(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055421
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】藻場の造成装置
(51)【国際特許分類】
A01G 33/00 20060101AFI20240411BHJP
A01K 61/77 20170101ALI20240411BHJP
【FI】
A01G33/00
A01K61/77
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162343
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】中村 華子
(72)【発明者】
【氏名】山木 克則
(72)【発明者】
【氏名】リン ブーン ケン
【テーマコード(参考)】
2B003
2B026
【Fターム(参考)】
2B003AA01
2B003BB01
2B003BB09
2B003CC04
2B003DD01
2B003EE04
2B026AA05
2B026AB05
2B026AC01
2B026AF04
(57)【要約】
【課題】汚泥等の堆積を防止でき、かつ、様々な植物の配偶体や幼胞子体が固定対象物に活着しやすい状態を実現することができる藻場の造成装置を提供する。
【解決手段】藻場の造成装置1は、人工物又は自然物である固定対象物50の表面に設置する藻場の造成装置であって、藻場の造成装置1は、植物の配偶体及び/又は幼胞子体が付着された種紐20を有し、種紐20は、種紐20の一部であって固定対象物の表面に固定される第1の位置21と、第1の位置21とは異なる種紐20の一部であって固定対象物50の表面に固定される第2の位置22と、第1の位置21と第2の位置22との間に延在する中間部23と、を有しており、中間部23は、第1の位置21から第2の位置22へ向かって種紐20に沿って位置が変化するにしたがい種紐20と固定対象物50の表面との離間距離が徐々に変化する箇所を含んで設置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工物又は自然物である固定対象物の表面に設置する藻場の造成装置であって、
前記造成装置は、植物の配偶体及び/又は幼胞子体が付着された紐状体を有し、
前記紐状体は、前記紐状体の一部であって前記固定対象物の表面に固定される第1の位置と、前記第1の位置とは異なる前記紐状体の一部であって前記固定対象物の表面に固定される第2の位置と、前記第1の位置と前記第2の位置との間に延在する中間部と、を有しており、
前記中間部は、前記第1の位置から前記第2の位置へ向かって前記紐状体に沿って位置が変化するにしたがい前記紐状体と前記固定対象物の表面との離間距離が徐々に変化する箇所を含んで設置されている、藻場の造成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の藻場の造成装置において、
前記中間部は、前記固定対象物から離間する距離が1cm以上、15cm以下の箇所を少なくとも一部に有すること、
を特徴とする藻場の造成装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の藻場の造成装置において、
前記第1の位置と前記第2の位置とは、前記固定対象物の表面において離間しており、
前記中間部の長さは、前記固定対象物の表面に固定される前記第1の位置と前記第2の位置との間の距離よりも長く、
前記中間部の形状は、U字状、半円状、V字状のうちの少なくとも1つの形状を含むこと、
を特徴とする藻場の造成装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の藻場の造成装置において、
前記第1の位置と前記第2の位置とは、前記固定対象物の表面において隣接、又は、一致しており、
前記中間部の長さは、前記固定対象物の表面に固定される前記第1の位置と前記第2の位置との間の距離よりも長く、
前記中間部の形状は、環状、ループ状のうちの少なくとも1つの形状を含むこと、
を特徴とする藻場の造成装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の藻場の造成装置において、
前記固定対象物に直接固定されるベース部材を備え、
前記第1の位置及び前記第2の位置は、前記ベース部材を介して前記固定対象物の表面に固定されること、
を特徴とする藻場の造成装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の藻場の造成装置において、
前記固定対象物は、袋型根固め工法用袋材であること、
を特徴とする藻場の造成装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の藻場の造成装置において、
前記中間部には、水中において前記中間部を浮遊させる浮力を有する浮きが取り付けられていること、
を特徴とする藻場の造成装置。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の藻場の造成装置において、
前記紐状体は、複数本が交差して配置されており、
交差する前記中間部同士が接続されていること、
を特徴とする藻場の造成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、藻場再生等に用いることができる藻場の造成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水中構造物設置等の施工後に環境保全や地域漁業振興の観点から積極的に藻類を増殖させる藻場の再生が望まれる場合が多い。従来の藻場再生は、「種苗の移植」、又は、「遊走子の拡散」によるものであった。「種苗の移植」では、他海域で採取した藻類の配偶体や、陸上で生育させた藻類配偶体を、種苗(配偶体を糸等に付着させたもの)として調製し、これを水中へ導入していた。「遊走子の拡散」では、袋状の構造体に入れた成熟した葉体から遊走子を拡散させていた。
【0003】
これら従来の藻場造成手法は、工事後に別事業で行われるため、コスト高となり、工期も長くなる。また、特別な資材も必要であり、潜水作業を伴うことから安全面でも配慮する必要がある。さらに、従来の藻場再生では、主に母藻の移植やプレート等の固定による方法が主であり、手間がかかると同時に、海藻増殖のための特別な器具、例えば、水中ボンド、プレート、種付け糸等を使用する必要があった。また、胞子を撒く方法も近年試みられているが、供給源となる母藻が磯焼け等により、枯渇していることにより、地域や場所によって実施が難しい場合があった。
【0004】
また、潮流や波による洗堀防止や根固め等の海洋土木工事に併せて、海中にユニット式(フィルターユニット)又はマット式の構造物を設置する前に、予め培養した藻類の配偶体や胞子体を設置構造物に取り付け、移植することもある。この場合は、これらの施工時に、藻類の配偶体や胞子体に悪影響を与えない配慮が必要となる。具体的には、固定対象物(フィルターユニット)のロープやマット敷構造物等に取り付けた、藻類を付着させたパネル等が摩擦で破損しないように、慎重な施工を要する。したがって、厳しい施工条件となる海洋気象下にも関わらず、施工の効率の低下・施工の長期化を招くことがあり、安全な施工を実現するうえで、好ましくない。
【0005】
海中における藻場の造成技術であって、海中に設置した線条体の表面に海藻幼体を育成するものとして、以下のものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-275515号公報
【特許文献2】特開2006-42717号公報
【特許文献3】特開2003-143999号公報
【特許文献4】特開2005-333960号公報
【特許文献5】特開2002-360087号公報
【特許文献6】特開2021-180630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1から特許文献3の技術は、その表面に海藻幼体を養成させたロープ等からなる基質を海中に設置する。しかし、基体の設置方法として、静的に、つまり動かないように設置する方法のみを開示し、この基体の表面には、海中に漂う浮泥等の細粒分が堆積・付着しやすい。その結果、ロープ上の配偶体・幼胞子体の育成に要される日光が遮蔽され、また、細粒分がロープ上の配偶体・幼胞子体の光合成・呼吸を阻害するので、配偶体・幼胞子体の生育が阻害されることとなる。
【0008】
また、特許文献4には、「高床式藻場造成にすることは、(5)コンクリートブロックの基盤と(4)(7)鉄柱上部基盤を高くすることで、潮の流れがよくなり、藻体に浮泥が少なく海藻の葉がきれいなことである」といった記載がある。しかし、高床式であっても、海中に漂う浮泥等の細粒分が堆積・付着することは避けられず、藻体の育成が阻害される。
【0009】
また、特許文献5及び特許文献6では、「索条」・「ロープ」に浮体を付けて海中に略直立させたり、海面上の浮体から「索条」・「ロープ」を海中に吊下したりする。この態様は、「索条」・「ロープ」に作用する海流によって「索条」・「ロープ」が急激に揺動するので、生育途中の藻類が「索条」・「ロープ」から引きちぎられやすくなる。また、仮に、藻体が付着した状態を維持してその後の生長の過程に入ったとしても、藻類の葉のサイズが生長すればするほど、水中の海流から加わる力が増えるので、やはり、藻類が「索条」・「ロープ」から引きちぎられやすくなる傾向となる。さらに、「索条」・「ロープ」が略鉛直方向に延在することから、上方で生育している藻類の根が下方へ延びようとしても下方で育成している藻類が障害となり、下方へ根が伸びることを阻害されてしまう。そのため、生育途中の藻類の根が海底に設置された構造物や岩石等に到達することができない。この点においても、藻類が「索条」・「ロープ」から引きちぎられやすく、また、「索条」・「ロープ」を継続的に設置しておく必要があることから自然に近い藻場の再生には向かないものであった。
【0010】
本開示の課題は、汚泥等の堆積を防止でき、かつ、様々な植物の配偶体や幼胞子体が固定対象物に活着しやすい状態を実現することができる藻場の造成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本開示の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0012】
第1の開示は、例えば、
図1、
図2のように、人工物又は自然物である固定対象物(50)の表面に設置する藻場の造成装置(1)であって、前記造成装置(1)は、植物の配偶体及び/又は幼胞子体が付着された紐状体(20)を有し、前記紐状体(20)は、前記紐状体(20)の一部であって前記固定対象物(50)の表面に固定される第1の位置(21)と、前記第1の位置(21)とは異なる前記紐状体(20)の一部であって前記固定対象物(50)の表面に固定される第2の位置(22)と、前記第1の位置(21)と前記第2の位置(22)との間に延在する中間部(23)と、を有しており、前記中間部(23)は、前記第1の位置(21)から前記第2の位置(22)へ向かって前記紐状体(20)に沿って位置が変化するにしたがい前記紐状体(20)と前記固定対象物(50)の表面との離間距離が徐々に変化する箇所を含んで設置されている、藻場の造成装置(1)である。
【0013】
第2の開示は、第1の開示に記載の藻場の造成装置(1)において、例えば、
図3のように、前記中間部(23)は、前記固定対象物(50)から離間する距離が1cm以上、15cm以下の箇所を少なくとも一部に有すること、を特徴とする藻場の造成装置(1)である。
【0014】
第3の開示は、第1の開示又は第2の開示に記載の藻場の造成装置(1)において、例えば、
図5、
図6のように、前記第1の位置(21)と前記第2の位置(22)とは、前記固定対象物(50)の表面において離間しており、前記中間部(23)の長さは、前記固定対象物(50)の表面に固定される前記第1の位置(21)と前記第2の位置(22)との間の距離よりも長く、前記中間部(23)の形状は、U字状、半円状、V字状のうちの少なくとも1つの形状を含むこと、を特徴とする藻場の造成装置(1)である。
【0015】
第4の開示は、第1の又は第2の開示に記載の藻場の造成装置(1)において、例えば、
図7のように、前記第1の位置(21)と前記第2の位置(22)とは、前記固定対象物(50)の表面において隣接、又は、一致しており、前記中間部(23)の長さは、前記固定対象物(50)の表面に固定される前記第1の位置(21)と前記第2の位置(22)との間の距離よりも長く、前記中間部(23)の形状は、環状、ループ状のうちの少なくとも1つの形状を含むこと、を特徴とする藻場の造成装置(1)である。
【0016】
第5の開示は、第1の開示から第4の開示までのいずれかに記載の藻場の造成装置(1)において、
図1のように、前記固定対象物(50)に直接固定されるベース部材(10)を備え、前記第1の位置(21)及び前記第2の位置(22)は、前記ベース部材(10)を介して前記固定対象物(50)の表面に固定されること、を特徴とする藻場の造成装置(1)である。
【0017】
第6の開示は、第1の開示から第5の開示までのいずれかに記載の藻場の造成装置(1)において、
図2のように、前記固定対象物(50)は、袋型根固め工法用袋材であること、を特徴とする藻場の造成装置(1)である。
【0018】
第7の開示は、第1の開示から第6の開示までのいずれかに記載の藻場の造成装置(1)において、
図6(c)のように、前記中間部(23)には、水中において前記中間部(23)を浮遊させる浮力を有する浮き(30)が取り付けられていること、を特徴とする藻場の造成装置(1)である。
【0019】
第8の開示は、第1の開示から第7の開示までのいずれかに記載の藻場の造成装置(1)において、
図8のように、前記紐状体(20)は、複数本が交差して配置されており、交差する前記中間部(23)同士が接続されていること、を特徴とする藻場の造成装置(1)である。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、汚泥等の堆積を防止でき、かつ、様々な植物の配偶体や幼胞子体が固定対象物に活着しやすい状態を実現することができる藻場の造成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示による藻場の造成装置1の第1実施形態を示す図である。
【
図2】藻場の造成装置の使用状態を例示する図である。
【
図3】1つの中間部23付近を拡大して示す図である。
【
図4】複数の藻場の造成装置1を複数の方向に向けて配置する一例を示す図である。
【
図10】試験時の藻場の造成装置1を撮影した写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示を実施するための一形態について図面等を参照して説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本開示による藻場の造成装置1の第1実施形態を示す図である。
図2は、藻場の造成装置の使用状態を例示する図である。なお、
図1及び
図2を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張したり、省略したりして示している。また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
【0024】
藻場の造成装置1は、親紐10と、種紐20とを備えており、人工物又は自然物である固定対象物50の表面に設置されて藻場の造成に用いられる。本開示において「藻場」とは、藻類の群落等を包含する。本開示において「藻場の造成」とは、藻場の造成装置を設置した海域やその周辺における、藻場の形成、拡大、再生等を包含する。
【0025】
親紐(ベース部材)10は、例えば、後述する種紐20と同じ紐状の材料を用いることができる。また、親紐10には、種紐20とは異なる紐状の材料を用いてもよい。本実施形態では、この親紐10が固定対象物50に直接固定されるベース部材となる。
【0026】
種紐(紐状体)20は、植物の配偶体及び/又は幼胞子体が付着された紐状体である。該種紐20は、種苗に相当する。本開示においては、種紐20を所定の要件を満たすように配置することで、汚泥等の堆積を防止しつつ、かつ、様々な植物の配偶体や幼胞子体が固定対象物に活着しやすい状態を実現する。
【0027】
種紐20としては、ビニロンやポリエステル、又は、その両者を混紡するものを材料として使用するのが好適である。しかし、これに限られず、強度と、耐候性と、耐久性と、耐薬品性等に優れる水中での耐久性を保てる紐やロープ、縄等であればよい。例えば、種紐20としては、綿、麻、レーヨン、ポリ乳酸、セルロース、ポリアミド(ナイロン等)、ポリエステル、ポリビニルアルコール(ビニロン等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル(アクリル繊維)、スパンデックス(ポリウレタン弾性繊維)、ゴム(ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等)等により形成された紐、ロープ、縄等を用いることができる。また、種紐20としては、適度に水中で揺れるように水中に設置できるものならば、一定の幅を有する線条体、例えば、布状でも短冊状でよい。必要に応じて、生分解性の素材を適用することもできる。よって、本願の特許請求の範囲及び明細書において「紐」「紐状」には、一般的な概念における「紐」「紐状」に加えて、叙述したロープ、縄、細長い布、短冊状の形態も含む意味であるとする。また、種紐20の太さは概ね1mmから2.5mm程度のものが好適であるが、より太いものを使用してもよい。種紐20としては、水中において後述する中間部23の形状をある程度維持でき、かつ、水流でゆっくりと撓る可撓性程度の硬さ(曲げ剛性)を備えることが望ましい。したがって、種紐20は、植物の配偶体及び/又は幼胞子体が付着して、その後、活着できることだけでなく、材質と太さを充分に検討して選択する必要がある。本実施形態では、種紐20として、直径1.8mmのクレモナロープを用いた。クレモナロープは、主にビニロンを材質とするロープである。なお、直径は上記例に限らず、直径0.5mmから20mmの範囲のものを好適に用いることができる。
【0028】
種紐20に付着される植物の配偶体(雄性配偶体又は雌性配偶体)及び/又は幼胞子体としては、藻類の種苗に用いられる任意のものであり得る。配偶体及び/又は幼胞子体としては、1種又は2種以上の植物に由来するものを使用できる。
【0029】
配偶体及び/又は幼胞子体の由来である植物としては特に限定されないが、配偶体による繁殖を行う多細胞生物のうち、海産植物である海藻が好ましい。海藻は、褐藻類、紅藻類、緑藻類に分類され、これらのうち褐藻類が特に好ましい。
【0030】
褐藻類のうち、コンブ目コンブ科、コンブ目チガイソ科、コンブ目レッソニア科、ヒバマタ目ホンダワラ科は、大型海藻として沿岸域の海藻群落を形成する重要な種であるため、本開示における植物の配偶体及び/又は幼胞子体はこれらに由来することが好ましい。
より具体的には、本開示における植物の配偶体は以下に由来することが好ましい。
コンブ目コンブ科カラフトコンブ属のマコンブ(学名:Saccharina japonica)、リシリコンブ(学名:Saccharina japonica)、ホソメコンブ(学名: Saccharina japonica)、オニコンブ(学名:Saccharina japonica)、ミツイシコンブ(学名:Saccharina angustata)、ナガコンブ(学名:Saccharina longissima)、ガッガラコンブ(学名:Saccharina coriacea)、ネコアシコンブ(学名:Arthrothamnus bifidus)、ガゴメコンブ(学名:Saccharina sculpera)
コンブ目チガイソ科ワカメ属のワカメ(学名:Undaria pinnatifida)、ヒロメ(学名:Undaria undarioides)、アオワカメ(学名:Undaria peterseniana)
レッソニア科、カジメ属のカジメ(学名:Ecklonia cava)、クロメ(学名:Ecklonia kurome)、アラメ(学名:Eisenia bicyclis, syn. Ecklonia bicyclis)、ツルアラメ(学名:Ecklonia stolomifera)、ヒロメ (学名:Undaria undarioides)、サガラメ(学名:Eisenia nipponica)
また、配偶体を形成しないヒバマタ目のアカモク(学名:Sargassum horneri)やホンダワラ(学名:Sargassum fulvellum)、ヒジキ(学名:Sargassum fusiforme)等にも適用可能である。
【0031】
配偶体を単離する方法としては植物から配偶体を単離できる任意の方法を採用でき、特に限定されないが、藻類の配偶体を単離する場合、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、生殖器官(芽株、子嚢斑等)を切り出し、滅菌濾過海水等で洗浄した後、干出処理によって遊走子を滅菌濾過海水の容器に放出させる。次いで、遊走子が着底し配偶体を形成するまで培養する。培養後、実体顕微鏡による観察下、ピペット等で雌性配偶体又は雄性配偶体を1個体ずつ採取し、培養容器(マルチプレート等)等に収容して、雌性配偶体及び雄性配偶体を別々に培養することで、雌性配偶体及び雄性配偶体をそれぞれ得ることができる。
雌性配偶体及び雄性配偶体は、種紐に付着させる前に、必要に応じて、生殖能力を確認する試験や、配偶体の成熟を促進させる処理等を行ってもよい。
【0032】
幼胞子体としては、受精卵から発芽した胞子体(例えば、0.03mm~300mmの大きさであるもの)を使用できる。
【0033】
種紐に付着される配偶体及び/又は幼胞子体の比率等は特に限定されない。藻場造成の効率の観点からは、種紐には、少なくとも雄性配偶体及び雌性配偶体を付着させることが好ましく、雄性配偶体及び雌性配偶体を同等の割合で付着させることがより好ましい。かかる場合、雄性配偶体の群体数:雌性配偶体の群体数=1:1~1:2であることが好ましい。
【0034】
植物の配偶体及び/又は幼胞子体を種紐に付着させる方法は特に限定されず、種苗の作製方法として知られる任意の方法を採用できる。
例えば、付着させようとする所望量の配偶体及び/又は幼胞子体を含む溶媒と、種紐とを接触させる任意の方法が挙げられる。
このような接触の方法としては、種紐の一部又は全体を、配偶体及び/又は幼胞子体を含む溶媒に漬け込んで含侵させる方法、種紐の一部又は全体に、配偶体及び/又は幼胞子体を含む溶媒を塗布又は噴霧する方法等が挙げられる。
【0035】
配偶体及び/又は幼胞子体を入れる溶媒としては、配偶体及び/又は幼胞子体の生育等を妨げないものであれば特に限定されないが、好ましくは培地、滅菌濾過海水が挙げられる。
培地としては、PESI培地、市販の植物用液体肥料、市販の植物栄養剤等が挙げられる。
滅菌濾過海水としては、固形物質(例えば、粒径1μm以上)が取り除かれ、任意の方法で滅菌処理された海水が挙げられる。用いる海水は、人工海水であってもよく、天然海水であってもよい。
【0036】
溶媒中の配偶体及び/又は幼胞子体の量は特に限定されないが、種紐への付着量が多いほど、配偶体及び/又は幼胞子体が生きた状態で種紐に付着されやすく、本開示の効果を奏しやすくなる。
【0037】
配偶体及び/又は幼胞子体を含む溶媒と、種紐とを接触させる際の温度は特に限定されないが、通常、水温16~24℃である。
【0038】
配偶体及び/又は幼胞子体を含む溶媒と、種紐とを接触させる際の時間は特に限定されないが、種紐に充分に配偶体及び/又は幼胞子体を付着させる観点から、通常1~6時間、最大12時間程度である。
【0039】
種紐20は、第1の位置21と、第2の位置22と、中間部23とを有している。第1の位置21は、種紐20の一部に設けられており、固定対象物50の表面に固定される。第2の位置22は、第1の位置21とは異なる種紐20の一部であって第1の位置21から間隔を空けた位置に設けられており、固定対象物50の表面に固定される。ここで、固定対象物50の表面に固定とは、固定対象物50の表面に直接固定される形態の他、間接的に固定される構成も含むものとする。本実施形態では、第1の位置21及び第2の位置22は、いずれも親紐10に固定されており、親紐10が固定対象物50の表面に直接固定されることにより、第1の位置21及び第2の位置22は、間接的に固定対象物50の表面に固定される。すなわち、本実施形態では、第1の位置21及び第2の位置22は、親紐10を介して固定対象物50の表面に固定される。なお、親紐10を介する固定に加えて、又は、親紐10を介する固定に換えて、種紐20を第1の位置21と第2の位置22とにおいて固定対象物50の表面に直接固定してもよい。
【0040】
親紐10及び種紐20は、接着剤や固着器具を用いて固定対象物50に固定される。例えば、固定対象物50に親紐10及び種紐20を固定するには、水中で機能する接着剤、結束バンド、金属製線条体、ビニール製線条体等を用いることができる。また、固定対象物50が漁礁や離岸提のようにそれ自体が相応の大きさを有する重厚なコンクリート等の部材の場合には、一定距離毎に別体のロープ等の線材を巻き付けて、その別体のロープ等の線材に、親紐10及び種紐20を固定してもよい。いずれの固定方法であっても、藻場の造成装置1は、中間部23が固定対象物50から離間して、水中に突出する状態で固定対象物50固定される。本実施形態で中間部23を固定対象物50から離間させるために、例えば、種紐20の断面形状を、長方形、正方形、三角形、台形、楕円等としてもよい。また、本実施形態で中間部23を固定対象物50から離間させるためには、例えば、種紐20に熱を加えて熱変性させて所望の形状にしたり、種紐20を揺らぐ程度の剛性のある材料を使用したり、種紐20の基部又は立ち上げ部分に細い棒状の竹や木材を設置し、形状を保てるように構成したり、極細い針金等を種紐20に巻いて形状を加工したりしてもよい。また、後述する変形形態として
図6(c)に示したように浮きを中間部23に設けてもよい。
【0041】
図3は、1つの中間部23付近を拡大して示す図である。中間部23は、第1の位置21と第2の位置22との間に延在している。本実施形態では、第1の位置21と第2の位置22とは、固定対象物50の表面において離間している。また、中間部23の長さL20は、固定対象物50の表面に固定される第1の位置21と第2の位置22との間の長さL10よりも長くなっている。したがって、中間部23は、湾曲して山形(略U字形状)に形成されている。また、本実施形態では、この第1の位置21と第2の位置22と中間部23との組み合わせを1組として3組が並んで配置されている。3組の中間部23は、つながった1本の紐によって形成されている。
【0042】
また、中間部23は、第1の位置21から第2の位置22へ向かって種紐20(中間部23)に沿って位置が変化するにしたがい種紐20(中間部23)と固定対象物50の表面との離間距離が徐々に変化する箇所を含んで設置されている。
図3で説明すると、種紐20(中間部23)から親紐10までの距離は、第1の位置21に近い位置では図中のh1であるが、その位置から第2の位置22へ向かって位置が変化すると徐々に距離が長くなり、例えば、図中のh2となる。
図3を見て明らかなように、h1<h2である。さらにその位置から第2の位置22へ向かって位置が変化すると、第1の位置21と第2の位置22との中間位置付近で種紐20(中間部23)から親紐10までの距離が最大値のh3となる。その後は、先ほどとは逆に第2の位置22へ近づくにしたがって種紐20(中間部23)から親紐10までの距離は徐々に小さくなっていく。なお、
図3中には図を見やすくするために固定対象物50を図示していないが、親紐10が固定対象物50の表面に沿って取り付けられているので、この親紐10の位置を固定対象物50の表面位置とみなすことができる。
【0043】
中間部23が固定対象物50の表面から最も離間する距離h3は、藻場の造成装置1を水中に設置する際の作業効率と、藻類の定着しやすさを考慮すると、1cm以上、15cm以下が望ましい。また、上記距離h3は、6cm以上、10cm以下がさらに望ましい。本実施形態では、最も適切な距離であると考えられる距離h3=8cmと設定した。上記距離まで、固定対象物50の表面から中間部23を徐々に離間させて設置することにより、中間部23は、適度の変位量でゆっくりと水中で揺れることができる。よって、一旦海水中の細粒分(浮泥)がこの中間部23上に堆積したり付着したりしても、その後に、細粒分が中間部23から振り落とされることとなる。また、ウニ等の匍匐食害生物から守ることができる。また、中間部23に、水中で急激に変位する揺れが生じないので、その胞子体の根が中間部23に強く接着するまでには至っていない生長中の胞子体が、中間部23から剥離してしまうことも防止できる。なお、距離h3を15cmよりも大きくしてしまうと、藻体の根が固定対象物50に到達するまで伸長できていないうちに流失する可能性が高い。
【0044】
さらに、中間部23から固定対象物50の表面までの距離が様々であることから、育成中の藻類の付着基(根)が固定対象物50に活着するのに適切な距離となる部分が存在する可能性が非常に高い。藻類が生長すると、中間部23に付着している藻体は大きくなるほどさらに波の影響を受けるため、中間部23に活着している藻体の根が剥がれる可能性が高くなる。また、中間部23から固定対象物50の表面までの距離が大きくなるにしたがって、付着基(根)が固定対象物50に活着し難くなるだけでなく、波の影響を受けやすく、藻体の根が剥がれやすくなる傾向にある。藻類の種類及び個体差によって、付着基(根)が固定対象物50に活着するために適切な距離が異なるが、本実施形態の構成であれば、上記構成によって、適切な距離となる箇所が存在し得る。よって、最終的に藻類が固定対象物50に活着する可能性を大幅に高めることができる。中間部23に付着している藻体が生長するとともに根が伸長して固定対象物50まで達し、固定対象物50へ根が活着することができれば、藻体の流失を防ぐことができる。
【0045】
また、中間部23に付着している藻体は、30日~90日程度で生長し、根の伸長もみられる。その際、藻体自身の重量により中間部23が固定対象物50に近接することもあり、固定対象物50上に根を張り、生育を継続することができる。この段階になれば細粒分の堆積の影響はほとんどないため、生残率が向上する。これにより、藻場の再生を大幅に促進することが可能である。
【0046】
以上の機序が相まって、配偶体・幼胞子体の健全な生育が維持でき、藻類生長過程で固定対象物50への付着基(根)の活着がしやすくなる。このように、本実施形態の藻場の造成装置1は、藻体の根の固定対象物50への活着に適した状態を提供し、かつ、浮泥堆積を防止することができる。
【0047】
本実施形態では、固定対象物50は、玉石、割栗石等の中詰め材を充填した状態で水中に沈められた袋型根固め工法用袋材(フィルターユニット)とした。なお、本実施形態の藻場の造成装置1を適用可能な固定対象物50は、水中に存在して水流等によっては簡単に移動しない物体であればどのようなものでもよい。例えば、蛇カゴ・漁礁・離岸堤・桟橋・防波堤・海底に設置する藻場やサンゴの養殖する基体等が例示できるが、これらに限らず、その藻場を育成する必要がある場所に設けられる人工物や自然物等、適宜選択可能である。
【0048】
ここで、固定対象物50に対する主な水流の向きが不明である場合や、各種方向の水流が予想される場合には、複数の藻場の造成装置1を複数の方向に向けて配置するとよい。水流の向きによっては、中間部23が倒れやすい方向があり得るからである。
図4は、複数の藻場の造成装置1を複数の方向に向けて配置する一例を示す図である。
図4に示す例では、藻場の造成装置1の長手方向が放射状に配列されるように複数配列した。このような配列であれば、ランダムに配置するよりも簡単かつ確実に様座七方向に向けて複数の藻場の造成装置1を配置することができる。
【0049】
(変形形態)
図5から
図8は、藻場の造成装置の変形形態を示す図である。以下の説明では変形形態が第1実施形態と異なる部分を中心に説明を行い、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0050】
図5(a)に示すように、1本の種紐20を略D字状に形成して、中間部23の他に、第1の位置21と第2の位置22とを中間部23よりも短距離で結ぶ弦部24を設けて構成してもよい。この形態では、第1実施形態における親紐10は存在しない。この形態では、弦部24を固定対象物50に沿わせるように固定し、中間部23が固定対象物50から離間して、水中に突出する状態にする。この形態では、中間部23の形態を予め形成しておくことも可能である。また、この形態では、施工現場で種紐20を所定の長さに切断してその場で藻場の造成装置を作製することができる。この場合、切断した種紐20を用いて、中間部23の頂部を固定対象物50から先に示した好ましい距離離間させ、固定対象物50に弦部24を沿わせて、第1の位置21及び第2の位置22を固定対象物50に固定する。この形態で中間部23を固定対象物50から離間させるためには、例えば、種紐20に熱を加えて熱変性させて所望の形状にしたり、種紐20を揺らぐ程度の剛性のある材料を使用したり、種紐20の基部又は立ち上げ部分に細い棒状の竹や木材を設置し、形状を保てるように構成したり、極細い針金等を種紐20に巻いて形状を加工したりしてもよい。また、後述する変形形態として
図6(c)に示したように浮きを中間部23に設けてもよい。
【0051】
図5(b)に示すように、1本の種紐20を略U字状にして、Uの字の両端の先端それぞれを第1の位置21及び第2の位置22として固定対象物50に固定し、中間部23が固定対象物50から離間して、水中に突出する状態とする形態としてもよい。この形態では、第1実施形態における親紐10は存在しない。この形態では、施工現場で種紐20を所定の長さに切断してその場で藻場の造成装置を作製することができる。この場合、切断した種紐20を用いて、中間部23の頂部を固定対象物50から先に示した好ましい距離離間させ、第1の位置21及び第2の位置22を固定対象物50に固定する。また、水中での作業前に地上や船上等で予めU字状の中間部23を構成するように折癖や曲げ癖を付けておいてもよい。この形態で中間部23を固定対象物50から離間させるためには、例えば、種紐20に熱を加えて熱変性させて所望の形状にしたり、種紐20を揺らぐ程度の剛性のある材料を使用したり、種紐20の基部又は立ち上げ部分に細い棒状の竹や木材を設置し、形状を保てるように構成したり、極細い針金等を種紐20に巻いて形状を加工したりしてもよい。また、後述する変形形態として
図6(c)に示したように浮きを中間部23に設けてもよい。
【0052】
また、
図5(b)の形態をさらに発展させて
図5(c)に示すように、1本の種紐20を複数カ所で略U字状にして複数の中間部23を連続させ、Uの字の両端の先端それぞれを第1の位置21及び第2の位置22として固定対象物50に固定してもよい。この場合にも、中間部23が固定対象物50から離間して、水中に突出する形態とする。この形態では、第1実施形態における親紐10は存在しない。この形態では、施工現場で種紐20を所定の長さに切断してその場で藻場の造成装置を作製することができる。この場合、切断した種紐20を用いて、複数の中間部23の頂部を固定対象物50から先に示した好ましい距離離間させ、第1の位置21及び第2の位置22を固定対象物50に固定する。作業としては、一方の端部から順番に施工すれば、複数の中間部23を容易に作製可能である。また、水中での作業前に地上や船上等で予めU字状の複数の中間部23を構成するように折癖や曲げ癖を付けておいてもよい。この形態で中間部23を固定対象物50から離間させるためには、例えば、種紐20に熱を加えて熱変性させて所望の形状にしたり、種紐20を揺らぐ程度の剛性のある材料を使用したり、種紐20の基部又は立ち上げ部分に細い棒状の竹や木材を設置し、形状を保てるように構成したり、極細い針金等を種紐20に巻いて形状を加工したりしてもよい。また、後述する変形形態として
図6(c)に示したように浮きを中間部23に設けてもよい。
【0053】
図6(a)に示すように、第1実施形態と同様な形態において、中間部23の形状をU字状(半楕円状)に形成してもよい。また、
図6(b)に示すように、第1実施形態と同様な形態において、中間部23の形状を半円状に形成してもよい。
【0054】
また、
図6(c)に示すように、中間部23に浮き30を取り付けてもよい。この構成により、中間部23が固定対象物50との間で充分に離間した状態を維持できる。また、特にこの場合において、
図6(c)に示すように、中間部23は、略直線状に構成されるようにしてもよい。
【0055】
図7(a)は、変形形態を斜視図で示している。先に説明した実施形態及び変形形態では、第1の位置21と第2の位置22とは、離間して配置されている形態であった。しかし、
図7(a)に示すように、第1の位置21と第2の位置22とを隣接した位置、又は、同じ位置に配置してもよい。この場合、中間部23はループ状、又は、環状に構成される。この形態では、第1実施形態における親紐10は存在しない。この形態では、施工現場で種紐20を所定の長さに切断してその場で藻場の造成装置を作製することができる。この場合、切断した種紐20を用いて、中間部23の頂部を固定対象物50から先に示した好ましい距離離間させ、種紐の両端をそれぞれ第1の位置21及び第2の位置22とする。この第1の位置21及び第2の位置22を隣接した位置とするか、又は、同じ位置として固定対象物50に固定する。また、水中での作業前に地上や船上等で予めループ状、又は、環状の中間部23を構成するように折癖や曲げ癖を付けておいてもよい。この形態で中間部23を固定対象物50から離間させるためには、例えば、種紐20に熱を加えて熱変性させて所望の形状にしたり、種紐20を揺らぐ程度の剛性のある材料を使用したり、種紐20の基部又は立ち上げ部分に細い棒状の竹や木材を設置し、形状を保てるように構成したり、極細い針金等を種紐20に巻いて形状を加工したりしてもよい。また、後述する変形形態として
図6(c)に示したように浮きを中間部23に設けてもよい。
【0056】
また、中間部23はループ状、又は、環状にする形態では、
図7(b)に示すように1本の種紐20によって複数の中間部23を構成するようにしてもよい。また、ループ状、又は、環状に形成される中間部23の形状は、
図7(b)に示すような略円形状であってもよいし、
図7(c)に示すような略楕円形状であってもよい。
【0057】
図8(a)に示すように、2つの藻場の造成装置1-1、1-2を交差させて配置し、それぞれの種紐20-1、20-2の頂点付近に接続部25を設けて両者を接続してもよい。また、この場合において、
図8(b)に示すように、中間部23を形成する種紐20-1、20-2を直線状に形成してもよい。これら
図8(a)、
図8(b)に示した形態によれば、接続部25で種紐20-1と種紐20-2とが接続されているので、種紐20-1、20-2それぞれの中間部23が固定対象物50から離れた状態を維持しやすい。なお、
図8(a)、
図8(b)に示した形態では、親紐10-1、10-2を備える形態を例示したが、親紐10-1、10-2を省略してもよい。
【0058】
(試験検証)
先に示した
図5(a)の形態の藻場の造成装置1を実際に海中に設置して、藻類の育成状況を長期にわたって観察する試験を行った。種紐20には、カジメ0.1-0.3mmの胞子体が予め付着されている。これを固定対象物50として海中に沈められた袋型根固め工法用袋材に弦部24を固定して中間部23の頂点を固定対象物50から8cm話して設置した。弦部24にも胞子体は付着していることからこの弦部24は、中間部23を固定対象物50から離間させて配置することの効果を検証するための比較部として捉えることができる。中間部23と弦部24とのそれぞれについて、設置後30日、60日、90日で胞子体の生存率と平均藻長とを確認した。
【0059】
図9は、試験結果をまとめた図である。
図9(a)は、実験データをまとめた表であり、
図9(b)は、胞子体の生存率をまとめたグラフであり、
図9(c)は、平均藻体長をまとめたグラフである。
図10は、試験時の藻場の造成装置1を撮影した写真を示す図である。
図10(a)は、試験開始日(0日目)を示し、
図10(b)は、試験開後30日目を示し、
図10(c)は、試験開始後60日目を示し、
図10(b)は、試験開始後90日目を示している。
【0060】
試験開始後30日目には、比較部(弦部24)には藻体が確認できなかったが、中間部23の藻体は平均藻長32mまで藻体が生長しており、最大40mmまで生長していた(
図10(b))。また、試験開始後60日目には、中間部23の藻体は平均藻長105mまで藻体が生長しており、最大200mmまで生長していた(
図10(c))。また、この試験開始後60日目では、試験開始後30日目を基準とした胞子体の生存率は、90%であった。さらに、試験開始後90日目には、中間部23の藻体は平均藻長165mまで藻体が生長していた(
図10(c))。また、この試験開始後90日目では、試験開始後30日目を基準とした胞子体の生存率は、80%であった。
【0061】
以上説明したように、本実施形態の藻場の造成装置1では、固定対象物50から中間部23が離間する距離として1cm以上、15cm以下の箇所を少なくとも一部に有する。これにより、中間部23は、適度の変位量でゆっくりと水中で揺れることができ、藻類を浮泥の堆積やウニ等の匍匐食害生物から守ることができる。また、中間部23から固定対象物50の表面までの距離が様々であることから、育成中の藻類の付着基(根)が固定対象物50に活着するのに適切な距離となる部分が存在する可能性が高く、藻類の根が固定対象物50へ活着する確率を高めることができる。
【0062】
なお、上述した実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本開示は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0063】
1 藻場の造成装置
10 親紐
20 種紐
21 第1の位置
22 第2の位置
23 中間部
24 弦部
25 接続部
30 浮き
50 固定対象物