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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055338
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】内視鏡及び内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20240411BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
A61B1/00 680
G02B23/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162174
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】須田 忠明
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040DA02
2H040DA21
2H040GA02
2H040GA10
2H040GA11
2H040GA12
4C161CC06
4C161JJ19
4C161LL02
4C161NN03
4C161UU09
(57)【要約】
【課題】入力受け部が操作入力を受けたことを示す信号が伝送される際に、当該信号から撮像信号が受ける影響を抑え、画像ノイズが発生することを抑える。
【解決手段】実施形態の内視鏡は、撮像信号伝送用ケーブルと、入力受け部と、被操作信号伝送用ケーブルと、タイミング制御部とを備える。入力受け部は、撮像信号伝送用ケーブルに対して撮像素子と同じ側に設けられ、操作入力を受けることにより被入力信号を出力する。被操作信号伝送用ケーブルは、入力受け部が操作入力を受けたことを示す被操作信号を伝送し、撮像信号伝送用ケーブルと一体化された複合ケーブルをなす。タイミング制御部は、撮像信号伝送用ケーブルに対して撮像素子と同じ側に設けられ、同期信号及び被入力信号が入力し、被入力信号が入力することにより、同期信号が入力するタイミングに応じて被操作信号を出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像し、撮像信号を出力するよう構成された撮像素子と、
前記撮像素子に所定のタイミングで繰り返し撮像を行わせるための同期信号を出力し、前記撮像素子から順次出力される前記撮像信号を処理するよう構成された信号処理部と、
前記撮像素子から出力された前記撮像信号を前記信号処理部に向けて伝送するよう構成された撮像信号伝送用ケーブルと、
前記撮像信号伝送用ケーブルに対して前記撮像素子と同じ側に設けられ、外部からの操作入力を受けることにより被入力信号を出力するよう構成された入力受け部と、
前記入力受け部が前記操作入力を受けたことを示す被操作信号を伝送するよう構成され、前記撮像信号伝送用ケーブルと一体化された複合ケーブルをなす被操作信号伝送用ケーブルと、
前記撮像信号伝送用ケーブルに対して前記撮像素子と同じ側に設けられ、前記信号処理部から出力された前記同期信号、及び、前記入力受け部から出力された前記被入力信号が入力するよう構成され、前記被入力信号が入力することにより、前記同期信号が入力するタイミングに応じて前記被操作信号を出力するよう構成されたタイミング制御部と、を備えることを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記タイミング制御部は、前記同期信号が前記タイミング制御部に入力する期間に前記被操作信号を出力する、請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記タイミング制御部は、前記タイミング制御部への前記被入力信号の入力がなくなったことにより、前記タイミングに応じて、前記被操作信号の出力を停止する、請求項1又は2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記複合ケーブルと接続され、前記撮像素子、前記入力受け部、及び前記タイミング制御部が設けられた操作部と、
前記操作部に接続された硬性管であって、前記硬性管の先端部から前記撮像素子に向けて被写体の像を伝送するよう構成された硬性管と、をさらに備える、請求項1又は2に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記入力受け部を第1入力受け部、前記被入力信号を第1被入力信号、前記被操作信号を第1被操作信号、前記被操作信号伝送用ケーブルを第1被操作信号伝送用ケーブル、前記タイミング制御部を第1タイミング制御部というとき、
外部からの操作入力を受けることにより第2被入力信号を出力するよう構成された少なくとも1つの第2入力受け部と、
前記第2入力受け部が当該操作入力を受けたことを示す第2被操作信号を伝送するよう構成され、前記撮像信号伝送用ケーブル及び前記第1被操作信号伝送用ケーブルとともに前記複合ケーブルをなす少なくとも1つの第2被操作信号伝送用ケーブルと、
前記撮像信号伝送用ケーブルに対して前記撮像素子と同じ側に設けられ、前記信号処理部から出力された前記同期信号、及び、前記第2入力受け部から出力された前記第2被入力信号が入力するよう構成され、前記第2被入力信号が入力することにより、前記同期信号が入力するタイミングに応じて前記第2被操作信号を出力するよう構成された少なくとも1つの第2タイミング制御部と、をさらに備える、請求項1又は2に記載の内視鏡。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の内視鏡と、
前記内視鏡と接続される内視鏡用プロセッサと、を備えることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項7】
前記内視鏡用プロセッサと接続される表示装置をさらに備え、
前記内視鏡用プロセッサは、前記内視鏡から出力される撮像信号を処理し、表示用画像を生成するよう構成され、
前記内視鏡の入力受け部の1つは、動画として前記表示装置に表示された前記表示用画像の1つを静止画として前記表示装置に表示させること、あるいは、前記内視鏡用プロセッサ内に取り込むことを指示する操作入力を受けるよう構成されている、請求項6に記載の内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルを用いて信号を伝送する内視鏡及び内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡は、被写体を撮像して撮像信号を出力する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、プロセッサと接続される電子内視鏡のコネクタに設けられたドライバ信号処理回路から出力される駆動信号により、所定のフレームレートで撮像を行うよう駆動され、撮像信号を順次、ドライバ信号処理回路に向け出力する。ドライバ信号処理回路で処理された撮像信号は、プロセッサ、さらにはモニタへと伝送される。
【0003】
電子内視鏡は、一般に、動画としてモニタに表示される画像の1つを静止画として表示させることや、プロセッサ内に画像ファイルとして取り込むことを指示するために操作されるリモートボタンを備えている。リモートボタンは、押下されることでパルス信号を出力し、出力されたパルス信号は、プロセッサに伝送される。
【0004】
このような電子内視鏡は、ドライバ信号処理回路から出力される駆動信号や、撮像素子から出力される撮像信号、リモートボタンから出力されるパルス信号のそれぞれを伝送する複数のケーブルを備えている(特許文献1)。従来、これらの複数のケーブルが一体化され、1本の多芯ケーブルとされた電子内視鏡がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2000-19425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リモートボタンからのパルス信号は、使用者がボタンを押下した時点で信号レベルが変化し、これを受信した電子内視鏡用プロセッサにおいてボタンが押下されたことが検出される。一方で、リモートボタンからのパルス信号は、撮像信号が伝送されるタイミングとは無関係に伝送される。このため、複数のケーブルが一体化されていると、ボタンが押下されるタイミングによっては、信号レベルの変化が撮像信号に付加され、モニタに表示されたときに画像ノイズとして認識されてしまう場合がある。このような画像ノイズは、例えば、表示された画像の一部の領域と他の領域との間で濃淡レベルの差があるように画像に表れる。
【0007】
そこで、本発明は、入力受け部が操作入力を受けたことを示す信号が伝送される際に、当該信号から撮像信号が受ける影響を抑え、画像ノイズが発生することを抑えることができる内視鏡及び内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の態様を包含する。
態様1
被写体を撮像し、撮像信号を出力するよう構成された撮像素子と、
前記撮像素子に所定のタイミングで繰り返し撮像を行わせるための同期信号を出力し、前記撮像素子から順次出力される前記撮像信号を処理するよう構成された信号処理部と、
前記撮像素子から出力された前記撮像信号を前記信号処理部に向けて伝送するよう構成された撮像信号伝送用ケーブルと、
前記撮像信号伝送用ケーブルに対して前記撮像素子と同じ側に設けられ、外部からの操作入力を受けることにより被入力信号を出力するよう構成された入力受け部と、
前記入力受け部が前記操作入力を受けたことを示す被操作信号を伝送するよう構成され、前記撮像信号伝送用ケーブルと一体化された複合ケーブルをなす被操作信号伝送用ケーブルと、
前記撮像信号伝送用ケーブルに対して前記撮像素子と同じ側に設けられ、前記信号処理部から出力された前記同期信号、及び、前記入力受け部から出力された前記被入力信号が入力するよう構成され、前記被入力信号が入力することにより、前記同期信号が入力するタイミングに応じて前記被操作信号を出力するよう構成されたタイミング制御部と、を備えることを特徴とする内視鏡。
【0009】
態様2
前記タイミング制御部は、前記同期信号が前記タイミング制御部に入力する期間に前記被操作信号を出力する、態様1に記載の内視鏡。
【0010】
態様3
前記タイミング制御部は、前記タイミング制御部への前記被入力信号の入力がなくなったことにより、前記タイミングに応じて、前記被操作信号の出力を停止する、態様1又は2に記載の内視鏡。
【0011】
態様4
前記複合ケーブルと接続され、前記撮像素子、前記入力受け部、及び前記タイミング制御部が設けられた操作部と、
前記操作部に接続された硬性管であって、前記硬性管の先端部から前記撮像素子に向けて被写体の像を伝送するよう構成された硬性管と、をさらに備える、態様1から3のいずれか1つに記載の内視鏡。
【0012】
態様5
前記入力受け部を第1入力受け部、前記被入力信号を第1被入力信号、前記被操作信号を第1被操作信号、前記被操作信号伝送用ケーブルを第1被操作信号伝送用ケーブル、前記タイミング制御部を第1タイミング制御部というとき、
外部からの操作入力を受けることにより第2被入力信号を出力するよう構成された少なくとも1つの第2入力受け部と、
前記第2入力受け部が当該操作入力を受けたことを示す第2被操作信号を伝送するよう構成され、前記撮像信号伝送用ケーブル及び前記第1被操作信号伝送用ケーブルとともに前記複合ケーブルをなす少なくとも1つの第2被操作信号伝送用ケーブルと、
前記撮像信号伝送用ケーブルに対して前記撮像素子と同じ側に設けられ、前記信号処理部から出力された前記同期信号、及び、前記第2入力受け部から出力された前記第2被入力信号が入力するよう構成され、前記第2被入力信号が入力することにより、前記同期信号が入力するタイミングに応じて前記第2被操作信号を出力するよう構成された少なくとも1つの第2タイミング制御部と、をさらに備える、態様1から4のいずれか1つに記載の内視鏡。
【0013】
態様6
態様1から5のいずれか1つに記載の内視鏡と、
前記内視鏡と接続される内視鏡用プロセッサと、を備えることを特徴とする内視鏡システム。
【0014】
態様7
前記内視鏡用プロセッサと接続される表示装置をさらに備え、
前記内視鏡用プロセッサは、前記内視鏡から出力される撮像信号を処理し、表示用画像を生成するよう構成され、
前記内視鏡の入力受け部の1つは、動画として前記表示装置に表示された前記表示用画像の1つを静止画として前記表示装置に表示させること、あるいは、前記内視鏡用プロセッサ内に取り込むことを指示する操作入力を受けるよう構成されている、態様6に記載の内視鏡システム。
【発明の効果】
【0015】
上述の内視鏡及び内視鏡システムによれば、入力受け部が操作入力を受けたことを示す信号が伝送される際に、当該信号から撮像信号が受ける影響を抑え、画像ノイズが発生することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態の内視鏡システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】内視鏡の構成をカメラヘッドに注目して示すブロック図である。
図3】タイミング制御部の構成を示す図である。
図4】内視鏡の動作の一例を説明するタイミングチャートである。
図5】画像ノイズが表れた静止画像を模式的に表す図である。
図6】内視鏡システムの動作のフローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、一実施形態の内視鏡システム1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示されるように、内視鏡システム1は、内視鏡100、内視鏡用プロセッサ(以下、単にプロセッサという)200、モニタ300を備えている。
【0018】
プロセッサ200は、システムコントローラ202、タイミングコントローラ206を備えている。システムコントローラ202は、メモリ204に記憶された各種プログラムを実行し、内視鏡システム1の全体を統括的に制御する。また、システムコントローラ202は、操作パネル208に入力される操作者(術者又は補助者)による指示に応じて内視鏡システム1の各種設定を変更する。システムコントローラ202は、後述するリモートボタンの操作に伴って内視鏡100から出力される入力信号(キャプチャ命令)を受けて、キャプチャ画像の表示あるいはファイル化を行うよう、後述する画像処理部220等の動作を制御する。キャプチャ画像は、好ましくは、モニタ300に動画として表示された表示用画像のうちの1フレームあるいは連続する複数フレームの画像を取り込んだ画像である。タイミングコントローラ206は、各部の動作のタイミングを調整するクロックパルスを内視鏡システム1内の各回路に出力する。
【0019】
プロセッサ200は、内視鏡100に照明光を供給する光源部230を備えている。光源部230は、図示されないが、例えば、ランプ電源から駆動電力の供給を受けることにより白色の照明光を放射する高輝度ランプ、例えば、キセノンランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ又はハロゲンランプを備える。高輝度ランプから出射した照明光は、図示されない集光レンズにより集光された後、図示されない調光装置を介して内視鏡100のLCB(Light Carrying Bundle)102の入射端に入射される。
あるいは、光源部230は、所定の色の波長帯域の光を出射する複数の発光ダイオードを備える。発光ダイオードから出射した光はダイクロイックミラー等の光学素子を用いて合成され、合成した光は照明光として、図示されない集光レンズにより集光された後、内視鏡100のLCB(Light Carrying Bundle)102の入射端に入射される。発光ダイオードに代えてレーザーダイオードを用いることもできる。
なお、図1に示す例では、LCB102の出射端は、内視鏡100の後述する硬性管110の先端部110aに配置され、入射端に入射した照明光は硬性管110の先端部110aまで伝播する。図1に示す例では、光源部230は、プロセッサ200に内蔵して設けられるが、プロセッサ200とは別体の装置として内視鏡システム1に設けられてもよい。また、光源部230は、後述する内視鏡100の先端部に設けられてもよい。この場合、照明光を導光するLCB102は不要である。
【0020】
図1に示す例の内視鏡100は、硬性管110を備える硬性内視鏡(硬性鏡)である。内視鏡100は、さらに、カメラヘッド(操作部)140、複合ケーブル130、コネクタ120を備える。
【0021】
硬性管110は、カメラヘッド140と接続される。硬性管110は、ステンレス、アルミニウム合金等の硬質材料からなり、体腔内に挿入される先端部110aと、カメラヘッド140と接続される、先端部110aと反対側の端部110bと、の間を直線状に延びる。図1に示す例の硬性管102は、LCB102の出射端を含む部分が配置され、LCB102の出射端は、硬性管110の先端部110a内に配置される。プロセッサ200内に配置された入射端よりLCB102内に入射した照明光は、LCB102内を伝播して先端部110a内に配置されたLCB102の出射端より射出され、配光レンズ104を介して被写体である器官内部の生体組織に照射される。生体組織からの反射光は、図示されない対物レンズ及び硬性管110内を通って撮像素子108の受光面上で光学像を結ぶ。このようにして、硬性管110は、先端部110aから撮像素子108に向けて被写体の像を伝送する。
【0022】
カメラヘッド140は、複合ケーブル130と接続される。カメラヘッド140は、撮像素子108、リモートボタン(入力受け部)142a、142b、タイミング制御部160a、160b(図2参照)と、を備える。リモートボタン142a、142b及びタイミング制御部160a、160bは、このように、複合ケーブル130に対して撮像素子108と同じ側に配置されている。図2は、内視鏡100の構成をカメラヘッド140に注目して示すブロック図である。図2では、説明を簡素化するため、リモートボタン142a、142bのうちの一方を示し、タイミング制御部160a、160bのうちの一方を示す。また、図2では、後述する被操作信号伝送用ケーブル132、133のうちの一方を示す。
【0023】
撮像素子108は、例えば、IR(Infrared)カットフィルタ108a、ベイヤ配列カラーフィルタ108bの各種フィルタが受光面に配置された単板式カラーCCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサであり、受光面上で結像した光学像に応じたR(Red)、G(Green)、B(Blue)の各原色信号を生成する。単板式カラーCCDイメージセンサの代わりに、単板式カラーCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを用いることもできる。
【0024】
リモートボタン142a、142bは、それぞれに割り当てられた機能を、ボタンを押下されることにより遠隔操作で発揮させるボタンである。例えば、リモートボタン142aは、押下されることにより、動画としてモニタ300に表示される画像の1つを静止画として表示させることを指示するパルス信号(被入力信号)を出力する。リモートボタン142bは、押下されることにより、動画としてモニタ300に表示される画像の1つを、プロセッサ200内に画像ファイルとして取り込むことを指示するパルス信号(被入力信号)を出力する。取り込まれた画像ファイルは、プロセッサ200内の図示されないメモリ、あるいは、プロセッサ200に外付けで接続される図示されない記憶装置に記録保持される。また、リモートボタン142a、142bは、押下された状態から元の状態に復帰する(押下解除される)ことにより、パルス信号(被入力信号)の出力を停止する。リモートボタン142a、142bから出力されたパルス信号(被入力信号)は、タイミング制御部160a、160bに出力される。
【0025】
タイミング制御部160a、160bは、リモートボタン142a、142bそれぞれと対応して、図示される例では、2つ設けられている。タイミング制御部160a、160bについては後述する。
【0026】
複合ケーブル130は、複数のケーブルが一体化された多芯ケーブルである。複数のケーブルには、駆動信号伝送用ケーブル134、撮像信号伝送用ケーブル131、被操作信号伝送用ケーブル132、133が含まれる。駆動信号伝送用ケーブル134は、後述するドライバ信号処理回路112から撮像素子108に向けて駆動信号を伝送するためのケーブルである。駆動信号には水平同期信号及び垂直同期信号が含まれ、このうち垂直同期信号は、タイミング制御部160a、160bにも伝送される。撮像信号伝送用ケーブル131は、撮像素子108から出力された撮像信号を、ドライバ信号処理回路112に向けて伝送するためのケーブルである。被操作信号伝送用ケーブル132は、タイミング制御部160aから出力された後述するリモートパルス信号(被操作信号)を、コネクタ120内の後述するドライバ基板112Aに向けて伝送するためのケーブルである。被操作信号伝送用ケーブル133は、タイミング制御部160bから出力されたリモートパルス信号(被操作信号)を、ドライバ基板112Aに向けて伝送するためのケーブルである。撮像信号伝送用ケーブル131及び被操作信号伝送用ケーブル132、133は、使い勝手を良くするため、複合ケーブル130として一体化されていることが好ましい。
【0027】
コネクタ120は、内視鏡100の、プロセッサ200と接続される部分である。コネクタ120の内部には、ドライバ基板112A(図2参照)が配置され、ドライバ基板112Aには、ドライバ信号処理回路(信号処理部)112と、メモリ114と、MPUからなるマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)116とが設けられている。ドライバ信号処理回路112は、撮像素子108より入力される原色信号に対して色補間、マトリックス演算等の所定の信号処理を施して画像信号(輝度信号Y、色差信号Cb、Cr)を生成し、生成された画像信号を順次、マイコン116を介してプロセッサ200の画像処理部220に出力する。マイコン116は、ドライバ信号処理回路112から出力される動画像の画像信号(映像信号)をプロセッサ200に送信する間に、タイミング制御部160a、160bからリモートパルス信号(被操作信号)を受信すると、マイコン116が割り込み要求を受け付けられる状態の場合に、割り込み要求が受け付けられる(割り込み処理がかかる)。割り込み処理がかかると、マイコン116は、リモートボタン142a、142bが押下されたときの処理として予め設定された処理を行う。具体的には、システムコントローラ202に、リモートパルス信号(被操作信号)をキャプチャ命令として送信する。割り込み処理がかかっている間に、リモートパルス信号(被操作信号)を受信しない期間が所定期間継続すると、割り込み処理は解除される。また、マイコン116は、メモリ114にアクセスして内視鏡100の固有情報を読み出す。メモリ114に記録される内視鏡100の固有情報には、例えば内視鏡100の種別、撮像素子108の画素数や感度、動作可能なフレームレート、型番等の情報が含まれる。マイコン116は、メモリ114より読み出された固有情報をシステムコントローラ202に出力する。
【0028】
システムコントローラ202は、内視鏡100の固有情報に基づいて各種演算を行い、制御信号を生成する。システムコントローラ202は、生成された制御信号を用いて、プロセッサ200に接続中の内視鏡100に適した処理がなされるようにプロセッサ200内の各回路の動作やタイミングを制御する。システムコントローラ202は、リモートパルス信号(被操作信号)を受信すると、リモートボタン142a、142bが押下されたときの処理として、リモートパルス信号(被操作信号)受信時のフレームの次のフレームの映像信号をモニタ300に出力するように画像処理部220を制御し、動画に切り替えて静止画像を表示させる。リモートパルス信号(被操作信号)受信時のフレームの信号にはノイズが付加されている可能性があるため、静止画像に用いられない。
【0029】
タイミングコントローラ206は、システムコントローラ202によるタイミング制御に従って、ドライバ信号処理回路112、画像処理部220、及び光源部230にクロックパルスを供給する。ドライバ信号処理回路112は、タイミングコントローラ206からマイコン116を介して供給されるクロックパルスに従って、同期信号を含む駆動信号を生成し、出力することにより、撮像素子108をプロセッサ200側で処理される映像のフレームレートに同期したタイミングで駆動制御する。これにより、撮像素子108は、繰り返し撮像を行う。
【0030】
画像処理部220は、操作者の指示に従って、あるいは予め設定された処理内容に従って撮像素子108で撮像した撮像画像を画像処理することができる部分であり、画像処理の実質的な演算は、システムコントローラ202で行われる。画像処理は、ドライバ信号処理回路112で行う処理以外の画像処理であり、例えば、色補正、マトリックス演算、階調処理、ホワイトバランス補正等を含む。さらに、画像処理部220は、画像処理の一部として、撮像された生体組織の画像を処理し、モニタ300に表示するためのビデオ信号を生成し、モニタ300に動画を表示させる。すなわち、モニタ300は、画像処理部220で撮像画像(映像信号)を画像処理した処理画像を動画として表示するように構成される。
【0031】
本実施形態において、タイミング制御部160a、160bは、ドライバ信号処理回路112から出力された垂直同期信号、及び、リモートボタン142a、142bから出力されたパルス信号(被入力信号)が入力し、パルス信号(被操作信号)が入力することにより、垂直同期信号が入力するタイミングに応じてリモートパルス信号(被操作信号)を出力するよう構成されている。図3に、代表してタイミング制御部160aの構成を示すが、タイミング制御部160bも、タイミング制御部160aと同様に構成される。タイミング制御部160aと異なるタイミング制御部160bの構成を、図2及び図3において括弧書きで示す。図3に示すように、タイミング制御部160aは、ORゲート161を有している。ORゲート161には、被操作信号伝送用ケーブル132、駆動信号伝送用ケーブル134、及び、リモートボタン142aの信号線135が接続されている。信号線135は、リモートボタン142aの押下に伴ってORゲート161に入力されるパルス信号(被入力信号)が伝達される配線である。信号線135は、ドライバ基板112Aから電力の供給を受ける電源165と接続されたプルアップ抵抗163と接続されている。リモートボタン142aのもう1本の信号線136は、カメラヘッド140のフレームグランド167と接続している。そのため、リモートボタン142aが押下されていない状態では、ORゲート161に高い信号電圧Hが入力され、リモートボタン142aが押下された状態では、ORゲート161に低い信号電圧L(0V)が入力される。
【0032】
図4に、内視鏡100の動作の一例を説明するタイミングチャートを示す。図4は、ORゲート161に入力される、垂直同期信号、映像信号、リモートパルス信号(被操作信号)、パルス信号(被入力信号)の信号レベルの変化を表している。図4に示すように、タイミング制御部160aは、垂直同期信号がタイミング制御部160aに入力する期間にリモートパルス信号(被操作信号)を出力することが好ましい。ORゲート161は、垂直同期信号及びパルス信号(被入力信号)のどちらか一方が入力しない(信号電圧Hが入力する)とき、リモートパルス信号(被操作信号)を出力しない(信号電圧Hを出力する)。言い換えると、ORゲート161は、垂直同期信号及びパルス信号(被入力信号)の両方が入力している(信号電圧Lが入力する)ときのみ、リモートパルス信号(被操作信号)を出力する(信号電圧Lを出力する)。このようにして、撮像素子108からの撮像信号(映像信号)が伝送されないタイミングでのみ、リモートパルス信号(被操作信号)を出力し、それ以外のタイミングでは、リモートボタン142a、142bが押下されても(図4においてOffからOnになっても)信号レベルを変化させないようにすることができ、伝送される映像信号に、リモートパルス信号(被操作信号)の信号レベルの変化が付加されることを回避できる。これにより、撮像信号伝送用ケーブル131と被操作信号伝送用ケーブル132、133が一体化され、互いに接近して配置されていても、リモートパルス信号(被操作信号)から映像信号が受ける影響は殆どなく、モニタ300に表示された画像において画像ノイズとして認識され難くなり、実用上の問題はなくなる。本実施形態では、従来、映像信号が伝送されるタイミングと無関係に伝送されていたリモートパルス信号(被操作信号)を、映像信号と同期させて伝送させている。
【0033】
これに対し、タイミング制御部160a、160bを備えず、リモートボタンがマイコンに直接接続された内視鏡では、リモートボタンは撮像信号から出力される映像信号が伝送されるタイミングとは無関係に押下されるので、複数のケーブルが一体化され、互いに接近して配置されていると、リモートボタンが押下されるタイミングによっては、リモートボタンの押下により出力されるリモートパルス信号(被操作信号)のレベルの変化が撮像信号に付加され、モニタに表示されたときに画像ノイズとして認識されてしまう場合がある。撮像素子108からの出力信号の電圧レベルは微小であるため、リモートパルス信号(被操作信号)の付加による微小な電圧変化でも、人の目には画像上のノイズとして認識されてしまう場合がある。ここで、図5に、画像ノイズが表れた、モニタの表示画像の一例を模式的に表す。図5の左右方向は水平同期信号と同期する方向であり、上下方向は垂直同期信号と同期する方向である。画像ノイズは、例えば、表示された画像の一部の領域と他の領域との間で濃淡レベルの差があるように画像に表れる。図5に示す例では、リモートボタンを押下後に伝送された映像信号の部分の画像領域(図5中、濃い領域)が、リモートボタン押下前に伝送された映像信号の部分の画像領域(図5中、淡い領域)と比べ濃く表れ、静止画像に境目があるかのように認識されうる。モニタに動画が表示されている間は、表示画像は次々に更新されるように表示されるので、このような画像ノイズは認識され難いが、キャプチャ命令を受けて静止画像として表示されると、このような画像ノイズは認識され易い。
【0034】
本実施形態において、リモートボタン142a、142bは、上述したように、同じカメラヘッド140内のタイミング制御部160a、160bと接続されているので、リモートボタン142a、142bの、信号線135と異なる側の信号線136を、カメラヘッド140のフレームグランド167と接続することができる。そのため、リモートボタン142a、142bの信号線を、同軸ケーブルにする必要がなく、コスト低減に寄与する。また、被操作信号伝送用ケーブル132、133の心線をそれぞれ対にする必要がなく、ケーブルを細くすることができるので、複合ケーブル130、及び複合ケーブル130と接続するカメラヘッド140及びコネクタ120の設計の自由度が増す。このような効果は、特に、リモートボタンが複数ある上述した内視鏡100において大きくなる。一方、タイミング制御部160a、160bを備えず、リモートボタンがマイコンに直接接続された内視鏡では、リモートボタンの信号線は、マイコンと、ドライバ基板のシグナルグランドとに接続されるので、同軸ケーブルにする必要がある。また、信号線を対にする必要があるため、ケーブルを細くすることができない。
【0035】
タイミング制御部160a,160bは、タイミング制御部160a,160bへのパルス信号(被入力信号)の入力がなくなったことにより、垂直同期信号が入力するタイミングに応じて、リモートパルス信号(被操作信号)の出力を停止することが好ましい。この場合、タイミング制御部160a、160bは、垂直同期信号がタイミング制御部160a、160bに入力する期間にリモートパルス信号(被操作信号)の出力を停止することが好ましい。上述したように、ORゲート161は、垂直同期信号及びパルス信号(被入力信号)の両方が入力している(信号電圧Lが入力する)ときのみ、リモートパルス信号(被操作信号)を出力する(信号電圧Lを出力する)ので、リモートボタン142a、142bが押下された状態である間、ORゲート161は、垂直同期信号が入力する期間のみ、リモートパルス信号(被操作信号)を出力する。リモートパルス信号(被操作信号)を受信したマイコン116は、リモートボタン142a、142bが押下されていると認識し、割り込み処理中に行う上述の動作を継続する。このとき、リモートボタン142a、142bが押下解除されると、ORゲート161に垂直同期信号が入力しても、リモートパルス信号(被操作信号)は出力されなくなる。すなわち、ORゲート161は、リモートパルス信号(被操作信号)の出力を停止する。マイコン116は、所定期間、リモートパルス信号(被操作信号)の入力がなかったとき、リモートボタン142a、142bが押下解除されたと認識し、割り込み処理は解除される。
【0036】
図6に、被写体の撮像(観察)に伴い動画を表示する内視鏡システム1の動作のフローの一例を示す。ここでは、リモートボタン142aの押下によりキャプチャ命令が送信される場合を例に説明する。
マイコン116は、動画像の生成を指示するシステムコントローラ202からの信号出力を受信すると、メモリ114から読み出した各種パラメータの情報に基づいて、ドライバ信号処理回路112に信号を出力し、初期設定が行われる(ステップS1)。その後、通常動作として、撮像素子108により繰り返し撮像が行われ、ドライバ信号処理回路112において信号処理された撮像信号(映像信号)は、マイコン116を介してプロセッサ200に送信され、画像処理された後、モニタ300に動画が表示される(ステップS2)。
【0037】
動画表示中に、リモートボタン142aが押下されると、タイミング制御部160aに垂直同期信号が入力されるタイミングに応じて、リモートパルス信号(被操作信号)が出力される。これを受信したマイコン116には、割り込み処理がかかり(ステップS3のYes)、リモートボタン142aの押下時の処理が行われる(ステップS4)。具体的には、マイコン166からシステムコントローラ202にキャプチャ命令が送信され、モニタ300には、キャプチャ命令受信時のフレームの次のフレームの映像信号の画像が、動画に代えて静止画像として表示される。その後、リモートボタン142aが押下解除され、タイミング制御部160aからのリモートパルス信号(被操作信号)の出力が停止されると、マイコン116における割り込み処理は解除される(ステップS5)。ステップS2からステップS5までの動作は、観察終了(ステップS6のYes)までの間、繰り返される。
【0038】
以上、本発明の内視鏡及び内視鏡システムについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【0039】
内視鏡100が備えるリモートボタンの数は、2個に制限されるものでなく、1個、3個、4個以上であってもよい。また、内視鏡100が備える被操作信号伝送用ケーブル及びタイミング制御部の数は、2個に制限されるものでなく、内視鏡100が備えるリモートボタンの数に応じて、1個、3個、4個以上であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 内視鏡システム
100 内視鏡
102 LCB
104 配向レンズ
108 撮像素子
108a カットフィルタ
108b ベイヤ配列カラーフィルタ
110 硬性管
110a 先端部
110b 端部
112 ドライバ信号処理回路
112A ドライバ基板
114 メモリ
116 マイコン
120 コネクタ
130 複合ケーブル
131 撮像信号伝送用ケーブル
132、133 被操作信号伝送用ケーブル
134 駆動信号伝送用ケーブル
135、136 信号線
140 カメラヘッド(操作部)
142a、142b リモートボタン(入力受け部)
160a、160b タイミング制御部
161 ORゲート
163 プルアップ抵抗
165 電源
167 フレームグランド
200 プロセッサ
202 システムコントローラ
204 メモリ
206 タイミングコントローラ
208 操作パネル
220 画像処理部
230 光源装置
300 モニタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6