(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005534
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】エンドミル
(51)【国際特許分類】
B23C 5/10 20060101AFI20240110BHJP
B23C 9/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B23C5/10 Z
B23C5/10 B
B23C9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105747
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000152527
【氏名又は名称】日進工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(72)【発明者】
【氏名】後藤 隆司
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022KK02
3C022KK06
3C022KK16
3C022KK28
3C022QQ03
(57)【要約】
【課題】折損を抑制できるエンドミルを提供できる。
【解決手段】エンドミル1は、回転軸Pに沿って延びるシャンク10と、シャンク10の先端に設けられる首下長部20と、を備えている。そして、首下長部20は、先端切刃21Bを形成する先端部21と、先端切刃21Bのねじれ方向とは逆方向にねじれる螺旋状の螺旋エッジ22と、を有する。首下長部20は、螺旋エッジ22を頂点とする多角形の断面を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に沿って延びるシャンクと、前記シャンクの先端に設けられる首下長部と、を備え、
前記首下長部は、先端切刃を形成する先端部と、前記先端切刃のねじれ方向とは逆方向にねじれる螺旋状の螺旋エッジと、を有し、
前記首下長部は、前記螺旋エッジを頂点とする多角形の断面を有する
エンドミル。
【請求項2】
前記首下長部は、5角形以上の多角形状の断面を有する
請求項1に記載のエンドミル。
【請求項3】
前記螺旋エッジのねじれ角は、5度以上45度以下の範囲である
請求項1または2に記載のエンドミル。
【請求項4】
前記螺旋エッジのねじれ角は、前記首下長部の先端から後端にかけて漸次大きくなる
請求項3に記載のエンドミル。
【請求項5】
前記首下長部の長さである有効長と前記先端切刃の最大直径との比は、3以上である
請求項1または2に記載のエンドミル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャンクおよび首下長部を備えるエンドミルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、深彫りを行う際に有用な、シャンクと、先端に切刃を有する首下長部と、を有するエンドミルがあった(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
比較的長い首下長部を有するエンドミルで被加工物を切削する場合、回転軸と交差する横方向から被加工物に押されて、首下長部が折損する不具合が発生することがあった。そのため、被加工物を、比較的長い首下長部を有するエンドミルで切削することには改善の余地があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、折損を抑制できるエンドミルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決する手段は、次のとおりである。
(1)本発明の一態様に係るエンドミルは、回転軸に沿って延びるシャンクと、前記シャンクの先端に設けられる首下長部と、を備え、前記首下長部は、先端切刃を形成する先端部と、前記先端切刃のねじれ方向とは逆方向にねじれる螺旋状の螺旋エッジと、を有し、前記首下長部は、前記螺旋エッジを頂点とする多角形の断面を有する。
(2)上記(1)において、前記首下長部は、5角形以上の多角形状の断面を有してよい。
(3)上記(1)または(2)において、前記螺旋エッジのねじれ角は、5度以上45度以下の範囲であってよい。
(4)上記(3)において、前記螺旋エッジのねじれ角は、前記首下長部の先端から後端にかけて漸次大きくなってよい。
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つにおいて、前記首下長部の長さである有効長と前記先端切刃の最大直径との比は、3以上であってよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、折損を抑制できるエンドミルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るエンドミルを説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
以下、図面を参照し、実施形態に係るエンドミル1を説明する。
図1は、実施形態に係るエンドミル1を説明する側面図である。
図2は、
図1におけるA矢視断面図である。
なお、以下、エンドミル1において、回転軸Pに沿って先端切刃21Bのある先端側を先方といい、その反対側である被チャック部11のある基端側を後方という場合がある。
【0010】
図1に示すように、実施形態に係るエンドミル1は、いわゆる、ロングネックエンドミルとも呼ばれるものである。エンドミル1は、回転して被加工物を切削するものである。エンドミル1は、特に、比較的長い首下長部20を有しているので、深彫に有用である。エンドミル1は、比較的長い首下長部20を有しているので、被加工物の表面から離れた深い位置まで先端切刃21Bを到達させることができ、その位置で被加工物を精度良く切削できる。
【0011】
エンドミル1は、例えば、超硬合金で形成されている。エンドミル1は、例えば、焼入れ鋼等を被加工物とする切削加工に用いることができる。
【0012】
詳細には、
図1に示すように、エンドミル1は、回転軸Pに沿って延びるシャンク10と、シャンク10の先端に設けられる首下長部20と、を備えている。そして、首下長部20は、先端切刃21Bを形成する先端部21と、先端切刃21Bのねじれ方向とは逆方向にねじれる螺旋状の螺旋エッジ22と、を有している。なお、例えば、回転軸Pを中心とするエンドミル1の回転方向Rが正回転(右ねじを締める方向、後方から先方を見て時計回りの方向)である場合、先端切刃21Bのねじれ方向は、正回転方向(右ねじ方向)であり、螺旋エッジ22のねじれ方向は、逆回転方向(左ねじ方向)である。また、回転軸Pを中心とするエンドミル1の回転方向Rが逆回転(右ねじを緩める方向、後方から先方を見て反時計回りの方向)である場合、先端切刃21Bのねじれ方向は、逆回転方向であり、螺旋エッジ22のねじれ方向は、正回転方向である。
このように、首下長部20は、先端切刃21Bを形成する先端部21と、先端切刃21Bのねじれ方向とは逆方向にねじれる螺旋状の螺旋エッジ22と、を有している。言い換えると、首下長部20は、エンドミル1の回転方向Rへの回転によって捩じられる方向とは逆方向にあらかじめ捩じられている。これにより、切削時(回転時)において、首下長部20がたわんで首下長部20の後部が被加工物に接触した際に、切刃のように作用する螺旋エッジ22が被加工物を切削するので、回転軸Pと交差する横方向から被加工物に押されて首下長部20が受ける反力を低減でき、エンドミル1に過剰な負荷が作用することによるエンドミル1の折損を抑制できる。
【0013】
シャンク10は、回転軸Pに沿って延びる円柱状の被チャック部11と、テーパ部12を有している。
被チャック部11は、適宜、チャック(不図示)を介して、工作機械の回転部(不図示)に取り付けられる。
テーパ部12は、被チャック部11から首下長部20に向けて先細りとなるような円錐形状を有している。テーパ部12の後端は、被チャック部11の先端と連続している。テーパ部12の後端における外径と、被チャック部11の先端における外径は、同じである。テーパ部12の先端は、首下長部20の後端と連続しており、テーパ部12の先端における外径と、首下長部20の後端における外径は、同じである。
【0014】
首下長部20は、先端部21に形成される先端切刃21Bと、先端切刃21Bのねじれ方向の逆方向にねじれる螺旋状の螺旋エッジ22と、を有している。螺旋エッジ22がねじれることで、螺旋エッジ22が切刃として作用し、かつ、螺旋エッジ22と被加工物との接触領域を小さくすることができる。さらに、螺旋エッジ22が、先端切刃21Bのねじれ方向の逆方向にねじれることで、切削加工時にエンドミル1を被加工物側に押さえつける力が生じるため、振動の発生が抑制される。
【0015】
首下長部20は、螺旋エッジ22を頂点とする多角形の断面を有している。これにより、首下長部20の切削性向上の効果を発揮させることができる。
【0016】
首下長部20は、5角形以上の多角形状の断面を有している(なお図示の例では、首下長部20の断面は、正12角形である)。これにより、首下長部20の切削性向上の効果を確実に発揮させることができる。
なお、首下長部20は、先方から後方に向けて徐々に拡径するテーパー形状であってもよい。
【0017】
先端部21は、先端又は外周に先端切刃21Bを有している。先端部21は、例えば、回転軌跡が球形状となるボールエンドミルであってよい。先端部21は、ボールエンドミルに限らず、例えば、スクエアエンドミル、ラジアスエンドミル等であってよい。
先端切刃21Bは、エンドミル1の回転方向Rが正回転である場合、正回転方向にねじれるように形成されている。なお、先端切刃21Bは、エンドミル1の回転方向Rが逆回転である場合、逆回転方向にねじれるように形成されている。
【0018】
前述したように、首下長部20は、螺旋エッジ22を頂点とする多角形の断面を有している。その結果、螺旋エッジ22は、
図1に示すように、多角形の頂点に対応して複数(例えば、12)配置されることとなる。
図2に示すように、螺旋エッジ22は、回転軸Pから離れる方向に鋭利に尖っている。これにより、螺旋エッジ22が切刃として作用して被加工物を切削できる。よって、例えば、切削時において、首下長部20が被加工物から横方向に押されても、螺旋エッジ22が被加工物の押された部分を切削すること等ができる。
【0019】
螺旋エッジ22のねじれ角θは、5度以上45度以下の範囲であることが好ましい。これにより、首下長部20の切削性向上の効果を発揮させることができる。なお、螺旋エッジ22のねじれ角θは、
図1に示すように、エンドミル1を側面から見たときにおける、回転軸Pと螺旋エッジ22との成す角度である。別の表現でいうと、螺旋エッジ22のねじれ角θは、螺旋エッジ22の螺旋形状を、螺旋形状が通る円周面から平面に展開したときに、回転軸Pと螺旋エッジ22との成す角度である。
【0020】
螺旋エッジ22のねじれ角θは、首下長部20の先端から後端にかけて漸次大きくてもよい。これにより、首下長部20の切削性向上の効果を発揮させることができる。また、不等リードの効果により、いわゆるびびり振動を抑制し易くすることができる。
【0021】
首下長部20の長さである有効長Lと先端切刃21Bの最大直径Dとの比(L/D)は、3以上であってよい。このように、比較的細長い首下長部20を有するエンドミル1の場合において、より顕著に、過剰な負荷による折損を抑制できる。
【0022】
以上説明したように、実施形態に係るエンドミル1は、回転軸Pに沿って延びるシャンク10と、シャンク10の先端に設けられる首下長部20と、を備えている。そして、首下長部20は、先端切刃21Bを形成する先端部21と、先端切刃21Bのねじれ方向とは逆方向にねじれる螺旋状の螺旋エッジ22と、を有している。これにより、切削時(回転時)において、首下長部20がたわんで首下長部20が被加工物に接触した際に、切刃のように作用する螺旋エッジ22が被加工物を切削するので、回転軸Pと交差する横方向から被加工物に押されて首下長部20が受ける反力を低減できる。また、螺旋エッジ22がねじれるので、螺旋エッジ22が切刃として作用し、かつ、螺旋エッジ22と被加工物との接触面積を小さくすることができる。さらに、螺旋エッジ22が、先端切刃21Bのねじれ方向、すなわち、エンドミル1の回転方向Rとは逆方向にねじれるので、切削加工時にエンドミル1を被加工物側に押さえつける力が生じるため、振動の発生が抑制される。
【0023】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0024】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 エンドミル
10 シャンク
11 被チャック部
12 テーパ部
20 首下長部
21 先端部
21B 先端切刃
22 螺旋エッジ
D 最大直径
L 有効長
P 回転軸
R 回転方向
θ ねじれ角