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特開2024-55386通信システム、受信機、補償量計算装置、及び歪み補償方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055386
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】通信システム、受信機、補償量計算装置、及び歪み補償方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2507 20130101AFI20240411BHJP
   H04J 14/06 20060101ALI20240411BHJP
   H04B 10/61 20130101ALI20240411BHJP
【FI】
H04B10/2507
H04J14/06
H04B10/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162261
(22)【出願日】2022-10-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省「グリーン社会に資する先端光伝送技術の研究開発(課題I 10テラビット級光伝送技術)」産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正規
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA01
5K102AD15
5K102AH02
5K102AH14
5K102AH27
5K102KA01
5K102KA02
5K102KA42
5K102MA00
5K102MA01
5K102MA02
5K102MB10
5K102MC06
5K102MC11
5K102MD01
5K102MD03
5K102MD04
5K102MH03
5K102MH14
5K102MH21
5K102PA01
5K102PB01
5K102PC11
5K102PH01
5K102PH31
5K102RB01
5K102RB03
5K102RD11
5K102RD26
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】係数が適応的に制御される適応等化フィルタにおけるタップ長を抑制しつつ、高精度な歪み補償を実施することを可能にする。
【解決手段】歪み補償フィルタ21は、フィルタ係数が適応的に制御されることで、送信機から送信される信号を受信機においてコヒーレント受信することで得られる受信信号に含まれる歪みを補償する。群遅延リプル計算部22は、歪み補償フィルタ21のフィルタ係数に基づいて、受信信号に含まれる群遅延を計算し、計算した群遅延から群遅延リプルを計算する。フィードバック計算部23は、計算された群遅延リプルに基づいて位相応答を計算する。フィードバック計算部23は、計算した位相応答を、受信機に含まれる適応等化フィルタの前段に配置される、位相補償機能を有する1以上のフィルタにフィードバックし、1以上のフィルタに群遅延リプルを少なくとも部分的に補償させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ係数が適応的に制御されることで、伝送路を介して送信機から送信される信号を受信機においてコヒーレント受信することで得られる受信信号に含まれる歪みを補償する歪み補償フィルタと、
前記歪み補償フィルタのフィルタ係数に基づいて、前記受信信号に含まれる群遅延を計算し、該計算した群遅延から群遅延リプルを計算する群遅延リプル計算部と、
前記計算された群遅延リプルに基づいて位相応答を計算し、該計算した位相応答を、前記受信機に含まれる適応等化フィルタの前段に配置される、位相補償機能を有する1以上のフィルタにフィードバックし、前記位相補償機能を有する1以上のフィルタに前記群遅延リプルを少なくとも部分的に補償させるフィードバック計算部とを備える補償量計算装置。
【請求項2】
前記位相補償機能を有する1以上のフィルタは、前記伝送路に配置される光フィルタ、送信機に配置されるフィルタ、及び受信機に配置されるフィルタの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の補償量計算装置。
【請求項3】
前記送信機から送信される信号は、第1の偏波及び第2の偏波に多重化されており、
前記歪み補償フィルタは、前記受信信号の第1の偏波成分に対応する複素数信号と、前記受信信号の第2の偏波成分に対応する複素数信号とが入力され、1つの複素数信号を出力する2×1多入力1出力(MISO:multi-input-single-output)フィルタを含む、請求項1又は2に記載の補償量計算装置。
【請求項4】
前記フィードバック計算部は、前記計算された群遅延リプルに重み係数を乗算し、前記重み係数が乗算された群遅延リプルを前記位相応答に変換し、該変換された位相応答を、前記位相補償機能を有する1以上のフィルタにフィードバックする、請求項1又は2に記載の補償量計算装置。
【請求項5】
送信機から伝送路を介して送信された信号をコヒーレント受信する受信回路と、
前記コヒーレント受信された受信信号に含まれる波長分散に起因する歪みを補償する、位相補償機能を有するフィルタである波長分散補償フィルタと、
フィルタ係数が適応的に制御されることで、前記波長分散補償フィルタで前記歪みが補償された受信信号に含まれる歪みを適応的に補償する適応等化フィルタと、
前記適応等化フィルタで歪みが補償された受信信号に対して復調及び復号を行う信号再生回路と、
請求項1又は2に記載の補償量計算装置とを備える受信機。
【請求項6】
前記補償量計算装置の前記フィードバック計算部は、前記受信機の前記波長分散補償フィルタに前記位相応答をフィードバックし、
前記波長分散補償フィルタは、前記フィードバックされた位相応答に基づいて、前記受信信号に含まれる前記群遅延リプルを補償する、請求項5に記載の受信機。
【請求項7】
伝送路を介して信号を送信する送信機と、
前記送信された信号を受信する受信機と、
請求項1又は2に記載の補償量計算装置とを備える通信システム。
【請求項8】
前記伝送路は、位相補償機能を有する光フィルタを含み、
前記補償量計算装置の前記フィードバック計算部は、前記光フィルタに、前記位相応答をフィードバックする、請求項7に記載の通信システム。
【請求項9】
前記送信機は、
送信される信号を符号化する符号化器と、
前記符号化された信号に対して予等化を実施する予等化器と、
予等化が実施された信号を変調し、該変調された信号を前記伝送路に出力する変調器とを有し、
前記予等化器は、位相補償機能を有するフィルタを含み、
前記補償量計算装置の前記フィードバック計算部は、前記予等化器の前記位相補償機能を有するフィルタに、前記位相応答をフィードバックする、請求項7に記載の通信システム。
【請求項10】
伝送路を介して送信機から送信される信号を受信機においてコヒーレント受信することで得られる受信信号を歪み補償フィルタに入力し、該歪み補償フィルタのフィルタ係数を適応的に制御することで前記受信信号に含まれる歪みを補償し、
前記歪み補償フィルタのフィルタ係数に基づいて、前記受信信号に含まれる群遅延を計算し、該計算した群遅延から群遅延リプルを計算し、
前記計算された群遅延リプルに基づいて位相応答を計算し、該計算した位相応答を、前記受信機に含まれる適応等化フィルタの前段に配置される、位相補償機能を有する1以上のフィルタにフィードバックすることで、前記位相補償機能を有する1以上のフィルタに前記群遅延リプルを少なくとも部分的に補償させる、歪み補償方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信システム、受信機、補償量計算装置、及び歪み補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信において、高いスペクトル利用効率を実現するため、高次のQuadrature amplitude modulation(QAM)変調などの多値変調が採用されている。コヒーレント受信技術の導入以来、光ファイバ伝送路で蓄積される波長分散を受信側で一括して補償するなど、デジタル信号処理による柔軟な受信側での等化信号処理が可能となった。しかしながら、一般的に、高次の多値変調信号は歪みに脆弱である。高度変調方式において、性能を担保するためには、高精度な等化処理が必要となる。
【0003】
関連技術として、特許文献1は、デジタルコヒーレントに用いられる光受信装置を開示する。特許文献1に記載の光受信装置は、デジタル信号処理部を有する。デジタル信号処理部は、波長分散補償部、適応等化部、及び波長分散推定回路を有する。波長分散補償部は、伝送路である光ファイバで光信号に付与された波長分散に起因する波形歪みを抑制する。適応等化部は、波長分散補償部から出力される光信号に対して、光ファイバを伝送する光信号の偏波変動に起因して生じた高速な波形劣化を適応的に補償する。適応等化部は、2×2のバタフライ構成で構成されたNタップの有限インパルス応答(FIR:Finite Impulse Response)フィルタを4つ有する。
【0004】
波長分散推定回路は、適応等化部のフィルタ係数から、波長分散補償部が補償しきれなかった残留分散を算出し、算出した残留分散を波長分散補償部に出力する。より詳細には、波長分散推定回路は、フィルタ係数をフーリエ変換し、フーリエ変換されたフィルタ係数を周波数で微分することで得られた結果と、フーリエ変換されたフィルタ係数の複素共役とを積算して行列を算出する。波長分散推定回路は、算出した行列の2つの固有値の和を計算し、2つの固有値の和から、周波数に対する比例係数を算出する。この比例係数は、波長分散補償部で除去しきれなかった残留分散に比例する値である。波長分散補償部は、固定的に設定された第1の波長分散補償量に、第1の波長分散補償量だけでは補償しきれない残留分散を補償する第2の波長分散補償量を重畳し、残留分散を低減させるように波長分散補償を行う。
【0005】
別の関連技術として、非特許文献1は、光伝送システムにおける線形歪みを推定するアルゴリズムを開示する。非特許文献1には、波長分散(CD:chromatic dispersion)、偏波モード分散(PMD:polarization-mode dispersion)、及び偏波依存損失(PDL:polarization-dependent loss)などの線形歪みが、2×2のバタフライ構成で構成された4つのFIRフィルタを使用して補償できることが記載されている。非特許文献1において、波長分散、偏波依存損失、微分群遅延(DGD:Differential-Group-Delay)、及び2次偏波モード分散などの線形歪みは、FIRフィルタのタップ係数から計算される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-92607号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Md. Saifuddin Faruk et al, Multi-impairment monitoring from adaptive finite-impulse-response filters in a digital coherent receiver, Optics Express Vol. 18, Issue 26, pp. 26929-26936 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、特許文献1において、適応等化部において用いられるFIRフィルタのタップ長は、光信号に含まれる線形劣化量に比例して増加する。特許文献1では、波長分散推定回路は、適応等化部のフィルタ係数に基づいて、線形劣化の1つである残留波長分散を推定する。波長分散補償部は、固定的に設定された波長分散に加えて、推定された残留分散を補償する。このようにすることで、適応等化部に入力される光信号に含まれる線形劣化量を低減することができ、FIRフィルタのタップ長を抑制することができると考えられる。
【0009】
しかしながら、特許文献1では、光ファイバの分散スロープや光デバイスの周波数特性に起因する群遅延リプルなどの劣化は考慮されていない。これらの劣化を補償するために、適応等化部にはタップ長が長いFIRフィルタが用いられる必要がある。特許文献2は、各種線形歪みが、FIRフィルタのタップ係数から計算することを開示しているだけであり、特許文献2には、FIRフィルタのタップ長を抑制することは開示されていない。
【0010】
本開示は、上記事情に鑑み、係数が適応的に制御される適応等化フィルタにおけるタップ長を抑制しつつ、高精度な歪み補償を実施することを可能にする通信システム、受信機、補償量計算装置、及び歪み補償方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本開示は、第1の態様として、補償量計算装置を提供する。補償量計算装置は、フィルタ係数が適応的に制御されることで、伝送路を介して送信機から送信される信号を受信機においてコヒーレント受信することで得られる受信信号に含まれる歪みを補償する歪み補償フィルタと、前記歪み補償フィルタのフィルタ係数に基づいて、前記受信信号に含まれる群遅延を計算し、該計算した群遅延から群遅延リプルを計算する群遅延リプル計算部と、前記計算された群遅延リプルに基づいて位相応答を計算し、該計算した位相応答を、前記受信機に含まれる適応等化フィルタの前段に配置される、位相補償機能を有する1以上のフィルタにフィードバックし、前記位相補償機能を有する1以上のフィルタに前記群遅延リプルを少なくとも部分的に補償させるフィードバック計算部とを含む。
【0012】
本開示は、第2の態様として、受信機を提供する。受信機は、送信機から伝送路を介して送信された信号をコヒーレント受信する受信回路と、前記コヒーレント受信された受信信号に含まれる波長分散に起因する歪みを補償する、位相補償機能を有するフィルタである波長分散補償フィルタと、フィルタ係数が適応的に制御されることで、前記波長分散補償フィルタで前記歪みが補償された受信信号に含まれる歪みを適応的に補償する適応等化フィルタと、前記適応等化フィルタで歪みが補償された受信信号に対して復調及び復号を行う信号再生回路と、上記補償量計算装置とを含む。
【0013】
本開示は、第3の態様として、通信システムを提供する。通信システムは、伝送路を介して信号を送信する送信機と、前記送信された信号を受信する受信機と、上記補償量計算装置とを含む。
【0014】
本開示は、第4の態様として、歪み補償方法を提供する。歪み補償方法は、伝送路を介して送信機から送信される信号を受信機においてコヒーレント受信することで得られる受信信号を歪み補償フィルタに入力し、該歪み補償フィルタのフィルタ係数を適応的に制御することで前記受信信号に含まれる歪みを補償し、前記歪み補償フィルタのフィルタ係数に基づいて、前記受信信号に含まれる群遅延を計算し、該計算した群遅延から群遅延リプルを計算し、前記計算された群遅延リプルに基づいて位相応答を計算し、該計算した位相応答を、前記受信機に含まれる適応等化フィルタの前段に配置される、位相補償機能を有する1以上のフィルタにフィードバックすることで、前記位相補償機能を有する1以上のフィルタに前記群遅延リプルを少なくとも部分的に補償させることを含む。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る通信システム、受信機、補償量計算装置、及び歪み補償方法は、係数が適応的に制御される適応等化フィルタにおけるタップ長を抑制しつつ、高精度な歪み補償を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示に係る通信システムを概略的に示すブロック図。
図2】補償量計算装置の概略的な構成を示すブロック図。
図3】本開示の第1実施形態に係る通信システムを示すブロック図。
図4】デジタル信号処理部の構成例を示すブロック図。
図5】適応等化フィルタの構成例を示すブロック図。
図6】補償量計算部の構成例を示すブロック図。
図7】適応等化フィルタの構成例を示すブロック図。
図8】群遅延を示すグラフ。
図9】補償量計算部の動作手順を示すフローチャート。
図10】適応等化フィルタのフィルタ応答の例を示すグラフ。
図11】適応等化フィルタのフィルタ応答の別の例を示すグラフ。
図12】実験結果の例を示すコンスタレーション図。
図13】実験結果の別の例を示すコンスタレーション図。
図14】本開示の第2実施形態に係る通信システムを示すブロック図。
図15】本開示の第3実施形態に係る通信システムを示すブロック図。
図16】補償量計算部の動作手順を示すフローチャート。
図17】補償量計算部の物理的な構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の実施の形態の説明に先立って、本開示の概要を説明する。図1は、本開示に係る通信システムを概略的に示す。通信システム10は、送信機11、受信機15、及び補償量計算装置17を有する。送信機11と受信機15とは、伝送路13を介して相互に接続される。送信機11は、伝送路13を介して信号を送信する。受信機15は、送信機11から送信された信号を、伝送路13を介して受信する。受信機15は、適応等化フィルタを含む。
【0018】
図2は、補償量計算装置17の概略的な構成を示す。補償量計算装置17は、歪み補償フィルタ21、群遅延リプル計算部22、及びフィードバック計算部23を有する。歪み補償フィルタ21には、伝送路13を介して送信機11から送信される信号を受信機15においてコヒーレント受信することで得られる受信信号が入力される。歪み補償フィルタ21は、受信信号に含まれる歪みを補償する。歪み補償フィルタ21のフィルタ係数は、適応的に制御される。
【0019】
群遅延リプル計算部22は、歪み補償フィルタ21のフィルタ係数に基づいて、受信信号に含まれる群遅延を計算し、計算した群遅延から群遅延リプルを計算する。フィードバック計算部23は、計算された群遅延リプルに基づいて位相応答を計算する。フィードバック計算部23は、計算した位相応答を、受信機15に含まれる適応等化フィルタの前段に配置される、位相補償機能を有する1以上のフィルタにフィードバックする。フィードバック計算部23は、位相応答をフィードバックすることで、位相補償機能を有する1以上のフィルタに群遅延リプルを少なくとも部分的に補償させる。
【0020】
本開示において、補償量計算装置17は、位相補償機能を有する1以上のフィルタに、群遅延リプルを補償するための位相応答をフィードバックする。位相補償機能を有する1以上のフィルタは、受信機15の適応等化フィルタの前段において、受信信号に含まれる群遅延リプルを補償する。適応等化フィルタは、群遅延リプルが補償された受信信号に対して適応等化を実施し、受信信号に含まれる歪みを補償する。適応等化フィルタに入力される信号は、群遅延リプルが補償されており、適応等化フィルタは、群遅延リプルが補償されない場合に比べて、短いタップ長で歪みを補償することができる。従って、本開示は、適応等化フィルタのタップ数を抑制しつつも、受信信号に対する高精度な歪み補償を実現できる。
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態を詳細に説明する。図3は、本開示の第1実施形態に係る通信システムを示す。本実施形態において、通信システムは、光位相変調方式と偏波多重分離技術とを組み合わせたデジタルコヒーレント方式を用いた基幹系波長多重光伝送システムであるものとする。具体的には、通信システムは、偏波多重QAM方式が採用され、コヒーレント受信を行う光ファイバ通信システムであることを想定する。光ファイバ通信システム100は、送信機110、伝送路130、及び受信機150を有する。光ファイバ通信システム100は、例えば光海底ケーブルシステムを構成する。光ファイバ通信システム100は、図1に示される通信システム10に対応する。送信機110は、図1に示される送信機11に対応する。伝送路130は、図1に示される伝送路13に対応する。受信機150は、図1に示される受信機15に対応する。
【0022】
送信機110は、送信データを偏波多重光信号に変換する。送信機110は、符号化部111、予等化部112、DAC(Digital analog converter)113、光変調器114、及びLD(Laser diode)115を有する。符号化部111は、符号化器であり、送信データを符号化し、光変調のための信号系列を生成する。偏波多重QAM方式の場合、符号化部111は、X偏波(第1の偏波)及びY偏波(第2の偏波)のそれぞれのin-phase(I)成分、及びquadrature(Q)成分の計4系列の信号を生成する。なお、図3では、図面簡略化のため、符号化された4系列の信号は、1つの実線として示されている。以下、図3に示される1つの実線は、物理的実体として、所定数の信号系列をまとめて表し得る。
【0023】
予等化部112は、予等化器であり、符号化された4系列の信号に対し、送信機内のデバイスの歪みなどをあらかじめ補償する予等化を実施する。予等化部112には、例えば係数が固定的に設定されるフィルタ、一般的には周波数領域等化器(FDE:Frequency Domain Equalizer)が用いられる。DAC113は、予等化が実施された4系列の信号を、それぞれアナログ電気信号に変換する。
【0024】
LD115は、CW(Continuous wave)光を出力する。光変調器114は、LD115から出力されたCW光を、DAC113から出力される4系列の信号に応じて変調し、偏波多重QAMの光信号を生成する。光変調器114が生成した光信号(偏波多重光信号)は、伝送路130に出力される。
【0025】
伝送路130は、送信機110から出力された偏波多重光信号を受信機150に伝送する。伝送路130は、光ファイバ132、光増幅器133、及び光フィルタ134を有する。光ファイバ132は、送信機110から送信された光信号を導波する。光増幅器133は、光信号を増幅し、光ファイバ132における伝搬損失を補償する。光増幅器133は、例えば、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA:erbium doped fiber amplifier)として構成される。光フィルタ134は、振幅等化機能に加えて位相等化機能を有するフィルタである。光フィルタ134には、例えば波長多重された光信号から所望の波長の光信号を任意の方路に切り替えることができる波長選択スイッチ(WSS:Wavelength Selective Switch)が用いられ得る。伝送路130は、複数の光増幅器133、及び複数の光フィルタ134を、それぞれを含み得る。
【0026】
受信機150は、LD151、コヒーレント受信機152、ADC(Analog digital converter)153、デジタル信号処理部154、及び補償量計算部155を有する。LD151は、ローカルオシレータ光となるCW光を出力する。本実施形態において、コヒーレント受信機152は、受信回路であり、偏波ダイバーシティ型コヒーレント受信機として構成される。コヒーレント受信機152は、LD151から出力されるCW光を用いて、光ファイバ132を伝送された光信号に対してコヒーレント検波を実施する。コヒーレント受信機152は、コヒーレント検波されたX偏波及びY偏波のI成分及びQ成分に相当する4系列の受信信号(電気信号)を出力する。
【0027】
ADC153は、コヒーレント受信機152から出力される受信信号をサンプリングし、受信信号をデジタル領域の信号に変換する。ADC153は、デジタル信号に変換された受信信号を、デジタル信号処理部154、及び補償量計算部155にそれぞれ出力する。デジタル信号処理部154は、ADC153でサンプリングされた4系列の受信信号に対して受信側等化信号処理を行う。デジタル信号処理部154は、受信信号に対して等化信号処理を行うことで光ファイバ通信システムにおける各種の歪みを補償する。また、デジタル信号処理部154は、等化信号処理が実施された信号に対して復号を行い、送信されたデータを復元する。デジタル信号処理部154は、復元したデータを、図示しない他の回路に出力する。
【0028】
図4は、デジタル信号処理部154の構成例を示す。この例において、デジタル信号処理部154は、波長分散補償フィルタ171、適応等化フィルタ172、係数更新部173、誤り訂正部174、及びデジタル信号再生部175を有する。デジタル信号処理部154は、例えばDSP(digital signal processor)などのデバイスを用いて構成され得る。デジタル信号処理部154において、少なくとも、波長分散補償フィルタ171、及び適応等化フィルタ172はハードウェア回路を用いて実装される。
【0029】
波長分散補償フィルタ171は、光信号が光ファイバを伝送されるときに、波長分散に起因して光信号に生じる信号歪みを補償する。波長分散補償フィルタ171は、周波数領域等化器であり、偏波ごとに、波長分散に起因して生じる信号歪みを補償する。ここで、伝送路の波長分散は、伝送路を切り替えるなどを行わない限り、通常、静的であり、光ファイバの種類と伝送距離とに応じて歪みのモデルが定まる。このため、波長分散補償フィルタ171のフィルタは、一度補償される波長分散量に応じて係数が設定された後は、静的に扱うことができる。
【0030】
適応等化フィルタ172は、波長分散補償フィルタ171で波長分散に起因する信号歪みが補償された信号に含まれる各種信号歪みを補償する。係数更新部173は、適応等化フィルタ172のフィルタ係数を適応的に更新する。係数更新部173は、例えば、適応等化フィルタ172の入力信号と適応等化フィルタ172の出力信号とに基づいて、1時刻のサンプル又はシンボルごとに、適応等化フィルタ172の係数を更新する。係数更新部173は、適応等化フィルタ172の出力と所望状態との差を損失関数として計算する。係数更新部173は、例えば、損失関数が最小化されるように、適応等化フィルタ172の係数を逐次的に更新する。係数更新には、公知の任意の手法が使用できる。
【0031】
図5は、適応等化フィルタ172の構成例を示す。この例において、適応等化フィルタ172は、MIMO(multi-input-multi-output)フィルタを含むMIMO等化器として構成される。適応等化フィルタ172は、4つのFIRフィルタ190を含む。波長分散補償フィルタ171から出力されるX偏波成分の複素数信号をxとし、Y偏波成分の複素数信号をyとする。また、各FIRフィルタのフィルタ係数をhxx、hyx、hyy、及びhxyとする。その場合、適応等化フィルタ172が出力するX偏波成分の複素数信号x、及びY偏波成分の複素数信号yは、下記式で表される。
=hxx+hxy
=hyx+hyy
【0032】
誤り訂正部174は、適応等化フィルタ172が出力する受信信号に対して、誤り訂正処理を実施する。デジタル信号再生部175は、誤り訂正が実施された受信信号から、送信側で符号化されたデータを再生する。デジタル信号再生部175は、例えば受信信号を復調する復調器、及び復調された信号からデータを復号する復号器を含む。
【0033】
補償量計算部155は、ADC153(図3を参照)から、分岐された受信信号を取得する。補償量計算部155は、受信信号に含まれる群遅延リプルを計算する。補償量計算部155は、データ送信からデータ再生までの信号経路上の位相等化機能を有するフィルタに、群遅延リプルを補償するための補償量をフィードバックする。本実施形態において、補償量計算部155は、位相等化機能を有する光フィルタ134に、群遅延リプルを補償するための補償量をフィードバックする。補償量計算部155は、図1に示される補償量計算装置17に対応する。
【0034】
図6は、補償量計算部155の構成例を示す。補償量計算部155は、波長分散補償フィルタ181、適応等化フィルタ182、係数更新部183、群遅延リプル計算部184、及びフィードバック計算部185を有する。
【0035】
補償量計算部155は、デジタル信号処理部154とは異なり、送信側で符号化されたデータの再生を行う必要がない。このため、補償量計算部155にはハードウェアによる高速な処理は要求されない。補償量計算部155は、例えばプロセッサとメモリとを有する装置として構成される。補償量計算部155内の各部の機能の少なくとも一部は、プロセッサがメモリに格納された命令を実行することで、ソフトウェア上で実現され得る。特に、本実施形態において、波長分散補償フィルタ181、及び適応等化フィルタ182は、ソフトウェアで実装され得る。補償量計算部155は、デジタル信号処理部154と同様に、DSPなどのデバイスを用いて構成されてもよい。
【0036】
波長分散補償フィルタ181は、光信号が光ファイバを伝送されるときに、波長分散に起因して光信号に生じる信号歪みを補償する。波長分散補償フィルタ181は、周波数領域等化器であり、偏波ごとに、波長分散に起因して生じる信号歪みを補償する。波長分散補償フィルタ181のフィルタ係数は、デジタル信号処理部154に含まれる波長分散補償フィルタ171(図4を参照)と同じでよい。なお、補償量計算部155は受信されたデータを全て再生する必要がないため、補償量計算部155には、受信信号の全てが入力される必要はない。補償量計算部155には、受信信号の一部、例えばパイロット信号などの既知の信号が入力されてもよい。
【0037】
適応等化フィルタ182は、波長分散補償フィルタ181で波長分散に起因する信号歪みが補償された信号に含まれる各種信号歪みを補償する。係数更新部183は、適応等化フィルタ182のフィルタ係数を適応的に更新する。係数更新部183は、例えば、適応等化フィルタ182の入力信号と適応等化フィルタ182の出力信号とに基づいて、1時刻のサンプル又はシンボルごとに、適応等化フィルタ182の係数を更新する。係数更新には、公知の任意の手法が使用できる。適応等化フィルタ182は、図2に示される歪み補償フィルタ21に対応する。
【0038】
本実施形態において、適応等化フィルタ182は、受信性能を向上させる目的ではなく、群遅延リプルを計算するために使用される。本実施形態では、伝送路において偏波多重された光信号が用いられており、受信信号はX偏波の成分と、Y偏波の成分とを含む。群遅延リプルは、偏波に依存しないため、双方の偏波において群遅延リプルを計算される必要はなく、何れか一方の偏波、例えばX偏波において計算されればよい。従って、適応等化フィルタ182には、2×2MIMOフィルタではなく、2×1MISO(multi-input-single-output)フィルタを用いることができる。群遅延リプルの計算をX偏波において実施する場合、X偏波及びY偏波の双方において群遅延リプルを計算する場合に比べて、フィルタ係数更新における計算量を削減できる。
【0039】
図7は、適応等化フィルタ182の構成例を示す。この例において、適応等化フィルタ182は、2×1MISOフィルタを含む。適応等化フィルタ182は、2つのFIRフィルタ191を含む。波長分散補償フィルタ181から出力されるX偏波成分の複素数信号をxとし、Y偏波成分の複素数信号をyとする。また、各FIRフィルタのフィルタ係数をhxx、及びhxyとする。その場合、適応等化フィルタ182が出力するX偏波成分の複素数信号xは、下記式で表される。
=hxx+hxy
【0040】
ここで、適応等化フィルタ182におけるFIRフィルタ191のタップ長は、デジタル信号処理部154内の適応等化フィルタ172におけるFIRフィルタ190(図5を参照)のタップ長よりも長く設定される。この場合、適応等化フィルタ182は、デジタル信号処理部154内の適応等化フィルタ172に比べて、より精度が高い歪み補償を実施できる。
【0041】
群遅延リプル計算部184は、適応等化フィルタ182のフィルタ係数から、群遅延リプルを計算する。具体的には、群遅延リプル計算部184は、上記MISOフィルタのフィルタ係数hxxから複素周波数応答Hxx(ω)を計算する。複素周波数応答Hxx(ω)は、下記式により計算できる。
xx(ω)=F[hxx
xx(ω)=|Hxx(ω)|ejθ(ω)
上記式において、Fはフーリエ変換を表し、|Hxx(ω)|は振幅応答を表し、θ(ω)は位相応答を表す。位相応答θ(ω)は、下記式で計算される。
群遅延リプル計算部184は、下記式を用いて、位相応答θ(ω)から群遅延τ(ω)を計算する。
さらに、群遅延リプル計算部184は、下記式を用いて、群遅延τ(ω)から群遅延リプルτ(ω)を計算する。
【0042】
図8は、群遅延を示すグラフである。図8において、横軸は周波数[GHz]を表し、縦軸は群遅延[ps]を表す。図8において、破線で囲まれる部分は群遅延リプルに相当する。群遅延リプル計算部184は、上記で計算された群遅延リプルτ(ω)に対して、平均化処理を適用してもよい。あるいは、群遅延リプル計算部184は、上記で計算された群遅延リプルτ(ω)に対して、帯域外雑音の除去を適用してもよい。
【0043】
フィードバック計算部185は、群遅延リプル計算部184で計算された群遅延リプルを、伝送路130内の光フィルタ134(図3を参照)に適用される補償量に変換する。具体的には、フィードバック計算部185は、下記式を用いて、上記計算された群遅延リプルτ(ω)を位相応答φ(ω)に変換する。
φ(ω)=-∫τ(ω)dω
フィードバック計算部185は、位相応答φ(ω)を、光フィルタ134にフィードバックする。光フィルタ134は、固定的に設定された歪み補償に加えて、フォードバックされた位相応答に基づいて群遅延リプルを補償する。群遅延リプル計算部184は、図2に示される群遅延リプル計算部22に対応する。フィードバック計算部185は、図2に示されるフィードバック計算部23に対応する。
【0044】
続いて、本実施形態における動作手順を説明する。図9は、補償量計算部155の動作手順を示す。補償量計算部155の動作手順は、歪み補償方法に対応する。波長分散補償フィルタ181には、ADC153(図3を参照)でデジタル信号に変換された受信信号が入力される。波長分散補償フィルタ181は、波長分散を補償し(ステップA1)、波長分散が補償された受信信号を適応等化フィルタ182に出力する。適応等化フィルタ182は、受信信号に含まれる各種の歪みを補償する(ステップA2)。係数更新部183は、適応等化フィルタ182の係数を適応的に更新する(ステップA3)。
【0045】
群遅延リプル計算部184は、適応等化フィルタ182の係数から、群遅延リプルτ(ω)を計算する(ステップA4)。フィードバック計算部185は、ステップA4で計算された群遅延リプルτ(ω)から位相応答を計算する(ステップA5)。フィードバック計算部185は、ステップA5で計算された位相応答を、光フィルタ134にフィードバックする(ステップA6)。光フィルタ134は、フォードバックされた位相応答に基づいて群遅延リプルを補償する。
【0046】
ここで、群遅延リプルの時間変化は比較的緩やかであり、群遅延リプルをハードウェア回路で実装されたデジタル信号処理部154の適応等化フィルタ172を用いて補償することは必須ではない。このため、本実施形態では、ソフトウェアで実装された適応等化フィルタ182を用いて群遅延リプルを計算し、光フィルタ134において、群遅延リプルを補償する。本実施形態において、受信機150は、群遅延リプルが補償された光信号を、伝送路130から受信する。デジタル信号処理部154において、適応等化フィルタ172には、群遅延リプルが補償された受信信号が入力される。
【0047】
光フィルタ134において、2×1MISOフィルタの係数hxxではなく、群遅延リプルを補償する利点は、以下のように説明できる。係数hxxの複素周波数応答Hxx(ω)=|Hxx(ω)|ejθ(ω)には振幅応答|Hxx(ω)|と位相応答θ(ω)とが含まれており、これらを光フィルタ134にフィードバックして補償することも可能である。しかしながら、振幅応答は、位相応答と比較して信号品質への影響が小さい。また、振幅応答は、位相応答と比較して、短いタップ長で補償可能である。このため、光フィルタ134において振幅応答を補償することは必須ではない。さらに、2×1MISOフィルタで導出される振幅応答は、偏波変動や偏波依存損失の影響で変動する。このため、光フィルタ134において振幅応答を静的に補償した場合、それに起因して品質劣化が生じる可能性がある。
【0048】
また、光フィルタ134において、群遅延ではなく、群遅延リプルを補償する利点は、以下のように説明できる。信号品質が劣化する要因は群遅延リプル成分であり、光フィルタ134において群遅延そのものを補償することは必須ではない。光フィルタ134において群遅延を補償する場合、光フィルタ134には、位相補償範囲が広い光フィルタが必要になる。群遅延そのものではなく、群遅延リプルを補償することで、位相補償範囲がそれほど広くない光フィルタを光フィルタ134として使用することができる。
【0049】
本実施形態において、群遅延リプル計算部184は、適応等化フィルタ182、すなわち、2×1MISOフィルタのフィルタ応答から、適応等化フィルタ182が補償した群遅延リプルを計算する。群遅延リプルには、2×1MISOフィルタの前段に位置する波長分散補償フィルタ181では補償しきれない残留波長分散、分散スロープ、及び光デバイスの周波数応答などの位相変動成分が含まれている。フィードバック計算部185は、群遅延リプルを位相応答に変換し、変換した位相応答を、位相等化機能を持つ光フィルタ134にフィードバックする。
【0050】
光伝送路や光伝送路上の光デバイスに起因する線形劣化効果を受信側ですなわち2×2MIMO適応等化フィルタを用いて一括して補償することは可能である。しかしながら、その場合、線形劣化量に比例して、適応等化フィルタに必要となるタップ長が増加する。図10は、光フィルタ134において群遅延リプルが補償されない場合の2×2MIMOフィルタ、すなわち適応等化フィルタ172のフィルタ応答を示す。図10において、横軸はFIRフィルタのタップ数を示し、縦軸は強度を示す。図10に示されるように、受信側で線形劣化効果を一括して補償するためには、適応等化フィルタ172には20タップ程度のタップ長が要求される。
【0051】
図11は、光フィルタ134において群遅延リプルが補償される場合の適応等化フィルタ172のフィルタ応答を示す。図11において、横軸はFIRフィルタのタップ数を示し、縦軸は強度を示す。図11に示されるように、光フィルタ134において群遅延リプルが補償される場合、群遅延リプルが補償されない場合に比べて、フィルタ応答は急峻になる。光フィルタ134において群遅延リプルが補償される場合、適応等化フィルタ172に要求されるタップ長は10程度となり、短いタップ長で、精度が高い歪み補償が実施できる。
【0052】
上記したように、適応等化フィルタ172よりも前段に配置される光フィルタ134において群遅延リプルが補償される場合、高精度な歪み補償を確保しつつ、適応等化フィルタ172に要求されるタップ長を短くできる。タップ長を短くすることで、ハードウェア回路で構成される適応等化フィルタ172の回路規模を削減し、適応等化フィルタ172を含むデジタル信号処理部154のチップ面積を削減することができる。また、回路規模が削減されることで、デジタル信号処理部154の消費電力を削減することができる。
【0053】
本実施形態において、群遅延リプルを計算するために使用される補償量計算部155の適応等化フィルタ182は、ソフトウェアで実装することができる。適応等化フィルタ182は、ソフトウェア的にタップ長を任意に設定できるため、デジタル信号処理部154の適応等化フィルタ172に比べて、容易にタップ長を長く設定できる。適応等化フィルタ182のタップ長が長い場合でも、計算量及びメモリ使用量は増加するものの、回路規模及びチップ面積は増大しない。
【0054】
本発明者は、本実施形態の構成における歪み補償の性能を検証するために、実験を行った。実験では、96Gbaud偏波多重16QAMを用い、光伝送路に配置した光デバイスを用いて±20ps程度の群遅延リプルを光信号に付与した。適応等化フィルタ172のタップ長は13とした。実験は、光フィルタ134において群遅延リプルが補償されない場合と、光フィルタ134において群遅延リプルが補償される場合の双方において実施した。
【0055】
図12は、光フィルタ134において群遅延リプルが補償されない場合の実験結果を示す。図13は、光フィルタ134において群遅延リプルが補償される場合の実験結果を示す。図12及び図13において、実験結果は、適応等化フィルタ172の復調信号を、シンボルタイミングでIQ平面上にマッピングしたコンスタレーション図として示されている。図12図13とを比較すると、X偏波及びY偏波の双方において、光フィルタ134において群遅延リプルを補償した場合、群遅延リプルを補償しない場合に加えて、信号品質が改善できていることがわかる。
【0056】
次いで、本開示の第2実施形態を説明する。図14は、本開示の第2実施形態に係る通信システムを示す。本実施形態に係る光ファイバ通信システム100aにおいて、補償量計算部155は、デジタル信号処理部154に含まれるフィルタに、群遅延リプルを補償するための補償量をフィードバックする。デジタル信号処理部154に含まれるフィルタは、フォードバックされた位相応答に基づいて群遅延リプルを補償する。本実施形態における他の構成及び動作は、第1実施形態におけるそれらと同様でよい。
【0057】
本実施形態において、補償量計算部155のフィードバック計算部185(図6を参照)は、群遅延リプル計算部184で計算された群遅延リプルを、デジタル信号処理部154内の波長分散補償フィルタ171(図4を参照)に適用される補償量に変換する。具体的には、フィードバック計算部185は、下記式を用いて、上記計算された群遅延リプルτ(ω)を位相応答φ(ω)に変換する。
φ(ω)=-∫τ(ω)dω
フィードバック計算部185は、位相応答φ(ω)を、デジタル信号処理部154内の波長分散補償フィルタ171にフィードバックする。波長分散補償フィルタ171は、波長分散に起因する歪みに加えて、フォードバックされた位相応答に基づいて群遅延リプルを補償する。
【0058】
本実施形態では、補償量計算部155は、デジタル信号処理部154内の波長分散補償フィルタ171に位相応答をフィードバックし、波長分散補償フィルタ171は、波長分散に起因する歪みに加えて、群遅延リプルを補償する。本実施形態においても、適応等化フィルタ172より前段で群遅延リプルが補償されるため、第1実施形態と同様に、適応等化フィルタ172のタップ長を抑制しつつ、高精度な歪み補償を実現できる。また、本実施形態では、波長分散補償フィルタ171にて群遅延リプルを補償しおり、適応等化フィルタ172にて群遅延を補償する場合に比べて、適応等化フィルタ172に必要なタップ長を抑制できる。さらに、本実施形態は、信号の受信側で、フィードバックの生成、及び群遅延リプルの補償を実施できる利点もある。他の効果は、第1実施形態において説明した効果と同様である。
【0059】
なお、本実施形態において、補償量計算部155は、受信側の波長分散補償フィルタ171に位相応答をフィードバックするのに代えて、又はこれに加えて、送信機110に含まれる予等化部112に、位相応答をフィードバックしてもよい。その場合、補償量計算部155は、伝送路130、又は何らかの通信路を通じて、送信機110に位相応答をフィードバックする。送信機110において、予等化部112は、フィードバックされた位相応答に基づいて、受信機150が受信する光信号に含まれる群遅延リプルを補償する。この場合も、適応等化フィルタ172より前段で群遅延リプルを補償することができ、適応等化フィルタ172のタップ長を抑制しつつ、高精度な歪み補償を実現できる。
【0060】
続いて、本開示の第3実施形態を説明する。図15は、本開示の第3実施形態に係る通信システムを示す。本実施形態に係る光ファイバ通信システム100bにおいて、補償量計算部155は、複数のフィルタに、位相応答を分配してフィードバックする。位相応答がフィードバックされた複数のフィルタは、フィードバックされた位相応答に応じて、群遅延リプルを補償する。他の構成及び動作は、第1実施形態又は第2実施形態におけるそれらと同様でよい。
【0061】
本実施形態において、伝送路130は、複数の光フィルタ134を有する。例えば、伝送路130は、Nを2以上の整数として、N個の光フィルタ134を有する。補償量計算部155は、群遅延リプルを計算し、計算した群遅延リプルを位相応答に変換し、変換された位相応答を、N個の光フィルタ134の少なくとも一部にフィードバックする。例えば、補償量計算部155は、計算した位相応答に1/Nを乗じることで得られる値を、N個の光フィルタ134のそれぞれにフィードバックする。その場合、各光フィルタ134は群遅延リプルの1/Nを補償し、N個の光フィルタ134は、全体として群遅延リプルを補償する。
【0062】
あるいは、補償量計算部155は、計算した位相応答が個々の光フィルタ134の位相補償範囲を超える場合に、複数の光フィルタ134に、位相応答を分配してフィードバックしてもよい。例えば、補償量計算部155は、計算した位相応答と、個々の光フィルタ134の位相補償範囲とに基づいて、群遅延リプルを補償するために必要な光フィルタの個数を計算する。例えば、補償量計算部155は、計算した位相応答が、個々の光フィルタ134の位相補償範囲の2倍より大きく、かつ3倍以下の場合、群遅延リプルを補償するためには必要な光フィルタ134の個数は少なくとも3個であると計算する。その場合、補償量計算部155は、N個の光フィルタ134のうち、例えば3個の光フィルタ134に、位相応答を分配してフィードバックする。
【0063】
本実施形態において、位相応答を分配する方法は、特に上記した方法には限定されない。また、本実施形態において、伝送路130は、固定的に群遅延リプルを補償する光フィルタを含んでいてもよい。また、本実施形態において、補償量計算部155は、光フィルタ134に代えて、又はこれに加えて、受信機150内の波長分散補償フィルタ171(図4を参照)、及び送信機110内の予等化部112に位相応答を分配してもよい。
【0064】
本実施形態では、補償量計算部155は、位相応答を、複数の光フィルタ134に分配してフィードバックする。この場合、伝送路130において位相補償範囲が狭い光フィルタ134が使用される場合でも、位相応答を複数の光フィルタ134に分配してフィードバックすることで、複数の光フィルタ134を用いて群遅延リプルを補償することができる。他の効果は、第1実施形態又は第2実施形態で説明した効果と同様である。
【0065】
続いて、本開示の第4実施形態を説明する。本実施形態に係る光ファイバ通信システムの構成は、図3に示される第1実施形態で説明した光ファイバ通信システム100の構成と同様でよい。あるいは、本実施形態に係る光ファイバ通信システムの構成は、図14に示される第2実施形態で説明した光ファイバ通信システム100の構成と同様でもよく、図15に示される第3実施形態で説明した光ファイバ通信システム100の構成と同様でもよい。
【0066】
本実施形態において、補償量計算部155は、群遅延リプルが少なくとも部分的に補償されるように、光フィルタ134、デジタル信号処理部154内の波長分散補償フィルタ171(図4を参照)、及び送信機110内の予等化部112の少なくとも1つに、位相応答をフィードバックする。以下の説明においては、補償量計算部155は、適応等化フィルタ172に、位相応答をフィードバックするものとする。具体的には、補償量計算部155のフィードバック計算部185(図6を参照)は、μを所定の重み係数として、重み係数μが乗算された群遅延リプルτ(ω)を位相応答に変換し、変換した位相応答を波長分散補償フィルタ171にフィードバックする。ここで、μは、0<μ≦1の範囲の値を取る。波長分散補償フィルタ171は、所定の重み係数μが乗算された群遅延リプルを補償する。
【0067】
本実施形態では、補償量計算部155は、所定の重み係数μが乗算された群遅延リプルが補償された受信信号から群遅延リプルを計算し、所定の重み係数μが乗算された群遅延リプルを位相応答に変換して波長分散補償フィルタ171にフィードバックする。別の言い方をすると、補償量計算部155は、波長分散補償フィルタ171に、所定の重み係数μが乗算された群遅延リプルの補償を繰り返し実施させる。補償量計算部155は、例えば群遅延の最小値と最大値との差を計算し、計算した差が所定のしきい値以上の場合、変換された位相応答を、波長分散補償フィルタ171にフィードバックしてもよい。別の言い方をすれば、補償量計算部155は、群遅延の最小値と最大値との差が所定のしきい値未満になるまで、波長分散補償フィルタ171に、所定の重み係数μが乗算された群遅延リプルの補償を繰り返し実施させてもよい。
【0068】
続いて、本実施形態における動作手順を説明する。図16は、補償量計算部155の動作手順を示す。波長分散補償フィルタ181には、ADC153(図3を参照)でデジタル信号に変換された受信信号が入力される。波長分散補償フィルタ181は、波長分散を補償し(ステップB1)、波長分散が補償された受信信号を適応等化フィルタ182に出力する。適応等化フィルタ182は、受信信号に含まれる各種の歪みを補償する(ステップB2)。係数更新部183は、適応等化フィルタ182の係数を適応的に更新する(ステップB3)。
【0069】
群遅延リプル計算部184は、適応等化フィルタ182の係数から、群遅延リプルτ(ω)を計算する(ステップB4)。フィードバック計算部185は、群遅延の最小値と最大値との差と、所定のしきい値τthとを比較する。群遅延の最小値と最大値との差、すなわち群遅延リプルのpeak to peak値τppは、
τpp=max(τ(ω))-min((τ(ω))
で計算できる。フィードバック計算部185は、τppがしきい値τthより小さいか否かを判断する(ステップB5)。フィードバック計算部185は、τppがしきい値τthより小さいと判断した場合、処理を終了する。
【0070】
フィードバック計算部185は、ステップB5でτppがしきい値τthより小さくないと判断した場合、つまり、τppがしきい値τth以上であると判断した場合、ステップB4で計算した群遅延リプルτ(ω)に、重み係数μを乗算する(ステップB6)。フィードバック計算部185は、重み係数μが乗算された群遅延リプルτ(ω)、すなわちμ×t(ω)から、位相応答φ(ω)を計算する(ステップB7)。フィードバック計算部185は、ステップB7で計算された位相応答を、波長分散補償フィルタ171フィードバックする(ステップB8)。波長分散補償フィルタ171は、フォードバックされた位相応答に基づいて群遅延リプルを少なくとも部分的に補償する。その後、処理はステップB1に戻り、群遅延リプルの計算などが繰り返し実施される。
【0071】
ここで、群遅延リプル計算部184で計算される群遅延リプルには、計算誤差又は推定誤差が含まれる。このため、波長分散補償フィルタ171に、計算された群遅延リプルを全て補償させた場合、推定誤差に起因して、受信品質が低下する可能性がある。
【0072】
本実施形態では、フィードバック計算部185は、波長分散補償フィルタ171に、群遅延リプルの少なくとも一部を補償させる。本実施形態では、群遅延リプルτ(ω)ではなく、群遅延リプルμ×τ(ω)が補償されるため、図16のステップB5でτppがしきい値τthより小さいと判断され、処理が終了した時点で、補償誤差は残留する。残留する補償誤差は、重み係数μと群遅延の最大値と最小値との差のしきい値τthに応じて変化する。しかしながら、本実施形態における補償誤差は、群遅延リプルを全て補償した場合における群遅延リプルの推定誤差に比較して小さくすることができると考えられる。本実施形態では、群遅延リプルの部分的な補償を繰り返し実施することで、群遅延リプルの推定誤差に起因する受信品質の劣化を抑制し、受信品質を向上させることができる。
【0073】
なお、上記各実施形態では、受信機150が補償量計算部155を含む例を説明した。しかしながら、本開示は、これには限定されない。補償量計算部155は、受信機150から独立した個別の装置として構成されていてもよい。別の言い方をすると、補償量計算部155は、必ずしも受信機150の一部を構成する必要はなく、受信機150と補償量計算部155とは、物理的に分離された別の装置であってもよい。
【0074】
なお、上記実施形態において、補償量計算部155は、任意のデジタル信号処理回路又は装置として構成され得る。図17は、補償量計算部155の物理的な構成例を示す。補償量計算部155は、1以上のプロセッサ410、及び1以上のメモリ420を含む。プロセッサ410は、メモリ420に格納されたプログラムを読み出して実行することで、図6に示される各部の機能をソフトウェア的に実現させる。
【0075】
上記プログラムは、プロセッサに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をプロセッサに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD(compact disc)-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0076】
以上、本開示の実施形態を詳細に説明したが、本開示は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に対して変更や修正を加えたものも、本開示に含まれる。
【0077】
例えば、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0078】
[付記1]
フィルタ係数が適応的に制御されることで、伝送路を介して送信機から送信される信号を受信機においてコヒーレント受信することで得られる受信信号に含まれる歪みを補償する歪み補償フィルタと、
前記歪み補償フィルタのフィルタ係数に基づいて、前記受信信号に含まれる群遅延を計算し、該計算した群遅延から群遅延リプルを計算する群遅延リプル計算部と、
前記計算された群遅延リプルに基づいて位相応答を計算し、該計算した位相応答を、前記受信機に含まれる適応等化フィルタの前段に配置される、位相補償機能を有する1以上のフィルタにフィードバックし、前記位相補償機能を有する1以上のフィルタに前記群遅延リプルを少なくとも部分的に補償させるフィードバック計算部とを備える補償量計算装置。
【0079】
[付記2]
前記位相補償機能を有する1以上のフィルタは、前記伝送路に配置される光フィルタ、送信機に配置されるフィルタ、及び受信機に配置されるフィルタの少なくとも1つを含む、付記1に記載の補償量計算装置。
【0080】
[付記3]
前記送信機から送信される信号は、第1の偏波及び第2の偏波に多重化されており、
前記歪み補償フィルタは、前記受信信号の第1の偏波成分に対応する複素数信号と、前記受信信号の第2の偏波成分に対応する複素数信号とが入力され、1つの複素数信号を出力する2×1多入力1出力(MISO:multi-input-single-output)フィルタを含む、付記1又は2に記載の補償量計算装置。
【0081】
[付記4]
前記歪み補償フィルタのタップ長は、前記受信機に含まれる適応等化フィルタのタップ長よりも長い、付記1から3何れか1項に記載の補償量計算装置。
【0082】
[付記5]
前記フィードバック計算部は、前記位相補償機能を有する複数のフィルタに、前記計算した位相応答を分配してフィードバックする、付記1から4何れか1項に記載の補償量計算装置。
【0083】
[付記6]
前記フィードバック計算部は、前記計算された群遅延リプルに重み係数を乗算し、前記重み係数が乗算された群遅延リプルを前記位相応答に変換する、付記1から5何れか1項に記載の補償量計算装置。
【0084】
[付記7]
前記フィードバック計算部は、前記群遅延の最大値と最小値の差とを計算し、該計算した差がしきい値以上の場合、前記変換された位相応答を、前記位相補償機能を有する1以上のフィルタにフィードバックする、付記6に記載の補償量計算装置。
【0085】
[付記8]
送信機から伝送路を介して送信された信号をコヒーレント受信する受信回路と、
前記コヒーレント受信された受信信号に含まれる波長分散に起因する歪みを補償する、位相補償機能を有するフィルタである波長分散補償フィルタと、
フィルタ係数が適応的に制御されることで、前記波長分散補償フィルタで前記歪みが補償された受信信号に含まれる歪みを適応的に補償する適応等化フィルタと、
前記適応等化フィルタで歪みが補償された受信信号に対して復調及び復号を行う信号再生回路と、
付記1から7何れか1項に記載の補償量計算装置とを備える受信機。
【0086】
[付記9]
前記補償量計算装置の前記歪み補償フィルタには、前記受信回路でコヒーレント受信された受信信号が分岐して入力される、付記8に記載の受信機。
【0087】
[付記10]
前記補償量計算装置の前記フィードバック計算部は、前記受信機の前記波長分散補償フィルタに前記位相応答をフィードバックし、
前記波長分散補償フィルタは、前記フィードバックされた位相応答に基づいて、前記受信信号に含まれる前記群遅延リプルを補償する、付記8又は9に記載の受信機。
【0088】
[付記11]
前記送信機から送信される信号は、第1の偏波及び第2の偏波に多重化されており、
前記適応等化フィルタは、前記受信信号の第1の偏波成分に対応する複素数信号と、前記受信信号の第2の偏波成分に対応する複素数信号とが入力され、第1の偏波に対応する複素数信号と第2の偏波に対応する複素数信号とを出力する2×2多入力多出力(MIMO:multi-input-multi-output)フィルタを含む、付記8から10何れか1項に記載の受信機。
【0089】
[付記12]
伝送路を介して信号を送信する送信機と、
前記送信された信号を受信する受信機と、
付記1から7何れか1項に記載の補償量計算装置とを備える通信システム。
【0090】
[付記13]、
前記受信機は、
前記伝送路を介して前記送信機から送信された信号をコヒーレント受信する受信回路と、
前記コヒーレント受信された受信信号に含まれる波長分散に起因する歪みを補償する、位相補償機能を有するフィルタである波長分散補償フィルタと、
フィルタ係数が適応的に制御されることで、前記波長分散補償フィルタで前記歪みが補償された受信信号に含まれる歪みを適応的に補償する適応等化フィルタと、
前記適応等化フィルタで歪みが補償された受信信号に対して復調及び復号を行う信号再生回路とを有し、
前記補償量計算装置の前記フィードバック計算部は、前記波長分散補償フィルタに、前記位相応答をフィードバックする、付記12に記載の通信システム。
【0091】
[付記14]
前記伝送路は、位相補償機能を有する光フィルタを含み、
前記補償量計算装置の前記フィードバック計算部は、前記光フィルタに、前記位相応答をフィードバックする、付記12又は13に記載の通信システム。
【0092】
[付記15]
前記送信機は、
送信される信号を符号化する符号化器と、
前記符号化された信号に対して予等化を実施する予等化器と、
予等化が実施された信号を変調し、該変調された信号を前記伝送路に出力する変調器とを有し、
前記予等化器は、位相補償機能を有するフィルタを含み、
前記補償量計算装置の前記フィードバック計算部は、前記予等化器の前記位相補償機能を有するフィルタに、前記位相応答をフィードバックする、付記12から14何れか1項に記載の通信システム。
【0093】
[付記16]
伝送路を介して送信機から送信される信号を受信機においてコヒーレント受信することで得られる受信信号を歪み補償フィルタに入力し、該歪み補償フィルタのフィルタ係数を適応的に制御することで前記受信信号に含まれる歪みを補償し、
前記歪み補償フィルタのフィルタ係数に基づいて、前記受信信号に含まれる群遅延を計算し、該計算した群遅延から群遅延リプルを計算し、
前記計算された群遅延リプルに基づいて位相応答を計算し、該計算した位相応答を、前記受信機に含まれる適応等化フィルタの前段に配置される、位相補償機能を有する1以上のフィルタにフィードバックすることで、前記位相補償機能を有する1以上のフィルタに前記群遅延リプルを少なくとも部分的に補償させる、歪み補償方法。
【0094】
[付記17]
伝送路を介して送信機から送信される信号を受信機においてコヒーレント受信することで得られる受信信号を歪み補償フィルタに入力し、該歪み補償フィルタのフィルタ係数を適応的に制御することで前記受信信号に含まれる歪みを補償し、
前記歪み補償フィルタのフィルタ係数に基づいて、前記受信信号に含まれる群遅延を計算し、該計算した群遅延から群遅延リプルを計算し、
前記計算された群遅延リプルに基づいて位相応答を計算し、該計算した位相応答を、前記受信機に含まれる適応等化フィルタの前段に配置される、位相補償機能を有する1以上のフィルタにフィードバックすることで、前記位相補償機能を有する1以上のフィルタに前記群遅延リプルを少なくとも部分的に補償させる処理をプロセッサに実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0095】
10:通信システム
11:送信機
13:伝送路
15:受信機
17:補償量計算装置
21:歪み補償フィルタ
22:群遅延リプル計算部
23:フィードバック計算部
100:光ファイバ通信システム
110:送信機
111:符号化部
112:予等化部
113:DAC
114:光変調器
115:LD
130:伝送路
132:光ファイバ
133:光増幅器
134:光フィルタ
150:受信機
151:LD
152:コヒーレント受信機
153:ADC
154:デジタル信号処理部
155:補償量計算部
171:波長分散補償フィルタ
172:適応等化フィルタ
173:係数更新部
174:誤り訂正部
175:デジタル信号再生部
181:波長分散補償フィルタ
182:適応等化フィルタ
183:係数更新部
184:群遅延リプル計算部
185:フィードバック計算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17