(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005536
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】スキンケアセット及びコラーゲン産生促進方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/35 20060101AFI20240110BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240110BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240110BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240110BHJP
A45D 44/22 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61K8/35
A61Q19/00
A61K8/49
A61Q19/08
A45D44/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105750
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直樹
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC491
4C083AC492
4C083AC852
4C083AD412
4C083AD631
4C083AD632
4C083AD642
4C083CC02
4C083DD50
4C083EE12
4C083FF10
(57)【要約】
【課題】顔及び首の一方又は両方におけるコラーゲンの産生を効率的に促進することが可能なスキンケアセットとコラーゲン産生促進方法を提供する。
【解決手段】600~700nmの範囲にピークがある赤色光を照射する光照射装置とコエンザイムQ10、リボフラビン、及びリボフラビンりん酸エステル又はその塩から選ばれる1種以上の成分(A)を含む皮膚化粧料からなり、顔及び首の一方又は両方に用いるスキンケアセットと、このスキンケアセットを用いたラーゲン産生促進方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
600~700nmの範囲にピークがある赤色光を照射する光照射装置と、
コエンザイムQ10、リボフラビン、及びリボフラビンりん酸エステル又はその塩から選ばれる1種以上の成分(A)を含む皮膚化粧料からなり、
顔及び首の一方又は両方に用いるスキンケアセット。
【請求項2】
前記皮膚化粧料中の成分(A)の濃度が0.001~10質量%である請求項1に記載のスキンケアセット。
【請求項3】
顔及び首の一方又は両方に対して、コエンザイムQ10、リボフラビン、及びリボフラビンりん酸エステル又はその塩から選ばれる1種以上の成分(A)を含む皮膚化粧料を塗布すると共に、600~700nmの範囲にピークがある赤色光を照射する、コラーゲン産生促進方法。
【請求項4】
前記赤色光をエネルギー積算量が0.04~100J/cm2となるように照射する、請求項3に記載のコラーゲン産生促進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキンケアセット及びコラーゲン産生促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ほうれい線や小じわの改善効果に寄与するコラーゲン量やヒアルロン酸量を増加させるため、様々な美容方法が提案されている。
例えば特許文献1では、スキンケア有効成分を皮膚に適用すると共に、510~536nm、650~670nm及び768~792nmの範囲の波長にピークがある不連続スペクトルを有する1種以上の光線を照射することにより、コラーゲンの産生を促進することが提案されている。
【0003】
また、特許文献2では、グルコサミン塩酸塩を含む組成物を皮膚に適用すると共に、約600nm~約750nmのピーク波長を有する赤色光、約750nm~約1000nmのピーク波長を有する近赤外光、又は両方の光線を照射することにより、ヒアルロン酸の産生を促進することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2018-507740号公報
【特許文献2】特開2020-2133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、スキンケア有効成分について多数の成分を例示するのみで、どのような成分であれば、効率的にコラーゲンの産生を促進できるかの検討が成されていない。また、複数の波長範囲にピークがある不連続スペクトルを得るためには、複数のLEDを用いることが必要で、装置が複雑化しやすい。
【0006】
また、特許文献2では、ヒアルロン酸の産生促進につては検討されているが、コラーゲンの産生を促進することについては、検討がされていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、コラーゲンの産生を効率的に促進することが可能なスキンケアセットとコラーゲン産生促進方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]600~700nmの範囲にピークがある赤色光を照射する光照射装置と、
コエンザイムQ10、リボフラビン、及びリボフラビンりん酸エステル又はその塩から選ばれる1種以上の成分(A)を含む皮膚化粧料からなり、
顔及び首の一方又は両方に用いるスキンケアセット。
[2]前記皮膚化粧料中の成分(A)の濃度が0.001~10質量%である[1]に記載のスキンケアセット。
[3]顔及び首の一方又は両方に対して、コエンザイムQ10、リボフラビン、及びリボフラビンりん酸エステル又はその塩から選ばれる1種以上の成分(A)を含む皮膚化粧料を塗布すると共に、600~700nmの範囲にピークがある赤色光を照射する、コラーゲン産生促進方法。
[4]前記赤色光をエネルギー積算量が0.04~100J/cm2となるように照射する、[3]に記載のコラーゲン産生促進方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のキンケアセットとコラーゲン産生促進方法によれば、コラーゲンの産生を効率的に促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明で使用する光照射装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】光照射装置における光照射板の一例を示す上面図である。
【
図4】本発明で使用するマスクの一例を示す平面図である。
【
図5】マスクを顔に装着した状態の一例を示す斜視図である。
【
図6】本発明のコラーゲン産生促進方法の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<スキンケアセット>
本発明のスキンケアセットは、600~700nmの範囲にピークがある赤色光を照射する光照射装置と、コエンザイムQ10、リボフラビン、及びリボフラビンりん酸エステル又はその塩から選ばれる1種以上の成分(A)を含む皮膚化粧料からなる。本発明のスキンケアセットは、顔及び首の一方又は両方に適用される。
【0011】
[光照射装置]
光照射装置は、600~700nmの範囲にピークがある赤色光を照射する装置である。ピーク波長は、620~670nmの範囲にあることがより好ましい。
【0012】
光照射装置の一例について、
図1~3を用いて説明する。
図1の光照射装置10は、光照射装置本体11と一対のリード線12と、一対のリード線12により光照射装置本体11に接続された一対の光照射板13とを備えている。光照射装置10において、光照射装置本体11には、電池等の電源やスイッチ等が設けられる。
【0013】
図1に示す光照射装置本体11は、U時形とされ、首等にかけて使用できるようになっている。
リード線12は、光照射板13に光照射装置本体11から電力を供給するリード線本来の役割の他、光照射板13を操作するための把持部としても機能する。
【0014】
光照射板13の面積は、1~65cm2であることが好ましく、4~40cm2であることがより好ましい。
光照射板13の厚みは、0.01~10mmであることが好ましく、0.5~5mmであることがより好ましい。
【0015】
図2、
図3は、光照射板13の一具体例を示す。
図3は、
図2のIII-III断面図である。
図2、3に示す光照射板13は、基板14の一面にLEDからなる光源部15が設けられ、全体がカバーシート16により覆われた構造とされている。光源部15は、リード線12により、光照射装置本体11に接続されている。
【0016】
基板14としては、光源部からの光を透過できる物を使用する。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、アクリル、ポリスチレン、シリコンゴムを使用することができる。基板14の透過率は、10~99%であることが好ましく、40~99%であることがより好ましい。
【0017】
光源部15は、600~700nmの範囲にピークがある赤色光を発する光源である。光源部15のピーク波長は、620~670nmの範囲にあることがより好ましい。
光源部15としては、有機発光ダイオード(有機LED)、又は無機発光ダイオード(無機LED)を使用することが好ましい。
【0018】
カバーシート16は、例えばポリエチレンテレフタレート等の樹脂により構成することができる。カバーシート16を設けることにより、汗や水から光照射板を守ることができる。
なお、光源部15とリード線12との接続部には、保護テープ17が巻かれている。保護テープ17の材質としてはポリウレタンを使用できる。
図2、
図3に示す光照射板13は、
図3の図示下側が内側(顔側)となるようにして使用される。
【0019】
[マスク]
光照射板13は、顔等に密着するマスクを使用して、ほうれい線部分等の所望の場所に固定すると、手が自由になるので好ましい。
顔等に密着するマスクは、伸縮性を有するシート状基材で構成することが好ましい。具体的には、下記の試験方法により測定される伸縮力が0.70cm以上であることが好ましく、0.70~3.00cmがより好ましく、0.90~2.22cmがさらに好ましく、1.10~2.22cmが特に好ましい。
【0020】
伸縮力が好ましい下限値以上であることにより、マスクが顔に密着しやすく、光照射板13に充分な圧力を付与して、所望の場所に固定しやすい。さらに、所望の部分の皮膚に対して、光による刺激だけでなく圧迫刺激を付与することもできる。
伸縮力が好ましい上限値以下であることにより、装着時の顔に対する負担、特に耳掛け部による耳への負担が少ない。
【0021】
伸縮力は、次のように測定できる。まず、シート状基材を縦5cm×幅2cmに切断して試験体とする。該試験体の一端に重り(300g)を吊るし、荷重を掛けて伸長させ、15分後の試験体の縦の長さ(L1)を計測する。L1を計測後、試験体から重りを外し、5秒後に試験体の縦の長さ(L2)を計測する。L1とL2との値から、下記(1)式により伸縮力が求められる。
【0022】
伸縮力(cm)=L1(cm)-L2(cm) ・・・・(1)
【0023】
シート状基材としては、不織布、シリコンゴム、ウレタンシートなどが挙げられる。中でも、不織布は、適度な伸縮性を有すると共に、保水性を有し、成分(A)を含む皮膚化粧料を充分量含浸できるので好ましい。
【0024】
シート状基材として用いる不織布の種類は特に限定されないが、例えば、スパンボンド、メルトブロー、サーマルボンド、ケミカルボンド、スパンレース、ニードルパンチ等の公知の製造方法により得られる不織布が挙げられる。また、例えば、潜在捲縮性繊維を含む繊維ウェブをスパンレース法により繊維交絡処理に付し、交絡処理後の繊維ウェブを加熱により立体捲縮を発現させた不織布(以下、立体捲縮不織布という)が挙げられる。中でも、シート状基材としては、立体捲縮不織布が好ましい。立体捲縮不織布であれば、良好な伸縮性を得やすい。
【0025】
このような立体捲縮不織布としては、例えば、特開2008-285433号公報に記載されているものが挙げられ、市販品としてJP-95(ダイワボウポリテック株式会社製)等が挙げられる。なお、立体捲縮とは、スパイラル状の湾曲又はカール、及びスタッフィングボックス型クリンパー等によって付与され、捲縮の屈曲部分が変形して丸みを帯びるに至った部分を指す。
【0026】
不織布の材質は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルの単繊維又はポリエステルを含む複合繊維が挙げられる。複合繊維としては、ポリエステルと、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、レーヨン等の合成繊維、綿(コットン)、絹等の天然繊維との複合繊維が挙げられる。中でも、PETの単繊維又は複合繊維(以下、総じてPET系繊維という)が好ましい。PET系繊維であれば、良好な伸縮性と保水性を発揮し、より良好な美容効果が得られる。
このように、シート状基材を不織布、より好ましくはPET系繊維の不織布とすることで、良好な伸縮性を得やすい。
【0027】
シート状基材の目付は特に限定されないが、例えば、30~250g/m2が好ましく、70~150g/m2がより好ましい。
シート状基材の目付が好ましい下限値以上であることにより、充分な強度が得られ、装着時の取り扱いが良好となる。また、充分な弾力性が得られるため、良好な着け心地を得やすい。さらに、後述する皮膚化粧料を充分量含浸させやすい。
シート状基材の目付が好ましい上限値以下であることにより、厚くなりすぎず、装着する際に撚れやしわを発生させずに密着させることが容易となる。また、コストも抑制することができる。
【0028】
シート状基材の厚さは、シート状基材の材質や、使用性等を勘案して決定できる。例えば、シート状基材の厚さは、0.1~2.0mmが好ましく、0.2~1.0mmがより好ましい。上記範囲内であれば、必要な強度を維持しやすくなると共に、装着が容易である。
【0029】
シート状基材で構成されたマスクの一例を
図4に示す。
図4のマスク20は、下顎を覆い、下顎を耳に向かって引張する第一の引張体21と第一の引張体21の上側に配置され、上顎とほうれい線部分を覆い、上顎を耳に向かって引張する第二の引張体22とからなるシート状基材で構成されている。
【0030】
第一の引張体21と第二の引張体22とは、口角の左側において左連結部23aにより、口角の右側において右連結部23bにより、連結されている。
第一の引張体21と第二の引張体22の、連結されている部分の両側は離間しているので、装着時の取り扱いが容易である。加えて、マスク20を頬に対して、撚れやしわを生じずに密着させることができる。
【0031】
第一の引張体21の横方向の長さ(横方向において、最も長い部分の長さ)は、シート状基材の材質等を勘案して決定することができるが、250~290mmが好ましく、260~280mmがより好ましい。第一の引張体21の縦方向の長さ(縦方向において、最も長い部分の長さ)は、シート状基材の材質等を勘案して決定することができるが、60~80mmが好ましい。
【0032】
第二の引張体22の横方向の長さ(横方向において、最も長い部分の長さ)は、シート状基材の材質等を勘案して決定することができるが、250~300mmが好ましく、260~280mmがより好ましい。第二の引張体22の縦方向の長さ(縦方向において、最も長い部分の長さ)は、シート状基材の材質等を勘案して決定することができるが、80~110mmが好ましい。
なお、第一の引張体21の横方向の長さと第二の引張体22の横方向の長さとは同一であってもよいし、異なっていてもよい。ただし、装着時の耳への負担を緩和する観点から、両者は同一、あるいは、第二の引張体22の横方向の長さの方が長いことが好ましい。
【0033】
第一の引張体21と第二の引張体22とは、1枚のシート状基材を打ち抜いて成形したものでもよいし、第一の引張体21と第二の引張体22とを別々に成形した後、接続してもよい。中でも、生産効率の観点からは、1枚のシート状基材を打ち抜いて成形したものが好ましい。なお、第一の引張体21と第二の引張体22とは、材質が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
第一の引張体21は、概ね楕円形状とされている。
第一の引張体21の上端の内、第二の引張体22と連結している左連結部23aの左方向外側は、左連結部23aから左方向外側に向けて下降する凸曲線とされている。
同様に、第一の引張体21の上端の内、第二の引張体22と連結している右連結部23bの右方向外側は、右連結部23bから右方向外側に向けて下降する凸曲線とされている。
第一の引張体21の下端21cは、ほぼ平坦な凸曲線とされている。
【0035】
第一の引張体21は、顔に装着した際、下顎を覆うようになっている。
また、第一の引張体21には、一対の第一の耳掛け部が設けられている。すなわち、顔に装着した際、左側となる部分には左耳用第一の耳掛け孔25が、右側となる部分には右耳用第一の耳掛け孔26が各々形成されている。
【0036】
左耳用第一の耳掛け孔25は、一の頂点が左向き(図示右向き)とされた三角孔25aと、三角孔25aの前記一の頂点から左(図示右)に向かって伸びる延長切込み線25bと延長切込み線25bの終端において、延長切込み線25bと直角に設けられた終端切込み線25cとで構成されている。
【0037】
同様に、右耳用第一の耳掛け孔26は、一の頂点が右向き(図示左向き)とされた三角孔26aと、三角孔26aの前記一の頂点から右(図示左)に向かって伸びる延長切込み線26bと延長切込み線26bの終端において、延長切込み線26bと直角に設けられた終端切込み線26cとで構成されている。
第一の引張体21は、左耳用第一の耳掛け孔25と右耳用第一の耳掛け孔26を両の耳に掛けることにより、下顎を耳に向かって引っ張るようになっている。
【0038】
第二の引張体22は、概ね下側が凸で上側が凹の円弧状とされている。
第二の引張体22の下端の内、第一の引張体21と連結している左連結部23aの左方向外側は、左連結部23aから左方向外側に向けて上昇する凸曲線とされている。
同様に、第二の引張体22の下端の内、第二の引張体22と連結している右連結部23bの右方向外側は、右連結部23bから右方向外側に向けて上昇する凸曲線とされている。
第二の引張体22の上端22cは凹状とされている。上端22cは、顔に装着した際、第二の引張体22が両頬を目の下まで覆う位置とされている。
上端22cの中央には、鼻上部を鼻根部まで覆うための凸片24が設けられている。
【0039】
第二の引張体22は、顔に装着した際、上顎とほうれい線部分を覆い、さらに、両頬を目の下まで覆うようになっている。
また、第二の引張体22には、一対の第一の耳掛け部が設けられている。すなわち、顔に装着した際、左側となる部分には左耳用第二の耳掛け孔27が、右側となる部分には右耳用第二の耳掛け孔28が各々形成されている。
【0040】
左耳用第二の耳掛け孔27は、一の頂点が左上向き(図示右上向き)とされた三角孔27aと、三角孔27aの前記一の頂点から左上(図示右上)に向かって伸びる延長切込み線27bと延長切込み線27bの終端において、延長切込み線27bと直角に設けられた終端切込み線27cとで構成されている。
【0041】
同様に、右耳用第二の耳掛け孔28は、一の頂点が右上向き(図示左上向き)とされた三角孔28aと、三角孔28aの前記一の頂点から右上(図示左上)に向かって伸びる延長切込み線28bと延長切込み線28bの終端において、延長切込み線28bと直角に設けられた終端切込み線28cとで構成されている。
第二の引張体22は、左耳用第二の耳掛け孔27と右耳用第二の耳掛け孔28を両の耳に掛けることにより、上顎を耳に向かって引っ張るようになっている。
【0042】
第二の引張体22には、また、鼻挿入部32が形成されている。鼻挿入部32は、浅いV字型に形成された鼻尖部切り込み32aと鼻尖部切り込み32aの両端から立ち上がる左鼻翼部切り込み32b及び右鼻翼部切り込み32cとで構成され、全体として外鼻の輪郭に沿った凹字型の切込み孔とされている。
【0043】
装着した際に鼻の先端を鼻挿入部32に挿入して露出させると、第二の引張体22の鼻挿入部32の上側の部分が、鼻尖部に沿って持ち上がるようになっている。
第二の引張体22の鼻挿入部32の上側は凸片24に連続し、凸片24と共に、鼻全体を鼻根部まで覆うようになっている。
【0044】
第一の引張体21と第二の引張体22、及び左連結部23aと右連結部23bとに囲まれた部分は、口露出部31となっている。本実施形態の口露出部31は紡錘形とされている。
マスク20を顔に装着した際、左連結部23aと右連結部23bの両外側は、各々ほうれい線部分の下端側近傍の位置となる。
【0045】
[皮膚化粧料]
皮膚化粧料は、成分(A)を含む。成分(A)はコエンザイムQ10、リボフラビン、及びリボフラビンりん酸エステル又はその塩から選ばれる1種以上である。成分(A)は、いずれも抗酸化物質、ミトコンドリア活性化物質として機能することが知られている。
【0046】
コエンザイムQ10(補酵素Q10)は体内でほとんどが還元型として存在し、抗酸化能を示すことから還元型であることが好ましい。
リボフラビンは、ビタミンB2、ラクトフラビンとも呼ばれ、ビタミンの中で水溶性ビタミンに分類される生理活性物質で、ヘテロ環状イソアロキサジン環に糖アルコールのリビトールが結合したものである。
【0047】
リボフラビンりん酸エステルは、リボフラビンのヒドロキシ基がリン酸でエステル化したものである。エステル化されるヒドロキシ基の位置に限定はないが、入手が容易であることから、ヘテロ環状イソアロキサジン環から最も離れた位置のヒドロキシ基であることが好ましい。
リボフラビンりん酸エステルの塩としては、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、カルシウム塩が挙げられるが、入手が容易であることから、ナトリウム塩であることが好ましい。
【0048】
皮膚化粧料中の成分(A)の濃度(コエンザイムQ10、リボフラビン、及びリボフラビンりん酸エステル又はその塩から選ばれる2種以上である場合は、各成分の合計濃度)は、0.001~10質量%であることが好ましく、0.01~1質量%であることがより好ましく、0.02~0.4質量%であることがさらに好ましい。
皮膚化粧料中の成分(A)の濃度が好ましい範囲であると、高いコラーゲン産生促進効果が得られる。
【0049】
例えば、溶媒を水とした皮膚化粧料中のコエンザイムQ10の濃度が1μMであるとすると、おおよそ0.0001%(w/w)「=(1×10-6)mol/L×863.37g/mol(コエンザイムQ10の分子量)÷1000g/L(水1Lの重さ)×100」と換算できる。
【0050】
分子量が500以上の高分子であるコエンザイムQ10が皮膚表面から真皮層まで到達する経路が毛包としたとき、皮膚上で毛包の占める面積が0.1%であることを加味すると、真皮層の線維芽細胞に1μMのコエンザイムQ10を作用させるために必要な化粧料中のコエンザイムQ10の濃度は「0.000001÷0.001」で0.1%と推定される(Drug Delivery System 20-4, 2005, 452-459)。
【0051】
また、溶媒を水とした皮膚化粧料中のリボフラビンリン酸エステルナトリウムの濃度が1μMであるとすると、おおよそ0.00005%(w/w)「=(1×10-6)mol/L×478.33g/mol(リボフラビンリン酸エステルナトリウムの分子量)÷1000g/L(水1Lの重さ)×100」と換算できる。
【0052】
分子量が500近い高分子であるリボフラビンリン酸エステルナトリウムが皮膚表面から真皮層まで到達する経路が毛包としたとき、皮膚上で毛包の占める面積が0.1%であることを加味すると、真皮層の線維芽細胞に1μMのコエンザイムQ10を作用させるために必要な化粧料中のリボフラビンリン酸エステルナトリウムの濃度は「0.0000005÷0.001」で0.05%と推定される。
【0053】
皮膚化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を含んでいてもよい。例えばマスクの皮膚への密着性を高める観点及び保湿効果を高める観点から、グリセリン、ジプロピレングリコール、1-3ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビット、プロピレングリコール等の多価アルコールを含むことが好ましい。
【0054】
皮膚化粧料中の多価アルコールの含有量は、皮膚化粧料に求める効果を勘案して決定することができるが、10~50質量%が好ましく、15~30質量%がより好ましい。
多価アルコールの含有量が上記好ましい下限値以上であれば、充分なマスク密着性や保湿効果が得られ、使用者にほうれい線や小じわが薄くなった感覚を与えることができる。
また、多価アルコールの含有量が上記好ましい上限値以下使用後の肌のべたつき感を抑制できる。
【0055】
マスクを構成するシート状基材に皮膚化粧料が含浸されていると、コラーゲン産生促進効果が得られると共に、角質層の保湿効果により、肌に潤いと張りを与えることができる。加えて、皮膚化粧料を含浸することで、シート状基材と肌との密着性が上がり、光照射板をより確実に皮膚に固定できる。
なお、装着時の取り扱い性を良好とし、装用感の低下を防ぐ観点から、装着時に耳に触れる耳掛け孔周辺には、皮膚化粧料を含浸させない方が好ましい。
【0056】
シート状基材に皮膚化粧料が含浸させる場合、皮膚化粧料は予めメーカー等によりシート状基材に含浸されていてもよいし、使用時において、使用者が皮膚化粧料をシート状基材に含浸させるようにしてもよい。
シート状基材への皮膚化粧料の含浸方法は、公知の手法を用いることができ、例えば、含浸対象部にハケで塗布して含浸する方法や、スプレー噴霧して含浸する方法が挙げられる。
【0057】
シート状基材に含浸させる皮膚化粧料の量に特に限定はないが、皮膚化粧料が含浸される部分(以下、含浸対象部)のシート状基材の質量(C)と、含浸する皮膚化粧料の質量(D)との質量比(D/C)で表される含浸倍率が、5~13であることが好ましく、7~20であることがより好ましい。
【0058】
含浸倍率が好ましい下限値以上であることにより、皮膚及び光照射板に対して密着しやすくなる。
また、含浸倍率が好ましい上限値以下であることにより、皮膚化粧料が垂れる等の不具合を回避しやすい。
具体的な質量比は、シート状基材の材質や皮膚化粧料の組成を勘案して決定できる。
【0059】
[コラーゲン産生促進方法]
図5、
図6を用いて、
図1の光照射装置10と
図4のマスク20を用いたコラーゲン産生促進方法について説明する。
図5は、マスク20を顔に装着した状態の一例を示す斜視図であり、
図6は、ほうれい線部分に光照射装置10の光照射板13を固定して行うコラーゲン産生促進方法を示している。
【0060】
なお、
図5、
図6では、顔の左側から見た斜視図としているが、顔の右側への装着状態も同様である。また、
図6では、光照射装置10の内、光照射板13とリード線12の一部のみを示し、光照射装置本体11と光照射装置本体11近傍のリード線12の図示は省略する。
【0061】
皮膚化粧料は、マスク20を装着する前に、コットンや手を用いて、顔等の皮膚になじませてもよいし、マスク20を構成するシート状基材の全体又は一部に含浸されていてもよい。皮膚化粧料をマスク20を構成するシート状基材に含浸させておく場合は、マスク20を顔に装着後、シート状基材に含浸させた皮膚化粧料を、充分に皮膚になじませてからも、光照射装置10の光照射板13を皮膚に当てることが好ましい。
【0062】
図5に示すように、マスク20を顔に装着した状態において、第一の引張体21は、下顎82から耳81までを覆っている。また、第二の引張体22は上顎83から耳81までを覆い、上端は目87の下まで達している。その結果、頬84全体が第一の引張体21と第二の引張体22により覆われている。口86は口露出部31において露出している。
また、凸片24の上端は、鼻根部88cまで達しており、鼻挿入部32から露出している鼻柱88a付近を除き、鼻尖部88bから鼻根部88cまでの鼻88全体が第二の引張体22と凸片24により覆われている。
【0063】
また、マスク20を顔に装着した状態においては、第一の引張体21の一部と第二の引張体22の一部との重なり部分35が生じる。重なり部分35において、第一の引張体21が第二の引張体22の内側(皮膚側)となっている。重なり部分35は、
図5に示すように、両の口角86aの外側であって、両のほうれい線部分85の下端近傍から両の耳81にかけて、各々ほぼ三角形状に形成されている。
【0064】
マスク20の顔への装着は、例えば以下のように行う。
まず、第一の引張体21の左右方向中央を、口露出部31から口86が露出するように下顎82に接触させると共に、左耳用第一の耳掛け孔25、右耳用第一の耳掛け孔26(
図4参照)をそれぞれ両の耳81に掛ける。
【0065】
次いで、第二の引張体22の左右方向中央を鼻挿入部32から鼻88の鼻柱88a付近が露出し、口露出部31から口86が露出するように上顎83及び鼻88に接触させると共に、左耳用第二の耳掛け孔27、右耳用第二の耳掛け孔28(
図4参照)をそれぞれ両の耳81に掛ける。
【0066】
こうして、マスク20を装着することで、第一の引張体21は、下顎82を耳81に向かって引張する。また、第二の引張体22は、上顎83を耳81に向かって引張する。
これにより、マスク20は、顔に対して、加圧状態で密着する。
なお、マスク20は、予め左耳用第一の耳掛け孔25の上に左耳用第二の耳掛け孔27を、右耳用第一の耳掛け孔26の上に右耳用第二の耳掛け孔28を各々重ねておき、これらの耳掛け孔を一度に両の耳81に掛けることにより顔に装着してもよい。
【0067】
次に両側の重なり部分35の下端の各々から、第一の引張体21と第二の引張体22の間に光照射板13を挿入する。挿入後は、リード線12の大部分がマスク20の外側に配置されるので、リード線12の重なり部分35の外側とされた部分を把持部として、これを動かすことにより光照射板13を操作し、適宜移動させることができる。
そして、光照射板13の位置を、ほうれい線部分85に調整したら、リード線12による光照射板13の操作を終了する。
【0068】
光照射板13の位置がほうれい線部分85に調整され、リード線12による光照射板13の操作を終了すると、光照射板13は、マスク20を構成するシート状基材の伸縮力により加圧され、ほうれい線部分85に固定される。
そして、図示を省略する光照射装置本体11から、光照射板13の光源部15に電力を供給することにより、ほうれい線部分85に対して600~700nmの範囲にピークがある赤色光を照射することができる。
【0069】
皮膚表面に対する赤色光の照射は、エネルギー積算量が0.04~100J/cm2となるように照射することが好ましく、0.2~20J/cm2となるように照射することが好ましく、4~10J/cm2となるように照射することがより好ましい。
皮膚表面に対して照射する赤色光のエネルギー積算量が好ましい範囲であると、高いコラーゲン産生促進効果が得られる。
【0070】
皮膚表面に到達した赤色光、特に波長650nmの光は、その約20~50%が皮膚表面から約0.2~3mmの真皮層に到達すると推定される(日本画像学会誌第56巻第5号466(2017))(Fig.5のデータからグラフを外挿することで推測)。
そのため、例えば、真皮線維芽細胞に2J/cm2の赤色光を作用させるためには、おおよそ4~10J/cm2(2J/cm2÷0.5、2J/cm2÷0.2)の光を皮膚表面に照射する必要がある。
【0071】
光のエネルギー積算量は、光の放射照度と照射時間との積として求められる。
皮膚表面に到達する光の放射照度は、10~600W/m2であることが好ましく、20~100W/m2であることがより好ましい。
皮膚表面に到達する光の放射照度が好ましい範囲の下限値以上であれば、迅速に、皮膚表面に到達する光のエネルギー積算量を、所望の積算量まで高めることができる。皮膚表面に到達する光の放射照度が好ましい範囲の上限値以下であれば、皮膚に過度の刺激を与えることを回避できる。
光の照射時間は、放射照度に合わせて、エネルギー積算量が所望の範囲となるように適宜設定すればよい。
【0072】
光照射板13は、マスク20による加圧を受けてほうれい線部分85の皮膚に対して圧迫刺激を与える。その際、光照射板13を覆っている第二の引張体22は、耳81の方向に引張されているので、光照射板13は、皮膚を圧迫しつつ、皮膚を引き上げるように作用する。そのため、ほうれい線部分85の皮膚の引き上げ効果も期待できる。
【0073】
マスク20は、頬84を目87の下まで覆い、また、凸片24が鼻88を鼻根部88cまで覆うので、光照射板13の位置をほうれい線部分85に安定して保持しやすい。そのため、確実に、ほうれい線部分85におけるコラーゲン産生を促進することができる。
また、光照射板13の光源部15からの光が漏れ出て眩しくなることが生じにくい。また、マスク20に皮膚化粧料が含浸されている場合、光照射板13から光を照射しているほうれい線部分だけでなく、頬84と鼻全体に皮膚化粧料を浸透させることができる。
【0074】
光照射装置10を皮膚に固定するマスクの具体的な形状等は、上記マスク20に限られない、また、本発明のコラーゲン産生促進方法は、光照射板13を用いた光照射装置と、光照射板13を固定するマスクを用いた方法に限られない。例えば、光照射板13を手で直接把持して顔や首に当ててもよい。
また、棒状体の先端に光源と皮膚化粧料の流出口を有する器具を用いてもよい。
【実施例0075】
[培養]
ヒト成人由来真皮線維芽細胞を、Dulbecco’s Modified EagleMedium(DMEM、ナカライテスク社製)に、5体積%のFetal Bovine Serum(FBS、Thermo Fisher Scientific)、抗生物質として100μ/mLペニシリン、100μ/mLストレプトマイシンを加えた培地中のシャーレ内で37℃にて維持した。
その後、DMEMに5体積%のFBSを加えた24Wellのプレートに、6×104cellずつ播種して24時間、温度37℃にて培養した。
【0076】
[機能性成分添加]
培養後、フェノールレッドを含まないDMEMに2体積%のFBSと表1又は表2に示す機能性成分を添加した培地に交換した。機能性成分の添加の際、水溶性の機能性成分は前記培地に直接溶解させた。油溶性の機能性成分は溶媒としてジメチルスルホキシドを用いて溶解させてから培地に添加した。
なお、表1又は表2に示す機能性成分の濃度は、培地の単位体積当たりのモル濃度である。
【0077】
表1、表2に記載した機能性成分は、以下のとおりである。
コエンザイムQ10:Coenzyme Q10、CAS RN: 303-98-0(東京化成工業株式会社製)。
りん酸リボフラビンナトリウム:CAS RN: 130-40-5(富士フイルム和光純薬株式会社製)。
【0078】
ナイアシンアミド:ニコチン酸アミド、CAS RN: 98-92-0(純正化学株式会社製)。
3-o-エチルアスコルビン酸:CAS RN: 86404-04-8(東京化成工業株式会社製)。
L-アスコルビン酸:CAS RN: 50-81-7(富士フィルム和光純薬株式会社製)。
グルタチオン:CAS RN: 70-18-8(ナカライテスク株式会社製)。
【0079】
[光照射]
機能性成分添加後、表1又は表2に示す条件で、ピーク波長634nmの光を、室温(25℃、以下同じ。)にて照射した。光照射装置としては、株式会社アイテックシステム社製面発光LED照明機器(TMN150x180-22RD-4)を用いた。
なお、機能性成分添加後、光照射を行わずに、その例の照射時間と同じ時間、室温で放置したものを、各例のコントロールとした。
【0080】
[コラーゲン定量]
光照射処置終了後(コントロールについては、照射時間と同じ時間経過後)、温度37℃にて放置し、48時間後に上清をサンプリングし、ELISA(タカラバイオ社製、製品コードMK101)により、I型プロコラーゲン濃度を測定した。
また、培養後の細胞について、Premix WST-1 Cell Proliferation Assay System(タカラバイオ社製、製品コードMK400)により細胞増殖を評価して培養後の細胞数とし、測定したI型プロコラーゲン濃度をこの細胞数で除することにより、細胞当たりのコラーゲン産生量を算出した。
【0081】
[機能性成分と光照射の相乗効果の評価]
下記(2)式で求めた促進倍率により、各例の機能性成分と光照射の相乗効果を、下記評価基準により評価した。
【0082】
【0083】
(評価基準)
◎:促進倍率が2.05倍以上。
○:促進倍率が1.20倍以上、2.05倍未満。
△:促進倍率が1.00倍以上、1.20倍未満。
×:促進倍率が1.00倍未満。
【0084】
【0085】
【0086】
表1に示すように、コエンザイムQ10又はりん酸リボフラビンナトリウムを用いた実施例では、いずれも高い促進倍率を示し、成分(A)と赤色光との相乗効果により、高いコラーゲン産生促進効果が得られることがわかった。
一方、表2に示すように、成分(A)に代えて、他の機能性成分を用いた比較例では、各成分と赤色光との相乗効果は、全く認められなかった。