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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005529
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20240110BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240110BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 451
B41J2/14 611
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105739
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】山本 明広
(72)【発明者】
【氏名】佐合 良太
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EB07
2C056EB29
2C056EB38
2C056EC07
2C056EC36
2C056EC37
2C056EC77
2C057AF21
2C057AL40
2C057AM17
2C057AN01
2C057AR08
2C057AR09
2C057AR14
2C057AR16
(57)【要約】
【課題】伝送時間が異なる複数の信号を同時にインクジェットヘッドに到達させる調整を容易に行うことができるインクジェットプリンタ
【解決手段】インクジェットプリンタは、複数の信号Sg1、Sg2、Sg3をインクジェットヘッド26に送信する制御装置100と、複数の信号Sg1、Sg2、Sg3がそれぞれ伝送される伝送経路50、60、70と、各伝送経路50、60、70に接続され各信号Sg1、Sg2、Sg3が到達したタイミングを検出するタイミング検出装置80と、を備える。制御装置100は、送信した複数の信号Sg1、Sg2、Sg3がタイミング検出装置80に到達したタイミングに基づいて複数の信号Sg1、Sg2、Sg3の伝送時間の間の差分を算出し、複数の信号Sg1、Sg2、Sg3がインクジェットヘッド26に同時に到達するように、少なくとも一部の信号を遅延させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するインクジェットヘッドと、
複数の信号を前記インクジェットヘッドに送信する制御装置と、
前記制御装置から前記インクジェットヘッドに送信される前記複数の信号がそれぞれ伝送される複数の伝送経路と、
前記各伝送経路に接続され、各信号が到達したタイミングを検出するタイミング検出装置と、を備え、
前記複数の伝送経路は、それぞれ信号を処理する時間が異なる信号処理部を有し、
前記タイミング検出装置は、前記各伝送経路のうち前記各信号処理部よりも下流に接続され、
前記制御装置は、
前記複数の信号を送信する信号送信部と、
前記信号送信部によって送信された各信号が前記タイミング検出装置に到達したタイミングを前記タイミング検出装置から取得するタイミング取得部と、
前記タイミング取得部によって取得された前記各信号の到達タイミングに基づき、前記タイミング検出装置までの前記複数の信号の伝送時間の間の差分を算出する遅延算出部と、
前記遅延算出部によって算出された差分に基づき、前記複数の信号が前記インクジェットヘッドに同時に到達するように、少なくとも一部の信号を遅延させるタイミング調整部と、を備えている、
インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記タイミング調整部は、前記複数の信号が前記タイミング検出装置に同時に到達するように、少なくとも一部の信号の送信開始を遅延させる、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記タイミング調整部は、前記各伝送経路に設けられ、前記複数の信号が前記インクジェットヘッドに同時に到達するように、少なくとも一部の信号を遅延させる、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記タイミング検出装置は、前記各伝送経路の終端部に接続されている、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記制御装置は、前記インクジェットヘッドを制御する制御信号と、画像データに基づくインクの吐出データと、前記インクジェットヘッドの駆動波形信号と、を含む複数の信号を前記インクジェットヘッドに送信するように構成され、
前記複数の伝送経路は、
信号をそのまま伝送する第1の信号処理部を有し、前記制御信号を伝送する第1の伝送経路と、
エンコーダとデコーダとを含む第2の信号処理部を有し、前記吐出データを伝送する第2の伝送経路と、
デジタルアナログコンバータと増幅器とを含む第3の信号処理部を有し、前記駆動波形信号を伝送する第3の伝送経路と、を含む、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記制御装置は、前記インクジェットヘッドを制御する制御信号と、画像データに基づくインクの吐出データと、前記インクジェットヘッドの駆動波形信号と、を含む複数の信号を前記インクジェットヘッドに送信するように構成され、
前記複数の伝送経路は、
信号をそのまま伝送する第1の信号処理部を有し、前記制御信号を伝送する第1の伝送経路と、
信号をそのまま伝送する第2の信号処理部を有し、前記吐出データを伝送する第2の伝送経路と、
デジタルアナログコンバータと増幅器とを含む第3の信号処理部を有し、前記駆動波形信号を伝送する第3の伝送経路と、を含む、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記制御装置は、前記インクジェットヘッドを制御する制御信号と、画像データに基づくインクの吐出データと、前記インクジェットヘッドの駆動波形信号と、を含む複数の信号を前記インクジェットヘッドに送信するように構成され、
前記複数の伝送経路は、
エンコーダとデコーダとを含む第1の信号処理部を有し、前記制御信号を伝送する第1の伝送経路と、
エンコーダとデコーダとを含む第2の信号処理部を有し、前記吐出データを伝送する第2の伝送経路と、
デジタルアナログコンバータと増幅器とを含む第3の信号処理部を有し、前記駆動波形信号を伝送する第3の伝送経路と、を含む、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式によって記録媒体に画像を印刷するインクジェットプリンタが従来から知られている。例えば特許文献1には、インクジェットヘッドの圧電素子を駆動させる駆動信号と、各圧電素子を駆動してインクを吐出させるか否かを指令する印刷データとを駆動信号供給回路を介してインクジェットヘッドに供給するインクジェットプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-189899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、少なくとも駆動信号と印刷データとが駆動信号供給回路に送信されている。このように、インクジェットプリンタでは、インクジェットヘッドを制御するための複数の種類の信号がインクジェットヘッドに送信される。
【0005】
インクジェットヘッドに送信される複数の信号は、異なる伝送経路を伝送されてインクジェットヘッドに送信されることがあり、複数の伝送経路は信号の伝送時間が異なる場合がある。複数の信号の間で伝送時間が異なる場合、複数の信号を単純に同時送信すると、複数の信号の間でインクジェットヘッドへの到達タイミングがずれる。複数の信号の到達タイミングがずれると、各信号による制御のタイミングがずれ、印刷品質が悪化する。そのため、伝送経路が異なる複数の信号間で伝送時間の差を求め、複数の信号がインクジェットヘッドに同時に到達するように、一部の信号を遅延させることが従来から行われている。
【0006】
従来の方法では、例えばインクジェットプリンタの開発者等が複数の信号間の伝送時間の差を測定し、信号の遅延時間を決定していた。かかる方法では、例えば伝送経路の構成の変更が行われるたびに、複数の信号間の伝送時間の差を測定し、信号を遅延させる時間を決定する必要がある。そのため、このような複数の信号間のタイミング調整は煩雑な作業であった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、伝送時間が異なる複数の信号を同時にインクジェットヘッドに到達させる調整を容易に行うことができるインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示するインクジェットプリンタは、インクを吐出するインクジェットヘッドと、複数の信号を前記インクジェットヘッドに送信する制御装置と、前記制御装置から前記インクジェットヘッドに送信される前記複数の信号がそれぞれ伝送される伝送経路と、前記各伝送経路に接続され各信号が到達したタイミングを検出するタイミング検出装置と、を備える。前記複数の伝送経路は、それぞれ信号を処理する時間が異なる信号処理部を有している。前記タイミング検出装置は、前記各伝送経路のうち前記各信号処理部よりも下流に接続されている。前記制御装置は、信号送信部と、タイミング取得部と、遅延算出部と、タイミング調整部と、を備えている。前記信号送信部は、前記複数の信号を送信する。前記タイミング取得部は、前記信号送信部によって送信された各信号が前記タイミング検出装置に到達したタイミングを前記タイミング検出装置から取得する。前記遅延算出部は、前記タイミング取得部によって取得された前記各信号の到達タイミングに基づき、前記タイミング検出装置までの前記複数の信号の伝送時間の間の差分を算出する。前記タイミング調整部は、前記遅延算出部によって算出された差分に基づき、前記複数の信号が前記インクジェットヘッドに同時に到達するように、少なくとも一部の信号を遅延させる。
【0009】
上記インクジェットプリンタは、複数の信号が到達したタイミングをそれぞれ検出するタイミング検出装置と、複数の信号の伝送時間の差分を算出し、複数の信号がインクジェットヘッドに同時に到達するように少なくとも一部の信号を遅延させる制御装置と、を備えている。よって、上記インクジェットプリンタによれば、伝送時間が異なる複数の信号を同時にインクジェットヘッドに到達させる調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るプリンタの正面図である。
図2】第1実施形態に係るプリンタのブロック図である。
図3】信号のタイミング調整手順の一例を示すフローチャートである。
図4】タイミング調整前の複数の信号の位相を示す模式図である。
図5】タイミング調整後の複数の信号の位相を示す模式図である。
図6】信号の伝送経路の他の例を示すブロック図である。
図7】信号の伝送経路のさらに他の例を示すブロック図である。
図8】第2実施形態に係るプリンタのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下単に「プリンタ」と称する)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係るプリンタ10の正面図である。以下の説明では、左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいる作業者から見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、作業者がプリンタ10の正面を向いているときにプリンタ10の後部から作業者に向かう方向を前方、作業者からプリンタ10の後部に向かう方向を後方とする。図面中の符号L、R、U、Dは、それぞれ左、右、上、下を表す。
【0013】
プリンタ10は、記録媒体5に印刷を行うものである。記録媒体5は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体5は、記録紙に限定されない。記録媒体5には、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類以外に、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリエステル等の樹脂材料から形成されたものや、アルミや鉄等から形成された金属板、ガラス板、木材板および段ボール等から形成されたものが含まれる。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、プラテン15と、キャリッジ20と、キャリッジ20に搭載されたプリントヘッド25と、キャリッジ移動装置30と、記録媒体5の搬送装置40と、制御装置100と、を備えている。
【0015】
プラテン15は、記録媒体5を支持する支持台である。キャリッジ20は、プラテン15の上方に設けられている。プリントヘッド25は、キャリッジ20に設けられている。プリントヘッド25は、それぞれインクを吐出する複数のインクジェットヘッド26を備えている。各インクジェットヘッド26は、インクが吐出される図示しないノズルを備え、下方に向かってインクを吐出する。プリントヘッド25が備えるインクジェットヘッド26の数は、特に限定されない。また、インクジェットヘッド26から吐出されるインクも限定されない。インクジェットヘッド26から吐出されるインクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インク、水性インク、紫外線硬化型インク等であってもよい。
【0016】
各インクジェットヘッド26は、ここでは、制御装置100から送信される駆動波形信号Sg3(図2参照)を受けて圧電素子が振動することによりインクを吐出する。図示しない圧電素子は、例えば、圧電材料と導電層とを交互に積層した積層体である。圧電素子は、制御装置100からの駆動波形信号Sg3を受けると膨張または収縮する。圧電素子が膨張または収縮することにより、ノズルに連通しインクが貯留された圧力室の体積が減少または増加する。これにより、ノズルからインクが吐出される。駆動波形信号Sg3は、圧電素子を膨張させる電位と収縮させる電位とが交互に現れる駆動波形信号である。各インクジェットヘッド26の各ノズルからインクが吐出されるタイミングは、制御装置100によって画像データから生成されたインクの吐出データSg2(図2参照)に基づいている。インクジェットヘッド26は、吐出データSg2も受信している。
【0017】
キャリッジ移動装置30は、キャリッジ20を左右方向に移動させる。図1に示すように、キャリッジ移動装置30は、ガイドレール31と、左右のプーリ32と、無端状のベルト33と、スキャンモータ34と、を有している。ガイドレール31は、プラテン15の上方に配置されている。ガイドレール31は、左右方向に延びている。キャリッジ20は、ガイドレール31に沿って左右方向に移動可能に構成されている。キャリッジ20には、ベルト33が固定されている。ベルト33は、左右のプーリ32に巻き掛けられている。スキャンモータ34は、一方のプーリ32に接続されている。スキャンモータ34が駆動して、一方のプーリ32が回転することで、ベルト33が走行する。これにより、キャリッジ20が左右方向に移動する。プリントヘッド25は、キャリッジ20とともに左右方向に移動する。
【0018】
搬送装置40は、記録媒体5を前後方向に移動させる。図1に示すように、搬送装置40は、グリットローラ41と、ピンチローラ42と、フィードモータ43と、を有している。グリットローラ41は、プラテン15に埋設されている。各グリットローラ41の一部は、プラテン15に露出している。フィードモータ43は、グリットローラ41を前後方向に回転させる。ピンチローラ42は、記録媒体5を上から押さえつけるものである。ピンチローラ42は、グリットローラ41の上方に配置されている。ピンチローラ42は、グリットローラ41と対向する位置に設けられている。ピンチローラ42は、上下方向に移動可能に構成されている。グリットローラ41とピンチローラ42との間に記録媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ43が駆動してグリットローラ41が回転すると、記録媒体5は前後方向に搬送される。
【0019】
図2は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。図2に示すように、プリンタ10の制御装置100は、複数のインクジェットヘッド26(図2には1つのみ図示)と、スキャンモータ34と、フィードモータ43と、にそれぞれ電気的に接続され、それらの動作を制御している。制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えている。なお、制御装置100は必ずしもプリンタ10の内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ10の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されたコンピュータ等であってもよい。
【0020】
制御装置100は、複数の信号をインクジェットヘッド26に送信し、インクジェットヘッド26の動作を制御する。本実施形態では、制御装置100は、インクジェットヘッド26を制御する制御信号Sg1と、画像データに基づくインクの吐出データSg2と、インクジェットヘッド26の駆動波形信号Sg3と、をインクジェットヘッド26に送信する。ただし、制御装置100は、さらに他の信号をインクジェットヘッド26に送信するように構成されていてもよい。または、制御装置100は、制御信号Sg1、吐出データSg2、および駆動波形信号Sg3のうちの一部をインクジェットヘッド26に送信しないように構成されていてもよい。例えば、インクジェットヘッド26の駆動波形は、インクジェットヘッド26の内部で生成されてもよく、その場合、駆動波形信号Sg3は、制御装置100からインクジェットヘッド26に送信されなくてもよい。
【0021】
図2に示すように、プリンタ10は、制御装置100からインクジェットヘッド26に送信される複数の信号Sg1、Sg2、およびSg3がそれぞれ伝送される複数の伝送経路50、60、および70を備えている。第1伝送経路50は、制御信号Sg1を伝送する。制御信号Sg1には、例えば、吐出データSg2の始点または終点を指定する信号や、駆動波形信号Sg3を分割しタグ付けする信号などが含まれる。第2伝送経路60は、吐出データSg2を伝送する。第3伝送経路70は、駆動波形信号Sg3を伝送する。第1伝送経路50、第2伝送経路60、および第3伝送経路70は、互いに経路の構成が異なり、信号の伝送時間が異なっている。
【0022】
第1伝送経路50、第2伝送経路60、および第3伝送経路70は、それぞれ信号を処理する時間が異なる信号処理部を有している。信号処理部は、例えば後述する増幅器などの各種デバイスによって構成されている。この信号処理部における信号処理の違いにより、複数の伝送経路50~70の間に伝送時間の差が発生する。以下、第1伝送経路50の信号処理部を第1信号処理部50Aと、第2伝送経路60の信号処理部を第2信号処理部60Aと、第3伝送経路70の信号処理部を第3信号処理部70Aとも称する。
【0023】
本実施形態では、第1伝送経路50は、制御装置100とインクジェットヘッド26とを直接に接続しており、上記したように制御信号Sg1を伝送する。第1伝送経路50の第1信号処理部50Aは、信号をそのまま伝送するように構成されている。このように、信号処理部は、信号をそのまま伝送する処理を行うものも含むものである。第2伝送経路60は、エンコーダ61とデコーダ62とを含む第2信号処理部60Aを有し、上記したように吐出データSg2を伝送する。エンコーダ61は、吐出データSg2を高速シリアルデータに変換している。デコーダ62は、エンコーダ61から受けた高速シリアルデータを変換前の吐出データSg2に再変換している。エンコーダ61とデコーダ62との間は、シリアルケーブル63によって接続されている。ここでは、エンコーダ61は、キャリッジ20ともに移動しないプリンタ10の本体部分に設けられ、デコーダ62はキャリッジ20に設けられている。
【0024】
第3伝送経路70は、デジタルアナログコンバータ(DAC)71と増幅器72とを含む第3信号処理部70Aを有し、駆動波形信号Sg3を伝送する。DAC71は、デジタルデータとして生成された駆動波形信号Sg3をアナログの駆動波形信号に変換する。増幅器72は、DAC71で生成された駆動波形信号Sg3を増幅させる。DAC71および増幅器72は、ここでは、キャリッジ20に設けられている。
【0025】
第3伝送経路70を経由して伝送される駆動波形信号Sg3の伝送時間は、第1伝送経路50を経由して伝送される制御信号Sg1の伝送時間よりも長い。また、第2伝送経路60を経由して伝送される吐出データSg2の伝送時間は、第3伝送経路70を経由して伝送される駆動波形信号Sg3の伝送時間よりもさらに長い。
【0026】
プリンタ10は、制御信号Sg1、吐出データSg2、および駆動波形信号Sg3の各信号が到達したタイミングを検出するタイミング検出回路80を備えている。タイミング検出回路80は、ここでは、第1伝送経路50~第3伝送経路70の各終端部(インクジェットヘッド26の直前)に接続されている。ただし、タイミング検出回路80は、各伝送経路50~70のうち各信号処理部50A~70Aよりも下流に接続されていればよく、タイミング検出回路80が接続される箇所は各伝送経路50~70の終端部には限定されない。ここでは、タイミング検出回路80はキャリッジ20に設けられている。タイミング検出回路80は、例えば、FPGA(field-programmable gate array)によって構成されていてもよい。ただし、タイミング検出回路80の構成は、特に限定されない。上記したように、吐出データSg2、駆動波形信号Sg3、制御信号Sg1の伝送時間は、この順に長い。そのため、複数の信号Sg1~Sg3は、同時に送信されると、制御信号Sg1、駆動波形信号Sg3、吐出データSg2の順でタイミング検出回路80に到達する。
【0027】
図2に示すように、制御装置100は、信号送信部101と、タイミング取得部102と、遅延算出部103と、タイミング調整部104と、を備えている。制御装置100は、スキャンモータ34を制御する制御部や、フィードモータ43を制御する制御部など、他の処理部を備えていてもよいが、ここでは図示および説明を省略する。信号送信部101は、複数の信号(ここでは、制御信号Sg1、吐出データSg2、および駆動波形信号Sg3)を送信する。信号送信部101による複数の信号Sg1~Sg3の送信は、伝送経路50~70の間の信号伝送時間の差を知るためのものであり、調整用である。本実施形態では、信号送信部101は、制御信号Sg1、吐出データSg2、および駆動波形信号Sg3を同時に送信開始する。
【0028】
なお、信号送信部101が送信する複数の信号は、伝送経路50~70の間の信号伝送時間の差を知るための専用の(通常の制御信号Sg1、吐出データSg2、および駆動波形信号Sg3とは異なる)信号であってもよい。また、タイミング検出回路80は、かかる専用の信号が送信されてきた場合には、それらの信号がインクジェットヘッド26に到達しないよう、信号を遮断するように構成されていてもよい。
【0029】
タイミング取得部102は、信号送信部101によって送信された各信号Sg1~Sg3がタイミング検出回路80に到達したタイミングをタイミング検出回路80から取得する。図2に示すように、タイミング検出回路80と制御装置100とは、通信経路85によって接続されている。遅延算出部103は、タイミング取得部102によって取得された各信号Sg1~Sg3の到達タイミングに基づき、タイミング検出回路80までの複数の信号Sg1~Sg3の伝送時間の間の差分を算出する。タイミング調整部104は、遅延算出部103によって算出された差分に基づき、複数の信号Sg1~Sg3がインクジェットヘッド26に同時に到達するように、少なくとも一部の信号を遅延させる。ここでは、タイミング調整部104は、複数の信号Sg1~Sg3がタイミング検出回路80に同時に到達するように、少なくとも一部の信号の送信開始を遅延させる。これにより、制御信号Sg1、吐出データSg2、および駆動波形信号Sg3がインクジェットヘッド26に同時に到達する。なお、ここでの「同時」とは、実質的に印刷品質に影響を与えない程度の同時性のことを意味する。
【0030】
伝送時間が最も長い吐出データSg2の場合、送信開始を遅延させる時間(以下、送信遅延時間とも呼ぶ)は、好ましくは「0」である。伝送時間が最も長い信号に対しては、送信遅延時間は、「0」に設定されてもよい。言い換えると、伝送時間が最も長い1つまたは複数の信号は、遅延されなくてもよい。ただし、伝送時間が最も長い信号が遅延されてはいけないわけではない(つまり、全ての信号が遅延されてもよい)。本実施形態では、制御信号Sg1に対しては、タイミング検出回路80に制御信号Sg1が到達したタイミングと吐出データSg2が到達したタイミングとの間の差分に等しい送信遅延時間が設定される。同様に、駆動波形信号Sg3に対しては、タイミング検出回路80に駆動波形信号Sg3が到達したタイミングと吐出データSg2が到達したタイミングとの間の差分に等しい送信遅延時間が設定される。
【0031】
[信号のタイミング調整手順]
以下では、複数の信号Sg1~Sg3のタイミング調整手順について説明する。「タイミング調整」とは、ここでは、インクジェットヘッド26への各信号Sg1~Sg3の到達タイミングが同時になるようにすることを言う。図3は、信号Sg1~Sg3のタイミング調整手順の一例を示すフローチャートである。図3に示すように、信号Sg1~Sg3のタイミング調整では、ステップS01において、制御信号Sg1、吐出データSg2、および駆動波形信号Sg3を制御装置100から同時にインクジェットヘッド26に送信する。
【0032】
図4は、タイミング調整前の複数の信号Sg1~Sg3の位相を示す模式図である。図4の横軸は時間である。図4の左側部分は、ステップS01において制御装置100から送信されたときの信号Sg1~Sg3の位相を示している。ステップS01では、複数の信号Sg1、Sg2、およびSg3を同時に送信開始する。そのため、図4の左側部分に示すように、複数の信号Sg1、Sg2、およびSg3の各始点Ps1、Ps2、およびPs3は揃っている。
【0033】
図4の右側部分は、ステップS01において制御装置100から送信された信号Sg1~Sg3がタイミング検出回路80に到達したときの位相を示している。図4の右側部分に示すように、タイミング検出回路80に到達したとき、信号Sg1、Sg2、およびSg3の始点Pr1、Pr2、およびPr3(送信開始時の信号Sg1、Sg2、およびSg3の始点Ps1、Ps2、およびPs3と区別するため、異なる符号を使用する)はずれている。これは、第1伝送経路50、第2伝送経路60、および第3伝送経路70の信号伝送時間が異なっているためである。詳しくは、吐出データSg2の始点Pr2は、制御信号Sg1の始点Pr1よりも時間T2だけ遅れている。駆動波形信号Sg3の始点Pr3は、制御信号Sg1の始点Pr1よりも時間T3だけ遅れている。時間T2は、時間T3よりも長い。
【0034】
ステップS02では、タイミング検出回路80により、複数の信号Sg1~Sg3の到達タイミングが検出される。ここでは、制御信号Sg1の始点Pr1、吐出データSg2の始点Pr2、および、駆動波形信号Sg3の始点Pr3が検出される。ステップS03では、タイミング検出回路80によって検出された各信号Sg1~Sg3の到達時刻の間の差分が算出される。ここでは、差分の基準は、最も早くタイミング検出回路80に到達する制御信号Sg1の到達時刻である。制御信号Sg1の到達時刻を基準とする吐出データSg2の到達時刻の差分は、図4に示すように、時間T2である。制御信号Sg1の到達時刻を基準とする駆動波形信号Sg3の到達時刻の差分は、図4に示すように、時間T3である。ただし、差分の基準は特に限定されず、例えば、最も遅くタイミング検出回路80に到達する信号の到達時刻であってもよい。
【0035】
ステップS03では、1つの信号のタイミング検出回路80への伝送時間を基準とする相対的な伝送時間(すなわち、伝送時間の差分)が求められれば足り、複数の信号Sg1~Sg3が送信されてからタイミング検出回路80に到達するまでに要した実時間が分かる必要はない。ただし、ステップS03では、複数の信号Sg1~Sg3が送信されてからタイミング検出回路80に到達するまでに要した時間がそれぞれ測定され、それらの時間に基づいて各伝送経路50~70の間の伝送時間の差分が求められてもよい。その場合、複数の信号Sg1~Sg3が送信されてからタイミング検出回路80に到達するまでに要した時間は、個別に測定されてもよい。複数の信号Sg1~Sg3の送信開始は、同時には限定されない。
【0036】
ステップS04では、複数の信号Sg1~Sg3のタイミング検出回路80への到達タイミングが同じになるように、各信号のSg1~Sg3の送信遅延時間が設定される。ここでは、最も伝送時間が長い吐出データSg2の送信遅延時間は「0」である。制御信号Sg1の送信遅延時間は、制御信号Sg1の到達時刻と吐出データSg2の到達時刻との差分T2に等しく設定される。駆動波形信号Sg3の送信遅延時間は、駆動波形信号Sg3の到達時刻と吐出データSg2の到達時刻との差分(T2-T3)に等しく設定される。
【0037】
複数の信号Sg1~Sg3のタイミング調整は、ステップS04において各信号Sg1~Sg3の送信遅延時間が設定されることにより終了する。複数の信号Sg1~Sg3のタイミング調整は、例えば、プリンタ10の製造時にのみ行われてもよい。さらに頻度を下げたい場合には、複数の信号Sg1~Sg3のタイミング調整は、例えば、プリンタ10の伝送経路50~70に設計変更が加えられた後にのみ行われてもよい。ただし、複数の信号Sg1~Sg3のタイミング調整を行う場合は、特に限定されない。例えば、複数の信号Sg1~Sg3のタイミング調整は、定期的に行われてもよい。
【0038】
図5は、タイミング調整後の複数の信号Sg1~Sg3の位相を示す模式図である。図5の左側部分は、制御装置100から送信されたときの信号Sg1~Sg3の位相を示している。図5の右側部分は、タイミング検出回路80に到達したときの信号Sg1~Sg3の位相を示している。図5の左側部分に示すように、送信開始時、信号Sg1、Sg2、およびSg3の始点Ps1、Ps2、およびPs3はずれている。詳しくは、制御信号Sg1の始点Ps1は、吐出データSg2の始点Ps2よりも送信遅延時間T2だけ遅れている。駆動波形信号Sg3の始点Ps3は、吐出データSg2の始点Ps2よりも送信遅延時間(T2-T3)だけ遅れている。
【0039】
送信遅延時間の設定により、タイミング検出回路80に到達したときの複数の信号Sg1、Sg2、およびSg3の始点Pr1、Pr2、およびPr3が揃う。すなわち、複数の信号Sg1、Sg2、およびSg3は同時にタイミング検出回路80に到達する。タイミング検出回路80は、各信号処理部50A~70Aよりも下流、ここでは各伝送経路50~70の終端部(インクジェットヘッド26の直前)に接続されている。そのため、各伝送経路50~70による伝送時間の差は、これ以上発生しない。よって、複数の信号Sg1、Sg2、およびSg3は、同時にインクジェットヘッド26に到達する。
【0040】
[実施形態の作用効果]
以下に、本実施形態に係るプリンタ10が奏することができる作用効果について説明する。本実施形態に係るプリンタ10は、インクを吐出するインクジェットヘッド26と、複数の信号Sg1~Sg3をインクジェットヘッド26に送信する制御装置100と、制御装置100からインクジェットヘッド26に送信される複数の信号Sg1~Sg3がそれぞれ伝送される複数の伝送経路50~70と、各伝送経路50~70に接続され各信号Sg1~Sg3が到達したタイミングを検出するタイミング検出回路80と、を備えている。複数の伝送経路50~70は、それぞれ信号を処理する時間が異なる信号処理部50A~70Aを有している。タイミング検出回路80は、各伝送経路50~70のうち各信号処理部50A~70Aよりも下流に接続されている。制御装置100は、信号送信部101と、タイミング取得部102と、遅延算出部103と、タイミング調整部104と、を備えている。信号送信部101は、複数の信号Sg1~Sg3を送信する。タイミング取得部102は、信号送信部101によって送信された各信号Sg1~Sg3がタイミング検出回路80に到達したタイミングをタイミング検出回路80から取得する。遅延算出部103は、タイミング取得部102によって取得された各信号Sg1~Sg3の到達タイミングに基づき、タイミング検出回路80までの複数の信号Sg1~Sg3の伝送時間の間の差分を算出する。タイミング調整部104は、遅延算出部103によって算出された差分に基づき、複数の信号Sg1~Sg3がインクジェットヘッド26に同時に到達するように、少なくとも一部の信号(ここでは、制御信号Sg1および駆動波形信号Sg3)を遅延させる。
【0041】
かかるプリンタ10によれば、複数の信号Sg1~Sg3のインクジェットヘッド26への到達タイミングに差が生じることを防ぎ、印刷品質を確保することが容易にできる。特に、複数の信号処理部50A~70Aの1つまたは複数に変更が加えられた場合に、上記タイミング調整を容易に行うことができる。また、個々のプリンタ10のバラツキや経年変化等によって複数の信号Sg1~Sg3間でインクジェットヘッド26への到達時間に差が生じた場合にも、複数の信号Sg1~Sg3間のタイミング調整を容易に行うことができる。
【0042】
インクジェットヘッドを制御する複数の信号の間で到達時刻の差が生じると、各信号による制御のタイミングがずれ、印刷品質が悪化する。そのため、伝送経路が異なる複数の信号間で伝送時間の差を求め、複数の信号がインクジェットヘッドに同時に到達するように、一部の信号を遅延させることは従来から行われていた。しかしながら、従来の方法では、例えば、伝送経路の構成が異なる機種が開発されるたび、または、伝送経路の構成の変更が行われるたびに、例えば開発者等が、複数の信号間の伝送時間の差を測定することが必要であった。また、個々のプリンタのバラツキや経年変化等によって複数の信号の伝送時間に差が生じたり、差分が変化したりした場合には、複数の信号間の伝送時間の差を測定することがやはり必要であった。
【0043】
それに対し、本実施形態に係るプリンタ10は、タイミング検出回路80と、複数の信号がインクジェットヘッド26に同時に到達するように、少なくとも一部の信号を遅延させる制御装置100と、を備えている。そのため、伝送経路の構成が異なる機種の追加、伝送経路の構成の変更、個々のプリンタ10のバラツキ、プリンタ10の経年変化などで複数の信号間で伝送時間に差が生じても、容易にその差を解消することができる。
【0044】
本実施形態では、タイミング調整部104は、各信号Sg1~Sg3がタイミング検出回路80に同時に到達するように、少なくとも一部の信号の送信開始を遅延させる。ここでは、タイミング調整部104は、制御信号Sg1および駆動波形信号Sg3の送信開始を遅延させる。かかる構成によれば、制御装置100への送信遅延時間の入力によって、各信号Sg1~Sg3間のタイミング調整が容易にできる。なお、例えば第2実施形態の説明において後述するが、信号を遅延させる方法は、信号の送信開始を遅延させる方法には限定されない。
【0045】
本実施形態では、タイミング検出回路80は、各伝送経路50~70の終端部に接続されている。かかる構成によれば、タイミング検出回路80がインクジェットヘッド26の直前に設けられているため、複数の信号Sg1~Sg3のインクジェットヘッド26への到達タイミングの差を正確に計測することができる。
【0046】
[伝送経路の他の例]
上記した信号の伝送経路50~70は例示に過ぎず、信号の伝送経路は、それぞれ別の構成を備えていてもよい。図6は、信号の伝送経路の他の例を示すブロック図(上記した実施形態と共通の機能を奏する部材には同じ符号を使用、図7図8も同様)である。図6に示すように、第1の好適な別例では、複数の伝送経路は、信号をそのまま伝送する第1信号処理部50Aを有し制御信号Sg1を伝送する第1伝送経路50と、信号をそのまま伝送する第2信号処理部60Aを有し吐出データSg2を伝送する第2伝送経路60と、DAC71と増幅器72とを含む第3信号処理部70Aを有し駆動波形信号Sg3を伝送する第3伝送経路70と、を含んでいてもよい。吐出データSg2を高速シリアルデータとして送信しない場合には、第2伝送経路60は、吐出データSg2を変換なしに伝送する伝送経路であってもよい。図6に示すように、プリンタ10は、信号の伝送時間が異なる複数の伝送経路(例えば、第1伝送経路50と第3伝送経路70)を備えているが、それとともに、信号の伝送時間が同じ複数の伝送経路(例えば、第1伝送経路50と第2伝送経路60)を備えていてもよい。
【0047】
図7は、信号の伝送経路のさらに他の例を示すブロックである。図7に示すように、第2の好適な別例では、複数の伝送経路は、エンコーダ51とデコーダ52とを含む第1信号処理部50Aを有し制御信号Sg1を伝送する第1伝送経路50と、エンコーダ61とデコーダ62とを含む第2信号処理部60Aを有し吐出データSg2を伝送する第2伝送経路60と、DAC71と増幅器72とを含む第3信号処理部70Aを有し駆動波形信号Sg3を伝送する第3伝送経路70と、を含んでいてもよい。制御信号Sg1を高速シリアルデータとして送信する場合には、第1伝送経路50は、エンコーダ51とデコーダ52とを経由する伝送経路であってもよい。
【0048】
プリンタ10によれば、例えば、図2に示す伝送経路、図6に示す伝送経路、および図7に示す伝送経路のうちの1から他への変更が行われたとしても、そのような変更に容易に対応することができる。
【0049】
[第2実施形態]
第2実施形態では、タイミング調整部104は、各伝送経路50~70に設けられ、各信号Sg1~Sg3がインクジェットヘッド26に同時に到達するように、少なくとも一部の信号を遅延させる。本実施形態では、タイミング調整部104は、各伝送経路50~70の終端部に設けられ、タイミング検出回路80に到達した信号のうちの一部の信号を遅延させる。本実施形態では、制御装置100の一部は、キャリッジ20に搭載されている。キャリッジ20に搭載された制御装置100の一部は、例えば、本体側の制御装置100とは別のプリント基板により構成され、本体側の制御装置100と通信している。キャリッジ20側の制御装置100は、例えばFPGAによって、タイミング検出回路80と一体に構成されていてもよい。
【0050】
図8は、第2実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。図8に示すように、本実施形態では、制御装置100のタイミング取得部102、遅延算出部103、およびタイミング調整部104は、キャリッジ20に搭載されている。信号送信部101は、プリンタ10の本体側に設けられている。タイミング取得部102は、タイミング検出回路80に接続され、信号送信部101によって送信された各信号Sg1~Sg3がタイミング検出回路80に到達したタイミングをタイミング検出回路80から取得する。遅延算出部103は、タイミング取得部102が取得したデータを受け、複数の信号Sg1~Sg3の伝送時間の間の差分を算出する。タイミング調整部104は、複数の伝送経路50~70およびタイミング検出回路80よりも下流(タイミング検出回路80とインクジェットヘッド26との間)に設けられ、遅延算出部103に接続されている。タイミング調整部104は、遅延算出部103によって算出された差分に基づき、複数の信号Sg1~Sg3がインクジェットヘッド26に同時に到達するように、少なくとも一部の信号を遅延させる。例えば図8に示すように、伝送経路50~70の構成が第1実施形態と同じ場合、タイミング調整部104は、タイミング検出回路80に到達した後の制御信号Sg1および駆動波形信号Sg3を遅延させる。
【0051】
かかる構成によっても、複数の信号Sg1~Sg3のインクジェットヘッド26への到達タイミングに差が生じることを防ぎ、印刷品質を確保することができる。なお、タイミング調整部104は、各伝送経路50~70の途中(例えば、タイミング検出回路80よりも上流)に設けられ、複数の信号Sg1~Sg3がインクジェットヘッド26に同時に到達するように、各伝送経路50~70の途中において少なくとも一部の信号を遅延させてもよい。
【0052】
[他の実施形態]
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。例えば、上記した実施形態における信号の搬送経路、例えばシリアル通信用の搬送経路の構成は例示に過ぎず、他の構成であってもよい。アナログ変換を含む搬送経路等についても同様である。
【0053】
プリンタの構成は特に限定されない。例えば、プリンタは、プラテン上を記録媒体が搬送されるいわゆるロール・トゥー・ロールタイプのプリンタであってもよく、記録媒体が載置されたベッドが動くいわゆるフラットベッドタイプのプリンタであってもよい。
【0054】
その他、特に限定されない限りにおいて、実施形態は本発明を限定しない。また、ここに開示する技術は、互いに阻害する関係でない限り、自在に組み合わせ得る。
【符号の説明】
【0055】
10 プリンタ
26 インクジェットヘッド
50 第1伝送経路
50A 第1信号処理部
51 エンコーダ
52 デコーダ
60 第2伝送経路
60A 第2信号処理部
61 エンコーダ
62 デコーダ
70 第3伝送経路
70A 第3信号処理部
71 デジタルアナログコンバータ(DAC)
72 増幅器
80 タイミング検出回路(タイミング検出装置)
100 制御装置
101 信号送信部
102 タイミング取得部
103 遅延算出部
104 タイミング調整部
Sg1 制御信号
Sg2 吐出データ
Sg3 駆動波形信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8