(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055337
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】ロボット外装部材および外装材付ロボット
(51)【国際特許分類】
G01L 1/16 20060101AFI20240411BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20240411BHJP
B25J 19/02 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
G01L1/16 B
G01L5/00 Z
B25J19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162173
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】金原 悠帆
(72)【発明者】
【氏名】上村 太一
(72)【発明者】
【氏名】景岡 正和
(72)【発明者】
【氏名】田實 佳郎
【テーマコード(参考)】
2F051
3C707
【Fターム(参考)】
2F051AA10
2F051AB08
2F051BA07
3C707BS10
3C707CY32
3C707KV06
3C707KW01
3C707MS27
(57)【要約】
【課題】低コスト性と、優れた感圧性とを兼ね備える、ロボット外装部材および外装材付ロボットを提供すること。
【解決手段】ロボット外装部材1が、緩衝フォーム2と、感圧部材3とを備える。感圧部材3は、緩衝フォーム2の表面に配置されるプラスチックシート31と、プラスチックシート31に固定されるケーブル状感圧センサ32とを備える。外装材付ロボット10は、ロボット本体11と、上記のロボット外装部材1とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝フォームと、感圧部材とを備え、
前記感圧部材は、
緩衝フォームの表面に配置されるプラスチックシートと、
前記プラスチックシートに固定されるケーブル状感圧センサとを備える、ロボット外装部材。
【請求項2】
前記ケーブル状感圧センサが、サーペンタイン状、ワール状およびスパイラル状からなる群から選択される少なくとも1種の形状をなすように、配置されている、請求項1に記載のロボット外装部材。
【請求項3】
前記ケーブル状感圧センサの長さが、前記プラスチックシートの単位面積に対して、2.5mm/cm2以上である、請求項1に記載のロボット外装部材。
【請求項4】
ロボット本体と、
請求項1に記載のロボット外装部材とを備える、外装材付ロボット。
【請求項5】
前記ロボット本体が、関節部を有しており、
前記ケーブル状感圧センサが、前記関節部を跨ぐように配置されている、請求項4に記載の外装材付ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット外装部材および外装材付ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業分野において、作業ロボットが、使用されている。作業ロボットは、作業者(ヒト)の近隣に、配置される場合がある。このような場合、作業ロボットと作業者とが接触する場合がある。
【0003】
そこで、作業ロボットは、外装材として、衝撃吸収材を装備している。作業ロボットと作業者との接触時の衝撃は、衝撃吸収材によって、緩和される。
【0004】
さらに、近年、作業ロボットには、上記の接触を検知することが、要求されている。作業ロボットが、上記の接触を検知すれば、接触時に、作業ロボットを緊急停止および/または緊急移動できる。そこで、上記の接触を検知するために、感圧センサをロボット外装部材に配置することが、検討される。
【0005】
感圧センサとしては、例えば、以下のケーブル状感圧センサが知られている。このケーブル状感圧センサは、圧電センサと、圧電センサの外側を保持する支持部とを備える。圧電センサは、中心電極と圧電体と外側電極と被覆層とを備える。中心電極と圧電体と外側電極と被覆層とは、同心円状に配置される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載のケーブル状感圧センサを、ロボット外装部材の全領域に配置する場合、多量(長尺)のケーブル状感圧センサが必要である。このような場合、コストが高くなる。
【0008】
一方、低コスト化を図るために、ケーブル状感圧センサをロボット外装部材の一部の領域にのみ配置することが検討される。しかし、この場合には、ロボット外装部材の一部に対する残部において、十分な感圧性が得られない。
【0009】
本発明は、低コスト性と、優れた感圧性とを兼ね備える、ロボット外装部材および外装材付ロボットである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明[1]は、緩衝フォームと、感圧部材とを備え、前記感圧部材は、緩衝フォームの表面に配置されるプラスチックシートと、前記プラスチックシートに固定されるケーブル状感圧センサとを備える、ロボット外装部材を、含んでいる。
【0011】
このようなロボット外装部材において、ケーブル状感圧センサは、プラスチックシートに固定されている。そして、プラスチックシートは、緩衝フォームの表面に配置されている。このような場合、プラスチックシートが、緩衝フォームの変形に伴って、容易に変形する。そして、ケーブル状感圧センサが、プラスチックシートに追従して、圧力を検知する。そのため、ケーブル状感圧センサは、比較的少ない量で、優れた感圧性を発現する。そのため、ロボット外装部材は、低コスト性と、優れた感圧性とを兼ね備える。
【0012】
本発明[2]は、前記ケーブル状感圧センサが、サーペンタイン状、ワール状およびスパイラル状からなる群から選択される少なくとも1種の形状をなすように、配置されている、上記[1]に記載のロボット外装部材を、含んでいる。
【0013】
ロボット外装部材において、ケーブル状感圧センサが、上記の特定形状をなすように配置されていれば、ケーブル状感圧センサは、より少ない量で、優れた感圧性を発現する。そのため、ロボット外装部材は、低コスト性と、優れた感圧性とを兼ね備える。
【0014】
本発明[3]は、前記ケーブル状感圧センサの長さが、前記プラスチックシートの単位面積に対して、2.5mm/cm2以上である、上記[1]または[2]に記載のロボット外装部材を、含んでいる。
【0015】
ロボット外装部材において、ケーブル状感圧センサが、上記の特定の密度で配置されていれば、ケーブル状感圧センサは、より少ない量で、優れた感圧性を発現する。そのため、ロボット外装部材は、低コスト性と、優れた感圧性とを兼ね備える。
【0016】
本発明[4]は、ロボット本体と、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のロボット外装部材とを備える、外装材付ロボットを、含んでいる。
【0017】
このような外装材付ロボットは、上記のロボット外装部材を備えている。そのため、外装材付ロボットは、低コスト性と、優れた感圧性とを兼ね備える。
【0018】
本発明[5]は、前記ロボット本体が、関節部を有しており、前記ケーブル状感圧センサが、前記関節部を跨ぐように配置されている、上記[4]に記載の外装材付ロボットを、含んでいる。
【0019】
このような外装材付ロボットでは、ケーブル状感圧センサが、関節部を跨ぐように配置されている。すなわち、単数のケーブル状感圧センサが、関節部で接続される複数のパーツにわたって配置される。このような場合、ケーブル状感圧センサは、より少ない量で、広範囲において、感圧性を発現できる。そのため、外装材付ロボットは、低コスト性と、優れた感圧性とを兼ね備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明のロボット外装部材および外装材付ロボットは、低コスト性と、優れた感圧性とを兼ね備える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、ロボット外装部材および外装材付ロボットの一実施形態を示す概略図である。
【
図2】
図2Aは、サーペンタイン状に配置されるケーブル状感圧センサを示す概略図である。
図2Bは、ワール状に配置されるケーブル状感圧センサを示す概略図である。
図2Cは、スパイラル状に配置されるケーブル状感圧センサを示す概略図である。
【
図3】
図3は、実施例1および比較例1におけるケーブル状感圧センサの電位差と、緊急停止信号との関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は、実施例2~4におけるケーブル状感圧センサの巻き付け状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.ロボット外装部材
図1において、ロボット外装部材1は、ロボット本体11(後述)の外面に装備され、外装材付ロボット10(後述)を構成している。ロボット外装部材1は、
図1において拡大して示されるように、緩衝フォーム2と、感圧部材3とを備えている。
【0023】
(1)緩衝フォーム
緩衝フォーム2は、衝撃吸収材である。緩衝フォーム2は、公知の樹脂フォームからなる。樹脂フォームしては、例えば、ポリウレタンフォーム、ポリオレフィンフォーム、シリコーンフォーム、フェノールフォームおよびメラミンフォームが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。樹脂フォームとして、好ましくは、ポリウレタンフォームが挙げられる。
【0024】
ポリウレタンフォームとしては、例えば、軟質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォームおよび半硬質ポリウレタンフォームが挙げられ、好ましくは、軟質ポリウレタンフォームが挙げられる。ポリウレタンフォームは、独立気泡性ポリウレタンフォームであってもよく、連続気泡性ポリウレタンフォームであってもよい。ポリウレタンフォームの連続気泡率は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0025】
ポリウレタンフォームは、公知の方法で成形される。例えば、公知のポリイソシアネート成分と、公知のポリオールとが、触媒および発泡剤の存在下で、混合および発泡成形される。発泡成形の方法としては、例えば、スラブ成形法、モールド成形法、ラミネート成形法、注入成形法およびスプレー成形法が挙げられ、好ましくは、スラブ成形法およびモールド成形法が挙げられる。ポリウレタンフォームの製造方法として、より具体的には、例えば、特開2020-158644号公報に記載される方法が、挙げられる。
【0026】
緩衝フォーム2の形状は、特に制限されない。例えば、緩衝フォーム2の表面(内側面)が、ロボット本体11(後述)にフィットするように、緩衝フォーム2は、成形される。
【0027】
より具体的には、ロボット本体11(後述)の第1骨部13(後述)および/または第2骨部14(後述)が、所定の外径の円柱形状を有する場合、緩衝フォーム2は、例えば、ロボット本体11の外径に対応した内径の円筒形状を有する。これにより、緩衝フォーム2は、ロボット本体11(後述)の第1骨部13(後述)および/または第2骨部14(後述)に、フィットする。なお、緩衝フォーム2は、単一のフォームとして形成されていてもよい。また、緩衝フォーム2は、複数のフォームを組み合わせることにより、形成されていてもよい。
【0028】
緩衝フォーム2の厚みは、例えば、10mm以上、好ましくは、20mm以上である。また、緩衝フォーム2の厚みは、例えば、1000mm以下、好ましくは、500mm以下である。
【0029】
緩衝フォーム2の密度は、例えば、100kg/m3以上、好ましくは、120kg/m3以上、より好ましくは、150kg/m3以上である。また、緩衝フォーム2の密度は、例えば、300kg/m3以下、好ましくは、250kg/m3以下、より好ましくは、200kg/m3以下である。
【0030】
緩衝フォーム2は、詳しくは後述するが、ロボット本体11(後述)の外面に沿った任意形状に成形される。緩衝フォーム2は、ロボット本体11(後述)の外面に装備される。緩衝フォーム2は、外装材付ロボット10(後述)に対して外部から与えられる衝撃を緩和する。これにより、緩衝フォーム2は、ロボット本体11(後述)を、保護する。また、緩衝フォーム2は、外装材付ロボット10(後述)に衝突した対象物(例えば、作業者)を、保護する。
【0031】
(2)感圧部材
感圧部材3は、緩衝フォーム2の表面に配置されるプラスチックシート31と、プラスチックシート31に固定されるケーブル状感圧センサ32とを備えている。
【0032】
(2-1)プラスチックシート
プラスチックシート31は、ケーブル状感圧センサ32を固定する基材である。プラスチックシート31は、公知の樹脂シートからなる。樹脂シートとしては、例えば、ポリスチレンシート、ポリオレフィンシート、塩化ビニルシート、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート、ポリカーボネートシートおよびナイロンシートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。樹脂シートとして、好ましくは、ポリスチレンシートが挙げられる。
【0033】
プラスチックシート31の製造方法は、特に制限されず、公知の方法が採用される。プラスチックシート31は、無延伸シートであってもよく、一軸延伸シートであってもよく、二軸延伸シートであってもよい。また、プラスチックシート31は、表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理および表面コート処理が挙げられる。
【0034】
プラスチックシート31の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上である。プラスチックシート31の厚みは、例えば、10mm以下、好ましくは、5mm以下である。
【0035】
プラスチックシート31の厚みが上記範囲であれば、プラスチックシート31が容易に変形する。そのため、ケーブル状感圧センサ32が、プラスチックシート31に追従して、容易に変形し、圧力を検知する。その結果、ロボット外装部材1が、優れた応答性を有する。
【0036】
(2-2)ケーブル状感圧センサ
ケーブル状感圧センサ32は、公知の構成を有している。図示しないが、例えば、ケーブル状感圧センサ32は、内側電極と、圧電素子と、外側電極とを備えている。
【0037】
内側電極は、例えば、円柱ケーブル状を有する。内側電極は、ケーブル状感圧センサ32の最内部に配置される。圧電素子は、例えば、円筒ケーブル形状を有する。圧電素子は、例えば、内側電極の外面に接触するように、配置される。外側電極は、例えば、円筒ケーブル形状を有する。外側電極は、例えば、圧電素子の外面に接触するように、配置される。つまり、内側電極と、圧電素子と、外側電極とは、略同心円状に配置される。これにより、ケーブル状感圧センサ32が、形成されている。
【0038】
ケーブル状感圧センサ32の製造方法は、特に制限されない。また、ケーブル状感圧センサ32は、市販品であってもよい。ケーブル状感圧センサ32の市販品としては、例えば、PIEZORA(登録商標、三井化学製)が挙げられる。
【0039】
ケーブル状感圧センサ32の太さ(直径)は、例えば、0.01mm以上、好ましくは、0.1mm以上である。プラスチックシート31の太さ(直径)は、例えば、1.0mm以下、好ましくは、0.8mm以下である。
【0040】
(2-3)感圧部材の形成方法
感圧部材3は、プラスチックシート31とケーブル状感圧センサ32との複合部材である。つまり、感圧部材3は、プラスチックシート31とケーブル状感圧センサ32とを備える。感圧部材3は、好ましくは、プラスチックシート31とケーブル状感圧センサ32とからなる。
【0041】
感圧部材3において、ケーブル状感圧センサ32は、プラスチックシート31に固定される。好ましくは、ケーブル状感圧センサ32は、プラスチックシート31の外側(ロボット本体11に対する反対側)の表面に、固定される。なお、
図1において、プラスチックシート31を透過するケーブル状感圧センサ32を、仮想線で示す。
【0042】
ケーブル状感圧センサ32の固定方法は、特に制限されない。例えば、ケーブル状感圧センサ32は、プラスチックシート31に、貼着テープ(図示せず)によって貼着される。
【0043】
また、例えば、ケーブル状感圧センサ32は、プラスチックシート31に、接着剤によって接着されていてもよい。また、例えば、プラスチックシート31に溝が形成され、その溝にケーブル状感圧センサ32が埋設および嵌合されていてもよい。好ましくは、ケーブル状感圧センサ32は、プラスチックシート31の表面に、貼着テープ(図示せず)によって貼着される。
【0044】
ケーブル状感圧センサ32の配置形状は、特に制限されない。つまり、ケーブル状感圧センサ32は、プラスチックシート31に対して、任意の形状をなすように、配置されている。
【0045】
ケーブル状感圧センサ32の配置形状として、より具体的には、例えば、ボーダー状(横縞状)、ストライプ状(縦縞状)、チェック状(格子状)、サーペンタイン状(葛折状)、ワール状(渦巻状)およびスパイラル状(螺旋状)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0046】
ケーブル状感圧センサ32の配置形状として、好ましくは、サーペンタイン状(葛折状)、ワール状(渦巻状)およびスパイラル状(螺旋状)が挙げられる。換言すると、好ましくは、ケーブル状感圧センサ32は、サーペンタイン状、ワール状およびスパイラル状からなる群から選択される少なくとも1種の形状をなすように、配置される。
【0047】
サーペンタイン状をなすように配置されたケーブル状感圧センサ32は、
図2Aに示される。
図2Aでは、ケーブル状感圧センサ32は、プラスチックシート31の平面視において、サーペンタイン状を描くように、配置されている。
【0048】
ワール状をなすように配置されたケーブル状感圧センサ32は、
図2Bに示される。
図2Bでは、ケーブル状感圧センサ32は、プラスチックシート31の平面視において、ワール状を描くように、配置されている。
【0049】
スパイラル状をなすように配置されたケーブル状感圧センサ32は、
図2Cに示される。
図2Cでは、ケーブル状感圧センサ32が、円筒形状のプラスチックシート31に対して、巻き付いている。これにより、ケーブル状感圧センサ32は、スパイラル状を描くように、配置されている。
【0050】
ケーブル状感圧センサ32は、プラスチックシート31に対して、任意の密度で配置されている。ケーブル状感圧センサ32の密度(配置密度)は、例えば、プラスチックシート31の単位面積(cm2)に対する、ケーブル状感圧センサ32の長さ(mm)として、表現される。
【0051】
ケーブル状感圧センサ32の長さ(mm)が、プラスチックシートの単位面積(cm2)に対して、例えば、1.0mm/cm2以上、好ましくは、2.0mm/cm2以上、より好ましくは、2.5mm/cm2以上、さらに好ましくは、3.0mm/cm2以上、さらに好ましくは、4.0mm/cm2以上、とりわけ好ましくは、5.0mm/cm2以上である。また、ケーブル状感圧センサ32の長さが、プラスチックシートの単位面積(cm2)に対して、例えば、20mm/cm2以下、好ましくは、10mm/cm2以下である。
【0052】
(3)ロボット外装部材の形成方法
上記の感圧部材3は、上記の緩衝フォーム2と接触するように配置され、公知の方法で固定される。固定方法は、特に制限されない。例えば、接着剤および/または接着テープが使用される。
【0053】
好ましくは、
図1に示されるように、プラスチックシート31の外側(ケーブル状感圧センサ32が固定されている側)の表面と、緩衝フォーム2の内側(ロボット本体11側)の表面とが、互いに接触する。つまり、ケーブル状感圧センサ32が、プラスチックシート31と緩衝フォーム2との間に、挟み込まれる。そして、この状態で、プラスチックシート31が、緩衝フォーム2に対して、固定される。これにより、ロボット外装部材1が、形成される。
【0054】
2.外装材付ロボット
図1において、外装材付ロボット10は、ロボット本体11と、上記のロボット外装部材1とを備えている。
【0055】
(1)ロボット本体
ロボット本体11は、各種産業分野で使用される産業ロボットの本体である。ロボット本体11は、好ましくは、多関節ロボットである。すなわち、ロボット本体11は、好ましくは、複数の骨部(リンク)と、骨部を接続する関節部(ジョイント)とを備えている。
【0056】
より具体的には、ロボット本体11は、基部12と、第1骨部13と、第1関節部16と、第2骨部14と、第2関節部17と、ハンド部15と、第3関節部18とを備えている。
【0057】
基部12は、ロボット本体11を固定する台座である。基部12は、任意形状に形成される。基部12は、例えば、水平面に載置される。基部12は、必要に応じて、水平面上を移動および回転する。
【0058】
第1骨部13および第1関節部16は、基部12に接続されている。より具体的には、基部12と第1骨部13とが、第1関節部16を介して、接続されている。第1骨部13は、第1関節部16を軸として、回転可能である。第1骨部13は、第1関節部16を介した回転により、任意の位置に固定される。
【0059】
第2骨部14および第2関節部17は、第1骨部13に接続されている。より具体的には、第1骨部13と第2骨部14とが、第2関節部17を介して、接続されている。第2骨部14は、第2関節部17を軸として、回転可能である。第2骨部14は、第2関節部17を介した回転により、任意の位置に固定される。
【0060】
ハンド部15および第3関節部18は、第2骨部14に接続されている。より具体的には、ハンド部15と第2骨部14とが、第3関節部18を介して、接続されている。ハンド部15は、第3関節部18を軸として、回転可能である。ハンド部15は、第3関節部18を介した回転により、任意の位置に固定される。また、ハンド部15は、ロボット本体11に要求される作業を、実施可能である。
【0061】
このようなロボット本体11として、好ましくは、協働ロボットが挙げられる。協働ロボットは、作業者(ヒト)と協同して働くロボットである。協働ロボットは、通常、作業者(ヒト)の近隣に配置される。
【0062】
(2)外装材付ロボットの形成方法
ロボット外装部材1は、ロボット本体11の任意の箇所に、配置される。例えば、
図1に破線で示されるように、ロボット外装部材1は、第1骨部13および/または第2骨部14を被覆するように、配置される。
【0063】
好ましくは、プラスチックシート31の内側(ケーブル状感圧センサ32が固定されていない側)の表面と、第1骨部13および/または第2骨部14とが、互いに接触するように、ロボット外装部材1が、配置される。
【0064】
そして、上記のロボット外装部材1は、公知の方法で、ロボット本体11に固定される。固定方法は、特に制限されない。例えば、接着剤および/または接着テープが使用される。これにより、外装材付ロボット10が、形成される。
【0065】
また、外装材付ロボット10は、好ましくは、上記の第1骨部13および第2骨部14の両方に、ロボット外装部材1を備えている。ロボット外装部材1は、単数であってもよく、複数であってもよい。より具体的には、1つのロボット外装部材1が、第1骨部13および第2骨部14の両方にわたって、配置されていてもよい。また、例えば、1つのロボット外装部材1が、第1骨部13にのみ配置され、また、別の1つのロボット外装部材1が、第2骨部14にのみ配置されていてもよい。
【0066】
このような場合、1つのケーブル状感圧センサ32が、上記の第1骨部13および第2骨部14の両方にわたって、配置されていてもよい。また、1つのケーブル状感圧センサ32が、第1骨部13にのみ配置され、また、別の1つのケーブル状感圧センサ32が、第2骨部14にのみ配置されていてもよい。
【0067】
好ましくは、1つのケーブル状感圧センサ32が、第1骨部13および第2骨部14の両方にわたって、配置される。換言すると、1つ(単数)のケーブル状感圧センサ32が、第1関節部16を跨ぐように、配置される。
【0068】
(3)外装材付ロボットの使用方法
外装材付ロボット10は、任意の各種産業分野で使用される。例えば、外装材付ロボット10は、工場における生産ラインの一部に配置される。そして、ロボット本体11が、例えば、電力により作動する。これにより、外装材付ロボット10は、任意の作業に従事する。
【0069】
また、外装材付ロボット10は、公知の衝撃検知システム(図示せず)に接続される。
【0070】
衝撃検知システム(図示せず)は、例えば、ケーブル状感圧センサ32に電気的に接続される。これにより、衝撃検知システム(図示せず)は、ケーブル状感圧センサ32の圧電素子における電位差を監視する。
【0071】
また、衝撃検知システム(図示せず)は、例えば、ロボット本体11に電気的に接続される。そして、衝撃検知システム(図示せず)は、必要に応じて、ロボット本体11を緊急停止および/または緊急移動するための電気信号を、ロボット本体11に発信する。
【0072】
このような外装材付ロボット10は、必要に応じて、ロボット本体11を緊急停止および/または緊急移動させることができる。
【0073】
より具体的には、外装材付ロボット10には、外部から衝撃が与えられる場合がある。例えば、外装材付ロボット10が、協働ロボットである場合には、外装材付ロボット10は、通常、作業者(ヒト)の近隣に配置される。このような場合、外装材付ロボット10と、作業者(ヒト)とが接触する場合がある。
【0074】
外装材付ロボット10に、外部から衝撃が与えられると、衝撃は、緩衝フォーム2によって緩和される。つまり、緩衝フォーム2は、ロボット本体11(後述)を、保護する。また、緩衝フォーム2は、外装材付ロボット10(後述)に衝突した対象物(例えば、作業者)を、保護する。
【0075】
また、これとともに、感圧部材3が、衝撃に応じて、変形する。より具体的には、プラスチックシート31が、外装材付ロボット10に対して外部から与えられる衝撃に応じて、変形する。そして、プラスチックシート31の変形に応じて、ケーブル状感圧センサ32が変形する。
【0076】
そして、ケーブル状感圧センサ32が変形すると、圧電素子が電位差を生じさせる。電位差は、衝撃検知システム(図示せず)によって検知される。衝撃検知システム(図示せず)が、上記の衝撃を検知すると、ロボット本体11を緊急停止および/または緊急移動させる電気信号を、ロボット本体11に発信する。ロボット本体11は、電気信号を受信し、緊急停止および/または緊急移動する。
【0077】
3.作用効果
【0078】
上記のロボット外装部材1および外装材付ロボット10は、低コスト性と、優れた感圧性とを兼ね備える。
【0079】
すなわち、上記のロボット外装部材において、ケーブル状感圧センサ32は、プラスチックシート31に固定されている。そして、プラスチックシート31は、緩衝フォーム2の表面に配置されている。このような場合、プラスチックシート31が、緩衝フォーム2の変形に伴って、容易に変形する。そして、ケーブル状感圧センサ32が、プラスチックシート31に追従して、圧力を検知する。そのため、ケーブル状感圧センサ32は、比較的少ない量で、優れた感圧性を発現する。そのため、ロボット外装部材1は、低コスト性と、優れた感圧性とを兼ね備える。
【0080】
また、ロボット外装部材1において、ケーブル状感圧センサ32が、上記の特定形状(
図2A~
図2C参照)をなすように配置されていれば、ケーブル状感圧センサ32は、より少ない量で、優れた感圧性を発現する。そのため、ロボット外装部材1は、低コスト性と、優れた感圧性とを兼ね備える。
【0081】
さらに、ロボット外装部材1において、ケーブル状感圧センサ32が、上記の特定の密度で配置されていれば、ケーブル状感圧センサ32は、より少ない量で、優れた感圧性を発現する。そのため、ロボット外装部材1は、低コスト性と、優れた感圧性とを兼ね備える。
【0082】
また、上記の外装材付ロボット10は、上記のロボット外装部材1を備えている。そのため、外装材付ロボット10は、低コスト性と、優れた感圧性とを兼ね備える。
【0083】
さらに、上記の外装材付ロボット10において、好ましくは、1つのケーブル状感圧センサ32が、第1骨部13および第2骨部14の両方にわたって、配置される。換言すると、1つ(単数)のケーブル状感圧センサ32が、第1関節部16を跨ぐように、配置される。このような場合、ケーブル状感圧センサ32は、より少ない量で、広範囲において、感圧性を発現できる。そのため、外装材付ロボット10は、低コスト性と、優れた感圧性とを兼ね備える。
【実施例0084】
次に、本発明を、製造例、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0085】
1.ロボット外装部材および外装材付ロボット
実施例1
プラスチックシートとしてのポリスチレン板、厚み400μm(市販品、商品名PLA PLATE、タミヤ社製)を、準備した。
【0086】
プラスチックシートの表面に、ケーブル状感圧センサ(市販品、商品名PIEZORA(登録商標)、直径0.4mm、三井化学製)を、粘着テープにより貼り付けた。なお、サーペンタイン状が描かれるように、ケーブル状感圧センサを配置した。これにより、感圧部材を得た。
【0087】
一方、緩衝フォームとして、
図1に示す形状のポリウレタンフォーム(市販品)を、準備した。
【0088】
緩衝フォームの内面に、プラスチックシートの外側(ケーブル状感圧センサが固定されている側)を、粘着テープにより貼り付けた。これにより、ロボット外装部材を得た。
【0089】
また、ロボット外装部材を、ロボット本体に装着した。これにより、外装材付ロボットを得た。
【0090】
比較例1
緩衝フォームとして、
図1に示す形状のポリウレタンフォーム(市販品)を、準備した。
【0091】
緩衝フォームの内面に、ケーブル状感圧センサ(市販品、商品名PIEZORA(登録商標)、三井化学製)を、直接、粘着テープにより貼り付けた。なお、サーペンタイン状が描かれるように、ケーブル状感圧センサを配置した。これにより、ロボット外装部材を得た。
【0092】
また、ロボット外装部材を、ロボット本体に装着した。これにより、外装材付ロボットを得た。
【0093】
評価
外装材付ロボットを、衝撃検知システムに接続した。そして、ケーブル状感圧センサの電圧値を監視しながら、ロボット外装部材に、錘(2kg)を衝突させた。そして、衝突から、衝撃検知システムにより衝撃検出信号(緊急停止信号)が発信させるまでの時間を、測定した。これにより、感圧性(即応答性)を評価した。その結果を、
図3に示す。
【0094】
2.ケーブル状感圧センサの配置密度
実施例2~4
プラスチックシートを、円筒形状(直径10cm、高さ12cm、表面積377cm2)に成形した。スパイラル状が描かれるように、プラスチックシートにケーブル状感圧センサを均一に巻き付けて、固定した。上記以外は、実施例1と同じ方法で、ロボット外装部材および外装材付ロボットを得た。
【0095】
ただし、実施例2では、長さ2000mmのケーブル状感圧センサを、表面積377cm2のプラスチックシートに巻き付けた。つまり、実施例2において、ケーブル状感圧センサの配置密度は、5.31mm/cm2であった。
【0096】
また、実施例3では、長さ1000mmのケーブル状感圧センサを、表面積377cm2のプラスチックシートに巻き付けた。つまり、実施例2において、ケーブル状感圧センサの配置密度は、2.65mm/cm2であった。
【0097】
また、実施例4では、長さ500mmのケーブル状感圧センサを、表面積377cm2のプラスチックシートに巻き付けた。つまり、実施例2において、ケーブル状感圧センサの配置密度は、1.33mm/cm2であった。
【0098】
図4に、実施例2~4におけるケーブル状感圧センサの巻き付け状態を示す。
【0099】
評価
外装材付ロボットを、衝撃検知システムに接続した。そして、ケーブル状感圧センサの電圧値を監視しながら、ロボット外装部材の6箇所(衝突A~F)に、錘(2kg)を衝突させた。なお、
図4に、錘の衝突位置(衝突A~F)を併せて示す。
【0100】
そして、衝突から、衝撃検知システムにより衝撃検出信号(緊急停止信号)が発信させるまでの時間を、測定した。また、衝突から衝撃検出信号(緊急停止信号)が発信させるまでの時間に応じて、以下の通り評価した。その結果を、表1に示す。
【0101】
○;衝突から緊急停止信号の発信までの時間が0.5秒以下。
△;衝突から緊急停止信号の発信までの時間が0.5秒を超過1.0秒以下。
×;衝突から緊急停止信号の発信までの時間が1.0秒を超過。
【0102】