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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055285
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】苗移植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
A01C11/02 320R
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162086
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】川上 修平
(72)【発明者】
【氏名】岩見 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】藤代 孝行
【テーマコード(参考)】
2B062
【Fターム(参考)】
2B062AA02
2B062AA11
2B062AB01
2B062BA13
2B062CA30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】植付条が増えても良好に植付条切替機構を制御できる苗移植機を提供する。
【解決手段】植付条切替機構9と、制御装置とを備えた苗移植機であって、苗植付部3は、苗植付装置303を備え、植付条切替機構9は、左右の植付条切替ユニットを備えており、植付条切替ユニットは、それぞれ、電動モータと、カム部材と、操作ワイヤーの引っ張り操作を行う操作アームを備え、制御装置は、植付条切替スイッチの操作情報に基づき、電動モータの駆動を制御する植付条切替処理を実行するよう構成され、さらに、記憶装置から、電動モータ設定情報と、操作アーム設定情報と、植付条設定情報とを取得するよう構成され、さらに、前記電動モータ設定情報及び前記操作アーム設定情報が設定可能に構成された苗移植機により、上記課題が解決される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付クラッチの入切により苗植付部の植付条の切り替えが可能な植付条切替機構と、植付条切替機構の動作を制御する制御装置とを備えた苗移植機であって、
前記苗植付部は、機体の左右方向に沿って複数配設された苗植付装置を備え、
前記植付条切替機構は、左右の植付条切替ユニットを備えており、
前記植付条切替ユニットは、それぞれ、電動モータと、前記電動モータの駆動により回動するカム部材と、前記カム部材の回動により、前記植付クラッチと連結された操作ワイヤーの引っ張り操作を行う操作アームを備え、前記操作アームの引っ張り操作により前記植付クラッチを入切するよう構成され、
前記制御装置は、植付条切替スイッチの操作情報に基づき、前記電動モータの駆動を制御する植付条切替処理を実行するよう構成され、さらに、前記植付条切替処理に必要な情報を格納する記憶装置から、前記電動モータの設定を示す電動モータ設定情報と、前記操作アームの設定を示す操作アーム設定情報と、前記苗植付部の植付条の状態を示す植付条設定情報とを取得するよう構成され、さらに、作業者の所定操作により前記電動モータ設定情報及び前記操作アーム設定情報が前記記憶装置に設定可能となるように構成されたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記植付条切替処理の実行前に、所定条件で前記植付条切替処理を実行しないようにする切替規制処理を実行するよう構成され、
前記切替規制処理は、機体の左右一方から他方へ植付条の入切を行う際、制御する前記左右の植付条切替ユニットが切り替わる場合に、切替先の前記植付条切替ユニットが植付条の入操作を行うとき、切替元の前記植付条切替ユニットが植付条の切操作中であるときは、植付条切替処理を実行せず、また、
切替先の前記植付条切替ユニットが植付条の切操作を行うとき、切替元の前記植付条切替ユニットが植付条の入操作中であるときは、植付条切替処理を実行しないように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の苗移植機。
【請求項3】
前記苗植付部の荷重を支持する支持フレームが回動により折り畳み可能に構成され、
前記支持フレームは、回動可能な回動側フレームと、前記苗植付部に固定された非回動側フレームとを備え、
前記支持フレームの回動側フレームの下部に設けられたノブ状の折畳み手動操作具の締付けで、前記支持フレームの非折り畳み状態において、回動側フレームの回動の規制を行うよう構成され、
さらに、前記制御装置は、前記非回動側フレームの下部に設けられた接触検知センサである折り畳み検知センサから検知情報を取得し、前記支持フレームが折り畳み状態であるか否かを判定し、折り畳み状態と判定されたとき、前記植付条切替機構の制御を停止するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の苗移植機。
【請求項4】
前記非回動側フレームの下部に、前記接触検知センサを保護する保護カバーが着脱自在に設けられたことを特徴とする請求項3に記載の苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場(水田)の土壌面に苗を植え付ける苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1や特許文献2に示されるように、従来より、苗植付部の植付条の切り替えが可能な植付条切替機構と、植付条切替機構の動作を制御する制御装置とを備えた苗移植機が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-274979号公報
【特許文献2】特開2009-28052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の苗移植機は、作業ごとの植付条の増減(例えば、最大10条植えが可能な苗移植機を、特定の圃場においては8条植えとして使用するなど)や植付条切替機構の連動関係の変更(操作ワイヤーの接続先のクラッチの変更や、カム部材で使用する操作アームの増減・変更など)に良好に対応できるものではなく、植付条が増えるほど、植付条切替機構の制御が複雑となるため誤作動も誘発しやすいものであった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題を解消し、植付条が増えても良好に植付条切替機構を制御できる苗移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、第1の発明は、
植付クラッチの入切により苗植付部の植付条の切り替えが可能な植付条切替機構と、植付条切替機構の動作を制御する制御装置とを備えた苗移植機であって、
前記苗植付部は、機体の左右方向に沿って複数配設された苗植付装置を備え、
前記植付条切替機構は、左右の植付条切替ユニットを備えており、
前記植付条切替ユニットは、それぞれ、電動モータと、前記電動モータの駆動により回動するカム部材と、前記カム部材の回動により、前記植付クラッチと連結された操作ワイヤーの引っ張り操作を行う操作アームを備え、前記操作アームの引っ張り操作により前記植付クラッチを入切するよう構成され、
前記制御装置は、植付条切替スイッチの操作情報に基づき、前記電動モータの駆動を制御する植付条切替処理を実行するよう構成され、さらに、前記植付条切替処理に必要な情報を格納する記憶装置から、前記電動モータの設定を示す電動モータ設定情報と、前記操作アームの設定を示す操作アーム設定情報と、前記苗植付部の植付条の状態を示す植付条設定情報とを取得するよう構成され、さらに、作業者の所定操作により前記電動モータ設定情報及び前記操作アーム設定情報が前記記憶装置に設定可能となるように構成されたことを特徴とする苗移植機を提供する。
【0007】
上記第1の発明によれば、植付クラッチの入切により苗植付部の植付条の切り替えが可能な植付条切替機構と、植付条切替機構の動作を制御する制御装置とを備えた苗移植機において、植付条が増えても良好に植付条切替機構の制御を制御できる。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、前記植付条切替処理の実行前に、所定条件で前記植付条切替処理を実行しないようにする切替規制処理を実行するよう構成され、前記切替規制処理は、機体の左右一方から他方へ植付条の入切を行う際、制御する前記左右の植付条切替ユニットが切り替わる場合に、切替先の前記植付条切替ユニットが植付条の入操作を行うとき、切替元の前記植付条切替ユニットが植付条の切操作中であるときは、植付条切替処理を実行せず、また、
切替先の前記植付条切替ユニットが植付条の切操作を行うとき、切替元の前記植付条切替ユニットが植付条の入操作中であるときは、植付条切替処理を実行しないように構成された苗移植機を提供する。
【0009】
上記第2の発明によれば、植付条切替機構の誤作動をさらに良好に防止できる。
【0010】
第3の発明は、上記第1の発明において、前記苗植付部の荷重を支持する支持フレームが回動により折り畳み可能に構成され、
前記支持フレームは、回動可能な回動側フレームと、前記苗植付部に固定された非回動側フレームとを備え、
前記支持フレームの回動側フレームの下部に設けられたノブ状の折畳み手動操作具の締付けで、前記支持フレームの非折り畳み状態において、回動側フレームの回動の規制を行うよう構成され、
さらに、前記制御装置は、前記非回動側フレームの下部に設けられた接触検知センサである折り畳み検知センサから検知情報を取得し、前記支持フレームが折り畳み状態であるか否かを判定し、折り畳み状態と判定されたとき、前記植付条切替機構の制御を停止するよう構成されたことを特徴とする苗移植機を提供する。
【0011】
上記第3の発明によれば、上記第1の発明の効果に加え、支持フレームの折り畳み状態においては、植付条切替機構の制御を停止する(駆動しない)ことで、折り畳み状態で苗植付装置が駆動することによる故障を未然に防ぐことができる。
【0012】
第4の発明は、上記第3の発明において、前記非回動側フレームの下部に、前記接触検知センサを保護する保護カバーが着脱自在に設けられたことを特徴とする苗移植機を提供する。
【0013】
上記第4の発明によれば、上記第3の発明の効果に加え、、折り畳み検知センサの誤検知や障害物との接触による故障を防止できる。また、保護カバーを着脱自在としたことにより、メンテナンスや部材交換が容易となっている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、自動旋回時の安全性を向上するように構成された苗移植機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係る苗移植機の左側面図である。
図2図2は、同上の平面図である。
図3図3は、同上の背面図である。
図4図4は、図1のステアリング装置上部の要部平面図である。
図5図5は、図1の苗植付装置近傍の部分平面図である。
図6図6は、図5の苗植付装置近傍の部分左側面図である。
図7図7は、図5の支持フレーム近傍の部分背面図である。
図8図8は、図1の施肥装置の近傍の略正面図である。
図9図9は、図1の苗植付部の支持フレーム周辺の要部背面図である。
図10図10(a)は、図9の植付条切替機構(左側植付条切替ユニット)の連動状態を説明する説明図であり、図10(b)は、図9の植付条切替機構(右側植付条切替ユニット)の連動状態を説明する説明図である。
図11図11は、図1の苗移植機の制御装置の構成を示すブロック図である。
図12図12(a)は、図11の記憶装置に記憶された電動モータ設定情報のデータの内容を示すテーブル図であり、図12(b)は、同上の操作アーム設定情報のデータの内容を示すテーブル図であり、図12(c)は、同上の植付条設定情報のデータの内容を示すテーブル図である。
図13図13は、図11の制御装置の植付条切替機構の制御に係る状態遷移図である。
図14図14は、同上の状態遷移表である。
図15図15は、図11の制御装置の植付条切替機構の切替規制制御に係るフローチャートである。
図16図16は、図15のフローチャートにおけるモータ切替対象条を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面に基づいて詳細に説明を加える。まず、本発明の好ましい実施形態に係る苗移植機の基本構成について説明する。なお、以下の説明においては、苗移植機の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向を前、後進方向を後というが、これらの方向の定義自体は、本発明の構成を限定するものでは無い。
【0017】
<1.基本構成>
図1図3を参照し、苗移植機1の基本構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る苗移植機1の左側面図であり、図2は平面図、図3は、背面図である。まず、苗移植機1は、図1及び図2に示されるように、基本構成として、機体を走行させる走行手段である走行車体2と、作業手段である作業装置3とを備えている。
【0018】
走行車体2は、図1に示されるように、車体骨格を成すメインフレーム201と、このメインフレーム201の上に搭載されたエンジン202と、このエンジン202の動力を伝達する動力伝達装置205とを備え、さらに、左右一対の前輪203及び後輪204を備えている。
【0019】
この動力伝達装置205によって、苗移植機1は、エンジン202から供給される動力を、前輪203及び後輪204に伝動することで四輪駆動が可能に構成されており、さらに、作業装置3への伝動により作業を行うものとなっている。なお、苗移植機1は、走行時において、後輪204のみを駆動することもできるよう構成されている。
【0020】
メインフレーム201上には、作業者が乗車時に足を載せるフロアステップ206が載置固定されており、このフロアステップ206の後方には、後輪204のフェンダを兼ねたリヤステップ207が設けられる。フロアステップ206およびリヤステップ207上にはエンジン202を覆うエンジンカバー210が設けられ、エンジンカバー210の上方には、操縦席208が設けられる。また、操縦席208の前方には、苗移植機1を操縦するための操縦部209が配設される。
【0021】
<2.走行系の構成(動力伝達構造)>
走行手段に係る動力伝達構造について、以下説明する。
動力伝達装置205は、図示しないが、主変速機構として、油圧式無段変速機と、ベルト式動力伝達機構とを備える。この油圧式無段変速機は、静油圧式の無段変速装置(HST:Hydro Static Transmission)である。また、ベルト式動力伝達機構は、エンジン202からの動力を油圧式無段変速機に伝達するものである。
【0022】
動力伝達装置205は、ミッションケース211を備える。このミッションケース211は、メインフレーム201の前部に配設され、ベルト式動力伝達機構および油圧式無段変速機を介して、エンジン202からの動力が伝達される。また、ミッションケース211は、副変速機構を備えており、これにより、走行車体2の路上走行時や植付走行時における走行速度や作業速度を変速して切り替え可能となっている。
【0023】
さらに、ミッションケース211は、副変速機構で変速された動力を、走行用動力および作業装置3(苗植付部301)の駆動用動力に分ける機能を果たす。この走行用動力は、一部が左右のファイナルケース212を介して前輪203に伝達可能であり、残りが左右の後輪ギヤケース213を介して後輪204に伝達可能である。一方、駆動用動力は、走行車体2の後部に設けられた植付クラッチ(図示せず)に伝達され、植付クラッチによる動力接続時に植付伝動軸(図示せず)によって作業装置3(苗植付部301)に伝達される。
【0024】
主変速機構及び副変速機構を経由した動力は、図示しない前輪変速機構及び前輪駆動軸によって、図示しない前輪差動機構を介して左右の前輪203に分配され、図示しない後輪駆動軸によって図示しない後輪差動機構を介して左右の後輪204に分配される。これにより、走行車体2が前輪203の転舵により左右へ旋回する際に、内輪と外輪の回転数に差を許容し、円滑な走行が可能となっている。なお、後輪差動機構は、図示しないブレーキ機構により、左右の後輪204を独立して制動可能となっている。
【0025】
<3.操縦系の構成>
苗移植機1の操縦に係る操縦系の構成について、以下説明する。
操縦部209は、その前部に、燃料タンク等を覆うフロントカバー214が設けられるとともに、苗移植機1を操舵するためのステアリング装置215が配設されている。このステアリング装置215の上部には、各種操作レバー、操作スイッチや計器類が配設されている。
【0026】
ステアリング装置215は、前輪203を操舵するために作業者が回動操作するステアリングハンドル216と、ステアリングハンドル216のステアリングシャフト(回転軸)を内蔵するステアリングコラムと、ステアリングシャフトの回動を左右方向の略直線運動に変換する図示しない操舵機構と、操舵機構の両端と左右の前輪203とを接続する図示しないタイロッドとを有する(図示せず)。これにより、ステアリングハンドル216が回動されると、ステアリングシャフトも回動し、その結果、ステアリングハンドル216の回動角及び回動方向に基づいて、タイロッドが左右に移動し、左右の前輪203が操舵される。
【0027】
図4は、図1のステアリング装置215上部の要部平面図である。
各種操作レバーとして、例えば、主変速レバー217や副変速レバー218などが設けられる。主変速レバー217は、主変速機構を操作するレバーであり、走行車体2の前後進および走行速度を変更する場合に操作される。また、副変速レバー218は、副変速機構を操作するレバーであり、走行車体2の走行速度を、走行する場所(圃場や路上)に応じて切り替える場合等に操作される。
【0028】
主変速レバー217の把持部には、押圧操作により植付クラッチを入切するための植付スイッチ219と、上下操作により苗植付部301を昇降するための苗植付部昇降レバー220が設けられている。
【0029】
各種操作レバーが操作されると、各種操作レバーの操作位置を検出する複数のレバーセンサ(図示せず)によりそれぞれの操作が検出され、電気信号により後述する制御装置Cに送信される。
【0030】
操縦席208の下方には左右のブレーキ機構を操作するブレーキペダル及びアクセルペダル(図示せず)が配置されており、操縦席208前方のステアリングハンドル216の周囲には、走行車体2のメインスイッチであるスタータスイッチ221、マーカ操作部222が配置されている。
【0031】
マーカ操作部222は、線引マーカ6の操作を手動で行うためのスイッチであり、上方向及び左右方向の操作が可能となっている。
【0032】
また、操縦席208には、作業者の着座の有無を検出する座席センサ(図示せず)が設けられている。この座席センサによって検出された情報は、電気信号により後述する制御装置Cに送信される。
【0033】
また、苗移植機1は、操縦部309が所定操作されると、後述する制御装置Cに信号が送られ、これにより、ステアリングハンドル216が自動操舵される自動走行モードと、作業者が操舵する手動走行モードとを切り替え可能となっている。
【0034】
表示操作端末器223は、ステアリングハンドル216の前方に配設され、図3に示されるように、各種の情報を表示する表示部224及び入力操作を受け付ける入力操作部228を備えている。
【0035】
表示部224は、LED等の発光素子の点灯及び消灯により情報を表示する電光表示部225と、液晶ディスプレイにより情報を表示する液晶表示部226とを備えている。
【0036】
電光表示部225は、苗移植部301の苗切れや施肥装置8の肥料切れ等の各種情報が表示可能となっている。
【0037】
液晶表示部226は、各種の設定に必要な設定画面等を表示可能に構成されている。
【0038】
入力操作部228は、回転操作及び押圧操作を受け付けるロータリスイッチ228aと、押圧操作を受け付ける複数の押ボタンスイッチ228bとを備えており、ロータリスイッチ228aの回転により選択、ロータリスイッチ228aまたは押ボタンスイッチ228bに押圧により決定・キャンセル等の入力操作が可能に構成されている。この入力操作部228によって作業者から受け付けた入力情報は、電気信号により後述する制御装置Cに送信される。これにより、入力操作部228の操作に応じて、制御装置Cに各種の情報を設定可能となっている。
【0039】
また、表示操作端末器223は、スピーカやブザー等の機構を有する音声出力部229を備え、音声出力による報知が可能となっている。
【0040】
植付条切替スイッチQは、10条植えに対応する植付条の切り替えを可能とするため、1・2条の植付けの入切に対応する第1スイッチq1、3・4条の植付けの入切に対応する第2スイッチq2、5・6条の植付けの入切に対応する第3スイッチq3、7・8条の植付けの入切に対応する第4スイッチq4、9・10条の植付けの入切に対応する第5スイッチq5が設けられている。なお、植付条切替スイッチQの操作情報は、電気信号により後述する制御装置Cに送信される。
【0041】
植付条表示ランプPは、1~10条の植付状態が視覚的に視認できるようにする機能を果たすものであり、1・2条が植付状態のとき点灯する第1植付条表示ランプp1、3・4条が植付状態のとき点灯する第2植付条表示ランプp2、5・6条が植付状態のとき点灯する第3植付条表示ランプp3、7・8条が植付状態のとき点灯する第1植付条表示ランプp4、9・10条が植付状態のとき点灯する第1植付条表示ランプp5を備えている。
【0042】
<4.作業系の構成>
作業手段に係る作業装置3について、以下説明する。
走行車体2の後部には、図1に示されるように、作業装置3として、圃場に苗を植え付ける苗植付部301と、苗移植部301を昇降するための昇降機構4が配設されている。
【0043】
昇降機構4は、走行車体2後部に固定されたリンクベースフレーム41に、それぞれ回動自在に連結された上リンク及び下リンクからなる平行リンク機構42を備えている。この平行リンク機構42の後端側には、苗植付部301が連結されており、油圧式の昇降シリンダ43の伸縮を電気的に制御可能することによって、苗植付部301を上下回動する仕組みとなっている。
【0044】
この昇降シリンダ43は、ミッションケースの内部の作動油を、エンジン202の動力によって駆動する図示しない油圧ポンプへ供給し、電気的に制御可能な油圧制御弁により油圧ポンプから昇降シリンダ43に送りこまれる作動油の量を制御するよう構成されている。これにより、制御装置Cは、昇降機構4の昇降シリンダ43の伸縮を制御することにより、苗植付部301の昇降を制御可能となっている。
【0045】
以上のように構成された昇降機構4によって、苗植付部4は、植え付け時(主に、直進走行時)においては、苗植付部301を下降させて対地作業位置(植付位置)に、非植え付け時(主に、旋回時)においては、苗植付部301を上昇させて非作業位置に切り換えることができる。
【0046】
苗植付部301は、苗載置台302と、苗植付装置303と、フロート304とを備えており、苗載置台302の苗載せ面は、左右方向において仕切られ、植付条数分設けられる。図示されていないが、複数の苗載せ面にはそれぞれ土付きのマット状の苗(苗マット)が積載され、この苗載せ面には、1~10条の各植付条に対応して、苗を下方に移送する無端回動ベルト型式の苗送りベルト316が設けられている。この苗送りベルト316は、ベルトクラッチ317(図1図3において図示せず)によって、2条ごとに駆動が入切可能に構成されている。このベルトクラッチ317は、1・2条に対応する苗送りベルト317を入切する第1ベルトクラッチ317a、3・4条に対応する苗送りベルト316を入切する第2ベルトクラッチ317b、5・6条に対応する苗送りベルト316を入切する第3施肥クラッチ317c、7・8条に対応する苗送りベルト316を入切する第4施肥クラッチ317d、9・10条に対応する苗送りベルト316を入切する第5ベルトクラッチ317eを備えている。
【0047】
図5は、図1の苗植付装置近傍の部分平面図であり、図6は、図5の支持フレーム304近傍の部分背面図であり、図7は、図5の苗植付装置303近傍の部分左側面図である。苗植付装置303は、図5図6に示されるように、2条毎に1つ設けられており、それぞれが、植込杆303aと、ロータリケース303bと、植付伝動ケース303cとを備える。
【0048】
植込杆303aは、苗載置台302に積載された苗を圃場に植え付ける機構であり、ロータリケース303bの回転駆動と連動して、苗載置台302に載置された苗マットから1株分の苗を切取って土中に植込むよう動作する。
【0049】
ロータリケース303bは、苗植付装置303に動力を伝達する植付伝動ケース303cに対して回転可能に取り付けられる。
【0050】
各植付伝動ケース303cには、各苗植付装置303の駆動を入切できる植付クラッチ308が内蔵されている。この植付クラッチ308は、1・2条に対応する植付けを入切する第1植付クラッチ308a、3・4条に対応する植付けを入切する第2植付クラッチ308b、5・6条に対応する植付けを入切する第3植付クラッチ308c、7・8条に対応する植付けを入切する第4植付クラッチ308d、9・10条に対応する植付けを入切する第5植付クラッチ308eを備えている。
【0051】
このように構成された苗植付部301は、制御装置Cによって、植付クラッチ308を介して、各苗植付装置303の駆動をそれぞれ制御することにより、1~10条植えに対応する苗の植付けを、2条ごとに自在に入切することが可能となっている。
【0052】
苗植付部3の荷重を支持する支持フレーム304は、車体左右方向に並んで設けられた複数の苗植付装置303、整地ローター部材401および整地フロート部材402を支持するフレームである。支持フレーム304の長手方向は、車体左右方向である。支持フレーム304の外側端である回動側フレーム304kは、車体左右方向における車体中央へ向かって折畳み可能である。支持フレーム304のフレーム回動支点304aは、支持部材305の苗取り量調節レバー回動支点と、支持部材305のフレームの後方の補強部材306の補強フレーム回動支点と、で決定される直線の上に設けられる。これにより、支持フレーム304は、フレーム回動支点304aを中心に回動側フレーム304kを回動して、矢印Xで示された上向きの90度折畳みが可能となっている(図7参照)。このような折畳み機構は車体左右方向における支持フレーム304の両方の外側端に設けられるので、苗植付部301の両サイド折畳みによるコンパクトな収納を行うことができる。
【0053】
苗植付具駆動軸307は、苗植付装置303を駆動する、長手方向が車体左右方向である部材である。苗植付装置駆動軸307の外側端は、取外し可能である、または車体左右方向における車体中央へ向かって折畳み可能である。本実施の形態においては、苗植付装置駆動軸307の外側端は車体左右方向における車体中央へ向かって折畳み可能である。苗植付装置駆動軸307に関する、駆動部ユニバーサルジョイント構成により、フレーム折畳みとともに駆動部回動を行うことができる。折畳みにともなう苗植付装置駆動軸307の駆動部取外しのみならず、いわゆる位相合わせなどのような調節作業も不要であるので、使いやすさが向上される。
【0054】
整地ローター駆動軸309は、整地ローター部材401を駆動し、長手方向が車体左右方向である軸部材である。整地ローター駆動軸309の外側端は、取外し可能である、または車体左右方向における車体中央へ向かって折畳み可能である。本実施形態においては、整地ローター駆動軸309の外側端は取外し可能である。整地ローター部材401に関し、支持フレーム304のフレームからの自由なローター脱着により、コンパクトなローター収納を行うことができる。
【0055】
補強部材306は、複数の苗植付装置303を繋いで補強する、長手方向が車体左右方向であるフレーム部材である。補強部材306の外側端は、取外し可能である、または車体左右方向における車体中央へ向かって折畳み可能である。本実施形態においては、補強部材306の外側端は車体左右方向における車体中央へ向かって折畳み可能である。
【0056】
苗載置台支持レール310は、植付けられる苗を載せる苗載置台302を支持するレール部材である。支持部材305は、苗載置台302と苗植付装置303との間の距離が調節可能であるように苗載置台支持レール310を下方から支持する、長手方向が車体左右方向である回動可能な部材である。支持部材305の外側端は、取外し可能である、または車体左右方向における車体中央へ向かって折畳み可能である。本実施の形態においては、支持部材305の外側端は車体左右方向における車体中央へ向かって折畳み可能である。
【0057】
苗植付具駆動軸307、整地ローター駆動軸309、補強部材306および支持部材305の4つの部材のうち、少なくとも一つの部材の外側端は、折畳み可能である。少なくとも一つの部材の折畳み箇所の位置は、車体左右方向および上下方向において支持フレーム304の折畳み箇所の位置と一致する。本実施の形態においては、苗植付装置駆動軸307、補強部材306および支持部材305の外側端は折畳み可能であり、少なくとも補強部材306および支持部材305の折畳み箇所の位置は車体左右方向および上下方向において支持フレーム304の折畳み箇所の位置と一致する。
【0058】
また、図7に示されるように、支持フレーム304の回動側フレーム304kの下部に設けられたノブ状の折畳み手動操作具312の締付けで、非折り畳み状態において、支持フレーム304の固定(回動の規制)を行うことができ、容易なノブ回しのみによる支持フレーム折畳みのワンタッチ操作が可能となっている。
【0059】
ノブ状の折畳み手動操作具312は、作業者が把持して回動操作を行うための把持部312aと、把持部と一体で回動するロッド部312bと、該ロッド部312bの先端に螺条が形成された雄螺子部312cとを備えている。また、支持フレーム304の非回動側フレーム304nの下部に、雄螺子部312cと螺合する雌螺子部304bが設けられており、把持部312aを回動操作すると、雄螺子部312cと雌螺子部304bが螺合した状態において、ノブ状の折畳み手動操作部312が矢線Yで示される方向に進退する。これにより、雄螺子部312cと雌螺子部304bとの螺合が解除されると、矢印Xで示される方向に、支持フレーム304の回動側フレームの折り畳みが可能となる。
【0060】
一方、雄螺子部312cと雌螺子部304bが螺合した状態では、支持フレーム304の回動側フレームは、ノブ状の折畳み手動操作具312によって、非回動側フレーム304nに固定される。このように、支持フレーム304の折り畳みが規制された状態においては、雄螺子部312bの先端が、支持フレーム710の非回動側に設けられた接触検知センサである折り畳み検知センサs1に当接(接触)し、これを検知することで、支持フレーム304が固定状態であるか、折り畳み状態であるか、折り畳み検知センサs1の検知情報を取得した制御装置Cが判定できる仕組みとなっている。すなわち、後述する制御装置Cは、折り畳み検知センサs1から、検知情報を適宜取得し、接触が検知されているときは、支持フレーム304が固定状態であると判定し、接触が検知されていないときは、折り畳み状態であると判定するよう構成されている。
【0061】
また、支持フレーム304の非回動側フレーム304nの下部は、雌螺子部304bと折り畳み検知センサs1を覆うことが可能な略箱形状の保護カバー304gがボルト締結により着脱自在となっている。これにより、折り畳み検知センサs1の誤検知や障害物との接触による故障を防止できる。また、保護カバー304gを着脱自在としたことにより、メンテナンスや部材交換が容易となっている。
【0062】
図8は、図1の施肥装置8の近傍の略正面図である
施肥装置8は、圃場に施肥を行う装置であり、操縦席208の後方に設けられ、2条毎に施肥の入切が可能であり、最大10条植えに対応する施肥が可能となっている。詳細には、図8に示されるように、施肥装置8は、左端部に設けられたブロワ801と、三つ又のダクトによって構成され、左側の開口がブロワ801に接続されたエア切換管(図示せず)と、エア切換管の右前部の開口に接続されたエアチャンバー802と、エア切換管の右後部の開口に接続され、エアチャンバー802の後方に配置された排出ダクト803と、圃場に供給する肥料を貯留する施肥ホッパ804と、施肥ホッパ803の下方に設けられた10つの繰出装置805と、各繰出装置805の下方にそれぞれ設けられ、エアチャンバー802に接続された10本の接続管と、前方端部が各接続管の後端部に接続され、10条植えに対応し、苗植付部301の下部まで延びる計10本の施肥ホース(図示せず)と、繰出装置805を駆動するための施肥伝動機構806を備えている。なお、施肥伝動機構806には、後輪ギアケース213から駆動力が伝動される。
【0063】
ブロワ801から供給されたエアが、エアチャンバー802内へ供給され、エアチャンバー802内へ供給されたエアは、接続管を介して、施肥ホース内へ供給される。一方、施肥ホッパ804の下方に設けられた10つの繰出装置805はそれぞれ、外周面に繰出溝を有する繰出ロール(図示せず)を備え、繰出ロールによって繰り出された肥料は、接続管内に供給され、接続管内に供給された肥料が、施肥ホースを通じて、圃場へ供給される。
【0064】
また、繰出装置805は、それぞれ、施肥クラッチ807によって、2条ごとに駆動が入切可能に構成されている。この施肥クラッチ807は、1・2条に対応する施肥を入切する第1施肥クラッチ807a、3・4条に対応する施肥を入切する第2施肥クラッチ807b、5・6条に対応する施肥を入切する第3施肥クラッチ807c、7・8条に対応する施肥を入切する第4施肥クラッチ807d、9・10条に対応する施肥を入切する第5施肥クラッチ807eを備えている。
【0065】
このように構成された施肥装置8は、制御装置Cによって、施肥クラッチ806を介して、繰出装置805の駆動を制御することにより、1~10条植えに対応する施肥を、2条毎に自在に入切することが可能となっている。
【0066】
<5.植付条切替機構の構成>
図9は、苗植付部301の支持フレーム304周辺の要部背面図である。
図9に示されるように、支持フレーム304の左右には、それぞれ、上下方向に延びる左右の支柱フレーム313,313が立設され、この左右の支柱フレーム313,313の上下方向における中間部分に、中間支持フレーム314、上部に上部支持フレーム315が、横架するように配設されている。
【0067】
この上部支持フレーム315上に、植付条を切り替える機構である植付条切替機構9が配設されている。この植付条切替機構9は、後述する制御装置Cによる制御に基づいて、、苗植付部301の植付条を切り替える機能を果たすものであり、複数の植付条切替ユニット901で構成され、より詳細には、機体左側に配された左側植付条切替ユニット901Lと、機体右側に配された右側植付条切替ユニット901Rを備えている。なお、植付条とは、苗の植え付けがなされる条を指し、例えば、1・2条が植付条のとき、1・2条に対応する第1ベルトクラッチ317aが「入」となり苗送りベルト316が駆動して苗植付装置303に苗が送られ、1・2条に対応する第1植付クラッチ308aが「入」となり、苗植付装置303により、1・2条に苗が植え付けられ、1・2条に対応する施肥クラッチ807aが「入」となり、施肥装置8により、1・2条に施肥がなされる。
【0068】
図10(a)は、図9の植付条切替機構(左側植付条切替ユニット901L)の連動状態を説明する説明図であり、図10(b)は、図9の植付条切替機構(右側植付条切替ユニット901R)の連動状態を説明する説明図である。
【0069】
左側植付条切替ユニット901L及び右側植付条切替ユニット901Rの基本構造は、同一であり、制御装置Cにより駆動が制御される正逆回転可能な電動モータM(m1、m2)の回転力を、ピニオンギア902を介して、操作軸903に伝達し、この操作軸 と連結されたカム部材903を正逆回動させるよう構成されている。
【0070】
カム部材903の下方には、基部側に回動支点を有する複数の操作アームARM(arm1~arm5)が設けられている。図10(a)に示されるように、左側植付条切替ユニット901には、3本の第1~第3操作アーム(arm1~arm3)が設けられ、左側植付条切替ユニット901には、2本の第3~第4操作アーム(arm4~arm5)が設けられている。
【0071】
カム部材903を正逆回動により、カム部材903の角部分が、操作アームARM(arm1~arm5)の基部に接触すると、接触した操作アームARM(arm1~arm5)が回動支点を中心に回動動作し、これにより、操作アームARM(arm1~arm5)の先端側に連結された操作ワイヤーwを引っ張り操作するよう構成されている。
【0072】
図10(a)及び図10(b)に示されるように、1つの操作ワイヤーwは、対応する1つの植付クラッチ308、施肥クラッチ806、ベルトクラッチ317と連結されており、引っ張り操作により、対応するこれらのクラッチを「入」状態から「切」状態とする仕組みとなっている。なお、引っ張り操作が解除されると、これらのクラッチの「切」状態は、「入」状態となる。
【0073】
図示例においては、第1操作アームarm1の回動動作に応じて、1・2条に対応する第1植付クラッチ308a、第1施肥クラッチ807a、第1ベルトクラッチ317aが連動してそれぞれ入切操作され、その結果、苗植付部3の1・2条の植付けの入切が可能に構成されている。同様に、第2操作アームarm2は、3・4条の植付けの入切が、第3操作アームarm3は、5・6条の植付けの入切が、第4操作アームarm4は、7・8条の植付けの入切が、第5操作アームarm5は、9・410条の植付けの入切が可能となっている。
【0074】
このようにして、植付条切替機構9は、制御装置Cにより、電動モータM(m1、m2)の駆動を制御することで、苗植付部301の植付条を2条単位で切替可能に構成されている。
【0075】
<6.制御系の構成>
図11は、苗移植機1の制御装置Cの構成を示すブロック図である。
制御装置Cは、苗移植機1の走行系及び作業系を主に制御する装置であり、複数のECU(Electronic Control Unit)を組み合わせて構成された情報処理装置である。この複数のECUは、それぞれが、演算処理を行うCPUと、演算処理に必要な情報を読み書き可能なメモリとを備えて構成されており、メモリに記憶された各種の制御プログラムに従ってCPUが動作することにより、各種の機能が発揮される。制御装置Cを構成する各要素は、CAN(Controller Area Network)などの車内通信又は電力線などを介して、通信可能又は送電可能に接続されている。
【0076】
制御装置Cの入力側には、植付条操作スイッチQ(q1~q5)、折り畳み検知センサs1等のセンサ類、各種操作レバーが接続されており、これらから各種の操作情報や検知情報を取得可能に設けられている。
【0077】
また、制御装置Cは、エンジン202、主変速機構、副変速機構、苗植付部301昇降機構4、施肥装置8、苗植付部301、植付条切替機構9を制御し、また、これらの機構・装置から、検知や作動に関する各種の情報を取得可能に構成されている。また、各種クラッチ(植付クラッチ308、施肥クラッチ807、ベルトクラッチ317)の入切に関する情報を取得可能に構成されている。
【0078】
制御装置Cは、植付条切替処理に必要な情報を格納する記憶装置Dと接続されている。この記憶装置Dは、例えばHDD(Hard Disc Drive)やSSD(Solid State Drive)で構成される。また、ネットワークを介して接続されるサーバ装置等であってもよい。
【0079】
記憶装置Dには、図12(a)~図12(c)に示されるように、電動モータ設定情報Dm、操作アーム設定情報Da、植付条設定情報Djが格納されている。電動モータ設定情報Dm、操作アーム設定情報Daは、表示操作端末器223の操作により予め作業者によって設定され、植付条設定情報Djは、制御装置Cが、電動モータ設定情報Dm、操作アーム設定情報Daの情報から、対応電動モータの項目を自動設定し、さらに、植付状態の項目は、植付条切替スイッチQの操作に応じて、適宜自動で設定するよう構成されている。また、このような設定情報を記憶装置Dに記憶させるとともに、表示操作端末器223を介して、その操作情報を制御装置Cが取得し、これに基づき、設定情報(電動モータ設定情報Dm、操作アーム設定情報Da)を設定や設定変更可能とするよう構成すれば、作業ごとの植付条の増減(例えば、最大10条植えが可能な苗移植機1を、特定の圃場においては8条植えとして使用するなど)や植付条切替機構9の連動関係の変更(操作ワイヤーwの接続先の変更や、カム部材904で使用する操作アームARMの増減・変更など)に良好に対応できる。その結果、植付条が増えても、これらの設定情報の利用により、植付条切替機構の誤作動を良好に防止できる。
【0080】
電動モータ設定情報Dmは、電動モータMと、その電動モータMを駆動すると、その操作アームARMが回動動作するかの対応を示す情報であり、例えば、モータ識別番号、操作アーム番号の情報が含まれる。図示例においては、例えば、1行目のデータによって、モータ識別番号m1に対応する電動モータm1の駆動により、操作アーム番号arm1、arm2、arm3、すなわち、操作アームarm1、操作アームarm2、操作アームarm3が回動動作することが示されている。
【0081】
操作アーム設定情報Daは、特定の操作アームARMが回動動作すると、どの植付クラッチ308、施肥クラッチ807、ベルトクラッチ317が連動するかの対応を示す情報であり、例えば、操作アーム番号、連動植付クラッチ、連動施肥クラッチ、連動ベルトクラッチの情報が含まれる。図示例においては、例えば、1行目のデータによって、操作アーム番号arm1、すなわち、操作アームarm1が回動動作すると、植付クラッチ308a、施肥クラッチ807a、ベルトクラッチ317aが連動することが示されている。
【0082】
植付条設定情報Djは、1~10条の各条について、植付けを入切するために駆動する電動モータMと、現在の植付状態、すなわち、苗植付装置303が駆動して苗が植え付けられている状態か否かを示す情報であり、例えば、条、対応電動モータ、植付状態の情報が含まれる。例えば、1行目のデータによって、1条目は、電動モータm1の駆動により、植付状態の入切が制御され、現在の植付状態は「切」である、すなわち、植付けが行われていないことが示されている。
【0083】
なお、制御装置Cは、対応電動モータの項目を、電動モータ設定情報Dm、操作アーム設定情報Daから自動設定することが可能である。例えば、1条目に対応する植付クラッチ303aは、操作アーム設定情報Daから、操作アームarm1であり、電動モータ設定情報Dmから、操作アームarm1は、電動モータm1と連動することが判断できるため、1条目の対応電動モータは、電動モータm1であることが判断できる。
【0084】
<7.植付条切替処理>
制御装置Cは、作業者による植付条切替スイッチQの操作に応じて、植付条切替機構9の電動モータMを駆動制御し、植付条を切り替える植付条切替処理を行う。
【0085】
図13は、植付条切替処理における、制御装置Cの植付条切替機構9の制御に係る状態遷移図であり、図14は、状態遷移表である。
植付条切替処理においては、基本動作として、例えば、1・2条の苗植付装置303による植付けが「切」状態のときに、1・2条に対応する植付条切替スイッチQ(第1操作スイッチq1)が操作されると、植付けが「入」状態となるように、植付条切替機構9が制御され、また、植付けが「入」状態のときに、1・2条に対応する植付条切替スイッチQ(第1操作スイッチq1)が操作されると、植付けが「切」状態となる。他の3~10条の植付けについても、同様に、対応する植付条切替スイッチQ(第2操作スイッチq2~第5操作スイッチq5)の操作によって、2条毎の入切の操作が可能となっている。
【0086】
なお、例えば、1・2条の苗植付装置303による植付けが「入」状態とは、1・2条が植付条であり、1・2条に対応する第1ベルトクラッチ317aが「入」となり苗送りベルト316が駆動して苗植付装置303に苗が送られ、1・2条に対応する第1植付クラッチ308aが「入」となり、苗植付装置303により、1・2条に苗が植え付けられ、1・2条に対応する施肥クラッチ807aが「入」となり、施肥装置8により、1・2条に施肥がなされる状態を指す。他の3~10条の植付けについても、同様である。
【0087】
但し、図13図14に示されるように、苗植付装置303による植付けの入切は、左右一端側から他方側に向けて順に操作可能となるように構成されている。例えば、図3に示されるように、全条入の状態から、植付条切替スイッチQの操作によって、植付けを「切」状態とするとき、機体左側から右側に向けて1・2条、3・4条、5・6条、7・8条、9・10条の順、あるいは、この逆の、機体右側から左側に向けて9・10条、7・8条、5・6条、3・4条、1・2条の順、に「切」状態とするよう構成されている。そして、この順に反するように植付条切替スイッチQを操作しても、反応しないよう構成されている。これにより、作業者の誤操作による誤作動を有効に防止できる。
【0088】
<8.植付条切替処理>
図11の制御装置Cの植付条切替機構9の切替規制処理に係るフローチャートである。
制御装置Cは、植付条切替処理を実行する前に、切替規制処理を実行する。切替規制処理とは、所定条件で植付条切替処理を実行しないことにより、設定ミス等を要因とする植付条切替に係る誤作動を防止する処理である。
【0089】
制御装置Cは、作業者によって植付条切替スイッチQが操作されると、図11に示される切替規制制御の実行を開始する。まず、操作された植付条切替スイッチQの操作情報を取得し、入切対象となる植付条を判定する(Step1)。例えば、第2スイッチp2が操作されたとき、入切対象となる植付条は、3・4条である。
【0090】
続いて、電動モータ設定情報Dm、操作アーム設定情報Da、植付条設定情報Djを順次取得し、入切対象となる植付条が、モータ切替対象条に該当するか判定する(Step2~Step5)。
【0091】
ここで、図16を参照し、モータ切替対象条について説明する。
図16は、図15のフローチャートにおけるモータ切替対象条を説明する説明図である。モータ切替対象条とは、制御装置Cによって、植付条切替機構9の電動モータMを駆動制御して、植付条の入切を行う際に、制御対象となる電動モータM(m1、m2)が切り替わる条を指す。例えば、図12(c)の図示例においては、1~6条は、電動モータm1によって植付条の入切を行い、7~10条は、電動モータm2によって植付条の入切を行うよう設定されている。
【0092】
このとき、例えば、図13の状態遷移図において、第4スイッチq4を操作し、1~6条切から1~8条切とするとき、1~6条切までは、電動モータm1の駆動制御によって行うが、7~8条切は、電動モータm2の駆動制御によって行うため、制御対象となる電動モータが切り替わることとなる。このように、制御対象となる電動モータM(m1、m2)が切り替わる条が、モータ切替対象条であり、図12(c)の図示例のように植付条設定情報Djの内容が設定されていた場合においては、図16に示されるように、5・6条、7・8条がモータ切替対象条に該当する。
【0093】
図15のフローチャートのStep5の説明に戻り、制御装置Cは、入切対象となる植付条が、植付対象条でない場合(例えば、図16の図示例の状態において、1・2条に対応する第1操作スイッチq1が操作された場合など)、植付条切替処理を実行する。
【0094】
他方で、図15のフローチャートのStep5において、制御装置Cは、入切対象となる植付条が、植付対象条であると判断した場合(例えば、図16の図示例の状態において、7・8条に対応する第4操作スイッチq4が操作された場合など)、植付条の入切条件を満たすか判定する。
【0095】
ここで、植付条の入切条件とは、切替先となる電動モータMに対して、切替元となる電動モータMの駆動と連動する各種クラッチ(植付クラッチ308、施肥クラッチ807、ベルトクラッチ317)が、植付条を「入」にする場合は、全て「入」になっており、また、植付条を「切」にする場合は、全て「切」になっていることである。
【0096】
例えば、図13の状態遷移図において、7・8条に対応する第4操作スイッチq4が操作され、1~6条切から1~8条切とする場合、切替先となる電動モータMは、電動モータm2であり、切替元となる電動モータMは、電動モータm1である。これは、7・8条の植付条を「切」とする場合なので、切替元となる電動モータm1と連動する各種クラッチ(植付クラッチ308a~308c、施肥クラッチ807a~807c、ベルトクラッチ317a~317c)が全て「切」となっていることが入切条件を満たす条件となる。
【0097】
また、例えば、図13の状態遷移図において、5・6条に対応する第3操作スイッチq3が操作され、5~10条切から7~10条切とする場合、切替先となる電動モータMは、電動モータm1であり、切替元となる電動モータMは、電動モータm2である。これは、5・6条の植付条を「入」とする場合なので、切替元となる電動モータm2と連動する各種クラッチ(植付クラッチ308e~308d、施肥クラッチ807e~807d、ベルトクラッチ317e~317d)が全て「入」となっていることが入切条件を満たす条件となる。
【0098】
なお、入切条件の判定において、制御装置Cは、各種クラッチ(植付クラッチ308、施肥クラッチ807、ベルトクラッチ317)から(より厳密には、各種クラッチに設けられたセンサから)入切状態に関する情報を取得する。
【0099】
図15のフローチャートのStep7の説明に戻り、制御装置Cは入切条件を満たすと判定したときは、植付条実行処理を行う。一方で、入切条件を満たさないと判定したときは、表示操作端末器223により作業者にエラーを報知する(Step8)。これにより、作業者は、植付条切替に伴う異常を迅速に把握することができる。
【0100】
以上のように構成された切替規制処理によって、機体の左右一方から他方へ植付条の入切を行う際、制御する左右の植付条切替ユニット901(901L、901R)が切り替わる場合に、切替先の前記植付条切替ユニット901(901L、901R)が植付条の入操作を行うとき、切替元の前記植付条切替ユニット901(901L、901R)が植付条の切操作中であるときは、植付条切替処理を実行せず、また、
切替先の前記植付条切替ユニット901(901L、901R)が植付条の切操作を行うとき、切替元の前記植付条切替ユニット901(901L、901R)が植付条の入操作中であるときは、植付条切替処理を実行しないこととなる。これにより、植付条切替に伴う誤動作を良好に防止できる。
【0101】
なお、同様の要領で、機体の左右一方から他方へ植付条の入切を行う際、制御する左右の植付条切替ユニット901(901L、901R)が切り替わる場合に、切替先の前記植付条切替ユニット901(901L、901R)が植付条を担当する電動モータMのON操作を行うとき、切替元の前記植付条切替ユニット901(901L、901R)を担当する電動モータMがOFF状態であるときは、植付条切替処理を実行せず、また、
切替先の前記植付条切替ユニット901(901L、901R)が植付条を担当する電動モータMのOFF操作を行うとき、切替元の前記植付条切替ユニット901(901L、901R)が植付条を担当する電動モータMがON状態であるときは、植付条切替処理を実行しないこととしてもよい。これにより、同様に、植付条切替に伴う誤動作を良好に防止できる。
【0102】
また、制御装置Cは、折り畳み検知センサs1の検知結果を取得し、非回動側フレーム304nの下部に設けられた折り畳み検知センサs1から検知情報を取得し、支持フレーム304が折り畳み状態であるか否かを判定し、折り畳み状態と判定されたとき、植付条切替機構9の制御を停止するよう構成されてもよい。これにより、支持フレーム304の折り畳み状態においては、植付条切替機構の制御を停止する(駆動しない)ことで、折り畳み状態で苗植付装置303が駆動することによる故障を未然に防ぐことができる。また、制御装置Cは、座席センサにより作業者の着座を判定し、着座していないと判定されたときは、植付条切替機構の制御を停止するよう構成されてもよい。これにより、苗移植機1の運搬中などにおける誤作動を良好に防止できる。
【符号の説明】
【0103】
1 苗移植機
2 走行車体
3 作業装置
4 昇降機構
5 予備苗載置台
6 線引マーカ
7 測位装置
8 施肥装置
9 植付条切替機構
41 リンクベースフレーム
42 平行リンク機構
43 昇降シリンダ
201 メインフレーム
202 エンジン
203 前輪
204 後輪
205 動力伝達装置
206 フロアステップ
207 リアステップ
208 操縦席
209 操縦部
210 エンジンカバー
211 ミッションケース
212 ファイナルケース
213 後輪ギヤケース
214 フロントカバー
215 ステアリング装置
216 ステアリングハンドル
216a 操舵アクチュエータ
217 主変速レバー
218 副変速レバー
219 植付スイッチ
220 苗植付部昇降レバー
221 スタータスイッチ
222 マーカ操作部
223 表示操作端末器
224 表示部
225 電光表示部
226 液晶表示部
228 入力操作部
228a ロータリスイッチ
228b 押ボタンスイッチ
229 音声出力部
301 苗植付部
302 苗載置台
303 苗植付装置
303a 植込杆
303b ロータリケース
303c 植付伝動ケース
304 支持フレーム
304a フレーム回動支点
304b 雌螺子部
304k 回動側フレーム
304n 非回動側フレーム
305 支持部材
306 補強部材
307 苗植付装置駆動軸
308 植付クラッチ
308a 第1植付クラッチ
308b 第2植付クラッチ
308c 第3植付クラッチ
308d 第4植付クラッチ
308e 第5植付クラッチ
309 整地ローター駆動軸
310 苗載台支持レール
312 折畳み手動操作具
312a 把持部
312b ロッド部
312c 雄螺子部
313 支柱フレーム
314 中間支持フレーム
315 上部支持フレーム
316 苗送りベルト
317 ベルトクラッチ
317a 第1ベルトクラッチ
317b 第2ベルトクラッチ
317c 第3ベルトクラッチ
317d 第4ベルトクラッチ
401 整地ロータ部材
402 整地フロート部材
801 ブロワ
802 エアチャンバー
803 排出ダクト
804 施肥ホッパ
805 繰出装置
806 施肥伝動機構
807 施肥クラッチ
807a 第1施肥クラッチ
807b 第2施肥クラッチ
807c 第3施肥クラッチ
807d 第4施肥クラッチ
901L 植付条切替ユニット(左)
901R 植付条切替ユニット(右)
902 ピニオンギア
903 操作軸
904 カム部材
M 電動モータ
m1 電動モータ(左側)
m2 電動モータ(右側)
ARM 操作アーム
P 植付条表示ランプ
Q 植付条切替スイッチ
q1 第1操作スイッチ
q2 第2操作スイッチ
q3 第3操作スイッチ
q4 第4操作スイッチ
q5 第5操作スイッチ
s1 折り畳み検知センサ
図1
図2
図3
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図16