(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055374
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】建物画像表示装置、及び建物画像表示方法
(51)【国際特許分類】
G06F 16/53 20190101AFI20240411BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240411BHJP
G06F 30/13 20200101ALI20240411BHJP
【FI】
G06F16/53
G06Q50/08
G06F30/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162234
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】西口 絵里子
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅之
(72)【発明者】
【氏名】森 豊
【テーマコード(参考)】
5B146
5B175
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DE06
5B146DL08
5B175DA02
5B175FB03
5B175GA01
5B175HA01
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】建物のデザインに関する要望を具現化し、要望に応じたデザインを有する建物のイメージを対象者に提示することが可能な装置及び方法を提供する。
【解決手段】建物画像表示装置10が、建物のデザインにおける特徴に関する2以上の内容のそれぞれについて、デザインに対する印象に及ぼす影響度を印象毎に規定した影響度情報を、記憶部22に記憶し、対象者が要求する建物のデザインの印象を表すワードとして指定された指定ワードを受け付け、影響度情報及び指定ワードに基づき、2以上の内容のそれぞれについて、指定ワードと対応する印象に及ぼす影響度に応じた評価値を算出し、評価値に基づいて、2以上の内容の中から選定内容を選定し、特徴が選定内容となった建物のデザインを示す画像を画面に表示させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物のデザインにおける特徴に関する2以上の内容のそれぞれについて、前記デザインに対する印象に及ぼす影響度を前記印象毎に規定した影響度情報を、記憶する記憶部と、
対象者が要求する建物のデザインの印象を表すワードとして指定された指定ワードを受け付ける受付部と、
前記影響度情報及び前記指定ワードに基づき、前記2以上の内容のそれぞれについて、前記指定ワードと対応する前記印象に及ぼす前記影響度に応じた評価値を算出する算出部と、
前記評価値に基づいて、前記2以上の内容の中から選定内容を選定する選定部と、
前記特徴が前記選定内容となった建物のデザインを示す画像を画面に表示させる表示部と、を有する建物画像表示装置。
【請求項2】
前記影響度は、予め選ばれた感性ワードによって表される前記印象を対象印象とした場合に、前記特徴が前記2以上の内容のいずれかとなった建物のデザインを見た際に被験者が感じる前記対象印象の度合いに基づいて算出される値であり、
前記特徴が、複数の特徴であり、各々の前記特徴に関して前記2以上の内容が設定される場合に、前記複数の特徴の各々に関する前記2以上の内容のそれぞれについて前記影響度を前記印象毎に規定した前記影響度情報が前記記憶部に記憶される、請求項1に記載の建物画像表示装置。
【請求項3】
前記感性ワードと類似する1以上の類似ワードについての登録情報が前記記憶部に記憶されており、
前記受付部が、前記感性ワードと一致せず且つ前記類似ワードと一致する前記指定ワードを受け付けた場合、前記算出部は、
前記指定ワードを、該指定ワードと類似する前記感性ワードに変換し、
変換された前記感性ワードによって表される前記印象に及ぼす前記影響度に応じた前記評価値を、前記2以上の内容のそれぞれについて算出する、請求項2に記載の建物画像表示装置。
【請求項4】
前記受付部が2以上の前記指定ワードを受け付けた場合に、前記指定ワードと対応する前記印象に対する優先度を、前記指定ワード毎に設定する設定部をさらに有し、
前記算出部は、
前記影響度情報に基づき、前記2以上の内容のそれぞれについて、前記指定ワードと対応する前記印象に及ぼす前記影響度を、前記指定ワード毎に特定し、
前記2以上の内容のそれぞれについて、前記指定ワード毎に特定された前記指定ワードと対応する前記印象に及ぼす前記影響度と、前記指定ワード毎に設定された前記指定ワードと対応する前記印象に対する優先度とに基づいて、前記評価値を算出する、請求項1に記載の建物画像表示装置。
【請求項5】
前記特徴が、複数の特徴であり、前記複数の特徴の各々に関して前記2以上の内容が設定される場合に、
前記算出部は、前記複数の特徴の各々に関する前記2以上の内容のそれぞれについて、前記評価値を算出し、
前記選定部は、
前記複数の特徴の各々について、前記2以上の内容から、前記評価値が選定条件を満たす前記選定内容を選定し、
前記複数の特徴の各々について選定された前記選定内容の組み合わせパターンを作成し、
前記表示部は、前記複数の特徴の各々が前記組み合わせパターンに含まれる前記選定内容となった建物のデザインを示す前記画像を表示させる、請求項1に記載の建物画像表示装置。
【請求項6】
前記複数の特徴の各々が前記組み合わせパターンに含まれる前記選定内容となった建物が、建物の仕様条件と適合するか否かを判定する判定部を備え、
前記複数の特徴の各々が前記組み合わせパターンに含まれる前記選定内容となった建物が前記仕様条件と適合すると判定された場合、前記表示部が、前記複数の特徴の各々が前記組み合わせパターンに含まれる前記選定内容となった建物のデザインを示す前記画像を表示させる、請求項5に記載の建物画像表示装置。
【請求項7】
前記複数の特徴の各々の内容の組み合わせに関する制限パターンが前記仕様条件として規定されている場合に、前記判定部は、前記組み合わせパターンが前記制限パターンに該当するか否かを判別することによって、前記複数の特徴の各々が前記組み合わせパターンに含まれる前記選定内容となった建物が前記仕様条件と適合するか否かを判定する、請求項6に記載の建物画像表示装置。
【請求項8】
前記制限パターンは、建物の建設地に応じて決められ、当該建設地に建設される建物において採用されない前記複数の特徴の各々の内容の組み合わせである、請求項7に記載の建物画像表示装置。
【請求項9】
前記表示部は、前記特徴が前記選定内容となった実在の建物のデザインを示す前記画像を検索し、検索された前記画像を表示させる、請求項1に記載の建物画像表示装置。
【請求項10】
前記表示部は、前記特徴が前記選定内容となった建物のデザインを示す仮想画像を生成し、前記仮想画像を表示させる、請求項1に記載の建物画像表示装置。
【請求項11】
建物のデザインにおける特徴に関する2以上の内容のそれぞれについて、前記デザインに対する印象に及ぼす影響度を前記印象毎に規定した影響度情報が、記憶部に記憶され、
プロセッサが、対象者が要求する建物のデザインの印象を表すワードとして指定された指定ワードを受け付け、
プロセッサが、前記影響度情報及び前記指定ワードに基づき、前記2以上の内容のそれぞれについて、前記指定ワードと対応する前記印象に及ぼす前記影響度に応じた評価値を算出し、
プロセッサが、前記評価値に基づいて、前記2以上の内容の中から選定内容を選定し、
プロセッサが、前記特徴が前記選定内容となった建物のデザインを示す画像を画面に表示させる、建物画像表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物画像表示装置、及び建物画像表示方法に係り、特に、対象者が要求する建物のデザインに応じた画像を表示可能な建物画像表示装置、及び建物画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅のような建物の購入を検討する顧客に販売対象の建物(物件)を提案する際に、顧客の要望に適合する建物の仕様を作成し、その内容を画面に表示することは、既に行われており、そのような作業を支援する装置(コンピュータ)も既に知られている。例えば、特許文献1に記載された住宅プラン提案装置は、住宅についての顧客要望を取得し、その取得した顧客要望に基づき住宅プランデータベースより顧客の要望に合う住宅プランを抽出する。このような装置によれば、顧客満足度の高い住宅プランを提案することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物の仕様のうち、建物のデザインは、特に重要な事項であり、建物の仕様を決める上で、通常、建物のデザインに対する要望を顧客から取得(聴取)する。ただし、顧客から取得したデザインの要望が、感性(感覚)に基づく内容であった場合、その内容に合致するように建物の仕様を決めるには、十分な知識や経験が必要となる。そのため、知識及び経験に乏しい者が顧客の要望に応じて建物の仕様を決める場合には、相当の手間と時間が掛かる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、建物のデザインに関する要望を具現化し、その要望に応じたデザインを有する建物のイメージを提示することが可能な装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、本発明の建物画像表示装置によれば、建物のデザインにおける特徴に関する2以上の内容のそれぞれについて、デザインに対する印象に及ぼす影響度を印象毎に規定した影響度情報を、記憶する記憶部と、対象者が要求する建物のデザインの印象を表すワードとして指定された指定ワードを受け付ける受付部と、影響度情報及び指定ワードに基づき、2以上の内容のそれぞれについて、指定ワードと対応する印象に及ぼす影響度に応じた評価値を算出する算出部と、評価値に基づいて、2以上の内容の中から選定内容を選定する選定部と、特徴が選定内容となった建物のデザインを示す画像を画面に表示させる表示部と、を有することを特徴とする。
上記の装置によれば、建物のデザインに関する要望を感性工学の手法に基づいて具現化し、その要望に応じたデザインを有する建物の画像(イメージ)を、顧客等の対象者に提示することが可能である。
【0007】
また、影響度は、予め選ばれた感性ワードによって表される印象を対象印象とした場合に、特徴が2以上の内容のいずれかとなった建物のデザインを見た際に被験者が感じる対象印象の度合いに基づいて算出される値であってもよい。この場合、特徴が、複数の特徴であり、各々の特徴に関して2以上の内容が設定される場合に、複数の特徴の各々に関する2以上の内容のそれぞれについて影響度を印象毎に規定した影響度情報が記憶部に記憶されると、好適である。
上記の構成によれば、建物のデザインにおける複数の特徴の各々に関する2以上の内容のそれぞれについて、指定ワードと対応する印象に及ぼす影響度を影響度情報から特定し、特定された影響度に基づいて評価値を適切に算出することができる。
【0008】
また、感性ワードと類似する1以上の類似ワードについての登録情報が記憶部に記憶されてもよい。かかる構成において、上記の受付部が、感性ワードと一致せず且つ類似ワードと一致する指定ワードを受け付けた場合、上記の算出部は、指定ワードを、指定ワードと類似する感性ワードに変換し、変換された感性ワードによって表される印象に及ぼす影響度に応じた評価値を、2以上の内容のそれぞれについて算出するとよい。
上記の構成によれば、指定ワードが感性ワードと一致しない場合であっても、その指定ワードが類似ワードと一致していれば、当該指定ワードと対応する印象を建物のデザインとして具現化(イメージ化)することができる。
【0009】
また、本発明の建物画像表示装置は、上記の受付部が2以上の指定ワードを受け付けた場合に、指定ワードと対応する印象に対する優先度を、指定ワード毎に設定する設定部をさらに有してもよい。かかる構成において、上記の算出部は、影響度情報に基づき、2以上の内容のそれぞれについて、指定ワードと対応する印象に及ぼす影響度を、指定ワード毎に特定し、2以上の内容のそれぞれについて、指定ワード毎に特定された指定ワードと対応する印象に及ぼす影響度と、指定ワード毎に設定された指定ワードと対応する印象に対する優先度とに基づいて、評価値を算出するとよい。
上記の構成によれば、2以上の指定ワードを受け付けた場合、それぞれの指定ワードと対応する印象に対する優先度を考慮して、評価値を算出することができる。これにより、2以上の指定ワードのそれぞれをどの程度優先するかを決め、その内容を踏まえて、指定ワードと対応する印象を建物のデザインとして具現化することができる。
【0010】
また、特徴が、複数の特徴であり、複数の特徴の各々に関して2以上の内容が設定されてもよい。この場合に、上記の算出部は、複数の特徴の各々に関する2以上の内容のそれぞれについて、評価値を算出してもよい。また、上記の選定部は、複数の特徴の各々について、2以上の内容から、評価値が選定条件を満たす選定内容を選定し、複数の特徴の各々について選定された選定内容の組み合わせパターンを作成してもよい。そして、表示部は、複数の特徴の各々が組み合わせパターンに含まれる選定内容となった建物のデザインを示す画像を表示させるとよい。
上記の構成によれば、指定ワードに基づいて、建物のデザインにおける複数の特徴の各々の内容を選定し、選定内容の組み合わせパターンに係る建物のデザインの画像を表示することができる。これにより、建物のデザインに関する要望をより細やかに具現化して、そのイメージを対象者に提示することが可能となる。
【0011】
また、本発明の建物画像表示装置は、複数の特徴の各々が組み合わせパターンに含まれる選定内容となった建物が、建物の仕様条件と適合するか否かを判定する判定部を備えてもよい。かかる構成において、複数の特徴の各々が組み合わせパターンに含まれる選定内容となった建物が仕様条件と適合すると判定された場合、上記の表示部が、複数の特徴の各々が組み合わせパターンに含まれる選定内容となった建物のデザインを示す画像を表示させてもよい。
上記の構成によれば、建物のデザインにおける複数の特徴の各々の内容を指定ワードに基づいて選定した際に、選定内容の組み合わせパターンの適否を、建物の仕様条件に基づいて判定することができる。
【0012】
また、複数の特徴の各々の内容の組み合わせに関する制限パターンが仕様条件として規定されてもよい。この場合に、上記の判定部は、組み合わせパターンが制限パターンに該当するか否かを判別することによって、複数の特徴の各々が組み合わせパターンに含まれる選定内容となった建物が仕様条件と適合するか否かを判定してもよい。
上記の構成によれば、選定内容の組み合わせパターンの適否を、制限パターンとの照合によって容易に判定することができる。
【0013】
また、上記の制限パターンは、建物の建設地に応じて決められ、当該建設地に建設される建物において採用されない複数の特徴の各々の内容の組み合わせであってもよい。
上記の構成によれば、建物のデザインにおける複数の特徴の各々の内容を、建物の建設地に基づく制限パターンによって更に絞り込むことができる。
【0014】
また、上記の表示部は、特徴が選定内容となった実在の建物のデザインを示す画像を検索し、検索された画像を表示させてもよい。
上記の構成によれば、指定ワードと対応する印象を具現化した建物のデザインを、実在する建物のデザインを示す画像によって、より具体的に確認することができる。
【0015】
また、上記の表示部は、特徴が選定内容となった建物のデザインを示す仮想画像を生成し、仮想画像を表示させてもよい。
上記の構成によれば、指定ワードと対応する印象を具現化した建物のデザインを、仮想画像によって、より具体的に確認することができる。
【0016】
また、前述の課題は、本発明の建物画像表示方法によれば、建物のデザインにおける特徴に関する2以上の内容のそれぞれについて、デザインに対する印象に及ぼす影響度を印象毎に規定した影響度情報が、記憶部に記憶され、プロセッサが、対象者が要求する建物のデザインの印象を表すワードとして指定された指定ワードを受け付け、プロセッサが、影響度情報及び指定ワードに基づき、2以上の内容のそれぞれについて、指定ワードと対応する印象に及ぼす影響度に応じた評価値を算出し、プロセッサが、評価値に基づいて、2以上の内容の中から選定内容を選定し、プロセッサが、特徴が選定内容となった建物のデザインを示す画像を画面に表示させることで解決される。
上記の方法によれば、建物のデザインに関する要望を感性工学の手法に基づいて具現化し、要望に応じたデザインを有する建物の画像(イメージ)を対象者に提示することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、建物のデザインに関する対象者の要望が感性に基づくものであっても、その要望から建物の特徴について具体的な内容を特定し、その内容の特徴を有する建物のデザインを表した画像を画面に表示させることができる。これにより、対象者の要望に応じたデザインを有する建物のイメージを、対象者に提示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る建物画像表示装置の利用例を示す図である。
【
図2】建物画像表示装置を利用する際の画面遷移を示す図である。
【
図3】本発明の一つの実施形態に係る建物画像表示装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図6】本発明の一つの実施形態に係る建物画像表示装置の機能についての説明図である。
【
図7】評価値の算出、及び選定内容の組み合わせパターンの作成についての説明図である。
【
図8A】本発明の一つの実施形態に係る建物画像表示方法のフローである(その1)。
【
図8B】本発明の一つの実施形態に係る建物画像表示方法のフローである(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)について、添付の図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書に記載する「装置」という概念には、特定の機能を一台で発揮する単一の装置が含まれるとともに、分散してそれぞれが独立して存在しつつも協働(連携)して特定の機能を発揮する複数の装置の組み合わせも含まれることとする。
また、本明細書における「人」及び「者」は、個人であってもよく、世帯やグループのような複数の個人からなる集合及び団体を含み、また、企業等の法人も含むものとする。
【0020】
<<本実施形態に係る建物画像表示装置について>>
本実施形態に係る建物画像表示装置(以下、建物画像表示装置10)について、概要を説明する。
建物画像表示装置10は、
図1に示すようにコンピュータによって構成され、建物のデザインを示す画像をディスプレイ等の画面に表示させる機能を有する。本明細書において、「建物」とは、設計された仕様及び建設条件に基づいて、建設地に建設される建築物であり、例えば、住宅、具体的には戸建住宅である。また、「建物のデザイン」とは、建物について、視覚によって認識することができる様子(見た目)であり、具体的には、建物の外観又は内装のデザインである。本実施形態において、「建物のデザイン」は、住宅の外観であることとする。
【0021】
本実施形態において、建物画像表示装置10は、感性工学に基づく手法により、対象者が要求する住宅の外観の印象を具現化(イメージ化)し、その印象に合致した外観を有する住宅の画像を表示することが可能である。ここで、「対象者」とは、住宅の外観に対する要望を表す者(人)であり、例えば、住宅の購入を検討している顧客である。
【0022】
建物画像表示装置10の用途は、特に限定されないが、例えば、住宅販売会社が商談用のツールとして用いてもよい。その場合の建物画像表示装置10のユーザは、住宅販売会社、詳しくは、商談時に建物画像表示装置10を操作する従業員である。
あるいは、顧客が、自分が希望する建物の外観を具現化する目的で、建物画像表示装置10を用いてもよく、その場合の建物画像表示装置10のユーザは、顧客自身である。
あるいは、住宅設計者が設計支援用ツールとして建物画像表示装置10を用いてもよく、その場合の建物画像表示装置10のユーザは、住宅設計者となる。
以下では、住宅販売会社が商談用ツールとして建物画像表示装置10を利用するケースを例に挙げて説明することとする。
【0023】
建物画像表示装置10の具体的な利用例について、
図1及び2を参照しながら説明する。ユーザである住宅販売会社の従業員は、
図1に示すように、商談相手である顧客とのコミュニケーションを通じて、住宅に対する顧客の要望を聴取する。この際、顧客の要望には、対象者が要求する住宅の外観の印象を表すワードとして指定された指定ワードが含まれる。指定ワードは、「明るい」、「洋風感がある」、及び「すっきりした」等のような、対象者が希望する住宅の外観の印象を言語化したものである。
【0024】
ユーザは、
図2の上図に示すように、指定ワード等の情報を建物画像表示装置10に入力する。建物画像表示装置10は、ユーザの入力情報に基づいて、後述の建物画像表示フローを実施する。その結果、建物画像表示装置10のディスプレイの画面には、
図2の下図に示すように、顧客の要望に応じた住宅の外観を示す画像、詳しくは、上記の指定ワードによって表された印象に基づく外観を呈する住宅の画像が表示される。
なお、以下では、建物画像表示装置10によって表示される画像を「住宅外観の画像」とも呼ぶこととする。
【0025】
また、本実施形態では、住宅外観の画像を表示する際、指定ワードによって表された印象に基づく外観を呈する住宅が実在し、且つその住宅の画像が登録されている場合には、その実在する住宅の外観を示す画像が表示される。他方、指定ワードによって表された印象に基づく外観を呈する実在の住宅が存在しない場合、建物画像表示装置10は、その住宅の外観を示す仮想画像を、CG(Computer Graphics)によって作成し、作成された仮想画像を表示する。
【0026】
そして、ユーザは、商談中、建物画像表示装置10によって表示された住宅が以下の画像を顧客に提示して、顧客が指定した印象を具現化した住宅の外観を顧客に確認してもらう。他方、顧客は、建物画像表示装置10の画面に表示された画像が示す住宅の外観を見て、その住宅の購入を検討する。
【0027】
表示画像が示す住宅の外観について説明すると、その住宅の外観に現れる特徴は、顧客の指定ワードに基づいて選定された内容となっている。例えば、指定ワードが「明るい」というワードである場合、外観に現れる特徴が「明るい」という印象を受けやすい内容となった住宅の外観を示す画像が表示される。
【0028】
ここで、住宅の外観に現れる特徴とは、外壁や屋根等のような住宅の外観を構成する要素の形状、色、材質、形式(種類)、大きさ、配置位置及び向き等である。また、本実施形態において、特徴は、複数の要素の組み合わせにおける、それぞれの要素の形状、色、材質、形式(種類)、大きさ、配置位置及び向き等であってもよい。複数の要素の組み合わせからなる特徴の具体例としては、玄関とベランダとの位置関係等が挙げられる。
特徴の内容とは、特徴に関する具体的な内容であり、例えば、外壁の色という特徴については、「白系」、「黒系」、及び「茶系」等が当該特徴の内容に該当する。
なお、以下では、便宜上、外観に現れる特徴を「外観上の特徴」と呼ぶ場合がある。
【0029】
本実施形態では、外観上の特徴に対して、2以上の内容が選択肢(候補)として設定されており、2以上の内容の中のいずれかが、その特徴の内容(以下、選定内容という)として選定される。このとき、選定内容は、顧客の指定ワードに基づいて選定される。すなわち、建物画像表示装置10は、特徴の内容が指定ワードに基づく選定内容となった住宅の外観を示す画像を表示する。
【0030】
また、本実施形態では、2以上の指定ワードが指定されてもよく、その場合、建物画像表示装置10は、2以上の指定ワードの各々によって表される印象に基づく外観を呈する住宅の画像を表示する。具体的には、外観上の特徴が2以上の指定ワードの各々に基づく選定内容となった住宅の外観を示す画像が表示される。
【0031】
また、外観上の特徴は、少なくとも1つ以上設定されるが、本実施形態では、複数の特徴が設定されている。すなわち、建物画像表示装置10は、複数の特徴のそれぞれが顧客の指定ワードに基づく選定内容となった住宅の外観を示す画像を表示する。
【0032】
さらに、本実施形態において、建物画像表示装置10は、複数の特徴のそれぞれの内容の組み合わせが住宅の仕様条件に適合するか否かを判定し、その組み合わせが仕様条件に適合する場合に限り、当該組み合わせに係る住宅の外観を示す画像を表示する。住宅の仕様条件とは、例えば、住宅の建設条件、具体的には住宅の建設予定地に関する条件、すなわち住宅の立地条件等である。つまり、複数の特徴のそれぞれの内容の組み合わせが、顧客の指定ワードに基づいて選定された内容であったとしても、住宅の立地条件に適合しない場合には、その組み合わせに係る住宅の外観を示す画像は、表示されない。
【0033】
また、住宅の仕様条件には、住宅の構造に関する顧客の要望、並びに、法規上若しくは構造上の制約が含まれ得る。つまり、複数の特徴のそれぞれの内容の組み合わせが、顧客の指定ワードに基づいて選定された内容であったとしても、顧客が望まない内容、あるいは法規上若しくは構造上の制約により実現不可能な内容である場合には、その組み合わせに係る住宅の外観を示す画像は、表示されない。
【0034】
<<本実施形態に係る建物画像表示装置の構成について>>
次に、建物画像表示装置10の構成例について説明する。建物画像表示装置10は、プロセッサを備えるコンピュータからなり、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション又はサーバコンピュータ等によって構成される。また、スマートフォン又はタブレット端末のような情報処理端末によって建物画像表示装置10が構成されてもよい。
【0035】
建物画像表示装置10は、1台のコンピュータによって構成されてもよく、あるいは並列分散された複数台のコンピュータによって構成されてもよい。また、建物画像表示装置10を構成するコンピュータがサーバコンピュータである場合、ASP(Application Service Provider)、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)又はIaaS(Infrastructure as a Service)用のサーバコンピュータであってもよい。この場合、PCやタブレット端末等のクライアント端末にて必要な情報を入力すると、上記のサーバコンピュータが入力情報に基づいて各種の情報処理(演算)を実施し、その演算結果がクライアント端末側で出力される。この結果、建物画像表示装置10であるサーバコンピュータの機能をクライアント端末側で利用することができる。
【0036】
建物画像表示装置10を構成するコンピュータは、
図3に示すように、プロセッサ11、メモリ12、ストレージ13、通信用インタフェース14、入力機器15及び出力機器16を有する。
【0037】
プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、TPU(Tensor Processing Unit)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって構成される。
メモリ12は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリによって構成される。
【0038】
ストレージ13は、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、FD(Flexible Disc)、MOディスク(Magneto-Optical disc)、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、SDカード(Secure Digital card)、又はUSBメモリ(Universal Serial Bus memory)等によって構成される。ストレージ13は、建物画像表示装置10を構成するコンピュータ本体内に内蔵されてもよく、外付け形式でコンピュータ本体に取り付けてもよく、あるいは、ネットワーク上に存在する外部サーバ(例えば、データベースサーバやファイルサーバ)によって構成されてもよい。また、ストレージ13は、互いに異なる複数の記憶媒体によって構成されてもよく、又は、互いに分散された複数の記憶装置によって構成されてもよい。
【0039】
通信用インタフェース14は、例えばネットワークインターフェースカード、又は通信インタフェースボード等によって構成されるとよい。建物画像表示装置10を構成するコンピュータは、通信用インタフェース14を介して、インターネット又はモバイル通信回線等に接続された他の機器とデータ通信することが可能である。
【0040】
入力機器15は、例えばキーボード、マウス又はタッチパネル等によって構成される。また、入力機器15は、音声入力を受け付ける機器であってもよい。
出力機器16は、例えばディスプレイ等によって構成される。ディスプレイには、後述する建物画像表示フローにおいて各種の入力画面及び出力画面(詳しくは、画像表示画面)が表示される。
【0041】
また、建物画像表示装置10を構成するコンピュータには、ソフトウェアとして、オペレーティングシステム(OS)用のプログラム、及び、建物画像表示用のアプリケーションプログラムがインストールされている。
【0042】
また、ストレージ13には、建物画像表示フローの実行に必要な各種の情報が格納されており、例えば、後述する影響度情報が記憶されている。また、ストレージ13には、後述する類似ワードの登録情報、後述する制限パターンの情報、及び、実在する住宅の外観を示す画像情報等が、それぞれデータベース化されて蓄積されている。
以下、それぞれの情報について説明する。
【0043】
(影響度情報)
影響度情報は、住宅の外観に対する印象に及ぼす影響度を印象毎に規定した情報であり、建物画像表示装置10が顧客の指定ワードに基づいて住宅の外観上の特徴の内容を選定する際に参照される。より詳しく説明すると、本実施形態では、住宅の外観上の特徴として複数の特徴が設定されており、それぞれの特徴に関して2以上の内容が設定される。外観上の特徴を設定する具体的な方法は、特に限定されないが、例えば、外観との相関が比較的に強い特徴を、公知の因子分析法(具体的には因子抽出法又は回転法)を利用して抽出し、抽出された特徴を外観上の特徴として設定してもよい。
【0044】
影響度情報は、
図4に示すように、複数の特徴の各々に関する2以上の内容のそれぞれについて、住宅の外観に対する印象に及ぼす影響度を印象毎に規定している。影響度は、ある特徴が2以上の内容のいずれかとなった住宅の外観を見た際に被験者が感じる対象印象の度合いに基づいて算出される値、具体的には対象印象への寄与度である。対象印象は、予め選ばれた感性ワードによって表される印象である。
【0045】
感性ワードは、住宅の外観に対する印象を表すワードのうち、住宅の建築又は購入時に重視されるワードとして特定され、例えば、一般的な住宅の外観を示す画像を用いて、ラダリング法に基づくアンケート調査を行うことで、その調査結果から感性ワードを抽出するとよい。また、本実施形態において、感性ワードは、複数設定されており、データベース化されてストレージ13に記憶(登録)されている。
【0046】
複数の特徴の各々に関する2以上の内容のそれぞれについて、対象印象への影響度を特定する方法としては、例えば、特徴の内容が異なる建物の外観を示す画像(以下、調査用画像)を用いたアンケート調査を行う方法が利用可能である。アンケート調査では、被験者である調査モニタに調査用画像を見せて、SD(Semantic differential)法により対象印象の度合いを回答させる。なお、複数の特徴の各々に関する2以上の内容のそれぞれについて、被験者が感じる対象印象の度合いを取得する方法は、特に限定されず、上記以外の解析方法を利用してもよい。
【0047】
調査用画像は、複数の特徴のそれぞれについて内容毎に用意され、換言すると、複数の特徴のそれぞれの内容の組み合わせが、いずれかの調査用画像に現れる。なお、調査用画像は、実在する住宅の外観を示す画像でもよく、あるいは、CGによって作成された仮想画像でもよい。
【0048】
そして、調査モニタ分の回答結果から、複数の特徴の各々に関する2以上の内容のそれぞれについて、対象印象への影響度が算出される。
なお、影響度の算出結果の精度(確からしさ)は、上記のアンケート調査における母集団の人数、すなわち調査モニタの人数が増えるほど高くなる。そのため、より多くの調査モニタを確保する理由から、上記のアンケート調査をWebアンケート方式で行ってもよく、あるいはSNS(Social Networking Service)等を活用してもよい。
【0049】
以上のような手順にて取得される影響度情報では、
図4に示すように、感性ワードと、複数の特徴の各々に関する2以上の内容のそれぞれとが紐付けられており、具体的には、感性ワードによって表される印象(対象印象)への影響度が、それぞれの特徴の各内容について規定されている。
なお、感性ワード、及び対象印象への影響度は、時流又は流行の変遷に伴って変わり得るため、定期的に(例えば、数年毎に)上記のアンケート調査を行って影響度情報を更新するのが好ましい。
【0050】
(類似ワードの登録情報)
類似ワードの登録情報は、前述した感性ワードと類似する1以上の類似ワードを示す情報であり、本実施形態では、感性ワード毎に類似ワードの登録情報が蓄積されている。感性ワードと類似するワードを特定する方法は、特に限定されないが、例えば、辞書ツール等を利用して特定してもよく、あるいは、ワード間の類似度についての機械学習を実施し、その学習結果を利用して特定してもよい。
【0051】
(制限パターン)
制限パターンは、複数の特徴の各々の内容の組み合わせに関して、住宅での採用が制限される組み合わせパターンであり、具体的には、法規上又は構造上の制約によって実現できない組み合わせパターンである。ここで、
図5を参照しながら制限パターンの具体例について説明すると、例えば、「玄関ポーチの形式(種類)」という特徴の内容、及び「庇の有無」という特徴の内容の組み合わせに関しては、「引き込み型の玄関ポーチ+庇有り」が、制限パターンに該当する。また、「玄関ポーチの形式(種類)」という特徴の内容、及び、「玄関ポーチとベランダとの位置関係」という特徴の内容の組み合わせに関しては、「引き込み型の玄関ポーチ+玄関ポーチとベランダが同じ方位」が、制限パターンに該当する。
【0052】
(住宅外観の画像情報)
住宅外観の画像情報は、実在する住宅の外観を撮影して得られる撮影画像の情報(詳しくは、デジタル画像のデータ)であり、その外観に現れる特徴の内容と紐付けられてストレージ13に蓄積されている。
なお、住宅外観の画像情報は、新たな住宅が建設される度に追加されるため、通常の場合、ストレージ13に蓄積される住宅外観の画像情報は、時間の経過に応じて増加する。
【0053】
<<本実施形態に係る建物画像表示装置の機能について>>
建物画像表示装置10の構成について機能面から改めて説明する。建物画像表示装置10は、
図6に示すように、取得部21、記憶部22、受付部23、設定部24、算出部25、選定部26、判定部27及び表示部28を有する。また、表示部28は、検索部29及び描画部30を備えるように構成されている。
以上の機能部は、建物画像表示装置10を構成するコンピュータが備えるハードウェア機器と、そのコンピュータに搭載された各種プログラム等のソフトウェアとの協働によって実現される。以下、それぞれの機能部について説明する。
【0054】
(取得部)
取得部21は、顧客が要求する住宅の外観の画像を表示する上で必要となる各種の情報を取得する。具体的には、取得部21は、前述した要領で影響度情報を取得し、詳しくは、調査用画像を用いたアンケート調査の回答結果を集計する。これにより、取得部21は、複数の感性ワードの各々が示す印象を対象印象として、複数の特徴の各々に関する2以上の内容のそれぞれについて、対象印象への影響度を求める。
また、取得部21は、感性ワードと類似する類似ワードの登録情報を取得する。
また、取得部21は、住宅の仕様条件として、法規上又は構造上の制約に基づく制限パターンを取得する。
また、取得部21は、実在する住宅の外観を示す画像情報を、実在する住宅の数に応じた数の分だけ取得する。
【0055】
(記憶部)
記憶部22は、主としてストレージ13によって構成され、取得部21により取得された情報を記憶している。具体的に説明すると、記憶部22には影響度情報が記憶されている。また、記憶部22には、類似ワードの登録情報、及び制限パターンが、それぞれ、データベース化されて蓄積されている。また、記憶部22には、住宅外観の画像情報が、外観上の特徴の内容と紐付けされた状態で蓄積されている。
【0056】
(受付部)
受付部23は、入力機器15を通じてユーザの入力情報を受け付ける。ユーザの入力情報には、住宅に関する顧客の要求を示す情報が含まれ、この情報には、顧客が要求する住宅の外観の印象を表すワードとして指定された指定ワードが含まれる。本実施形態において、受付部23は、2以上の指定ワードを受け付けることができる。以下では、受付部23が2以上の指定ワードを受け付けるケースを例に挙げて説明することとする。
なお、受付部23が受け付ける情報には、指定ワード以外の情報、例えば、住宅の仕様条件、詳しくは住宅の建設条件、特に立地条件に関する情報がさらに含まれてもよい。
【0057】
(設定部)
設定部24は、受付部23が受け付けた2以上の指定ワードについて、各指定ワードと対応する印象に対する優先度を、指定ワード毎に設定する。指定ワードと対応する印象とは、指定ワードがいずれかの感性ワードと一致する場合には、その感性ワードによって表される印象である。他方、指定ワードがいずれの感性ワードとも一致せず、且ついずれかの類似ワードと一致する場合には、指定ワードと一致する類似ワードに類似する感性ワード、換言すると、指定ワードから類似ワードを介して変換された感性ワードによって表される印象が、指定ワードと対応する印象に該当する。
【0058】
優先度は、複数の印象のそれぞれに対する重み付けであり、複数の印象のそれぞれの優先度を合計して1になるように設定される。優先度を設定する具体的な方法については、特に限定されないが、例えば、ある指定ワードと対応する印象に対する優先度は、ユーザと顧客との商談中に顧客が当該指定ワードを発言した回数に応じて設定されてもよい。また、顧客の意向に応じて優先度が決められてもよく、すなわち、顧客の入力に基づいて優先度が設定されてもよい。また、ユーザが商談中に顧客から聴取した情報に応じて数値を入力し、その数値に応じて優先度が設定されてもよい。このように各印象に対する優先度は、顧客に応じて変化し得る値である。
【0059】
(算出部)
算出部25は、影響度情報及び指定ワードに基づき、複数の特徴の各々に関する2以上の内容のそれぞれについて、指定ワードと対応する印象に及ぼす影響度(以下、便宜的に「対応影響度」という)に応じた評価値を算出する。具体的に説明すると、本実施形態では、受付部23が2以上の指定ワードを受け付け、算出部25は、影響度情報に基づき、複数の特徴の各々に関する2以上の内容のそれぞれについて、対応影響度を指定ワード毎に特定する。
なお、指定ワードと対応する印象は、前述したように、指定ワードがいずれかの感性ワードと一致する場合には、その感性ワードによって表される印象である。他方、指定ワードがいずれの感性ワードとも一致せず、且ついずれかの類似ワードと一致する場合には、指定ワードと一致する類似ワードに類似する感性ワードによって表される印象が、指定ワードと対応する印象に該当する。
【0060】
そして、算出部25は、複数の特徴の各々に関する2以上の内容のそれぞれについて、指定ワード毎に特定された対応影響度と、指定ワード毎に設定された優先度(厳密には、指定ワードと対応する印象に対する優先度)とに基づいて、評価値を算出する。具体的には、対応影響度と優先度との積を評価値とし、複数の特徴の各々に関する2以上の内容のそれぞれについて、評価値を指定ワード毎に設定する。
【0061】
算出部25による評価値の算出手順について、
図7を参照しながら具体的に説明する。
図7に示すケースでは、「明るい」及び「すっきりした」という2つの指定ワードが受け付けられている。また、「明るい」という印象に対する優先度が0.7に、「すっきりした」という印象に対する優先度が0.3に、それぞれ、設定されている。また、複数の特徴として、「外壁の色」、「外壁の素材」及び「玄関ドアの色」が挙げられており、それぞれの特徴には、3つの内容が選択肢(候補)として設けられている。
【0062】
本実施形態において、算出部25は、評価値として、指定ワード毎に特定された対応影響度と優先度との積を求める。
図7に示すケースでは、指定ワード「明るい」について、特徴「外壁の色」が「白系」という内容に対する評価値が、1.75(=2.5×0.7)となり、特徴「外壁の素材」が「木系」という内容に対する評価値が、1.19(=1.7×0.7)となる。また、指定ワード「すっきりした」について、特徴「玄関ドアの色」が「白系」という内容に対する評価値が、0.6(=2.0×0.3)となる。
【0063】
なお、指定ワードが感性ワードと一致せず、且つ類似ワードと一致する場合、算出部25は、指定ワードを、その指定ワードと一致する類似ワードに類似する感性ワードに変換する。その上で、算出部25は、変換された感性ワードによって表される印象に及ぼす影響度(すなわち、対応影響度)に応じた評価値を、複数の特徴の各々に関する2以上の内容のそれぞれについて算出する。
【0064】
(選定部)
選定部26は、複数の特徴の各々について、算出部25により算出された評価値に基づいて、2以上の内容の中から選定内容を選定する。選定内容とは、2以上の内容のうち、評価値が選定条件を満たすもの、具体的には、いずれかの指定ワードについて算出された評価値が所定値(例えば、0.5)以上となった内容である。
図7に示すケースを例に挙げて説明すると、特徴「外壁の色」については、「白系」という内容、及び、「黒系」という内容が選定内容となる。また、特徴「外壁の素材」については、「木系」という内容が選定内容となる。また、特徴「玄関ドアの色」については、「白系」という内容が選定内容となる。
なお、上記の選定条件、すなわち、評価値に対して設定された上記の所定値は、任意に決めることができ、例えば、評価値から選定内容を選定する際の基準として妥当な値に決められるとよい。
【0065】
また、本実施形態において、選定部26は、複数の特徴の各々について選定された選定内容の組み合わせパターンを作成する。
図7に示すケースでは、下記2つのパターンA、Bが組み合わせパターンとして作成される。
・パターンA: 特徴「外壁の色」が「白系」+特徴「外壁の素材」が「木系」
+特徴「玄関ドアの色」が「白系」
・パターンB: 特徴「外壁の色」が「黒系」+特徴「外壁の素材」が「木系」
+特徴「玄関ドアの色」が「白系」
【0066】
(判定部)
判定部27は、選定部26により作成された選定内容の組み合わせパターンについての適否を判定する。具体的には、複数の特徴の各々が組み合わせパターンに含まれる選定内容となった住宅(以下、判定対象の住宅)が、住宅の仕様条件と適合するか否かを判定する。より詳しく説明すると、判定部27は、住宅の仕様条件として規定された制限パターンをストレージ13から読み出し、上記の組み合わせパターンが制限パターンに該当するか否かを判別することによって、判定対象の住宅が仕様条件と適合するか否かを判定する。
【0067】
(表示部)
表示部28は、特徴が選定内容となった住宅の外観を示す画像(住宅外観の画像)を画面に表示させ、詳しくは、複数の特徴の各々が選定部26により作成された組み合わせパターンに含まれる選定内容となった住宅の外観を示す画像を表示させる。
また、本実施形態では、複数の特徴の各々が組み合わせパターンに含まれる選定内容となった住宅が仕様条件と適合すると判定された場合に限り、表示部28が、その住宅の外観を示す画像を表示させる。このように本実施形態では、全ての組み合わせパターンのそれぞれについて、各組み合わせパターンに係る住宅の外観の画像を表示させるのではなく、仕様条件を満たす住宅、つまり、制限パターンに該当しない組み合わせパターンに係る住宅の外観の画像に絞り込んで表示させる。
なお、「組み合わせパターンに係る住宅」とは、外観上の複数の特徴の各々が組み合わせパターンに含まれる選定内容となった住宅のことである。
【0068】
また、本実施形態において、表示部28による画像の表示方法は、2つあり、そのうちの一つは、検索部29により検索される画像を表示させる方法である。検索部29は、組み合わせパターンに係る住宅の外観を示す画像を検索対象として、実在の住宅の外観を示す画像の中から検索する。具体的には、実在する住宅の外観を示す画像情報がストレージ13に蓄積されており、検索部29は、ストレージ13に蓄積された画像情報の中から検索対象の画像を検索し、検索対象の画像が存在した場合には、その画像を表示させる。
【0069】
もう一つの表示方法は、描画部30により描画される仮想画像を表示させる方法である。ストレージ13に蓄積された画像情報の中に検索対象の画像が存在しなかった場合、描画部30は、組み合わせパターンに係る住宅の外観を示す仮想画像(CG画像)を描画する。このとき、描画部30は、素材画像を参照し、素材画像を加工して仮想画像を描画する。素材画像は、住宅の外観を構成する各要素(パーツ)の外観を示す画像であり、複数の特徴のそれぞれについて、各特徴の内容毎に素材画像が用意されている。素材画像は、例えば、特徴の種類、及び特徴の内容と関連付けてデータベース化されてストレージ13に蓄積されてもよい。
【0070】
<<本実施形態に係る建物画像表示フローについて>>
以下では、上述した建物画像表示装置10を用いた情報処理フロー、すなわち建物画像表示フローについて説明する。建物画像表示フローは、本発明の建物画像表示方法を採用しており、
図8A及び8Bに示す流れに沿って進行する。つまり、
図8A、8Bに図示のフロー中の各ステップは、本発明の建物画像表示方法を構成する各要素に該当する。
なお、
図8A及び8Bに示す建物画像表示フローは、あくまでも一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、ステップの実施順序を入れ替えてもよい。
【0071】
建物画像表示フローの各ステップでは、建物画像表示装置10を構成するコンピュータのプロセッサ11が、各ステップと対応する処理を実行する。具体的に説明すると、建物画像表示フローでは、先ず、プロセッサ11が、入力受付処理を実行する(S001)。入力受付処理では、ユーザの入力情報を受け付ける。入力情報には、住宅に関する顧客の要求を示す情報が含まれる。また、顧客の要求を示す情報には、顧客が希望する住宅の外観の印象を表す指定ワードが含まれている。
なお、入力情報に含まれる指定ワードは、1つでもよく、あるいは複数でもよい。以下では、2以上の指定ワードを含む入力情報を受け付けたケースを想定して説明することとする。
【0072】
次に、プロセッサ11は、受け付けられた各指定ワードが、予め登録された感性ワードのいずれかと一致するか否かを判定する(S002)。各指定ワードがいずれかの感性ワードと一致する場合には、ステップS006に進む。他方、いずれの感性ワードにも一致しない指定ワードが存在する場合、プロセッサ11は、その指定ワードが、各感性ワードについて登録された類似ワードと一致するか否かを判定する(S003)。
【0073】
上記の指定ワードがいずれかの類似ワードと一致する場合、プロセッサ11は、その指定ワードを、当該指定ワードと一致する類似ワードに類似する感性ワードへ変換し(S004)、ステップS006に移行する。他方、上記の指定ワードがいずれの感性ワードとも一致せず、且ついずれの類似ワードとも一致しない場合、プロセッサ11は、その指定ワードを削除する(S005)。この場合、プロセッサ11は、ユーザに対して、削除されたワードとは異なる別の指定ワードの入力を促し、ステップS001に戻る。
【0074】
ステップS006において、プロセッサ11は、ステップS001にて受け付けた各指定ワードと対応する印象に対する優先度を、指定ワード毎に設定する。指定ワードと対応する印象は、指定ワードと一致する感性ワード、又は指定ワードから変換された感性ワードによって表される印象、すなわち対象印象である。
また、プロセッサ11は、ステップS001にて受け付けた各指定ワードと、ストレージ13に記憶されている影響度情報とに基づいて、各指定ワードと対応する印象に及ぼす影響度(すなわち、対応影響度)を、指定ワード毎に特定する(S007)。対応影響度は、住宅の外観に現れる複数の特徴の各々に関する2以上の内容のそれぞれについて算出され、その具体的な算出方法は、前述した通りである。
【0075】
そして、プロセッサ11は、複数の特徴の各々に関する2以上の内容のそれぞれについて、指定ワード毎に特定された対応影響度と、指定ワード毎に設定された優先度との積を、評価値として算出する(S008)。その後、プロセッサ11は、評価値の算出結果に基づいて、複数の特徴の各々について、評価値が選定条件を満たす選定内容を2以上の内容の中から選定する(S009)。選定条件は、前述したように、評価値が所定値以上(例えば、0.5以上)であるという条件である。
【0076】
次に、プロセッサ11は、複数の特徴の各々について選定された選定内容の組み合わせパターンを作成する(S010)。例えば、複数の特徴が特徴X、Y、Zであり、特徴Xの選定内容が内容x1、x2であり、特徴Yの選定内容が内容y1であり、特徴Zの選定内容が内容z1、z2、z3である場合、6個(=2×1×3)の組み合わせパターンが作成される。
【0077】
次に、プロセッサ11は、ステップS010にて作成された組み合わせパターンのそれぞれについて、その組み合わせパターンに係る住宅の外観を示す画像を、ストレージ13に蓄積された画像情報、すなわち、実在の住宅の外観を示す画像情報の中から検索する(S011)。そして、該当する画像情報が検索された場合、プロセッサ11は、検索された画像情報が示す住宅外観の画像を画面に表示させる(S012)。
【0078】
他方、該当する画像情報が検索されなかった場合、プロセッサ11は、ステップS011にて作成された組み合わせパターンのそれぞれについて、その組み合わせパターンに係る住宅が、住宅の仕様条件と適合するか否かを判定する(S013)。具体的には、プロセッサ11は、各組み合わせパターンがストレージに13に記憶された制限パターンのいずれかに該当するか否かを判定する。この結果、制限パターンに該当する組み合わせパターン、すなわち仕様条件を満たさない組み合わせパターンについては、削除される(S014)。
【0079】
制限パターンのいずれにも該当しない組み合わせパターンについては、その組み合わせパターンに係る住宅が仕様条件と適合していると判定される。そして、プロセッサ11は、仕様条件と適合した組み合わせパターンに係る住宅の外観を示す画像を表示させる。このとき、プロセッサ11は、ストレージ13に蓄積された素材画像を利用して、上記の組み合わせパターンに係る住宅の外観を示す仮想画像(CG画像)を生成し、生成された仮想画像を画面に表示させる(S015)。
【0080】
以上までに説明してきた一連のステップの実施により、建物画像表示フローが進行し、それぞれのステップを繰り返すことで、建物画像表示フローが続行され、各ステップで実行される処理に応じて、画面に表示される画像が切り替わる。そして、ユーザが所定の終了操作を実施すると(S016)、これを契機として、建物画像表示フローが終了する。
【0081】
以上までに説明してきたように、本実施形態によれば、住宅の外観に現れる複数の特徴の各々の内容を、顧客の要望から感性工学の手法に基づいて具現化し、具現化された内容となった特徴を有する住宅外観の画像を画面に表示させる。これにより、住宅販売会社の従業員であるユーザは、顧客との商談時に、顧客が指定したワードによって表される印象を住宅の外観として具現化(イメージ化)し、その住宅外観の画像を顧客に提示することができ、結果として、商談を円滑に進めることができる。また、顧客は、表示画像が示す住宅の外観を見て、その住宅の外観が自分の希望と合致しているかを確認して、当該住宅の購入を検討することができる。
【0082】
また、本実施形態では、複数の特徴の各々の内容を選定する際に、住宅の仕様条件、詳しくは、法規上又は構造上の制約に基づいて、それぞれの特徴の内容を絞り込むことができる。これにより、住宅外観の画像として、仕様条件を満たす住宅、すなわち実現可能な住宅の外観を示す画像が顧客に提示されるようになる。この結果、ユーザ及び顧客は、画面に表示された住宅の商談を安心して進めることができる。
【0083】
また、本実施形態では、顧客が指定したワードに基づいて選定された内容の特徴を有する住宅外観の画像として、同じ内容の特徴を有する実在の住宅の外観を示す画像を顧客に提示することができる。この場合、顧客は、自分が指定した印象を呈する外観を、実在する住宅外観の画像によって、より具体的に確認することができる。
【0084】
また、本実施形態では、顧客が指定したワードに基づいて選定された内容の特徴を有する住宅外観の画像として、実在の住宅の外観を示す画像がない場合に、仮想画像(CG画像)を描画して顧客に提示することができる。これにより、顧客は、自分が指定した印象を呈する住宅の外観を、仮想画像によって、より具体的に確認することができる。
【0085】
<<その他の実施形態について>>
以上までに、本発明の建物画像表示装置、及び建物画像表示方法に関する一つの実施形態を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
また、上記の説明の中で参照した図面が示す画面例も一例に過ぎず、画面の構成例、表示される情報の内容、及びGUI(Graphical User Interface)等は、システム設計の仕様及びユーザの好み等に応じて自由に設計することができ、また適宜変更し得るものである。
【0086】
また、上記の実施形態では、複数の特徴の各々の内容についての組み合わせパターンを作成し、組み合わせパターンが制限パターンに該当するか否かを判定することで、組み合わせパターンに係る住宅の外観が、住宅の仕様条件を満たしているか否かを判定した。また、上記の実施形態において、制限パターンは、法規上又は構造上の制約により実現できない組み合わせパターンとして、予め決められたものであることとした。
ただし、制限パターンは、上記の内容に限定されず、顧客が指定する住宅の建設プラン、及び、住宅の建設条件に関する顧客の要望等に基づいて決定されてもよい。例えば、制限パターンが、建物の建設地に応じて決められ、当該建設地に建設される建物では採用されない複数の特徴の各々の内容の組み合わせであってもよい。
具体例を挙げて説明すると、顧客が、住宅の建設条件として、リビングの方角、リビングと道路との位置関係、バルコニーと隣接住戸との位置関係、及び、玄関と駐車場との位置関係等を指定したとする。一方で、住宅の建設地が指定されることで、住宅周りの状況、具体的には、道路との位置関係や隣接住戸との位置関係が特定され得る。これらの立地条件を考慮して、上記の建設地に建てられる住宅で採用され得ないバルコニーの種類や設置位置、玄関の位置等が、制限パターンとして決められる。例えば、顧客が「隣接住戸に対面したバルコニー」を好まない場合、「全面バルコニー」及び「隣接住戸側のバルコニーの設置」が制限パターンとして決められることになる。
また、バルコニーが住宅本体の外壁から突出している長さ(すなわち、張り出した部分の長さ)が1m以上になると、バルコニーの面積が建築面積に含まることになり、その場合には、建蔽率や予算の都合で、住宅の居室空間が狭くなる場合がある。このことを踏まえて、顧客が「バルコニーの面積を建物面積に含めないこと」を指定した場合には、「バルコニーの突出長さが1m以上になること」が制限パターンとして決められることになる。
【0087】
また、上記の実施形態では、住宅の外観に現れる特徴が複数存在する場合を想定したが、住宅の外観における特徴が、単一の特徴であってもよい。この場合、単一の特徴に関する2以上の内容のそれぞれについて、指定ワードと対応する印象に及ぼす影響度(対応影響度)から評価値を算出し、算出された評価値に基づいて、2以上の内容の中から選定内容を選定する。そして、上記単一の特徴が選定内容となった住宅の外観を示す画像が、画面に表示される。
【0088】
また、上記の実施形態では、建物のデザインの一例として、住宅の外観を例に挙げたが、本発明は、住宅の内装の意匠(デザイン)にも適用可能である。すなわち、本発明によれば、顧客が指定するワード(指定ワード)と対応する印象に基づく住宅の内装の画像を提示することができる。
【0089】
また、上記の実施形態では、建物の一例として住宅を例に挙げたが、本発明は、住宅以外の建物、例えば店舗、病院等の施設、事業所のビル、及び工場内の建屋等を対象とする場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
10 建物画像表示装置
11 プロセッサ
12 メモリ
13 通信用インタフェース
14 ストレージ
15 入力機器
16 出力機器
21 取得部
22 記憶部
23 受付部
24 設定部
25 算出部
26 選定部
27 判定部
28 表示部
29 検索部
30 描画部