマスク20の面が第2面20bである。蒸着装置90内では、基板92のるつぼ94側の面にメタルマスク20が配される。ここで、メタルマスク20と基板92とは、磁力によって密着してもよい。
【0130】
蒸着装置90内には、メタルマスク装置10の下方に、蒸着材料98を収容するるつぼ94と、るつぼ94を加熱するヒータ96とが配置されてもよい。ここで、蒸着材料98は、一例として、有機発光材料であってもよい。るつぼ94内の蒸着材料98は、ヒータ96からの加熱により気化または昇華する。気化または昇華した蒸着材料98は、メタルマスク20の貫通孔25を経て基板92に付着する。これにより、メタルマスク20の貫通孔25の位置に対応した所望のパターンで、蒸着材料98が基板92の表面に成膜される。なお、蒸着工程において、蒸着装置90の内部は真空雰囲気にしてもよい。
【0131】
RGBなどの画素に応じて異なる種類の蒸着材料を蒸着したい場合には、蒸着材料98の色に応じて異なるメタルマスク20を用いて、蒸着材料98を基板92の表面に成膜してもよい。例えば、赤色用の蒸着材料98、緑色用の蒸着材料98および青色用の蒸着材料98を順に基板92に蒸着してもよい。また、貫通孔25の配列方向(前述の一方向)に沿ってメタルマスク20(メタルマスク装置10)と基板92とを少しずつ相対移動させ、赤色用の蒸着材料98、緑色用の蒸着材料98および青色用の蒸着材料98を順に蒸着してもよい。
【0132】
また、有機EL表示装置の製造方法は、メタルマスク20を用いて基板92などの基板上に蒸着材料98を蒸着させる蒸着工程以外にも、様々な工程を備えてもよい。例えば、有機EL表示装置の製造方法は、基板に第1電極を形成する工程を備えてもよい。蒸着層は、第1電極の上に形成される。また、有機EL表示装置の製造方法は、蒸着層の上に第2電極を形成する工程を備えてもよい。また、有機EL表示装置の製造方法は、基板92に設けられている第1電極、蒸着層、第2電極を封止する封止工程を備えてもよい。
【0133】
メタルマスク20を用いて基板92などの基板上に形成される蒸着層は、上述の有機発光材料が蒸着して形成した発光層には限られず、その他の層を含んでもよい。例えば、蒸着層は、第1電極側から順に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含んでもよい。この場合、各層に対応するメタルマスク20を用いた蒸着工程がそれぞれ実施されてもよい。
【0134】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0135】
(変形例)
第1の変形例として、メタルマスク20は、複数の有孔領域22の列を複数有してもよい。言い換えると、複数の有孔領域22は、格子状に配列されてもよい。この場合にも、応力分散領域24は、周囲領域23の縁23bと有孔領域22との間に位置してもよい。また、応力分散領域24は、複数の有孔領域22の間に位置してもよい。
【0136】
メタルマスク20が複数の有孔領域22の列を複数有してするときは、一つのフレーム15に対して一枚のメタルマスク20が取り付けられてもよい。この場合には、端部23aはメタルマスク20の周縁に位置してもよい。端部23aがカットライン26を有する場合には、応力分散領域24cは、カットライン26と有孔領域22の間に位置してもよい。また、応力分散領域24dは、カットライン26と短辺23dの間に位置してもよい。
【0137】
第3の変形例として、一つの有孔領域22は、複数の有機EL表示装置に対応するように構成されてもよい。例えば、有孔領域22は、第1有孔領域と第2有孔領域とを有してもよい。この例では一つの第1有孔領域が一つの有機EL表示装置に対応するように構成されてもよい。また、第2有孔領域が隣り合う第1有孔領域を分割するように位置してもよい。
【0138】
第1有孔領域と第2有孔領域は、貫通孔の密度が異なってもよい。より具体的には、第1有孔領域における貫通孔の密度は、第2有孔領域における貫通孔の密度よりも高くてもよい。ここで、貫通孔の密度とは、単位面積当たりの貫通孔の総面積をいう。また、一つの貫通孔の面積とは、平面視にて最小となる貫通孔の開口における面積をいう。ここで、平面視にて最小となる貫通孔の開口とは、接続部41で囲われた開口であってもよい。
【0139】
第3の変形例として、エッチングに代えて、レーザー照射機を用いてレーザー光を照射することにより、第1凹部30,第2凹部35,および第3凹部37を形成してもよい。
【実施例0140】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0141】
(実施例)
上述のメタルマスクの製造方法にて、金属板に第1凹部及び第2凹部からなる貫通孔と第3凹部を有するメタルマスクを製造した。この際、第3凹部の短軸長さRと、短軸方向に並ぶピッチPが所定の関係を有するようにした。また、メタルマスクの原材料となる金属板は、インバー材とした。
【0142】
(比較例)
第3凹部の短軸長さRと、短軸方向に並ぶピッチPが、表1に記載する所定の関係を有するようにしたこと以外は、実施例と同様にして、メタルマスクを得た。
【0143】
(評価)
メタルマスク長さ方向に引張力を掛けてメタルマスクをフレームに架張溶接する際に、マスク幅方向に発生する波打ちを、架張溶接後のwave量として測定した。具体的には、メタルマスクをフレームに架張溶接したものを、新東Sプレシジョン(株)製のμ-M1000を用いた3次元測定を行ってWave量を得た。得られたwave量に基づいて、下記評価基準により、シワの発生を評価した。
◎・・・架張溶接後のwave量が100μm以下である。
〇・・・架張溶接後のwave量が100μm超過200μm以下である。
×・・・架張溶接後のwave量が200μm超過である。
【0144】
なお、上記wave量が100μm以下とは、メタルマスクの基板への密着性もよく、メタルマスクの浮きがほぼ無い状態であり、上記wave量が100μm超過200μm以下とは、マグネッティングによりメタルマスクが基板へ密着しボケが無い状態であり、wave量が200μm超過とは、メタルマスクと基板の密着不良によりボケが生じる状態である。
【0145】
なお、上記「所定の工程」とは、メタルマスクを製造し、製造したメタルマスクをフレームに架張溶接してメタルマスク装置を製造し、得られたメタルマスク装置用いて蒸着を行い、メタルマスク装置を洗浄してから再び蒸着に使用するまでの一連の工程を言う。
【0146】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明のメタルマスクは、有機EL表示装置の製造に使用するメタルマスクなどとして、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0148】
10…メタルマスク装置、15…フレーム、20…メタルマスク、20a…第1面、20b…第2面、22…有孔領域、22…有効領域、23…周囲領域、23a…端部、23a…両端部、23b…縁、23c…長辺、23d…短辺、24…応力分散領域、24a…応力分散領域、24b…応力分散領域、24c…応力分散領域、24d…応力分散領域、25…貫通孔、26…カットライン、30…第1凹部、31…第1壁面、32…トップ部、33…稜線、34…以上、35…第2凹部、36…第2壁面、37…第3凹部、38…第3壁面、39…稜線、41…接続部、50…巻回体、51…金属板、51a…第1面、51b…第2面、53a…レジスト膜、53b…レジスト膜、53c…第1レジストパターン、53d…第2レジストパターン、54…樹脂、54…以上、70…製造装置、71…レジスト膜形成装置、72…露光・現像装置、73…エッチング装置、74…剥離装置、75…分離装置、90…蒸着装置、92…基板、96…ヒータ、98…蒸着材料
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
図7