(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055293
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
F03B 3/18 20060101AFI20240411BHJP
F03B 11/00 20060101ALI20240411BHJP
B25B 27/06 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
F03B3/18 Z
F03B11/00 A
B25B27/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162104
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 三剛
【テーマコード(参考)】
3C031
3H072
【Fターム(参考)】
3C031DD12
3H072AA07
3H072AA26
3H072BB01
3H072CC23
3H072CC99
(57)【要約】
【課題】ガイドベーンボックスの引抜きまたは取外しの作業効率を高くする。
【解決手段】ガイドベーンボックスの外周部を包囲する保持部と、前記保持部の径を変える調整部と、を備える、保持装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドベーンボックスの外周部を包囲する保持部と、
前記保持部の径を変える調整部と、
を備える、保持装置。
【請求項2】
前記保持部に設置された支持部と、
前記支持部に対して取外し可能に装着される一端部を持ち、前記保持部を前記ガイドベーンボックスへ取付けた状態において前記ガイドベーンボックスと平行に延びる、棒状の接続部と、
をさらに備える、請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記一端部には雄ネジが切られ、
前記支持部には雌ネジが切られた周面が形成される、請求項2に記載の保持装置。
【請求項4】
前記接続部の他端部に接続された治具と、
前記ガイドベーンボックスが支持するガイドベーンの端部に設置され、前記治具を前記端部から離れるように加力する加力部と、
をさらに備える、請求項2または3に記載の保持装置。
【請求項5】
前記加力部は、油圧ジャッキ及びジャーナルジャッキのいずれかである、請求項4に記載の保持装置。
【請求項6】
前記保持部は前記外周部と同じ曲率を持つ環状に形成される、請求項1から5のいずれか1項に記載の保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電用の水車として、流水の量を制御するガイドベーンを備えた水車が知られている(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-138251号公報
【特許文献2】特開2013-194600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような水車では、例えば保守点検や部品交換等の際、ガイドベーンやその周辺部材の分解が必要となる場合がある。周辺部材のうち、ガイドベーンボックスは単体での引抜きまたは取外しができない構造となっている場合がある。その際は、ガイドベーンボックスの周辺部材を分解する必要があり、多くの労力が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した課題を解決する主たる本発明は、ガイドベーンボックスの外周部を包囲して保持する保持部と、前記保持部の径を変える調整部と、を備える、保持装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ガイドベーンボックスの引抜きまたは取外しの作業効率を高める保持装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】水車のガイドベーンボックス周辺部分の拡大図である。
【
図3】実施形態による保持装置を装着したガイドベーンボックスの(a)横断面図と、(b)縦断面図である。
【
図4】(a)図(b)図ともに、変形例による保持部の平面図である。
【
図5】変形例による保持部を装着したガイドベーンボックスの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態>
図1~
図3を参照しつつ、本発明の1つの実施形態である、水車1及び保持装置100について以下のとおり説明する。
図1は、水車1の構成の一例を示す図である。本実施形態の水車1はフランシス水車であるが、他種の水車であってもよい。
【0009】
なお、以下では、
図1に示すように重力方向にしたがって上下方向を定め、説明に用いている。
【0010】
(概要)
水車1は、
図1及び
図2に示すように、上カバー10と、ケーシング20と、上カバーに固定されたガイドベーンボックス30と、ガイドベーン40と、アーム50と、リンク60と、ガイドリング70とを主に備える。
【0011】
上カバー10は、水車1の上部筐体を構成する部材である。上カバー10には、上下方向に延びる孔10Aが、水車1の中心軸1Aを中心にして周方向に複数箇所形成される。孔10Aには、ガイドベーンボックス30及びガイドベーン40が挿入される。
【0012】
ケーシング20は、上カバー10の下部に設置された筐体であり、ケーシング20の下部に設置されたランナー羽根(不図示)へ水を流すための水路20Aが形成される。
【0013】
ガイドベーンボックス30は、本体部31と、本体部31に支持されるブッシュ32を有する。本体部31は、上下方向に延びる軸を持つ円筒形状の部材であり、その外周部は上カバー10に接触し、支持される。ガイドベーンボックス30は、孔10Aに挿入されており、不図示のボルトなどによって上カバー10に固定される。
【0014】
本体部31は、ブッシュ32を支持する上部31Aと、上部31Aの下方に形性される下部31Bとを備える。上部31Aは、下部31Bよりも大きな径を有し、外方に突出するように形成される。上部31Aの上端部は、ブッシュ32と接触して支持する。
【0015】
ブッシュ32は、上下方向に延びる軸を持つ略円筒形状の部材であり、その外周部及び上部は上部31Aに支持される。ブッシュ32は、アーム50及びガイドベーン40と摺動可能に接触し、これらの部材を支持する。ブッシュ32の上部は、その下部よりも大きな径を有し、径方向外方に突出した形状を持つ。
【0016】
ガイドベーン40は、水路20Aを流れる水の方向及び水量を調整するための部材であり、本体部41と、軸部42と、押さえ板43と、キー44と、ボルト45とを備える。
【0017】
本体部41は、水路20Aに設置された、上下に延びる略平板状の部材である。本体部41は、軸部42を中心に回転することで自身の方向を変え、水路20Aを流れる水の方向及び流量を調節することができる。
【0018】
軸部42は、本体部41に固定された、上下に延びる略円柱形状の部材である。軸部42は、ガイドベーンボックス30の内部に挿入され、回転可能に支持される。詳細には、軸部42の外周面はブッシュ32の内面と摺動可能に接触する。また、軸部42は、ケーシング20によって回転可能に支持される下部42Cを有する。
【0019】
軸部42には、ガイドベーンボックス30から上方に突出した部分である上端部42Aが形成される。上端部42Aには、アーム50が固定される。上端部42Aとアーム50は、押さえ板43及びキー44によって接続される。
【0020】
詳細に述べると、押さえ板43は、上端部42Aとアーム50の上部を覆うように配置され、ボルト45によって上端部42Aに固定される。キー44は、上端部42Aの外周部とアーム50との間に挿入され、上端部42Aとアーム50との相対的な回転を防止する。
【0021】
アーム50は、略水平方向に延びる棒状の部材であり、上端部42Aに固定される一端部51と、リンク60に接続される他端部52とを備える。
【0022】
一端部51には、上下に延びる貫通孔が形成され、上端部42Aが挿入される。一端部51の下部は、ブッシュ32の上面と摺動可能に接触する。上述の通り、一端部51は、押さえ板43、キー44、及びボルト45によって、上端部42Aに固定される。
【0023】
リンク60は、略水平方向に延びる棒状の部材であり、他端部52とガイドリング70とを接続する。
【0024】
ガイドリング70は、平面視で環状に形成された部材であり、上カバー10に摺動可能に支持される。ガイドリング70は、中心軸1Aを中心に回転することでリンク60及びアーム50を介して動力を伝達し、ガイドベーン40を回転させることができる。
【0025】
ガイドリング70へは、不図示のベルクランク及びロッドを介して、ガイドベーン40を動かすための動力が伝達される。
【0026】
(保持装置)
保持装置100は、
図3に示すように、ガイドベーンボックス30を上カバー10から取外すために使用される装置である。保持装置100は、保持部110、2つの調整部120、支持部130、伝達部140、ブロック150、及びジャッキ160を主に備える。
【0027】
保持装置100は、
図3(b)のようにガイドベーンボックス30に装着されて、ガイドベーンボックス30の上カバー10からの取り外し作業に使用される。なお、以下では、保持装置100をガイドベーンボックス30に装着した状態で、各部材における上下、左右などの方向や相互の位置関係などを説明する。
【0028】
保持部110は、平面視で略環状に形成された部材であり、いずれも略半円形状の2つの部材111によって構成される。部材111の曲率は、ガイドベーンボックス30の外周部の曲率とほぼ同じである。
【0029】
部材111は、それぞれ径方向外方に突出した端部111A、111Bを備える。これらの端部111A、111Bには開口が形成される。2つの部材111は、端部111A同士が対向し、かつ、端部111B同士が対向するように配置される。
【0030】
調整部120は、ボルト121、及びナット122を備える。ボルト121は、端部111A及び端部111Bに1つずつ挿入される。ボルト121の端部は、ナット122にねじ込まれる。ボルト121とナット122との締結により、2つの部材111が接続される。
【0031】
また、ボルト121に対してナット122のねじ込みを緩め、または締め付けることにより、2つの部材111を互いに隔離または近接させ、保持部110の径を大きくしたり、小さくしたりすることが可能である。
【0032】
支持部130は、部材111の外周部に溶接されたナットである。支持部130には、上下方向に延びる開口が形成され、開口を形成する内周面には雌ネジが切られている。
【0033】
伝達部140は、鋼棒141と、鋼棒141に係合するナット142とを備える。鋼棒141は、全長に亘って、または少なくとも両端部の外周面に雄ネジが切られた鋼材である。鋼棒141は、上下方向に延びるように、すなわちガイドベーンボックス30と略平行に配置される。
【0034】
鋼棒141の下端部は、支持部130にねじ込まれて接続される。また、鋼棒141の上部はブロック150に挿入される。鋼棒141の上端部はブロック150の上方に突出しており、ナット142がねじ込まれて取り付けられる。
【0035】
ブロック150は、略水平に延びる略直方体形状の鋼材である。また、ブロック150の中央部下部は、ジャッキ160の下端部(詳細は後述)に載置される。ブロック150の両端部には鋼棒141が挿入され、ナット142によって接続される。
【0036】
ジャッキ160は、ブロック150と上端部42Aとの間に設置される。ジャッキ160は、上端部42Aから反力を取り、ブロック150を上方に加力することができる。ジャッキ160の具体例としては、油圧ジャッキ及びジャーナルジャッキなどが挙げられる。なお、ジャッキ160は、多くの場合、下端部の径がガイドベーンボックス30の内径より大きいため、通常の使用方法では、ガイドベーンボックス30を最後まで引き抜くことができない。そのため、ジャッキ160は上下にひっくり返して使用される。すなわち、ジャッキ160の上端部が下方に位置し、下端部が上方に位置してブロック150の中央部下部と接した状態で使用される。
【0037】
(作業)
保持装置100を用いて、ガイドベーンボックス30の取り外しを行う際の作業について説明する。
【0038】
最初に作業者は、リンク60をアーム50から取り外す。次に、アーム50を上端部42Aから取り外す。詳細に述べると、作業者は、ボルト45を緩めて押さえ板43及びキー44を取り外し、一端部51を上端部42Aに対して上方に引き抜く。
【0039】
次に、ガイドベーンボックス30に対する保持装置100の装着が実行される。この作業において、作業者は、2つの部材111を下部31Bの外周部を包囲するように配置し、調整部120を端部111A、111Bに取付ける。作業者がナット122を締め込むことにより、保持部110の径が縮小し、保持部110の内周部が下部31Bの外周部に対して強く押圧される。これにより保持部110の装着が完了する(
図3(a))。
【0040】
次に、作業者は、ジャッキ160を上端部42Aに載せ、ブロック150をジャッキ160の上端部に載置する。さらに、ブロック150と支持部130とを接続するように、伝達部140が設置される。伝達部140の設置は、鋼棒141の下端部を支持部130へねじ込み、鋼棒141の上端部をナット142と接続させることによって行われる。これにより保持装置100全体の装着が完了する(
図3(b))。
【0041】
作業者は、ジャッキ160を用いてブロック150を上方に加力する。ブロック150に加えられた力は、伝達部140及び支持部130を介して保持部110に伝達され、ガイドベーンボックス30を上方に引き抜く力として伝達される。保持部110は、下部31Bの外周部を強く保持するとともに、上部31Aの下端部にも接触し、滑ることなくガイドベーンボックス30に力を伝達する。
【0042】
加力に伴って、ガイドベーンボックス30は、上カバー10から引き抜かれ、取り外しが完了する。これにより、作業者は、ガイドベーンボックス30や上カバー10などの周辺部位に対し、補修作業など、必要な作業を実施することができる。
【0043】
<効果>
実施形態によれば、保持装置100は、ガイドベーンボックス30の外周部を包囲する保持部110と、保持部110の径を変える調整部120とを備える。
【0044】
上記構成では、簡易な構成で確実に、ガイドベーンボックス30を包囲して保持する装置とすることができる。
【0045】
前記保持部に設置された支持部130と、支持部130に対して取外し可能に装着される下端部を持ち、保持部110をガイドベーンボックス30へ取付けた状態においてガイドベーンボックス30と平行に延びる、棒状の鋼棒141(接続部に相当)を備える。
【0046】
上記構成により、保持部110に対して上方へ引き抜く力を伝達するための構成を、簡易な部材によって得ることができる。
【0047】
鋼棒141の下端部には雄ネジが切られ、支持部130には雌ネジが切られた周面が形成される。
【0048】
上記構成により、鋼棒141の下端部をねじ込むだけで、鋼棒141の支持部130への取付けが可能となる。また、取り外しも容易である。
【0049】
保持装置100は、鋼棒141の上端部に接続されたブロック150(治具に相当する)と、ガイドベーンボックス30が支持するガイドベーン40の上端部42Aに設置され、ブロック150を上端部42Aから離れるように加力するジャッキ160(加力部に相当)とを備える。ジャッキ160は、油圧ジャッキ及びジャーナルジャッキのいずれかである。
【0050】
上記構成により、効果的にガイドベーンボックス30への加力を行う装置構成とすることができる。また、保持装置100を、設置及び分解が容易な装置とすることができる。
【0051】
保持部110は、ガイドベーンボックス30の外周部と同じ曲率を持つ環状に形成される。
【0052】
上記構成では、保持部110がガイドベーンボックス30の外周部の形状に合致するため、外周部を確実に保持することが可能となる。
【0053】
<変形例>
上記実施形態において、保持部110は略円環状に形成されたが、保持部110の形状は、原則としてガイドベーンボックス30の形状に合わせたものとなる。したがって、変形例の保持部810として示すように、平面視における形状は、六角形状(
図4(a))や、多角形状であってもよいし、楕円や長円形状であってもよい。
【0054】
上記実施形態において調整部120は、ボルト121とナット122によって構成された。これに代わり、変形例の調整部920として示すように、ボルト121、ナット122、及びヒンジ923で構成されてもよい(
図4(b))。
【0055】
詳細に述べると、ヒンジ923は対向する2つの端部111Bを接続する。保持部110は、ヒンジ923を中心として、径を拡大または縮小するように開閉できる。調整部920は、端部111Aに設けられたボルト121とナット122によって保持部110の径の調整を行う。このような構成により、保持部110のガイドベーンボックス30への装着、及びガイドベーンボックス30の保持が可能となる。
【0056】
また、調整部120、920は、ボルト121とナット122、ヒンジ923による構成とするだけでなく、クランプなど他の固定方法が用いられてもよい。
【0057】
上記実施形態において支持部130は、ナットによって構成されたが、これ以外の構成であってもよい。例えば、変形例による支持部830及び接続部840として示すように、支持部830がナットではなく平板または突起として形成され、鋼棒841の下部に固定されたクランプ842と接続されてもよい(
図5)。
【符号の説明】
【0058】
1 水車
10 上カバー
20 ケーシング
30 ガイドベーンボックス
40 ガイドベーン
50 アーム
60 リンク
70 ガイドリング
100 保持装置
110 保持部
120 調整部
130 支持部
140 伝達部
150 ブロック
160 ジャッキ