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特開2024-55414試薬収納システム、自動分析システム、及び、抑制部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055414
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】試薬収納システム、自動分析システム、及び、抑制部材
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
G01N35/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162332
(22)【出願日】2022-10-07
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 晋
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058BB02
2G058BB07
2G058BB12
2G058BB18
2G058CE08
2G058ED03
2G058GA01
2G058GC02
2G058GC05
2G058HA01
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で、試薬庫内の試薬の蒸発を抑制すること。
【解決手段】本実施形態に係る試薬収納システムは、試薬庫と、抑制部材とを備える。前記試薬庫は、回転テーブルと、筐体と、カバーと、冷却部と、ファンと、分離部と、を備える。前記回転テーブルは、試薬容器が載置される。前記筐体は、前記回転テーブルを収容可能に形成される。前記カバーは、前記筐体の開口を覆う。前記ファンは、前記冷却部により前記筐体の内部が冷却されるように、前記筐体の内部の空気を循環させる。前記分離部は、前記カバーと前記筐体とにより形成される空間を、前記試薬容器の開口部が存在する空間と、前記試薬容器の本体が存在する空間とに分離する。前記抑制部材は、前記試薬容器が載置されない箇所に載置され、当該箇所から前記試薬容器の開口部への前記空気の流入を抑制する。
【選択図】図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬容器が載置される回転テーブルと、前記回転テーブルを収容可能に形成された筐体と、前記筐体の開口を覆うカバーと、冷却部と、前記冷却部により前記筐体の内部が冷却されるように、前記筐体の内部の空気を循環させるファンと、前記カバーと前記筐体とにより形成される空間を、前記試薬容器の開口部が存在する空間と、前記試薬容器の本体が存在する空間とに分離する分離部と、を備える試薬庫と、
前記試薬容器が載置されない箇所に載置され、当該箇所から前記試薬容器の開口部への前記空気の流入を抑制するための抑制部材と、
を備える試薬収納システム。
【請求項2】
前記抑制部材は、前記試薬容器と同じ外形を有する、
請求項1に記載の試薬収納システム。
【請求項3】
前記抑制部材は、前記箇所を上部から覆う、
請求項1又は2に記載の試薬収納システム。
【請求項4】
前記回転テーブルに対置される台であって、それぞれ形状が異なる前記試薬容器を設置する複数の部分トレイを有するトレイ、
を更に備え、
前記抑制部材の形状は、前記試薬容器の形状に応じて異なる、
請求項1に記載の試薬収納システム。
【請求項5】
試薬容器が載置される回転テーブルと、前記回転テーブルを収容可能に形成された筐体と、前記筐体の開口を覆うカバーと、冷却部と、前記冷却部により前記筐体の内部が冷却されるように、前記筐体の内部の空気を循環させるファンと、前記カバーと前記筐体とにより形成される空間を、前記試薬容器の開口部が存在する空間と、前記試薬容器の本体が存在する空間とに分離する分離部と、を備える試薬庫と、
試料と前記試薬庫に格納された前記試薬容器内の試薬とを反応容器に分注して、前記反応容器内の前記試料と前記試薬との混合薬の測定により分析データを生成する分析装置と、
前記試薬容器が載置されない箇所に載置され、当該箇所から前記試薬容器の開口部への前記空気の流入を抑制するための抑制部材と、
を備える自動分析システム。
【請求項6】
前記箇所の発生の有無を判定する制御部と、
前記箇所が発生している場合、前記箇所に前記抑制部材を載置することを推奨する情報を出力する出力部と、
を更に備える請求項5に記載の自動分析システム。
【請求項7】
前記試薬容器及び前記抑制部材に付与され、前記試薬容器及び前記抑制部材をそれぞれ識別するための識別情報を含む光学式ラベルと、
前記光学式ラベルから前記識別情報を読み取る読取部と、
を更に備え、
前記制御部は、前記読取部に読み取られた前記光学式ラベルに基づいて、前記箇所の発生の有無を判定する、
請求項6に記載の自動分析システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記回転テーブルを回転させて、前記光学式ラベルから前記識別情報を読み取るように前記読取部を制御する、
請求項7に記載の自動分析システム。
【請求項9】
試薬容器が載置される回転テーブルと、前記回転テーブルを収容可能に形成された筐体と、前記筐体の開口を覆うカバーと、冷却部と、前記冷却部により前記筐体の内部が冷却されるように、前記筐体の内部の空気を循環させるファンと、前記カバーと前記筐体とにより形成される空間を、前記試薬容器の開口部が存在する空間と、前記試薬容器の本体が存在する空間とに分離する分離部と、を備える試薬庫に適用される部材であって、
前記試薬容器が載置されない箇所に載置され、当該箇所から前記試薬容器の開口部への前記空気の流入を抑制するための抑制部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、試薬収納システム、自動分析システム、及び、抑制部材に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査用の自動分析装置では、血液及び尿等の生体試料(以下、試料と称する)と試薬とを一定量混合して反応させ、この混合液に光を当てて得られる透過光又は散乱光の光量を測定する。これにより、自動分析装置は、測定対象物質の濃度、活性値、及び変化に掛かる時間等を求めている。試薬は試薬容器に収容され、自動分析システムに設けられる試薬庫で保冷されている。試薬庫で保冷される試薬は、測定に基づくタイミングで試薬分注プローブにより試薬容器から吸引され、反応容器へ吐出される。
【0003】
試薬庫内では、試薬庫内の温度を効率的に低く維持するために、冷却された空気が循環されるようになっている。そのため、試薬容器に収容されている試薬は、試薬庫内において蒸発する可能性がある。そこで、試薬庫内における試薬の蒸発を抑制するために、例えば、自動開閉キャップや簡易ピアッシング等の試薬蒸発抑制機構を試薬容器に設けることで対応することが考えられる。しかしながら、試薬容器に試薬蒸発抑制機構を設ける場合、試薬蒸発抑制機構を駆動させる自動分析システムの構造が複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-200161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、簡易な構造で、試薬庫内の試薬の蒸発を抑制することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る試薬収納システムは、試薬庫と、抑制部材とを備える。前記試薬庫は、回転テーブルと、筐体と、カバーと、冷却部と、ファンと、分離部と、を備える。前記回転テーブルは、試薬容器が載置される。前記筐体は、前記回転テーブルを収容可能に形成される。前記カバーは、前記筐体の開口を覆う。前記ファンは、前記冷却部により前記筐体の内部が冷却されるように、前記筐体の内部の空気を循環させる。前記分離部は、前記カバーと前記筐体とにより形成される空間を、前記試薬容器の開口部が存在する空間と、前記試薬容器の本体が存在する空間とに分離する。前記抑制部材は、前記試薬容器が載置されない箇所に載置され、当該箇所から前記試薬容器の開口部への前記空気の流入を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施形態に係る試薬収納システムが適用される自動分析システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、図1の自動分析システムの分析装置の構成の一例を示す斜視図である。
図3図3は、本実施形態に係る試薬収納システムにおける試薬庫の構成の一例を示す模式図であり、試薬庫の断面図である。
図4図4は、本実施形態に係る試薬収納システムにおける試薬庫の構成の一例を示す模式図であり、図3のX-X断面における上面図である。
図5図5は、図3の試薬庫内の空気の循環径路の一例を示す図である。
図6A図6Aは、本実施形態に係る試薬収納システムにおける空きポジションキャップの一例を示す模式図であり、空きポジションキャップの斜視図である。
図6B図6Bは、本実施形態に係る試薬収納システムにおける空きポジションキャップの一例を示す模式図であり、空きポジションキャップの断面図である。
図7図7は、本実施形態に係る試薬収納システムが適用される自動分析システムにおいて、空きポジションからの空気の流入を抑制するための処理を示すフローチャートである。
図8図8は、第1変形例において、試薬庫のトレイの構成の一例、及び、空きポジションキャップの一例を示す斜視図である。
図9図9は、第2変形例における空きポジションキャップの他の一例を示す模式図である。
図10A図10Aは、第3変形例において、空きポジションからの空気の流入を抑制するための構成の一例を示す模式図である。
図10B図10Bは、第3変形例において、空きポジションからの空気の流入を抑制するための構成の一例を示す模式図である。
図10C図10Cは、第3変形例において、空きポジションからの空気の流入を抑制するための構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、試薬収納システム、自動分析システム、及び、抑制部材の実施形態について詳細に説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。
【0009】
図1は、本実施形態に係る試薬収納システムが適用される自動分析システム100の構成の一例を示すブロック図である。図1に示す自動分析システム100は、分析装置70と、駆動装置80と、処理装置90とを含む。
【0010】
分析装置70は、各検査項目の標準試料や被検体から採取された被検試料(血液や尿などの生体試料)と、各検査項目の分析に用いる試薬との混合液を測定して、標準データや被検データを生成する。分析装置70は、試料の分注、試薬の分注等を行う複数のユニットを備え、駆動装置80は、分析装置70の各ユニットを駆動する。処理装置90は、駆動装置80を制御して分析装置70の各ユニットを作動させる。
【0011】
処理装置90は、入力装置50と、出力装置40と、処理回路30と、記憶回路60とを有する。
【0012】
入力装置50は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、各検査項目の分析パラメータを設定するための入力、被検試料の被検識別情報及び検査項目を設定するための入力等を行う。
【0013】
出力装置40は、プリンタと、ディスプレイとを備えている。プリンタは、制御回路30で生成されたデータの印刷を行う。ディスプレイは、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶パネルなどのモニタであり、制御回路30で生成されたデータの表示を行う。ここで、出力装置40は、「出力部」の一例である。
【0014】
記憶回路60は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置などである。
【0015】
制御回路30は、システム全体を制御する。例えば、制御回路30は、図1に示すように、データ処理機能31及び制御機能32を実行する。制御機能32は、駆動装置80を制御して分析装置70の各ユニットを作動させる。ここで、制御機能32は、制御部の一例である。データ処理機能31は、分析装置70で生成された標準データや被検データを処理して各検査項目の検量データや分析データを生成する。ここで、制御機能32は、「制御部」の一例である。
【0016】
例えば、分析装置70により生成される標準データは、物質の量や濃度を判定するためのデータ(検量線あるいは標準曲線)を表し、分析装置70により生成される被検データは、被検試料を測定した結果のデータを表す。また、制御回路30から出力される検量データは、被検データと標準データとから導かれる物質の量や濃度などの測定結果を表すデータを表し、制御回路30から出力される分析データは、陽性又は陰性の判定結果を表すデータを表す。すなわち、検量データは、陽性又は陰性の判定結果を表す分析データを導くためのデータである。
【0017】
ここで、例えば、制御回路30の構成要素が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路60に記録されている。制御回路30は、各プログラムを記憶回路60から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の制御回路30は、図1の制御回路30内に示された各機能を有することとなる。
【0018】
なお、図1においては、単一の制御回路30にて、以下に説明する各処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0019】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路60に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路60にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0020】
図2は、図1の自動分析システム100の分析装置70の構成の一例を示す斜視図である。
【0021】
分析装置70は、複数の試料容器11を保持するサンプルディスク5を備えている。試料容器11は、各検査項目の標準試料や被検試料等の試料を収容する。
【0022】
分析装置70は、更に、複数の試薬容器6と、複数の試薬容器6の各々を格納する試薬庫1と、複数の試薬容器7と、複数の試薬容器7の各々を格納する試薬庫2とを備えている。試薬容器6、7は、試料に含まれる各検査項目の成分と反応する成分を含有する試薬を収容する。試薬庫1は、各検査項目の試薬容器6を回動可能に保持するターンテーブルである試薬ラック1aを備えている。試薬庫2は、各検査項目の試薬容器7を回動可能に保持するターンテーブルである試薬ラック2aを備えている。
【0023】
分析装置70は、更に、円周上に配置された複数の反応容器3と、複数の反応容器3の各々を回転移動可能に保持する反応ディスク4とを備えている。
【0024】
分析装置70は、更に、試料分注プローブ16と、試料分注アーム10と、試料分注ポンプユニット16aと、試料検出器16bと、洗浄槽16cとを備えている。試料分注プローブ16は、試料の分注を行う。具体的には、試料分注プローブ16は、サンプルディスク5に保持された試料容器11内の試料を検査項目毎に吸引して、当該検査項目の分析パラメータとして設定された量の試料を反応容器3内へ吐出する。試料分注アーム10は、試料分注プローブ16を回動及び上下移動可能に支持する。試料分注ポンプユニット16aは、試料分注プローブ16に試料の吸引及び吐出を行わせる。試料検出器16bは、サンプルディスク5に保持された試料容器11内の試料の液面に、当該液面の上方から下降した試料分注プローブ16の先端部が接触したときに、試料容器11内の試料を検出したと判定する。具体的には、試料検出器16bは、試料分注プローブ16と電気的に接続され、試料分注プローブ16の先端部が試料容器11内の試料と接触したときの静電容量の変化により、試料容器11内の試料の液面を検出する。試料容器11内の試料の液面が検出されると、試料分注ポンプユニット16aは、試料分注プローブ16に試料の吸引及び吐出を行わせる。洗浄槽16cは、試料分注プローブ16を試料の分注終了毎に洗浄する。
【0025】
分析装置70は、更に、試薬分注プローブ14と、試薬分注アーム8と、試薬分注ポンプユニット14aと、試薬検出器14bと、洗浄槽14cと、撹拌子17と、撹拌アーム18と、洗浄槽17aとを備えている。試薬分注プローブ14は、試薬容器6内の試薬の分注を行う。具体的には、試薬分注プローブ14は、試薬ラック1aに保持された各検査項目の試薬容器6内の試薬を吸引して、当該検査項目の分析パラメータとして設定された量の試薬を、試料が分注された反応容器3内に吐出する。試薬分注アーム8は、試薬分注プローブ14を回動及び上下移動可能に支持する。試薬分注ポンプユニット14aは、試薬分注プローブ14に試薬の吸引及び吐出を行わせる。試薬検出器14bは、液面検知機能として、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の試薬の液面に、当該液面の上方から下降した試薬分注プローブ14の先端部が接触したときに、試薬容器6内の試薬を検出したと判定する。具体的には、試薬検出器14bは、試薬分注プローブ14と電気的に接続され、試薬分注プローブ14の先端部が試薬容器6内の試薬と接触したときの静電容量の変化により、試薬容器6内の試薬の液面を検出する。試薬容器6内の試薬の液面が検出されると、試薬分注ポンプユニット14aは、試薬分注プローブ14に試薬の吸引及び吐出を行わせる。洗浄槽14cは、試薬分注プローブ14を試薬の分注毎に洗浄する。撹拌子17は、反応容器3内に分注された試料と試薬との混合液を撹拌する。撹拌アーム18は、撹拌子17を回動及び上下移動可能に支持する。洗浄槽17aは、撹拌子17を混合液の撹拌毎に洗浄する。
【0026】
分析装置70は、更に、試薬分注プローブ15と、試薬分注アーム9と、試薬分注ポンプユニット15aと、試薬検出器15bと、洗浄槽15cと、撹拌子19と、撹拌アーム20と、洗浄槽19aとを備えている。試薬分注プローブ15は、試薬容器7内の試薬の分注を行う。ここで、試薬分注プローブ15、試薬分注アーム9、試薬分注ポンプユニット15a、試薬検出器15b、洗浄槽15c、撹拌子19、撹拌アーム20、洗浄槽19aの機能は、それぞれ、試薬分注プローブ14、試薬分注アーム8、試薬分注ポンプユニット14a、試薬検出器14b、洗浄槽14c、撹拌子17、撹拌アーム18、洗浄槽17aの機能と同じであるため、説明を省略する。
【0027】
分析装置70は、更に、測定部13と、反応容器洗浄ユニット12とを備えている。測定部13は、撹拌子17に撹拌された混合液を収容する反応容器3や、撹拌子19に撹拌された混合液を収容する反応容器3に、光を照射して混合液を測定する。具体的には、測定部13は、回転移動している測定位置の反応容器3に光を照射し、この照射により反応容器3内の試料及び試薬の混合液を透過した光を検出する。そして、測定部13は、検出した信号を処理してデジタル信号で表される標準データや被検データを生成して処理装置90の処理回路30に出力する。反応容器洗浄ユニット12は、測定部13による測定が終了した反応容器3内を洗浄する。
【0028】
駆動装置80は、分析装置70の各ユニットを駆動する。
【0029】
駆動装置80は、分析装置70のサンプルディスク5を駆動する機構を備え、各試料容器11を回動移動させる。また、駆動装置80は、試薬庫1の試薬ラック1aを駆動する機構を備え、各試薬容器6を回動移動させる。また、駆動装置80は、試薬庫2の試薬ラック2aを駆動する機構を備え、各試薬容器7を回動移動させる。また、駆動装置80は、反応ディスク4を駆動する機構を備え、各反応容器3を回転移動させる。
【0030】
また、駆動装置80は、試料分注アーム10を回動及び上下移動させる機構を備え、試料分注プローブ16を試料容器11と反応容器3との間で移動させる。また、駆動装置80は、試料分注ポンプユニット16aを駆動する機構を備え、試料分注プローブ16に試料を分注させる。すなわち、試料分注プローブ16に試料容器11の試料を吸引させ、当該試料を反応容器3に吐出させる。
【0031】
また、駆動装置80は、試薬分注アーム8、9を回動及び上下移動させる機構を備え、試薬分注プローブ14、15をそれぞれ試薬容器6、7と反応容器3との間で移動させる。また、駆動装置80は、試薬分注ポンプユニット14a、15aを駆動する機構を備え、試薬分注プローブ14、15に試薬を分注させる。すなわち、試薬分注プローブ14、15に試薬容器6、7の試薬を吸引させ、当該試薬を反応容器3に吐出させる。また、駆動装置80は、撹拌アーム18、20を駆動する機構を備え、撹拌子17、19を反応容器3内に移動させる。そして、駆動装置80は、撹拌子17、19を駆動する機構を備え、反応容器3内の試料及び試薬の撹拌を行わせる。
【0032】
処理装置90の分析制御機能32は、駆動装置80を制御して分析装置70の各ユニットを作動させる。
【0033】
以上、本実施形態に係る試薬収納システムが適用される自動分析システム100の全体構成について説明した。かかる構成のもと、本実施形態に係る試薬収納システムは、以下に説明するように、簡易な構造で、試薬庫内の試薬の蒸発を抑制する。
【0034】
試薬庫内では、試薬庫内の温度を効率的に低く維持するために、冷却された空気が循環されるようになっている。そのため、試薬容器に収容されている試薬は、試薬庫内において蒸発する可能性がある。そこで、試薬庫内における試薬の蒸発を抑制するために、例えば、自動開閉キャップや簡易ピアッシング等の試薬蒸発抑制機構を試薬容器に設けることで対応することが考えられるが、試薬蒸発抑制機構を駆動させる自動分析システムの構造が複雑になる。
【0035】
そこで、本実施形態に係る試薬収納システムは、試薬庫と、抑制部材とを備える。試薬庫は、回転テーブルと、筐体と、カバーと、冷却部と、ファンと、分離部と、を備える。回転テーブルは、試薬容器が載置される。筐体は、回転テーブルを収容可能に形成される。カバーは、筐体の開口を覆う。ファンは、冷却部により筐体の内部が冷却されるように、筐体の内部の空気を循環させる。分離部は、カバーと筐体とにより形成される空間を、試薬容器の開口部が存在する空間と、試薬容器の本体が存在する空間とに分離する。抑制部材は、試薬容器が載置されない箇所に載置され、当該箇所から試薬容器の開口部への空気の流入を抑制する。
【0036】
このように、本実施形態に係る試薬収納システムでは、カバーと筐体とにより形成される空間を、試薬容器の開口部が存在する空間と、試薬容器の本体が存在する空間とに分離する分離部を設けることで、試薬容器の開口部への空気の流入を抑制する。更に、本実施形態に係る試薬収納システムでは、試薬容器が載置されない箇所に抑制部材を載置することで、当該箇所から試薬容器の開口部への空気の流入を抑制する。このため、本実施形態に係る試薬収納システムによれば、簡易な構造で、試薬庫内の試薬の蒸発を抑制することができる。
【0037】
ここで、図2に示す分析装置70、駆動装置80、処理装置90を含む装置(自動分析装置)に抑制部材(後述の空きポジションキャップ)を適用したものを自動分析システム100と称する。また、図2に示す試薬庫1、2に抑制部材(後述の空きポジションキャップ)を適用したものを試薬収納システムと称する。
【0038】
上述した試薬収納システムについて、図3及び図4等を用いて説明する。なお、図3及び図4では、同じ構成である図2に示す試薬庫1、2を試薬庫200として表している。また、図3及び図4では、同じ構成である図2に示す試薬容器6、7を試薬容器311として表している。
【0039】
まず、試薬容器311が保冷される試薬庫200について詳細に説明する。図3図4は、本実施形態に係る試薬収納システム110における試薬庫200の構成の一例を示す模式図である。図3は、試薬庫200の断面図であり、図4は、図3のX-X断面における上面図である。
【0040】
図3に示すように、本実施形態に係る試薬収納システム110は、試薬庫200と、試薬容器311とを含む。
【0041】
試薬庫200は、筐体210と、試薬カバー211と、回転テーブル220と、冷却素子230と、ファン241、242と、対流分離板310cとを備える。回転テーブル220は、図2に示す試薬ラック1a、2aに相当する。
【0042】
試薬カバー211は、筐体210の開口を覆う蓋である。試薬カバー211には、図示しない試薬吸引口が設けられている。試薬吸引口は、試薬カバー211を貫通する孔であり、試薬分注プローブ(図2に示す試薬分注プローブ14、15)の回動軌道と、試薬容器311の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。
【0043】
筐体210は、上端に開口部を有し、内部に回転テーブル220を収容可能に形成されている。筐体210は、開口部が試薬カバー211により覆われる。
【0044】
図3図4に示すように、回転テーブル220は、支持部220a、底面部220b、及び、側面部220cを備える。回転テーブル220は、試薬容器311が載置される台である。ここで、図3図4において、試薬容器311が回転テーブル220に直接載置される場合を例にしているが、試薬容器311が、回転テーブル220に対置される台であるトレイ(試薬ラック)に載置されてもよい。
【0045】
支持部220aの略中心には、回転軸220a1が設けられている。回転軸220a1は、駆動装置80により駆動され、回転テーブル220が回動及び停止を繰り返す。
【0046】
底面部220bは、複数の試薬容器311を移動させるための台である。例えば、回転テーブル220が回動することにより、回転テーブル220に載置された複数の試薬容器311のうちの1つの試薬容器311が、試薬吸引口の直下の位置、すなわち、試薬吸引位置で停止されるようになる。
【0047】
底面部220bには、試薬庫200内の空気の循環径路を形成する切欠き220e及び調整孔220fが設けられている。例えば、図4に示すように、切欠き220e及び調整孔220fは、底面部220bにおいて、円周方向に、予め決められた間隔で形成されている。
【0048】
切欠き220eは、例えば、底面部220bの半径方向外側の端部に設けられ、略半円形状に形成されている。この形状により、切欠き220eと筐体210の内壁との間には、試薬庫200内の空気を循環させるための隙間が形成される。調整孔220fは、例えば、底面部220bにおいて、略円形状に形成されている。底面部220bに形成された調整孔220fにより、試薬庫200内の空気を循環させるための隙間が形成される。
【0049】
なお、切欠き220e及び調整孔220fの形状は、図4に示す形状に限定されず、通過する空気に偏りや乱れを生じさせない形状であれば、どの形状であっても構わない。また、図3図4に示す例では、底面部220bには切欠き220e及び調整孔220fが設けられているが、底面部220bには、切欠き220eのみが設けられてもよいし、調整孔220fのみが設けられてもよい。
【0050】
支持部220aと底面部220bとは径が異なり、支持部220aの径は、底面部220bの径よりも小さい。側面部220cは、支持部220aと底面部220bとを接続する面であり、支持部220aから下方へ向かって延設されている。
【0051】
側面部220cには、試薬庫200内の空気の循環径路を形成する貫通孔220dが設けられている。例えば、貫通孔220dは、側面部220cにおいて、底面部220b側から上方向に楕円形状に形成され、円周方向に、予め決められた間隔で形成されている。貫通孔220dが形成される位置は、回転テーブル220に載置された試薬容器311の位置に対応する。具体的には、回転軸220a1と切欠き220eとを結ぶ直線上に、貫通孔220dが設けられ、試薬容器311が載置される。図4では、回転テーブル220に載置された試薬容器311が三重の円環状に載置される場合を例に示している。なお、試薬容器311は、三重の円環状に載置されることに限定されず、一重、二重等の円環状に載置されても構わない。
【0052】
対流分離板310cは、試薬カバー211と筐体210とにより形成される空間を分離するための部材である。例えば、対流分離板310cは、試薬カバー211と筐体210とにより形成される試薬庫200内の空間を、対流分離板310cより上方の対流抑制層310c1と、対流分離板310cより下方の対流層310c2とに分離する。対流抑制層310c1には、試薬容器311の開口部が存在し、対流層310c2には、試薬容器311の本体が存在する。即ち、対流分離板310cは、試薬カバー211と筐体210とにより形成される空間を、試薬容器311の開口部が存在する空間と、試薬容器311の本体が存在する空間とに分離する。ここで、対流分離板310c、対流抑制層310c1、対流層310c2は、それぞれ、「分離部」、「試薬容器の開口部が存在する空間」、「試薬容器の本体が存在する空間」の一例である。
【0053】
対流層310c2の高さは、基準となる試薬容器311の高さに基づいて設定されている。例えば、対流層310c2は、試薬容器311のうち、試薬を収容している本体を含むように設定されている。これにより、対流層310c2では、試薬容器311のうち、冷却を要する部分が存在することになる。
【0054】
対流分離板310cには、回転テーブル220に載置される試薬容器311の開口部を試薬庫200の上面側へ突出させるための突出孔310dが複数形成されている。突出孔310dが形成される位置は、回転テーブル220で設定されている試薬容器311の載置位置と対応する。突出孔310dの形状は、試薬容器311の側面部の形状と対応する。
【0055】
冷却素子230は、例えば、筐体210の底面に設けられている。処理装置90の制御機能32は、駆動装置80を制御して冷却素子230を作動させ、冷却素子230は、駆動装置80により駆動されることにより、試薬庫200を冷却する。例えば、冷却素子230は、ペルチェ素子である。ここで、冷却素子230は、「冷却部」の一例である。
【0056】
ファン241は、例えば、回転テーブル220の回転軸220a1を囲むように設けられている。ファン242は、例えば、水平循環用のファンであり、回転テーブル220の底面部220bの下方に設けられている。処理装置90の制御機能32は、駆動装置80を制御してファン241、242を作動させ、ファン241、242は、駆動装置80により駆動されることにより、冷却素子230により試薬庫200の筐体210の内部が冷却されるように、筐体210内の空気を循環させる。特に、ファン241、242は、対流層310c2内の空気を循環させる。ファン241、242は、側面部220cと支持部220aとにより囲まれる空間内の空気を、試薬庫200の筐体210の底面側へ送り出すように設けられている。これにより、対流分離板310cより下方の対流層310c2において対流が発生する。
【0057】
次に、試薬庫200内で発生する対流について説明する。図5は、図3の試薬庫200内の空気の循環径路の一例を示す図である。
【0058】
試薬容器311が載置された試薬庫200に空気を循環させる場合では、まず、ファン241、242の回転により、回転テーブル220内の空気がファン241、242に吸引され、吸引された空気は、回転テーブル220の底面部220bと筐体210の底面部との間の空間に送り出される。次に、回転テーブル220の底面部220bと筐体210の底面部との間の空間に送り出された空気は、冷却素子230により冷却される。そして、当該空間に送り出された空気は、回転テーブル220の底面部220bに形成された切欠き220eと筐体210の内壁との間の隙間、及び、底面部220bに形成された調整孔220fを経由して、対流分離板310cと底面部220bとの間の空間である対流層310c2に送り出される。ここで、対流層310c2に送り出された空気は、回転テーブル220の側面部220cに形成された貫通孔220dを経由して、回転テーブル220内に送り出される。一方、試薬カバー211と対流分離板310cとの間の空間である対流抑制層310c1においては、対流分離板310cにより、対流層310c2からの空気の流入が抑制される。
【0059】
このように、本実施形態に係る試薬収納システム110では、試薬庫200において、試薬カバー211と筐体210とにより形成される試薬庫200内の空間を、試薬容器311の開口部が存在する空間である対流抑制層310c1と、試薬容器311の本体が存在する空間である対流層310c2とに分離する対流分離板310cを設けることで、試薬容器311の開口部への空気の流入を抑制する。
【0060】
図6A図6Bに示すように、本実施形態に係る試薬収納システム110は、更に、空きポジションキャップ411を備える。図6A図6Bは、本実施形態に係る試薬収納システム110における空きポジションキャップ411の一例を示す模式図である。図6Aは、空きポジションキャップ411の斜視図であり、図6Bは、空きポジションキャップ411の断面図である。なお、図6Aでは、回転テーブル220に載置された試薬容器311が二重の円環状に載置される場合を示している。
【0061】
図6Aに示すように、試薬庫200において、回転テーブル220で設定されている試薬容器311の載置位置に、当該試薬容器311が載置されない空きポジション400が発生する場合がある。ここで、空きポジション400は、「試薬容器が載置されない箇所」の一例である。この場合、対流層310c2からの空気が、空きポジション400を経由して、対流抑制層310c1に流入してしまう。そこで、空きポジション400に、空きポジションキャップ411を載置することで、空きポジション400から試薬容器311の開口部への空気の流入が抑制される。ここで、空きポジションキャップ411は、「抑制部材」の一例である。
【0062】
空きポジションキャップ411は、試薬容器311と同じ外形である。ここで、図6Bに示すように、空きポジションキャップ411は、上端に開口部が形成されておらず、底面に開口部が形成されている点で、試薬容器311と異なる。底面がない構造にすることで、空きポジションキャップ411を樹脂成型により容易に製造できるという利点がある。なお、空きポジションキャップ411の底面の開口部は、回転テーブル220の底面部220bにより塞がれる。
【0063】
このように、本実施形態に係る試薬収納システム110では、試薬庫200において、試薬容器311が載置されない空きポジション400に、試薬容器311と同じ外形の空きポジションキャップ411を載置することで、試薬容器311の開口部への空気の流入を抑制する。また、本実施形態に係る試薬収納システム110では、空きポジション400を上部から覆うように、当該空きポジション400に、試薬容器311と同じ外形の空きポジションキャップ411を載置することで、対流層310c2の対流に影響を与えずに、冷却された空気を対流層310c2内で循環させることができる。本実施形態に係る試薬収納システム110では、冷却用の気流を設計通りに循環させる観点から、空きポジションキャップ411を、試薬容器311と同じ外形とすることがよい。
【0064】
ここで、試薬庫200に載置される複数の試薬容器311の各々には、光学式ラベルが付与されている。光学式ラベルは、当該試薬容器311(試薬ボトル)を識別し、かつ、当該試薬容器311に収容された試薬を識別するための識別情報を含む。光学式ラベルは、例えば、バーコードである。
【0065】
空きポジションキャップ411には、光学式ラベル430が付与されている。光学式ラベル430は、当該空きポジションキャップ411を識別するための識別情報を含む。光学式ラベル430は、例えば、空きポジションキャップ411を識別するための専用のバーコードである。
【0066】
例えば、図2に示すように、自動分析システム100において、分析装置70は、更に、読取装置440を備えている。読取装置440は、試薬庫200の筐体210の内側面に設けられている。処理装置90の制御機能32は、駆動装置80を制御して読取装置440を作動させ、読取装置440は、駆動装置80により駆動されることにより、試薬庫200内に載置された試薬容器311及び空きポジションキャップ411の光学式ラベルから識別情報を読み取る。光学式ラベルがバーコードである場合、読取装置440は、例えば、バーコードリーダである。ここで、読取装置440は、「読取部」の一例である。
【0067】
図7は、本実施形態に係る試薬収納システム110が適用される自動分析システム100において、空きポジション400からの空気の流入を抑制するための処理を示すフローチャートである。
【0068】
図7のステップS101において、処理装置90の制御機能32は、駆動装置80を制御して分析装置70による分析を開始する前に、試薬庫200の回転テーブル220を回転させて、光学式ラベルから識別情報を読み取るように読取装置440を制御する。
【0069】
図7のステップS102において、処理装置90の制御機能32は、読取装置440が光学式ラベルを読み取ったときに、空きポジション400の発生の有無を判定する。具体的には、制御機能32は、読取装置440により読み取られた光学式ラベルに基づいて、回転テーブル220で設定されている試薬容器311の載置位置に、当該試薬容器311が載置されない空きポジション400が発生しているか否かを判定する。判定の結果、空きポジション400が発生している場合(ステップS102;Yes)、図7の処理はステップS103に進み、空きポジション400が発生していない場合(ステップS102;No)、図7の処理はステップS104に進む。
【0070】
図7のステップS103において、処理装置90の制御機能32は、空きポジション400が発生している旨と、空きポジション400に空きポジションキャップ411を載置することを推奨する情報とを出力装置40に出力することで、ユーザに通知する。例えば、制御機能32は、ディスプレイに表示させる、又は、音声で出力することで、ユーザに通知する。その後、空きポジション400に、専用の光学式ラベル430が付与された空きポジションキャップ411が載置され、図7の処理はステップS101に戻る。
【0071】
図7のステップS104において、処理装置90の制御機能32は、駆動装置80を制御して分析装置70による分析を開始する。
【0072】
なお、ステップS101において読取装置440が識別情報を読み取りできない場合、ステップS102、S103が実行される。この場合、ステップS103において、処理装置90の制御機能32は、識別情報を読み取りできない旨を出力装置40に出力することで、ユーザに通知する。その後、試薬容器311の光学式ラベルが読取装置440に読み取り可能な位置に起き直され、図7の処理はステップS101に戻る。
【0073】
以上の説明により、本実施形態に係る試薬収納システム110では、試薬庫200において、試薬カバー211と筐体210とにより形成される試薬庫200内の空間を、試薬容器311の開口部が存在する空間である対流抑制層310c1と、試薬容器311の本体が存在する空間である対流層310c2とに分離する対流分離板310cを設けることで、試薬容器311の開口部への空気の流入を抑制する。更に、本実施形態に係る試薬収納システム110では、試薬容器311が載置されない空きポジション400に、試薬容器311と同じ外形の空きポジションキャップ411を載置することで、試薬容器311の開口部への空気の流入を抑制する。このため、本実施形態に係る試薬収納システム110によれば、簡易な構造で、試薬庫200内の試薬の蒸発を抑制することができる。更に、本実施形態に係る試薬収納システム110では、空きポジション400を上部から覆うように、当該空きポジション400に、試薬容器311と同じ外形の空きポジションキャップ411を載置することで、対流層310c2の対流に影響を与えずに、冷却された空気を対流層310c2内で循環させることができる。
【0074】
例えば、本実施形態に係る試薬収納システム110が適用される自動分析システム100では、空きポジション400が発生している場合、当該空きポジション400に空きポジションキャップ411を載置することを推奨する情報をユーザに通知する。このとき、ユーザが空きポジション400に空きポジションキャップ411を載置することで、試薬容器311の開口部への空気の流入を抑制する。このため、本実施形態に係る試薬収納システム110によれば、簡易な構造で、試薬庫200内の試薬の蒸発を抑制することができ、対流層310c2の対流に影響を与えずに、冷却された空気を対流層310c2内で循環させることができる。
【0075】
これまで実施形態について説明したが、上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0076】
(第1変形例)
上述した実施形態では、回転テーブル220に載置された複数の試薬容器が同じ形状である場合を例にしているが、例えば、回転テーブル220に載置された複数の試薬容器それぞれの形状が異なる場合がある。そこで、第1変形例では、それぞれ形状が異なる試薬容器に対して空きポジション400が発生した場合においても、その空きポジション400には、試薬容器の形状に応じて、形状が異なる空きポジションキャップが載置される場合を例にして説明する。
【0077】
図8は、第1変形例において、試薬庫200のトレイ300の構成の一例、及び、空きポジションキャップ411、421の一例を示す斜視図である。図8では、筐体210、試薬カバー211、冷却素子230、及び、ファン241、242の図示を省略している。
【0078】
図8に示すように、試薬庫200は、更に、トレイ300を備える。この場合、回転テーブル220の底面部220bは、トレイ300が載置される台である。トレイ300には、複数の試薬容器が載置される。すなわち、底面部220bは、トレイ300上の複数の試薬容器を移動させるための台である。例えば、回転テーブル220が回動することにより、回転テーブル220に載置されたトレイ300上の複数の試薬容器のうちの1つの試薬容器が、試薬吸引口の直下の位置、すなわち、試薬吸引位置で停止されるようになる。
【0079】
トレイ300は、回転テーブル220に対置される台であって、例えば容量やデザインが異なることにより形状が異なる試薬容器を載置する台である。例えば、トレイ300は、複数の部分トレイ310、320に分割される。本実施形態では、ラックの種類の数が2である場合を例として説明するが、この場合に限定されず、2以上であってもよい。例えば、トレイ300は、3つの領域に分割されていて、3つの領域にそれぞれ3つの部分トレイが配置されるようになっている。図8では、2つの部分トレイ310と1つの部分トレイ320とが配置されているパターンを図示している。また、このパターンに限定されず、1つの部分トレイ310と2つの部分トレイ320とが配置されてもよい。
【0080】
複数の部分トレイ310、320には、それぞれ形状が異なる複数種類の試薬容器311、321が載置される。例えば、複数の部分トレイ310、320には、それぞれ高さが異なる試薬容器311、321が載置される。例えば、試薬容器311の高さは試薬容器321の高さよりも低いものとする。
【0081】
図8に示すように、部分トレイ310は、側面部310a、底面部310b、及び、対流分離板310cを備える。底面部310bは、試薬容器311が載置される台である。底面部310bには、複数の試薬容器311が載置される。すなわち、底面部310bは、複数の試薬容器311を移動させるための台である。底面部310bには、試薬庫200内の空気の循環径路を形成する切欠き310e及び調整孔が設けられている。例えば、切欠き310e及び調整孔は、底面部310bにおいて、円周方向に、予め決められた間隔で形成されている。切欠き310e及び調整孔が形成される位置は、それぞれ、回転テーブル220の切欠き220e及び調整孔220fの位置に対応する。
【0082】
側面部310aは、回転テーブル220の側面部220cを近接して覆うように、底面部310bに向かって延設されている。部分トレイ310が回転テーブル220に取り付けられたとき、回転テーブル220の底面部220b上に部分トレイ310の底面部310bが設けられ、回転テーブル220の側面部220cは、部分トレイ310の側面部310aに隣接して設けられる。側面部310aには、試薬庫200内の空気の循環径路を形成する貫通孔が設けられている。例えば、側面部310aの貫通孔は、側面部310aにおいて、底面部310b側から上方向に楕円形状に形成され、円周方向に、予め決められた間隔で形成されている。側面部310aの貫通孔が形成される位置は、回転テーブル220の側面部220cに形成された貫通孔220dの位置に対応する。すなわち、側面部310aの貫通孔は、貫通孔220dと連通するように形成されることによって、試薬庫200内の空気の循環径路を形成する。側面部310aの貫通孔の形状は、部分トレイ310に配列される試薬容器311の形状に基づいている。例えば、側面部310aの貫通孔の高さ方向の幅は、回転テーブル220の側面部220cに形成された貫通孔220dの高さ方向の幅よりも低い。
【0083】
対流分離板310cは、例えば、側面部310aに固定されている。対流分離板310cには、部分トレイ310に載置される試薬容器311の開口部を試薬庫200の上面側へ突出させるための突出孔310dが形成されている。試薬容器311の開口部は、試薬容器311から試薬が取り出される取出口である。突出孔310dが形成される位置は、部分トレイ310に配列される試薬容器311の位置に対応する。対流分離板310cに形成される突出孔310dの形状は、部分トレイ310に配列される試薬容器311の形状に対応する。例えば、部分トレイ310に配列される試薬容器311の形状が円柱形状である場合、対流分離板310cに形成される突出孔310dの形状は、円形状である。このように、部分トレイ310には、試薬容器311が対流分離板310cの突出孔310dから挿入されて底面部310b上に配列される収納スペースが形成されている。部分トレイ310の収納スペースは、試薬容器311が載置される部分である。例えば、部分トレイ310は、試薬容器311が載置される載置部と、側面部310aの貫通孔とが一体成型されたものである。
【0084】
対流分離板310cは、試薬カバー211と筐体210とにより形成される空間を分離するための部材である。試薬カバー211と筐体210と対流分離板310cとにより形成される空間は、例えば、対流分離板310cより上方の空間である対流抑制層310c1と、対流分離板310cより下方の空間である対流層310c2とに分離される。対流分離板310cが側面部310aに固定される位置は、基準となる試薬容器311の高さに基づいて設定される。例えば、対流層310c2は、試薬容器311全体のうち、試薬を収容している本体部を含むように設定される。このように、対流分離板310cにより、対流層310c2において、試薬容器311の本体部に、冷却された空気が循環し、対流抑制層310c1においては、試薬容器311の開口部に空気が循環しない。すなわち、対流分離板310cは、試薬容器311の開口部への空気の流入を抑制する。
【0085】
そこで、第1変形例では、部分トレイ310に配列される試薬容器311に対して空きポジション400が発生した場合、その空きポジション400に、試薬容器311と同じ外形である円柱形状の空きポジションキャップ411が載置される。空きポジションキャップ411は、上端に開口部が形成されておらず、底面に開口部が形成されている。
【0086】
図8に示すように、部分トレイ320は、側面部320a、底面部320b、及び、対流分離板320cを備える。底面部320bは、試薬容器321が載置される台である。底面部320bには、複数の試薬容器321が載置される。すなわち、底面部320bは、複数の試薬容器321を移動させるための台である。底面部320bには、試薬庫200内の空気の循環径路を形成する切欠き320e及び調整孔が設けられている。例えば、図8に示すように、切欠き320e及び調整孔は、底面部320bにおいて、円周方向に、予め決められた間隔で形成されている。切欠き320e及び調整孔が形成される位置は、それぞれ、切欠き220e及び調整孔220fの位置に対応する。
【0087】
側面部320aは、回転テーブル220の側面部220cを近接して覆うように、底面部320bに向かって延設されている。部分トレイ320が回転テーブル220に取り付けられたとき、回転テーブル220の底面部220b上に部分トレイ320の底面部320bが設けられ、回転テーブル220の側面部220cは、部分トレイ320の側面部320aに隣接して設けられる。側面部320aには、試薬庫200内の空気の循環径路を形成する貫通孔が設けられている。例えば、側面部320aの貫通孔は、側面部320aにおいて、底面部320b側から上方向に楕円形状に形成され、円周方向に、予め決められた間隔で形成されている。側面部320aの貫通孔が形成される位置は、回転テーブル220の側面部220cに形成された貫通孔220dの位置に対応する。すなわち、側面部320aの貫通孔は、貫通孔220dと連通するように形成されることによって、試薬庫200内の空気の循環径路を形成する。側面部320aの貫通孔の形状は、部分トレイ320に配列される試薬容器321の形状に基づいている。例えば、側面部320aの貫通孔の高さ方向の幅は、回転テーブル220の側面部220cに形成された貫通孔220dの高さ方向の幅と同じである。
【0088】
対流分離板320cは、例えば、側面部320aに固定されている。対流分離板320cには、部分トレイ320に載置される試薬容器321の開口部を試薬庫200の上面側へ突出させるための突出孔320dが形成されている。試薬容器321の開口部は、試薬容器321から試薬が取り出される取出口である。突出孔320dが形成される位置は、部分トレイ320に配列される試薬容器321の位置に対応する。対流分離板320cに形成される突出孔320dの形状は、部分トレイ320に配列される試薬容器321の形状に対応する。例えば、部分トレイ320に配列される試薬容器321の形状が四角柱形状である場合、対流分離板320cに形成される突出孔320dの形状は、四角形状である。このように、部分トレイ320には、試薬容器321が対流分離板320cの突出孔320dから挿入されて底面部320b上に配列される収納スペースが形成されている。部分トレイ320の収納スペースは、試薬容器321が載置される部分である。例えば、部分トレイ320は、試薬容器321が載置される載置部と、側面部320aの貫通孔とが一体成型されたものである。
【0089】
対流分離板320cは、試薬カバー211と筐体210とにより形成される空間を分離するための部材である。試薬カバー211と筐体210と対流分離板320cとにより形成される空間は、例えば、対流分離板320cより上方の空間である対流抑制層320c1と、対流分離板320cより下方の空間である対流層320c2とに分離される。対流分離板320cが側面部320aに固定される位置は、基準となる試薬容器321の高さに基づいて設定される。例えば、対流層320c2は、試薬容器321全体のうち、試薬を収容している本体部を含むように設定される。このように、対流分離板320cにより、対流層320c2において、試薬容器321の本体部に、冷却された空気が循環し、対流抑制層320c1においては、試薬容器321の開口部に空気が循環しない。すなわち、対流分離板320cは、試薬容器321の開口部への空気の流入を抑制する。
【0090】
そこで、第1変形例では、部分トレイ320に配列される試薬容器321に対して空きポジション400が発生した場合、その空きポジション400に、試薬容器321と同じ外形である四角柱形状の空きポジションキャップ421が載置される。空きポジションキャップ421は、上端に開口部が形成されておらず、底面に開口部が形成されている。
【0091】
以上の説明により、第1変形例では、部分トレイ310に配列される試薬容器311に対して空きポジション400が発生した場合、その空きポジション400に、試薬容器311と同じ外形である円柱形状の空きポジションキャップ411を載置することで、試薬容器311の開口部への空気の流入を抑制する。また、第1変形例では、部分トレイ320に配列される試薬容器321に対して空きポジション400が発生した場合、その空きポジション400に、試薬容器321と同じ外形である四角柱形状の空きポジションキャップ421を載置することで、試薬容器321の開口部への空気の流入を抑制する。このため、第1変形例によれば、それぞれ形状が異なる試薬容器311、321に対して空きポジション400が発生した場合においても、試薬容器311、321の形状にそれぞれ応じた空きポジションキャップ411、421が空きポジション400に載置されるため、簡易な構造で、試薬庫200内の試薬の蒸発を抑制することができる。
【0092】
更に、第1変形例では、空きポジション400に、試薬容器311と同じ外形の空きポジションキャップ411を載置することで、対流層310c2の対流に影響を与えずに、冷却された空気を対流層310c2内で循環させることができる。また、第1変形例では、試薬容器321と同じ外形の空きポジションキャップ421を載置することで、対流層320c2の対流に影響を与えずに、冷却された空気を対流層310c2内で循環させることができる。
【0093】
(第2変形例)
上述した実施形態では、ポジションキャップ411の形状は、試薬容器311と同じ底面部まで延びる形状であり、第1変形例では、ポジションキャップ411、421の形状は、それぞれ、試薬容器311、321と同じ底面部まで延びる形状であるが、これに限定されない。
【0094】
図9は、第2変形例における試薬庫200の空きポジションキャップ450の一例を示す模式図である。
【0095】
空きポジションキャップ450は、上端に開口部が形成されておらず、底面に開口部が形成されている。ここで、空きポジションキャップ450の底面は、試薬容器と同じ底面部まで延びる形状ではない。例えば、空きポジションキャップ450の側面にはフランジ451が設けられ、空きポジションキャップ450の側面が対流分離板310cの突出孔310dに嵌め込まれながら、空きポジションキャップ450がフランジ451により対流分離板310上に置かれる形状になっている。
【0096】
なお、空きポジションキャップ450の側面の形状は、試薬容器311の側面の形状と同じ形状である場合、円柱形状であり、試薬容器321の側面の形状と同じ形状である場合、四角柱形状である。
【0097】
以上の説明により、第2変形例では、空きポジション400が発生した場合、その空きポジション400に、空きポジションキャップ450を嵌め込むことで、試薬容器の開口部への空気の流入を抑制する。このため、第2変形例によれば、簡易な構造で、試薬庫200内の試薬の蒸発を抑制することができる。ただし、冷却用の気流を設計通りに循環させる観点からは、空きポジションキャップを、試薬容器311と同じ外形とすることが好ましい。
【0098】
(第3変形例)
上述した実施形態、第1変形例、及び、第2変形例では、空きポジション400が発生した場合、その空きポジション400に、空きポジションキャップを設けているが、これに限定されない。第3変形例では、空きポジションキャップを備えない場合について説明する。
【0099】
図10A図10Cは、第3変形例において、空きポジション400からの空気の流入を抑制するための構成の一例を示す模式図である。
【0100】
図10Aに示すように、対流分離板310cの突出孔310dには、対流分離板310cの開口を覆うためのカバー511、512が設けられている。例えば、カバー511、512と突出孔310dにはバネが設けられ、カバー511、512は、バネの付勢力により対流分離板310cの開口を覆う。ここで、図10Bに示すように、試薬容器311を載置する際、試薬容器311の底部でカバー511、512を下方に押下することで、バネの付勢力が解除され、図10Cに示すように、試薬容器311が載置される。
【0101】
一方、図10Cに示す位置を空きポジション400とする場合、図10C図10B図10Aに示す順で、試薬容器311を載置した位置から、当該試薬容器311を取り出し、当該位置の開口は、カバー511、512により覆われる。
【0102】
なお、カバー511、512の上面の形状は、試薬容器311の側面の形状と同じ形状である場合、カバー511とカバー512とで円形状を形成し、試薬容器321の側面の形状と同じ形状である場合、カバー511とカバー512とで四角形状を形成する。
【0103】
以上の説明により、第3変形例では、対流分離板310cに開閉可能なカバー511、512を設けることで、試薬容器311の開口部への空気の流入を抑制する。このため、第3変形例によれば、簡易な構造で、試薬庫200内の試薬の蒸発を抑制することができる。また、第3変形例では、空きポジションキャップを備えることなく、空きポジション400を発生させることができる。
【0104】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、簡易な構造で、試薬庫内の試薬の蒸発を抑制することができる。
【0105】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0106】
100 自動分析システム
110 試薬収納システム
200 試薬庫
210 筐体
211 試薬カバー
220 回転テーブル
230 冷却素子
241、242 ファン
310c 対流分離板
311 試薬容器
400 空きポジション
411 空きポジションキャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C