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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055363
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】ゴム部材の接触面の観察方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
G01M17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162213
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諫山 直生
(57)【要約】
【課題】ゴム部材の接触面をより正確に観察できる方法を提供する。
【解決手段】ゴム部材16を接触面に対して押圧し、ゴム部材16と前記接触面との接触状態の画像を取得する方法において、透明体11に光を入射して透明体11の内部において全反射させるステップと、透明体11の上に前記接触面を有する紙15を配置するステップと、紙15の上からゴム部材16を押圧することにより押圧部分において光が全反射しないようにするステップと、透明体11の下から前記押圧部分を撮影することにより前記接触状態の画像を取得するステップと、を有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム部材を接触部材に対して押圧し、前記ゴム部材と前記接触部材との接触面の画像を取得する、ゴム部材の接触面の観察方法において、
透明体に光を入射して前記透明体の内部において全反射させるステップと、
前記透明体の上に前記接触部材として紙を配置するステップと、
前記紙の上から前記ゴム部材を押圧することにより、前記接触面を生じさせるとともに、前記接触面の下において光が全反射しないようにするステップと、
前記透明体を下から撮影することにより前記接触面の画像を取得するステップと、
を有することを特徴とする、ゴム部材の接触面の観察方法。
【請求項2】
前記透明体の横方向両側にそれぞれ照明装置を設け、横方向両側の前記照明装置がそれぞれ発した光が前記透明体に入射する、請求項1に記載のゴム部材の接触面の観察方法。
【請求項3】
前記照明装置における前記透明体へ向かっての発光部分の上下方向の長さが、前記透明体の上下方向の長さよりも短い、請求項1又は2に記載のゴム部材の接触面の観察方法。
【請求項4】
前記紙の表面の算術平均粗さが0.1~2.0μmである、請求項1又は2に記載のゴム部材の接触面の観察方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム部材の接触面の観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤ(以下「タイヤ」とする)の設計等の分野において、タイヤから切り出したゴム部材等とガラス板等との接触面の観察が行われている。例えば、温度条件を変えながらガラス板の上でゴム部材等を滑らせ、それぞれの温度でのゴム部材等の接触面形状、接触面積又は接触圧分布を取得し、接触面形状等の温度依存性を調べて設計に活かすことが行われている。
【0003】
従来、ゴム部材等の接触面の観察方法として、例えば特許文献1、2に記載されているような方法が知られていた。
【0004】
特許文献1の方法は、表面に凹凸のある梨地シートを透明板の上に配置し、梨地シートの上からタイヤを押し付けてタイヤと梨地シートの凹凸とを密着させ、タイヤと凹凸との密着部分とその他の部分とで光の反射率を異ならせてタイヤ接地面の形状がわかるようにし、透明板の下のカメラでその形状を撮影する方法である。
【0005】
また、特許文献2の方法は、透明体の内部に光を入射して透明体の上面で全反射させ、透明体の上面にゴムサンプルが接触したときにその接触部分で全反射しなくなるようにし、撮影装置で透明体を撮影したときに接触部分がわかるようにした方法である。
【0006】
また、感圧紙にタイヤやゴム部材を載せて接触面の色を変化させることにより、接触面の形状を明らかにする方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-14428号公報
【特許文献2】特開2016-188767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、梨地シートを利用する方法では、梨地シートの表面にある凹凸が比較的大きなものであるため、タイヤと凹凸面との密着部分の形状が本来のタイヤ接地面の形状と一致せず、接地面の精密な形状を観察することが困難であった。
【0009】
また、透明体の上面にゴムサンプルを接触させる方法では、透明体の上面に付着した汚れ等が、撮影装置で撮影される画像に映り込んでしまい、接触部分と汚れ等との区別を付けることが難しくなるという問題があった。またこの方法では、透明体の上面より上から来る光も撮影装置に入ってしまうため、撮影される画像においてゴムサンプルの接触部分とその周囲の部分との輝度の差が小さく、ゴムサンプルの接触部分を明確に区別できないという問題もあった。
【0010】
また、感圧紙を使用する方法では、タイヤ等が移動するに従い着色部分が広がっていくだけで、タイヤ等の移動中の各時点でのそれぞれの接地面の形状を取得することができない。
【0011】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、ゴム部材の接触面をより正確に観察できる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
【0013】
[1]ゴム部材を接触部材に対して押圧し、前記ゴム部材と前記接触部材との接触面の画像を取得する、ゴム部材の接触面の観察方法において、透明体に光を入射して前記透明体の内部において全反射させるステップと、前記透明体の上に前記接触部材として紙を配置するステップと、前記紙の上から前記ゴム部材を押圧することにより、前記接触面を生じさせるとともに、前記接触面の下において光が全反射しないようにするステップと、前記透明体を下から撮影することにより前記接触面の画像を取得するステップと、を有することを特徴とする、ゴム部材の接触面の観察方法。
【0014】
[2]前記透明体の横方向両側にそれぞれ照明装置を設け、横方向両側の前記照明装置がそれぞれ発した光が前記透明体に入射する、[1]に記載のゴム部材の接触面の観察方法。
【0015】
[3]前記照明装置における前記透明体へ向かっての発光部分の上下方向の長さが、前記透明体の上下方向の長さよりも短い、[1]又は[2]に記載のゴム部材の接触面の観察方法。
【0016】
[4]前記紙の表面の算術平均粗さが0.1~2.0μmである、[1]~[3]のいずれかに記載のゴム部材の接触面の観察方法。
【発明の効果】
【0017】
上記の方法によれば、ゴム部材の接触面をより正確に観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】撮影装置の正面図。
図2】ガラス板及びライトガイドを上から見た図。
図3】ライトガイドをガラス板側から見た図。
図4】(a)はゴム部材が紙に押圧されている様子を示す図。(b)は(a)の押圧時に取得される画像。
図5】(a)は実施例の画像。(b)は比較例の画像。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施形態について図面に基づき説明する。なお、以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0020】
図1に示す本実施形態の撮影装置10は、透明体としてのガラス板11と、ガラス板11より上においてゴム部材16を保持する保持部12と、ガラス板11より下に配置されたカメラ13と、ガラス板11の左右両側(横方向両側)に設けられた照明装置としてのライトガイド14と、カメラ13に接続された解析装置17を備えている。撮影装置10は、ガラス板11の上に紙15を配置し、紙15の上にゴム部材16を押圧したときの、ゴム部材16と紙15との接触状態を下からカメラ13で撮影する装置である。
【0021】
ガラス板11は無色透明なガラスの板である。ガラス板11は、上から見て長方形で、厚みが一定のガラスの板である。ガラス板11の上面11b及び下面11cは平面である。ガラス板11は、その上でゴム部材16を滑らせるために必要な面積と、ゴム部材16を押圧しても割れない厚み(上下方向の長さ)を有している。ガラス板11の具体的な大きさは、限定されないが、例えば奥行(図1における奥行方向の長さ、図2における上下方向の長さ)320mm~400mm、横(図1及び図2における左右方向の長さ)90mm~110mm、厚み10mm~30mmである。なお、ガラス板11は1枚のガラスからなる板でも良いが、2枚のガラスが重なって上記のような厚みとなった板でも良い。
【0022】
ガラス板11の上面11b、下面11c及び側面11aの表面粗さは、算術平均粗さRaで0.01μm~0.12μmが好ましい。算術平均粗さRaの測定方法は、JISB0601:2013(ISO4287:187, Amd.1:2009)による。
【0023】
保持部12は、ゴム部材16が取り付けられた治具21を保持する。保持部12は、不図示の制御部からの指示に基づき、ガラス板11の奥行方向、横方向及び上下方向に移動できる。ガラス板11上に配置された紙15へのゴム部材16の押圧は、保持部12が下降することによって行われる。保持部12の下降量によってゴム部材16への負荷の大きさが調整される。また、ゴム部材16のすべり試験は、保持部12が奥行方向へ移動することによって行われる。ゴム部材16の移動速度でもある保持部12の移動速度は制御可能である。
【0024】
カメラ13は、例えば、連続して複数枚の写真を撮影できるCCDカメラである。カメラ13の撮影する写真(画像)は、例えば、白を255、黒を0とする256階調の輝度からなるデジタル画像である。カメラ13は、ガラス板11を下から撮影する向きで設けられている。カメラ13の撮影方向は、図1のようにガラス板11の下面11cに直交する方向である。ただし、カメラ13の撮影方向は、ガラス板11の下面11cに直交する方向に対して若干傾斜した方向でも良い。
【0025】
解析装置17は、所定の解析プログラムがインストールされたPC(Personal Computer)からなる。図示省略するが、解析装置17は、解析等を行う処理装置、作業者が入力を行う入力装置、解析結果を表示する表示装置等から構成されている。解析装置17は、カメラ13の撮影した写真(画像)について所定の解析を行う。
【0026】
図2及び図3に示すように、ライトガイド14は、多数本の光ファイバーが結束された結束ファイバー22と、結束ファイバー22の一端を収納する筐体23とを有している。ライトガイド14は、LED等の光源(不図示)から発せられた光を、結束ファイバー22を通して筐体23の内部へ到達させ、筐体23に形成されたスリット24から外部へ発する照明装置である。ライトガイド14から発せられる光は例えば白色光である。また、スリット24の全体から、均一な明るさの光が発せられる。
【0027】
ガラス板11の左右両側のライトガイド14は、それぞれガラス板11に向かって光を照射するように配置されている。すなわち、筐体23のスリット24から発せられた光がガラス板11へ入射するように配置されている。入射方向(光の光軸の方向)はガラス板11の側面11aに垂直な方向で、ガラス板11の上面11b及び下面11cに平行な方向である。左右両側のライトガイド14からガラス板11に入射した光は、ガラス板11の表面で全反射する。ただし、光が全反射するのは、ガラス板11の表面が空気と接している場合である。全反射している領域では、ガラス板11に入射した光は、ガラス板11の上面11bより上へ透過したり、ガラス板11の下面11cより下に透過したりしない。図1においてガラス板11の中に描かれている二点鎖線は、全反射する光を表している。
【0028】
左右それぞれのライトガイド14のスリット24は、ガラス板11の左右の側面11aに平行に奥行方向(図1の奥行方向、図2の上下方向)に延びている。スリット24とガラス板11の側面11aとの間には一定の隙間が設けられている。その隙間の左右方向の長さL1(図1図2参照)は一定であり、0.1mm~1.0mmである。
【0029】
スリット24の厚みL2(上下方向の長さ、図1図3参照)は、ガラス板11の厚みより薄く、例えばガラス板11の厚みの10%以下である。スリット24の厚みは、具体的数値としては例えば0.2mm~1.0mmである。スリット24の厚み方向(上下方向)の中心位置は、ガラス板11の厚み方向(上下方向)の中心位置と一致していることが好ましい。
【0030】
また、スリット24の奥行方向の長さL3(図2参照)は、ガラス板11の奥行方向の長さL4(図2参照)より短い。また、スリット24の奥行方向の長さの下限は、限定されないが、例えばガラス板11の奥行方向の長さの半分である。スリット24の奥行方向の長さの具体的数値は、例えば180mm~220mmである。
【0031】
ガラス板11の上に配置される紙15は、ゴム部材16が接触する部材(接触部材)である。紙15は、表面が滑らかで、反射率が高く、白色で、適度な強度が保証される範囲でできるだけ薄く、全体が均質なものが好ましい。具体的には、紙15の表面の算術平均粗さRaは0.1μm~2.0μmが好ましい。また、紙15の表面の白色度は85~102%が好ましい。ここで、白色度とは、国際規格ISO白色度(ISO12470)に準拠した拡散照明方式(JISP8148)によって定まる値である。また、紙15の厚みは0.2mm~0.5mmが好ましく、0.2mm~0.3mmがより好ましい。
【0032】
このような紙15が、ガラス板11と同じ形状及び大きさにカットされる。そして、ガラス板11の四辺において、カット後の紙15とガラス板11の上面11bとが両面テープで貼り付けられる。なお、両面テープには、ゴム部材16が紙15の上を摺動したときに紙15がガラス板11に対してずれることを防ぐことのできるだけの接着力がある。ガラス板11に貼り付けられた紙15は、ガラス板11の上面11bに対して少し浮く。そのため、ガラス板11の上面11bとそこに貼り付けられた紙15との間には薄い空気層が形成される。
【0033】
上記の通り、ガラス板11に入射した光は、ガラス板11の表面が空気と接している場所に置いては、その表面で全反射する。しかし、紙15の上からゴム部材16が押し付けられると、ゴム部材16と紙15との接触面の下において、ガラス板11と紙15との間の空気層が非常に薄くなったり、ガラス板11と紙15とが密着したりする。その結果、ゴム部材16が押し付けられた部分(押圧部分)において、ガラス板11の表面での光の反射条件が変わり、光が全反射しなくなる。そのため、ガラス板11の下のカメラ13の位置においては、押圧部分が明るく見え、それ以外の部分がほぼ黒に見える。また、押圧の圧力が大きくガラス板11と紙15との間の空気層が薄い部分ほど明るく見え、ガラス板11と紙15が密着した部分は一番明るく見える。
【0034】
なお、ガラス板11と空気の境界で全反射し、ガラス板11と紙15の境界で全反射しないのは、ガラスの屈折率が約1.52、空気の屈折率が約1.00、紙の屈折率が約1.50という違いがあり、それによってガラスと空気との境界と、ガラスと紙との境界とで臨界角が異なるからである。
【0035】
また、ゴム部材16の押圧部分において当然ゴム部材16と紙15とが接触するので、ゴム部材16の押圧部分として明るく見える部分の形状及び大きさは、ゴム部材16と紙15との接触面の形状及び大きさと一致する。また、ゴム部材16と紙15との接触面の形状及び大きさは、ゴム部材16をガラス板11に直接押し付けたと仮定したときのゴム部材16とガラス板11との接触面の形状及び大きさとほぼ同じとみなすことができる。
【0036】
撮影装置10による観察方法に使用されるゴム部材16は、タイヤからプライやベルト等を剥がしたうえトレッドゴムの一部を切り出すことにより作製される。例えば、1つのゴム部材16は、タイヤから1つのブロックを切り出したものや、複数のブロックのまとまりを切り出したものである。
【0037】
撮影装置10による観察方法の実施の際、作業者は、撮影装置10が配置されている試験室の照明を消灯する。また、作業者は、太陽光等の光が試験室に入り込まないようにし、試験室の中にある機器等ができるだけ発光しないようにする。その状態で、作業者は、左右両側のライトガイド14を点灯させる。ライトガイド14のスリット24から発せられた光は、ガラス板11へ入射し、ガラス板11の内部で全反射する。
【0038】
次に、作業者は、ゴム部材16を治具21に取り付け、その治具21を撮影装置10の保持部12に保持させる。保持部12は、治具21を介してゴム部材16を保持すると、そのゴム部材16をガラス板11上の紙15に押圧し、さらに、紙15の上を一定の速度で移動させて滑らせる。滑りにより、ゴム部材16はせん断変形する。
【0039】
このような保持部12の動作の間、カメラ13がガラス板11の下から複数枚の写真を撮影する。撮影範囲は、ゴム部材16の押圧部分を含む範囲である。ゴム部材16の押圧部分では光の全反射が阻害される(つまり、光が全反射しなくなりガラス板11の上面11bを透過して紙15に当たる)ので、カメラ13の撮影する写真においては、押圧部分が明るく映り、それ以外の部分はほぼ黒に見える、また、写真には輝度分布がある。具体的には、押圧の圧力が大きくガラス板11と紙15との間の空気層が薄い部分ほど明るく見え、ガラス板11と紙15が密着した部分は一番明るく見える。
【0040】
一例として、図4(a)のようにゴム部材16の左側の部分が紙15に押圧されているときに取得される画像を、図4(b)に示す。図4(a)、(b)から、ゴム部材16の押圧部分が明るく、その他の部分が黒い画像が取得されることがわかる。また、紙15に強く押し付けられて圧力が大きい部分ほど明るいことがわかる。
【0041】
ゴム部材16をガラス板11上の紙15に押圧してから、ゴム部材16の滑りが終了しカメラ13による複数枚の写真の撮影が完了するまでが、1回の滑り試験である。
【0042】
カメラ13により撮影された写真(画像)は解析装置17に取得される。解析装置17に取得される各画像にはその画像の撮影時刻が紐付けられている。取得された画像に基づき、解析装置17において所定の解析がなされる。所定の解析とは、例えば、滑りによる接触面積変化の解析や、滑り中の接触圧分布の解析である。
【0043】
接触面積変化の解析においては、まず、解析装置17は、滑らせる前の押圧時の画像及びその後の滑り中の複数の画像のそれぞれについて、所定の階調を閾値とした二値化処理を行う。これにより、滑らせる前の押圧時及びその後の滑り中の複数時点についての、押圧部分が白、その他の部分が黒のモノクロ画像が生成される。次に、解析装置17は、モノクロ画像に基づき、滑らせる前の押圧時及びその後の滑り中の複数時点のそれぞれの接触面積(押圧部分の面積)を算出する。次に、解析装置17は、滑らせる前の押圧時の接触面積を基準値(例えば100)としたときの、その後の滑り中の複数時点のそれぞれの接触面積を指標化する。これにより、滑りによる接触面積の変動を明らかにすることができる。
【0044】
また、接触圧分布の解析においては、解析装置17は、滑り中の画像における輝度分布を接触圧分布に換算する。換算には、別の試験で取得された、輝度と接触圧との関係式が使用される。この換算により、滑り中のゴム部材16の接触圧分布を明らかにすることができる。また、異なる複数の温度条件下でそれぞれゴム部材16の滑り試験を行い、温度の違いによる接触圧分布の違いを明らかにすることもできる。
【0045】
以上のように、本実施形態の観察方法においては、作業者がガラス板11に光を入射してガラス板11の内部において全反射させる。また、作業者がガラス板11の上に紙15を配置する。その上で、保持部12が紙15の上からゴム部材16を押圧することにより、ゴム部材16と紙15との接触面を生じさせるとともに、その接触面の下において光が全反射しないようにする(つまり、光がガラス板11の上面11bを透過して紙15に当たるようにする)。その押圧部分をカメラ13がガラス板11の下から撮影することにより、ゴム部材16と紙15の表面との接触面の画像を取得する。
【0046】
この方法により、上記のように、押圧部分が明るくそれ以外の部分が黒い画像を取得することができる。ここで、ゴム部材16の接触する接触面が紙15の表面であり滑らかな面であるため、画像における明るい部分がゴム部材16と紙15との実際の接触面の形状及び大きさを精度良く再現することとなる。そのため、この方法によりゴム部材16の接触面をより正確に観察することができる。また、画像における明るい部分は、ゴム部材16とガラス板11とが接触した場合の両者の接触面の形状及び大きさとほぼ同じとみなすことができる。
【0047】
また、ガラス板11の上に紙15が配置されるため、試験室に太陽光が差し込んでいたり試験室内で照明が点いていたりしても、その光がガラス板11を通過してカメラ13に入り込むことを防ぐことができる。つまり、紙15が太陽光等の直接照明を遮断する。そのため、カメラ13に入り込む光をライトガイド14からの間接照明のみとすることができる。また、ガラス板11の上に紙15が配置されるため、紙15より上にあるゴム部材16や治具21等がカメラ13で撮影する画像に入り込むことを防ぐことができる。このような紙15の効果により、画像において押圧部分のみが明るく映ることになり、ゴム部材16の接触面をより正確に観察することができる。
【0048】
ここで、紙15の表面の算術平均粗さRaが0.1μm~2.0μmであれば、紙15の表面が特に滑らかであると言え、画像における明るい部分がゴム部材16と紙15との実際の接触面の形状及び大きさを精度良く再現していると言える。また、紙15の厚みが0.2mm以上であれば紙15の強度が十分となり、ゴム部材16が紙15の上を摺動したときに紙15が破れにくい。また、紙15の厚みが0.5mm以下であれば、試験室の温度が変化しても紙15の弾性に影響が生じにくく、温度変化の影響を受けずにゴム部材16と紙15との接触面を観察することができる。紙15の厚みが0.3mm以下であれば、温度変化が紙15の弾性にさらに影響しにくい。
【0049】
また、ガラス板11の左右両側にそれぞれライトガイド14が設けられており、左右両側から照射された光がガラス板11に入射するため、ガラス板11の内部全体が明るくなりやすく、しかも均一な明るさになりやすい。そのため、カメラ13で撮影される画像において、明るさにムラが生じにくい。
【0050】
また、ライトガイド14におけるスリット24はガラス板11へ向かっての発光部分であると言えるが、このスリット24の厚みL2が、ガラス板11の厚みよりも薄い。そのため、スリット24から発せられた光のほとんどがガラス板11に入射することとなり、ガラス板11の周囲に光が漏れにくく、カメラ13に余計な光が入らない。また、スリット24の厚み方向の中心位置が、ガラス板11の厚み方向の中心位置と一致していれば、ガラス板11の内部において明るさにムラが生じにくい。
【0051】
また、スリット24の奥行方向の長さL3が、ガラス板11の奥行方向の長さL4よりも短いことからも、スリット24から発せられた光のほとんどがガラス板11に入射することとなり、ガラス板11の周囲に光が漏れにくくなる。
【0052】
また、スリット24とガラス板11の側面11aとの間に隙間があるため、ライトガイド14の熱がガラス板11に伝わりにくい。その隙間の長さL1が0.1mm以上であるため、ライトガイド14の熱がガラス板11に伝わることを十分に防ぐことができる。また、隙間の長さL1が1.0mm以下であるため、スリット24から発せられた光がガラス板11の周囲に漏れにくい。
【0053】
また、ガラス板11の上面11b及び下面11cの算術平均粗さRaが0.01μm~0.12μmと滑らかであれば、上面11b及び下面11cで全反射が生じやすい。また、ガラス板11の側面11aの算術平均粗さRaが0.01μm~0.12μmと滑らかであれば、ライトガイド14から発せられた光が側面11aで散乱されることなくガラス板11に入射されやすい。
【0054】
以上の実施形態に対し様々な変更を行うことができる。例えば、透明体として、ガラス板11の代わりにアクリル板等が使用されても良い。また、カメラ13として動画を撮影できるものが使用され、動画の中から画像が取得されても良い。また、ゴム部材16は、タイヤから切り出したものではなく、サンプルモールドによってサンプルとして作製されたものでも良い。
【0055】
実施例及び比較例の画像を図5に示す。図5(a)は実施例の画像で、上記実施形態の方法により実際に取得された画像である。図5(b)は比較例の画像で、ガラス板の上に紙を設けずに滑り試験を行った点で、上記実施形態の方法と異なる。
【0056】
図5(a)から、実施例では押圧部分とそれ以外の部分との輝度差が大きく、押圧部分が明瞭であることがわかる。
【0057】
一方、図5(b)から、比較例では押圧部分とそれ以外の部分との輝度差が小さいことがわかる。また、ゴム部材の押圧部分以外の部分(具体的には図5(b)において矢印で示す部分一帯)が若干明るくなっていることがわかる。このように、比較例では押圧部分が不明瞭になっている。なお、比較例においても、ライトガイドをより明るくすることにより、ゴム部材の押圧部分の輝度を実施例と同等にすることができた。しかし、ライトガイドをより明るくすると、押圧部分の周囲も明るくなってしまい押圧部分がさらに不明瞭になってしまった。
【符号の説明】
【0058】
10…撮影装置、11…ガラス板、11a…側面、11b…上面、11c…下面、12…保持部、13…カメラ、14…ライトガイド、15…紙、16…ゴム部材、17…解析装置、21…治具、22…結束ファイバー、23…筐体、24…スリット
図1
図2
図3
図4
図5