(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055428
(43)【公開日】2024-04-18
(54)【発明の名称】アルミニウム合金及びアルミニウム合金製部材並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 21/10 20060101AFI20240411BHJP
C22F 1/053 20060101ALI20240411BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20240411BHJP
【FI】
C22C21/10
C22F1/053
C22F1/00 603
C22F1/00 612
C22F1/00 626
C22F1/00 630A
C22F1/00 630K
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 686B
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 692A
C22F1/00 694A
C22F1/00 694Z
C22F1/00 602
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162353
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】502444733
【氏名又は名称】日軽金アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】谷津倉 政仁
(72)【発明者】
【氏名】宮浦 完聡
(72)【発明者】
【氏名】岡畠 勇斗
(57)【要約】
【課題】適当な熱処理によってアルミニウム合金製部材に良好な塑性加工性及び高い耐力等を選択的に付与できるアルミニウム合金、及び当該アルミニウム合金からなるアルミニウム合金製部材、並びに当該アルミニウム合金製部材の簡便かつ効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】Cu:1.0~1.9wt%、Mg:1.2~1.8wt%、Zn:5.0~7.0wt%、Zr:0.05~0.25wt%、Ti:0.01~0.10wt%、を含有し、残部がAlと不可避不純物からなること、を特徴とするアルミニウム合金。Mgの含有量は1.3~1.7wt%であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu:1.0~1.9wt%、
Mg:1.2~1.8wt%、
Zn:5.0~7.0wt%、
Zr:0.05~0.25wt%、
Ti:0.01~0.10wt%、を含有し、
残部がAlと不可避不純物からなること、
を特徴とするアルミニウム合金。
【請求項2】
前記Mgの含有量が1.3~1.7wt%であること、
を特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金。
【請求項3】
前記Zrの含有量が0.12~0.20wt%であること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム合金。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のアルミニウム合金からなる押出材又は冷間加工材であり、
引張強さが500MPa以上、0.2%耐力値が470MPa以上、かつ、伸びが12%以上であること、
を特徴とするアルミニウム合金製部材。
【請求項5】
最表面に形成される再結晶組織を含む領域の厚さが500μm以下であること、
を特徴とする請求項4に記載のアルミニウム合金製部材。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のアルミニウム合金からなる焼鈍材であり、
0.2%耐力値が110MPa以下であり、
全面が繊維状組織であること、
を特徴とするアルミニウム合金製部材。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のアルミニウム合金からなるビレットに押出加工を施して、アルミニウム合金製押出材を得る押出工程と、
溶体化処理工程と、
時効工程と、を有し、
前記時効工程において2段階時効処理を施し、前記2段時効処理における1段目を100~110℃で4~10時間、2段目を150~170℃で2~10時間とすること、
を特徴とするアルミニウム合金製部材の製造方法。
【請求項8】
前記アルミニウム合金製押出材をアルミニウム合金製中空押出材とし、
前記アルミニウム合金製中空押出材に焼鈍処理を施す焼鈍工程と、
前記焼鈍工程後の前記アルミニウム合金製中空押出材に冷間加工を施す冷間加工工程と、を有すること、
を特徴とする請求項7に記載のアルミニウム合金製部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルミニウム合金製部材及びその効率的な製造方法並びにアルミニウム合金製部材に好適に使用できるアルミニウム合金に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金製部材には多様な用途が存在し、例えば、アルミニウム合金製中空押出材は各種のアルミニウム合金製配管や構造部材等として利用されている。アルミニウム合金製中空押出材は軽量であることに加えて、優れた強度、信頼性及び耐食性等を有していることから、例えば、自動車用エアコン、オイルクーラ、ラジエータ、ヒーターなどの熱交換器の配管や、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置の感光ドラム等として用いられている。
【0003】
しかしながら、近年では所望のアルミニウム合金製中空押出材の形状が複雑化していることに加え、より高い強度や信頼性が求められるようになっている。これに対し、例えば、特許文献1(特開2020-180353号公報)においては、「熱交換器用のアルミニウム合金製配管材であって、Mg:0.7質量%以上2.5質量%未満、及びTi:0質量%を超え0.15質量%以下を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるAl-Mg系合金からなる配管材本体部と、前記配管材本体部の外側表面に配され、前記Al-Mg系合金中に0.1質量%以上のZnが拡散しているZn含有層と、を備える、アルミニウム合金製配管材」が開示されている。
【0004】
上記特許文献1に記載のアルミニウム合金製配管材においては、「合金成分を調節して押出したアルミニウム合金製配管材に、特定の範囲のZn付着量を有するZn溶射を施し、その後拡散熱処理を施すことにより、外側表面に強度の高いZn含有層を配して強度向上を達成することができる」とされている。
【0005】
また、特許文献2(特開2020-143339号公報)においては、「Si:0.060~0.080質量%、Fe:0.10~0.70質量%、Cu:0.050~0.20質量%、Mn:1.0~1.5質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有することを特徴とするアルミニウム合金」が開示されている。
【0006】
上記特許文献2に記載のアルミニウム合金においては、「アルミニウム合金の組成を構成する各元素の含有量が所定の範囲内に設定されることにより、例えば、当該アルミニウム合金製ビレットを押出加工すると得られる押出材の表面を高平滑面に形成することができる。また、Mgを管理対象にしていないため製造コストを抑えることができる。さらに、Si量が0.060~0.080質量%であるため、高純度地金を使う必要はないことから製造コストを抑えることができる。」とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-180353号公報
【特許文献2】特開2020-143339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載のアルミニウム合金製配管材はZnの拡散によって表面の強度を高めるものであり、アルミニウム合金製配管材全体の強度及び信頼性が十分に担保されるものではない。また、アルミニウム合金製配管材の肉厚変化等、複雑形状の付与については全く考慮されていない。
【0009】
また、上記特許文献2に記載のアルミニウム合金は、得られる押出材の表面を高平滑面に形成することができるが、析出強化等に寄与する元素に乏しく、当該押出材に高い強度や耐力を付与することができない。また、得られる押出材に冷間加工等によって形状を付与する場合において、当該押出材の塑性加工性については考慮されていない。
【0010】
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、適当な熱処理によってアルミニウム合金製部材に良好な塑性加工性及び高い耐力等を選択的に付与できるアルミニウム合金、及び当該アルミニウム合金からなるアルミニウム合金製部材、並びに当該アルミニウム合金製部材の簡便かつ効率的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、アルミニウム合金及びアルミニウム合金製部材並びにその製造方法について鋭意研究を重ねた結果、アルミニウム合金製部材の高強度化に寄与する適量のCu、Mg及びZnを添加する一方で、良好な塑性加工性を発現させる観点から、Mgの含有量を可能な限り低い値とすること等が極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。ここで、Cu、Mg及びZnの含有量は、所望の作用効果を得るために、極めて狭い範囲で規定されている。
【0012】
即ち、本発明は、
Cu:1.0~1.9wt%、
Mg:1.2~1.8wt%、
Zn:5.0~7.0wt%、
Zr:0.05~0.25wt%、
Ti:0.01~0.10wt%、を含有し、
残部がAlと不可避不純物からなること、
を特徴とするアルミニウム合金を提供する。
【0013】
本発明のアルミニウム合金は、析出強化に寄与するCu、Mg及びZnを含有している一方で、Mgの含有量が低い値に制御されている。一般的に、アルミニウム合金へのMgの添加はMgCuAlやMgZn2のような析出物による高強度化を目的としており、当該効果を発現させるために可能な限り多く添加する傾向がある。また、Al-Mg系のアルミニウム合金ではMgの添加によって加工硬化性が高まることから、良好な成形性を付与するという観点では、冷間加工ではMgを添加することによる悪影響は大きくない。これに対し、本発明のアルミニウム合金では、最終的に得られるアルミニウム合金製部材に優れた衝撃吸収性を付与することを目的として、Mg含有量の上限を1.8wt%に規制し、延性の低下を抑制している。
【0014】
また、本発明のアルミニウム合金はZrを必須の添加元素としており、Zrは化合物のピン止め効果により再結晶組織化を抑制する効果を有し、加工組織である繊維状組織を安定化することができる。その結果、アルミニウム合金製部材に高い耐力や塑性加工性を付与することができる。
【0015】
更に、本発明のアルミニウム合金はTiも必須の添加元素としており、Tiの添加により鋳造組織を微細化することができる。その結果、アルミニウム合金製部材により確実に高い耐力や塑性加工性を付与することができる。
【0016】
本発明のアルミニウム合金においては、前記Mgの含有量が1.3~1.7wt%であること、が好ましい。Mgの含有量を1.3~1.7wt%とすることで、アルミニウム合金製部材の耐力と塑性加工性をより高いレベルで両立させることができる。
【0017】
また、本発明のアルミニウム合金においては、前記Zrの含有量が0.12~0.20wt%であること、が好ましい。Zrの含有量を0.12~0.20wt%とすることで、再結晶組織化を抑制する効果をより確実に発現させ、加工組織である繊維状組織を安定化することができると共に、化合物の粗大化に伴う延性の低下を抑制することができる。
【0018】
また、本発明は、本発明のアルミニウム合金からなる押出材又は冷間加工材であり、引張強さが500MPa以上、0.2%耐力値が470MPa以上、かつ、伸びが12%以上であること、を特徴とするアルミニウム合金製部材、も提供する。
【0019】
本発明のアルミニウム合金製部材は、適量のCu、Mg及びZnを含有するアルミニウム合金からなることから、適当な条件で溶体化処理及び人工時効処理を施すことにより、引張強さが500MPa以上、0.2%耐力値が470MPa以上、かつ、伸びが12%以上となる引張特性を付与することができる。
【0020】
本発明のアルミニウム合金製部材(本発明のアルミニウム合金からなる押出材又は冷間加工材)においては、最表面に形成される再結晶組織を含む領域の厚さが500μm以下であること、が好ましい。再結晶組織を含む領域の厚さを500μm以下とすることで、冷間加工性の低下を抑制することができる。
【0021】
また、本発明は、本発明のアルミニウム合金からなる焼鈍材であり、0.2%耐力値が110MPa以下であり、全面が繊維状組織であること、を特徴とするアルミニウム合金製部材、も提供する。適当な条件で焼鈍処理を施すことによって、繊維状組織を維持しつつ、アルミニウム合金製部材の0.2%耐力値を110MPa以下とすることができる。ここで、アルミニウム合金製部材の伸びは22%以上であることが好ましい。アルミニウム合金製部材の伸びを22%以上とすることで、より確実に良好な塑性加工性を発現させることができる。
【0022】
本発明のアルミニウム合金製部材(本発明のアルミニウム合金からなる焼鈍材)においては、0.2%耐力値が110MPa以下であり、再結晶組織が形成されていないことで、例えば、断面減少率(肉厚減少率)が大きくなる冷間加工を施すことができる。
【0023】
更に、本発明は、
本発明のアルミニウム合金からなるビレットに押出加工を施して、アルミニウム合金製押出材を得る押出工程と、
溶体化処理工程と、
時効工程と、を有し、
前記時効工程において2段階時効処理を施し、前記2段時効処理における1段目を100~110℃で4~10時間、2段目を150~170℃で2~10時間とすること、
を特徴とするアルミニウム合金製部材の製造方法、も提供する。
【0024】
押出加工におけるビレットの温度や押出速度は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、押出装置の性能等に応じて適宜決定すればよいが、ビレットの温度を350~450℃とし、押出速度を10m/min以下とすること、が好ましい。これらの条件で押出加工を施すことで、押出加工後のアルミニウム合金製部材の全体に繊維状組織を形成することができる。
【0025】
また、時効処理を2段時効とし、1段目の処理条件を100~110℃で4~10時間、2段目の処理条件を150~170℃で2~10時間とすることにより、強度と延性を高いレベルで両立させることができる。
【0026】
溶体化処理の温度は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、アルミニウム合金製押出材の組成や所望の機械的性質に応じて適宜決定すればよいが、430℃以上とすることが好ましい。430℃以上での溶体化処理の後に2段時効処理を施すことで、アルミニウム合金製中空押出材に引張強さが500MPa以上、0.2%耐力値が470MPa以上、かつ、伸びが12%以上となる引張特性を確実に付与することができる。また、溶体化処理の温度は470℃未満とすることが好ましい。470℃以上の加熱は析出強化に寄与せず、組織強化を損ねる虞がある。
【0027】
本発明のアルミニウム合金製部材の製造方法においては、
前記アルミニウム合金製押出材をアルミニウム合金製中空押出材とし、
前記アルミニウム合金製中空押出材に焼鈍処理を施す焼鈍工程と、
前記焼鈍工程後の前記アルミニウム合金製中空押出材に冷間加工を施す冷間加工工程と、を有すること、が好ましい。
【0028】
本発明のアルミニウム合金は、焼鈍処理(O処理)によって良好な塑性加工性が発現するように組成が最適化されており、アルミニウム合金製押出材に対して焼鈍処理を施すことによって、その後の各種冷間加工によって大きな断面減少率を実現することができる。
【0029】
焼鈍条件はアルミニウム合金製押出材の組成や組織に応じて適宜調整すればよいが、例えば、410℃で2時間保持した後、25℃/時間以下の冷却速度で240℃まで炉冷すればよい。また、当該熱処理の後に、250℃前後で4時間程度の熱処理を加えることが好ましい。
【0030】
また、アルミニウム合金製押出材をアルミニウム合金製中空押出材とし、焼鈍工程後のアルミニウム合金製中空押出材に冷間加工を施すことで、種々の複雑な断面形状を有するアルミニウム合金製部材を製造することができる。
【0031】
また、本発明のアルミニウム合金製部材の製造方法においては、前記冷間加工工程において、引抜加工を施すこと、が好ましい。引抜加工を施すことによって、アルミニウム合金製部材に高い寸法精度を付与することができる。加えて、アルミニウム合金製部材の肉厚を適当に制御することで、必要な箇所に所望の衝撃吸収性を付与することができる。更に、表面状態を制御することができ、表面処理による光輝性を得ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、適当な熱処理によってアルミニウム合金製部材に良好な塑性加工性や高い耐力等を選択的に付与できるアルミニウム合金、及び当該アルミニウム合金からなるアルミニウム合金製部材、並びに当該アルミニウム合金製部材の簡便かつ効率的な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】焼鈍処理を施したアルミニウム合金製中空押出材のLT断面模式図である。
【
図2】冷間加工後に溶体化処理と時効処理を施したアルミニウム合金製中空押出材のLT断面模式図である。
【
図3】本発明のアルミニウム合金製部材の製造方法に関する工程図の一例である。
【
図4】実施例13として得られたアルミニウム合金押出材のL断面の組織写真である(焼鈍後)。
【
図5】実施例13におけるLT断面の組織写真である(冷間加工+T6熱処理後)。
【
図6】実施例16におけるLT断面の組織写真である(冷間加工+T6熱処理後)。
【
図7】実施例13におけるL断面の組織写真である(冷間加工+T6熱処理後)。
【
図8】実施例16におけるL断面の組織写真である(冷間加工+T6熱処理後)。
【
図9】実施例13におけるL断面の組織写真である(冷間加工+T6熱処理後,断面減少率大)。
【
図10】実施例13におけるL断面の組織写真である(押出T6熱処理後)。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本発明のアルミニウム合金及びアルミニウム合金製部材並びにその製造方法についての代表的な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、表された各構成要素の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
【0035】
1.アルミニウム合金
本発明のアルミニウム合金は、Cu:1.0~1.9wt%、Mg:1.2~1.8wt%、Zn:5.0~7.0wt%、Zr:0.05~0.25wt%、Ti:0.01~0.10wt%、を含有し、残部がAlと不可避不純物からなること、を特徴としている。以下、各成分元素についてそれぞれ説明する。
【0036】
(1)必須の添加元素
Cu:1.0~1.9wt%(好ましくは、1.4~1.8wt%)
Cuは固溶強化により強度を向上させる効果を有すると共に、時効処理を施すとAl-Cu系化合物として析出し、機械的強度を向上させる。含有量を1.0wt%以上とすることで固溶強化及び析出強化を十分に発現させることができ、1.9wt%以下とすることでAl-Cu系化合物の粗大化に起因する延性の低下を抑制することができる。また、Cuの含有量を1.4~1.8wt%とすることにより、これらの効果をより顕著に発現させることができる。Cuの含有量を更に増加させて1.9wt%超とすると強度や耐力は増加するが、アルミニウム合金製部材に良好な塑性加工性を付与することができない。
【0037】
Mg:1.2~1.8wt%(好ましくは、1.3~1.7wt%)
Mgは固溶強化により強度を向上させる効果を有すると共に、時効処理を施すとAl-Zn-Mg系化合物として析出し、機械的強度を向上させる。含有量を1.2wt%以上とすることで固溶強化及び析出強化を十分に発現させることができる。また、1.8wt%以下とすることでZn-Mg系化合物の粗大化に起因する延性の低下を抑制することができ、アルミニウム合金製部材の耐力と延性を両立することができることに加え、耐食性を高めることもできる。更に、Mg含有量の上限を1.8wt%に規制し、延性の低下を抑制することで、最終的に得られるアルミニウム合金製部材に優れた衝撃吸収性を付与することができる。
【0038】
Zn:5.0~7.0wt%(好ましくは、5.5~6.5wt%)
Znは時効処理を行うと、Zn-Mg系、Al-Zn―Mg-Cu系化合物として析出し、アルミニウム合金の機械的強度が向上する。含有量を5.0wt%以上とすることで当該析出強化を発現させることができ、7.0wt%以下とすることで化合物の粗大化に起因する延性の低下を抑制することができる。Znの含有量を5.5~6.5wt%とすることにより、これらの効果をより顕著に発現させることができる。Znの含有量を更に増加させて7.0wt%超とすると強度や耐力は増加するが、アルミニウム合金製部材に良好な塑性加工性を付与することができない。
【0039】
Zr:0.05~0.25wt%(好ましくは、0.12~0.20wt%)
Zrは化合物のピン止め効果により再結晶組織化を抑制する効果を有し、加工組織である繊維状組織を安定化することができる。含有量を0.05wt%以上とすることで当該効果を十分に発現することができ、0.25wt%以下とすることで化合物の粗大化に伴う延性の低下を抑制することができる。また、Zrの含有量を0.12~0.20wt%とすることにより、これらの効果をより顕著に発現させることができる。
【0040】
Ti:0.01~0.10wt%
Tiの添加により鋳造組織を微細化することができる。当該微細化効果はTiの含有量を0.01wt%以上とすることで十分に発現させることができ、0.10wt%以下とすることで粗大化合物の形成に起因する延性の低下を抑制することができる。なお、鋳造組織の微細化効果を得るためには、鋳造直前にTiを合金溶湯中に添加することが好ましい。
【0041】
(2)任意の添加元素
Cr:0.30wt%以下
Crは化合物のピン止め効果により再結晶組織化を抑制する効果を有し、加工組織である繊維状組織を安定化することができる。Crの含有量を0.30wt%以下とすることで、化合物の粗大化に伴う延性の低下を抑制することができる。
【0042】
Mn:0.40wt%以下
Mnは化合物のピン止め効果により再結晶組織化を抑制する効果を有し、加工組織である繊維状組織を安定化することができる。Mnの含有量を0.40wt%以下とすることで、化合物の粗大化に伴う延性の低下を抑制することができる。
【0043】
Be:0.001~0.1質量%
Beは酸化によるMgの減耗を防止するために有効であり、任意の添加元素として使用することが可能である。Beを添加する場合、0.001質量%未満ではMgの減耗防止効果が十分でなく、また、0.1質量%を超えて添加しても、既に十分にMgの減耗防止効果は得られているので、コストの上昇要因となる。
【0044】
(3)不可避不純物
本発明の効果を損なわない限りにおいて、不可避不純物を含有することは許容される。例えば、0.20wt%以下のSiや0.25wt%以下のFeを含有することができる。ここで、Si及びFeの含有量は0.10wt%以下とすることが好ましい。
【0045】
2.アルミニウム合金製部材
以下、アルミニウム合金製部材に関して、アルミニウム合金製中空押出材を代表として詳細に説明する。
【0046】
本発明のアルミニウム合金製中空押出材は、本発明のアルミニウム合金からなり、熱処理によって高い強度及び耐力(引張強さが500MPa以上、0.2%耐力値が470MPa以上、かつ、伸びが12%以上)や低い耐力及び良好な延性(0.2%耐力値が110MPa以下、伸びが22%以上)を選択的に発現させることができる。
【0047】
アルミニウム合金製中空押出材に高い強度及び耐力を付与する場合、当該アルミニウム合金製中空押出材に溶体化処理及び時効処理を施し、引張強さを530MPa以上とすることが好ましく、560MPa以上とすることがより好ましい。また、0.2%耐力値は490MPa以上とすることが好ましく、510MPa以上とすることがより好ましい。加えて、伸びは16%以上とすることが好ましく、17%以上とすることがより好ましい。
【0048】
アルミニウム合金製中空押出材に低い耐力及び良好な延性を付与する場合、当該アルミニウム合金製中空押出材を焼鈍材とし、0.2%耐力値を100MPa以下とすることが好ましく、90MPa以下とすることがより好ましい。加えて、伸びは23%以上とすることが好ましく、24%以上とすることがより好ましい。
【0049】
焼鈍処理を施したアルミニウム合金製中空押出材のLT断面模式図を
図1に示す。焼鈍処理後のアルミニウム合金製中空押出材1は全面が繊維状組織となっており、低い耐力と良好な延性が実現されている。ここで、「全面が繊維状組織」とは、極最表面に再結晶組織が形成している状態は許容され、具体的には、最表面に形成される再結晶組織を含む領域の厚さが100μm以下になっていればよい。ここで、アルミニウム合金製中空押出材の組織観察手法は特に限定されないが、押出方向(L方向)に平行な断面(L断面)や、L方向に直交する断面(LT断面)に対して組織観察を行えばよい。
【0050】
冷間加工の後、溶体化処理と時効処理を施したアルミニウム合金製中空押出材のLT断面模式図を
図2に示す。冷間加工後に溶体化処理と時効処理を施したアルミニウム合金製中空押出材2においては、最表面に再結晶組織を含む領域4が形成されている。ここで、再結晶組織を含む領域4の厚さは500μm以下となっている。再結晶組織を含む領域4の厚さは400μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。アルミニウム合金製中空押出材の場合、再結晶組織を含む領域4は外周最表面と内周最表面(図示せず)に形成されるが、再結晶組織を含む領域4の厚さはこれらの最大値で規制する。
【0051】
アルミニウム合金製中空押出材1及びアルミニウム合金製中空押出材2の長さ、外径及び内径は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよい。
【0052】
3.アルミニウム合金製部材の製造方法
以下、本発明のアルミニウム合金製部材の製造方法に関して、アルミニウム合金製中空押出材を製造する場合を代表として、詳細に説明する。
【0053】
本発明のアルミニウム合金製部材の製造方法に関する工程図の一例を
図3に示す。
図3の工程図は、アルミニウム合金からなるビレットを均質化する均質化熱処理工程(S01)と、ビレットに押出加工を施して、アルミニウム合金製中空押出材を得る押出工程(S02)と、アルミニウム合金製中空押出材に焼鈍処理を施す焼鈍工程(S03)と、アルミニウム合金製中空押出材に冷間加工を施す冷間加工工程(S04)と、溶体化処理を施す溶体化処理工程(S05)と、2段時効処理を施す時効工程(S06)とから構成されている。以下、各工程について説明する。
【0054】
(1)均質化熱処理工程(S01)
押出工程(S02)の前処理として、押出加工を施すアルミニウム合金材に対して均質化熱処理を施すことが好ましい。また、均質化熱処理工程の温度は460~480℃、保持時間は1~12時間とすることが好ましい。
【0055】
460~480℃で1~12時間の均質化熱処理を施すことによって、アルミニウム母材に分散するAl3Zrの粒子サイズと粒子間隔を適当な状態とすることができ、アルミニウム合金からなるビレットに良好な押出加工性と強度を付与することができる。
【0056】
(2)押出工程(S02)
(1)で得られたアルミニウム合金製ビレットに対して押出加工を施すことで、アルミニウム合金製中空押出材を得ることができる。ここで、ビレット温度は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、ビレット形状及び押出形状等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、ビレットを350~450℃に加熱して押出加工を施すことが好ましい。加熱温度を350℃以上とすることで加工歪の回復を促進することができ、再結晶組織層の形成を防ぐことができる。また、加熱温度を450℃以下とすることで、表面性状の悪化を抑制することができる。
【0057】
ここで、ダイスから出てきた直後の押出材を強制冷却することで再結晶組織化抑制が期待できるため、空気、窒素を用いて冷却速度1℃/s以上で冷却することが好ましい。
【0058】
また、押出比が大きいと加工ひずみが大きくなり、溶体化処理の際に、再結晶組織化が進行しやすくなることから、押出比は100以下とすることが好ましい。より好ましい押出比は75以下であり、最も好ましい押出比は60以下である。また、押出速度は再結晶組織の抑制及び生産効率等の観点から適宜調整すればよいが、押出速度は10m/min以下とすることが好ましい。当該条件で押出加工を施すことで、押出加工後のアルミニウム合金製中空押出材の全体における再結晶組織の形成を抑制することができる。
【0059】
(3)焼鈍工程(S03)
焼鈍工程(S03)は、アルミニウム合金製中空押出材に良好な塑性加工性を付与し、冷間加工工程(S05)において大きな断面減少率を可能とするための工程である。
【0060】
焼鈍条件はアルミニウム合金製押出材の組成や組織に応じて適宜調整すればよいが、380~420℃とすることが好ましい。380~420℃における保持時間は長時間とする必要はなく、1時間保持することで十分にその効果を得ることができる。また、当該熱処理の後に、250℃前後で4時間程度の熱処理を加えることが好ましい。これらの条件で焼鈍処理を施すことで、アルミニウム合金製中空押出材の繊維状組織を維持しつつ、焼鈍処理直後のアルミニウム合金製中空押出材の0.2%耐力値を110MPa以下、伸びを22%以上とすることができる。
【0061】
(4)冷間加工工程(S04)
冷間加工工程(S04)は、アルミニウム合金製中空押出材に冷間加工を施すことで、所望の形状を付与するための工程である。
【0062】
例えば、冷間加工工程(S04)において、アルミニウム合金製中空押出材の肉厚を調整することで、アルミニウム合金製中空押出材1が複雑な形状を有している場合であっても、これに対応することができる。
【0063】
冷間加工の種類は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の冷間加工を用いることができる。当該冷間加工としては、例えば、引抜加工や絞り加工等を用いることができる。
【0064】
(5)溶体化処理工程(S05)
所望の形状を有するアルミニウム合金製中空押出材に適当な条件で溶体化処理を施すことで、次の時効工程(S06)においてアルミニウム合金製中空押出材に良好な引張特性を付与することができる。
【0065】
溶体化処理の温度は430℃以上とすることが好ましく、450℃以上とすることがより好ましく、460℃以上とすることが最も好ましい。また、これらの温度に保持する時間は特に限定されず、所定の温度に到達していればよい。更に、当該温度に保持後の冷却には、水冷を用いることが好ましい。また、溶体化処理の温度は470℃未満とすることが好ましい。470℃以上の加熱は析出強化に寄与せず、組織強化を損ねる虞がある。
【0066】
(6)時効工程(S06)
時効工程(S06)は、溶体化処理後のアルミニウム合金製中空押出材に時効処理を施し、最終的に得られるアルミニウム合金製部材に良好な引張特性(引張強さが500MPa以上、0.2%耐力値が470MPa以上、かつ、伸びが12%以上)を付与ための工程である。
【0067】
時効処理を2段時効とし、1段目の処理条件を100~110℃で4~10時間、2段目の処理条件を150~170℃で2~10時間とすることにより、強度と延性を高いレベルで両立させることができる。
【0068】
強化相である化合物の析出分布は前駆構造のGPゾーンの影響を大きく受ける。アルミニウム合金製部材ではGPゾーンを成長させることで、析出物を微細高密度に分散させることができる。1段目の時効処理で高強度を得て、2段目の時効処理で析出組織をさらに制御し、強度または延性に寄与させる。
【0069】
2段目の保持温度を150℃以上として析出物を十分に成長させることで、良好な強度、延性及び耐食性を得ることができる。また、170℃以下とすることで、析出相の過剰な成長を抑制し、強度低下を抑制することができる。
【0070】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それら設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0071】
≪実施例≫
表1に記載の組成(wt%)を有するアルミニウム合金(実施例1~実施例16)の溶湯に対して脱ガス処理及び濾過処理を行った後、DC連続鋳造によってビレットを得た。なお、Si及びFeは不可避不純物として混入したものである。次に、当該ビレットに対して均質化熱処理(S01)を施した後、押出加工(S02)を施すことで、アルミニウム合金製押出材を得た。均質化熱処理条件及び押出形状は表2に記載のとおりであり、押出加工条件はビレット温度を380~430℃、押出速度を5m/min以下とした。
【0072】
次に、実施例1~実施例12の場合において、得られたアルミニウム合金製押出材に対して溶体化処理(S05)及び時効処理(S06)を施し、アルミニウム合金製押出材に高い引張特性を付与して本発明の実施アルミニウム合金製部材を得た。各熱処理には表2に示す各条件を用いた。また、溶体化処理における冷却には水冷を用いた。
【0073】
実施例13~実施例16の場合においては、得られたアルミニウム合金製押出材に対して焼鈍処理(S03)を施し、良好な塑性加工性を付与して本発明の実施アルミニウム合金製部材(焼鈍材)を得た。次に、表2に示す断面減少率となる冷間加工(S04)を施した後、アルミニウム合金製押出材に溶体化処理(S05)及び時効処理(S06)を施し、アルミニウム合金製押出材に高い引張特性を付与して本発明の実施アルミニウム合金製部材を得た。各熱処理には表2に示す各条件を用いた。焼鈍処理においては、処理温度から240℃までを25℃/時間以下の冷却速度で炉冷した。また、溶体化処理における冷却には水冷を用いた。
【0074】
【0075】
【0076】
≪比較例≫
表1に記載の組成(wt%)を有するアルミニウム合金(比較例1~比較例3)について、実施例の場合と同様にしてアルミニウム合金製押出材を得た。全ての比較例について焼鈍処理を施し、比較例2及び比較例3については冷間加工を施した。適用した各処理条件は表2に示すとおりである。
【0077】
[評価]
(1)引張試験
焼鈍処理後のアルミニウム合金製押出材より、当該アルミニウム合金製押出材の長手方向の引張試験片(JISZ2201の14B試験片)を採取し、JISZ2241の引張試験法に従って引張特性を評価した。得られた結果を表3に示す。なお、試験繰り返し数は3本とし、平均値を計算した。
【0078】
また、時効処理後のアルミニウム合金製押出材についても、焼鈍処理後のアルミニウム合金製押出材と同様にして引張特性を評価した。得られた結果を表3に示す。
【0079】
(2)組織観察
焼鈍処理後のアルミニウム合金製押出材より組織観察用の試料を採取し、LT面を研磨した後、バーカー試液中にて15V、2分間の条件で陽極酸化処理し、光学顕微鏡で偏光フィルターを使用して結晶組織を観察した。焼鈍処理後のアルミニウム合金製押出材について、アルミニウム合金製押出材のLT面全域の全ての領域において繊維状組織が観察された場合、表3に「繊維状組織」と記載した。また、時効処理後のアルミニウム合金製押出材については、最表面に形成された再結晶組織を含む領域の厚さを計測し、得られた最大値を表3に示した。
【0080】
焼鈍処理後のアルミニウム合金押出材の代表的な組織観察結果として、実施例13として得られたアルミニウム合金押出材のLT断面の組織写真を
図4に示す。極最表面に再結晶組織を含む領域が形成されているが、当該領域の厚さは100μm以下であり、再結晶粒の粗大化は認められない。当該結果は、実施例13のアルミニウム合金押出材が繊維状組織を有していることを示している。
【0081】
【0082】
本発明の実施例であるアルミニウム合金製部材(アルミニウム合金製押出材)に関しては、全ての場合において、焼鈍処理後の0.2%耐力が110MPa以下、伸びが22%以上となっている。これに対し、Cu及びZnの含有量が多い比較例3の組成の場合、焼鈍処理後の0.2%耐力は115MPaと高くなり、伸びは20%と低い値となっている。
【0083】
また、本発明の実施例であるアルミニウム合金製部材(アルミニウム合金製押出材)に関しては、全ての場合において、時効処理後の引張強さが500MPa以上、0.2%耐力が470MPa以上、伸びが12%以上となっている。これに対し、Cuの含有量が少ない比較例1の組成の場合、時効処理後のアルミニウム合金製部材(アルミニウム合金製押出材)の0.2%耐力が442MPaと低い値になっている。加えて、Mgの含有量が多い比較例2の組成の場合、時効処理後のアルミニウム合金製部材(アルミニウム合金製押出材)の伸びが11.4%と低い値になっている。
【0084】
また、アルミニウム合金製部材の微細組織に関して、本発明の実施例は焼鈍後の微細組織が全面繊維状組織となっている。また、冷間加工後に溶体化処理及び時効処理を施した場合については、最表面に極めて薄い再結晶組織を含む領域が形成されているが、当該領域の厚さは500μm以下となっている。代表的な観察結果として、実施例13及び実施例16におけるLT断面の組織写真を
図5及び
図6にそれぞれ示す。また、実施例13及び実施例16におけるL断面の組織写真を
図7及び
図8にそれぞれ示す。再結晶組織を含む領域の厚さは、実施例13及び実施例16において、LT方向及びL方向のいずれの観察結果においても200μm以下となっている。
【0085】
実施例13として得られたアルミニウム合金製部材において、局所的に加工率が高くなった領域(断面減少率:66%)のLT断面の組織写真を
図9に示す。断面減少率が大きくなった場合においても、再結晶組織を含む領域の厚さは320μmに留まっており、500μm以下となっていることが分かる。
【0086】
また、冷間加工を施すことなく、押出後に溶体化処理及び時効処理を施した場合の代表的な微細組織として、実施例3として得られたアルミニウム合金押出材のLT断面の組織写真を
図10に示す。極最表面に粗大な再結晶組織からなる領域が形成されているが、当該領域の厚さは50μm以下となっている。また、再結晶組織からなる領域の厚さについても、200μm以下となっている。即ち、本発明のアルミニウム合金製部材については、冷間加工の有無に依らず、T6熱処理後における再結晶組織を含む領域の厚さが500μm以下に抑制されている。
【0087】
以上の結果から、アルミニウム合金製部材の高強度化に寄与するCu、Mg及びZnの添加量を厳密に制御することに加え、良好な塑性加工性を発現させる観点から、Mgの含有量を可能な限り低い値とすることで、焼鈍材には良好な塑性加工性を付与することができ、T6熱処理材には優れた引張特性(強度、耐力及び伸び)を付与できることが分かる。