(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055262
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】電池ケース
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20240411BHJP
H01M 50/213 20210101ALI20240411BHJP
E03C 1/05 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H01M50/204 101
H01M50/213
H01M50/204 201
E03C1/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162042
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富成 巧磨
【テーマコード(参考)】
2D060
5H040
【Fターム(参考)】
2D060BA03
2D060BB07
2D060BF10
2D060CA15
2D060CC18
5H040AA32
5H040AS22
5H040AT01
5H040AY04
5H040AY08
5H040CC02
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】外部からの水の浸入防止と湿気を含んだ空気の放出とを適切に行うことが可能な電池ケースを提供すること。
【解決手段】筒形の乾電池DBを電気的に接続するように収容する電池収容部11Aを有する電池ケース3であって、電池収容部11Aを内部に備えるケース部材10と、ケース部材10に形成され、電池収容部11Aを外部と連通させる通気孔A2と、通気孔A2を覆う透湿性及び防水性を有する透湿防水シートSと、を有し、通気孔A2が、電池収容部11Aの電池軸方向Lとは交差する方向に貫通する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形の乾電池を電気的に接続するように収容する電池収容部を有する電池ケースであって、
前記電池収容部を内部に備えるケース部材と、
該ケース部材に形成され、前記電池収容部を外部と連通させる通気孔と、
該通気孔を覆う透湿性及び防水性を有する透湿防水シートと、を有し、
前記通気孔が、前記電池収容部の電池軸方向とは交差する方向に貫通する電池ケース。
【請求項2】
請求項1に記載の電池ケースであって、
前記ケース部材が、
前記電池収容部と該電池収容部を前記交差する方向に開口させる開口部とを備える本体ケースと、
前記開口部を覆い塞ぐように前記本体ケースに取り付けられる蓋ケースと、を有し、
前記蓋ケースに前記通気孔が形成される電池ケース。
【請求項3】
請求項2に記載の電池ケースであって、
前記蓋ケースが、前記本体ケースに周囲を覆うように前記電池軸方向にスライド嵌合される筒構造とされ、
前記本体ケースが、更に、前記電池収容部を間に挟む前記電池軸方向の2箇所の外周部に装着されて前記電池収容部を前記蓋ケースとの間で密封するように前記蓋ケースの筒内周面に筒周方向の全域に亘って密着するOリングを有する電池ケース。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の電池ケースであって、
前記電池収容部が、2本以上の円筒形の前記乾電池を並列に収容し、
前記通気孔が、2本以上の前記乾電池の各中心軸線から並び方向に外れた位置に形成される電池ケース。
【請求項5】
請求項4に記載の電池ケースであって、
前記通気孔が、隣り合う前記乾電池の間の前記並び方向の中央位置に形成される電池ケース。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の電池ケースであって、
前記透湿防水シートが、前記ケース部材のケース外周面上に重ね合わせ状に設けられる電池ケース。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の電池ケースであって、
前記通気孔が、前記ケース部材の外周面を構成する各構成面のうち、前記ケース部材の周囲にある接触部材と接触しない前記構成面に形成される電池ケース。
【請求項8】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の電池ケースであって、
前記ケース部材が、前記通気孔が前記ケース部材から鉛直上向きに開口する配置とされる電池ケース。
【請求項9】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の電池ケースであって、
前記ケース部材が、吐水口を備える水栓本体の開閉可能な天板蓋の直下に内包されるように配置される電池ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池ケースに関する。詳しくは、筒形の乾電池を電気的に接続するように収容する電池収容部を有する電池ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、乾電池を収容する電池ケースが開示されている。この電池ケースは、内部の気体を外部へ放出可能な通気孔と、通気孔を塞ぐ防水性及び透湿性を有するフィルムと、を備える。それにより、電池ケースは、通気孔から外部の水が浸入することが防止される一方、ケース内部の湿気を含んだ空気が通気孔から放出される構成とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電池ケースでは、通気孔が、乾電池を収容する電池収容部の電池軸方向に貫通するように形成されている。そのため、ケース内部の湿気を含んだ空気を通気孔から放出する際の経路が長くなってしまう。また、電池収容部の乾電池の電極と接続される端子板を通気孔から離間させて経路を確保する必要があるため、端子板の配置が制約されやすい。そこで、本発明は、外部からの水の浸入防止と湿気を含んだ空気の放出とを適切に行うことが可能な電池ケースを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の電池ケースは、次の手段をとる。すなわち、本発明の第1の発明は、筒形の乾電池を電気的に接続するように収容する電池収容部を有する電池ケースであって、前記電池収容部を内部に備えるケース部材と、該ケース部材に形成され、前記電池収容部を外部と連通させる通気孔と、該通気孔を覆う透湿性及び防水性を有する透湿防水シートと、を有し、前記通気孔が、前記電池収容部の電池軸方向とは交差する方向に貫通する電池ケースである。
【0006】
第1の発明によれば、ケース部材に電池軸方向とは交差する方向に貫通する通気孔が形成され、そこに透湿防水シートが張られることで、ケース内部の湿気を含んだ空気が通気孔から放出されるまでの経路を短くすることができる。このような電池ケースにより、外部からの水の浸入防止と湿気を含んだ空気の放出とを適切に行うことができる。
【0007】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記ケース部材が、前記電池収容部と該電池収容部を前記交差する方向に開口させる開口部とを備える本体ケースと、前記開口部を覆い塞ぐように前記本体ケースに取り付けられる蓋ケースと、を有し、前記蓋ケースに前記通気孔が形成される電池ケースである。
【0008】
第2の発明によれば、電池収容部の開口部を覆い塞ぐ蓋ケースに通気孔を形成することで、ケース部材に電池軸方向とは交差する方向に貫通する通気孔を簡素かつ適切に形成することができる。
【0009】
本発明の第3の発明は、上記第2の発明において、前記蓋ケースが、前記本体ケースに周囲を覆うように前記電池軸方向にスライド嵌合される筒構造とされ、前記本体ケースが、更に、前記電池収容部を間に挟む前記電池軸方向の2箇所の外周部に装着されて前記電池収容部を前記蓋ケースとの間で密封するように前記蓋ケースの筒内周面に筒周方向の全域に亘って密着するOリングを有する電池ケースである。
【0010】
第3の発明によれば、蓋ケースのスライド嵌合により覆い塞がれるタイプの電池収容部を外部に対してより適切に密閉することができる。したがって、外部から電池収容部への水の浸入をより適切に防止することができる。
【0011】
本発明の第4の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明において、前記電池収容部が、2本以上の円筒形の前記乾電池を並列に収容し、前記通気孔が、2本以上の前記乾電池の各中心軸線から並び方向に外れた位置に形成される電池ケースである。
【0012】
第4の発明によれば、通気孔が、乾電池の中心軸線から並び方向に外れた位置に形成されることで、ケース内部から通気孔への経路が乾電池により塞がれにくくなる。したがって、ケース内部の湿気を含んだ空気の放出をより適切に行うことができる。
【0013】
本発明の第5の発明は、上記第4の発明において、前記通気孔が、隣り合う前記乾電池の間の前記並び方向の中央位置に形成される電池ケースである。
【0014】
第5の発明によれば、通気孔が、隣り合う乾電池と乾電池との間の谷間に面した位置に形成される。それにより、ケース内部から通気孔への経路をより広く確保することができ、ケース内部の湿気を含んだ空気の放出をより適切に行うことができる。
【0015】
本発明の第6の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明において、前記透湿防水シートが、前記ケース部材のケース外周面上に重ね合わせ状に設けられる電池ケースである。
【0016】
第6の発明によれば、透湿防水シートにより、通気孔の凹みが外部に露出しないようにケース外周面と面一状に覆い塞がれる。それにより、通気孔に水が溜まって湿気を含んだ空気を外部に放出できなくなる事態を適切に防止することができる。
【0017】
本発明の第7の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明において、前記通気孔が、前記ケース部材の外周面を構成する各構成面のうち、前記ケース部材の周囲にある接触部材と接触しない前記構成面に形成される電池ケースである。
【0018】
第7の発明によれば、通気孔から外部への経路を適切に確保することができる。よって、ケース内部の湿気を含んだ空気の放出をより適切に行うことができる。
【0019】
本発明の第8の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明において、前記ケース部材が、前記通気孔が前記ケース部材から鉛直上向きに開口する配置とされる電池ケースである。
【0020】
第8の発明によれば、通気孔がケース部材から鉛直上向きに開口することで、ケース内部の湿気を含んだ空気をより適切に外部に放出することができる。
【0021】
本発明の第9の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明において、前記ケース部材が、吐水口を備える水栓本体の開閉可能な天板蓋の直下に内包されるように配置される電池ケースである。
【0022】
第9の発明によれば、電池ケースを、天板蓋の開放により外部からの水の浸入に晒されやすくなる水まわり環境に適応させて適切に機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1の実施形態に係る電池ケースが適用された自動水栓の斜視図である。
【
図3】自動水栓から天板蓋を外した分解斜視図である。
【
図5】本体ケースから蓋ケースを外した分解斜視図である。
【
図6】
図5をケース裏側から見た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0025】
《第1の実施形態》
(電池ケース3の概略構成)
始めに、本発明の第1の実施形態に係る電池ケース3の構成について、
図1~
図10を用いて説明する。なお、以下の説明において、手前、奥、上、下、左、右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。各図中に示す方向は、それぞれ、本実施形態に係る電池ケース3が適用された自動横水栓1を正面から見た方向となっている。以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、
図1~
図10のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0026】
図1~
図2に示すように、本実施形態に係る電池ケース3は、洗面化粧台に設置される自動横水栓1の水栓本体2に組み込まれている。水栓本体2は、洗面化粧台の上部に設置されている。水栓本体2は、洗面化粧台の下側から供給される水をその先端下部の吐水口2Aから吐出したり止めたりすることが可能な「吐止水機能」を備える。
【0027】
具体的には、上記の吐止水機能は、水栓本体2の吐水口2Aの近傍に設けられた不図示のセンサにより検知される使用者の手の差し出しの有無に応じて、吐水/止水の切り替えを行うものとなっている。吐水/止水の切り替えは、水栓本体2の内部に設けられた不図示の電磁弁の開弁/閉弁の切り替えによって行われる。
【0028】
図2に示すように、水栓本体2の内部には、上記不図示のセンサや電磁弁に駆動用の電力を供給するための乾電池DBを備える電池ケース3が組み込まれている。電池ケース3は、水栓本体2の底板部分を成す本体ベース2B上に設置されている。本体ベース2Bには、その他にも、水栓本体2の内部に通される不図示の吐水管や電磁弁が設置されている。
【0029】
電池ケース3は、詳しくは、本体ベース2Bの手前上部に形成された基台2D上に載置されている。なお、電池ケース3は、図示は省略されているが、その周縁部が基台2Dに形成された複数の爪にスナップフィット嵌合されて着脱可能に固定されるものであっても良い。また、電池ケース3は、基台2Dに形成された枠部に上方からセットされることで、基台2Dに対して前後左右の水平方向にのみ位置固定された状態に保持されるものであっても良い。
【0030】
基台2Dは、本体ベース2Bから底上げされた台座形状に形成されている。基台2Dの内部には、不図示の吐水管と接続されて吐水口2Aへと繋がる吐水流路が形成されている。電池ケース3は、基台2Dの上部において、乾電池DBの電池軸方向Lを前後方向に向けた水平向きの状態にセットされる。ここで、基台2Dが、本発明の「接触部材」に相当する。
【0031】
水栓本体2は、本体ベース2Bに化粧カバーとなる本体カバー2Cが上方から被せ付けられることで、前後方向に長尺な長箱形状に組まれている。上記組み付けにより、水栓本体2は、本体カバー2Cの直下に電池ケース3を内包する構成とされる。本体カバー2Cは、水栓本体2の周囲側壁と天板部分とを成す無底の長箱形状に形成されている。ここで、本体カバー2Cが、本発明の「天板蓋」に相当する。
【0032】
水栓本体2は、乾電池DBが消耗した際には、次の手順により乾電池DBの取替えを簡便に行えるようになっている。すなわち、
図3に示すように、先ず、水栓本体2の本体カバー2Cを本体ベース2Bから上方に取り外す。それにより、本体ベース2Bの基台2D上に設置された電池ケース3が外部に露出する。
【0033】
次に、電池ケース3の蓋ケース12を取り外して、本体ケース11の内部にセットされている乾電池DBを新しいものと交換する。この交換の後、蓋ケース12を本体ケース11に嵌め直し、電池ケース3を基台2D上に戻して本体カバー2Cを本体ベース2B上に被せ付ける。以上により、乾電池DBの取替え作業が完了する。
【0034】
上記乾電池DBの取替え作業は、本体カバー2Cの取り外しにより外部からの水の浸入に晒されやすい水まわり環境(本体ベース2B上)において行われる。そのため、電池ケース3には、その表面に付着した水や水栓本体2の内部に入り込んだ水がケース内部に入り込むことがないよう、ケース内部を密閉した状態に保持する防水機能が備えられている。
【0035】
また、電池ケース3には、上記防水機能に加え、ケース内部に湿気を含んだ空気が存在している場合に、この湿気を含んだ空気を外部に放出することが可能な通気機能を備える。この通気機能により、電池ケース3は、そのケース内部の密閉された空間に結露が発生することを抑制し、乾電池DBやその電極と接続される端子板11B(詳細は
図5において後述する)の腐食を防止できるようになっている。
【0036】
(電池ケース3の各部構成)
以下、電池ケース3の各部の具体的な構成について詳しく説明する。
図4に示すように、電池ケース3は、横断面長円状の筒状部材から成るケース部材10を有する。
図5~
図6に示すように、ケース部材10は、長筒状の本体ケース11と、本体ケース11に長手方向にスライド嵌合されて装着される長筒状の蓋ケース12と、を有する。
【0037】
図5に示すように、本体ケース11は、図示上向きに開口する開口部A1を備えた凹状の電池収容部11Aを有する。電池収容部11Aは、単4形の乾電池DBを2本、左右に並列状に収容することが可能な凹形状を備える。電池収容部11Aは、その2本の乾電池DBを収容する各領域の長手方向となる電池軸方向Lの各端部に、対応する各乾電池DBの正極・負極の各電極と当接して電気的に接続される端子板11Bをそれぞれ備える。
【0038】
電池収容部11Aは、本体ケース11の長手方向(電池軸方向L)の中間部に形成されている。本体ケース11の図示手前側の端部には、筒径方向にフランジ状に膨出するケース端部11Cが形成されている。ケース端部11Cは、蓋ケース12を本体ケース11に図示奥側からスライド嵌合させた際に、蓋ケース12の手前側の筒端面と突き合わされる突き合わせ部として構成される。
【0039】
ケース端部11Cは、蓋ケース12よりも僅かに小さな外径を成す形に形成されている。それにより、
図4及び
図7~
図8に示すように、ケース端部11Cは、蓋ケース12が本体ケース11にスライド嵌合されることで、蓋ケース12と面一状の外周面を形成するようになっている。
【0040】
図5~
図6に示すように、本体ケース11の図示奥側の端部の左右両側部には、爪状に突出する係止爪11Dが形成されている。これら係止爪11Dは、蓋ケース12の本体ケース11に対する差し込み方向のスライドを規制する規制部として機能する。
【0041】
具体的には、
図7に示すように、各係止爪11Dは、蓋ケース12を本体ケース11に図示奥側からケース端部11Cに突き合わせる位置までスライド嵌合させることで、蓋ケース12の対応する各位置に形成された各係止孔12B内に入り込む。それにより、各係止爪11Dは、それらの図示奥側の端面を成す垂直な立ち上がり面を対応する各係止孔12Bの図示奥側の端面に対向させて、蓋ケース12の差し込み方向のスライドを規制する。
【0042】
各係止爪11Dは、蓋ケース12が本体ケース11から図示奥側に外される時には、それらの図示手前側の端面を成す傾斜面が対応する各係止孔12Bの図示手前側の端面と当接して蓋ケース12の内部に潜り込む。それにより、蓋ケース12の本体ケース11に対する取り外し方向のスライドが許容される。
【0043】
図6に示すように、本体ケース11には、その下面の図示手前側寄りのケース端部11Cと電池収容部11Aとの間の中間部に、図示下方に爪状に突出する嵌合爪11Eが形成されている。嵌合爪11Eは、その周囲が本体ケース11に対してU字状に切り込まれた弾性爪として形成されている。
【0044】
図8~
図9に示すように、嵌合爪11Eは、蓋ケース12を本体ケース11に図示奥側からケース端部11Cに突き合わせる位置までスライド嵌合させることで、蓋ケース12の対応する位置に形成された嵌合孔12C内にスナップフィット嵌合するように入り込む。それにより、嵌合爪11Eは、嵌合孔12Cの図示手前側の端面に垂直な立ち上がり面を対向させて、蓋ケース12の取り外し方向のスライドを規制する。
【0045】
嵌合爪11Eは、使用者により図示下方から押し込まれるように力を加えられることで、蓋ケース12との嵌合から外される。したがって、その状態から蓋ケース12を図示奥方にスライドさせることで、蓋ケース12を本体ケース11から簡便に取り外すことができる。
【0046】
図5~
図6に示すように、本体ケース11には、その電池収容部11Aを間に挟む前後2箇所の外周部に、ゴム製のシール部材であるOリング11Fが装着されている。各Oリング11Fは、本体ケース11の対応する各外周部に形成された環状の溝にそれぞれ嵌め込まれて装着されている。
【0047】
図9に示すように、各Oリング11Fは、蓋ケース12を本体ケース11に図示奥側からケース端部11Cに突き合わせる位置までスライド嵌合させることで、蓋ケース12の筒内周面に筒周方向の全域に亘って密着する。それにより、本体ケース11の電池収容部11Aが、各Oリング11Fを介して蓋ケース12との間で密封される。
【0048】
図示手前側のOリング11Fは、前述した本体ケース11の嵌合爪11Eの形成箇所よりも図示奥側の位置に配設されている。また、図示奥側のOリング11Fは、前述した本体ケース11の各係止爪11D(
図5~
図6参照)よりも図示手前側の位置に配設されている。このような構成により、嵌合爪11Eや各係止爪11Dは、各Oリング11Fの間から筒軸方向(電池軸方向L)に外れた領域に配設されている。
【0049】
また、嵌合爪11Eや各係止爪11Dに嵌まる蓋ケース12の嵌合孔12Cや各係止孔12Bも、蓋ケース12が本体ケース11に装着された状態では、各Oリング11Fの間から筒軸方向(電池軸方向L)に外れた領域に配設されるように形成されている。このような構成により、本体ケース11の電池収容部11Aが、各Oリング11Fを介して蓋ケース12との間で適切に密封されるようになっている。
【0050】
図5~
図6に示すように、蓋ケース12は、筒軸方向(電池軸方向L)に貫通する横断面長円状の筒状部材から成る。蓋ケース12は、その筒内部に本体ケース11を差し込むように本体ケース11に図示奥側からスライド嵌合されることで、本体ケース11に周囲を覆うように装着される(
図4参照)。
【0051】
上記装着により、蓋ケース12は、本体ケース11の電池収容部11Aの開口部A1を覆い塞ぐように本体ケース11に取り付けられる。詳しくは、蓋ケース12は、電池収容部11Aの電池軸方向Lとは交差する方向(図示上方向や左右方向)に開口する開口部A1を、電池収容部11Aの周囲から覆い塞ぐ。
【0052】
図7及び
図9に示すように、蓋ケース12には、その電池収容部11Aを図示上方から覆う平板状の天板部12Aの略中央位置に、丸孔状に貫通する通気孔A2が形成されている。そして、この通気孔A2が形成された天板部12Aの上面中央部には、通気孔A2を図示上方から面状に塞ぐ正円状の透湿防水シートSが貼り付けられている。
【0053】
通気孔A2は、電池収容部11Aと外部とを互いに連通させる連通孔として形成されている。通気孔A2は、電池収容部11Aの電池軸方向Lとは交差する上下方向に貫通するように形成されている。
図7に示すように、通気孔A2は、2本の乾電池DBの各中心軸線C1,C2からこれらの並び方向Wである左右方向に外れた位置に形成されている。それにより、例えば通気孔A2がケース部材10に対して電池軸方向Lに貫通するように形成される構成と比べて、ケース内部の湿気を含んだ空気が通気孔A2から放出されるまでの経路が短くされている。
【0054】
より詳しくは、通気孔A2は、2本の乾電池DBの間の並び方向W(左右方向)の中央位置に形成されている。それにより、通気孔A2が、隣り合う2本の乾電池DBの間の谷間に面した位置に形成されている。その結果、ケース内部から通気孔A2への経路が各乾電池DBにより塞がれにくくなっている。また、ケース内部から通気孔A2への経路が広く確保されている。
【0055】
したがって、上記通気孔A2により、ケース内部の湿気を含んだ空気の放出をより適切に行うことができる。通気孔A2は、
図7に示す平面視において、各乾電池DBの円筒断面の頂点となる中心軸線C1,C2には掛からない孔径の大きさに形成されている。それにより、通気孔A2を塞ぐ薄膜状の透湿防水シートSを、通気孔A2の表面を覆える程度の適度な大きさにカットして、浮きや皺、弛みをを生じさせないよう適切に張設することが可能とされる。
【0056】
透湿防水シートSは、耐熱性に優れたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂の多孔質フィルムによって構成されている。
図10に示すように、透湿防水シートSは、通気孔A2の孔径よりもひとまわり大きな正円形状を成す。透湿防水シートSは、通気孔A2を表側(図示上側)から覆うように蓋ケース12の天板部12A上にセットされ、その周縁が接着剤を用いた接着により天板部12A上に貼り付けられている。
【0057】
透湿防水シートSは、その多孔質の薄膜構造により、
図10の実線で示す矢印のように、外部からの水や埃の浸入を防ぐ防水性を発揮する構成とされる。その一方で、透湿防水シートSは、
図10の破線で示す矢印のように、通気孔A2から放出される湿気を含んだ空気は外部に通過させることができる通気性と透湿性とを発揮する構成とされる。このような構成により、電池ケース3は、その蓋ケース12の天板部12Aに通気孔A2が貫通して形成された構成であっても、外部からの水の浸入防止と湿気を含んだ空気の放出とを適切に行えるようになっている。
【0058】
詳しくは、透湿防水シートSが通気孔A2を天板部12Aの表側から覆うように設けられていることで、通気孔A2の凹みが透湿防水シートSにより外部に露出しないように覆われる。その結果、通気孔A2に外部から水が入り込むことも適切に防止することができ、通気孔A2に水が溜まって湿気を含んだ空気を外部に放出できなくなる事態を適切に防止することが可能とされる。
【0059】
また、
図9に示すように、通気孔A2は、ケース部材10の基台2Dにより下支えされる底板部とは反対側の面である天板部12Aに形成されている。すなわち、通気孔A2は、ケース部材10の周囲の部材(基台2D)と接触する面とは異なる面を成す天板部12A(接触部材と接触しない構成面)に形成されている。そのような構成とされることで、通気孔A2から外部への経路を適切に確保することができる。
【0060】
また、通気孔A2は、ケース部材10の天板部12Aに形成されることで、ケース部材10から鉛直上向きに開口する構成とされる。このような構成とされることで、ケース内部の湿気を含んだ上昇しやすい性質を持つ空気をより適切に外部に放出することができる。なお、ケース部材10の天板部12Aは、水栓本体2の本体カバー2Cの天板部分との間に上下方向に隙間が形成されるように配設される。
【0061】
以上をまとめると、第1の実施形態に係る電池ケース3は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0062】
すなわち、電池ケース(3)は、筒形の乾電池(DB)を電気的に接続するように収容する電池収容部(11A)を有する電池ケース(3)である。電池ケース(3)は、電池収容部(11A)を内部に備えるケース部材(10)と、ケース部材(10)に形成され、電池収容部(11A)を外部と連通させる通気孔(A2)と、通気孔(A2)を覆う透湿性及び防水性を有する透湿防水シート(S)と、を有する。通気孔(A2)が、電池収容部(11A)の電池軸方向(L)とは交差する方向に貫通する。
【0063】
このように、ケース部材(10)に電池軸方向(L)とは交差する方向に貫通する通気孔(A2)が形成され、そこに透湿防水シート(S)が張られることで、ケース内部の湿気を含んだ空気が通気孔(A2)から放出されるまでの経路を短くすることができる。このような電池ケース(3)により、外部からの水の浸入防止と湿気を含んだ空気の放出とを適切に行うことができる。
【0064】
また、ケース部材(10)が、電池収容部(11A)と電池収容部(11A)を上記交差する方向に開口させる開口部(A1)とを備える本体ケース(11)と、開口部(A1)を覆い塞ぐように本体ケース(11)に取り付けられる蓋ケース(12)と、を有し、蓋ケース(12)に通気孔(A2)が形成される。このように、電池収容部(11A)の開口部(A1)を覆い塞ぐ蓋ケース(12)に通気孔(A2)を形成することで、ケース部材(10)に電池軸方向(L)とは交差する方向に貫通する通気孔(A2)を簡素かつ適切に形成することができる。
【0065】
また、蓋ケース(12)が、本体ケース(11)に周囲を覆うように電池軸方向(L)にスライド嵌合される筒構造とされる。本体ケース(11)が、更に、電池収容部(11A)を間に挟む電池軸方向(L)の2箇所の外周部に装着されて電池収容部(11A)を蓋ケース(12)との間で密封するように蓋ケース(12)の筒内周面に筒周方向の全域に亘って密着するOリング(11F)を有する。
【0066】
上記構成によれば、蓋ケース(12)のスライド嵌合により覆い塞がれるタイプの電池収容部(11A)を外部に対してより適切に密閉することができる。したがって、外部から電池収容部(11A)への水の浸入をより適切に防止することができる。
【0067】
また、電池収容部(11A)が、2本以上の円筒形の乾電池(DB)を並列に収容し、通気孔(A2)が、2本以上の乾電池(DB)の各中心軸線(C1,C2)から並び方向(W)に外れた位置に形成される。このように、通気孔(A2)が、乾電池(DB)の中心軸線(C1,C2)から並び方向(W)に外れた位置に形成されることで、ケース内部から通気孔(A2)への経路が乾電池(DB)により塞がれにくくなる。したがって、ケース内部の湿気を含んだ空気の放出をより適切に行うことができる。
【0068】
また、通気孔(A2)が、隣り合う乾電池(DB)の間の並び方向(W)の中央位置に形成される。上記構成によれば、通気孔(A2)が、隣り合う乾電池(DB)と乾電池(DB)との間の谷間に面した位置に形成される。それにより、ケース内部から通気孔(A2)への経路をより広く確保することができ、ケース内部の湿気を含んだ空気の放出をより適切に行うことができる。
【0069】
また、透湿防水シート(S)が、ケース部材(10)のケース外周面上に重ね合わせ状に設けられる。上記構成によれば、透湿防水シート(S)により、通気孔(A2)の凹みが外部に露出しないようにケース外周面と面一状に覆い塞がれる。それにより、通気孔(A2)の凹みに外部から水が入り込むことを防止することができ、通気孔(A2)に水が溜まって湿気を含んだ空気を外部に放出できなくなる事態を適切に防止することができる。
【0070】
また、通気孔(A2)が、ケース部材(10)の外周面を構成する各構成面のうち、ケース部材(10)の周囲にある接触部材(2D)と接触しない構成面(12A)に形成される。上記構成によれば、通気孔(A2)から外部への経路を適切に確保することができる。よって、ケース内部の湿気を含んだ空気の放出をより適切に行うことができる。
【0071】
また、ケース部材(10)が、通気孔(A2)がケース部材(10)から鉛直上向きに開口する配置とされる。上記によれば、通気孔(A2)がケース部材(10)から鉛直上向きに開口することで、ケース内部の湿気を含んだ空気をより適切に外部に放出することができる。
【0072】
また、ケース部材(10)が、吐水口(2A)を備える水栓本体(2)の開閉可能な天板蓋(2C)の直下に内包されるように配置される。上記構成によれば、電池ケース(3)を、天板蓋(2C)の開放により外部からの水の浸入に晒されやすくなる水まわり環境に適応させて適切に機能させることができる。
【0073】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0074】
1.本発明の電池ケースは、キッチンや浴室等の洗面化粧台以外の水まわり環境に設置されるものであっても良い。また、電池ケースは、自動水栓の他、何らかの駆動用電力を使用する機能を備えた給水設備又は排水設備に適用されるものであっても良い。
【0075】
電池ケースは、電池収容部の電池軸方向が水平向きとなるように配設されるものの他、電池収容部の電池軸方向が鉛直向きとなるように配設されるものであっても良い。また、電池ケースは、電池収容部の電池軸方向が、高さ方向に斜め向きとなるように配設されるものであっても良い。水栓本体の開閉可能な天板蓋は、水栓本体に対して着脱可能に構成されるものの他、ヒンジの回転により開閉されるものや、スライドにより開閉されるものであっても良い。
【0076】
2.電池収容部に収容される乾電池は、単4形の他、単3形や単2形、又は9V電池に代表される角形(角筒形)の乾電池であっても良い。電池収容部に収容される乾電池は、1本、又は3本以上であっても良い。電池収容部は、2本以上の円筒形の乾電池を直列に収容するものや、直列と並列両方に並べるように収容するものであっても良い。
【0077】
3.通気孔は、複数形成されても良い。通気孔は、丸孔に限らず、長孔や角孔その他の異形の孔形状から成るものであっても良い。通気孔は、ケース部材から鉛直上向きに開口するものの他、水平方向に開口するものや鉛直下向きに開口するもの、又は上記いずれかの方向に斜めに開口するものであっても良い。
【0078】
4.透湿防水シートは、通気孔が複数ある場合、各通気孔をひとまとめに覆うように設けられる構成であっても良い。透湿防水シートは、ケース部材のケース内周面上に重ね合わせ状に設けられる構成、すなわち、通気孔を内側から覆うように設けられる構成であっても構わない。
【0079】
5.電池ケースの蓋ケースは、本体ケースに対して、スライド嵌合により閉じられるものの他、ヒンジの回転により開閉されるものであっても良い。
【0080】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
1…自動横水栓、2…水栓本体、2A…吐水口、2B…本体ベース、2C…本体カバー(天板蓋)、2D…基台(接触部材)、3…電池ケース、10…ケース部材、11…本体ケース、11A…電池収容部、A1…開口部、11B…端子板、11C…ケース端部、11D…係止爪、11E…嵌合爪、11F…Oリング、12…蓋ケース、12A…天板部(接触部材と接触しない構成面)、A2…通気孔、12B…係止孔、12C…嵌合孔、S…透湿防水シート、DB…乾電池、L…電池軸方向、W…並び方向、C1,C2…中心軸線