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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055331
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】自律移動ロボット
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240411BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162163
(22)【出願日】2022-10-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2022年6月20日に清水建設株式会社のウェブサイト(https://www.shimztechnonews.com/hotTopics/news/2022/2022-03.html)において、清水建設株式会社が、木村駿介、内藤拡也、山本伶奈が発明した「視覚障がい者移動支援ロボット「AIスーツケース」」について公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 駿介
(72)【発明者】
【氏名】内藤 拡也
(72)【発明者】
【氏名】山本 伶奈
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG10
5H301GG17
(57)【要約】
【課題】ユーザーの自然な動作に基づいて直感的に操作可能な自律走行ロボットを提供する。
【解決手段】自律移動ロボット1は、ユーザーの移動を支援するロボットであって、自律走行機能を有するロボット本体10と、ロボット本体10に取り付けられ、ロボット本体10の高さ方向に延びたハンドル20と、ハンドル20に加わる力の大きさと方向を検出する力覚センサ30とを備える。また、自律移動ロボット1は、力覚センサ30の検出情報に基づいて、ロボット本体10の動作を制御する制御装置15を備える。力覚センサ30は、ハンドル20の付け根に設けられている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの移動を支援する自律移動ロボットであって、
自律走行機能を有するロボット本体と、
前記ロボット本体に取り付けられ、前記ロボット本体の高さ方向に延びたハンドルと、
前記ハンドルに加わる力の大きさと方向を検出するセンサと、
前記センサの検出情報に基づいて、前記ロボット本体の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記センサは、前記ハンドルの付け根に設けられている、自律移動ロボット。
【請求項2】
前記ハンドルは、前記ロボット本体の高さ方向に延びるアームと、前記アームの付け根が固定された取り付け板と、前記アームの先端側に設けられた把持部とを有し、
前記センサは、前記取り付け板の直下に配置されている、請求項1に記載の自律移動ロボット。
【請求項3】
前記アームは、前記ロボット本体の前後方向に間隔をあけて2本配置され、
前記把持部は、2本の前記アームにわたって設けられている、請求項2に記載の自律移動ロボット。
【請求項4】
前記センサは、少なくとも前記ロボット本体の前後方向および左右方向の力を検出可能に構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の自律移動ロボット。
【請求項5】
前記制御装置は、前記センサの検出情報に基づいて、前記ロボット本体の走行に必要な情報を設定する、請求項4に記載の自律移動ロボット。
【請求項6】
前記ロボット本体の走行に必要な情報は、自律走行の目的地および前記ロボット本体の走行速度から選択される少なくとも1つである、請求項5に記載の自律移動ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律移動ロボットに関し、より詳しくは、ユーザーの移動を支援する自律移動ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットに搭載されたセンサ等により周囲の環境を認識し、またロボット自身の位置情報を取得して、目的とする場所まで移動することが可能な自律移動ロボットが知られている。自律移動ロボットの一例として、視覚障害者等のユーザーを目的地まで誘導(案内)してユーザーの移動を支援するロボットも提案されている。例えば、特許文献1には、案内用ロボットと、案内用ロボットと別体に設けられたリモコンとを備える移動ロボットシステムが開示されている。
【0003】
特許文献1の案内用ロボットは、ユーザーにより把持されるグリップを含む操作入力部と、目的地を設定するためのタッチパネルとを備え、設定された目的地まで自律走行するように構成されている。また、特許文献2には、ユーザーの移動を支援するロボットであって、ロボット本体と、ロボット本体から延びるハンドルとを備えたスーツケース型の自律移動ロボットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-97538号公報
【特許文献2】特開2022-76648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
移動支援用ロボットの一般的な使用形態としては、ユーザーがハンドル等の把持部を掴んでロボットと共に移動する形態が挙げられるが、その際、ユーザーの自然な動作に基づいて直感的にロボットを操作したいというニーズがある。即ち、ロボットに対するユーザーの動きを的確に検出し、当該検出情報をロボットの制御に活用することが求められる。従来の技術は、このような観点について未だ改良の余地が大きい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自律移動ロボットは、ユーザーの移動を支援する自律移動ロボットであって、自律走行機能を有するロボット本体と、ロボット本体に取り付けられ、ロボット本体の高さ方向に延びたハンドルと、ハンドルに加わる力の大きさと方向を検出するセンサと、センサの検出情報に基づいて、ロボット本体の動作を制御する制御装置とを備える。本発明に係る自律移動ロボットにおいて、センサは、ハンドルの付け根に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る自律移動ロボットによれば、ユーザーの自然な動作に基づいて直感的にロボットを操作することが可能である。本発明に係る自律移動ロボットでは、ハンドルに加わる力を検出するセンサがハンドルの付け根に設けられているため、ユーザーのハンドル操作によりハンドルに作用する力を的確に検出できる。そして、当該検出情報を用いてロボットを制御することにより、例えば、ボタン、スイッチ、或いはジョイスティックなどを用いたロボット操作と比べて、より直感的なロボット操作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の一例である自律移動ロボットの斜視図である。
図2】自律移動ロボットの概略構成を示すブロック図である。
図3】自律移動ロボットのハンドルの先端部分を斜め上方から見た図である。
図4】自律移動ロボットのハンドルの先端部分を斜め下方から見た図である。
図5】自律移動ロボットのハンドルの全体を示す斜視図である。
図6】自律移動ロボットの使用方法を説明するための図である。
図7】自律移動ロボットの制御手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る自律移動ロボットの実施形態について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態および変形例の各構成要素を選択的に組み合わせてなる構成は本発明に含まれている。
【0010】
図1は、本発明の実施形態の一例である自律移動ロボット1の斜視図である。図1に示すように、自律移動ロボット1は、ロボット本体10と、ロボット本体10に取り付けられたハンドル20とを備える。自律移動ロボット1は、ユーザーの移動を支援するロボットであって、目的地までの経路に沿って磁気テープ等の誘導体を配置しなくても、搭載されたセンサ等により周囲の環境を認識して目的地まで移動することが可能である。ロボット本体10は、自律走行機能を有し、目的地に向かって自律走行する自律走行モード、および走行状態を手動で制御可能な手動走行モードで走行可能に構成されている。
【0011】
自律移動ロボット1は、さらに、ハンドル20に加わる力の大きさと方向を検出するセンサとして力覚センサ30(後述の図2等参照)を備える。詳しくは後述するが、力覚センサ30は、ハンドル20の付け根に設けられている。また、自律移動ロボット1は、力覚センサ30の検出情報に基づいて、ロボット本体10の動作を制御する制御装置15(後述の図2参照)を備える。ハンドル20の付け根に設けられた力覚センサ30の機能により、ユーザーの自然な動作に基づく直感的なロボット操作を実現できる。
【0012】
自律移動ロボット1は、ユーザーを所定の目的地まで誘導する移動支援ロボットであって、ロボットが単体で自律走行するものではない。このため、自律移動ロボット1は、ユーザーにより把持されるハンドル20を備える。但し、自律移動ロボット1は、ユーザーを目的地まで誘導するナビゲーション機能を有していればよく、ロボット単体での自律走行が可能であってもよい。例えば、自律移動ロボット1は、ロボットの使用場所又は保管場所まで単体で自律走行してもよい。
【0013】
自律移動ロボット1は、視覚障害者を目的地まで誘導する移動支援ロボットとして好適である。自律移動ロボット1は、視覚障害者であっても操作し易いように構成されている。但し、自律移動ロボット1のユーザーは、視覚障害者に限定されない。例えば、目的地の場所が分からない人など、視覚障害の無い人であっても、自律移動ロボット1のユーザー、即ち自律移動ロボット1により目的地まで誘導される被誘導者となり得る。
【0014】
自律移動ロボット1は、特定の建物内で使用される。特定の建物の例としては、店舗、ショッピングモール等の商業施設、病院、空港、駅、役所、図書館、美術館、学校等の公共施設、オフィス、研究所、工場等の事業所などが挙げられる。なお、自律移動ロボット1の使用場所は、特定の建物内に限定されず、公園、動物園、テーマパーク等の屋外施設であってもよい。また、自律移動ロボット1は、例えば、視覚障害者が個人で所有していてもよく、任意の場所で使用可能であってもよい。
【0015】
なお、本明細書では、説明の便宜上、図1に示す前後方向X、左右方向Y、および高さ方向Zの方向を示す用語を使用する。これらの方向は、自律移動ロボット1の通常の使用状態における方向を意味する。具体的に、自律移動ロボット1およびロボットの各構成要素(ロボット本体10、ハンドル20等)の前方とは、ロボットが自律走行するときの進行方向を意味する。ロボットの後方は前方と反対の方向であり、左右方向Yは前後方向Xおよび高さ方向Zに対して直交する方向である。高さ方向Zとは、ロボットの載置面に対して垂直な方向を意味し、載置面が水平面である場合は鉛直方向と一致する。自律移動ロボット1は、後退可能である。即ち、前後方向Xがロボットの移動方向である。
【0016】
ロボット本体10は、自律走行機能を実現するための各種装置を備えた装置ユニットであって、ハウジング11と、車輪12とを有する。ハウジング11は、当該各種装置を収容し、ロボット本体10の外観を形成するケースである。ロボット本体10の内部、即ちハウジング11の内側には、バッテリ14、制御装置15(後述の図2参照)等が設けられている。ロボット本体10は、ハウジング11の外側に設置される、スピーカ等の出力装置、カメラ、センサなどを有していてもよい。
【0017】
ロボット本体10は、駆動装置13(後述の図2参照)を有し、制御装置15による制御の下、駆動装置13が車輪12のうち、駆動輪を駆動させることにより走行する。本実施形態では、ハウジング11の下部に4つの車輪12が設けられている。ハウジング11は、高さ方向Zの長さ>前後方向Xの長さ>左右方向Yの長さの関係を満たす直方体形状を有するが、ハウジング11の形状およびサイズはこれに限定されない。ロボット本体10の高さ(高さ方向Zの長さ)の一例は、50cm以上90cm以下である。また、車輪12の数、大きさ等は特に限定されない。ロボット本体10を移動させるための手段は、車輪以外であってもよいが、ロボット本体10の走行安定性等の観点から車輪が好ましい。
【0018】
ハンドル20は、ロボット本体10に取り付けられ、高さ方向Zに延びている。ハンドル20は、例えば、ロボット本体10の上端から高さ方向Zに延びる。また、ハンドル20は、ロボット本体10の進行方向に向かって右側の端部において、前後方向中央部に取り付けられている。この場合、ユーザーは、ロボット本体10の右側に立ち、左手でハンドル20を掴んで自律移動ロボット1を操作し、ハンドル20を掴んだ状態で自律移動ロボット1と共に目的地まで移動する。なお、ハンドル20は、ユーザーが右手で自律移動ロボット1を操作し、ハンドル20を掴んだ状態で自律移動ロボット1と共に移動する場合にあっては、ロボット本体10の左側端部に設けられていてもよい。また、ハンドル20の少なくとも一部が、ロボット本体10に対して着脱自在であってもよい。
【0019】
ハンドル20は、ロボット本体10を走行させるための第1操作部である第1操作ボタン24と、ロボット本体10のモードを切り替えるための第2操作部である第2操作ボタン25(後述の図2等参照)とを有する。詳しくは後述するが、第1操作ボタン24は、ハンドル20の第1の領域に設けられ、第2操作ボタン25は、当該第1の領域と異なる方向に向いたハンドル20の第2の領域に設けられている。ハンドル20は前後方向Xに延びた把持部22を有し、各操作ボタンは把持部22に設けられている。把持部22は、ユーザーにより掴まれるグリップである。
【0020】
自律移動ロボット1はユーザーを目的地まで誘導するロボットであるが、ユーザーが目的地に向かう途中で目標経路から外れた場所に立ち寄りたい場合や、ロボットの向きを変更したい場合も想定される。このため、自律移動ロボット1には、走行状態を手動で制御可能な手動走行モードが実装されている。例えば、目的地に向かう途中で知人と出会って会話する場合、ショッピングをする場合、ベンチに座って休憩する場合、或いは自由に寄り道をする場合において、手動走行モードを活用できる。
【0021】
自律移動ロボット1は、自律走行の目的地を設定するための目的地設定モードを備える。自律移動ロボット1は、目的地設定モードにおいてユーザーにより目的地が設定された後、第1操作ボタン24を押すことで当該目的地に向かって自律走行を開始する。なお、自律走行の開始後において目的地を変更したい場合も考えられる。このため、自律移動ロボット1が自律走行状態から停止した場合、ロボットの動作モードは目的地設定モードに遷移する。ユーザーは目的地設定モードにおいて新たな目的地を設定することで、目的地を変更できる。自律移動ロボット1が自律走行状態から停止した場合に、力覚センサ30が左右方向Yの力を検知することを条件として、ロボットのモードを目的地設定モードに遷移させてもよい。
【0022】
ハンドル20は、さらに、ロボット本体10から延びる支持部21を有する。支持部21は、高さ方向Zに延びるアーム21Aを含む。本実施形態において、アーム21Aは、前後方向Xに間隔をあけて2本配置されている。2本のアーム21Aの各々は、細長い棒状部材であって、互いに同じ形状、同じ長さを有する。把持部22は、一対のアーム21Aの先端側(上部)において、一対のアーム21Aにわたって設けられている。把持部22は、アーム21Aよりも長さが短い棒状部材であって、長さ方向両端部が2本のアーム21Aの上端にそれぞれ固定されている。
【0023】
自律移動ロボット1は、全体として、スーツケースに類似した形状を有するスーツケース型の移動支援ロボットである。このため、ユーザーは、スーツケースを押し歩く場合と同様の感覚で自律移動ロボット1を扱うことができる。但し、本発明の自律移動ロボットは、スーツケース型のロボットに限定されるものではない。
【0024】
図2は、自律移動ロボット1の概略構成を示すブロック図である。図2に示すように、自律移動ロボット1は、ハンドル20に設けられた第1操作ボタン24および第2操作ボタン25の操作に基づいて、また力覚センサ30の検出情報に基づいて、ロボット本体10の動作を制御可能に構成されている。自律移動ロボット1は、各操作ボタンの操作信号および力覚センサ30の検出情報に基づいて、ロボット本体10の動作を制御する制御装置15を備える。制御装置15には、各操作ボタン、力覚センサ30、および後述の各種センサが接続され、操作信号および検出信号が送信される。
【0025】
詳しくは後述するが、制御装置15は、ユーザーのハンドル操作による力が力覚センサ30により検出されると、当該検出情報(検出信号)に基づいてロボット本体10の動作を制御する。また、自律走行モードにおいて第1操作ボタン24が操作されると、設定された目的地に向かってロボット本体10を自律走行させ、ロボット本体10の停止状態で第2操作ボタン25が操作されると、ロボット本体10の走行モードを手動走行モードに遷移させる。なお、ロボットの走行状態の説明において「ロボット本体10」は「自律移動ロボット1」に読み替えることができる。例えば、「ロボット本体10の停止状態」と「自律移動ロボット1の停止状態」は同義である。
【0026】
ロボット本体10は、車輪12を駆動させる駆動装置13と、電力を必要とする負荷に電力を供給するバッテリ14とを有する。駆動装置13は、例えば、バッテリ14から電力の供給を受けて車輪12を駆動させるモータを含む。駆動装置13、バッテリ14、および制御装置15は、例えば、ロボット本体10の骨格を形成するフレーム19(後述の図5参照)に固定されている。
【0027】
ロボット本体10は、さらに、加速度センサ16A、距離センサ16B、カメラ17、通信装置18等を有していてもよい。加速度センサ16Aは、例えば、自律移動ロボット1の加速度、走行速度、傾き等を検出する。距離センサ16Bには、例えば、光学式、超音波式、又は電波式の距離センサ(測域センサ)を用いることができる。なお、距離センサ16B、カメラ17等は、ハウジング11の外側に設けられていてもよい。
【0028】
制御装置15は、例えば、距離センサ16B、カメラ17等の各種センサの検出情報を用いて自己位置推定と環境地図作成を同時に行い、ロボット本体10の自律走行を実現する。なお、ロボット本体10の自律走行には、従来公知のSLAM技術(Simultaneous Localization and Mapping)を適用できる。制御装置15は、例えば、障害物との衝突回避のために、距離センサ16Bにより計測される障害物との距離が一定距離以下とならないような状態制約と、使用感向上のための加速度制約とを同時に満たす制御則を実装している。
【0029】
制御装置15は、自律走行の目的地、最大走行速度、動作モード等の情報、制御プログラムなどを記憶する記憶部と、制御プログラムなどを読み出して実行することによりロボット本体10の動作を制御する演算部とを備えたコンピュータで構成されている。目的地の候補は、記憶部に予め登録されていてもよく、ユーザーにより記憶部に登録可能であってもよい。演算部には、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが含まれる。
【0030】
なお、制御装置15を構成するコンピュータの構成は、ロボット本体10の動作を制御可能なものであればよく、特に限定されない。制御装置15は、通信装置18の機能によりGNSS(Global Navigation Satellite System)信号等の情報を受信し、当該情報をロボット本体10の自律走行の制御に使用してもよい。
【0031】
自律移動ロボット1は、上記の通り、ハンドル20に加わる力の大きさと方向を検出する力覚センサ30を備える。制御装置15は、力覚センサ30の検出情報に基づいて、ロボット本体10の動作を制御する。制御装置15は、例えば、力覚センサ30の検出情報に基づいて、手動走行モードにおけるロボット本体10の走行状態が制御される。力覚センサ30の機能により、ユーザーは直感的にロボットを操作することが可能となる。また、力覚センサ30を利用して、自律走行の目的地等の設定が実行されてもよい。
【0032】
図3図5を参照しながら、ハンドル20および力覚センサ30について、さらに詳説する。図3および図4は、ハンドル20の先端部分を拡大して示す。図5は、ハンドル20の全体を示し、ハンドル20の付け根を覆うハウジング11を取り外した状態を示す。
【0033】
図3図5に示すように、ハンドル20は、アーム21Aを含む支持部21と、アーム21Aの先端側に設けられた把持部22とで構成されている。本実施形態において、支持部21は、一対のアーム21Aと、一対のアーム21Aの付け根がそれぞれ固定された取り付け板21Bとを含む。上記のように、一対のアーム21Aは高さ方向Zに延び、前後方向Xに間隔をあけて前後方向Xに並んで配置されている。また、把持部22は、2本のアーム21Aを連結するように前後方向Xに沿って配置されている。ハンドル20は、2本のアーム21Aと、把持部22とにより、逆U字状に形成されている。なお、アーム21Aと把持部22は一体成形されていてもよい。
【0034】
アーム21Aは、例えば、把持部22の高さが、概ねユーザーの腰から肘の高さとなるような長さを有する。本実施形態では、一対のアーム21Aがロボット本体10の上端から延出し、高さ方向Zに沿って互いに平行に真っ直ぐに延びている。アーム21Aは、高さ方向Zに沿って溝が形成された角柱形状を有するが、その形状は特に限定されない。また、アーム21Aは、伸縮自在な構造を有していてもよく、ロボット本体10の上端から延びる長さを調整可能であってもよい。この場合、把持部22が操作し易い高さとなるように、ユーザーの好みに応じてアーム21Aの長さを変更できる。なお、アーム21Aの幅(前後方向Xの長さ)の一例は、2cm以上5cm以下である。
【0035】
把持部22は、前後方向Xに沿って真っ直ぐに延び、アーム21Aと干渉することなく把持部22を掴むことが可能な長さを有することが好ましい。換言すると、把持部22を掴んだときに手がアーム21Aと干渉しないようにアーム21A同士の間隔が設定される。把持部22の好適な長さの一例は、12cm以上20cm以下である。把持部22は、長さ方向に直交する方向の断面形状が、真円形状、楕円形状、又は半円形状等であってもよいが、本実施形態では四角形状を有する。四角形の角は、把持性を考慮して丸みを帯びている。
【0036】
把持部22は、高さ方向Zの上側を向いた上面22A、高さ方向Zの下側を向いた下面22B、および側面22C,22Dを含む。なお、自律移動ロボット1の載置面が水平面である場合、把持部22の上面22Aは鉛直上方を向く。側面22C,22Dは、水平方向を向いた面であって、側面22Cが進行方向左側を向き、側面22Dが進行方向右側を向く。把持部22は、さらに、ロボット本体10の前方を向いた側面(前面)および後方を向いた側面(後面)を含む。
【0037】
把持部22は、振動ロータ23を有していてもよい。振動ロータ23は、振動によりユーザーにロボットから情報を報知可能な出力装置である。振動ロータ23を用いて、例えば、目的地が設定されたこと、目的地に到着したこと、障害物の存在など、種々の情報がユーザーに報知される。ハンドル20には、把持部22の下面22Bに振動ロータ23が設けられている。振動ロータ23は、複数設けられていてもよいが、本実施形態では1つである。
【0038】
ロボット本体10又はハンドル20には、音声を出力するスピーカ等の他の出力装置が設けられていてもよい。或いは、自律移動ロボット1は、ロボット本体10およびハンドル20と別体の出力装置を備えていてもよい。別体の出力装置の例としては、イヤホン、骨伝導スピーカなどが挙げられる。また、ユーザーが所持するスマートフォン等の端末装置を出力装置として使用することも可能である。
【0039】
第1操作ボタン24および第2操作ボタン25は、上記の通り、把持部22に設けられている。この場合、操作部が支持部21、ロボット本体10、或いは別体のリモコン等に設けられる場合と比べて、良好な操作性が得られる。一方、各操作ボタンが適当に配置されていると、ボタンの押し間違え等の誤操作が発生し易くなる。そこで、ハンドル20では、第1操作ボタン24が把持部22の第1の領域に配置され、第2操作ボタン25が第1の領域と異なる方向を向いた把持部22の第2の領域に配置されている。これにより、良好な操作性を確保しつつ、誤操作を効果的に抑制できる。
【0040】
第1操作ボタン24は、把持部22の下面22B又は側面に配置されてもよいが、好ましくは上面22Aに配置される。第1操作ボタン24は、ロボット本体10を走行させる際に使用される操作部であって、第2操作ボタン25と比較して使用頻度および使用時間が長いため、最も操作し易い上面22Aに配置されることが好ましい。他方、第2操作ボタン25は、側面22C又は側面22Dに配置されることが好ましく、本実施形態では側面22Dに配置されている。即ち、本実施形態では、ハンドル20の上記第1の領域が把持部22の上面22Aであり、上記第2の領域が把持部22の側面22Dであり、各操作ボタンの操作面の向きが90°異なっている。
【0041】
第1操作ボタン24および第2操作ボタン25には、従来公知の押しボタン(タッチボタン)を適用できる。以下、第1操作ボタン24および第2操作ボタン25は、押しボタンであるものとして説明する。このため、第1操作ボタン24および第2操作ボタン25を操作した状態とは、第1操作ボタン24および第2操作ボタン25を押している状態であり、第1操作ボタン24および第2操作ボタン25を操作しない状態とは、第1操作ボタン24および第2操作ボタン25を押していない状態である。各操作ボタンは、ユーザーが簡単に操作でき誤作動が発生し難い操作部であればよく、その構造は特に限定されない。各操作ボタンは、近接センサ等を用いた非接触式のボタンであってもよい。また、各操作ボタンの形状は特に限定されない。各操作ボタンには、図3に例示するような操作面が円形状のボタンを適用できる。
【0042】
第1操作ボタン24は、把持部22の上面22Aにおいて、長さ方向の中央位置よりもハンドル20の前方に配置されている。第1操作ボタン24は、上面22Aの長さ方向の中央位置よりも把持部22の前端位置の近くに配置されることが好ましい。この場合、ユーザーが把持部22を掴んだ状態で第1操作ボタン24を親指で操作することが容易になる。第1操作ボタン24は、例えば、自律移動ロボット1(ロボット本体10)の側面視において、ボタンの一部が前方側のアーム21Aと高さ方向Zに重なるように配置されている。
【0043】
第2操作ボタン25は、把持部22の側面22Dにおいて、第1操作ボタン24と同様に、側面22Dの長さ方向の中央位置よりもハンドル20の前方に配置されている。第2操作ボタン25は、ハンドル20の後方に配置されてもよいが、第1操作ボタン24の近くに配置することで、視覚障害者であっても第1操作ボタン24を操作する指(親指)で第2操作ボタン25を探すことが容易になり操作性が向上する。2つの操作ボタンが近くに配置されると、誤操作の発生が懸念されるが、本実施形態では、第2操作ボタン25が側面22Dに配置されるため、誤操作が十分に抑制される。
【0044】
第2操作ボタン25は、第1操作ボタン24よりも把持部22の前端側に配置されている。この場合、第2操作ボタン25が第1操作ボタン24よりも後方に配置される場合と比べて、把持部22を握った際に第2操作ボタン25を誤って押してしまうことが抑制され、誤操作を防止することができる。第2操作ボタン25は、例えば、前後方向Xにおいて、ハンドル20の前端と第1操作ボタン24の前端との間に配置されている。つまり、第2操作ボタン25は、自律移動ロボット1の側面視において、第1操作ボタン24と高さ方向Zに重ならない位置に設けられてもよい。
【0045】
第2操作ボタン25は、さらに、自律移動ロボット1の側面視において、前方側のアーム21Aと高さ方向Zに重なる位置に設けられている。換言すると、第2操作ボタン25は、自律移動ロボット1の側面視において、前方側のアーム21Aの延長線上に設けられている。本実施形態では、第2操作ボタン25の全体が、アーム21Aと高さ方向Zに重なっている。把持部22を掴んだユーザーの手は、通常、一対のアーム21Aの間に位置する。即ち、アーム21Aが手に干渉するため、側面22Dのうち、アーム21Aの後端よりもハンドル20の前方に位置する部分には手が触れ難くなる。このため、第2操作ボタン25の当該配置によれば、第2操作ボタン25の誤操作をより効果的に抑制できる。
【0046】
第2操作ボタン25は、第1操作ボタン24より小さいことが好ましい。この場合、第2操作ボタン25の誤操作をより効果的に抑制できる。より詳しくは、ユーザーの指が触れる操作面の面積が、第1操作ボタン24と比べて第2操作ボタン25の方が小さいことが好ましい。各操作ボタンの操作面が真円形状である場合、第2操作ボタン25の直径は、第1操作ボタン24の直径の50%以下であることが好ましく、例えば、第1操作ボタン24の直径の20%以上40%以下である。第2操作ボタン25は、その配置と大きさを上記のようにすることで、第1操作ボタン24と比べて操作し難くなっている。
【0047】
ハンドル20には、ユーザーにより操作される操作部として、第1操作ボタン24と第2操作ボタン25のみが設けられている。ハンドルには第3、第4の操作部を設けることも可能であるが、ハンドルに多くの操作部を設けた場合、操作が煩雑になると共に、誤操作の増加も懸念される。本実施形態のハンドル20は、把持部22に設けられた操作部が2つだけであるため、視覚障害者であっても簡単に操作でき、ユーザビリティに優れる。また、ハンドル20は、例えば、シンプルでスタイリッシュなデザインとなり、デザイン面からも自律移動ロボット1の商品価値を向上させることができる。
【0048】
図5に示すように、力覚センサ30は、ハンドル20の支持部21の付け根に設けられている。把持部22から離れた支持部21の付け根に力覚センサ30を設けることで、ハンドル20に加わる力を検出することが容易になり、ユーザーの自然な動作に基づきロボットを直感的に操作することが可能となる。力覚センサ30の機能により、ユーザーは、例えば、手動走行モードにおいてハンドル20に左右方向Yの力を加えることでロボットの進行方向を自由に変更でき、スーツケースを押し歩く場合と同様の感覚でロボットを扱うことができる。
【0049】
力覚センサ30には、一方向の力を検出可能な1軸力覚センサ(一般的に、荷重センサ又はロードセルとも呼ばれる)が用いられてもよいが、好ましくは、少なくとも前後方向Xおよび左右方向Yの力を検出可能な2軸力覚センサが用いられる。2軸力覚センサを用いることで、ハンドル20を捻るような力も検出できる。なお、力覚センサ30には、3軸力覚センサ又は6軸力覚センサが用いられてもよい。力覚センサ30の検出方式は特に限定されず、歪みゲージ式、圧電式、光学式、又は静電容量式のいずれであってもよい。
【0050】
力覚センサ30は、例えば、ハウジング11の内側において、ロボット本体10のフレーム19に固定されている。支持部21はハウジング11を貫通し、支持部21の付け根および力覚センサ30はハウジング11に覆われている。この場合、力覚センサ30はハウジング11によって保護され、力覚センサ30にはハンドル20に加わる力のみが入力される。支持部21は、上記のように、一対のアーム21Aと取り付け板21Bとで構成されている。ハンドル20に加わる力は、把持部22からアーム21Aおよび取り付け板21Bを介して力覚センサ30に伝達される。
【0051】
本実施形態において、力覚センサ30は、取り付け板21Bの直下に配置されている。ここで、取り付け板21Bの直下とは、取り付け板21Bの真下であって、力覚センサ30に近接する位置を意味する。取り付け板21Bは力覚センサ30上に直接固定されていてもよく、力覚センサ30に入力する力を実質的に減衰させない程度の薄肉部材が、取り付け板21Bと力覚センサ30の間に介在していてもよい。力覚センサ30によりハンドル20に加わる力が的確に検出されるように、アーム21Aおよび取り付け板21Bは、ハウジング11およびフレーム19と接触しないように配置されている。
【0052】
制御装置15は、上記のように、力覚センサ30の検出情報に基づいてロボット本体10の制御を実行する。制御装置15は、例えば、ロボット本体10の走行モードが手動走行モードである場合に、力覚センサ30により検出されたハンドル20に加わる力の大きさと方向に基づき、ロボット本体10の進行方向を制御し、またロボット本体10の速度を制御する。ハンドル20の付け根に設けられた力覚センサ30の検出情報に基づいてロボット本体10の動作を制御することにより、ユーザーはロボットを直感的に操作することができる。
【0053】
制御装置15は、さらに、力覚センサ30により検出される力の方向に基づいて、ロボット本体10の走行に必要な情報の設定を可能としている。ロボット本体10の走行に必要な情報としては、自律走行の目的地やロボット本体10の走行速度などが挙げられる。力覚センサ30の検出情報、即ちハンドル20自体の操作に基づいて目的地設定等を可能とすることで、ハンドル20に設置する操作部を減らすことができ、より簡便な操作を実現できる。
【0054】
表1に、第1操作ボタン24、第2操作ボタン25、および力覚センサ30による自律移動ロボット1の操作項目を示す。自律移動ロボット1は、自立走行モードと、目的地設定モードと、手動走行モードとを備える。各操作ボタンおよび力覚センサ30による操作項目は、ロボットの動作モードによって異なる。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示すように、自律移動ロボット1は、自律走行モードおよび手動走行モードにおいて、第1操作ボタン24が操作されている間だけ走行し、第1操作ボタン24が操作されていないときには停止する。自律移動ロボット1が自律走行状態から目的地に到着して停止すると、ロボットの動作モードは目的地を変更可能な目的地設定モードに遷移する。ロボットが目的地に到着して自律走行状態から停止した場合に、目的地設定モードに自動的に遷移するのではなく、第2操作ボタン25が操作されたこと、又は力覚センサ30により左右方向Yの力が検出されたこと等を条件として、目的地設定モードに遷移するようにしてもよい。
【0057】
制御装置15は、自律移動ロボット1が停止し、目的地設定モードに設定された状態で第2操作ボタン25が操作された場合、ロボット本体10の走行モードを手動走行モードに遷移させる。また、制御装置15は、手動走行モードにおいて、自律移動ロボット1が停止した状態、即ち第1操作ボタン24が操作されていない状態で第2操作ボタン25が操作された場合、手動走行モードから目的地設定モードに遷移させる。即ち、自律移動ロボット1が停止した状態で第2操作ボタン25が操作されると、目的地設定モードと手動走行モードとの間でロボットの動作モードが切り替えられる。なお、自律移動ロボット1の走行中において、第2操作ボタン25の操作は無効とされる。
【0058】
目的地設定モードでは、例えば、目的地を建物や建物のフロア、又は施設のジャンル毎に目的地リストとされた、制御装置15の記憶部に記憶された目的地の候補からハンドル20に対して加えられた力を検知可能な力覚センサ30の出力に基づき、選択するものとした。具体的には、力覚センサ30で前後方向Xの力を検出した場合、複数の目的地リストから任意の目的地リストを選択し、力覚センサ30で左右方向Yの力を検出した場合、選択されている目的地リストの目的地の候補から任意の目的地を選択するものとした。例えば、力覚センサ30が後方向の力を検出すると、選択している目的地リストの次の目的地リストを選択し、力覚センサ30が前方向の力を検出すると、選択している目的地リストの前の目的地リストを選択する。そして、任意の目的地リストが選択された状態で、力覚センサ30が左方向の力を検出すると、この目的地リストの次の項目(次の目的地)を選択し、力覚センサ30が右方向の力を検出すると、この目的地リストの前の項目(前の目的地)を選択する。即ち、力覚センサ30の検出情報に基づいて特定の目的地を抽出し、選択中の目的地としてユーザーに提示する。選択中の目的地リストや目的地は、例えば、スピーカ等の出力装置によりユーザーに報知される。
【0059】
目的地の決定には、第1操作ボタン24を使用できる。目的地設定モードにおいて、第1操作ボタン24が操作された場合、選択中の目的地が新規目的地として設定される。この場合、目的地の設定と同時にロボットが自律走行を開始しないように、例えば、再度のボタン操作、即ち第1操作ボタン24から指を離して再度操作、つまり押下することを自律走行開始の条件としてもよい。一方、目的地が選択されていない場合、例えば、自律移動ロボット1が自律走行状態から一旦停止しただけで目的地の変更操作(ハンドル20の左右方向Yの操作)がなされていない場合に、第1操作ボタン24が操作されると、ロボットは自律走行を再開する。
【0060】
自律移動ロボット1は、手動走行モードで走行中にハンドル20が左右方向Yに操作されると、その力が作用する方向に旋回する。また、ロボット本体10の最大前進速度は、走行中にハンドル20に対して前後方向Xに力を加えることで増減できる。手動走行モードでは、第1操作ボタン24が操作されていない停止状態でハンドル20に対して所定の閾値を超える後向きの力を加えると、ロボットを後退させることができる。ハンドル20の操作に基づくこれらの動作は、力覚センサ30の機能により実現できる。
【0061】
自律走行モードでは、手動走行モードの場合と同様に、第1操作ボタン24が操作された状態、つまり走行中に、ハンドル20に対して前後方向Xに力を加えることで最大前進速度を増減できる。一方、自律走行モードでは、走行中にハンドル20に対して左右方向Yに力を加えてもロボットを旋回させることはできない。即ち、走行中における力覚センサ30により検出される左右方向Yの力に基づく操作は無効とされている。一方、自律走行モードでは、自律移動ロボット1が停止した状態、即ち第1操作ボタン24が操作されていない状態において、ハンドル20に対して左右方向Yに力を加えると、目的地設定モードに遷移する。これにより、目的地の変更の他、さらに手動走行モードへの切り替えが可能となる。自律移動ロボット1が目的地に到着すると、目的地設定モードに遷移する。このとき、制御装置15は、ユーザーに対し、スピーカ等の出力装置を用いて次の目的地を設定するように促してもよい。
【0062】
以下、図6および図7を参照しながら、上記構成を備えた自律移動ロボット1の使用形態の一例について詳説する。
【0063】
図6は、自律移動ロボット1と共にユーザーが移動する様子を示す図である。図6に示すように、自律移動ロボット1は、ユーザーがハンドル20の把持部22を掴み、上面22Aに設けられた第1操作ボタン24を操作することにより、目的地に向かって自律走行し、ユーザーを目的地まで誘導する。把持部22は自律移動ロボット1の進行方向と同じ方向に延びているため、ロボットの走行中は自然とユーザーがロボットの真横や斜め右後方に並んだ状態となる。この場合、ロボットの後ろを歩く場合と比較して、ユーザーはロボットの進行方向を認識し易く、移動中にロボットを蹴るようなことも起こり難い。
【0064】
自律移動ロボット1は、第1操作ボタン24が操作されているときだけ走行するため、ユーザーは任意のタイミングでロボットの走行および停止を操作できる。第1操作ボタン24は、例えば、左手の親指で操作される。第1操作ボタン24は、把持部22の上面22Aにおいてハンドル20の前方に配置されているため、操作性が良好である。把持部22を掴む左手の人差し指、中指、薬指、および小指の少なくともいずれかは、振動ロータ23に触れた状態となる。自律走行モードでは、数メートル後に方向転換すること、床材の変化などの情報が、振動ロータ23又は音声によりユーザーに伝達されてもよい。
【0065】
自律移動ロボット1は、スーツケースを押し歩く場合と同様の感覚で扱うことができる。特に手動走行モードでは、ハンドル20に左右方向Yの力を加えることで、ハンドル20の付け根に設けられた力覚センサ30によりその力の大きさと方向が検出され、ロボットの進行方向を容易に変更できる。また、ハンドル20は、操作ボタンが2つだけというシンプルな構造であるため、視覚障害者であっても簡単に操作できる。
【0066】
図7は、ユーザーの操作に基づく自律移動ロボット1の制御手順の一例を示すフローチャートである。図7では、自律移動ロボット1が自律走行状態から一旦停止して目的地設定モードに遷移した後、再び自律走行を行い目的地に到着するまでの制御手順の一例を示す。自律走行の目的地が既に設定されている場合、ユーザーにより第1操作ボタン24が操作されると、自律移動ロボット1は自律走行を開始する(ステップS10)。制御装置15は、第1操作ボタン24の操作信号を受信すると、駆動装置13により車輪12の駆動輪を駆動させてロボットの自律走行を実行する。
【0067】
自律移動ロボット1の自律走行中に第1操作ボタン24の操作が停止されると(ステップS11のYes)、ロボットは停止して自律走行を中断し、動作モードが目的地設定モードに遷移する(ステップS12)。制御装置15は、第1操作ボタン24の操作信号が受信されなくなると、ロボットを停止させると共に、ロボットの動作モードを目的地設定モードに遷移させる。このとき、ハンドル20が左右方向Yに操作され、力覚センサ30により当該力が検出されたことを条件として、自律走行モードから目的地設定モードに遷移させてもよい。一方、第1操作ボタン24の操作信号を受信している間は自律走行を継続する(ステップS11のNo,S10)。
【0068】
目的地設定モードにおいて、ハンドル20が左右方向Yに操作され、力覚センサ30により当該力が検出されると(ステップS13のYes)、例えば、目的地リストから目的地の候補が随時選択されてユーザーに提示される(ステップS14)。制御装置15は、目的地設定モードにおいて、力覚センサ30により左右方向Yの力が検出されると、当該検出情報に基づいて記憶部に予め登録された目的地の情報を抽出し、スピーカ等の出力装置を用いて選択中の目的地をユーザーに知らせる。このとき、第1操作ボタン24が操作されると、選択中の目的地が新規目的地として設定される。
【0069】
ユーザーは、目的地を変更したい場合、ハンドル20を左右方向Yに操作して新規目的地を選択し、第1操作ボタン24の操作で選択中の目的地を新規目的地に設定できる。一方、目的地の変更および手動走行モードへの切り替えを行わない場合(ステップS13のNo,S15のNo)は、現在の目的地が維持され、第1操作ボタン24の操作によりロボットの自動走行が再開される(ステップS22のYes,S23)。なお、新規目的地が選択された状態で所定時間が経過した場合は、その選択がキャンセルされてもよい。
【0070】
目的地設定モードにおいて、第2操作ボタン25が操作された場合(ステップS15のYes)、ロボット本体10の走行モードが手動走行モードに遷移する(ステップS16)。制御装置15は、目的地設定モードにおいて第2操作ボタン25の操作信号を受信すると、走行モードを切り替えて手動走行モードに遷移させる。一方、第2操作ボタン25が操作されることなく、第1操作ボタン24が操作された場合は、上記のように、目的地に向かって自律走行を再開する。なお、いずれの操作ボタンも操作されない場合は、目的地設定モードが継続される。
【0071】
ロボット本体10の走行モードが手動走行モードに遷移した場合、第1操作ボタン24が操作されると(ステップS17のYes)、自律移動ロボット1はユーザーのハンドル操作に従った手動走行を開始する(ステップS18)。制御装置15は、手動走行モードにおいて第1操作ボタン24の操作信号を受信すると、ロボットを前進させると共に、力覚センサ30の検出情報を用いてロボットの進行方向等を制御する。制御装置15は、力覚センサ30により右方向の力が検出されるとロボット本体10を右に旋回させ、力覚センサ30により左方向の力が検出されるとロボット本体10を左に旋回させる。
【0072】
手動走行モードにおいて、自律移動ロボット1が停止した状態で第2操作ボタン25が操作された場合(ステップS20のYes)、動作モードは目的地設定モードに遷移する(ステップS21)。そして、第1操作ボタン24の操作により、ロボットの自律走行が再開される(ステップS22のYes,S23)。図7では、説明の便宜上、ステップS20に進んだ場合にロボットは再度手動走行しないフローとなっているが、手動走行モードは第2操作ボタン25が操作されるまで継続される。即ち、制御装置15は、手動走行モードにおいて、第1操作ボタン24が操作される度に手動走行を実行する。
【0073】
以上のように、上記構成を備えた自律移動ロボット1によれば、ハンドル20の付け根に設けられた力覚センサ30の機能により、ユーザーの自然な動作に基づく直感的なロボット操作を実現できる。力覚センサ30の検出情報を用いてロボットを制御することにより、ボタン、スイッチ、或いはジョイスティックなどを用いたロボット操作と比べて、より直感的なロボット操作が可能である。
【0074】
ユーザーは、自律移動ロボット1に誘導されて目的地に向かう途中で、自律走行モードから手動走行モードに切り替えることにより、目標経路から外れた場所に自由に立ち寄ることができる。手動走行モードは、例えば、目的地に向かう途中で知人と出会って会話すること、ショッピングをすること、ベンチに座って休憩することなどを可能とし、ユーザビリティを向上させる。ハンドル20の付け根に設けられた力覚センサ30の機能により、手動走行モードにおけるロボットの操作性が大きく向上する。
【0075】
自律移動ロボット1では、さらに、力覚センサ30を利用して目的地設定等のロボットの走行に必要な情報を設定可能としたことにより、ハンドル20に設けられた操作部が第1操作ボタン24と第2操作ボタン25のみとなっている。このため、視覚障害者であっても簡単に操作できる。つまり、自律移動ロボット1の操作には視覚情報が特に必要なく、視覚障害者のアクセシビリティに優れる。
【0076】
なお、自律移動ロボット1の構成は、上記の変形例以外にも、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。
【0077】
上記実施形態では、記憶部を含む制御装置15がロボット本体10に設けられているものとして説明したが、例えば、自律走行の目的地情報等のユーザーデータが記憶された記憶部がハンドル20に設けられていてもよい。また、ハンドル20は、上記のように、ロボット本体10に対して着脱自在であってもよく、ユーザー各自が所持するものであってもよい。この場合、ユーザーは、各自のハンドル20をロボット本体10に取り付け、ハンドル20の記憶部からユーザーデータをロボット本体10に送信することにより、各ユーザーに適したロボットの設定を簡単に行うことができる。本発明に係る自律移動ロボットのハンドルには、例えば、特開2022-76648号公報に開示された構成を組み込むことが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 自律移動ロボット、10 ロボット本体、11 ハウジング、12 車輪、13 駆動装置、14 バッテリ、15 制御装置、16A 加速度センサ、16B 距離センサ、17 カメラ、18 通信装置、19 フレーム、20 ハンドル、21 支持部、21A アーム、21B 取り付け板、22 把持部、22A 上面、22B 下面、22C,22D 側面、23 振動ロータ、24 第1操作ボタン、25 第2操作ボタン、30 力覚センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7