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特開2024-55393光硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、及び硬化物
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  • 特開-光硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、及び硬化物 図1
  • 特開-光硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、及び硬化物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055393
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20240411BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240411BHJP
   C08L 101/08 20060101ALI20240411BHJP
   C08F 283/00 20060101ALI20240411BHJP
   C08F 265/00 20060101ALI20240411BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20240411BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
G03F7/027 515
G03F7/004 512
G03F7/004 501
C08L101/08
C08F283/00
C08F265/00
C08F20/00 510
C08F2/44 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162281
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000166683
【氏名又は名称】互応化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 颯太
(72)【発明者】
【氏名】樋口 倫也
【テーマコード(参考)】
2H225
4J002
4J011
4J026
【Fターム(参考)】
2H225AC31
2H225AC33
2H225AC36
2H225AC44
2H225AC46
2H225AC54
2H225AD02
2H225AD06
2H225AD07
2H225AD15
2H225AE12P
2H225AE15P
2H225AN23P
2H225AN38P
2H225BA09P
2H225BA22P
2H225BA32P
2H225CA12
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J002AA061
4J002CD201
4J002CF231
4J002EH077
4J002EU026
4J002EU236
4J002EV046
4J002EW146
4J002FD200
4J002FD206
4J002FD207
4J002GH00
4J002GP03
4J002GQ00
4J011AA05
4J011AC04
4J011BA04
4J011PA69
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA23
4J011QA24
4J011RA03
4J011SA84
4J011TA02
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA01
4J026AA76
4J026AB15
4J026AC22
4J026AC23
4J026BA27
4J026BA28
4J026BA30
4J026DA02
4J026DB06
4J026DB36
4J026GA07
(57)【要約】
【課題】薄膜を作製しても高い硬化性を有し、かつその硬化物が高い透明性を有する光硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】光硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)、光重合開始剤(B)、及び重合性化合物(C)を含有する。カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対する光重合開始剤(B)の含有量は、25質量%以上である。光硬化性樹脂組成物から、10μmの厚み寸法を有する硬化物を作製した場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における硬化物の光透過率が、85%以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有樹脂(A)、光重合開始剤(B)、及び重合性化合物(C)を含有する光硬化性樹脂組成物であり、
前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対する前記光重合開始剤(B)の含有量は、25質量部以上であり、
前記光硬化性樹脂組成物から、10μmの厚み寸法を有する硬化物を作製した場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における前記硬化物の光透過率が、85%以上である、
光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する前記光重合開始剤(B)の割合は、20質量%以上である、
請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記カルボキシル基含有樹脂(A)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有する、
請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記重合性化合物(C)は、二官能性不飽和化合物と三官能性不飽和化合物とのうち少なくとも一方を含有する、
請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
着色剤を含有しない、
請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
エポキシ化合物(D)を含有しないか、又はエポキシ化合物(D)を更に含有し、かつ前記光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する前記エポキシ化合物(D)の質量割合が5%未満である、
請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
無機フィラーを含有しないか、又は無機フィラーを更に含有し、かつ前記光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する前記無機フィラーの質量割合が5%以下である、
請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物を含む、
ドライフィルム。
【請求項9】
前記ドライフィルムの膜厚は、10μm以下である、
請求項8に記載のドライフィルム。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項11】
前記硬化物の膜厚は、10μm以下である、
請求項10に記載の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、及び硬化物に関する。詳細には、光硬化性樹脂組成物、光硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物を含むドライフィルム、及び光硬化性樹脂組成物の硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の電子部品を備える半導体装置等の電子デバイスにおいて、電子部品を保護するために、透明性を有する硬化物で保護層(保護膜)を作製することが行われている。透明性を有する硬化物を作製するには、透明性が高い樹脂組成物が用いられ、樹脂組成物を電子部品上に塗布して硬化させることにより電子部品が外的刺激等から保護されうる。これにより、電子デバイスの信頼性の向上を図りうる。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)アルカリ可溶性高分子、(B)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、及び(C)光重合開始剤を含む感光性樹脂組成物から感光性樹脂層を作製することが開示されている。また、支持フィルム上にこの感光性樹脂層を積層し、感光性樹脂層の厚みが20μm以下である感光性樹脂積層体を作製すること、この感光性樹脂積層体が導体部の保護膜形成に用いられること、及び(C)光重合開始剤は、感光性樹脂組成物中の全固形分100質量%に対し、0.5質量%~5質量%とすることが好ましいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/047691号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の感光性樹脂組成物から薄膜を作製すると、その硬化物は透明性を有しうるものの、感光性樹脂組成物の照射する光に対する感度を向上させることは難しく、感光性樹脂組成物の硬化性を向上させる必要がある。
【0006】
本開示の目的は、薄膜を作製しても高い光硬化性を有し、かつその硬化物が高い透明性を有する光硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、及び硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る光硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)、光重合開始剤(B)、及び重合性化合物(C)を含有する光硬化性樹脂組成物である。前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対する前記光重合開始剤(B)の含有量は、25質量部以上である。前記光硬化性樹脂組成物から、10μmの厚み寸法を有する硬化物を作製した場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における前記硬化物の光透過率が、85%以上である。
【0008】
本開示の一態様に係るドライフィルムは、前記光硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物を含む。
【0009】
本開示の一態様に係る硬化物は、前記光硬化性樹脂組成物の硬化物である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、薄膜を作製しても高い硬化性を有し、かつその硬化物が高い透明性を有する光硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、及び硬化物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1Aから図1Cは、本実施の一形態の積層体の概略を示す断面図である。
図2図2Aから図2Dは、本実施の他の一形態の積層体の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.概要
まず、本開示の光硬化性樹脂組成物の完成に至った経緯について説明する。
【0013】
樹脂組成物から電子デバイスにおける電子部品等を保護するための保護層(パッシベーション層)を作製するために、保護層を薄膜化して設けることが行われている。特許文献1(国際公開第2016/047691号)では、樹脂組成物を支持体等の基材上に塗布して、薄膜の樹脂層による保護膜を形成することが記載されている。
【0014】
しかし、特許文献1の感光性樹脂組成物から、膜厚が比較的大きな(例えば100μm以上等)硬化膜を作製すると透明性の硬化物を良好に得られうるものの、より膜厚を小さくし、例えば10μm以下の薄膜(乾燥皮膜)を作製し、これに光を照射させることにより硬化させようとした場合、樹脂層を十分に硬化できないことがあった。
【0015】
発明者らは、独自に調査を進めた結果、樹脂組成物を薄膜化するにあたり、樹脂組成物の硬化性を低下させうる要因を突き止めた。すなわち、樹脂組成物を上記のような組成で配合し、10μm以下の乾燥皮膜を作製し、この乾燥皮膜に光を照射すると、乾燥皮膜表面において、酸素阻害が生じやすく、それにより硬化性低下の一因となっていることがわかった。このような問題を解決すべく、発明者らは、鋭意研究を重ね、本実施形態に係る光硬化性樹脂組成物の完成に至った。本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、以下の構成を有する。なお、本開示の範囲は、上記の開発の経緯によって制限を受けるものではない。
【0016】
本実施形態に係る光硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)、光重合開始剤(B)、及び重合性化合物(C)を含有する。カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対する光重合開始剤(B)の含有量は、25質量部以上である。光硬化性樹脂組成物から、10μmの厚み寸法を有する硬化物を作製した場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における硬化物の光透過率が、85%以上である。これにより、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、薄膜を作製しても高い硬化性を有し、かつその硬化物が高い透明性を有する。
【0017】
本実施形態において、薄膜を作製しても光硬化性樹脂組成物が高い硬化性を有し、かつ硬化物が高い透明性を有する理由は正確には明らかにはされていないが、以下の理由によるものと考えられる。
【0018】
樹脂組成物から膜厚が比較的大きな硬化膜(例えば20μm以上等)を作製するにあたっては、光を照射した際に、乾燥皮膜の深部は酸素阻害の影響を受けにくいため、深部まで十分に硬化させることができるが、膜厚が薄い硬化膜を作製する場合には、樹脂組成物から作製した皮膜の表面のみが硬化されるか、又は乾燥皮膜全体において、酸素阻害が生じやすい。これに対し、本実施形態では、カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対する光重合開始剤(B)の含有量が25質量部以上であることにより、膜厚を例えば10μm以下のように小さくし、皮膜に光を照射しても、酸素阻害の影響を受けにくくすることができる。そのため、皮膜の硬化性が低下することを抑えることができ、かつ皮膜の内部でも硬化反応が十分に進行しうることで、結果として硬化性が向上しうる、と考えられる。
【0019】
また、本実施形態では、光硬化性樹脂組成物から、10μmの厚み寸法を有する硬化物を作製した場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における硬化物の光透過率が85%以上であることにより、光硬化性樹脂組成物から作製される硬化物は、高い透明性を有する。なお、上記は、光硬化性樹脂組成物が、10μm以外の厚み寸法で硬化物を作製することを何ら制限するものではないが、本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、例えば10μm以下の厚み寸法を有し、かつ透明性を有するドライフィルム、及び10μm以下の厚み寸法を有し、かつ透明性を有する硬化物を作製するために特に好適に用いることができる。
【0020】
2.詳細
以下、本実施形態に係る光硬化性樹脂組成物について具体的に説明する。なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」とのうち少なくとも一方を意味する。例えば、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートのうち少なくとも一方を意味する。
【0021】
[光硬化性樹脂組成物]
本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、重合性化合物(C)と、を含有する。光硬化性樹脂組成物から作製される厚み10μmの厚み寸法を有する乾燥皮膜が作製された場合、波長450~800nmの光透過率が85%以上である。光硬化性樹脂組成物がカルボキシル基含有樹脂(A)を含有することで、光硬化性樹脂組成物は、感光性を有し、かつアルカリ性の水溶液などを用いて現像することが可能である。
【0022】
光硬化性樹脂組成物から、10μmの厚み寸法を有する乾燥皮膜が作製された場合の、波長450~800nmの光透過率が85%以上であることで、光硬化性樹脂組成物から透明性の高い硬化物(透明硬化膜)が作製されうる。
【0023】
本実施形態に係る光硬化性樹脂組成物が含有しうる成分について、詳細に説明する。
【0024】
(カルボキシル基含有樹脂)
本実施形態のカルボキシル基含有樹脂(A)は、1分子内にカルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物である。光硬化性樹脂組成物がカルボキシル基含有樹脂(A)を含有することで、光硬化性樹脂組成物は、アルカリ溶液により現像をすることができる。
【0025】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、例えばカルボキシル基とエチレン性不飽和基との各々を分子内に少なくとも1つ有する化合物を含む。カルボキシル基含樹脂(A)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有することが好ましい。カルボキシル基含有樹脂(A)がビスフェノールフルオレン骨格を有することで、光硬化性樹脂組成物の解像度をより向上させやすい。また、カルボキシル基含有樹脂(A)がビスフェノールフルオレン骨格を有することで、光硬化性樹脂組成物から作製される硬化物の物性を向上させやすい。硬化物の物性については、後に詳述する。
【0026】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、エポキシ基を少なくとも2つ有するエポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a2)とが反応して生成する生成物と、酸無水物(a3)と、が反応して生成するカルボキシル基含有樹脂(A1)を含有することが好ましい。
【0027】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、例えば、1分子中にビスフェノールフルオレン骨格と、カルボキシル基と、をそれぞれ少なくとも1つ有しうる。カルボキシル基含有樹脂(A1)は、1分子中にエチレン性不飽和基を少なくとも1つ更に有していてもよい。
【0028】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A1)を含有することが好ましい。カルボキシル基含有樹脂(A1)の合成について説明する。
【0029】
エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とが反応して生成する生成物(以下、「生成物(X)」ともいう)は、エポキシ化合物(a1)における二つのエポキシ基の各々にカルボン酸(a2)におけるカルボキシル基が反応して生成した生成物(X1)を含有する。この生成物(X1)は、エポキシ基とカルボキシル基との反応により生じた二級の水酸基と、カルボン酸(a2)に由来するエチレン性不飽和基とを有する。生成物(X)は、エポキシ化合物(a1)における二つのエポキシ基のうち一方のみにカルボン酸(a2)におけるカルボキシル基が反応して生成した生成物(X2)も含有しうる。生成物(X2)は、二級の水酸基と、エチレン性不飽和基と、エポキシ基とを有する。生成物(X)は未反応のエポキシ化合物(a1)も含有しうる。すなわち、生成物(X)はエポキシ基を有する成分を含有することがあり、この成分は生成物(X2)とエポキシ化合物(a1)とのうち少なくとも一方を含みうる。
【0030】
生成物(X)と酸無水物(a3)とが反応して生成するカルボキシル基含有樹脂(A1)は、生成物(X1)と酸二無水物(a4)との反応により生成する成分(X3)を含有しうる。成分(X3)は、酸二無水物(a4)に由来するカルボキシル基を有しうる。また、酸二無水物(a4)による架橋反応が生じうることから、成分(X3)には分子量分布が生じやすい。また、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、未反応の生成物(X1)も含みうる。
【0031】
さらに、酸無水物(a3)は、酸一無水物(a5)を含有しうる。よって、生成物(X)と酸無水物(a3)とが反応して生成するカルボキシル基含有樹脂(A1)は、生成物(X1)と酸一無水物(a5)との反応により生成する成分(X4)を含有しうる。成分(X4)は、酸一無水物(a5)に由来するカルボキシル基を有する。
【0032】
これにより、カルボキシル基含有樹脂(A1)は適度な分子量分布を有しうる。このため、所望の分子量及び多分散度を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)が容易に得られる。
【0033】
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a2)に由来するエチレン性不飽和基を有することにより、光反応性を有する。このため、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、光硬化性樹脂組成物に、感光性(具体的には紫外線硬化性)を付与できる。また、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、酸無水物(a3)に由来するカルボキシル基を有することで、光硬化性樹脂組成物に、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液による現像性を付与できる。さらに、酸無水物(a3)が酸二無水物(a4)を含有する場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)の分子量は、酸二無水物(a4)による架橋の数に依存する。このため、酸価と分子量とが適度に調整されたカルボキシル基含有樹脂(A1)が得られる。また、酸無水物(a3)が酸二無水物(a4)を含有する場合、酸二無水物(a4)の量を制御することで、所望の分子量及び酸価のカルボキシル基含有樹脂(A1)が容易に得られる。
【0034】
カルボキシル基含有樹脂(A1)の数平均分子量Mnは、500以上2500以下であることが好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が向上しやすい。数平均分子量は、より好ましくは800以上2300以下であり、更に好ましくは900以上2200以下であり、特に好ましくは1000以上2000以下である。また、カルボキシル基含有樹脂(A1)の多分散度Mw/Mnは1.2以上2.8以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは1.3以上2.7以下であり、更に好ましくは1.4以上2.6以下であり、特に好ましくは1.5以上2.5以下である。なお、多分散度は、カルボキシル基含有樹脂(A1)の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比の値(Mw/Mn)である。
【0035】
カルボキシル基含有樹脂(A1)の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによる分子量測定結果から算出される。ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィでの分子量測定は、例えば、次の条件の下で行うことができる。
GPC装置:昭和電工社製SHODEX SYSTEM 11、
カラム:SHODEX KF-800P,KF-005,KF-003,KF-001の4本直列、
移動相:THF、
流量:1mL/分、
カラム温度:45℃、
検出器:RI、
換算:ポリスチレン。
【0036】
カルボキシル基含有樹脂(A1)の酸価は55mgKOH/g以上130mgKOH/g以下であることが好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物から作製される硬化物の解像性が特に向上する。カルボキシル基含有樹脂(A1)の酸価は、より好ましくは60mgKOH/g以上120mgKOH/g以下であり、更に好ましくは60mgKOH/g以上110mgKOH/g以下であり、特に好ましくは60mgKOH/g以上75mgKOH/g未満である。
【0037】
カルボキシル基含有樹脂(A1)の原料、並びにカルボキシル基含有樹脂(A1)の合成時の反応条件について詳しく説明する。
【0038】
エポキシ基を少なくとも2つ有するエポキシ化合物(a1)は、例えばビスフェノールフルオレン骨格を有する化合物を含有できる。カルボキシル基含有樹脂(A1)は、例えば、下記式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物とエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a2)とが反応して生成する生成物と、酸無水物(a3)と、の反応物である。すなわち、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、下記式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物とエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a2)とを反応させ、それにより得られた生成物と、酸無水物(a3)とを反応させることで合成される。光硬化性樹脂組成物がカルボキシル基含有樹脂(A1)を含有していると、光硬化性樹脂組成物の硬化物は、高い耐熱性及び絶縁信頼性という優れた物性を実現しうる。
【0039】
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有していてもよい。カルボキシル基含有樹脂(A1)がビスフェノールフルオレン骨格を有する場合は、300~330nmの波長域の光を吸収しやすいため、光硬化性樹脂組成物から作製される硬化物の解像性をより向上しうる。また、カルボキシル基含有樹脂(A1)がビスフェノールフルオレン骨格を有する場合は、かさ高い構造をもつため、生成するラジカル種の光硬化性樹脂組成物中での拡散を防ぐことができ、300~330nmの波長域を有さない光で露光した場合においても、光硬化性樹脂組成物から作製される硬化物の解像性が向上しうる。
【0040】
【化1】
【0041】
式(1)におけるR1~R8の各々は、水素でもよいが、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲンでもよい。なぜなら、芳香環における水素が低分子量のアルキル基又はハロゲンで置換されても、カルボキシル基含有樹脂(A1)の物性に悪影響はなく、むしろカルボキシル基含有樹脂(A1)を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物の耐熱性あるいは難燃性が向上する場合もあるからである。
【0042】
エポキシ化合物(a1)は、例えば下記式(2)に示す構造を有していてもよい。式(2)中のnは、例えば0~20の範囲内の整数である。カルボキシル基含有樹脂(A1)の分子量を適切に制御するためには、nの平均は0~1の範囲内であることが特に好ましい。nの平均が0~1の範囲内であれば、酸無水物(a3)が酸二無水物を含有する場合でも、過剰な分子量の増大が抑制されやすくなる。また、式(2)において、R~Rは各々独立に水素、炭素数1以上5以下のアルキル基又はハロゲンである。
【0043】
【化2】
【0044】
エチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a2)は、例えば一分子中にエチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有できる。より具体的には、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a2)は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、β-カルボキシエチルアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。好ましくは、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a2)はアクリル酸を含有する。
【0045】
エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とを反応させるにあたっては、適宜の方法が採用され得る。例えば、エポキシ化合物(a1)と溶剤とを含む溶液にカルボン酸(a2)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を常法により、好ましくは60℃以上150℃以下、特に好ましくは80℃以上120℃以下の温度で反応させることで、生成物(X)を得ることができる。この場合の溶剤は、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、及びジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。熱重合禁止剤は例えばハイドロキノン及びハイドロキノンモノメチルエーテルのうち少なくとも一方を含有する。触媒は例えばベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルフォスフィン、及びトリフェニルスチビンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0046】
触媒が特にトリフェニルフォスフィンを含有することが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とを反応させることが好ましい。この場合、エポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基とカルボン酸(a2)との開環付加反応が特に促進され、95%以上、あるいは97%以上、あるいはほぼ100%の反応率(転化率)を達成できる。
【0047】
エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とを反応させる際のエポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対するカルボン酸(a2)の量は0.7モル以上1.0モル以下であることが好ましい。この場合、優れた感光性と安定性とを有する光硬化性樹脂組成物が得られる。
【0048】
このようにして得られる生成物(X)は、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基とカルボン酸(a2)のカルボキシル基との反応で生成された水酸基を備える。
【0049】
酸二無水物(a4)は、酸無水物基を二つ有する化合物である。酸二無水物(a4)は、テトラカルボン酸の無水物を含有できる。酸二無水物(a4)は、例えば1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、グリセリンビスアンヒドロトリメリテートモノアセテート、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト〔1,2-c〕フラン-1,3-ジオン、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、及び3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。特に酸二無水物(a4)が3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有することが好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物の良好な現像性を確保しながら、光硬化性樹脂組成物から作製される皮膜のタック性を更に抑制しうる。
【0050】
酸無水物(a3)は、酸一無水物(a5)を含んでいてもよい。酸一無水物(a5)は、酸無水物基を一つ有する化合物である。酸一無水物(a5)は、ジカルボン酸の無水物を含有できる。酸一無水物(a5)は、例えばフタル酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、グルタル酸無水物、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物、及びイタコン酸無水物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。この場合、光硬化性樹脂組成物の良好な現像性を確保しながら、光硬化性樹脂組成物から作製される皮膜のタック性を更に抑制しうる。
【0051】
生成物(X)と酸無水物(a3)とを反応させるにあたっては、適宜の方法が採用されうる。例えば、生成物(X)の溶剤溶液に酸無水物(a3)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を常法により好ましくは60℃以上150℃以下、特に好ましくは80℃以上120℃以下の温度で反応させることで、カルボキシル基含有樹脂(A1)が得られる。溶剤、触媒及び重合禁止剤としては、適宜のものが使用でき、生成物(X)の合成時に使用した溶剤、触媒及び重合禁止剤をそのまま使用することもできる。
【0052】
触媒が特にトリフェニルフォスフィンを含有することが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、生成物(X)と、酸無水物(a3)とを反応させることが好ましい。この場合、生成物(X)における二級の水酸基と酸無水物(a3)との反応が特に促進され、90%以上、95%以上、97%以上、あるいはほぼ100%の反応率(転化率)を達成できる。
【0053】
酸無水物(a3)が酸二無水物(a4)を含有する場合、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対して、酸二無水物(a4)の量は、0.01モル以上0.24モル以下であることが好ましい。この場合、酸価と分子量とが適度に調整されたカルボキシル基含有樹脂(A1)が容易に得られる。酸二無水物(a4)の量は、0.04モル以上0.22モル以下であることがより好ましい。
【0054】
また、酸無水物(a3)が酸一無水物(a5)を更に含有する場合、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対して、酸一無水物(a5)の量は0.05モル以上0.7モル以下であることが好ましい。この場合、酸価と分子量とが適度に調整されたカルボキシル基含有樹脂(A1)が容易に得られる。
【0055】
生成物(X)と、酸無水物(a3)とを、エアバブリング下で反応させることも好ましい。この場合、生成されるカルボキシル基含有樹脂(A1)の過度な分子量増大が抑制されることで、光硬化性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。
【0056】
カルボキシル基含有樹脂(A)全量に対するカルボキシル基含有樹脂(A1)の割合は、5質量%以上100質量%以下であることが好ましく、10質量%以上100質量%以下であればより好ましく、25質量%以上100質量%以下であれば更に好ましく、40質量%以上100質量%以下であればより更に好ましく、50質量%以上100質量%以下であれば特に好ましい。
【0057】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A1)のみを含有してもよく、カルボキシル基含有樹脂(A1)以外のカルボキシル基含有樹脂(A2)を含有してもよい。カルボキシル基含有樹脂(A2)は、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含有するエチレン性不飽和単量体の重合体とエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物との反応物である樹脂を含有する。エチレン性不飽和単量体はカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。カルボキシル基含有樹脂(A2)は、重合体におけるカルボキシル基の一部にエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させることで得られる。エチレン性不飽和単量体は、カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等の化合物を含有する。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、例えば2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、直鎖又は分岐の脂肪族あるいは脂環族(ただし、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル等の化合物を含有する。エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物は、グリシジル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0058】
(光重合開始剤)
光重合開始剤(B)は、光硬化性樹脂組成物の感光性を向上させうる成分である。光重合開始剤(B)は、例えばα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物を紫外線等の光を照射して露光する場合に、光硬化性樹脂組成物に高い感光性を付与できる。光重合開始剤(B)は、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有することが更に好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物に高い感光性を付与できるとともに、着色を少なくでき、かつ硬化性樹脂組成物の高い透明性を維持しやすい。
【0059】
α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤は、例えば2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0060】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-エチル-フェニル-フォスフィネート等のモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、並びにビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0061】
オキシムエステル系光重合開始剤は、例えば1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(О-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。オキシムエステル系光重合開始剤の具体的な市販品としては、例えばBASFジャパン株式会社製の品番Irgacure OXE01、OXE02、OXE03、OXE04や、株式会社ADEKA製の品番アデカアークルーズN-1919T、NCI-831E、NCI-930、NCI-730等を含む。
【0062】
光硬化性樹脂組成物は、更に適宜の光重合促進剤、及び増感剤等を含有してもよい。例えば光硬化性樹脂組成物は、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、フェニルグリオキシックアシッドメチルエステル、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等のヒドロキシケトン類;ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4-ジイソプロピルキサントン等のキサントン類;並びに2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシケトン類;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン等の窒素原子を含む化合物からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。光硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤(B)と共に、p-ジメチル安息香酸エチルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2-ジメチルアミノエチルベンゾエート等の第三級アミン系等の適宜の光重合促進剤及び増感剤等を含有してもよい。光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、可視光露光用の光重合開始剤及び近赤外線露光用の光重合開始剤のうちの少なくとも一種を含有してもよい。感光性接着剤組成物は、光重合開始剤(B)と共に、レーザー露光法用増感剤である7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン等のクマリン誘導体、カルボシアニン色素系、キサンテン色素系等を含有してもよい。
【0063】
本実施形態では、光硬化性樹脂組成物における光重合開始剤(B)の、カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対する含有量は、25質量部以上である。これにより、光硬化性樹脂組成物から薄膜を作製しても、硬化性に優れた硬化物を作製することができる。光重合開始剤(B)の、カルボキシル基含有樹脂(A)に対する前記含有量は、27質量部以上であれば好ましく、30質量部以上であればより好ましく、35質量部以上であれば更に好ましく、40質量部以上であれば特に好ましい。前記範囲であると、光硬化性樹脂組成物のより高い硬化性を確保でき、かつ硬化物の透明性も維持しうる。なお、前記含有量の好ましい上限は、65質量部以下である。
【0064】
(重合性化合物)
重合性化合物(C)は、光重合開始剤(B)の存在により、光硬化性樹脂組成物に光硬化性を付与しうる。重合性化合物(C)は、光重合性モノマー、及び光重合性プレポリマーからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。光重合性モノマーとしては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;並びにジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0065】
光重合性プレポリマーは、例えばエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてからエチレン性不飽和基を付加して得られるプレポリマー、及びオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。オリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類は、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、及びスピラン樹脂(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0066】
特に重合性化合物(C)は、二官能性不飽和化合物と三官能性不飽和化合物とのうち少なくとも一方を含有することが好ましい。すなわち、重合性化合物(C)は、一分子中にエチレン性不飽和結合を2つ有する化合物、又は一分子中にエチレン性不飽和結合を3つ有する化合物の少なくとも一種を含有することが好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物から作製される皮膜(乾燥皮膜)を露光して現像する場合の解像性が特に向上し、かつ光硬化性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。重合性化合物(C)全体に対する二官能性不飽和化合物と三官能性不飽和化合物との合計量の割合は、5質量%以上100質量%以下であることが好ましく、10質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上100質量%以下であることが更に好ましく、70質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物の解像性をより高めうる。
【0067】
重合性化合物(C)は、トリシクロデカン骨格を有することが好ましい。この場合、
光硬化性樹脂組成物の硬化物の解像性向上に寄与しうる。トリシクロデカン骨格を有する化合物は、例えば上述のトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが挙げられるが、これに限られない。
【0068】
カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対する重合性化合物(C)の量は、5質量部以上65質量部以下であれば好ましく、15質量部以上60質量部以下であればより好ましく、20質量部以上55質量部以下の範囲内であれば更に好ましく、25質量部以上50質量部以下の範囲内であれば特に好ましい。
【0069】
(その他の成分)
本実施形態では、光硬化性樹脂組成物は、着色剤を含有しないことが好ましい。通常、樹脂組成物から薄膜を作製するにあたり、硬化性の低下を補うために着色剤を含有することがあるが、この場合、着色剤の影響で透明性が低下することがある。逆に、着色剤を含有しないと透明性の向上が見込まれるが、薄膜の場合には光硬化が不十分になることがある。これに対し、本実施形態では、光硬化性樹脂組成物から薄膜を作製しても硬化性を損なうことなく、その硬化物が特に高い透明性を有しうる。なお、光硬化性樹脂組成物は、着色剤を含有してもよいが、着色剤を含有する場合、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する着色剤の割合は、0.5質量%以下であれば好ましく、0.3質量%以下であればより好ましい。着色剤には、着色顔料、及び染料等が含まれる。
【0070】
光硬化性樹脂組成物は、エポキシ化合物(D)を含有してもよいが、エポキシ化合物(D)を含有しないことが好ましい。光硬化性樹脂組成物がエポキシ化合物(D)を含有しない場合には、光硬化性樹脂組成物の保存安定性を向上させることができる。なお、エポキシ化合物(D)を含有する場合には、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対するエポキシ化合物(D)の割合は、5質量%未満であることが好ましい。光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対するエポキシ化合物(D)の割合が5質量%未満であれば、光硬化性樹脂組成物の保存安定性を良好に維持しやすい(他の特性も阻害しにくい)。光硬化性樹脂組成物がエポキシ化合物(D)を含有する場合、光硬化性樹脂組成物に熱硬化性を付与しうる。
【0071】
光硬化性樹脂組成物がエポキシ化合物(D)を含有する場合、エポキシ化合物(D)は、例えば結晶性エポキシ樹脂(D1)を含有することができる。また、エポキシ化合物(D)は、非晶性エポキシ樹脂(D2)を更に含有してもよい。ここで「結晶性エポキシ樹脂」は、融点を有するエポキシ樹脂であり、「非晶性エポキシ樹脂」は、融点を有さないエポキシ樹脂である。
【0072】
結晶性エポキシ樹脂(D1)は、例えば、1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ハイドロキノン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品名YDC-1312)、ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品名YX-4000)、ジフェニルエーテル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製の品番YSLV-80DE)、ビスフェノール型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品名YSLV-80XY)、テトラキスフェノールエタン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番GTR-1800)、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として構造(S7)を有するエポキシ樹脂)からなる群から選択される一種以上の成分を含有しうる。
【0073】
結晶性エポキシ樹脂(D1)は、1分子中に2個のエポキシ基を有しうる。この場合、温度変化が繰り返される中で、硬化物にクラックを生じ難くさせることができる。
【0074】
結晶性エポキシ樹脂(D1)は150g/eq以上300g/eq以下のエポキシ当量を有しうる。このエポキシ当量は、1グラム当量のエポキシ基を含有する結晶性エポキシ樹脂(D1)のグラム重量である。結晶性エポキシ樹脂(D1)は融点を有する。結晶性エポキシ樹脂(D1)の融点としては、例えば70℃以上180℃以下が挙げられる。
【0075】
エポキシ化合物(D)は、融点110℃以下の結晶性エポキシ樹脂(D1-1)を含有してもよい。この場合、光硬化性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が更に向上しうる。また、この場合、光硬化性樹脂組成物から作製される硬化物層の解像性(開口性)も向上しうる。融点110℃以下の結晶性エポキシ樹脂(D1-1)は、例えばビフェニル型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番YX-4000)、ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV-80DE)、及びビスフェノール型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学製の品番YSLV-80XY)、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として構造(S7)を有するエポキシ樹脂)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0076】
非晶性エポキシ樹脂(D2)は、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N-775)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N-695)、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N-865)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER1001)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER4004P)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA-1514)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番NC-3000)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番ST-4000D)、ナフタレン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP-4032、EPICLON HP-4700、EPICLON HP-4770)、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP-820)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC製の品番EPICLON HP-7200)、アダマンタン型エポキシ樹脂(具体例として出光興産株式会社製の品番ADAMANTATEX-E-201)、特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品番YL7175-500、及びYL7175-1000;DIC株式会社製の品番EPICLON TSR-960、EPICLON TER-601、EPILON TSR-250-80BX、EPICLON 1650-75MPX、EPICLON EXA-4850、EPICLON EXA-4816、EPICLON EXA-4822、及びEPICLON EXA-9726;新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV-120TE)、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番MX-156)、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番MX-136)、並びにゴム粒子含有ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番カネエースMX-130)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有しうる。
【0077】
光硬化性樹脂組成物がエポキシ化合物(D)を含有する場合、光硬化性樹脂組成物は、結晶性エポキシ樹脂(D1)と非晶性エポキシ樹脂(D2)との両方を含有してもよい。
【0078】
エポキシ化合物(D)はリン含有エポキシ樹脂を含有してもよい。この場合、光硬化性樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有エポキシ樹脂は結晶性エポキシ樹脂(D1)に含有されてもよいし、あるいは非晶性エポキシ樹脂(D2)に含有されてもよい。リン含有エポキシ樹脂は、例えば、リン酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA-9726、及びEPICLON EXA-9710)、新日鉄住金化学株式会社製の品番エポトートFX-305等である。
【0079】
エポキシ化合物(D)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(D3)を含有してもよい。このエポキシ化合物(D3)は、例えば上記で説明した式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)を含む。
【0080】
光硬化性樹脂組成物は、無機フィラーを含有してもよいが、無機フィラーを含有しないことが好ましい。光硬化性樹脂組成物が無機フィラーを含有しない場合、光硬化性樹脂組成物、及び光硬化性樹脂組成物から作製される硬化物のより高い透明性を実現しうる。なお、光硬化性樹脂組成物が無機フィラーを含有する場合には、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する無機フィラーの割合は、5質量%以下であることが好ましい。光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する無機フィラーの割合が5質量%以下であれば、光硬化性樹脂組成物、及び光硬化性樹脂組成物から作製される硬化物の良好な透明性を確保しうる。
【0081】
無機フィラーとしては、例えば結晶性シリカ、微粉シリカ、ナノシリカ、カーボンナノチューブ、タルク、ベントナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、ハイドロタルサイト、クレー、珪酸カルシウム、マイカ、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チッ化アルミニウム、チッ化硼素、硼酸亜鉛、硼酸アルミニウム、モンモリロナイト、及びセピオライトからなる群から選択される少なくとも一種の無機成分が挙げられる。
【0082】
光硬化性樹脂組成物は、溶剤を含有してもよい。溶剤は、水、エタノール、イソブタノール、1-ブタノール、イソプロパノール、ヘキサノール、エチレングリコール、3-メチル-3-メトキシブタノール等の直鎖、分岐、2級又は多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル等のアルキレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エタノール、イソブタノール、1-ブタノール、イソプロパノール、ヘキサノール、エチレングリコール、3-メチル-3-メトキシブタノール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、及びジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテルからなる群から選択される少なくとも一種のアルコール系溶剤を含有しうる。すなわち、光硬化性樹脂組成物は、アルコール系溶剤を含有しうる。この場合、光硬化性樹脂組成物を調製するにあたって、光硬化性樹脂組成物の塗布性及び均一性をより向上させることができる。また、基材に熱可塑性のフィルムを用いた場合においても、基材の溶解を生じにくくでき基材に損傷を与えにくい。溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルを含むことがより好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物の塗布性及び均一性を更に向上させることができ、かつ良好な乾燥性も得られる。プロピレングリコールモノメチルエーテルは、溶剤全体に対して50質量%以上の割合で含有することが更に好ましい。
【0083】
光硬化性樹脂組成物中の成分の量は、光硬化性樹脂組成物が光硬化性を有し、かつアルカリ性溶液で現像可能であるように、適宜調整される。
【0084】
光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対するカルボキシル基含有樹脂(A)の量は、30質量%以上68質量%以下であれば好ましく、35質量%以上65質量%以下であればより好ましく、40質量%以上62質量%以下であれば更に好ましい。なお、本開示において、「光硬化性樹脂組成物の固形分全量」とは、光硬化性樹脂組成物に含まれ得る成分全体から揮発性の成分の量を除いた成分の合計量をいう。揮発性の成分とは、光硬化性樹脂組成物を加熱して乾燥物が作製される過程、又は光照射して硬化物が作製される過程で揮発し、乾燥物、半硬化物、又は硬化物を構成しない成分のことであり、例えば溶剤等である。
【0085】
光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する光重合開始剤(B)の量は、20質量%以上であることが好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物の硬化性を更に高めうる。
光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する光重合開始剤(B)の量は、21質量%以上であればより好ましく、22質量%以上であれば更に好ましい。なお、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する光重合開始剤(B)の量の上限は、特に制限されないが、35質量%以下であることが好ましい。
【0086】
光硬化性樹脂組成物が、エポキシ化合物(D)を含有する場合、エポキシ化合物(D)に含まれるエポキシ基の当量の合計が、カルボキシル基含有樹脂(A)に含まれるカルボキシル基1当量に対して0当量超2当量以下であることが好ましく、0当量超1当量以下であることがより好ましく、0当量超0.5当量以下であれば更に好ましい。
【0087】
また、光硬化性樹脂組成物が、エポキシ化合物(D)を含有する場合、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対するエポキシ化合物(D)の割合は、3質量%以下であればより好ましく、2質量%以下であれば更に好ましい。この範囲内であると、光硬化性樹脂組成物の保存安定性を高めやすい。なお、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対するエポキシ化合物(D)の割合は、0質量%であってもよい。
【0088】
光硬化性樹脂組成物が、無機フィラーを含有する場合光硬化性樹脂組成物の固形分量に対する無機フィラーの割合は、3質量%以下であればより好ましく、2質量%以下であれば更に好ましい。この範囲内であると、光硬化性樹脂組成物から作製される硬化物の透過性をより高めうる。なお、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する無機フィラーの割合は、0質量%であってもよい。
【0089】
光硬化性樹脂組成物が、溶剤を含有する場合、この溶剤の割合は、光硬化性樹脂組成物全体に対して15質量%以上95質量%以下であることが好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物を塗布するにあたって、光硬化性樹脂組成物の塗布性が向上しうる。
【0090】
本実施形態の効果を阻害しない限りにおいて、光硬化性樹脂組成物は、上記で説明した成分以外の成分を更に含有してもよい。
【0091】
光硬化性樹脂組成物は、カプロラクタム、オキシム、マロン酸エステル等でブロックされたトリレンジイソシアネート系、モルホリンジイソシアネート系、イソホロンジイソシアネート系及びヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックドイソシアネート;ブチル化尿素樹脂;前記以外の各種熱硬化性樹脂;紫外線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、脂環型等のエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加して得られる樹脂;並びにジアリルフタレート樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の高分子化合物からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含有してもよい。
【0092】
光硬化性樹脂組成物は、エポキシ化合物(D)を硬化させるための硬化剤を含有してもよい。硬化剤は、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;酸無水物;フェノール;メルカプタン;ルイス酸アミン錯体;及びオニウム塩からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。これらの成分の市販品は、例えば、四国化成株式会社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU-CAT3503N、UCAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CATSA102、U-CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)である。
【0093】
光硬化性樹脂組成物は、密着性付与剤を含有してもよい。密着性付与剤としては、例えばアセトグアナミン(2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン)、及びベンゾグアナミン(2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン)等のグアナミン誘導体、並びに2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体、シランカップリング剤等が、挙げられる。
【0094】
光硬化性樹脂組成物は、レオロジーコントロール剤を含有してもよい。レオロジーコントロール剤により、光硬化性樹脂組成物の粘性が好適化しやすくなる。レオロジーコントロール剤としては、例えば、ウレア変性中極性ポリアマイド(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-430、BYK-431)、ポリヒドロキシカルボン酸アミド(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-405)、変性ウレア(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-410、BYK-411、BYK-420)、高分子ウレア誘導体(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-415)、ウレア変性ウレタン(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-425)、ポリウレタン(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-428)、ひまし油ワックス、ポリエチレンワックス、ポリアマイドワックス、ベントナイト、カオリン、クレーが挙げられる。
【0095】
光硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤;着色剤;シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;並びに高分子分散剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有してもよい。
【0096】
本実施形態の光硬化性樹脂組成物を調製するにあたっては、適宜の方法で調製すればよい。例えば光硬化性樹脂組成物は、光硬化性樹脂組成物の原料を混合し、撹拌することにより調製可能である。また、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる適宜の混練方法によって混練することで、光硬化性樹脂組成物を調製してもよい。原料に液状の成分、粘度の低い成分等が含まれる場合には、原料のうち液状の成分、粘度の低い成分等を除く部分をまず混練し混合物を調製してから、得られた混合物に、液状の成分、粘度の低い成分等を加えて混合することで、光硬化性樹脂組成物を調製してもよい。光硬化性樹脂組成物が溶剤を含む場合、まず原料のうち、溶剤の一部又は全部を混合してから、原料の残りと混合してもよい。
【0097】
本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、上述のとおり、この光硬化性樹脂組成物から、10μmの厚み寸法を有する硬化物が作製された場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における硬化物の光透過率が85%以上である。これにより、光硬化性樹脂氏組成物から透明性の高い硬化膜(透明硬化膜)が得られ、透明硬化膜は、光学用途に特に好適に用いられうる。光硬化性樹脂組成物から作製される硬化物の吸収スペクトルは、例えば分光光度計等の分光分析装置により測定される。具体的な測定方法は、後掲の実施例の評価試験(4-1)と同様にして測定できる。光硬化性樹脂組成物から作製された硬化物の吸収スペクトルを測定することにより、光透過率を得ることができる。光硬化性樹脂組成物から、厚み10μmの厚み寸法を有する硬化物を作製した場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における光透過率は、90%以上であればより好ましく、95%以上であれば更に好ましい。なお、本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、10μmの厚み寸法を有する硬化物を作製した場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における硬化物の光透過率が、85%以上であるので、10μmの厚み寸法より更に薄い寸法(すなわち10μm以下)の硬化物は、当然に、前記波長範囲における光透過率が85%以上である。
【0098】
本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、基材、及び半導体素子等の電子部品等の表面を保護するための保護層、特に透明保護層を作製するために好適に用いることができる。なお、これに限らず、光硬化性樹脂組成物は高い透明性を有するため、光学用途の電気絶縁材性の層を作製するために用いてもよい。電気絶縁性の層としては、例えばソルダーレジスト層、層間絶縁層、めっきレジスト層を挙げることができる。
【0099】
本実施形態に係る光硬化性樹脂組成物は、厚み25μmの皮膜であっても炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であるような性質を有することが好ましい。この場合、十分に厚い電気絶縁性の層を、光硬化性樹脂組成物からフォトリソグラフィー法で作製することが可能であるため、光硬化性樹脂組成物を、プリント配線板における層間絶縁層、ソルダーレジスト層等を作製するために広く適用可能である。勿論、上述のとおり、光硬化性樹脂組成物から厚み25μmより薄い、特に10μm以下の保護層、及び電気絶縁性の層を作製することも可能である。
【0100】
厚み25μmの皮膜が炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であるかどうかは、次の方法で確認できる。適当な基材上に光硬化性樹脂組成物を塗布することで湿潤塗膜を作製し、この湿潤塗膜を80℃で40分加熱することで、厚み25μmの皮膜を形成する。この皮膜に紫外線を透過する露光部と紫外線を遮蔽する非露光部とを有するネガマスクを直接当てた状態で、皮膜に500mJ/cm2の条件で紫外線を照射して露光を行う。露光後に、皮膜に30℃の1質量%Na2CO3水溶液を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射してから、純水を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射する処理を行う。この処理後に皮膜を観察した結果、皮膜における非露光部に対応する部分が除去されて残渣が認められない場合に、厚み25μmの皮膜が炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であると判断できる。なお、他の厚み(例えば30μm)の皮膜についても、同様に、炭酸ナトリウム水溶液での現像が可能かどうかを確認することができる。
【0101】
本実施形態の光硬化性樹脂組成物から作製されるドライフィルム、及び硬化物について、図1A図1Cを参照しながら、「ドライフィルム」及び「硬化物」に符号を付して具体的に説明する。
【0102】
本実施形態のドライフィルム1は、上記の光硬化性樹脂組成物を乾燥、又は半硬化させることにより得られる。すなわち、ドライフィルム1は、光硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物である。光硬化性樹脂組成物の半硬化物とは、光硬化性樹脂組成物中の成分の一部が硬化しつつ、完全には硬化していない状態をさす。
【0103】
ドライフィルム1は、例えば、以下のようにして作製可能である。
【0104】
まず、光硬化性樹脂組成物を支持するための支持基材(例えば基材2)と、光硬化性樹脂組成物を用意し、基材2上に、光硬化性樹脂組成物を塗布する。
【0105】
基材2としては、例えばガラス、プラスチック、及びセラミック等といった適宜の基板を挙げることができる。より具体的には、例えば基材2は、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、液晶ポリマー及びポリカーボネート等の熱可塑性樹脂製のフィルムを含む。基材2には、後述のコア材21が含まれる。すなわち、基材2は、プリント配線板等のように絶縁層、及び導体、導体配線等といった導電層を備える基板であってもよい。
【0106】
続いて、塗布後の光硬化性樹脂組成物を加熱乾燥することで乾燥皮膜を作製する。光硬化性樹脂組成物から乾燥皮膜を作製する方法は、例えば、塗布法とドライフィルム法とがある。
【0107】
塗布法では、例えば基材2上に光硬化性樹脂組成物を塗布して湿潤塗膜を形成する。光硬化性樹脂組成物の塗布方法は、適宜の方法、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。続いて、光硬化性樹脂組成物中の有機溶剤を揮発させるために、例えば60℃~130℃の範囲内の温度下で適宜の時間、例えば1~80分間、湿潤塗膜を乾燥させ、これによって、乾燥皮膜を得ることができる。
【0108】
ドライフィルム法では、まずポリエステルなどで構成される適宜の支持体上に光硬化性樹脂組成物を塗布してから乾燥することで、支持体上に光硬化性樹脂組成物の乾燥物であるドライフィルム1を形成する。これにより、ドライフィルム1と、ドライフィルム1を支持する支持体とを備える支持体付きドライフィルム(図1Aに示す積層体10参照)が得られる。積層体10は、ドライフィルム1の、基材2とは反対側の面に重なる被覆層(例えば、カバーフィルム4)を設けた積層体101としてもよい(図1B参照)。カバーフィルム4は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、2軸延伸ポリプロピレン(OPP:Oriented Polypropylene)、及びポリエチレンからなる群から選択される少なくとも一種を含む。また、被覆層として、離型処理されたフィルムを用いてもよい。
【0109】
光硬化性樹脂組成物の半硬化物は、基材2上に作製した乾燥皮膜を一部硬化させることにより得られる。
【0110】
このように、光硬化性樹脂組成物からドライフィルム1を作製できる。また、上記方法によれば、基材2と、ドライフィルム1を備える積層体10(後述の第2の積層体と区別するため、「第1の積層体10」ということもある。)を得ることもできる。なお、第1の積層体10は、図1Aに示す構成に限らず、例えば基材2とドライフィルム1との間に、基材2及びドライフィルム1とは異なる層を備えていてもよい。なお、上述のとおり、光硬化性樹脂組成物の半硬化物は基材2上に作製されるものには限られず、適宜の対象物に塗布すること等により作製可能である。
【0111】
本実施形態の硬化物11は、上記の光硬化性樹脂組成物を硬化することにより作製できる。硬化物11は、上記のドライフィルム1を硬化させることにより作製してもよい。光硬化性樹脂組成物、又はドライフィルム1を光硬化する方法については、後に詳述する。
【0112】
このような方法により、基材2と、基材2に重なる硬化物11とを備える、積層体20(上述の第1の積層体10と区別するため、「第2の積層体20」ということもある。)を作製可能である。上記の第1の積層体10に光を照射することで、ドライフィルム1を硬化させて硬化物11とし、第2の積層体2を作製してもよい(図1C参照)。第2の積層体20は、光硬化性樹脂組成物に由来する硬化物11を備えるため、光学用途に好適に利用可能である。そのため、本実施形態の光硬化性樹脂組成物の硬化物11は、透明硬化膜ということもできる。なお、第2の積層体10は、図1Cに示す構成に限らず、例えば基材2と硬化物11との間に、基材2及び硬化物11とは異なる層を更に備えていてもよい。
【0113】
本実施形態のドライフィルム1及び硬化物11は、上記以外の方法で作製してもよい。具体的には、ドライフィルム1は、例えば以下のようにして使用し、硬化物を作製することも可能である。ただし、ドライフィルム、及び硬化物の使用方法はこれらに制限されるものではない。
【0114】
基材2上に光硬化性樹脂組成物の皮膜(ドライフィルム1)を作製するには、まず、図2Aに示すように、基材2としてコア材21を用意する。コア材21は、例えば少なくとも一つの絶縁層200と少なくとも一つの導電層3とを備える。導電層3は、導体配線であってもよい。コア材21の一面上に設けられている導電層3を、以下第一の導体配線31という。
【0115】
続いて、図2Bに示すように、コア材21の第一の導体配線31が設けられている面上に、光硬化性樹脂組成物から作製される塗膜を形成する。光硬化性樹脂組成物からドライフィルム1を形成するには、例えば上述の塗布法、及びドライフィルム法等と同様の方法により、形成すればよい。
【0116】
塗布法では、例えばコア材21等の基材2上に光硬化性樹脂組成物を塗布して湿潤塗膜を形成する。光硬化性樹脂組成物の塗布方法は、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。続いて、光硬化性樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合には、有機溶剤を揮発させるために、例えば60~120℃の範囲内の温度下で湿潤塗膜を乾燥させて、ドライフィルム1(乾燥塗膜)を得ることができる。
【0117】
ドライフィルム法では、まずポリエステル製などの適宜の支持体(基材2)上に光硬化性樹脂組成物を塗布してから乾燥することで、支持体上に光硬化性樹脂組成物を含むドライフィルム1を形成する。これにより、ドライフィルム1と、ドライフィルム1を支持する支持体(基材2)とを備える支持体付きドライフィルムが得られる。支持体付きドライフィルム(例えば積層体10)には、ドライフィルム1の、基材2とは反対側の面に重なる被覆層(例えばカバーフィルム4)を設けてもよい(図1B参照)。
【0118】
この支持体付きドライフィルムにおけるドライフィルム1をコア材21に重ねてから、ドライフィルム1とコア材21に圧力をかけ、続いて支持体である基材2をドライフィルム1から剥離することで、ドライフィルム1を支持体上からコア材21上へ転写する(図2C及び図2D参照)。
【0119】
これにより、コア材21上に、ドライフィルム1が作製される。支持体付きドライフィルムがカバーフィルム4を備える場合は、コア材21にドライフィルム1に重ねる前に、ドライフィルム1からカバーフィルム4を剥離してから、コア材21にドライフィルム1を重ね、上記と同様にドライフィルム1を作製すればよい。
【0120】
このようにして、コア材21等の基材2上に光硬化性樹脂組成物から作製されるドライフィルム1を配置し、コア材21(基材2)上にドライフィルム1を形成することができる。
【0121】
光硬化性樹脂組成物から作製した皮膜を露光することで皮膜を全体的に又は部分的に硬化させる。なお、皮膜は、光硬化性樹脂組成物の乾燥物を含むため、皮膜はドライフィルム1であってもよい。この場合、部分的に露光するにあたっては、例えばネガマスクを皮膜に当ててから、皮膜に紫外線を照射してもよい。ネガマスクは、紫外線を透過させる露光部と紫外線を遮蔽する非露光部とを備え、非露光部は適宜の硬化させることを求めない位置に設けられる。ネガマスクは、例えばマスクフィルム、乾板等のフォトツールである。紫外線の光源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED、YAG、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、並びにg線、h線及びi線のうちの二種以上の組み合わせからなる群から選択される。紫外線の光源はこれらに限定されず、光硬化性樹脂組成物を硬化させうる紫外線を照射できる光源であればよい。
【0122】
なお、露光方法は、ネガマスクを用いる方法以外の方法であってもよい。例えば、光源から発せられる紫外線を皮膜の露光すべき部分のみに照射する直接描画法で皮膜を露光してもよい。直接描画法に適用される光源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED、YAG、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、並びにg線、h線及びi線のうちの二種以上の組み合わせからなる群から選択される。紫外線の光源はこれらに限定されず、光硬化性樹脂組成物を硬化させうる紫外線を照射できる光源であればよい。
【0123】
また、ドライフィルム法では、支持体(基材2)付きドライフィルムにおけるドライフィルム1を別の基材2又はコア材21に重ねてから、支持体を剥離することなく、支持体を通して紫外線をドライフィルム1からなる皮膜に照射することで皮膜を露光し、続いて現像処理前にドライフィルム1から支持体を剥離してもよい。この場合、露光時の酸素阻害をより防ぐことができ、硬化性が向上する。
【0124】
皮膜に現像処理を施すことで、皮膜の露光されていない部分を除去してもよい。現像処理では、光硬化性樹脂組成物の組成に応じた適宜の現像液を使用できる。現像液は、例えばアルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液、又は有機アミンを含有する溶液である。アルカリ性水溶液は、より具体的には例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。アルカリ性水溶液中の溶媒は、水のみであっても、水と低級アルコール類等の親水性有機溶媒との混合物であってもよい。有機アミンは、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びトリイソプロパノールアミンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。
【0125】
現像液は、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液であることが好ましく、炭酸ナトリウム水溶液であることが特に好ましい。この場合、作業環境の向上及び廃棄物処理の負担軽減を達成できる。
【0126】
また、現像処理後の皮膜には、更にUV照射と加熱処理とのうちの一方又は両方を行ってもよい。
【0127】
これにより、基材2上に、光硬化性樹脂組成物の硬化物11を備える第2の積層体20が得られる。上記で説明したように、コア材21上に、光硬化性樹脂組成物の硬化物11を備える積層体20を作製してもよい。
【0128】
このように、第1の積層体10におけるドライフィルム1を部分的に露光してから、アルカリ現像液によって現像してパターン形成を行うことで、基材2に重なり、パターンを有する硬化物11(透明硬化膜ともいう)が作製可能である。
【0129】
硬化物11の厚みは、10μm以下であることが好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物から作製した皮膜を薄膜化しても、硬化物の高い解像性を実現することができる。硬化物の厚みは、8μm以下であればより好ましく、6μm以下であればより好ましく、4μm以下であればより好ましく、2μm以下であればより好ましい。硬化物の厚みの下限は特に限定されないが、例えば0.1μm以上である。また、硬化物の厚みが10μm以下であると、例えば保護層としても好適に用いることができる。なお、本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、10μmの厚み寸法を有する硬化物を作製した場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における硬化物の光透過率が、85%以上であるので、10μmの厚み寸法より更に薄い寸法の硬化物は、当然に、前記範囲における光透過率が85%以上である。
【0130】
本実施形態の光硬化性樹脂組成物では、この乾燥物であるドライフィルムから、あるいは光硬化性樹脂組成物の塗膜から、めっきレジスト層、ソルダーレジスト層、及び層間絶縁層等の電気絶縁性層を特に良好に形成することができる。
【実施例0131】
以下、本開示の具体的な実施例を提示する。ただし、本開示は実施例のみに制限されない。
【0132】
(1)カルボキシル基含有樹脂の合成
(1-1)合成例1(カルボキシル基含有樹脂A1)
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(式(2)で示され、式(2)中のR1~R8がすべて水素であるエポキシ当量252g/eqのエポキシ化合物)252質量部、アクリル酸72質量部、トリフェニルフォスフィン1.5質量部、4-メトキシフェノール0.2質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200質量部を加えた。これらをエアバブリング下で攪拌することで混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で、エアバブリング下で攪拌しながら、加熱温度115℃、加熱時間12時間の条件で加熱した。これにより、中間体の溶液を調製した。
【0133】
続いて、フラスコ内の中間体の溶液に3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物73.55質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート15質量部を投入した。これらをエアバブリング下で攪拌しながら加熱温度115℃、加熱時間6時間の条件で加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂A1の65質量%溶液を得た。カルボキシル基含有樹脂A1の多分散度(Mw/Mn)は2.04、数平均分子量(Mn)は、1682、及び酸価は、69mgKOH/gであった。
【0134】
(1-2)合成例2(カルボキシル基含有樹脂A2)
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(式(2)で示され、式(2)中のR1~R8がすべて水素であるエポキシ当量252g/eqのエポキシ化合物)252質量部、アクリル酸72質量部、トリフェニルフォスフィン1.5質量、4-メトキシフェノール0.2質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200質量部を加えた。これらをエアバブリング下で攪拌することで混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で、エアバブリング下で攪拌しながら、加熱温度115℃、加熱時間12時間の条件で加熱した。これにより、中間体の溶液を調製した。
【0135】
続いて、フラスコ内の中間体の溶液に1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸60.8質量部、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物58.8質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を投入した。これらをエアバブリング下で攪拌しながら加熱温度115℃、加熱時間6時間の条件で加熱し、更にエアバブリング下で攪拌しながら、加熱温度60℃、加熱時間6時間の条件で加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂A2の65質量%溶液を得た。カルボキシル基含有樹脂A2の多分散度(Mw/Mn)は1.89、数平均分子量(Mn)は、1552、及び酸価は、104mgKOH/gであった。
【0136】
(1-3)合成例3(カルボキシル基含有樹脂B)
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、メタクリル酸80質量部、メチルメタクリレート95質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル酸80質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル430質量部、及びアゾビスイソブチロニトリル3.5質量部を加え、混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で、窒素雰囲気下で攪拌しながら、加熱温度75℃、加熱時間5時間の条件で加熱することで重合反応を進行させた。これにより、32質量%の共重合体溶液を得た。
【0137】
続いて、フラスコ内の共重合体溶液にハイドロキノン0.1質量部、グリシジルメタクリレート64質量部、及びジメチルベンジルアミン0.8質量部を投入した。これらを攪拌しながら加熱温度80℃、加熱時間24時間の条件で加熱することで付加反応を進行させた。これにより、カルボキシル基含有樹脂Bの38質量%溶液を得た。カルボキシル基含有樹脂Bの多分散度(Mw/Mn)は2.13、数平均分子量(Mn)は、10530、及び酸価は、104mgKOH/gであった。
【0138】
(2)樹脂組成物の調製
[各実施例及び比較例]
後掲の表に示す成分をフラスコ内に加え、温度35℃で撹拌混合することで、樹脂組成物を得た。なお、表に示される成分の詳細は次のとおりである。
・光重合開始剤A:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.社製、品番Omnirad TPO H)。
・光重合開始剤B:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.社製、品番Omnirad 819)。
・光重合開始剤C:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(IGM Resins B.V.社製、品番Omnirad 907)。
・光重合開始剤D:2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン(IGM Resins B.V.社製、品番Omnirad 369)。
・光重合開始剤E:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(BASFジャパン株式会社製、品番Irgacure OXE02)。
・光重合開始剤F:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(IGM Resins B.V.社製、品番Omnirad 184)。
・光重合開始剤G:2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬株式会社製、品番カヤキュアDETX-S)。
・重合性化合物A:トリメチロールプロパントリアクリレート。
・重合性化合物B:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート。
・重合性化合物C:ジペンタエリストールペンタ及びヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、品番KAYARAD DPHA)。
・酸化防止剤:Pentaerythritol tetrakis(3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate)(BASFジャパン株式会社製、品番Irganox 1010)。
・表面改質剤:界面活性剤(DIC株式会社製、品番メガファックF-557)
・エポキシ化合物A:ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、品名YX-4000、融点105℃、エポキシ当量187g/eq.)。
・エポキシ化合物B:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、品番YD-128、エポキシ当量187g/eq。
・溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル。なお、溶剤は、樹脂組成物における成分の固形分量が30質量%となるように調整して配合している。
【0139】
(3)テストピースの作製
上記(2)で調製した樹脂組成物から、テストピースを次のようにして作製した。
【0140】
まず、厚み17.5μmの銅箔を備えるガラスエポキシ銅張積層板(FR-4タイプ)を用意した。この基板上に、各実施例及び比較例の組成物を、アプリケーターで塗布することにより、湿潤塗膜を形成した。この塗膜に、110℃で5分間の条件で、熱乾燥を行い、銅箔上に厚み2μmの皮膜を形成した。
【0141】
なお、皮膜の厚みについて検証するため、「比較参考例」として、比較例1~3と同じ組成で樹脂組成物をそれぞれ調製し、上記と同様の条件で、銅箔上に厚み15μmの皮膜を形成したものをそれぞれ用意した(比較参考例1-3)。
【0142】
皮膜にライン幅12μm、14μm、16μm、及び18μmのラインを含むパターンを有し、かつ非露光部有するネガマスクを直接当てた状態で、皮膜に超高圧水銀ランプにより、200mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。露光後の皮膜に現像処理を施した。
【0143】
現像処理にあたっては、皮膜に30℃の1質量%Na2CO3水溶液を0.05MPaの噴射圧で60秒間噴射した。続いて、皮膜に純水を0.05MPaの噴射圧で60秒間噴射した。これにより、皮膜における露光されていない部分を除去して、皮膜にライン抜けのパターンを形成した。これにより、各実施例、比較例、及び比較参考例のテストピース(硬化物)を得た。
【0144】
(4)評価
(4-1)透過率(透過率曲線 450nm~800nm)
ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethyleneterephthalate)製のフィルム上に、上記(2)で調製した光硬化性樹脂組成物を、アプリケーターで塗布することにより、湿潤塗膜を形成した。この塗膜に、110℃で5分間の条件で、加熱乾燥を行い、PET製のフィルム上に厚み10μmの皮膜(乾燥皮膜)を作製した。続いて、乾燥皮膜の全面に、メタルハライドランプにより、200mJ/cm2の条件で紫外線を照射し、続いて露光後の皮膜に現像処理を施した。
【0145】
現像処理にあたっては、皮膜に30℃の1質量%Na2CO3水溶液を0.05MPaの噴射圧で60秒間噴射した。続いて、皮膜に純水を0.05MPaの噴射圧で60秒間噴射した。
【0146】
これにより、PET製のフィルム上に光硬化性樹脂組成物の硬化物を作製した。硬化物を、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製の品番UV-3100PC)にセットして、硬化物の450~800nmの透過率を測定し、透過率曲線を得た。リファレンスには、基材であるPET製のフィルムを使用した。得られた透過率曲線に基づき、透過率を以下の基準で評価し、その結果を表1~2に示した。
○:450nm~800nmの波長域において、透過率がすべて85%以上であった。
×:450nm~800nmの波長域において、透過率が85%未満となる波長域があった。
【0147】
(4-2)低タック性
上記(4-1)と同様に、PET製のフィルム上に皮膜(加熱乾燥後の乾燥皮膜)を作製し、乾燥皮膜に対し、指を押し当てることにより、ベタつきを評価した。
【0148】
さらに、上記(4-1)と同様に、PET製のフィルム上の皮膜を露光して硬化させることで、樹脂組成物の硬化物を作製した。樹脂組成物を硬化させるにあたり、露光後にネガマスクを剥離した後の硬化物を観察した。
【0149】
上記結果から、以下の基準で、低タック性を評価し、その結果を表1~2に示した。
A:加熱乾燥後の皮膜に指を押し付けても、ベタつきが感じられず、また露光後の硬化物には、ネガマスクの貼り跡は見られない。
B:加熱乾燥後の皮膜に指を押し付けると、ベタつきが感じられるが、露光後の硬化物には、ネガマスクの貼り跡は見られない。
C:加熱乾燥後の皮膜に指を押し付けると、ベタつきが感じられ、また露光後の硬化物には、ネガマスクの貼り跡が見られる。
D:加熱乾燥後の皮膜に指を押し付けると、大きなベタつきが感じられ、さらに露光後にネガマスクを剥離するとネガマスクへの硬化物の転着が見られた。
【0150】
(4-3)現像性
上記(3)のテストピースの作製において、現像処理後のテストピースを観察し、以下の基準で評価し、その結果を表1~2に示した。
A:1質量%Na2CO3水溶液、30℃、0.05MPa、30秒の現像条件で現像残渣が見られない。
B:1質量%Na2CO3水溶液、30℃、0.05MPa、30秒の現像条件で現像残渣が見られるが、1質量%Na2CO3水溶液、30℃、0.05MPa、60秒の現像条件で現像残渣が見られない。
C:1質量%Na2CO3水溶液、30℃、0.05MPa、60秒の現像条件で現像残渣が見られるが、1質量%Na2CO3水溶液、30℃、0.05MPa、90秒の現像条件で現像残渣が見られない。
D:1質量%Na2CO3水溶液、30℃、0.05MPa、90秒の現像条件で現像残渣が見られる。
【0151】
(4-4)感度(硬化性)
上記(3)におけるテストピースの作製において、フォトツール『ストファーステップタブレット21段(Stouffer step tablet 21 steps)』を乾燥皮膜にあてがい、かつ前記フォトツールと乾燥皮膜とを減圧条件で密着させた。密着させた積層物に対し、オーク製作所製の減圧密着型両面露光機(型番 ORC HMW680GW)により、照射エネルギー密度200mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。続いて、濃度1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を現像液として用い、紫外線照射後の硬化膜を現像した。現像後の硬化膜における残存したステップの段数(残存ステップ段)を求め、その数値を表1~2に示した。
【0152】
(4-5)解像性
上記(3)で作製したテストピースを観察し、以下の基準で評価し、その結果を表1~2に示した。
A:ライン幅12μmのスペースが解像できている。
B:ライン幅12μmのスペースは解像できていないが、ライン幅14μmのスペースが解像できている。
C:ライン幅14μmのスペースは解像できていないが、ライン幅16μmのスペースが解像できている。
D:ライン幅16μmのスペースは解像できていないが、ライン幅18μmのスペースが解像できている。
E:ライン幅18μmのスペースが解像できていない。
【0153】
(4-6)保存安定性
上記「(3)テストピースの作製」において、110℃で5分間の条件で、加熱乾燥を行い、銅箔上に厚み2μmの皮膜を作製した後、25℃で1日間、7日間、及び30日間保管をした後、「(3)テストピースの作製」に記載の条件で露光及び現像を行い、保存安定性を評価するためのテストピースを作製した。テストピースの外観の状態を確認し、保存安定性について以下の基準で評価した。
A:30日間保管したテストピースにおいても、解像性の低下がなく、問題なく現像できている。
B:30日間保管したテストピースにおいては、解像性の低下が見られるが、7日間保管したテストピースにおいては、解像性の低下なく、問題なく現像できている。
C:7日間保管したテストピースにおいては、解像性の低下が見られるが、1日間保管したテストピースにおいては、解像性の低下なく、問題なく現像できている。
D:1日間保管したテストピースにおいて、解像性の低下が見られる。
【0154】
(4-7)密着性
JIS D0202に準拠して、各実施例、比較例、及び比較参考例のテストピースに対し、碁盤目状にクロスカット(10本×10本:1mm間隔)を入れ、これにセロハン粘着テープを貼り付けてピーリングテストを行った。ピーリングテスト後の、テストピースにおける剥がれの状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:碁盤目状のクロスカットにおいて100個のクロスカット部分のうちの全てに全く変化が見られない。
B:碁盤目状のクロスカットにおいて100個のクロスカット部分のうち一箇所に僅かに浮きを生じた。
C:碁盤目状のクロスカットにおいて100個中のクロスカット部分のうち2~10箇所に剥がれを生じた。
D:碁盤目状のクロスカットにおいて100個のクロスカット部分のうち11箇所以上に剥がれを生じた。
【0155】
(4-8)耐酸性
各実施例、比較例、及び比較参考例のテストピースを、20℃の条件下、10容量%の塩酸水溶液中に1時間浸漬した後、硬化物の外観を目視により観察し、硬化物の状態、及び基板と硬化膜との密着性について、総合的に判断し、以下の基準で評価した。
A:硬化膜に膨れ、及び膨潤脱落等の変化が何ら認められなかった。
B:硬化膜の一部が僅かに変化し、膨れ、膨潤脱落等の変化が僅かに認められた。
C:硬化膜の中程度の部分に膨れ、膨潤脱落等の変化が認められた。
D:硬化膜の多くの部分に膨れ、膨潤脱落等の変化が認められた。
【0156】
(4-9)耐アルカリ性
各実施例、比較例、及び比較参考例のテストピースを、20℃の条件下、10容量%の水酸化ナトリウム水溶液中に1時間浸漬した後、硬化物の外観を目視により観察し、硬化膜の状態、及び基板と硬化膜との密着性について、総合的に判断し、以下の基準で評価した。
A:硬化膜に膨れ、及び膨潤脱落等の変化が何ら認められなかった。
B:硬化膜の一部が僅かに変化し、膨れ、膨潤脱落等の変化が僅かに認められた。
C:硬化膜の中程度の部分に膨れ、膨潤脱落等の変化が認められた。
D:硬化膜の多くの部分に膨れ、膨潤脱落等の変化が認められた。
【0157】
(4-10)耐溶剤性
各実施例、比較例、及び比較参考例のテストピースを、20℃の条件下、イソプロピルアルコール中に1時間浸漬した後、硬化物の外観を目視により観察し、硬化物の状態、及び基板と硬化膜との密着性について、総合的に判断し、以下の基準で評価した。
A:硬化膜に膨れ、及び膨潤脱落等の変化が何ら認められなかった。
B:硬化膜の一部が僅かに変化し、膨れ、膨潤脱落等の変化が僅かに認められた。
C:硬化膜の中程度の部分に膨れ、膨潤脱落等の変化が認められた。
D:硬化膜の多くの部分に膨れ、膨潤脱落等の変化が認められた。
【0158】
(4-11)耐煮沸性
各実施例、比較例、及び比較参考例のテストピースを、100℃に加熱した水(煮沸水)に2時間浸漬した後、取り出し、硬化物の外観を目視により観察し、硬化物の状態、及び基板と硬化膜との密着性について、総合的に判断し、以下の基準で評価した。
A:硬化膜に膨れ、及び膨潤脱落等の変化が何ら認められなかった。
B:硬化膜の一部が僅かに変化し、膨れ、膨潤脱落等の変化が僅かに認められた。
C:硬化膜の中程度の部分に膨れ、膨潤脱落等の変化が認められた。
D:硬化膜の多くの部分に膨れ、膨潤脱落等の変化が認められた。
【0159】
【表1】
【0160】
【表2】
【0161】
3.まとめ
以上の実施形態及び実施例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。
【0162】
第1の態様の光硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)、光重合開始剤(B)、及び重合性化合物(C)を含有する。カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対する光重合開始剤(B)の含有量は、25質量部以上である。光硬化性樹脂組成物から、10μmの厚み寸法を有する硬化物を作製した場合の、波長450nm以上800nm以下の範囲における硬化物の光透過率が、85%以上である。
【0163】
この態様によれば、薄膜を作製しても光硬化性樹脂組成物が高い硬化性を有し、かつその硬化物が高い透明性を有する。
【0164】
第2の態様の光硬化性樹脂組成物は、第1の態様において、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する光重合開始剤(B)の割合は、20質量%以上である。
【0165】
この態様によれば、薄膜を作製しても、光硬化性樹脂組成物がより高い硬化性を有しうる。
【0166】
第3の態様の光硬化性樹脂組成物は、第1又は第2の態様において、カルボキシル基含有樹脂(A)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有する。
【0167】
この態様によれば、薄膜を作製しても光硬化性樹脂組成物がより高い硬化性を有し、更に硬化物により優れた解像性を付与しうる。
【0168】
第4の態様の光硬化性樹脂組成物は、第1から第3のいずれか1つの態様において、重合性化合物(C)は、二官能性不飽和化合物と三官能性不飽和化合物とのうち少なくとも一方を含有する。
【0169】
この態様によれば、硬化物に、より優れた解像性を付与しうる。
【0170】
第5の態様の光硬化性樹脂組成物は、第1から第4のいずれか1つの態様において、着色剤を含有しない。
【0171】
この態様によれば、薄膜を作製しても、光硬化性樹脂組成物の硬化物がより高い透明性を有しうる。
【0172】
第6の態様の光硬化性樹脂組成物は、第1から第5のいずれか1つの態様において、エポキシ化合物(D)を含有しないか、又はエポキシ化合物(D)を更に含有し、かつ光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対するエポキシ化合物(D)の質量割合が5%未満である。
【0173】
この態様によれば、光硬化性樹脂組成物の保存安定性を高めやすい。
【0174】
第7の態様の光硬化性樹脂組成物は、第1から第6のいずれか1つの態様において、無機フィラー(E)を含有しないか、又は無機フィラー(E)を更に含有し、かつ前記光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する無機フィラー(E)の質量割合が5%以下である。
【0175】
この態様によれば、薄膜を作製しても、光硬化性樹脂組成物の硬化物がより高い透明性を有しうる。
【0176】
第8の態様のドライフィルムは、第1から第7のいずれか1つの態様の光硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物を含む。
【0177】
この態様によれば、薄膜を作製しても、光硬化性樹脂組成物の硬化物が高い透明性を有しうる。
【0178】
第9の態様のドライフィルムは、第8の態様において、膜厚が10μm以下である。
【0179】
この態様によれば、薄膜を作製しても、光硬化性樹脂組成物の硬化物が高い透明性を有しうる。
【0180】
第10の態様の硬化物は、第1から第8のいずれか1つの態様の光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。
【0181】
この態様によれば、硬化物が高い透明性を有する。
【0182】
第11の態様の硬化物は、第10の態様において、膜厚が10μm以下である。
【0183】
この態様によれば、硬化物が高い透明性を有し、光学用途に好適である。
【符号の説明】
【0184】
1 ドライフィルム
2 基材
10 第1の積層体
11 硬化物
20 第2の積層体
図1
図2