(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055408
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】車載用のバックアップ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240411BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H02J7/34 J
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162326
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】樋口 豊
(72)【発明者】
【氏名】三尾 巧美
(72)【発明者】
【氏名】小松原 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】大参 直輝
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503BA02
5G503BB02
5G503BB03
5G503CA11
5G503CA20
5G503CB11
5G503DA07
5G503EA08
5G503GB03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】蓄電部の一定程度の劣化が見込まれる状況において何らかの対応をとることを実現しやすくする。
【解決手段】車載用のバックアップ制御装置2は、電源部90と蓄電部93とを備えた車載用の電源システム100に用いられる。車載用のバックアップ制御装置2は、蓄電部93を放電させる放電部(充放電部11)と、放電部を制御する制御部13と、を備える。制御部13は、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthを下回り、下回った経過時間が判定時間TJを超えた場合に、対応処理を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給対象に電力を供給する電源部と、前記電源部からの電力供給が異常状態である場合に前記電力供給対象に電力を供給する蓄電部と、を備えた車載用の電源システムに用いられる車載用のバックアップ制御装置であって、
前記蓄電部を放電させる放電部と、
前記放電部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記蓄電部の電圧が閾値電圧を下回り、下回った経過時間が判定時間を超えた場合に、対応処理を行う
車載用のバックアップ制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記蓄電部の温度に基づいて前記閾値電圧を設定する
請求項1に記載の車載用のバックアップ制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記経過時間が前記判定時間を超えることなく前記蓄電部の電圧が前記閾値電圧よりも大きくなった後、再び前記閾値電圧を下回り、前記蓄電部の電圧が前記閾値電圧を下回った累積時間が前記判定時間を超えた場合に前記対応処理を行う
請求項1又は請求項2に記載の車載用のバックアップ制御装置。
【請求項4】
前記対応処理は、前記蓄電部の放電を停止させる処理である
請求項1又は請求項2に記載の車載用のバックアップ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載用のバックアップ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された瞬低対策装置は、交流電源の健全時は交流電源から負荷に交流電力を供給する。この装置は、交流電源の電圧または周波数が所定の範囲を逸脱した場合には、蓄電デバイスから電力変換装置を介して、負荷に交流電力を供給する。この装置は、蓄電デバイスの電圧が推奨下限電圧に基づいて決まる判定値に到達した時、電力変換装置から負荷への電力供給動作を停止する。推奨下限電圧に基づいて決まる判定値は、蓄電デバイスの推奨下限電圧から、蓄電デバイスからの放電電流と蓄電デバイスの内部抵抗値とから推定される電圧降下量を減算した電圧値とされる。この構成によれば、蓄電デバイスの電圧が、推奨下限電圧に到達しても、内部抵抗値を加味した判定値に到達していなければ、電力供給動作を継続できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蓄電部(蓄電デバイス)には、蓄電部の電圧が閾値電圧を下回ると、化学反応が始まって劣化するものがある。このような蓄電部は、電圧が上述した判定値に到達しない場合であっても、当該電圧が閾値電圧を下回ることで劣化し始めるおそれがある。蓄電部が一定程度劣化した場合には、何らかの対応をとることが望ましい。
【0005】
本開示は、蓄電部の一定程度の劣化が見込まれる状況において何らかの対応をとることを実現しやすい技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車載用のバックアップ制御装置は、
電力供給対象に電力を供給する電源部と、前記電源部からの電力供給が異常状態である場合に前記電力供給対象に電力を供給する蓄電部と、を備えた車載用の電源システムに用いられる車載用のバックアップ制御装置であって、
前記蓄電部を放電させる放電部と、
前記放電部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記蓄電部の電圧が閾値電圧を下回り、下回った経過時間が判定時間を超えた場合に、対応処理を行う。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る技術は、蓄電部の一定程度の劣化が見込まれる状況において何らかの対応をとることを実現しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の車載用のバックアップ装置を備える車載用の電源システムを概略的に例示するブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の車載用のバックアップ装置で行われる制御の流れを例示するフローチャートである。
【
図3】
図3は、第1実施形態における、対応処理が行われない場合の蓄電部の電圧の経時変化を例示するタイミングチャートである。
【
図4】
図4は、第1実施形態における、対応処理が行われる場合の蓄電部の電圧の経時変化を例示するタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、第2実施形態における、対応処理が行われる場合の蓄電部の電圧の経時変化を例示するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。
【0010】
〔1〕電力供給対象に電力を供給する電源部と、前記電源部からの電力供給が異常状態である場合に前記電力供給対象に電力を供給する蓄電部と、を備えた車載用の電源システムに用いられる車載用のバックアップ制御装置であって、
前記蓄電部を放電させる放電部と、
前記放電部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記蓄電部の電圧が閾値電圧を下回り、下回った経過時間が判定時間を超えた場合に、対応処理を行う
車載用のバックアップ制御装置。
【0011】
閾値電圧として蓄電部の化学反応が始まる開始電圧が設定され、蓄電部の電圧が当該閾値電圧を下回り、下回った経過時間が判定時間を超えた場合には、蓄電部の一定程度の劣化が見込まれる。このため、上記車載用のバックアップ制御装置は、閾値電圧として開始電圧が設定された状態で経過時間が判定時間を超えた場合に対応処理を行うことで、蓄電部の一定程度の劣化が見込まれる状況において対応処理を行うことができる。つまり、上記車載用のバックアップ制御装置は、閾値電圧として開始電圧が設定されるだけで、蓄電部の一定程度の劣化が見込まれる状況において対応処理を行うことができる。したがって、上記車載用のバックアップ制御装置は、蓄電部の一定程度の劣化が見込まれる状況において何らかの対応をとることを実現しやすい。
【0012】
〔2〕前記制御部は、前記蓄電部の温度に基づいて前記閾値電圧を設定する
〔1〕に記載の車載用のバックアップ制御装置。
【0013】
上記車載用のバックアップ制御装置は、蓄電部の温度を反映して閾値電圧を設定することができる。
【0014】
〔3〕前記制御部は、前記経過時間が前記判定時間を超えることなく前記蓄電部の電圧が前記閾値電圧よりも大きくなった後、再び前記閾値電圧を下回り、前記蓄電部の電圧が前記閾値電圧を下回った累積時間が前記判定時間を超えた場合に前記対応処理を行う
〔1〕又は〔2〕に記載の車載用のバックアップ制御装置。
【0015】
経過時間が判定時間を超える前に、蓄電部の放電が中止され、蓄電部の電圧が上記開始電圧に設定された閾値電圧よりも大きい状態に復帰することもある。その後、蓄電部の電圧が閾値電圧を再度下回った場合に、以前の劣化が残っていると、再度下回ってからの経過時間が判定時間を超える前に蓄電部が一定程度劣化した状態になり得る。そこで、上記車載用のバックアップ制御装置は、累積時間が判定時間を超えた場合に対応処理を行うようにしている。このため、上記車載用のバックアップ制御装置は、閾値電圧として上記開始電圧が設定された場合に、蓄電部の電圧が閾値電圧を複数回下回ることによって蓄積した劣化が一定程度見込まれる状況において対応処理を行うことができる。
【0016】
〔4〕前記対応処理は、前記蓄電部の放電を停止させる処理である
〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の車載用のバックアップ制御装置。
【0017】
<第1実施形態>
1.車載用のバックアップ装置1の基本構成
図1には、第1実施形態の車載用のバックアップ装置1を備える車載用の電源システム100が示されている。車載用の電源システム100は、電源部90と、負荷91と、電力路92と、を備える。車載用の電源システム100は、電力路92を介して、電源部90に基づく電力を負荷91に供給する。
【0018】
電源部90は、電力路92を介して、負荷91に電力を供給する。電源部90は、例えば公知のバッテリである。バッテリは、鉛バッテリであってもよいし、リチウムイオンバッテリであってもよいし、その他のバッテリであってもよい。電源部90の高電位側の端子は、電力路92に電気的に接続される。電源部90は、電力路92に対して所定の出力電圧を印加する。電源部90の低電位側の端子は、例えばグラウンドに電気的に接続され、例えばグラウンド電位とされる。
【0019】
負荷91は、「電力供給対象」の一例に相当する。負荷91は、例えば公知の電気部品である。負荷91の一端は、電力路92に電気的に接続される。負荷91の他端は、例えばグラウンドに電気的に接続され、例えばグラウンド電位とされる。
【0020】
電力路92は、電源部90と負荷91との間に設けられる。電力路92は、電源部90に基づく電力を負荷91側に供給する経路の少なくとも一部として機能する。
【0021】
車載用のバックアップ装置1は、蓄電部93と、車載用のバックアップ制御装置2と、を備える。
【0022】
蓄電部93は、電源部90からの電力供給が異常状態である場合に、負荷91に電力を供給する。「電源部90からの電力供給が異常状態」とは、例えば「電源部90からの電力供給が途絶えた状態」、「電源部90からの電力供給が不足した状態」などである。「電源部90からの電力供給が異常状態」は、具体的には、「電力路92の電圧値が異常状態」「電力路92の電流の値が異常状態」などである。「電力路92の電圧値が異常状態」は、例えば、「電力路92の電圧値が低電圧状態」である。「電力路92の電圧値が低電圧状態」は、例えば、「電力路92の電圧値が低電圧閾値を下回った状態」である。「電力路92の電流の値が異常状態」は、例えば、「電力路92の電流の値が過電流状態」である。「電力路92の電流の値が過電流状態」は、例えば、「電力路92の電流の値が過電流閾値を上回った状態」である。
【0023】
蓄電部93は、蓄電部93の電圧がある電圧を下回った場合に化学反応が始まって劣化するものである。化学反応が始まる開始電圧は、0Vよりも大きく、蓄電部93の満充電時の充電電圧よりも小さい。蓄電部93は、例えば公知の蓄電装置によって構成される。蓄電装置は、例えば鉛バッテリであってもよいし、リチウムイオンバッテリであってもよいし、電気二重層キャパシタ(EDLC)であってもよいし、その他の蓄電手段であってもよい。蓄電部93の高電位側の端子は、第1導電路94に電気的に接続される。蓄電部93は、第1導電路94に対して所定の出力電圧を印加する。蓄電部93は、第1導電路94を介して負荷91に電力を供給し得る。蓄電部93の低電位側の端子は、例えばグラウンドに電気的に接続され、例えばグラウンド電位とされる。
【0024】
車載用のバックアップ制御装置2は、車載用の電源システム100に用いられる。車載用のバックアップ制御装置2は、電源部90からの電力供給が異常状態である場合に蓄電部93から負荷91に電力を供給する。車載用のバックアップ制御装置2は、切替部10と、充放電部11と、温度検出部12と、制御部13と、を備える。
【0025】
切替部10は、電力路92に設けられる。切替部10は、電源部90側から負荷91側への電流の流れを許容する許容状態と、電源部90側から負荷91側への電流の流れを遮断する遮断状態とに切り替わる。切替部10は、例えばスイッチを含んで構成される。スイッチは、機械式のスイッチであってもよいし、半導体スイッチであってもよい。
【0026】
充放電部11は、放電部の一例に相当する。充放電部11は、充放電回路として構成される。充放電部11は、蓄電部93を充電する。充放電部11は、電源部90と、蓄電部93との間に設けられる。充放電部11は、電源部90に基づく電力を蓄電部93に供給する充電動作を行う。充放電部11は、蓄電部93を放電させる。充放電部11は、蓄電部93と負荷91との間に設けられる。充放電部11は、蓄電部93に基づく電力を負荷91側に供給する放電動作を行う。
【0027】
充放電部11は、例えばスイッチを含んで構成される。スイッチは、機械式のスイッチであってもよいし、半導体スイッチであってもよい。充放電部11は、スイッチのみで構成されてもよいし、スイッチ以外の素子を含む構成であってもよい。例えば、充放電部11は、入力された電圧を変換(具体的には、昇圧又は降圧)して出力する電圧変換部であってもよい。電圧変換部は、例えばDCDCコンバータとして構成される。
【0028】
充放電部11の一端は、第1導電路94に電気的に接続される。充放電部11は、第2導電路95を介して電力路92に電気的に接続される。第2導電路95は、電力路92のうち切替部10よりも負荷91側に接続される。充放電部11が充電動作を行うとき、切替部10は許容状態に制御される。充放電部11が充電動作を行うとき、電源部90に基づく電力が、電力路92、第2導電路95、及び第1導電路94を介して、蓄電部93に供給される。充放電部11が放電動作を行うとき、蓄電部93に基づく電力が、第1導電路94、第2導電路95、及び電力路92を介して負荷91に供給される。
【0029】
温度検出部12は、蓄電部93の温度を検出する。温度検出部12は、PTCサーミスタによって構成されてもよいし、NTCサーミスタによって構成されてもよいし、その他の温度検出素子によって構成されてもよい。温度検出部12は、蓄電部93を構成する蓄電装置に取り付けられる。温度検出部12は、検出値を特定可能な信号を出力する。
【0030】
制御部13は、例えばMCU(Micro Controller Unit)を含んで構成される。制御部13は、蓄電部93の出力電圧を取得する。取得方法は、特に限定されず、公知の方法を採用し得る。制御部13は、温度検出部12が出力した信号に基づいて、蓄電部93の温度を取得する。
【0031】
制御部13は、切替部10を制御する。制御部13は、許容条件が成立した場合に、切替部10を許容状態に切り替える。許容条件は、例えば、車両の始動スイッチ(例えばイグニッションスイッチ、パワースイッチなど)がオン状態に切り替わったことであってもよいし、ユーザの所定操作が行われたことであってもよいし、その他の条件であってもよい。制御部13は、例えば始動スイッチのオンオフ状態を示すオンオフ信号を取得し、このオンオフ信号に基づいて始動スイッチのオンオフ状態を特定する。切替部10が許容状態に切り替わると、電源部90に基づく電力が負荷91に供給される。
【0032】
制御部13は、遮断条件が成立した場合に、切替部10を遮断状態に切り替える。遮断条件は、例えば、始動スイッチがオフ状態に切り替わったことであってもよいし、ユーザの所定操作が行われたことであってもよいし、電源部90からの電力供給が異常状態になったことであってもよいし、その他の条件であってもよい。切替部10が遮断状態に切り替わると、電源部90から負荷91への電力供給が遮断される。
【0033】
制御部13は、充放電部11を制御する。制御部13は、充電条件が成立した場合に、切替部10を許容状態に制御し且つ充放電部11に充電動作を行わせる。これにより、充放電部11は、蓄電部93を充電する。充電条件は、充放電部11の放電動作が終了したことであってもよいし、蓄電部93の出力電圧が充電下限電圧を下回ったことであってもよいし、その他の条件であってもよい。
【0034】
制御部13は、放電条件が成立した場合に、充放電部11に放電動作を行わせる。これにより、充放電部11が蓄電部93を放電させ、蓄電部93に基づく電力が負荷91に供給される。放電条件は、電源部90からの電力供給が異常状態になったことであってもよいし、その他の条件であってもよい。
【0035】
制御部13は、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthを下回り、下回った経過時間が判定時間TJを超えた場合に、対応処理を行う。対応処理は、本実施形態では、蓄電部93の放電を停止させることとするが、その他の処理であってもよい。閾値電圧Vthは、本実施形態では、蓄電部93の化学反応が始まる開始電圧と同じ電圧に設定される。開始電圧と同じ電圧とは、開始電圧と厳密に同じである必要は無く、開始電圧と実質的に同じであればよい。開始電圧と実質的に同じとは、開始電圧に対する誤差が10%の範囲内のことをいう。なお、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthを下回ってないにも関わらず、蓄電部93の劣化が進行するという事態を回避する観点から、閾値電圧Vthは、開始電圧以上であることが好ましい。判定時間TJは、蓄電部93の電圧が開始電圧を下回った状態で蓄電部93が一定程度劣化するまでに要する時間である。
【0036】
閾値電圧Vthは、本実施形態では変化し得る値であるが、固定値であってもよい。制御部13は、設定条件が成立した場合に、蓄電部93の温度に基づいて閾値電圧Vthを設定する。設定条件は、始動スイッチがオン状態に切り替わったことであってもよいし、蓄電部93の放電が開始されたことであってもよいし、その他の条件であってもよい。制御部13は、蓄電部93の温度と、開始電圧との対応関係を示す対応データを予め記憶している。対応データは、テーブルであってもよいし、関数であってもよい。対応データは、テーブルの場合、複数の温度と、各々の温度に対応する開始電圧と、を含む。制御部13は、対応データと、取得した蓄電部93の温度とに基づいて、閾値電圧Vthを設定する。より具体的には、制御部13は、対応データを参照し、取得した蓄電部93の温度に対応する開始電圧を閾値電圧Vthに設定する。
【0037】
2.車載用のバックアップ装置1の動作例
制御部13は、例えば始動スイッチがオン状態に切り替わった場合に、
図2に示す処理を行う。制御部13は、ステップS101にて、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthを下回ったか否かを判定する。制御部13は、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthを下回っていないと判定した場合(ステップS101にてNoの場合)、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthを下回るまで、ステップS101の処理を繰り返す。制御部13は、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthを下回ったと判定した場合(ステップS101にてYesの場合)、ステップS102にて、経過時間の計測を開始する。
【0038】
制御部13は、ステップS103にて、経過時間が判定時間TJを超えたか否かを判定する。制御部13は、経過時間が判定時間TJを超えていないと判定した場合(ステップS103にてNoの場合)、ステップS104にて、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthを上回ったか否かを判定する。制御部13は、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthを上回っていないと判定した場合(ステップS104にてNoの場合)、ステップS103に移る。つまり、制御部13は、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthを下回った状態において、経過時間が判定時間TJを超えたか否かの判定を繰り返す。
【0039】
制御部13は、経過時間が判定時間TJを超えたと判定した場合(ステップS103にてYesの場合)、ステップS105にて、上述した対応処理を行う。その後、制御部13は、
図2に示す処理を終了する。
【0040】
制御部13は、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthを上回ったと判定した場合(ステップS104にてYesの場合)、
図2に示す処理を終了して、直ぐに
図2に示す処理を再開する。
【0041】
図3には、対応処理が行われない場合のタイミングチャートが示されている。タイミングt0では、蓄電部93が放電停止中であり、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthよりも大きい。タイミングt1にて蓄電部93が放電中に切り替わると、蓄電部93の内部抵抗に起因して蓄電部93の電圧が急落する。しかし、急落後も、未だ蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthよりも大きい。その後、タイミングt2にて、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthを下回ると、経過時間の計測が開始される。その後、タイミングt3にて、蓄電部93が放電停止中に切り替わると、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthよりも大きい値に復帰する。この場合、経過時間TAが判定時間TJを超える前に蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthよりも大きい値に復帰するため、対応処理が行われない。
【0042】
図4には、対応処理が行われる場合のタイミングチャートが示されている。タイミングt10では、蓄電部93が放電停止中であり、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthよりも大きい。タイミングt11にて蓄電部93が放電中に切り替わると、蓄電部93の内部抵抗に起因して蓄電部93の電圧が急落する。しかし、急落後も、未だ蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthよりも大きい。その後、タイミングt12にて、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthを下回ると、経過時間の計測が開始される。その後、タイミングt13にて、経過時間TBが判定時間TJを超えると対応処理が行われる。対応処理は、本実施形態では、蓄電部93の放電の停止であるため、蓄電部93の放電が停止される。その結果、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthよりも大きい値に復帰する。
【0043】
3.効果の例
閾値電圧として蓄電部93の化学反応が始まる開始電圧が設定され、蓄電部93の電圧が当該閾値電圧Vthを下回り、下回った経過時間が判定時間TJを超えた場合には、蓄電部93の一定程度の劣化が見込まれる。このため、車載用のバックアップ制御装置2は、閾値電圧Vthとして開始電圧が設定された状態で経過時間が判定時間TJを超えた場合に対応処理を行うことで、蓄電部93の一定程度の劣化が見込まれる状況において対応処理を行うことができる。つまり、車載用のバックアップ制御装置2は、閾値電圧Vthとして開始電圧が設定されるだけで、蓄電部93の一定程度の劣化が見込まれる状況において対応処理を行うことができる。したがって、車載用のバックアップ制御装置2は、蓄電部93の一定程度の劣化が見込まれる状況において何らかの対応をとることを実現しやすい。
【0044】
更に、本実施形態では、閾値電圧Vthが、蓄電部93の化学反応が始まる開始電圧と同じ電圧に設定されている。このため、車載用のバックアップ制御装置2は、蓄電部93の一定程度の劣化が見込まれる状況において対応処理を行うことができる。
【0045】
更に、車載用のバックアップ制御装置2は、蓄電部93の温度を反映して閾値電圧Vthを設定することができる。
【0046】
<第2実施形態>
第2実施形態では、蓄電部の電圧が閾値電圧を複数回下回った累積時間が判定時間を超えた場合に対応処理を行う構成について説明する。なお、第2実施形態の車載用の電源システムは、第1実施形態で説明した
図1に示す構成と同じである。このため、第2実施形態の説明では、
図1を参照して説明する。
【0047】
第2実施形態の制御部13は、経過時間が判定時間TJを超えることなく蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthよりも大きくなった後、再び閾値電圧Vthを下回り、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthを下回った累積時間が判定時間TJを超えた場合に対応処理を行う。
【0048】
制御部13は、経過時間が判定時間TJを超えることなく蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthよりも大きくなった場合、経過時間を記憶する。その後、制御部13は、蓄電部93の電圧が再び閾値電圧Vthを下回った場合に、今回の経過時間に対し前回記憶した経過時間を加算した累積時間を算出する。制御部13は、算出した累積時間が判定時間TJを超えた場合に対応処理を行う。
【0049】
制御部13は、当該累積時間が判定時間TJを超えることなく蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthよりも大きくなった場合、当該累積時間、又は今回の経過時間を記憶する。その後、制御部13は、蓄電部93の電圧が再び閾値電圧Vthを下回った場合に、今回の経過時間に対し前回記憶した累積時間、又は前回以前に記憶した各々の経過時間を加算した累積時間を算出する。制御部13は、算出した累積時間が判定時間TJを超えた場合に対応処理を行う。
【0050】
このように、制御部13は、蓄電部93の電圧が閾値電圧を下回った時間を累積し、累積時間が判定時間TJを超えた場合に対応処理を行う。
【0051】
図5には、対応処理が行われる場合のタイミングチャートが示されている。タイミングt20では、蓄電部93が放電停止中であり、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthよりも大きい。タイミングt21にて蓄電部93が放電中に切り替わると、蓄電部93の内部抵抗に起因して蓄電部93の電圧が急落する。しかし、急落後も、未だ蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthよりも大きい。その後、タイミングt22にて、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthを下回ると、経過時間の計測が開始される。その後、タイミングt23にて、蓄電部93が放電停止中に切り替わると、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthよりも大きい値に復帰する。このとき、経過時間TCが判定時間TJを超える前に蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthよりも大きい値に復帰するため、対応処理が行われない。
【0052】
その後、タイミングt24にて、蓄電部93の充電が開始され、タイミングt25にて、蓄電部93の充電が終了される。タイミングt26にて、蓄電部93が再び放電中に切り替わると、蓄電部93の内部抵抗に起因して蓄電部93の電圧が急落する。タイミングt27にて、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthを再び下回ると、経過時間の計測が開始される。制御部13は、今回の経過時間TDに対し前回記憶した経過時間を加算した累積時間を算出する。制御部13は、タイミングt28にて、累積時間(TC+TD)が判定時間TJを超えると対応処理が行われる。対応処理は、本実施形態では、蓄電部93の放電の停止であるため、蓄電部93の放電が停止される。その結果、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthよりも大きい値に復帰する。
【0053】
以下の説明は、第2実施形態の効果に関する。経過時間が判定時間TJを超える前に、蓄電部93の放電が中止され、蓄電部93の電圧が開始電圧に設定された閾値電圧Vthよりも大きい状態に復帰することもある。その後、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthを再度下回った場合に、以前の劣化が残っていると、再度下回ってからの経過時間が判定時間を超える前に蓄電部93が一定程度劣化した状態になり得る。そこで、第2実施形態の車載用のバックアップ制御装置2は、累積時間が判定時間TJを超えた場合に対応処理を行うようにしている。このため、第2実施形態の車載用のバックアップ制御装置2は、閾値電圧Vthとして開始電圧が設定された場合に、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthを複数回下回ることによって蓄積した劣化が一定程度見込まれる状況において対応処理を行うことができる。
【0054】
更に、本実施形態では、閾値電圧Vthが、蓄電部93の化学反応が始まる開始電圧と同じ電圧に設定されている。このため、第2実施形態の車載用のバックアップ制御装置2は、蓄電部93の電圧が閾値電圧Vthを複数回下回ることによって蓄積した劣化が一定程度見込まれる状況において対応処理を行うことができる。
【0055】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0056】
上記各実施形態では、放電部が、放電動作及び充電動作の両方を行うことが可能な充放電回路によって構成されていたが、放電動作のみを行うことが可能な放電回路によって構成されてもよい。
【0057】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1…バックアップ装置
2…バックアップ制御装置
10…切替部
11…充放電部(放電部)
12…温度検出部
13…制御部
90…電源部
91…負荷(電力供給対象)
92…電力路
93…蓄電部
94…第1導電路
95…第2導電路
100…電源システム
TA…経過時間
TB…経過時間
TC…経過時間
TD…経過時間
TJ…判定時間
Vth…閾値電圧
【手続補正書】
【提出日】2024-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給対象に電力を供給する電源部と、前記電源部からの電力供給が異常状態である場合に前記電力供給対象に電力を供給する蓄電部と、を備えた車載用の電源システムに用いられる車載用のバックアップ制御装置であって、
前記蓄電部を放電させる放電部と、
前記放電部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記蓄電部の電圧が閾値電圧を下回り、下回った経過時間が判定時間を超えた場合に、対応処理を行う
車載用のバックアップ制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記蓄電部の温度に基づいて前記閾値電圧を設定する
請求項1に記載の車載用のバックアップ制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記経過時間が前記判定時間を超えることなく前記蓄電部の電圧が前記閾値電圧よりも大きくなった後、再び前記閾値電圧を下回り、前記蓄電部の電圧が前記閾値電圧を下回った累積時間が前記判定時間を超えた場合に前記対応処理を行う
請求項1又は請求項2に記載の車載用のバックアップ制御装置。
【請求項4】
前記対応処理は、前記蓄電部の放電を停止させる処理である
請求項1又は請求項2に記載の車載用のバックアップ制御装置。
【請求項5】
前記車載用の電源システムは、前記電源部と前記電力供給対象との間に設けられる切替部を備え、
前記切替部は、前記電源部側から前記電力供給対象側への電流の流れを許容する許容状態と、前記電源部側から前記電力供給対象側への電流の流れを遮断する遮断状態とに切り替わり、
前記制御部は、前記電源部からの電力供給が異常状態になった場合に前記切替部を前記遮断状態に切り替えるとともに前記放電部に前記蓄電部を放電させ、前記切替部が前記遮断状態で且つ前記蓄電部の電圧が前記閾値電圧を下回り、下回った経過時間が前記判定時間を超えた場合に、前記対応処理を行う
請求項1又は請求項2に記載の車載用バックアップ制御装置。