(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055284
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】セラミック電子部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 515
H01G4/30 517
H01G4/30 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162083
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】藤田 尚行
(72)【発明者】
【氏名】大野 亮
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD00
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
(57)【要約】
【課題】 誘電体層の焼成を不要とすることができるセラミック電子部品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 セラミック電子部品は、複数の誘電体層と複数の内部電極層とが交互に積層された積層体を備え、前記複数の誘電体層のうち少なくともいずれかは、ペロブスカイト構造を有するセラミックを主成分とする単結晶の誘電体層であることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層と複数の内部電極層とが交互に積層された積層体を備え、
前記複数の誘電体層のうち少なくともいずれかは、ペロブスカイト構造を有するセラミックを主成分とする単結晶の誘電体層であることを特徴とするセラミック電子部品。
【請求項2】
前記単結晶の主成分は、チタン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記複数の前記誘電体層のうち、50%以上の層数の前記誘電体層が単結晶であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記誘電体層の1層あたりの平均厚みは、0.005μm以上3μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記内部電極層の1層あたりの平均厚みは、0.005μm以上3μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記複数の内部電極層は、前記積層体の2端面に交互に露出して外部電極に接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
ペロブスカイト構造を有するセラミックを主成分とする単結晶誘電体層と、内部電極層とを交互に積層する工程を含むことを特徴とするセラミック電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記単結晶誘電体層上に、前記内部電極層の主成分金属の粉末を含む内部電極パターンを印刷し、前記内部電極パターンを焼成することによって、前記内部電極層を形成することを特徴とする請求項7に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記単結晶誘電体層上に、真空成膜法により前記内部電極層を形成することを特徴とする請求項7に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記単結晶誘電体層を、CVD法、蒸着法、レーザーアブレーション法による薄膜合成によって作製するか、水熱合成法・蓚酸法・クエン酸法・固相合成法により得られるチタン酸バリウム粒子を加工して作製することを特徴とする請求項7または請求項8に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話を代表とする高周波通信用システムにおいて、積層セラミックコンデンサなどのセラミック電子部品が用いられている。このようなセラミック電子部品は、誘電体層と内部電極層とが交互に積層された構造を有している。この構造は、例えば、セラミック粉末を含む誘電体グリーンシートと、金属粉末を含む内部電極パターンとを同時に焼成することで、得ることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この手法では、内部電極層の材料を選択するうえでの自由度が低くなる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、誘電体層の焼成を不要とすることができるセラミック電子部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るセラミック電子部品は、複数の誘電体層と複数の内部電極層とが交互に積層された積層体を備え、前記複数の誘電体層のうち少なくともいずれかは、ペロブスカイト構造を有するセラミックを主成分とする単結晶の誘電体層であることを特徴とする。
【0007】
上記セラミック電子部品において、前記単結晶の主成分は、チタン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)のいずれかであってもよい。
【0008】
上記セラミック電子部品において、前記複数の前記誘電体層のうち、50%以上の層数の前記誘電体層が単結晶であってもよい。
【0009】
上記セラミック電子部品において、前記誘電体層の1層あたりの平均厚みは、0.005μm以上3μm以下であってもよい。
【0010】
上記セラミック電子部品において、前記内部電極層の1層あたりの平均厚みは、0.005μm以上3μm以下であってもよい。
【0011】
上記セラミック電子部品において、前記複数の内部電極層は、前記積層体の2端面に交互に露出して外部電極に接続されていてもよい。
【0012】
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法は、ペロブスカイト構造を有するセラミックを主成分とする単結晶誘電体層と、内部電極層とを交互に積層する工程を含むことを特徴とする。
【0013】
上記セラミック電子部品の製造方法において、前記単結晶誘電体層上に、前記内部電極層の主成分金属の粉末を含む内部電極パターンを印刷し、前記内部電極パターンを焼成することによって、前記内部電極層を形成してもよい。
【0014】
上記セラミック電子部品の製造方法において、前記単結晶誘電体層上に、真空成膜法により前記内部電極層を形成してもよい。
【0015】
上記セラミック電子部品の製造方法において、前記単結晶誘電体層を、CVD法、蒸着法、レーザーアブレーション法による薄膜合成によって作製するか、水熱合成法・蓚酸法・クエン酸法・固相合成法により得られるチタン酸バリウム粒子を加工して作製してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、誘電体層の焼成を不要とすることができるセラミック電子部品およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。
【
図5】(a)および(b)は誘電体層のひび割れを例示する図である。
【
図6】積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。
【
図7】(a)および(b)は積層工程を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0019】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図3は、
図1のB-B線断面図である。
図1~
図3で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、略直方体形状を有する積層チップ10と、積層チップ10のいずれかの対向する2端面に設けられた外部電極20a,20bと、を備える。なお、積層チップ10の当該2端面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を側面と称する。外部電極20a,20bは、積層チップ10の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、外部電極20aと外部電極20bとは、互いに離間している。
【0020】
積層チップ10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、金属を主成分とする内部電極層12とが、交互に積層された構成を有する。言い換えると、積層チップ10は、互いに対向する複数の内部電極層12と、複数の内部電極層12の間に各々挟まれた誘電体層11と、を備えている。各内部電極層12が延伸される方向の端縁は、積層チップ10の外部電極20aが設けられた第1端面と、外部電極20bが設けられた第2端面とに対して、交互に露出している。外部電極20aに接続される内部電極層12は、外部電極20bには接続されていない。外部電極20bに接続される内部電極層12は、外部電極20aには接続されていない。したがって、各内部電極層12が、外部電極20aと外部電極20bとに、交互に導通する。また、誘電体層11と内部電極層12との積層体において、積層方向の最上層には内部電極層12が配置され、積層方向の最下層にも内部電極層12が配置され、当該積層体の上面および下面は、カバー層13によって覆われている。カバー層13は、セラミック材料を主成分とする。例えば、カバー層13は、誘電体層11と組成が同じであっても、異なっていても構わない。
【0021】
図2で例示するように、外部電極20aに接続された内部電極層12と外部電極20bに接続された内部電極層12とが対向する領域は、積層セラミックコンデンサ100において静電容量を生じる領域である。そこで、当該静電容量を生じる領域を、容量部14と称する。すなわち、容量部14は、異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層同士が対向する領域である。
【0022】
外部電極20aに接続された内部電極層12同士が、外部電極20bに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域を、エンドマージン15と称する。また、外部電極20bに接続された内部電極層12同士が、外部電極20aに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域も、エンドマージン15である。すなわち、エンドマージンは、同じ外部電極に接続された内部電極層が異なる外部電極に接続された内部電極層を介さずに対向する領域である。エンドマージン15は、静電容量を生じない領域である。エンドマージン15は、容量部14の誘電体層11と同じ組成であってもよく、異なる組成であってもよい。
【0023】
図3で例示するように、積層チップ10において、積層チップ10の2側面から内部電極層12に至るまでの領域をサイドマージン16と称する。すなわち、サイドマージン16は、上記積層構造において積層された複数の内部電極層12が2側面側に延びた端部を覆うように設けられた領域である。サイドマージン16も、静電容量を生じない領域である。サイドマージン16は、容量部14の誘電体層11と同じ組成であってもよく、異なる組成であってもよい。
【0024】
このような構成において、誘電体層は、例えば、セラミック粉末を含む誘電体材料に対し熱処理を行い、セラミック粉末を焼結させることで焼成することができる。しかしながら、積層チップを得るためには誘電体層および内部電極層を同時に焼成する必要がある。この場合、酸化物であるセラミック粉末と、内部電極層を構成する金属粉末とに対して同時に熱処理することになるため、内部電極層の材料を選択するうえでの自由度が低くなる。例えば、セラミック粉末を焼結させるためには高温が必要となることから、高温でも酸化しにくい金属を用いる必要があり、制約が多くなる。そこで、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100は、誘電体層の焼成を省略することができる構成を有している。
【0025】
具体的には、誘電体層11は、結晶粒界を有する多結晶の構造を有しているのではなく、
図4で例示するように、単結晶の構造を有している。
図4では、ハッチを省略してある。このような構成を有することで、誘電体層11の焼成が不要となる。それにより、内部電極層12の材料を選択するうえでの自由度が高くなる。例えば、比較的低温で焼成可能な材料を、内部電極層12の主成分として用いることができる。または、焼成する必要が無い導電性薄膜などを用いることができる。また、誘電体層11の焼成が不要であることから、誘電体層11と内部電極層12との間における相互拡散が抑制される。それにより、誘電体層11の成分変化が抑制される。なお、誘電体層11が単結晶構造を有することは、誘電体層11の全体が単結晶構造となっていることを意味している。
【0026】
内部電極層12の材料を選択するうえでの自由度が高くなることで、内部電極層12の主成分として、Ni,銅(Cu),スズ(Sn)等の卑金属、白金(Pt),パラジウム(Pd),銀(Ag),金(Au)などの貴金属、2種類以上の金属の合金以外の材料を用いることができるようになる。例えば、内部電極層12は、導電性セラミックを主成分としてもよい。または、内部電極層12は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェンなどのカーボン材料を主成分としてもよい。または、内部電極層12は、導電性セラミック以外の導電性酸化物材料を主成分としてもよい。または、内部電極層12は、導電性を有する半導体材料を主成分としてもよい。
【0027】
また、内部電極層12を誘電体層11と同時に焼成する必要が無いことから、内部電極層12に焼結を遅れさせるための共材(セラミック粒子)を添加しなくてもよい。したがって、内部電極層12は、セラミック粒子を含んでいなくてもよい。例えば、内部電極層12を、スパッタリングなどの真空成膜法で形成することもできる。
図4の例では、内部電極層12は複数の結晶粒41が粒界42を介して並ぶ構成を有しているが、真空成膜法で形成した内部電極層12は、粒界の無い構成を有していてもよい。
【0028】
単結晶構造を有する誘電体層11の主成分として、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を用いることができる。当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含んでいてもよい。例えば、当該セラミック材料として、BaTiO3(チタン酸バリウム),CaZrO3(ジルコン酸カルシウム),CaTiO3(チタン酸カルシウム),SrTiO3(チタン酸ストロンチウム),MgTiO3(チタン酸マグネシウム),ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等のうち少なくとも1つから選択して用いることができる。Ba1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3は、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸カルシウムおよびチタン酸ジルコン酸バリウムカルシウムなどである。
【0029】
誘電体層11には、添加物が添加されていてもよい。誘電体層11への添加物として、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、希土類元素(イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb))の酸化物、または、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、リチウム(Li)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)もしくはケイ素(Si)を含む酸化物、または、Co、Ni、Li、B、Na、KもしくはSiを含むガラスが挙げられる。
【0030】
単結晶の誘電体層11には、
図5(a)または
図5(b)で例示するように、ひび割れに起因する隙間30が形成されることがある。ただし、この隙間30は、焼結によって生じる結晶粒界とは異なるものである。誘電体層11で観察される欠陥が隙間30であるか結晶粒界であるかは、SEM(走査型電子顕微鏡)またはTEM(透過型電子顕微鏡)による断面観察で確認することができる。隙間30は、
図5(a)で例示するように、積層方向に延びるように形成されていてもよい。または、隙間30は、
図5(b)で例示するように、誘電体層11が延伸する方向に延びるように形成されていてもよい。
【0031】
積層チップ10に含まれる複数の誘電体層11のうち、少なくとも1層が単結晶構造を有していればよい。例えば、単結晶構造になっていない誘電体層が含まれていてもよい。例えば、単結晶構造の作製の過程で形成される結晶粒界を有するような誘電体層が一部に含まれていてもよい。例えば、積層チップ10に含まれる複数の誘電体層11のうち、50%以上の誘電体層が単結晶構造を有していることが好ましい。
【0032】
誘電体層11の1層あたりの平均厚みは、例えば、0.005μm以上3μm以下であり、好ましくは0.01μm以上1μm以下である。なお、誘電体層11の1層あたりの平均厚みは、異なる10箇所で測定された厚みの平均値とすることができる。積層チップ10を断面加工し、その露出面をSEM観察することで得られる。
【0033】
内部電極層12の1層あたりの平均厚みは、例えば、0.005μm以上3μm以下であり、0.01μm以上1μm以下である。なお、内部電極層12の1層あたりの平均厚みは、異なる10箇所で測定された厚みの平均値とすることができる。積層チップ10を断面加工し、その露出面をSEM観察することで得られる。
【0034】
積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.25mm、幅0.125mm、高さ0.125mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mm、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.110mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.1mmであり、または長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、または長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。
【0035】
積層セラミックコンデンサ100において、内部電極層12の積層数は、例えば、100層以上10,000層以下程度である。また、積層セラミックコンデンサ100において、内部電極層12の積層密度は、500層/mm以上、50,000層/mm以下程度である。
【0036】
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。
図6は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
【0037】
(原料粉末作製工程)
まず、誘電体層11として用いることができる単結晶誘電体層を作製する。単結晶誘電体層は、CVD法、蒸着法、レーザーアブレーション法による薄膜合成によって作製することができる。または、水熱合成法・蓚酸法・クエン酸法・固相合成法により得られるチタン酸バリウム粒子を加工して作製することができる。
【0038】
(積層工程)
次に、
図7(a)で例示するように、単結晶誘電体層51の表面に、有機バインダを含む内部電極形成用の金属導電ペーストをスクリーン印刷によって印刷することで、内部電極パターン52を配置する。内部電極形成用の金属導電ペーストは、内部電極層12の主成分金属の粉末を含んでいる。単結晶誘電体層51上に内部電極パターン52が印刷されたものを、以下、積層単位と称する。
【0039】
カバーシートを所定数(例えば2~10層)だけ積層し、その上に、
図7(b)で例示するように、内部電極層12と誘電体層11とが互い違いになるように、かつ内部電極層12が誘電体層11の長さ方向の両端面に端縁が交互に露出して極性の異なる一対の外部電極20a,20bに交互に引き出されるように、積層単位を積層していく。次に、積層された積層単位の上にカバーシートを所定数(例えば2~10層)だけ積層し、熱圧着する。
【0040】
(塗布工程)
このようにして得られたセラミック積層体を、N2雰囲気で脱バインダ処理した後に、外部電極20a,20bとなる金属ペーストをディップ法などで塗布する。例えば、金属ペーストは、積層体において、内部電極パターン52が露出する2端面に塗布する。
【0041】
(焼成工程)
その後、酸素分圧10-5~10-12atmの還元雰囲気中で1100℃~1300℃で5分~20分焼成する。このようにして、積層チップ10と外部電極20a,20bとを同時焼成することができる。
【0042】
(再酸化処理工程)
その後、N2ガス雰囲気中において600℃~1000℃で再酸化処理を行ってもよい。
【0043】
(めっき処理工程)
その後、めっき処理により、外部電極20a,20bに、めっき層を形成してもよい。それにより、積層セラミックコンデンサ100が完成する。
【0044】
また、上記では、外部電極20a,20bと、内部電極層12とを同時に焼成しているが、それに限られない。例えば、内部電極層12を焼成した後に、外部電極20a,20bを焼き付けてもよい。
【0045】
また、内部電極層12は、焼成以外の手法で形成してもよい。例えば、スパッタリング、化学蒸着、物理蒸着などのように、真空成膜法によって形成してもよい。この場合、焼成の工程を省略することができるようになる。
【0046】
なお、上記各実施形態は、セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、それに限られない。例えば、上記各実施形態の構成は、バリスタやサーミスタなどの、他の積層セラミック電子部品に適用することもできる。
【0047】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 積層チップ
11 誘電体層
12 内部電極層
13 カバー層
14 容量部
15 エンドマージン
16 サイドマージン
20a,20b 外部電極
41 結晶粒
42 粒界
51 単結晶誘電体層
52 内部電極パターン
100 積層セラミックコンデンサ