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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055263
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】建設機械のレンタル管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0645 20230101AFI20240411BHJP
【FI】
G06Q30/06 350
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162045
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 純平
(72)【発明者】
【氏名】豊田 義彰
(72)【発明者】
【氏名】高見 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】津久井 洋
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB68
5L049BB68
(57)【要約】
【課題】稼働部品の劣化度合を示すことができる、建設機械のレンタル管理システムを提供する。
【解決手段】レンタル管理システムは、建設機械を管理するサーバと、サーバと無線通信で接続される端末機器とを備える。サーバは、建設機械の稼働部品の稼働状態情報を受信するサーバ側通信部と、建設機械のレンタル期間中、稼働状態情報に基づいて、稼働部品の実稼働状態値を算出し、実稼働状態値を、稼働部品の初期稼働状態値と比較し、初期稼働状態値に対する実稼働状態値の差分を、状態変化値として算出する状態算出部と、状態変化値と稼働部品の劣化を示す劣化判断値とを記憶する記憶部と、劣化判断値に対する状態変化値の差分を、稼働部品の劣化度合として算出する劣化算出部と、を備える。端末機器は、サーバ側通信部と通信する端末側通信部と、劣化度合を表示する表示部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンタル対象の建設機械を管理するサーバと、
前記サーバと無線通信で接続される端末機器と、を備える建設機械のレンタル管理システムであって、
前記サーバは、
前記建設機械の稼働部品の稼働状態情報を、前記建設機械から受信するサーバ側通信部と、
前記建設機械のレンタル期間中、前記稼働状態情報に基づいて、前記稼働部品の実際の稼働状態を示す実稼働状態値を算出し、該実稼働状態値を、前記稼働部品の初期の稼働状態を示す初期稼働状態値と比較し、前記初期稼働状態値に対する前記実稼働状態値の差分を、状態変化値として、算出する状態算出部と、
前記状態変化値と、前記稼働部品の劣化を示す劣化判断値と、を記憶する記憶部と、
前記状態変化値を前記劣化判断値と比較し、前記劣化判断値に対する前記状態変化値の差分を、前記稼働部品の劣化度合として算出する劣化算出部と、を備え、
前記端末機器は、
前記サーバ側通信部と双方向に通信する端末側通信部と、
前記端末側通信部を介して、前記サーバから前記劣化度合を受信し、前記劣化度合を表示する表示部と、
を備えることを特徴とするレンタル管理システム。
【請求項2】
前記記憶部は、前記劣化判断値として、予め定めた前記稼働部品の稼働状態を示す基準稼働状態値と前記初期稼働状態値との差分である、基準状態変化値を記憶し、
前記劣化算出部は、前記状態変化値を前記基準状態変化値と比較し、前記基準状態変化値に対する前記状態変化値の差分を、第1劣化度合として算出し、
前記表示部は、前記端末側通信部を介して、前記サーバから前記第1劣化度合を受信し、該第1劣化度合を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載のレンタル管理システム。
【請求項3】
前記劣化算出部は、前記状態変化値が前記基準状態変化値を超えた場合、所定のアラームを報知するためのアラーム報知信号を生成し、
前記表示部は、前記端末側通信部を介して、前記サーバから前記アラーム報知信号を受信し、アラームを報知する、
ことを特徴とする請求項2に記載のレンタル管理システム。
【請求項4】
前記劣化算出部は、前記基準状態変化値に対する前記状態変化値の超過量が大きくなるに従い、前記アラームの強度を大きくするように、前記アラーム報知信号を生成する、
ことを特徴とする請求項3に記載のレンタル管理システム。
【請求項5】
前記記憶部は、前記劣化判断値として、予め定めた前記稼働部品の点検時期を示す限界状態変化値を記憶し、
前記劣化算出部は、前記状態変化値を前記限界状態変化値と比較し、前記限界状態変化値に対する前記状態変化値の差分を、第2劣化度合として算出し、
前記表示部は、前記端末側通信部を介して、前記サーバから前記第2劣化度合を受信し、該第2劣化度合を表示する、
ことを特徴とする請求項2に記載のレンタル管理システム。
【請求項6】
前記劣化算出部は、前記状態変化値が前記限界状態変化値を超えた場合、所定のアラームを報知するためのアラーム報知信号を生成し、
前記表示部は、前記端末側通信部を介して、前記サーバから前記アラーム報知信号を受信し、アラームを報知する、
ことを特徴とする請求項5に記載のレンタル管理システム。
【請求項7】
前記劣化算出部は、前記限界状態変化値に対する前記状態変化値の超過量が大きくなるに従い、前記アラームの強度を大きくするように、前記アラーム報知信号を生成する、
ことを特徴とする請求項6に記載のレンタル管理システム。
【請求項8】
前記サーバは、さらに、前記稼働部品の故障予測を行う故障予測部を備え、
前記故障予測部は、
第1レンタル期間における前記状態変化値に基づいて、前記第1レンタル期間に続く第2レンタル期間における前記稼働部品の状態変化を示す予測状態変化値を生成し、
前記劣化算出部は、
前記予測状態変化値を前記限界状態変化値と比較し、前記予測状態変化値が、前記第2レンタル期間において前記限界状態変化値を超える場合、所定のアラームを報知するためのアラーム報知信号を生成する、
ことを特徴とする請求項5に記載のレンタル管理システム。
【請求項9】
前記故障予測部は、
前記第1レンタル期間における前記状態変化値、及び、前記第1レンタル期間に続く第2レンタル期間における前記基準状態変化値に基づいて、前記予測状態変化値を生成する、
ことを特徴とする請求項8に記載のレンタル管理システム。
【請求項10】
前記サーバは、前記記憶部において、レンタル期間中に実施された、前記建設機械のメンテナンス情報を記憶し、
前記表示部は、前記メンテナンス情報を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載のレンタル管理システム。
【請求項11】
前記稼働部品は、エンジン、バッテリ、ポンプ、及び、一対の履帯の少なくともいずれか一つであり、
前記状態変化値は、
前記稼働部品がエンジンの場合、前記エンジンの回転数の偏差及び前記エンジンの振動の振幅の少なくともいずれか一方により、算出され、
前記稼働部品がバッテリの場合、前記エンジンを始動するまでのクランキング時間により、算出され、
前記稼働部品がポンプの場合、前記ポンプの吐出圧力により、算出され、
前記稼働部品が履帯の場合、平地走行時に前記一対の履帯の駆動装置へ供給されるオイルの圧力差により、算出される、
ことを特徴とする請求項1に記載のレンタル管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械のレンタル管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レンタル品の建設機械では、一般に、出庫時の状態と入庫時の状態とが、貸し手と借り手によって、確認される。貸し手は、その状態の変化が大きい場合、状態の変化が貸し手と借り手のどちらの行為に起因するのか判断し、責任の所在を明確にする。しかし、貸し手は、目視確認できる、外観部の見た目の状態の変化を確認するに留まることが多い。このため、貸し手は、目視確認できない、稼働部品(例えばポンプやエンジン等)の稼働状態の変化(例えば、劣化、故障など)について、借り手に、責任を追及することが難しかった。
【0003】
このように、目視確認できない、稼働部品の稼働状態の変化は、貸し手と借り手のどちらの行為に起因して生じたのか、不明であった。たとえ、目視確認できない、稼働部品の稼働状態の変化が、借り手の行為に起因するものであっても、その原因及び時期が不明で、かつ、貸し手が借り手にそれらを明確に示せないため、貸し手が責任を負担せざるを得ないことが多かった。
【0004】
油圧ショベル等の建設機械は、不整地の地面を走行し、土砂等の重量物を掘削する。このように、建設機械は、一般に、エンジンやポンプ等の稼働部品の負荷が大きい作業環境で、使用される。大きな負荷を受けた稼働部品は、劣化の進行が早くなり、故障しやすくなる。その一方で、劣化が進行した稼働部品や故障した稼働部品を、修理、交換する場合、多大な費用が必要になる。稼働部品を修理、交換する度に、劣化や故障の理由、時期に関わらず、貸し手が多大な費用を負担することは、貸し手に酷である。このため、レンタル品の建設機械では、貸し手が借り手に、劣化が進行した部品や故障した部品の、責任の所在を示すことが、特に望まれる。
【0005】
特許文献1には、稼働データの取得を目的として建設機械に遠隔監視装置をとりつけ、取得した稼働データから、建設機械の稼働状況を読み取り、建設機械の扱われ方を遠隔監視する技術が開示される。この技術では、稼働データから、レンタル品の建設機械の稼働状況を確認し、レンタル契約違反を防止し、契約違反の発生時、速やかな対応を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-248481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、エンジンの始動/停止を連続的に監視し、建設機械が実際に稼働した日時、日数、時間などを把握するものである。このため、特許文献1に記載の技術を用いて、目視確認できない、稼働部品の稼働状態の変化が、貸し手と借り手のどちらの行為に起因して生じたのか、判断することは難しい。
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、稼働部品の劣化度合を示すことができる、建設機械のレンタル管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るレンタル管理システムは、レンタル対象の建設機械を管理するサーバと、前記サーバと無線通信で接続される端末機器と、を備える建設機械のレンタル管理システムであって、前記サーバは、前記建設機械の稼働部品の稼働状態情報を、前記建設機械から受信するサーバ側通信部と、前記建設機械のレンタル期間中、前記稼働状態情報に基づいて、前記稼働部品の実際の稼働状態を示す実稼働状態値を算出し、該実稼働状態値を、前記稼働部品の初期の稼働状態を示す初期稼働状態値と比較し、前記初期稼働状態値に対する前記実稼働状態値の差分を、状態変化値として、算出する状態算出部と、前記状態変化値と、前記稼働部品の劣化を示す劣化判断値と、を記憶する記憶部と、前記状態変化値を前記劣化判断値と比較し、前記劣化判断値に対する前記状態変化値の差分を、前記稼働部品の劣化度合として算出する劣化算出部と、を備え、前記端末機器は、前記サーバ側通信部と双方向に通信する端末側通信部と、前記端末側通信部を介して、前記サーバから前記劣化度合を受信し、前記劣化度合を表示する表示部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の建設機械のレンタル管理システムによれば、稼働部品の劣化度合を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るレンタル管理システムのシステム構成を説明する図。
図2】サーバ側記憶部のデータファイルの一例を説明する図。
図3】サーバで算出される状態変化値、劣化度合を説明する図。
図4図1に示す表示部に表示される、貸出時の画面の一例を説明する図。
図5図1に示す表示部に表示される、返却時の画面の一例を説明する図。
図6】第1実施形態に係るレンタル管理システムの使用例を示す図。
図7図6に示す使用例を説明するラダーチャート。
図8】第2実施形態に係るレンタル管理システムのシステム構成を説明する図。
図9図2に示す表示部に示される、予測状態変化値の例を説明する図。
図10】第2実施形態に係るレンタル管理システムの使用例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係るレンタル管理システム1について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、レンタル管理システム1の管理対象である建設機械が、油圧ショベル10の場合を説明する。第1実施形態に係るレンタル管理システム1を、図1図7を参照して、説明する。
【0013】
図1は、第1実施形態に係るレンタル管理システム1のシステム構成を説明する図である。図2は、サーバ側記憶部36のデータファイルの一例を説明する図である。図3は、状態算出部34で算出される状態変化値、劣化算出部38で算出される劣化度合を説明する図である。
【0014】
図1に示すように、レンタル管理システム1は、レンタル対象の油圧ショベル(建設機械)10を管理するサーバ30と、サーバ30と無線通信で接続される端末機器50と、を備える。油圧ショベル10、サーバ30、及び、端末機器50は、たとえばインターネット等のネットワークNを介して、相互に無線通信可能に接続されている。
【0015】
油圧ショベル10は、ネットワークNを介して外部と通信を行うための機械側通信部12と、油圧ショベル10の稼働部品の稼働状態情報を検知するセンサ(図示せず)と、該センサにより検知された稼働状態情報を記憶する機械側記憶部14と、を備える。機械側記憶部14に記憶された稼働状態情報は、機械側通信部12を介して、所定の時間間隔でサーバ30に送信される。稼働部品の稼働状態情報には、油圧ショベル10の作業日ごとに、その日の最終的な劣化に関する情報が含まれる。
【0016】
油圧ショベル10の稼働部品は、その稼働状態の変化(例えば劣化)を、外部から目視確認することが難しい部品である。例えば、稼働部品は、エンジン、バッテリ、ポンプ、及び、一対の履帯(いずれも図示せず)の少なくともいずれか一つである。
【0017】
サーバ30は、図1に示すように、その内部機能として、サーバ側通信部32と、状態算出部34と、サーバ側記憶部36と、劣化算出部38と、を備える。
【0018】
サーバ側通信部32は、ネットワークNを介して外部とデータの送受信を行う。例えば、サーバ側通信部32は、油圧ショベル10の稼働部品の稼働状態情報を、油圧ショベル10から受信する。図2に示すように、サーバ側通信部32が受信した稼働状態情報は、サーバ側記憶部36の第1ファイル36aに記憶される。
【0019】
ここで、稼働部品の稼働状態情報は、稼働部品がエンジンの場合、エンジンの回転数及びエンジンの振動の振幅の少なくともいずれか一方を示す情報(例えば電流値等)である。また、稼働部品の稼働状態情報は、稼働部品がバッテリの場合、エンジンが始動されたことを示す情報(例えば電圧値等)である。また、稼働部品の稼働状態情報は、稼働部品がポンプの場合、ポンプから吐出されるオイルの吐出圧力を示す情報(例えば電圧値等)である。また、稼働部品の稼働状態情報は、稼働部品が一対の履帯の場合、平地走行時に一対の履帯の駆動装置に供給されるオイルの圧力差を示す情報(例えば電圧値等)である。
【0020】
状態算出部34は、油圧ショベル10のレンタル期間中、稼働状態情報に基づいて、稼働部品の実際の稼働状態を示す実稼働状態値を算出する。例えば、実稼働状態値は、稼働部品がエンジンの場合、油圧ショベル10のレンタル期間中におけるエンジンの実回転数偏差である。エンジンの実回転数偏差は、基準値とするエンジン回転数に対する実際のエンジン回転数の差や割合によって表される。例えば、基準値とするエンジン回転数を最高回転数又はアイドリング回転数とした場合、最高回転数又はアイドリング回転数に対する実際のエンジン回転数との差や割合である。図2に示すように、実稼働状態値は、サーバ側記憶部36の第2ファイル36bに記憶される。
【0021】
状態算出部34は、上記実稼働状態値を、稼働部品の初期の稼働状態を示す初期稼働状態値と比較し、初期稼働状態値に対する実稼働状態値の差分を、状態変化値として、算出する。例えば、初期稼働状態値は、稼働部品がエンジンの場合、油圧ショベル10を初めて稼働させるときのエンジンの実回転数偏差である。図2に示すように、初期稼働状態値は、サーバ側記憶部36の第2ファイル36bに記憶される。
【0022】
状態変化値は、稼働部品がエンジンの場合、油圧ショベル10を初めて稼働させるときのエンジンの実回転数偏差(即ち、初期稼働状態値)に対する、油圧ショベル10のレンタル期間中におけるエンジンの実回転数偏差の差分(変化量)である。図2に示すように、状態変化値は、サーバ側記憶部36の第3ファイル36cに記憶される。状態変化値は、一般的に、時間の経過に従って、大きくなる。
【0023】
状態変化値は、稼働部品がエンジンの場合、エンジンの振動の振幅により算出されてもよい。状態変化値をエンジンの振動の振幅により算出する場合、状態変化値は、油圧ショベル10を初めて稼働させるときのエンジンの振動の振幅に対する、油圧ショベル10のレンタル期間中におけるエンジンの振動の振幅の差分(変化量)である。
【0024】
状態変化値は、稼働部品がバッテリの場合、エンジンを始動するまでに要するクランキング時間により、算出されてもよい。この場合、状態変化値は、油圧ショベル10を初めて稼働させるときに要するクランキング時間に対する、レンタル期間中に油圧ショベル10を稼働させたときに要したクランキング時間の差分(変化量)である。
【0025】
状態変化値は、稼働部品がポンプの場合、ポンプから吐出されるオイルの吐出圧力により、算出される。この場合、状態変化値は、油圧ショベル10を初めて稼働させるときのポンプの吐出圧力に対する、レンタル期間中における油圧ショベル10のポンプの吐出圧力の差分(変化量)である。
【0026】
状態変化値は、稼働部品が履帯の場合、平地走行時に一対の履帯の駆動装置に供給されるオイルの圧力差により、算出される。この場合、状態変化値は、油圧ショベル10を初めて稼働させるときの一対の履帯の駆動装置に供給されるオイルの圧力差に対する、レンタル期間中に一対の履帯の駆動装置に供給されるオイルの圧力差の差分(変化量)である。
【0027】
図2に示すように、サーバ側記憶部36は、第4ファイル36dに、稼働部品の劣化を示す劣化判断値を記憶する。劣化判断値は、予め、実験等により決定しておくものであり、稼働部品の劣化や故障を判断する目安となる値である。劣化算出部38は、状態変化値を劣化判断値と比較し、劣化判断値に対する状態変化値の差分を、稼働部品の劣化度合(図3の第1事例におけるS1及びF1、第2事例におけるS2及びF2)として算出する。図2に示すように、劣化度合は、サーバ側記憶部36の第5ファイル36eに記憶される。劣化判断値及び劣化度合の詳細は、後述する。
【0028】
サーバ側記憶部36は、第4ファイル36dに、劣化判断値として、予め定めた稼働部品の稼働状態を示す基準稼働状態値と初期稼働状態値との差分である、基準状態変化値Bを記憶する。基準稼働状態値は、稼働部品がエンジンの場合、一例として、エンジンの稼働時間に対応した標準的なエンジンの回転数偏差である。標準的なエンジンの回転数偏差は、例えば、油圧ショベル10のエンジンの累積負荷に基づいて、実験等により算出されてよい。累積負荷が大きくなるに従い、標準的なエンジンの回転数偏差は、大きくなる。図2に示すように、基準稼働状態値は、サーバ側記憶部36の第2ファイル36bに記憶される。基準状態変化値Bは、油圧ショベル10の稼働部品ごとに、設定される。
【0029】
基準状態変化値Bは、稼働部品がエンジンの場合、油圧ショベル10を初めて稼働させるときのエンジンの回転数偏差に対する、エンジンの稼働時間に対応した標準的なエンジンの回転数偏差の差分(変化量)である。図2に示すように、基準状態変化値Bは、サーバ側記憶部36の第4ファイル36dに記憶される。図3の第1の事例及び第2の事例に示すように、基準状態変化値Bは、油圧ショベル10の稼働時間の増加に従って、大きくなる。
【0030】
図3では、左側において、油圧ショベル10の稼働部品と状態変化値とを対応付けた表の例が記載される。図3では、右側(第1の事例、第2の事例)において、横軸に、油圧ショベル10の稼働時間、縦軸に、状態変化値を示したグラフが記載される。第1の事例は、今回のレンタル期間において、状態変化値C1が急激に上昇する事例である。第2の事例は、今回のレンタル期間において、状態変化値C2が徐々に上昇する事例である。
【0031】
また、サーバ側記憶部36は、第4ファイル36dに、劣化判断値として、予め定めた稼働部品の点検時期を示す限界状態変化値Tを記憶する。限界状態変化値Tは、稼働部品がエンジンの場合、一例として、エンジンの動作が遅くなるなど、エンジンの稼働状態に影響が出始める、エンジンの回転数偏差である。図2に示すように、限界状態変化値Tは、サーバ側記憶部36の第4ファイル36dに記憶される。限界状態変化値Tは、油圧ショベル10の稼働部品ごとに、設定される。
【0032】
劣化算出部38は、状態変化値C1、C2を基準状態変化値Bと比較し、基準状態変化値Bに対する状態変化値C1、C2の差分を、第1劣化度合F1、F2として算出する。図2に示すように、第1劣化度合F1、F2は、サーバ側記憶部36の第5ファイル36eに記憶される。図3の第1の事例では、今回のレンタル期間(R1S~R1Eの間)において、状態変化値C1が急激に上昇し、レンタル期間の終了時R1Eに、状態変化値C1が基準状態変化値Bを上回ることが示される。つまり、第1の事例では、稼働部品がエンジンの場合、レンタル期間(R1S~R1E)中にエンジンの実回転数偏差の状態変化値C1が急上昇し、その結果、レンタル期間の終了時R1Eに、第1劣化度合F1がプラスになったことが示される。第1劣化度合F1がプラスであることは、稼働部品の劣化の進行が、稼働部品の標準的な劣化の進行よりも早いことを示す。
【0033】
劣化算出部38は、状態変化値C1が基準状態変化値Bを超えた場合、所定のアラームを報知するためのアラーム報知信号を生成する。また、劣化算出部38は、基準状態変化値Bに対する状態変化値C1の超過量が大きくなるに従い、アラームの強度を大きくするように、アラーム報知信号を生成する。劣化算出部38で生成されたアラーム報知信号は、サーバ側通信部32を介して、後述する端末機器50の端末側通信部52へ送信される。
【0034】
他方、図3の第2の事例では、今回のレンタル期間(R2S~R2Eの間)において、状態変化値C2が徐々に上昇し、レンタル期間の終了時R2Eに、状態変化値C2が基準状態変化値Bとほぼ同じである(上回っていない)ことが示される。つまり、第2の事例では、稼働部品がエンジンの場合、レンタル期間中(R2S~R2E)にエンジンの実回転数偏差の状態変化値C2の上昇が緩やかであり、その結果、レンタル期間の終了時R2Eで、第1劣化度合F2がゼロ又はマイナスであることが示される。第1劣化度合F2がゼロ又はマイナスであることは、稼働部品の劣化の進行が、稼働部品の標準的な劣化の進行と同等又はそれよりも遅いことを示す。この事例では、劣化算出部38は、アラーム報知信号を生成しない。
【0035】
劣化算出部38は、状態変化値C1、C2を限界状態変化値Tと比較し、限界状態変化値Tに対する状態変化値C1、C2の差分を、第2劣化度合S1、S2として算出する。図2に示すように、第2劣化度合は、サーバ側記憶部36の第5ファイル36eに記憶される。図3の第1の事例では、今回のレンタル期間(R1S~R1Eの間)中において、状態変化値C1が急激に上昇し、レンタル期間の終了時R1Eに、状態変化値C1が限界状態変化値Tを上回ることが示される。つまり、第1の事例では、稼働部品がエンジンの場合、レンタル期間中にエンジンの実回転数偏差の状態変化値C1が急上昇し、その結果、レンタル期間の終了時R1Eで、第2劣化度合S1がプラスであることが示される。第2劣化度合S1がプラスであることは、稼働部品が点検すべき時期を過ぎていること、つまり、稼働部品の稼働状態が正常でないことを示す。
【0036】
劣化算出部38は、状態変化値C1が限界状態変化値Tを超えた場合、所定のアラームを報知するためのアラーム報知信号を生成する。劣化算出部38は、限界状態変化値Tに対する状態変化値C1の超過量が大きくなるに従い、アラームの強度を大きくするように、アラーム報知信号を生成する。劣化算出部38で生成されたアラーム報知信号は、サーバ側通信部32を介して、後述する端末機器50の端末側通信部52へ送信される。
【0037】
他方、図3の第2の事例では、今回のレンタル期間(R2S~R2Eの間)において、状態変化値C2が徐々に上昇しているものの、レンタル期間の終了時R2Eで、状態変化値C2は、限界状態変化値Tを下回っていることが示される。つまり、第2の事例では、稼働部品がエンジンの場合、レンタル期間の終了時R2Eで、第2劣化度合S2がマイナスであることが示される。第2劣化度合S2がマイナスであることは、稼働部品が点検すべき時期を過ぎていないこと、つまり、稼働部品の稼働状態が正常であることを示す。この事例では、劣化算出部38は、アラーム報知信号を生成しない。
【0038】
図2に示すように、サーバ側記憶部36は、第6ファイル36fにおいて、油圧ショベル10の貸出時における、稼働部品の稼働状態情報を記憶する。また、サーバ側記憶部36は、第7ファイル36gにおいて、油圧ショベル10の返却時における、稼働部品の稼働状態情報を記憶する。貸出時の稼働状態情報、及び、返却時の稼働状態情報は、油圧ショベル10に取付けられたセンサから送信され、サーバ側通信部32を介して、サーバ側記憶部36に記憶される。
【0039】
図2に示すように、サーバ側記憶部36は、第8ファイル36hにおいて、メンテナンス履歴を記憶する、メンテナンス履歴は、油圧ショベル10の保守点検員によるメンテナンス(修理・点検)に関する履歴である。
【0040】
サーバ側記憶部36は、第9ファイル36iにおいて、過去レポートデータを記憶する。過去レポートデータは、油圧ショベル10のレンタル期間満了後に、稼働部品の稼働状態を確認するために、借り手(使用者)と貸し手(レンタル会社)との間で参照される、過去のレポートデータの履歴である。また、油圧ショベル10のレンタル契約期間の開始時または満了時に、前回の契約時における稼働状態の変化を確認したい場合に、過去レポートデータを、後述する端末機器50の表示部54を介して参照してもよい。
【0041】
サーバ側記憶部36は、第10ファイル36jにおいて、レンタル会社のデータを記憶する。レンタル会社のデータは、レンタル会社の所在地、連絡先などである。
【0042】
次いで、端末機器50の説明をする。図1に示すように、端末機器50は、その内部機能として、端末側通信部52と、表示部54と、データ入力部56と、を備える。本実施形態の端末機器50は、少なくとも撮影機能及びディスプレーの機能を有するスマートフォンやタブレットなどの情報端末が含まれる、いわゆるタッチパネル式の機器である。端末機器50は、通常、貸し手(レンタル会社)が保持する。図4は、端末機器50の表示部54に表示される、貸出時の画面の一例を説明する図である。図5は、端末機器50の表示部54に表示される、返却時の画面の一例を説明する図である。
【0043】
端末側通信部52は、ネットワークNを介して外部とデータの送受信を行う。例えば、端末側通信部52は、サーバ側通信部32と双方向に通信する。
【0044】
表示部54は、図4及び図5に示すように、油圧ショベル10の貸出時や返却時に、様々な情報を表示する。データ入力部56は、操作者からの所望のデータ入力を受け付ける。データ入力部56によって入力されたデータは、必要に応じて、表示部54に表示することができる。
【0045】
端末機器50の表示部54は、貸出可能な油圧ショベル10の一覧を表示することができる(図示せず)。油圧ショベル10の一覧には、油圧ショベル10ごとの機種、号機、画像イメージ(サムネイル)、故障に関連するアラーム発報履歴、修理履歴および修理予定日を含むメンテナンス情報が含まれる。油圧ショベル10の一覧の画面で任意の油圧ショベル10を指定(画面のタップ)すると、図4に示すような、貸出時の画面が表示される。
【0046】
図4及び図5に示すように、表示部54の画面は、第1表示領域54aと、第2表示領域54bと、第3表示領域54cと、第4表示領域54dと、第5表示領域54eとを有する。
【0047】
図4及び図5に示すように、第1表示領域54aには、操作メニューバーとして、第1メンテナンスタブ54a1、第1機械タブ54a2、第1オイルタブ54a3、第1アラームタブ54a4が表示される。また、第2表示領域54bには、貸出機の状態のサマリーとして、第2メンテナンスタブ54b1、第2機械タブ54b2、第2オイルタブ54b3、第2アラームタブ54b4が表示される。
【0048】
例えば操作者が、第1メンテナンスタブ54a1をタップすると、第2メンテナンスタブ54b1がアクティブになり、第2メンテナンスタブ54b1をタップできる状態となる。同様に、操作者が、第1機械タブ54a2、第1オイルタブ54a3、及び、第1アラームタブ54a4のいずれかをタップすると、これらのタブに対応する、第2機械タブ54b2、第2オイルタブ54b3、及び、第2アラームタブ54b4のいずれかのタブがアクティブになる。
【0049】
第2メンテナンスタブ54b1は、油圧ショベル10のメンテナンス状況と関連付けられている。第2メンテナンスタブ54b1には、油圧ショベル10に対するメンテナンスのうち、メンテナンスすべき部品があるにも関わらずメンテナンスが未実施の件数(超過メンテナンス)や、直近に実施されたメンテナンスの件数(直近メンテナンス)等が表示される。また、第2メンテナンスタブ54b1をタップすると、超過メンテナンスや直近メンテナンスに関する情報が表示される。
【0050】
第2機械タブ54b2は、「ポンプ」、「エンジン」、「バッテリ」、「履帯」に関する、稼働状態の変化を示す情報(状態変化値)と関連付けられている。状態変化値は、図3の第1の事例、第2の事例に示すように、グラフ形式であって、横軸に現時点から過去にさかのぼった時間を、縦軸に状態変化値が示される。通常は、時間の経過とともに、稼働部品の故障の要因が蓄積されるので、状態変化値は、右に進むに連れて、上昇する曲線となる。なお、状態変化値の表示は、グラフ形式に限られるものではなく、経時的変化がわかる形式であれば、文字などのテキストによって履歴を表示する形式であってもよい。端末機器50は、端末側通信部52を介して、サーバ30から劣化度合を受信し、表示部54に劣化度合を表示する。具体的には、端末機器50は、端末側通信部52を介して、サーバ30から第1劣化度合F1,F2を受信し、図3の第1の事例、第2の事例に示すようなグラフ形式で、第1劣化度合F1,F2を、表示部54に表示する。また、端末機器50は、端末側通信部52を介して、サーバ30から第2劣化度合S1,S2を受信し、図3の第1の事例、第2の事例に示すようなグラフ形式で、第2劣化度合S1,S2を、表示部54に表示する。
【0051】
貸し手と借り手は、表示部54に示された状態変化値のグラフを、互いに確認する。貸し手と借り手が、油圧ショベル10の機械状態(稼働状態)に合意出来たら、貸し手は借り手に合意タブ(図示せず)を選択してもらう。合意タブが選択されると、その時点での、油圧ショベル10の稼働状態情報、および油圧ショベル10の外観の画像データが、サーバ30のサーバ側記憶部36に記憶される。貸し手と借り手が、表示部54に示された状態変化値のグラフを確認するとき、油圧ショベル10の劣化度合(第1劣化度合F1,F2、第2劣化度合S1,S2)に応じ、部位ごとに利用状況に応じて予め割引率を設定し、その値を初期設定してもよい。たとえば、割引率は、レンタル期間における状態変化値が基準状態変化値Bを下回った場合、状態変化値が基準状態変化値Bを上回った場合よりも高く設定されてよい。また、割引率は、レンタル期間における状態変化値が限界状態変化値Tを下回った場合、状態変化値が限界状態変化値Tを上回った場合よりも高く設定されてよい。
【0052】
第2オイルタブ54b3は、油圧ショベル10のオイルの状態と関連付けられている。第2オイルタブ54b3には、油圧ショベル10を循環するオイルの交換時期に関する情報が表示される。また、第2オイルタブ54b3をタップすると、一例として、オイルの交換時期の目安が表示される。
【0053】
第2アラームタブ54b4には、メンテナンス対応が必要であることを示すアラームに関する情報が表示される。端末機器50は、端末側通信部52を介して、サーバ30からアラーム報知信号を受信し、このアラーム信号に基づいて、第2アラームタブ54b4にアラームが表示される。第2アラームタブ54b4をタップすると、発報されているアラームの具体的な内容が表示される。なお、図4及び図5では、アラームが発報されていない例が示される。
【0054】
また、貸出時の画面には、第3表示領域54cに、貸出機の状態(外観)タブ54c1が表示される。貸出機の状態(外観)タブ54c1は、指定した油圧ショベル10のポンプ、バケットなどすべての部位の画像データと関連付けられている。貸出の際と返却の際に、油圧ショベル10の部位を撮影して、画像データとしてサーバ30のサーバ側記憶部36に記憶しておく。貸出機の状態(外観)タブ54c1をタップすると、画像データ表示画面に切り替わる。このため、油圧ショベル10の貸出を受けるとき、必要に応じて、油圧ショベル10の外観の損傷を見比べることができる。また、貸出機の状態(外観)タブは、返却時の画面に示すこともできる(図5では図示されず)。その場合、第1表示領域54aのいずれかのタブを再度タップすることで、貸出時と返却時の画像データを対比して表示することとしてもよい。これによって、油圧ショベル10の返却時、油圧ショベル10の貸出時に対する、油圧ショベル10の外観の損傷を見比べることができる。なお画像データの対比は、画面の上下もしくは左右に並べたり、それぞれの画像データを単独で表示して、画面上をスワイプすることで交互に切り替えたりするのでもよく、表示形式は問わない。
【0055】
図4及び図5に示すように、貸出時の画面及び返却時の画面において、第4表示領域54dに、コメント欄54d1が表示される。コメント欄54d1には、レンタル企業(貸出側の企業)のコメント(メンテナンスの実施状況、機械の劣化、オイルの劣化等)や、契約時の特約(例えば、割引等)が表示される。また、貸出時の画面において、第5表示領域54eに、署名欄54e1が表示される。署名欄54e1には、借り手側の署名が表示される。
【0056】
次いで、本実施形態に係るレンタル管理システム1を用いた、油圧ショベル10のレンタル管理の一例を説明する。図6は、第1実施形態に係るレンタル管理システム1の使用例を示す図である。図7は、図6に示す使用例を説明するラダーチャートである。図6に示すように、貸し手(レンタル会社)Aは、油圧ショベル10を貸出す、レンタル事業を営む。借り手Bは、油圧ショベル10の貸出しサービスを利用する。
【0057】
図7に示すように、借り手Bは、貸し手Aに、油圧ショベル10のレンタル(貸出し)の申込をする(S1)。その後、貸し手Aは、レンタル申込のあった油圧ショベル10の出庫点検をする(S2)。次いで、貸し手Aは、レンタル対象となる油圧ショベル10の稼働部品の劣化度合を確認するため、端末機器50のデータ入力部56を操作して、サーバ30に所定の送信指示を行う(S3)。サーバ30は、サーバ側記憶部36に記憶された過去レポートデータを、端末機器50へ送信する(S4)。過去レポートデータは、端末機器50の記憶部(図示せず)に記憶される。
【0058】
次いで、油圧ショベル10の貸出しを希望する借り手Bと貸し手(レンタル会社)Aとの間で、油圧ショベル10の稼働状態が確認される(S5)。稼働状態に合意できれば、貸し手Aは、貸出時の油圧ショベル10の稼働状態情報を、サーバ30のサーバ側記憶部36に登録する(S6、S7)。その後、油圧ショベル10が、借り手Bに出庫(貸出し)される(S8)。借り手Bは、油圧ショベル10を使用する(S9)。油圧ショベル10のレンタル期間中、油圧ショベル10の稼働状態情報は、機械側通信部12を介して、サーバ30へ送信され(S10)、サーバ側記憶部36に記憶される(S11)。油圧ショベル10のレンタル(貸出し)期間が満了すると、借り手Bは、貸し手Aに油圧ショベル10を返却する(S12)。その後、貸し手Aは、返却された油圧ショベル10の外観状態を確認し、この外観状態の画像データを、端末機器50を介してサーバ30に送信する(S13)。サーバ30は、サーバ側記憶部36に記憶された稼働状態情報と、外観状態の画像データとに基づいて、レンタル期間中の油圧ショベル10のレポートを作成し(S14)、このレポートを端末機器50へ送信する(S14)。
【0059】
端末機器50は、表示部54に、サーバ30から送信されたレポート結果を表示する。貸し手Aは、表示部54に表示されたレポート結果を確認する(S15)。レポート結果は、図3の第1の事例、第2の事例に示すように、貸出前後の状態変化値を比較できるように、端末機器50の表示部54にグラフ形式で表示される。借り手Bは、貸し手Aに、油圧ショベル10の利用環境を報告する(S16)。油圧ショベル10の利用環境は、劣化度合の評価(S17)の際に、考慮される。すなわち、たとえばスクラップ現場と解体現場では、稼働部品ごとの劣化度合も異なる。そこで、たとえば劣化度合をAからCなどランク付けしておき、稼働現場ごとに、稼働部品と劣化度合のランクを対応付けておく。このようにして貸し手Aは、油圧ショベル10の利用環境を考慮することで、表示部54に表示された状態変化値が妥当な推移を示しているか、判断することができる。
【0060】
貸し手Aは、レンタル期間中における油圧ショベル10の劣化度合を評価する(S17)。そして、貸し手Aは、状態変化値のグラフに基づいて、修繕費の請求の有無を判定する(S18)。例えば、貸し手Aは、油圧ショベル10の返却時に表示部54を参照することにより、状態変化値のグラフが、レンタル期間中、緩やかな右上がりで推移する、通常の使用に基づく劣化、つまり、図3の第2の事例で示すように、第1劣化度合F2がゼロ又はマイナスであるか確認することができる。この場合、貸し手Aは、借り手Bに修繕費用などを請求せず(S18:No)、初期設定された稼働部品の割引を適用した後、レンタル契約が終了する(S20)。また、貸し手Aは、状態変化値のグラフが、レンタル期間中、急激な右上がりで推移する、想定外の使用に基づく著しい劣化、深刻な劣化、即ち、図3の第1の事例で示すように、第1劣化度合F1がプラスであるか確認することができる。この場合、貸し手Aは、初期設定された稼働部品の割引を適用せず、借り手Bに修繕費用などを請求し(S18:Yes)、借り手Aが修繕費などを支払った後(S19)、レンタル契約が終了する(S20)。
【0061】
また、貸し手Aは、レンタル期間中に、状態変化値C1、C2が、限界状態変化値Tを上回ったか否かに基づいて、稼働部品の劣化度合を評価してもよい。貸し手Aは、状態変化値が限界状態変化値Tを超えていない、即ち、第2劣化度合S2がマイナスであり、稼働部品が点検時期を迎えていないことを確認できる(図3の第2の事例)。この場合、貸し手Aは、借り手Bに修繕費用などを請求せず(S18:No)、初期設定された稼働部品の割引を適用した後、レンタル契約が終了する(S20)。また、貸し手Aは、状態変化値が限界状態変化値Tを超えている、即ち、第2劣化度合S1がプラスであり、稼働部品が点検時期を迎えていることを確認できる(図3の第1の事例)。この場合、貸し手Aは、状態変化値が限界状態変化値Tを超えた時期が、今回のレンタル期間中であるか否かを確認できる。その時期が、今回のレンタル期間中であれば、貸し手Aは、初期設定された稼働部品の割引を適用せず、借り手Bに修繕費用などを請求し(S18:Yes)、借り手Aが修繕費などを支払った後(S19)、レンタル契約が終了する(S20)。
【0062】
また、貸し手Aは、状態変化値を、基準状態変化値B及び限界状態変化値Tの両方と比較することにより、稼働部品の劣化度合を評価してもよい。一例として、貸し手Aは、レンタル期間中、状態変化値が急激な右上がりで推移し、第1劣化度合がプラスであり、且つ、状態変化値が限界状態変化値Tを超えた時期が、今回のレンタル期間中である場合に限り(図3の第1の事例)、初期設定された稼働部品の割引を適用せず、借り手Bに修繕費用などを請求してもよい(S18:Yes)。他方、一例として、状態変化値が限界状態変化値Tを超えた時期が、今回のレンタル期間中であったとしても、図3の第2の事例の状態変化値C2のように、レンタル期間中、状態変化値が緩やかな右上がりで推移し、第1劣化度合がゼロ又はマイナスである場合、借り手Bに修繕費用などを請求せず(S18:No)、初期設定された稼働部品の割引を適用した後、レンタル契約を終了してもよい(S20)。貸し手Aは、第1劣化度合及び第2劣化度合を評価することにより、借り手Bに、稼働部品の劣化や故障の原因、時期を明確に示すことができる。
【0063】
本実施形態に係るレンタル管理システム1によると、稼働部品の状態変化値、即ち、第1劣化度合及び第2劣化度合を、定量的に、貸し手と借り手の双方で把握できるので、より公平性のあるレンタル契約を締結することができる。また、稼働部品の劣化の進行に応じてアラームを報知することができるので、貸し手Aは、稼働部品の修理、交換を、適切な時期に行うことができる。さらに、稼働部品の点検時期が過ぎていることのアラームが報知されるので、貸し手Aは、稼働部品が故障する前に、稼働部品の修理、交換を行うことができる。
【0064】
<第2実施形態>
次いで、図8から図10を用いて、本発明の第2実施形態に係るレンタル管理システム1Aについて説明する。レンタル管理システム1Aは、上述のレンタル管理システム1に対して、サーバ30に、故障予測部40が設けられている点で異なる。以下、上述のレンタル管理システム1と同じ又は類似する機能を有する構成については、レンタル管理システム1と同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0065】
図8は、第2実施形態に係るレンタル管理システム1Aのシステム構成を説明する図である。図9は、端末機器50の表示部54に示される、予測状態変化値Pの例を説明する図である。予測状態変化値Pは、サーバ側記憶部36の第3ファイル36cに記憶される(図2参照)。
【0066】
図8に示すように、サーバ30Aは、稼働部品の故障予測を行う故障予測部40を備える。故障予測部40は、第1レンタル期間における状態変化値C1に基づいて、第1レンタル期間に続く第2レンタル期間における稼働部品の状態変化を示す予測状態変化値Pを生成する。予測状態変化値Pは、第2レンタル期間における基準状態変化値Bであってもよい。つまり、故障予測部40は、第1レンタル期間における状態変化値C1、及び、第1レンタル期間に続く第2レンタル期間における基準状態変化値Bに基づいて、予測状態変化値Pを生成してもよい。また、故障予測部40は、第1レンタル期間の状態変化値C1の始点Aと状態変化値C1の終点Bとを結ぶ仮想線を、第2レンタル期間に延長することにより、予測状態変化値Pを生成してもよい。
【0067】
劣化算出部38は、予測状態変化値Pを限界状態変化値Tと比較し、予測状態変化値Pが、第2レンタル期間において限界状態変化値Tを超える場合、所定のアラームを報知するためのアラーム報知信号を生成する。図9では、第2レンタル期間の途中で、予測状態変化値Pが限界状態変化値Tを超えることが示されている。このように、第2実施形態に係るレンタル管理システム1Aによれば、油圧ショベル10の稼働部品の将来的な故障予測を行うことができる。
【0068】
図10は、第2実施形態に係るレンタル管理システム1Aの使用例を説明する図である。図10に示すように、借り手B1と、その次の借り手B2がいると仮定する。この場合、借り手B2から油圧ショベル10のレンタル申込を受けると、貸し手Aは、端末機器50のデータ入力部56を介して、申込に対応するレンタル期間を入力する。その結果、故障予測部40は、借り手B1のレンタル期間中の状態変化値C1に基づいて、借り手B2のレンタル期間中における、稼働部品の故障予測を行う(例えば図9)。たとえば利用環境や利用期間などを考慮して、レンタル期間の長さに応じた稼働部品の故障リスクを予め予測し、この予測結果を、貸し手Aと借り手B2とで共有することでき、より公平性のあるレンタル契約を締結することができる。
【0069】
また、稼働部品の故障リスクを予測することにより、貸し手Aは、レンタル契約を柔軟に設定することができる。たとえば、油圧ショベル10のレンタル期間中に、稼働部品の劣化を示す状態変化値C1が、限界状態変化値Tを超えることが明らかであるなら、貸し手Aは、他の油圧ショベル10を提案することができる。また、レンタル期間中における、稼働部品の故障リスクが高まるため、故障リスクの兆候が見られない通常の油圧ショベル10よりも、レンタル料金が高くなる旨を同意した上で、レンタル契約を締結できる。これによって、故障リスクに応じて保険会社と借り手B2と貸し手Aとの責任割合を、より適切に設定することが可能になる。
【0070】
<第3実施形態>
次いで、本発明の第3実施形態に係るレンタル管理システムについて説明する。第3実施形態に係るレンタル管理システムは、上述のレンタル管理システム1に対して、借り手が、端末機器50を介してメンテナンス履歴を入力できる点で異なる。以下、上述のレンタル管理システム1と同じ又は類似する機能を有する構成については、レンタル管理システム1と同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0071】
サーバ30は、サーバ側記憶部36において、レンタル期間中に実施された、油圧ショベル10のメンテナンス情報を記憶する。具体的には、当該メンテナンス情報は、サーバ側記憶部36の第8ファイル36hに記憶される。端末機器50の表示部54は、メンテナンス情報を表示する。
【0072】
第1実施形態のレンタル管理システム1では、油圧ショベル10のメンテナンスを、貸し手(レンタル会社)の保守点検員が実施することを想定している。しかし、第3実施形態のレンタル管理システムでは、借り手の保守点検員等が、油圧ショベル10のメンテナンスを行うことを想定している。たとえば、借り手が保守点検の技能を有しており、油圧ショベル10のレンタル期間中に、稼働部品の故障リスクを軽減するために、稼働部品の交換など、点検業務を行うことがある。その際、油圧ショベル10のセンサは、機械側通信部12を介して、稼働部品交換時の履歴をサーバ30に送信する。
【0073】
それによって、借り手のメンテナンス履歴も反映した、いっそう柔軟なレンタル料金を設定することが可能になる。例えば、借り手が油圧ショベル10の修理を実施した場合、貸し手の修理作業を代行したため、貸し手は、返却時に適用される、レンタル料金の割引を変動させることができる。たとえば、修理が必要な箇所の全部を貸し手が修理する場合(借り手は修理をしていない)、貸し手は、借り手側の修理に伴う割引率をゼロとすることができる。一方、修理が必要な箇所が2か所あり、そのうちの1か所を借り手が修理した場合(修理対象の50%)、一例として、貸し手は、割引率を15%とし、2か所修理した場合は割引率を30%とすることができる。
【0074】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に係るレンタル管理システム1、1Aに限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。例えば、上記した実施の形態は、レンタル管理システム1、1Aによる管理対象を油圧ショベル10としたが、管理対象は油圧ショベル10に限られるものではない。たとえば、レンタル管理システム1、1Aは、電気駆動式のショベル、ダンプトラック、ホイールローダ等、油圧ショベル10とは異なる建設機械全般を管理することができる。
【0075】
また、上記した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上述した課題及び効果を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的態様によって適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0076】
1,1A レンタル管理システム
10 油圧ショベル(建設機械)
30、30A サーバ
32 サーバ側通信部
34 状態算出部
36 サーバ側記憶部(記憶部)
38 劣化算出部
40 故障予測部
50 端末機器
52 端末側通信部
54 表示部
56 データ入力部
B 劣化判断値、基準状態変化値
C1,C2 状態変化値
F1,F2 劣化度合、第1劣化度合
P 予測状態変化値
S1,S2 劣化度合、第2劣化度合
T 劣化判断値、限界状態変化値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10